説明

針葉樹葉混入木質繊維板及びその製造方法

【課題】ペットの飼育に適した材料として天然成分である茶殻を用いた材料は、ペットにも優しく、環境上廃棄しても問題がない材料ではあるが、化学物質からなる消臭剤と比較すると消臭効果が弱いという問題が残されている。
【解決手段】木質繊維と木質繊維に対して3〜50重量%の解繊した針葉樹葉とを必須成分として、水中で混合したスラリーを湿式抄造した後乾燥することによって消臭性に優れた木質繊維板を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針葉樹葉を木繊維に混合して消臭効果を高めた木質繊維板とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットブ−ムに伴い室内でペットを飼育する機会が増えており、ペットに起因する臭気への対応が必要となっている。消臭機能を有する材料として、例えば特開2002−321205号公報には、食品廃棄物として大量に排出される茶殻を木質繊維や木粉等と混合してスラリー状にして湿式抄造し、加熱乾燥して得られた木質ボードが開示されており、アンモニア等の消臭機能にも優れたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−321205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
天然成分である茶殻を用いることで、ペットにも優しく、環境上廃棄しても問題がない材料ではあるが、化学物質からなる消臭剤と比較すると消臭効果が弱いという問題は残されており、天然成分素材を用いた消臭材料のさらなる開発が望まれている。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、ペットにも優しく、環境上廃棄しても問題がない材料であって、消臭性能に優れた木質繊維板とその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を解決するために、請求項1に係る針葉樹葉混入木質繊維板の発明は、木質繊維と針葉樹葉の粉砕物とを必須成分とし混合し成板したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る針葉樹葉混入木質繊維板の製造方法の発明は、木質繊維と木質繊維に対して3〜50重量%の針葉樹葉の粉砕物とを必須成分として水中で混合したスラリーを湿式抄造した後乾燥することを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る針葉樹葉混入木質繊維板の製造方法の発明は、請求項2に記載の針葉樹葉を解繊することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明は、木質繊維と針葉樹葉の粉砕物とを必須成分とし混合し成板しているので、針葉樹葉に含まれるテルペンやクロロフィルにより優れた消臭効果を有する。
【0010】
請求項2に係る発明は、木質繊維と針葉樹葉の粉砕物とを水中で混合したスラリーを湿式抄造した後乾燥して得られる木質繊維板なので、木質繊維中に針葉樹葉の粉砕物が均一に混合される。また、針葉樹葉にはテルペンやクロロフィルが含まれ優れた消臭効果を有し、木質繊維に対して3〜50重量%の針葉樹葉の粉砕物と混合することで消臭効果に優れると共に板として実用強度を有する。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の針葉樹葉を解繊するので、湿式抄造時に木質繊維とより絡み易くなって歩留まりが良くなることにより、添加量減少による消臭効果の低下を防止する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例1に示す木質繊維板の厚み、比重、歩留まりの関係を表す図。
【図2】実施例1に示す木質繊維板をチャンバー内に静置した場合のアンモニア濃度の経時変化を表す図。
【図3】図3に示すアンモニア濃度の経時変化をグラフに表した図。
【図4】実施例2に示す木質繊維板の厚み、比重、歩留まりの関係を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0014】
樹木の精油には消臭に効果のあるテルペンやクロロフィルが含まれている。一方、樹木の葉には葉油としてこれらの成分が多く含まれているにも関わらず、その大部分は林地残材として未利用のまま放置されてきた。特に針葉樹には広葉樹に比べて1.5〜3倍の前記有用な精油が含まれており、出願人はこれらに着目して、針葉樹葉を含有した木質繊維板を得るに至った。
【0015】
本発明の木質繊維板は従来から製造されているインシュレーションファイバーボードの製造方法に基本的に基づいている。
木質繊維の樹種、形状および大きさは必要に応じて適宜選択すればよく、特に限定しないが、樹種としては、例えば、マツ,スギ,ヒノキ,スプルース,ベイツガ等の針葉樹や、ブナ,ケヤキ,ミズナラ,チーク,イエローメランチ等の広葉樹の他、建築故材、廃パレット,廃型枠等の廃材を利用したものであってもよい。また、木質繊維の形状および大きさは、湿式で成板できる範囲、例えば、長さ2.0〜30mm程度が好適である。
【0016】
木質繊維を一体化するバインダーとしては、特に限定はしないが、主としてスターチが用いられ、その他にフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート系樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂を単独または複数組み合せて使用する。添加量は木質繊維に対して1〜10重量%が好適である。1重量%未満であると板材としての強度が得られず、10重量%を越えると抄造時の濾水性が低下するので生産性が悪く乾燥時に反りを生じるおそれがある。また、必要に応じて硫酸バンド(硫酸アルミニウム)、PAM(ポリアクリルアミド)等の凝集剤を、耐湿性、耐水性を要求する用途に対しては撥水剤を、逆にペットのトイレに使用する尿吸収材に使用する場合は親水剤を添加する。
【0017】
針葉樹葉はスギ、ヒノキ、トドマツ等が用いられそれらの葉を自走式木材破砕機(コマツ製)を用いて5mm程度まで粉砕した。また必要に応じて針葉樹葉は一部解繊処理を施した。針葉樹葉を解繊することで木質繊維とほぼ同程度の形状および大きさの繊維となるので木質繊維と絡み易くなり湿式抄造時の歩留まりが向上する。
【0018】
木質繊維と針葉樹葉の粉砕物または解繊物を水中に投入して、攪拌して得た濃度1〜3%のスラリーに、さらに必要に応じてバインダー、凝集剤、撥水剤、親水剤等を添加し十分に攪拌し湿式抄造してフォーミングした後、冷圧で100〜150%程度に含水率を調整し、ドライヤーで乾燥させて密度0.05〜0.40g/cm3の木質繊維板を得た。なお、撥水剤、親水剤等についてはスラリーに添加しても良いが、フォーミング後のウェットマットに塗布浸透させれば別工程で手間はかかるが、抄造時に水中に逃げることがなく歩留まりは向上する。なお、成板方法としては、湿式抄造だけではなく木質繊維と針葉樹葉の粉砕物とバインダーを乾式で混合し熱圧しても良い。
【実施例】
【0019】
以下、実施例に基づき具体的に説明する。
(実施例1)
図1に、スギの針葉樹葉、緑茶の茶殻を添加した木質繊維板の厚み、比重、歩留まりについて示す。夫々添加物としてスギの針葉樹葉と緑茶の茶殻を10.5%を添加して木質繊維板を作成した。原料の添加量とできあがった木質繊維板の重量減少量から計算した結果、針葉樹葉も茶殻も抄造時に水中に流出したための歩留まりは、茶殻が70%、針葉樹葉が35%となった。厚み、比重からみて添加物を含有した木質繊維板は繊維同士の結合が緩く若干強度の弱い板であった。特に針葉樹葉は65%が水中に流出し実際の添加率は4%となっている。
【0020】
前記スギの針葉樹葉、緑茶の茶殻を添加した木質繊維板の消臭試験について以下の通り行った。チャンバーを温度20〜25℃の室内に設置し、チャンバー(内容積約40L)に対して0.5の負荷率となる大きさ(140mm角供試体)の供試体の裏面及び木口面をアルミテープ、アルミ箔シールし、28%アンモニア水溶液20μLをチャンバーに入れて揮発したアンモニアでチャンバー内を満たした後、チャンバー内空気を30分、1時間、4時間、8時間、24時間で吸引しアンモニアの濃度変化をアンモニア用気体検知管(ガステック製)で測定した。
【0021】
図2に(1)何も添加しない木質繊維板、(2)スギの針葉樹葉を添加した木質繊維板、(3)緑茶の茶殻を添加した木質繊維板のアンモニア濃度(ppm)の24時間までの経時変化を示す。また、図3にそのグラフを示す。スギの針葉樹葉の添加率は前記の通り実質的には4%、緑茶の茶殻の添加率は実質的には8%である。スギの針葉樹葉は緑茶の茶殻の半分の添加率にも関わらず最終的には半分まで濃度が低下しており消臭効果は向上している。したがって、ペットのトイレ等に使用する材料として有用なものである。
【0022】
(実施例2)
前記の結果のように、針葉樹葉の湿式抄造での歩留まりが悪いという結果を受けた改善策として、針葉樹葉を解繊することにより木質繊維との絡みを向上させ歩留まり改善を図った。図4に解繊した針葉樹葉(ヒノキとスギ)の添加率を変化させた場合の歩留まりの変化を示す。厚み、比重を見るかぎり針葉樹葉を添加しない木質繊維板との違いはなくなった。歩留まりについてはほぼ8割以上を維持しているので、針葉樹葉の解繊効果は高いことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
ペットにも優しく、環境上廃棄しても問題がない材料であり、消臭性能に優れた木質繊維板を提供できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維と針葉樹葉の粉砕物とを必須成分とし混合し成板したことを特徴とする針葉樹葉混入木質繊維板。
【請求項2】
木質繊維と木質繊維に対して3〜50重量%の針葉樹葉の粉砕物とを必須成分として水中で混合したスラリーを湿式抄造した後乾燥することを特徴とする針葉樹葉混入木質繊維板の製造方法。
【請求項3】
針葉樹葉を解繊することを特徴とする請求項2に記載の針葉樹葉混入木質繊維板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−73366(P2011−73366A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228880(P2009−228880)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】