鉄分判定用試薬、鉄分の存否判定方法および鉄分濃度の測定方法
【目的】被試験水中における鉄分の存否を簡単に判定できるようにする。
【構成】鉄分判定用試薬は、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含んでいる。被試験水へこの試薬を添加すると、被試験水中の三価鉄イオンは第一剤により二価鉄イオンへ還元される。生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から存在する二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。この発色の有無により、鉄分の存否を判定することができる。
【構成】鉄分判定用試薬は、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含んでいる。被試験水へこの試薬を添加すると、被試験水中の三価鉄イオンは第一剤により二価鉄イオンへ還元される。生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から存在する二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。この発色の有無により、鉄分の存否を判定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄分判定用試薬、鉄分の存否判定方法および鉄分濃度の測定方法、特に、被試験水中における鉄分の存否を判定するための試薬、並びにこの試薬を用いた鉄分の存否判定方法および鉄分濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラへの給水として用いられる水道水などの原水は、通常、ボイラ内での腐食やスケールの発生を防止するために、溶存酸素を除去する脱酸素処理および硬度成分、すなわちカルシウムやマグネシウムを除去する軟水化処理が施されている。ここで、脱酸素処理は、通常、原水を分離膜で処理することにより実施されている。また、軟水化処理は、通常、原水をイオン交換樹脂で処理することにより実施されている。
【0003】
ところで、水道水などの原水は、鉄分を含む場合がある。この鉄分は、脱酸素処理で用いる分離膜を目詰まりさせ、原水の脱酸素処理効率を損なう可能性があり、また、軟水化処理で用いるイオン交換樹脂に吸着し、原水の軟水化を妨げる可能性がある。そこで、ボイラ給水として用いられる原水は、通常、脱酸素処理および軟水化処理する前に、粒子状のマンガンシャモットやマンガンゼオライトをろ材に使用した塔式ろ過装置や砂ろ過装置等の除鉄装置により鉄分が除去されている。したがって、原水は、脱酸素処理および軟水化処理される前に、鉄分が除去されていることを確認するのが好ましい。
【0004】
水中における鉄分の存否の判定方法として、非特許文献1は、1,10−フェナントロリンによる吸光光度法を提示している。この方法では、先ず、被試験水中の鉄分を酸で溶解し、三価鉄イオンを塩酸ヒドロキシルアミンで二価鉄イオンへ還元する(第一工程)。そして、被試験水に対し、二価鉄イオンと反応して橙赤色の錯化合物を生成する1,10−フェナントロリンを添加する(第二工程)。ここで、被試験水が錯化合物による橙赤色へ変色した場合、被試験水に鉄分が存在するものと判定することができ、また、被試験水の変色量を吸光光度法により測定すると、被試験水の鉄分濃度を求めることもできる。一方、被試験水が変色しない場合、被試験水は鉄分を含まないものと判定することができる。
【0005】
しかし、上述の判定方法は、塩酸ヒドロキシルアミンを用いる第一工程と、1,10−フェナントロリンを用いる第二工程との二つの工程を必要とするため、判定工程が複雑である。
【0006】
本発明の目的は、被試験水中における鉄分の存否を簡単に判定できるようにすることにある。
【0007】
【非特許文献1】日本水道協会発行、「上水試験方法 2001年版」、340〜342頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水中における鉄分の存否を判定するためのものであり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含んでいる。
【0009】
三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、鉄分判定用試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、鉄分判定用試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。さらに、鉄分を含まない被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しないため、鉄分を含まないものと判定することができる。
【0010】
この鉄分判定用試薬において用いられる第二剤は、通常、常温において第一剤との反応性を実質的に有していないものである。また、この鉄分判定用試薬において、第一剤は、例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であり、また、第二剤は、例えば、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸およびそのアルカリ金属塩並びに2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれた一つの化合物である。
【0011】
ここで、第二剤として4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸の二ナトリウム塩を用いる場合、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれた一つを用いるのが好ましい。また、第二剤として2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンを用いる場合、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いるのが好ましい。第一剤と第二剤とをこれらのように組合せた場合は、長期間の保存安定性が良好な鉄分判定用試薬が得られる。
【0012】
本発明に係る鉄分の存否判定方法は、被試験水中における鉄分の存否を判定するための方法であり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む試薬を被試験水に対して添加する工程と、当該試薬が添加された被試験水について、第二剤による発色の有無を判定する工程とを含んでいる。
【0013】
この判定方法において、三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、上記試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、上記試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。さらに、鉄分を含まない被試験水中へ上記試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しないため、鉄分を含まないものと判定することができる。
【0014】
本発明に係る鉄分濃度の測定方法は、被試験水の鉄分濃度を測定するための方法であり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む所定量の試薬を所定量の被試験水に対して添加する工程と、当該試薬が添加された被試験水について、第二剤による発色量を測定する工程とを含んでいる。
【0015】
三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色し、被試験水を発色させる。ここで、被試験水の発色量は、被試験水中に含まれる二価鉄イオン濃度により異なる。すなわち、二価鉄イオン濃度が低いほど発色量が小さく、また、二価鉄イオン濃度が高いほど発色量が大きい。したがって、第二剤による被試験水の発色量を測定すると、その大小に基づき、被試験水の鉄分濃度を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄分判定用試薬は、上述の第一剤と第二剤とを混合したものであるため、被試験水へ添加するだけで、被試験水中における鉄分の存否を簡単に、かつ正確に判定することができる。
【0017】
本発明に係る鉄分の存否判定方法は、本発明の鉄分判定用試薬を用いているので、当該試薬を被試験水へ添加するだけで、被試験水中における鉄分の存否を簡単に、かつ正確に判定することができる。
【0018】
本発明に係る鉄分濃度の測定方法は、本発明の鉄分判定用試薬を用いているので、被試験水の鉄分濃度を簡単に、かつ正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の鉄分判定用試薬は、鉄分の還元剤として機能する第一剤と、鉄分の発色剤として機能する第二剤とを混合したものである。
ここで用いられる第一剤は、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するためのものであり、そのような還元作用を有する各種の化合物である。このような化合物としては、例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸を挙げることができる。これらの化合物は、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜、二種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
一方、第二剤は、二価鉄イオンと反応して発色するものであり、そのような発色作用を有する各種の化合物である。このような化合物としては、例えば、o−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸(DPP)およびそのアルカリ金属塩、2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(TPTZ)、2−(5−ニトロ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−n−プロピル−N−(3−スルホプロピル)アミノ]フェノール(Nitro−PAP)およびそのアルカリ金属塩並びに3−(2−ピリジル)−5,6−ビス(4−スルホフェニル)−1,2,4−トリアジン(PDT)およびそのアルカリ金属塩を挙げることができる。但し、第二剤は、本発明の鉄分判定用試薬の保存安定性の観点から、常温において第一剤との反応性を実質的に有していないものが好ましい。ここで、「常温」とは、5〜50℃の温度範囲を意味する。このような条件を備えた第二剤として好ましいものは、第一剤として上記の例示のもののいずれかを用いる場合、DPP若しくはそのアルカリ金属塩またはTPTZである。
【0021】
本発明の鉄分判定用試薬は、通常、第一剤および第二剤を適量の水に溶解して混合すると調製することができる。ここでは、第一剤と第二剤とを予め混合してから水に溶解してもよいし、第一剤および第二剤のうちの一方を最初に水に溶解した後、他方をさらに添加して溶解するようにしてもよい。この際、水に対する第一剤若しくは第二剤の溶解性を高めるために、塩酸などの酸を添加してもよい。また、利用する第二剤が特定のpH範囲においてのみ発色するような場合、当該pH範囲に調整するためのpH調整剤や緩衝剤を併せて混合することもできる。
【0022】
第一剤と第二剤との混合割合は、鉄分判定用試薬の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、後述する被試験水中における鉄分の存否を定性的に判定する場合は、被試験水量に応じて、被試験水に含まれるものと予想される三価鉄イオンの一部を二価鉄イオンへ還元可能な量の第一剤と、三価鉄イオンから還元された二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれると予想される二価鉄イオンの一部を発色可能な量の第二剤とを混合すれば十分である。これに対し、被試験水中に含まれる鉄分を定量的に判定する場合(すなわち、鉄分濃度を判定する場合)は、被試験水に含まれるものと予想される三価鉄イオンの全部を二価鉄イオンへ還元可能な量の第一剤と、三価鉄イオンから還元された二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれると予想される二価鉄イオンの全部を発色可能な量の第二剤とを混合する必要がある。
【0023】
因みに、第一剤と第二剤との好ましい混合割合は、通常、第二剤1重量部に対し、第一剤が10〜100重量部である。
【0024】
本発明の鉄分判定用試薬における第一剤と第二剤との組合せとして好ましいものは、次の形態のものである。
形態1
第二剤としてDPPの二ナトリウム塩を用い、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウム若しくはピロ亜硫酸ナトリウムを用いたもの。この場合、第二剤1重量部に対し、第一剤を55〜65重量部用いるのが好ましい。
形態2
第二剤としてTPTZを用い、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いたもの。この場合、第二剤1重量部に対し、第一剤を15〜25重量部用いるのが好ましい。
これらの形態の鉄分判定用試薬は、保存安定性が良好であり、数ヶ月単位の長期間保存も可能である。
【0025】
次に、本発明の鉄分判定用試薬の利用方法を説明する。
本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水における鉄分の存否、特に、微量鉄分の存否を単純に判定するために用いることができる。ここで、被試験水は、例えば、水道水、工業用水および地下水などの各種の水であり、特に限定されるものではない。
【0026】
本発明の鉄分判定用試薬により被試験水における鉄分の存否を判定する場合は、被試験水へ鉄分判定用試薬の適量を添加する。例えば、1ミリリットルの被試験水に対し、10〜20マイクロリットルの割合で鉄分判定用試薬を添加する。ここで、三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。一方、鉄分を含まない被試験水中へ上記試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しない。
【0027】
このため、上記試薬を添加した被試験水が変色した場合(すなわち、第二剤により発色した場合)、被試験水は鉄分を含むものと判定することができる。一方、被試験水が変色しない場合(すなわち、第二剤により発色しない場合)、被試験水は鉄分を含まないものと判定することができる。因みに、被試験水の発色の有無は、目視により判定することもできるが、各種の光学的手法、例えば、被試験水に対して照射した光線の透過率変化の測定や被試験水の分光スペクトルの測定により判定することもできる。
【0028】
また、本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水における鉄分濃度を判定するために用いることもできる。この場合は、先ず、水中における二価鉄イオン濃度と、二価鉄イオンと第二剤との反応による発色量との関係を予め調べ、検量線などの濃度判定データを作成しておく。そして、このように調製された鉄分判定用試薬の所定量を所定量の被試験水へ添加する。具体的には、1ミリリットルの被試験水に対し、10〜20マイクロリットルの割合で鉄分判定用試薬を添加する。この場合、鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、三価鉄イオンの全量が二価鉄イオンへ還元され、また、二価鉄イオンと第二剤とが反応して発色し、被試験水を発色する。被試験水の発色量は、被試験水における二価鉄イオン濃度により異なる。具体的には、二価鉄イオン濃度が低い場合は発色量が小さく、また、二価鉄イオン濃度が高い場合は発色量が大きい。そこで、第二剤による被試験水の発色量を測定すると、その測定結果、すなわち、発色量の大小から、濃度測定データに基づいて鉄分濃度を判定することができる。
【0029】
ここで、被試験水の発色量は、通常、各種の光学的手法、例えば、被試験水に対して照射した光線の透過率を測定する方法や被試験水の分光スペクトルから極大吸収の吸光度を測定する方法により測定することができる。
【実施例】
【0030】
実施例1〜6
第二剤としてDPPの二ナトリウム塩(以下、「DPPS」と云う)を用い、これと表1に示す各種の第一剤とを混合して鉄分判定用試薬を調製した。ここでは、第一剤と第二剤とを蒸留水に溶解し、鉄分判定用試薬を調製した。第一剤、第二剤および蒸留水の各使用量は、表1に記載の通りである。また、第二剤として用いたDPPSの特性は、次の通りである。
【0031】
◎二価鉄イオンと反応可能なpH範囲:2〜9
◎二価鉄イオンと反応して発色した場合の分光スペクトルにおける極大吸収:535nm
◎モル吸光係数:22,400M−1cm−1
【0032】
実施例7〜12
第二剤としてTPTZを用い、これと表1に示す各種の第一剤を混合して鉄分判定用試薬を調製した。ここでは、第一剤と第二剤とを0.1規定塩酸水溶液に溶解し、鉄分判定用試薬を調製した。第一剤、第二剤および0.1規定塩酸水溶液の各使用量は、表1に記載の通りである。また、第二剤として用いたTPTZの特性は、次の通りである。
【0033】
◎二価鉄イオンと反応可能なpH範囲:3.4〜5.8
◎二価鉄イオンと反応して発色した場合の分光スペクトルにおける極大吸収:595nm
◎モル吸光係数:23,000M−1cm−1
【0034】
【表1】
【0035】
評価1(鉄分の存否判定)
三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.1mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対し、各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加した。その結果、実施例1〜6の鉄分判定用試薬がそれぞれ添加された被試験水は、赤色へ変色し、また、実施例7〜12の鉄分判定用試薬がそれぞれ添加された被試験水は、青色へ変色した。また、蒸留水4ミリリットルに各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加したところ、いずれの蒸留水についても変色は観察されなかった。これらの結果によると、実施例1〜12の鉄分判定用試薬を用いれば、水中における鉄分の存否を簡単に判定することができる。
【0036】
評価2(鉄分濃度の測定)
三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.05mg/リットル、0.2mg/リットルおよび0.5mg/リットルにそれぞれ設定された三種類の被試験水を4ミリリットルずつ調製した。そして、これらの各被試験水に対して各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、そのときの変色を吸光光度法により調べた。この際の分光スペクトルおよび当該分光スペクトルにおける極大吸収波長の吸光度と三価鉄イオン濃度との関係に基づいて作成した検量線を図1〜図24に示す。各実施例と各図との対応関係は、表2の通りである。
【0037】
【表2】
【0038】
図1、図3、図5、図7、図9および図11によると、実施例1〜6の鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、535nm付近に極大吸収を有し、また、その吸光度は、三価鉄イオン濃度の高低により異なる(三価鉄イオン濃度が高いほど吸光度が大きく、三価鉄イオン濃度が低いほど吸光度が小さい)ことがわかる。そして、図2、図4、図6、図8、図10および図12によると、図1、図3、図5、図7、図9および図11の分光スペクトルに基づいてそれぞれ作成された検量線は、相関係数(R2)がほぼ1であり、信頼性が極めて高い。
【0039】
また、図13、図15、図17、図19、図21および図23によると、実施例7〜12の鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、595nm付近に極大吸収を有し、また、その吸光度は、三価鉄イオン濃度の高低により異なる(三価鉄イオン濃度が高いほど吸光度が大きく、三価鉄イオン濃度が低いほど吸光度が小さい)ことがわかる。そして、図14、図16、図18、図20、図22および図24によると、図13、図15、図17、図19、図21および図23の分光スペクトルに基づいてそれぞれ作成された検量線は、相関係数(R2)がほぼ1であり、信頼性が極めて高い。
【0040】
以上の結果によると、被試験水の鉄分濃度測定のために実施例1〜12の鉄分判定用試薬が有用なことがわかる。
【0041】
評価3(保存安定性)
(実施例1〜6について)
実施例1〜6の鉄分判定用試薬について、保存安定性を調べた。ここでは、三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.5mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対して実施例1〜6の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、535nmの吸光度を測定した。ここで用いた鉄分判定用試薬は、調製直後のもの、55℃で5時間保存したもの、同温度で25時間保存したものおよび同温度で100時間保存したもの(実施例6を除く)である。結果を図25〜図30に示す。実施例1〜6と図との対応関係は表3の通りである。図25〜図30によると、実施例1〜5の鉄分判定用試薬は、調製直後のものと100時間保存したものとで吸光度がほぼ同じであり、保存安定性が良好である。
【0042】
【表3】
【0043】
また、実施例1〜5の鉄分判定用試薬については、上記の方法と同様にして、より長期間の保存安定性を調べた。結果を図31に示す。図31において、縦軸のモル吸光係数比は、被試験水において発色した第二剤のモル吸光係数(測定値)と第二剤のモル吸光係数の理論値との比(測定値/理論値)を意味し、数値が高いほど鉄分判定用試薬の保存安定性が良好なことを示している。
【0044】
図31によると、実施例1、実施例2および実施例3の鉄分判定用試薬は、55℃で30日間保存しても保存安定性が良好であり、保存安定性の点において特に優れていることがわかる。
【0045】
(実施例7〜12について)
実施例7〜12の鉄分判定用試薬について、保存安定性を調べた。ここでは、三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.5mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対して実施例7〜12の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、595nmの吸光度を測定した。ここで用いた鉄分判定用試薬は、調製直後のもの、55℃で5時間保存したもの、同温度で25時間保存したものおよび同温度で100時間保存したもの(実施例10、12を除く)である。結果を図32〜図37に示す。実施例7〜12と図との対応関係は表4の通りである。図32〜図37によると、実施例7、9および11の鉄分判定用試薬は、概ね100時間程度保存した後でも吸光度が実質的に変化せず、保存安定性が良好である。
【0046】
【表4】
【0047】
また、実施例7、9および11の鉄分判定用試薬については、上記の方法と同様にして、より長期間の保存安定性を調べた。結果を図38に示す。図38において、縦軸のモル吸光係数比は、図31と同じ意味である。図38によると、実施例7の鉄分判定用試薬は、55℃で30日間保存しても保存安定性が良好であり、保存安定性の点において特に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例の評価2において、実施例1の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図2】実施例の評価2において、実施例1の試薬について作成した検量線を示す図。
【図3】実施例の評価2において、実施例2の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図4】実施例の評価2において、実施例2の試薬について作成した検量線を示す図。
【図5】実施例の評価2において、実施例3の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図6】実施例の評価2において、実施例3の試薬について作成した検量線を示す図。
【図7】実施例の評価2において、実施例4の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図8】実施例の評価2において、実施例4の試薬について作成した検量線を示す図。
【図9】実施例の評価2において、実施例5の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図10】実施例の評価2において、実施例5の試薬について作成した検量線を示す図。
【図11】実施例の評価2において、実施例6の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図12】実施例の評価2において、実施例6の試薬について作成した検量線を示す図。
【図13】実施例の評価2において、実施例7の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図14】実施例の評価2において、実施例7の試薬について作成した検量線を示す図。
【図15】実施例の評価2において、実施例8の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図16】実施例の評価2において、実施例8の試薬について作成した検量線を示す図。
【図17】実施例の評価2において、実施例9の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図18】実施例の評価2において、実施例9の試薬について作成した検量線を示す図。
【図19】実施例の評価2において、実施例10の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図20】実施例の評価2において、実施例10の試薬について作成した検量線を示す図。
【図21】実施例の評価2において、実施例11の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図22】実施例の評価2において、実施例11の試薬について作成した検量線を示す図。
【図23】実施例の評価2において、実施例12の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図24】実施例の評価2において、実施例12の試薬について作成した検量線を示す図。
【図25】実施例の評価3において、実施例1の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図26】実施例の評価3において、実施例2の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図27】実施例の評価3において、実施例3の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図28】実施例の評価3において、実施例4の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図29】実施例の評価3において、実施例5の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図30】実施例の評価3において、実施例6の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図31】実施例の評価3において、実施例1〜5の試薬についての長期保存安定性を調べた結果を示す図。
【図32】実施例の評価3において、実施例7の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図33】実施例の評価3において、実施例8の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図34】実施例の評価3において、実施例9の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図35】実施例の評価3において、実施例10の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図36】実施例の評価3において、実施例11の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図37】実施例の評価3において、実施例12の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図38】実施例の評価3において、実施例7、9および10の試薬についての長期保存安定性を調べた結果を示す図。
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄分判定用試薬、鉄分の存否判定方法および鉄分濃度の測定方法、特に、被試験水中における鉄分の存否を判定するための試薬、並びにこの試薬を用いた鉄分の存否判定方法および鉄分濃度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラへの給水として用いられる水道水などの原水は、通常、ボイラ内での腐食やスケールの発生を防止するために、溶存酸素を除去する脱酸素処理および硬度成分、すなわちカルシウムやマグネシウムを除去する軟水化処理が施されている。ここで、脱酸素処理は、通常、原水を分離膜で処理することにより実施されている。また、軟水化処理は、通常、原水をイオン交換樹脂で処理することにより実施されている。
【0003】
ところで、水道水などの原水は、鉄分を含む場合がある。この鉄分は、脱酸素処理で用いる分離膜を目詰まりさせ、原水の脱酸素処理効率を損なう可能性があり、また、軟水化処理で用いるイオン交換樹脂に吸着し、原水の軟水化を妨げる可能性がある。そこで、ボイラ給水として用いられる原水は、通常、脱酸素処理および軟水化処理する前に、粒子状のマンガンシャモットやマンガンゼオライトをろ材に使用した塔式ろ過装置や砂ろ過装置等の除鉄装置により鉄分が除去されている。したがって、原水は、脱酸素処理および軟水化処理される前に、鉄分が除去されていることを確認するのが好ましい。
【0004】
水中における鉄分の存否の判定方法として、非特許文献1は、1,10−フェナントロリンによる吸光光度法を提示している。この方法では、先ず、被試験水中の鉄分を酸で溶解し、三価鉄イオンを塩酸ヒドロキシルアミンで二価鉄イオンへ還元する(第一工程)。そして、被試験水に対し、二価鉄イオンと反応して橙赤色の錯化合物を生成する1,10−フェナントロリンを添加する(第二工程)。ここで、被試験水が錯化合物による橙赤色へ変色した場合、被試験水に鉄分が存在するものと判定することができ、また、被試験水の変色量を吸光光度法により測定すると、被試験水の鉄分濃度を求めることもできる。一方、被試験水が変色しない場合、被試験水は鉄分を含まないものと判定することができる。
【0005】
しかし、上述の判定方法は、塩酸ヒドロキシルアミンを用いる第一工程と、1,10−フェナントロリンを用いる第二工程との二つの工程を必要とするため、判定工程が複雑である。
【0006】
本発明の目的は、被試験水中における鉄分の存否を簡単に判定できるようにすることにある。
【0007】
【非特許文献1】日本水道協会発行、「上水試験方法 2001年版」、340〜342頁
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水中における鉄分の存否を判定するためのものであり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含んでいる。
【0009】
三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、鉄分判定用試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、鉄分判定用試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。さらに、鉄分を含まない被試験水中へ本発明の鉄分判定用試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しないため、鉄分を含まないものと判定することができる。
【0010】
この鉄分判定用試薬において用いられる第二剤は、通常、常温において第一剤との反応性を実質的に有していないものである。また、この鉄分判定用試薬において、第一剤は、例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であり、また、第二剤は、例えば、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸およびそのアルカリ金属塩並びに2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれた一つの化合物である。
【0011】
ここで、第二剤として4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸の二ナトリウム塩を用いる場合、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれた一つを用いるのが好ましい。また、第二剤として2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンを用いる場合、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いるのが好ましい。第一剤と第二剤とをこれらのように組合せた場合は、長期間の保存安定性が良好な鉄分判定用試薬が得られる。
【0012】
本発明に係る鉄分の存否判定方法は、被試験水中における鉄分の存否を判定するための方法であり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む試薬を被試験水に対して添加する工程と、当該試薬が添加された被試験水について、第二剤による発色の有無を判定する工程とを含んでいる。
【0013】
この判定方法において、三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、上記試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。これにより、上記試薬を添加した被試験水は、鉄分を含むものと判定することができる。さらに、鉄分を含まない被試験水中へ上記試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しないため、鉄分を含まないものと判定することができる。
【0014】
本発明に係る鉄分濃度の測定方法は、被試験水の鉄分濃度を測定するための方法であり、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む所定量の試薬を所定量の被試験水に対して添加する工程と、当該試薬が添加された被試験水について、第二剤による発色量を測定する工程とを含んでいる。
【0015】
三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色し、被試験水を発色させる。ここで、被試験水の発色量は、被試験水中に含まれる二価鉄イオン濃度により異なる。すなわち、二価鉄イオン濃度が低いほど発色量が小さく、また、二価鉄イオン濃度が高いほど発色量が大きい。したがって、第二剤による被試験水の発色量を測定すると、その大小に基づき、被試験水の鉄分濃度を測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉄分判定用試薬は、上述の第一剤と第二剤とを混合したものであるため、被試験水へ添加するだけで、被試験水中における鉄分の存否を簡単に、かつ正確に判定することができる。
【0017】
本発明に係る鉄分の存否判定方法は、本発明の鉄分判定用試薬を用いているので、当該試薬を被試験水へ添加するだけで、被試験水中における鉄分の存否を簡単に、かつ正確に判定することができる。
【0018】
本発明に係る鉄分濃度の測定方法は、本発明の鉄分判定用試薬を用いているので、被試験水の鉄分濃度を簡単に、かつ正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の鉄分判定用試薬は、鉄分の還元剤として機能する第一剤と、鉄分の発色剤として機能する第二剤とを混合したものである。
ここで用いられる第一剤は、三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するためのものであり、そのような還元作用を有する各種の化合物である。このような化合物としては、例えば、塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸を挙げることができる。これらの化合物は、本発明の目的を損なわない範囲において、適宜、二種以上を混合して用いることもできる。
【0020】
一方、第二剤は、二価鉄イオンと反応して発色するものであり、そのような発色作用を有する各種の化合物である。このような化合物としては、例えば、o−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸(DPP)およびそのアルカリ金属塩、2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジン(TPTZ)、2−(5−ニトロ−2−ピリジルアゾ)−5−[N−n−プロピル−N−(3−スルホプロピル)アミノ]フェノール(Nitro−PAP)およびそのアルカリ金属塩並びに3−(2−ピリジル)−5,6−ビス(4−スルホフェニル)−1,2,4−トリアジン(PDT)およびそのアルカリ金属塩を挙げることができる。但し、第二剤は、本発明の鉄分判定用試薬の保存安定性の観点から、常温において第一剤との反応性を実質的に有していないものが好ましい。ここで、「常温」とは、5〜50℃の温度範囲を意味する。このような条件を備えた第二剤として好ましいものは、第一剤として上記の例示のもののいずれかを用いる場合、DPP若しくはそのアルカリ金属塩またはTPTZである。
【0021】
本発明の鉄分判定用試薬は、通常、第一剤および第二剤を適量の水に溶解して混合すると調製することができる。ここでは、第一剤と第二剤とを予め混合してから水に溶解してもよいし、第一剤および第二剤のうちの一方を最初に水に溶解した後、他方をさらに添加して溶解するようにしてもよい。この際、水に対する第一剤若しくは第二剤の溶解性を高めるために、塩酸などの酸を添加してもよい。また、利用する第二剤が特定のpH範囲においてのみ発色するような場合、当該pH範囲に調整するためのpH調整剤や緩衝剤を併せて混合することもできる。
【0022】
第一剤と第二剤との混合割合は、鉄分判定用試薬の用途に応じて適宜設定することができる。例えば、後述する被試験水中における鉄分の存否を定性的に判定する場合は、被試験水量に応じて、被試験水に含まれるものと予想される三価鉄イオンの一部を二価鉄イオンへ還元可能な量の第一剤と、三価鉄イオンから還元された二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれると予想される二価鉄イオンの一部を発色可能な量の第二剤とを混合すれば十分である。これに対し、被試験水中に含まれる鉄分を定量的に判定する場合(すなわち、鉄分濃度を判定する場合)は、被試験水に含まれるものと予想される三価鉄イオンの全部を二価鉄イオンへ還元可能な量の第一剤と、三価鉄イオンから還元された二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれると予想される二価鉄イオンの全部を発色可能な量の第二剤とを混合する必要がある。
【0023】
因みに、第一剤と第二剤との好ましい混合割合は、通常、第二剤1重量部に対し、第一剤が10〜100重量部である。
【0024】
本発明の鉄分判定用試薬における第一剤と第二剤との組合せとして好ましいものは、次の形態のものである。
形態1
第二剤としてDPPの二ナトリウム塩を用い、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウム若しくはピロ亜硫酸ナトリウムを用いたもの。この場合、第二剤1重量部に対し、第一剤を55〜65重量部用いるのが好ましい。
形態2
第二剤としてTPTZを用い、第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いたもの。この場合、第二剤1重量部に対し、第一剤を15〜25重量部用いるのが好ましい。
これらの形態の鉄分判定用試薬は、保存安定性が良好であり、数ヶ月単位の長期間保存も可能である。
【0025】
次に、本発明の鉄分判定用試薬の利用方法を説明する。
本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水における鉄分の存否、特に、微量鉄分の存否を単純に判定するために用いることができる。ここで、被試験水は、例えば、水道水、工業用水および地下水などの各種の水であり、特に限定されるものではない。
【0026】
本発明の鉄分判定用試薬により被試験水における鉄分の存否を判定する場合は、被試験水へ鉄分判定用試薬の適量を添加する。例えば、1ミリリットルの被試験水に対し、10〜20マイクロリットルの割合で鉄分判定用試薬を添加する。ここで、三価鉄イオン(Fe3+)の鉄分のみ若しくは三価鉄イオンおよび二価鉄イオン(Fe2+)の両方の鉄分を含む被試験水中へ上記試薬を添加した場合、三価鉄イオンは、第一剤により二価鉄イオンへ還元される。そして、このようにして生成した二価鉄イオンおよび被試験水中に最初から含まれていた二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。また、二価鉄イオンの鉄分のみを含む被試験水中へ試薬を添加した場合、当該二価鉄イオンは、第二剤と反応して発色する。一方、鉄分を含まない被試験水中へ上記試薬を添加した場合、被試験水は、第二剤により発色しない。
【0027】
このため、上記試薬を添加した被試験水が変色した場合(すなわち、第二剤により発色した場合)、被試験水は鉄分を含むものと判定することができる。一方、被試験水が変色しない場合(すなわち、第二剤により発色しない場合)、被試験水は鉄分を含まないものと判定することができる。因みに、被試験水の発色の有無は、目視により判定することもできるが、各種の光学的手法、例えば、被試験水に対して照射した光線の透過率変化の測定や被試験水の分光スペクトルの測定により判定することもできる。
【0028】
また、本発明の鉄分判定用試薬は、被試験水における鉄分濃度を判定するために用いることもできる。この場合は、先ず、水中における二価鉄イオン濃度と、二価鉄イオンと第二剤との反応による発色量との関係を予め調べ、検量線などの濃度判定データを作成しておく。そして、このように調製された鉄分判定用試薬の所定量を所定量の被試験水へ添加する。具体的には、1ミリリットルの被試験水に対し、10〜20マイクロリットルの割合で鉄分判定用試薬を添加する。この場合、鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、三価鉄イオンの全量が二価鉄イオンへ還元され、また、二価鉄イオンと第二剤とが反応して発色し、被試験水を発色する。被試験水の発色量は、被試験水における二価鉄イオン濃度により異なる。具体的には、二価鉄イオン濃度が低い場合は発色量が小さく、また、二価鉄イオン濃度が高い場合は発色量が大きい。そこで、第二剤による被試験水の発色量を測定すると、その測定結果、すなわち、発色量の大小から、濃度測定データに基づいて鉄分濃度を判定することができる。
【0029】
ここで、被試験水の発色量は、通常、各種の光学的手法、例えば、被試験水に対して照射した光線の透過率を測定する方法や被試験水の分光スペクトルから極大吸収の吸光度を測定する方法により測定することができる。
【実施例】
【0030】
実施例1〜6
第二剤としてDPPの二ナトリウム塩(以下、「DPPS」と云う)を用い、これと表1に示す各種の第一剤とを混合して鉄分判定用試薬を調製した。ここでは、第一剤と第二剤とを蒸留水に溶解し、鉄分判定用試薬を調製した。第一剤、第二剤および蒸留水の各使用量は、表1に記載の通りである。また、第二剤として用いたDPPSの特性は、次の通りである。
【0031】
◎二価鉄イオンと反応可能なpH範囲:2〜9
◎二価鉄イオンと反応して発色した場合の分光スペクトルにおける極大吸収:535nm
◎モル吸光係数:22,400M−1cm−1
【0032】
実施例7〜12
第二剤としてTPTZを用い、これと表1に示す各種の第一剤を混合して鉄分判定用試薬を調製した。ここでは、第一剤と第二剤とを0.1規定塩酸水溶液に溶解し、鉄分判定用試薬を調製した。第一剤、第二剤および0.1規定塩酸水溶液の各使用量は、表1に記載の通りである。また、第二剤として用いたTPTZの特性は、次の通りである。
【0033】
◎二価鉄イオンと反応可能なpH範囲:3.4〜5.8
◎二価鉄イオンと反応して発色した場合の分光スペクトルにおける極大吸収:595nm
◎モル吸光係数:23,000M−1cm−1
【0034】
【表1】
【0035】
評価1(鉄分の存否判定)
三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.1mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対し、各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加した。その結果、実施例1〜6の鉄分判定用試薬がそれぞれ添加された被試験水は、赤色へ変色し、また、実施例7〜12の鉄分判定用試薬がそれぞれ添加された被試験水は、青色へ変色した。また、蒸留水4ミリリットルに各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加したところ、いずれの蒸留水についても変色は観察されなかった。これらの結果によると、実施例1〜12の鉄分判定用試薬を用いれば、水中における鉄分の存否を簡単に判定することができる。
【0036】
評価2(鉄分濃度の測定)
三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.05mg/リットル、0.2mg/リットルおよび0.5mg/リットルにそれぞれ設定された三種類の被試験水を4ミリリットルずつ調製した。そして、これらの各被試験水に対して各実施例の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、そのときの変色を吸光光度法により調べた。この際の分光スペクトルおよび当該分光スペクトルにおける極大吸収波長の吸光度と三価鉄イオン濃度との関係に基づいて作成した検量線を図1〜図24に示す。各実施例と各図との対応関係は、表2の通りである。
【0037】
【表2】
【0038】
図1、図3、図5、図7、図9および図11によると、実施例1〜6の鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、535nm付近に極大吸収を有し、また、その吸光度は、三価鉄イオン濃度の高低により異なる(三価鉄イオン濃度が高いほど吸光度が大きく、三価鉄イオン濃度が低いほど吸光度が小さい)ことがわかる。そして、図2、図4、図6、図8、図10および図12によると、図1、図3、図5、図7、図9および図11の分光スペクトルに基づいてそれぞれ作成された検量線は、相関係数(R2)がほぼ1であり、信頼性が極めて高い。
【0039】
また、図13、図15、図17、図19、図21および図23によると、実施例7〜12の鉄分判定用試薬が添加された被試験水は、595nm付近に極大吸収を有し、また、その吸光度は、三価鉄イオン濃度の高低により異なる(三価鉄イオン濃度が高いほど吸光度が大きく、三価鉄イオン濃度が低いほど吸光度が小さい)ことがわかる。そして、図14、図16、図18、図20、図22および図24によると、図13、図15、図17、図19、図21および図23の分光スペクトルに基づいてそれぞれ作成された検量線は、相関係数(R2)がほぼ1であり、信頼性が極めて高い。
【0040】
以上の結果によると、被試験水の鉄分濃度測定のために実施例1〜12の鉄分判定用試薬が有用なことがわかる。
【0041】
評価3(保存安定性)
(実施例1〜6について)
実施例1〜6の鉄分判定用試薬について、保存安定性を調べた。ここでは、三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.5mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対して実施例1〜6の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、535nmの吸光度を測定した。ここで用いた鉄分判定用試薬は、調製直後のもの、55℃で5時間保存したもの、同温度で25時間保存したものおよび同温度で100時間保存したもの(実施例6を除く)である。結果を図25〜図30に示す。実施例1〜6と図との対応関係は表3の通りである。図25〜図30によると、実施例1〜5の鉄分判定用試薬は、調製直後のものと100時間保存したものとで吸光度がほぼ同じであり、保存安定性が良好である。
【0042】
【表3】
【0043】
また、実施例1〜5の鉄分判定用試薬については、上記の方法と同様にして、より長期間の保存安定性を調べた。結果を図31に示す。図31において、縦軸のモル吸光係数比は、被試験水において発色した第二剤のモル吸光係数(測定値)と第二剤のモル吸光係数の理論値との比(測定値/理論値)を意味し、数値が高いほど鉄分判定用試薬の保存安定性が良好なことを示している。
【0044】
図31によると、実施例1、実施例2および実施例3の鉄分判定用試薬は、55℃で30日間保存しても保存安定性が良好であり、保存安定性の点において特に優れていることがわかる。
【0045】
(実施例7〜12について)
実施例7〜12の鉄分判定用試薬について、保存安定性を調べた。ここでは、三価鉄イオン濃度が100mg/リットルである和光純薬工業株式会社製の鉄標準液を蒸留水で希釈し、三価鉄イオン濃度が0.5mg/リットルの被試験水を調製した。そして、この被試験水4ミリリットルに対して実施例7〜12の鉄分判定用試薬40マイクロリットルを添加し、595nmの吸光度を測定した。ここで用いた鉄分判定用試薬は、調製直後のもの、55℃で5時間保存したもの、同温度で25時間保存したものおよび同温度で100時間保存したもの(実施例10、12を除く)である。結果を図32〜図37に示す。実施例7〜12と図との対応関係は表4の通りである。図32〜図37によると、実施例7、9および11の鉄分判定用試薬は、概ね100時間程度保存した後でも吸光度が実質的に変化せず、保存安定性が良好である。
【0046】
【表4】
【0047】
また、実施例7、9および11の鉄分判定用試薬については、上記の方法と同様にして、より長期間の保存安定性を調べた。結果を図38に示す。図38において、縦軸のモル吸光係数比は、図31と同じ意味である。図38によると、実施例7の鉄分判定用試薬は、55℃で30日間保存しても保存安定性が良好であり、保存安定性の点において特に優れていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例の評価2において、実施例1の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図2】実施例の評価2において、実施例1の試薬について作成した検量線を示す図。
【図3】実施例の評価2において、実施例2の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図4】実施例の評価2において、実施例2の試薬について作成した検量線を示す図。
【図5】実施例の評価2において、実施例3の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図6】実施例の評価2において、実施例3の試薬について作成した検量線を示す図。
【図7】実施例の評価2において、実施例4の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図8】実施例の評価2において、実施例4の試薬について作成した検量線を示す図。
【図9】実施例の評価2において、実施例5の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図10】実施例の評価2において、実施例5の試薬について作成した検量線を示す図。
【図11】実施例の評価2において、実施例6の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図12】実施例の評価2において、実施例6の試薬について作成した検量線を示す図。
【図13】実施例の評価2において、実施例7の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図14】実施例の評価2において、実施例7の試薬について作成した検量線を示す図。
【図15】実施例の評価2において、実施例8の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図16】実施例の評価2において、実施例8の試薬について作成した検量線を示す図。
【図17】実施例の評価2において、実施例9の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図18】実施例の評価2において、実施例9の試薬について作成した検量線を示す図。
【図19】実施例の評価2において、実施例10の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図20】実施例の評価2において、実施例10の試薬について作成した検量線を示す図。
【図21】実施例の評価2において、実施例11の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図22】実施例の評価2において、実施例11の試薬について作成した検量線を示す図。
【図23】実施例の評価2において、実施例12の試薬について測定した分光スペクトルを示す図。
【図24】実施例の評価2において、実施例12の試薬について作成した検量線を示す図。
【図25】実施例の評価3において、実施例1の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図26】実施例の評価3において、実施例2の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図27】実施例の評価3において、実施例3の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図28】実施例の評価3において、実施例4の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図29】実施例の評価3において、実施例5の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図30】実施例の評価3において、実施例6の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図31】実施例の評価3において、実施例1〜5の試薬についての長期保存安定性を調べた結果を示す図。
【図32】実施例の評価3において、実施例7の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図33】実施例の評価3において、実施例8の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図34】実施例の評価3において、実施例9の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図35】実施例の評価3において、実施例10の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図36】実施例の評価3において、実施例11の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図37】実施例の評価3において、実施例12の試薬についての保存安定性を調べた結果を示す図。
【図38】実施例の評価3において、実施例7、9および10の試薬についての長期保存安定性を調べた結果を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験水中における鉄分の存否を判定するための試薬であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、
前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤と、
を含む鉄分判定用試薬。
【請求項2】
前記第二剤は、常温において前記第一剤との反応性を実質的に有していないものである、請求項1に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項3】
前記第一剤が塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であり、かつ、前記第二剤が4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸およびそのアルカリ金属塩並びに2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれた一つの化合物である、請求項1または2に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項4】
前記第二剤として4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸の二ナトリウム塩を用い、前記第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれた一つを用いる、請求項3に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項5】
前記第二剤として2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンを用い、前記第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いる、請求項3に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項6】
被試験水中における鉄分の存否を判定するための方法であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む試薬を前記被試験水に対して添加する工程と、
前記試薬が添加された前記被試験水について、前記第二剤による発色の有無を判定する工程と、
を含む鉄分の存否判定方法。
【請求項7】
被試験水の鉄分濃度を測定するための方法であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む所定量の試薬を所定量の前記被試験水に対して添加する工程と、
前記試薬が添加された前記被試験水について、前記第二剤による発色量を測定する工程と、
を含む鉄分濃度の測定方法。
【請求項1】
被試験水中における鉄分の存否を判定するための試薬であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、
前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤と、
を含む鉄分判定用試薬。
【請求項2】
前記第二剤は、常温において前記第一剤との反応性を実質的に有していないものである、請求項1に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項3】
前記第一剤が塩酸ヒドロキシルアミン、ヒドロキノン、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトおよびアスコルビン酸からなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物であり、かつ、前記第二剤が4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸およびそのアルカリ金属塩並びに2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンからなる群から選ばれた一つの化合物である、請求項1または2に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項4】
前記第二剤として4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン二スルホン酸の二ナトリウム塩を用い、前記第一剤として塩酸ヒドロキシルアミン、チオ硫酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムからなる群から選ばれた一つを用いる、請求項3に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項5】
前記第二剤として2,4,6−トリス(2−ピリジル)−1,3,5−トリアジンを用い、前記第一剤として塩酸ヒドロキシルアミンを用いる、請求項3に記載の鉄分判定用試薬。
【請求項6】
被試験水中における鉄分の存否を判定するための方法であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む試薬を前記被試験水に対して添加する工程と、
前記試薬が添加された前記被試験水について、前記第二剤による発色の有無を判定する工程と、
を含む鉄分の存否判定方法。
【請求項7】
被試験水の鉄分濃度を測定するための方法であって、
三価鉄イオンを二価鉄イオンへ還元するための第一剤と、前記第一剤と混合された、二価鉄イオンと反応して発色する第二剤とを含む所定量の試薬を所定量の前記被試験水に対して添加する工程と、
前記試薬が添加された前記被試験水について、前記第二剤による発色量を測定する工程と、
を含む鉄分濃度の測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2006−284206(P2006−284206A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100923(P2005−100923)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】
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