説明

釣り堀装置

【課題】 紫外線殺菌器により濾過された原水を殺菌することで処理水の循環使用を可能とし、キャッチアンドリリース式の釣り堀であっても、魚が疾病にかからないようにした循環水式釣り堀装置に関する。
【解決手段】この循環水式釣り堀装置は、釣り堀用水槽で第1の水位を超えてオーバーフローした原水を逆洗水として溜める逆洗水槽と、前記釣り堀用水槽に設けた吸水口から吸水した原水を濾過する濾過装置と、濾過した水を中圧紫外線ランプで殺菌する紫外線殺菌器と、前記逆洗水槽から原水とエアを前記濾過装置に導入し、濾材を逆洗する逆洗ポンプおよび逆洗ブロワーと、オーバーフローの上澄み部分や濾過装置で濾別された廃棄物を集めて、排水する排水溜め部とからなり、前記濾過・殺菌された処理水を釣り堀用水槽に戻してなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り堀用水槽の水を循環して使用する釣り堀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣り堀用水槽(池)の場合、養魚池や鑑賞魚池とは異質のものであり、多くの人間が魚を掴み池に手を入れたり、餌滓が水に溶けて水中の有機物濃度を上昇させるおそれがある。
人間の手には多量の雑菌が植え付けられており、また雑菌の増殖に適した有機物が存在すれば、魚に対する環境は劣悪となる。
生物濾過方式が採られる場合には、濾過を安定させるために時間がかかり、また1週間から10日に一度の割合で、濾過槽の清掃が必要であり地下水の差し水は、常に行っており、水質維持のために多大の人件費と専門的知識が必要となり、管理が難しいという欠点があった。
また、雑菌の繁殖により臭いが強くなり、魚の病気を促成するために、薬品投与などの機会が増えるという問題点もある。
【0003】
そこで、例えば国際公開WO98/04124の魚の養殖装置では、水中に含まれる残餌及び糞を捕獲する粒子トラップと、飼育槽内の沈澱物を堆積し沈澱物と水を分離する沈澱物トラップと、粒子トラップと沈澱物トラップを連通する配管に介設された残餌検出センサと、マイクロスクリーンフィルターから構成される捕獲部、水中に溶存する窒素化合物の脱窒を行う脱窒装置、エアー及び/又はオゾンを供給して気泡を発生させ、この気泡を捕獲して水中の表面活性物質を除去する泡浮上装置,循環する飼育用水の殺菌を行う紫外線殺菌装置、非浸漬処理部及び浸漬処理部から構成され、水中のアンモニアを分解する機能を有するアンモニア処理部、水に酸素を溶解する曝気部を備え、脱窒装置は、泡浮上装置の上流側で、分岐されたバイパス管を配置する構成が開示されている。
上記構成では、紫外線殺菌装置を用いるので、魚の病原菌や循環する飼育用水の殺菌を行うことができるが、多数のフィルターや装置を必要とするので構造が複雑となり取扱も繁雑となる欠点があった。
【0004】
【特許文献1】国際公開WO98/04124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その主たる課題は、濾過装置に接続された紫外線殺菌器により釣り堀用水槽の原水を浄化し、処理水を循環して使用することができるようにして、釣られた魚が繰り返し池に戻されるようなキャッチアンドリリース式の釣り堀であっても、魚が疾病にかからないようにした釣り堀装置を提供することにある。
また、この釣り堀装置では、機械室をコンパクトにすることができると共に、前記原水の一部を用いて濾過装置の濾材の逆洗水に利用する釣り堀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
釣り堀用水槽の原水をポンプで濾過装置に通して浄化した処理水を前記水槽へ戻す循環水式釣り堀装置において、
釣り堀用水槽で第1の水位を超えてオーバーフローした原水を逆洗水として溜める逆洗水槽と、
前記釣り堀用水槽に設けた吸水口から吸水した原水を濾過する濾過装置と、
濾過した水を中圧紫外線ランプで殺菌する紫外線殺菌器と、
前記逆洗水槽から原水とエアを前記濾過装置に導入し、濾材を逆洗する逆洗ポンプおよび逆洗ブロワーと、
オーバーフローの上澄み部分や濾過装置で濾別された廃棄物を集めて、排水する排水溜め部とからなり、
前記濾過・殺菌された処理水を釣り堀用水槽に戻してなることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明では、
前記排水溜め部が、ポンプピットと一定の水位で接続されてドレンに接続されており、
前記ポンプピットから導入されて一定の水位を超えた原水が前記排水溜め部に流入し、それ以外の原水を逆洗水槽内に貯留してなることを特徴とする。
請求項3の発明では、
前記釣り堀用水槽に、新しい補給水をタイマーで制御して補給する補給装置を設けてなることを特徴とする。
請求項4の発明では、
前記釣り堀用水槽の内周壁に、オーバーフロー水を取り込む排水口と、水槽水を吸水するための吸水口と、処理水を注水するための注水口とが設けられていることを特徴とする。
請求項5の発明では、
前記釣り堀用水槽の内部に船などの形状をして釣り客が入ることのできるデッキ部を設け、該デッキ部の外周壁に、オーバーフロー水を取り込む取水口と、水槽水を吸水するための吸水口と、処理水を注水するための注水口とが設けられていることを特徴とする。
請求項6の発明では、
前記紫外線殺菌器が濾過装置に接続されており、濾材は、逆洗ポンプにより逆洗水槽から濾過装置内に供給された逆洗用の原水と、逆洗ブロワーから供給されたエアーとで自動的に洗浄されるようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の釣り堀装置は、濾過装置に設けられた紫外線殺菌器により釣り堀用水槽の原水を濾過・殺菌することで得られた処理水を循環して使用することができるようにした。 これにより、釣られた魚が繰り返し釣り堀用水槽に戻されるようなキャッチアンドリリース式の釣り堀であっても、魚が疾病にかからず、また水槽内を汚さず、異臭の発生を抑えることができる。
また、この釣り堀装置では、釣り堀用水槽からオーバーフローした原水を用いて濾過装置の濾材の逆洗水として利用することで、濾過装置の自動洗浄を行うことができる。
また、簡単な構成としたので、機械室を小型化でき、省スペースを図ることができる。
更に、地下水が利用できない場合でも、水道水での運営が可能となり、設置エリアが限定されず、都市部であってもよく、また室内であっても運営することができる。
また、濾過・殺菌した処理水を釣り堀用水槽に戻して循環させるので、全水量の約5%程度の加水量で運営することができ、更に全自動のシステムとすることで人件費の削減が図れ、経済的である。
また、前記のように原水は濾過、殺菌され、廃棄物は濾別されるので釣り堀の清掃、消毒が不要となり、また魚の死亡をによる補給を可及的に抑えることができ、極めて有益である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明は、濾過装置に紫外線殺菌器を設けて、原水を濾過すると共に殺菌して循環利用し、またオーバーフローした原水を用いて濾材を逆洗することで、元気な魚を年間を通して釣ることができるようにすると共に、ランニングコストを抑えた釣り堀装置を実現した。
【実施例1】
【0010】
以下に、この発明の釣り堀装置の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は釣り堀装置の濾過・殺菌処理の流れを示す回路図、図2は釣り堀装置の全体を模式的に示す回路図である。
この釣り堀装置は、FRPからなる釣り堀用水槽1を備えている。
釣り堀水槽1はFRPのユニット構造とすることで、屋内への搬入、組立が容易であり、設備工事は組立だけなので数日程度で完了することができ、従来のコンクリート製の水槽に比べて10分の1以上の短縮を図ることができる。
【0011】
この釣り堀水槽1内の水位が第1の水位を超えると、オーバーフローした原水はポンプ2Pを内蔵したポンプピット2に流れ込む。
即ち、釣り堀水槽1の内壁面の上方位置には排水口11が開口しており、排水口11の最低ラインを超えた原水が排水口11から第1流路L1を通ってポンプピット2に流れ込む。
次いで、ポンプピット2に溜められた原水は、ポンプ2Pによって第2流路L2を経て逆洗水槽3に導入され溜められる。
【0012】
6は排水溜め部であって、逆洗水槽3の所定水位を超えてオーバーフローした原水と、前記ポンプピット2の所定水位を超えた原水とが流れ込むようになっている。
図示例ではポンプピット2の上方で排水溜め部6と連通する連通路L3を通って、所定量を超えた原水が排水溜め部6に流れ込む。
オーバーフローした原水には、浮力を有するゴミなどが浮かんでおり、その上澄み部分が排水溜め部6に集められる。
排水溜め部6はドレンを有し、図示しない篩でゴミを分別するなどして、排水路L4を通って下水に流される。
【0013】
次ぎに、前記釣り堀用水槽1には、その内壁面で下方に吸水口12が開口されている。
図2では、先端にストレーナなどのフィルタFを設けており、吸水口12から循環水路L10内に吸引される。
4Pは濾過用ポンプであり、図示例では3台の濾過用ポンプ4Pが設けられており、吸水口12から循環第1流路L11を介して吸引した原水を循環第2流路L12を経て濾過装置4にそれぞれ原水を送り込んでいる。
即ち、前記吸水された原水は、まず濾過装置4のタンク上方の原水入口4aに流し込まれる。
濾過装置4は濾材を内蔵しており、該濾材を通って濾過された水がタンクの下方の原水出口4bから出て、循環第3流路L13を通って紫外線殺菌器5に送られる。
【0014】
紫外線殺菌器5は、中央に中圧紫外線ランプ5aを内蔵しており、濾過された水を旋回流として前記ランプ5aを通過させる。
ここで中圧紫外線ランプ5aは、水の化学的性質を一切変えることなく、確実に雑菌を死滅させることができる。
また、亜硝酸窒素の発生を極端に抑制でき、また水中の溶残酸素量を飛躍的に向上でき、水全体のバランスを効率よく維持することができ、更に、水槽から発生する独特な異臭の抑制も行うことができる。
【0015】
そして、この中圧紫外線ランプ5aは、考えられる魚類病原微生物に対しての紫外線感受性量(マリノフォーラム21 新技術評価基準作成委員会発行)に対応した殺菌能力判定基準に基づいて適正な紫外線照射量に設定される。
例えば、20,000μW・sec/cm2 以上の紫外線照射であれば、99.9%以上の細菌が死滅することが判明している。
また、本実施例の紫外線殺菌器5では、ランプの保護管の洗浄は、殺菌水自体の旋回流で自動的に行うことができる。
【0016】
このように濾過され、殺菌された処理水は、循環第4流路L14を経て釣り堀水槽1の注水口13から釣り堀水槽1内へ注水される循環サイクルからなっている。
図示例では循環第3流路L13を2つに分岐すると共に、濾過装置4で濾過した処理水を紫外線殺菌器5を通さずに循環第4流路L13に繋げて、直接に注水口13へ導入しうるように切替弁を設けている。
【0017】
また、前述のように、濾過装置4が一定時間稼働すると、自動的に逆洗ポンプ7が作動して、逆洗水槽3と接続された第6流路L6から逆洗水槽3に溜められた原水を導入し、第7流路L7を介して前記循環第2流路L12と接続して濾過装置4内に導入する。
また逆洗ブロア8が作動して第8流路L8から第7流路L7を介して前記循環第2流路L12と接続して濾過装置4内に気泡を送り込み、濾過装置4内の濾材を逆洗し、濾材に付着した廃棄物を分離する。
前記濾過装置4で濾別された廃棄物や逆洗水は、それぞれの排出口4cから排出されて濾過装置4と排水溜め部6とを接続する第5流路L5を通り、前記排出溜め部6に送水される。
【0018】
また、釣り堀水槽1の水位が一定基準を下回った場合には、水位センサなどで水位を検出しておき、水道本管などの水源から第9流路L9を介して、釣り堀水槽1の新水注水口14から新水を補給する。
本実施例では、水道水を用いたが、地下水を用いてもよい。
【0019】
次に、図2は、釣り堀用水槽と浄化施設との回路を示す模式図であり、大型の釣り堀用水槽1の内部に船などの形状をして釣り客が入ることのできるデッキ部20を設け、該デッキ部20の外周壁に、オーバーフロー水を取り込む排水口11、水槽から原水を吸水するための吸水口12と、処理水を注水するための注水口13などを設けることで、浄化量を増やすことができるようになっている。
また、機械室30には、逆洗水槽3に対して排水溜め部6とポンプピット2とを反対側に配置し、その中間に濾過装置4とポンプ4Pなどを配置している。
【0020】
図3、図4は、機械室30の異なる配置を示すものであり、一側に逆洗水槽3を配置し、中央に3基の濾過装置4を並べ、他側には制御盤9と、架台10上に配置された3台の紫外線殺菌器5と、逆洗ブロワー8とからなっている。
前記架台の下には図5に示すように地面に排水溜め部6と逆洗水槽2とを形成している。
また、架台の前方には濾過用ポンプ4Pと逆洗ポンプ7とが配置されている。
このように配置することで機械室を省スペースで設置することができる。
上記実施例では、濾過装置と紫外線殺菌器とを接続した場合を図示したが、濾過装置に紫外線殺菌器を内蔵し、濾過した水をそのまま殺菌する構成としてもよい。
その他、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
この発明は、釣り堀装置に限らず、生け簀などにも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】釣り堀装置の濾過・殺菌処理の流れを示す回路図である、
【図2】釣り堀装置の全体を模式的に示す図である。説明図である。
【図3】機械室を示す平面図である。
【図4】同正面図である。
【図5】排水溜め部と逆洗水槽とを示す断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0023】
1 釣り堀用水槽
2 ポンプピット
2P ポンプ
3 逆洗水槽
4 濾過装置
4P 濾過用ポンプ
5 紫外線殺菌器
6 排水溜め部
7 逆洗ポンプ
8 逆洗ブロア
9 制御盤
10 架台
11 排水口
12 吸水口
13 注水口
14 新水注水口
20 デッキ部
30 機械室
F フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り堀用水槽の原水をポンプで濾過装置に通して浄化した処理水を前記水槽へ戻す循環水式釣り堀装置において、
釣り堀用水槽で第1の水位を超えてオーバーフローした原水を逆洗水として溜める逆洗水槽と、
前記釣り堀用水槽に設けた吸水口から吸水した原水を濾過する濾過装置と、
濾過した水を中圧紫外線ランプで殺菌する紫外線殺菌器と、
前記逆洗水槽から原水とエアを前記濾過装置に導入し、濾材を逆洗する逆洗ポンプおよび逆洗ブロワーと、
オーバーフローの上澄み部分や濾過装置で濾別された廃棄物を集めて、排水する排水溜め部とからなり、
前記濾過・殺菌された処理水を釣り堀用水槽に戻してなることを特徴とする循環水式釣り堀装置。
【請求項2】
排水溜め部が、ポンプピットと一定の水位で接続されてドレンに接続されており、
前記ポンプピットから導入されて一定の水位を超えた原水が前記排水溜め部に流入し、それ以外の原水を逆洗水槽内に貯留してなることを特徴とする循環水式釣り堀装置。
【請求項3】
釣り堀用水槽に、新しい補給水をタイマーで制御して補給する補給装置を設けてなることを特徴とする請求項1に記載の釣り堀装置。
【請求項4】
釣り堀用水槽の内周壁に、オーバーフロー水を取り込む排水口と、水槽水を吸水するための吸水口と、処理水を注水するための注水口とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の釣り堀装置。
【請求項5】
釣り堀用水槽の内部に船などの形状をして釣り客が入ることのできるデッキ部を設け、該デッキ部の外周壁に、オーバーフロー水を取り込む取水口と、水槽水を吸水するための吸水口と、処理水を注水するための注水口とが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の釣り堀装置。
【請求項6】
紫外線殺菌器が濾過装置に接続されており、濾材は、逆洗ポンプにより逆洗水槽から濾過装置内に供給された逆洗用の原水と、逆洗ブロワーから供給されたエアーとで自動的に洗浄されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の釣り堀装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−271233(P2006−271233A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93300(P2005−93300)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(502166950)株式会社今関商会 (1)
【Fターム(参考)】