説明

鉄塩を含む前処理および加水分解性タンニンを含む発色剤とを使用するケラチン繊維の染色

ケラチン繊維を前処理組成物および発色剤に順次に接触させる段階を含み、
i.前処理組成物が
(a)0.5から5重量%の還元剤を含む0.5から25重量%のpH2未満の鉄塩と、
(b)3から6のpH範囲で有効なバッファと、
(c)δhが1から10(MPa)1/2およびδpが10から25(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む浸透増進剤と、
を含み、
ケラチン繊維との接触前360分以内に成分(b)を(a)または(c)と混合し、
ii.発色剤が天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物から選択され、
接触順序が任意の順番である、ケラチン繊維の染色方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維、特にヒト毛髪の変色を増進する方法およびキットに関する。
【背景技術】
【0002】
明細書中の従来技術に関する論議は、このような従来技術が当分野において広く知られていることまたは当分野の一般常識の一部を形成していることを認めたものであると考えられてはならない。
【0003】
毛髪の染色を望む人々の数はいまや増加している。毛髪全体に均一な色を得るためには、一時染毛料または半永久染毛料よりも永久染毛料のほうがよく使用される。これら一時染毛料および半永久染毛料の種類では付着する色素の量を消費者がコントロールすることができない。したがってたいていの人々は永久染毛料のほうを好む。
【0004】
染料溶液と発色溶液とを含む一般的に二剤型で使用されるいくつかの永久染毛組成物が存在する。これらは概して合成化学物質であり、毛髪に損傷作用を与える。染毛料を塗布する度毎に毛髪に損傷が与えられ、この損傷は累積する。毛髪繊維の構造に対する損傷に加えて、これらの染料の使用はまた、ある種の人々にアレルギー反応を引き起す。
【0005】
染毛方法によって毛髪に生じる損傷をできるだけ少なくする染毛組成物および染毛方法の開発が望まれているという事実を視野に入れ、タンニンと鉄塩とを使用することによって生成される黒色を使用して毛髪を永久的に染色するいくつかの研究が進められた。
【0006】
また、毛髪暗色化系として二段階方法を使用することも文献に知られている((EP0394930,Kao,1990),(JP04208214,Seihou Kikaku KK,1992)および(EP0327345,Beecham,1989))。
【0007】
また、過酸化水素による毛髪の脱色という後続段階が毛髪に与える損傷を少なくしまた皮膚に対する刺激を少なくするためにpH3から6の第一鉄塩で毛髪を前処理することも知られている。この発明はまた、鉄と反応して色を与えるタンニン酸または没食子酸のような色素によって染毛を行う後続段階を記載している。
【0008】
IN222788(Hindustan Unilever Limited,2004)は、pH3未満の第二鉄塩の溶液/懸濁液、および、天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物にケラチン繊維を順次に接触させることによってケラチン繊維を染色する方法を開示している。接触順序は任意の順番でよい。
【0009】
還元剤を含むpH2未満の鉄塩にケラチン繊維を接触させると鉄の配給が有意に増進されること、および、これと併用して3から6のpH範囲で有効なバッファを浸透増進剤の存在下で塗布前360分以内に使用すると加水分解性タンニンおよび/またはその分解生成物または誘導体の塗布によって生じる発色が増進されることがここに知見された。このようにしてわれわれは、従来技術のいずれにも開示されたことのないケラチン繊維の発色を増進する優れた配給系を同定した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0394930号明細書
【特許文献2】特開平04−208214号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第0327345号明細書
【特許文献4】IN222788
【発明の概要】
【0011】
本発明の1つの目的は、染色効果を増進するケラチン繊維の染色方法を開発することである。
【0012】
本発明の別の目的は、染色効果を増進する安定で安全で廉価な新規なケラチン繊維の染色方法を開発することである。
【0013】
本発明のまた別の目的は、様々な成分および使用説明書をキットの形態で提供することによって染毛方法を実行する染毛系を提供することである。
【0014】
本発明の第一の目的によれば、ケラチン繊維を前処理組成物および発色剤に順次に接触させる段階を含み、
i.前処理組成物が
(a)0.5から5重量%の還元剤を含む0.5から25重量%のpH2未満の鉄塩と、
(b)3から6のpH範囲で有効なバッファと、
(c)δhが1から10(MPa)1/2およびδpが10から25(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む浸透増進剤と、
を含み、
ケラチン繊維に接触させる前の360分以内に成分(b)を(a)または(c)と混合し、
ii.発色剤が天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物の一種以上から選択され、
接触順序が任意の順番である、ケラチン繊維の染色方法が提供される。
【0015】
本発明の別の目的によれば、
i.(a)0.5から5重量%の還元剤を含む0.5から25重量%のpH2未満の鉄塩を含む溶液/懸濁液と、
(b)3から6のpH範囲で有効なバッファと、
(c)δhが1から10(MPa)1/2およびδpが10から25(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む浸透増進剤と、
を含み、
(a)、(b)、(c)が空間的に隔離して維持されている前処理組成物と、
ii.天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物から選択された発色剤と、
iii.使用説明書と、
を含む本発明の方法を実施するためのキットが提供される。
【0016】
2つの接触段階の間にケラチン繊維を洗浄するのが特に好ましい。洗浄後にケラチン繊維を乾燥するのがさらに好ましい。
【0017】
鉄溶液の配給は、δhが1から10およびδpが10から25であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒系を場合により、δhが10から30およびδpが5から15であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒系と併用することによって特に増進される。この文書のすべての箇所で報告したHansen溶解パラメーターδhおよびδpの単位は(MPa)1/2である。
【0018】
溶解パラメーターは、凝集エネルギー密度の平方根であると定義されており、材料の分子間引力の強さをあらわす。Hansenは、凝集エネルギーが分散性の永久双極子−双極子相互作用および水素結合力に起因すると想定し、δp=極性項およびδh=水素結合項とした。ここに報告した溶解度に関するデータは、Brandrup,J.およびImmergut,E.H.,eds.,Polymer Handbook,3rd ed.,John Wiley & Sons,New York,1989から得られた。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、還元剤を含むpH2未満の鉄塩と浸透増進剤とを3から6のpH範囲で有効なバッファの存在下で提供することによって加水分解性タンニンおよび/またはその分解生成物または誘導体の塗布によって生じる発色を増進するケラチン繊維の染色方法に関する。バッファは塗布の360分以上前に鉄塩、還元剤および浸透増進剤に混合されることはない。
【0020】
本発明の染色系は組合せキットの形態で適正に供給できる。
【0021】
ケラチン繊維を染色し、本発明の方法を実施するための諸成分を組合せキットの形態に包装する方法の様々な好ましい特徴を以下に詳述する。
【0022】
前処理組成物:
前処理組成物は、還元剤を含むpH2未満の鉄塩と3から6のpH範囲で有効なバッファ溶液と浸透増進剤とを含む。3つの成分はケラチン繊維との接触前360分以内の期間に混合する。これらの成分を塗布の60分前に混合するのが好ましく、塗布の30分前に混合するのがより好ましい。成分の混合直後に前処理組成物をケラチン繊維に塗布するときに最も有益な効果が得られる。
【0023】
鉄塩:
鉄塩は鉄の水溶性塩である。鉄塩は第二鉄または第一鉄の形態で提供され毛髪の前処理に使用される他の成分と混合する前はpH2未満に維持されるのが好ましい。塩は好ましくは塩化第一鉄または塩化第二鉄である。鉄塩は前処理組成物の0.5から25重量%、好ましくは1から10重量%、より好ましくは2から6重量%の範囲である。
【0024】
還元剤:
発色を増進するために、−0.4V未満、より好ましくは−0.77V未満の標準還元電位を有している還元剤群を鉄塩と共に使用する。還元剤は0.5から5重量%の範囲、より好ましくは0.5から2重量%の範囲で鉄塩の溶液/懸濁液に組込まれる。還元剤は好ましくは、ナトリウム、アンモニウム、カリウムもしくはカルシウムの亜硫酸塩、メタ亜硫酸水素塩、チオ硫酸塩もしくはジチオン酸塩、または、ホウ水素化ナトリウム、または、水素化リチウムもしくは水素化アルミニウムの一種以上から選択される。最も好ましくは還元剤が、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムまたはそれらの混合物である。
【0025】
バッファ:
適切なバッファは3から6の範囲のpKa値を有するバッファであろう。好ましいバッファは、リンゴ酸塩バッファ、コハク酸塩バッファ、酢酸塩バッファ、プロピオン酸塩バッファおよびマレイン酸塩バッファを含む。バッファは好ましくは前処理組成物の0.5から25重量%、より好ましくは1から10重量%、最も好ましくは前処理組成物の2から6重量%の量で添加される。
【0026】
浸透増進剤:
鉄溶液の配給は、δhが1から10およびδpが10から25であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒系である浸透増進剤を場合により、δhが10から30およびδpが5から15であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒と併用することによって特に増進される。
【0027】
δhが1から10およびδpが10から25であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒は好ましくは、ビシナルジオールの炭酸塩誘導体、たとえば、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレン、アセトニトリルから選択される。浸透増進剤は前処理組成物の5から50重量%、好ましくは前処理組成物の15から25重量%で組込まれる。
【0028】
鉄溶液の配給は、δhが10から30およびδpが5から15であるHansen溶解パラメーターを有している溶媒を組込むことによってさらに増進される。該溶媒は好ましくは、炭素原子数4以下のアルコール、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールもしくはそれらの異性体、または、エチレングリコールもしくはプロピレングリコールのようなビシナルジオールから選択される。第二浸透増進剤は好ましくは前処理組成物の1から20重量%、より好ましくは前処理組成物の5から15重量%で組込まれる。
【0029】
発色剤:
発色剤源は天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物である。
【0030】
本発明に好適な加水分解性タンニンは、没食子酸、タンニン酸、カテキンおよびポリフェノールから選択される。加水分解性タンニンの天然資源は、ターミナリア種(Terminalia)、たとえば、チェブラ(chebula)、ベレリカ(bellerica)、アルジェナ(arjuna)、茶、ムクナ プルーリエン(Mucuna pruriens)などの没食子および他の没食子酸に富む資源から得られる。加水分解性タンニンの資源が天然資源である場合、植物の葉、茎、種、花および/または実のエキスを本発明の目的に使用できる。
【0031】
生材料および乾燥材料のエキスは、植物からエキスを得るための一般に知られた方法によって得ることができる。種および葉が特に好ましい。非アルコール性エキスおよび好ましくは水性エキスを使用するのが好ましい。
【0032】
加水分解性タンニンは、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸またはそれらの混合物から選択されるのが好ましい。加水分解性タンニンが没食子酸メチルまたは没食子酸であるのがいっそう好ましい。
【0033】
分解生成物という用語は、没食子酸(1−カルボキシル−3,4,5−トリヒドロキシベンゼン)下部構造を含有する加水分解性タンニンの分解生成物またはその誘導体および混合物を意味する。
【0034】
抽出に使用した溶媒の除去は必須ではない。しかしながら、特に抽出のためにアルコールを使用したときは、当業界で使用される慣用の方法によって溶媒を完全に除去し、そのようにして得られた濃縮エキスを使用することが可能である。
【0035】
加水分解性タンニンの組込みレベルは0.01から40%の範囲である。
【0036】
製品形態:
適切な製品形態の例は、溶液、エマルジョン、マイクロエマルジョン、ジェル、クリーム、スプレーおよびローションを含む。
【0037】
組成物を配合するために界面活性剤、ゲル化/増粘剤、皮膚緩和剤、保湿剤、香料および保存料のような他の慣用の成分を所望に応じて組込むことができる。
【0038】
毛髪への塗布方法:
本発明はまた、記載してきた二成分系を用いた順次処理による染毛方法に関する。順次処理という用語は、成分をいずれか特定の順序で順番に塗布することを意味する。しかしながら、好ましい順序は、最初に前処理組成物の塗布、次いで加水分解性タンニンおよび/またはその分解生成物または誘導体を含む発色剤の塗布である。前処理組成物の溶液を塗布した後、好ましくは毛髪を水またはシャンプーまたは何らかの適切な組成物で洗浄し、好ましくは乾燥する。
【0039】
成分系はキット成分を塗布するための明解な使用説明書を伴うキットとして提供されるのが好ましい。
【0040】
塗布を繰り返すことも可能であるが、各成分が一回塗布されるのが好ましい。染毛のためには成分の一回塗布で十分であるが、好ましい実施態様においては所望のカラーレベルが得られるまで全方法を繰り返すこともできよう。
【0041】
本方法によって達成された染毛は永久性である。永久性という用語は、染毛料が水または慣用の界面活性剤によって除去されないことを意味する。上記の毛髪暗色化方法は暗い色調の黒に到達できる。
【0042】
キット:
本発明に使用されるキットは、紙、木および/またはプラスチックの包装材または金属プラスチックストリップから選択された容器であり、個々の成分、すなわち、還元剤を含む鉄塩、バッファおよび浸透増進剤と、加水分解性タンニンおよび/またはその分解生成物または誘導体を含む発色剤が別々に包装されている。印刷情報の形態の使用説明書は、諸成分を収容した包装材、ストリップもしくはポーチに配備されているかまたは独立の印刷紙片として与えられている。使用説明書は国語または地方もしくは地域の言語のいずれかで記載されている。
【0043】
場合により、溶液を供給するアプリケーターをキットに存在させてもよい。また、溶液の塗布に使用するための適切な一対の手袋をキットに配備してもよい。
【0044】
アプリケーター:
還元剤を含む鉄塩を塗布できる適切なアプリケーターは、バッファおよび浸透増進剤が貯蔵中は空間的に隔離して維持され、塗布直前にブレンドされるように設計できる。加水分解性タンニンおよび/またはその分解生成物または誘導体を含む発色剤は別個に包装され塗布される。
【0045】
以下の非限定実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の部およびパーセンテージは他に特定されていなければ重量基準の値である。
【0046】
(実施例)
前処理組成物および発色剤組成物に使用した材料およびそれらの供給元は以下の通りである。
【0047】
前処理組成物:
塩化第一鉄:Aldrich
亜ジチオン酸ナトリウム:Loba Chemie,Analytical
(還元剤)
プロピオン酸塩バッファ:プロピオン酸(LOBA Chemie)
水酸化カリウム(Ranbaxy)
100mlの1.5Mプロピオン酸塩バッファを得るために
50mlの6Mプロピオン酸と50mlの3M水酸化カリウム
とを混合した。
炭酸プロピレン:Lancaster
(浸透増進剤)
【0048】
発色剤組成物:
Terminalia chebula:Siris Impex
(市販の噴霧乾燥エキス)
没食子酸メチル:Meridian
亜硫酸ナトリウム:Qualigens
【0049】
以下に引証したすべての実施例に使用した発色剤溶液の組成は以下の通りであった:
Terminalia Chebulaエキス:1g
没食子酸メチル:1g
亜硫酸ナトリウム:0.4g
脱イオン水を加えて100mlにした。
【実施例1】
【0050】
発色に対するバッファの効果の証明
以下に記載の前処理組成物中に白髪ヘアピースを45分間温置した。
サンプル1:非処理、
サンプル2:100mlあたり
(i)塩化第一鉄−3.8g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
を含み脱イオン水で100mlにした前処理組成物で処理、
サンプル3:100mlあたり
(i)塩化第一鉄−3.8g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
(iv)pH5の1.5Mプロピオン酸塩バッファ(30ml)
を含み脱イオン水で100mlにした前処理組成物で処理。
【0051】
次に、ヘアピースをシャンプーで洗浄し、水ですすぎ、乾かした。
【0052】
ヘアピースを次に、発色剤溶液(上述)中で30分間温置した。ヘアピースを再びシャンプーで十分に洗浄し、水ですすぎ、乾かした後、sigma scanソフトウェアを使用して色度を測定した。色度は、0が黒、255が白を表す0から255のスケールで読取った。異なる2つの前処理組成物に関するデータを以下の表1に提示する。
【0053】
【表1】

提示されたデータは、バッファの添加が、得られた効果をバッファ非存在下の処理に比較して有意に増進したことを示す。
【実施例2】
【0054】
発色に対するバッファの混合時間の効果
前処理組成物の3つの成分は以下の通りであった。
(a)脱イオン水を使用して50mlにした3.8gの塩化第一鉄+0.9gの亜ジチオン酸ナトリウム、
(b)pH5.0の1.5Mプロピオン酸塩バッファ(30ml)、
(c)炭酸プロピレン−20ml
(a)、(b)および(c)を一緒に混合し、実験を行う前に、0分、60分、180分、360分および24時間という様々な時間維持した。
【0055】
ほぼ白髪のヘアピースを前処理組成物に60分間浸漬し、次にシャンプーで洗浄し、水ですすぎ、乾かした。
【0056】
ヘアピースを次に、発色剤溶液(上述)中で30分間温置した。ヘアピースをシャンプーで十分に洗浄し、水ですすぎ、乾かした後、sigma scanソフトウェアを使用して色度を測定した。色度は、0が黒、255が白を表す0から255のスケールで読取った。データを以下の表2に提示する。
サンプル6:非処理、
サンプル7:混合直後、
サンプル8:混合60分後、
サンプル9:混合180分後、
サンプル10:混合360分後、
サンプル11:混合24時間後。
【0057】
【表2】

データは、組成物を混合直後に塗布したときに最も暗い色の発現が得られたこと、時間間隔が長くなると色の発現が減退することを示した。
【0058】
(a)、(b)および(c)を塗布前360分以内に混合したときに得られた色はサンプル7と有意に違ってはいなかった。しかしながら、(a)、(b)および(c)の混合の24時間後に混合物を使用したとき、色の発現は多少減退していたがまだ許容範囲内であった。
【実施例3】
【0059】
発色に対する鉄塩の種類の効果
ほぼ白髪のヘアピースを以下に詳述する様々な鉄塩(EP0327345の実施例)を含む前処理溶液中で60分間温置した。
【0060】
サンプル12:非処理、
サンプル13:100mlあたり
(i)硫酸第一鉄アンモニウム−8.5g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
(iv)pH5.0の1.5Mプロピオン酸塩バッファ(30ml)
を含み、脱イオン水を使用して100mlにした前処理組成物、
サンプル14:100mlあたり
(i)硫酸第二鉄アンモニウム−8.0g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
(iv)pH5.0の1.5Mプロピオン酸塩バッファ(30ml)
を含み、脱イオン水を使用して100mlにした前処理組成物、
サンプル15:100mlあたり
(i)塩化第一鉄−3.8g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
(iv)pH5.0の1.5Mプロピオン酸塩バッファ(30ml)
を含み、脱イオン水を使用して100mlにした前処理組成物。
【0061】
ヘアピースを次にシャンプーで洗浄し、水ですすぎ、乾かし、発色剤溶液(上述)中で30分間温置した。ヘアピースをシャンプーで十分に洗浄し、水ですすぎ、乾かした。種々の前処理溶液に関するデータを以下の表に提示する(表2a)。
【0062】
【表3】

上の表で、グレースケール度およびR(赤)、G(緑)およびB(青)は標準0−255スケール上の数値である。グレースケール度を表すスケール上の数値0は「黒」を示し、数値255は「白」を示し、その中間にすべての灰色の濃淡が存在する。RGBスケール上の数値0は「黒」を示し、数値255は「赤」、「緑」または「青」を示す。RGBスケール上でたとえば「純粋な赤色」はR(赤)が255の数値、G(緑)およびB(青)が0の数値を有するであろう。純粋な「黒」はR、GおよびBのすべての0によって表され、純粋な「白」はR、GおよびBのすべての255によって表される。
【0063】
サンプル15のグレースケール度が格段に優れている(もっとも暗い色である)ことが看取されよう。しかしながら、褐色系髪色の主因となる赤色はサンプル13、14および15のすべてにおいて同等に良好である。
【0064】
このように塩化第一鉄は第二鉄または第一鉄のアンモニウム硫酸塩よりも良好な色を示した。
【実施例4】
【0065】
貯蔵安定性
鉄の存在下の浸透増進剤の貯蔵安定性を、炭酸プロピレンの加水分解の結果である二酸化炭素の発生を測定することによって試験した。前処理組成物は100mlあたり
(i)塩化第一鉄−3.8g
(ii)亜ジチオン酸ナトリウム−0.9g
(iii)炭酸プロピレン−20g
を含んでおり、脱イオン水を使用して100mlにした。
【0066】
前処理組成物をボトルに封入し、42℃の高温オーブンに貯蔵した。種々の貯蔵時間の経過後にヘッドスペースに蓄積した二酸化炭素(CO)の量をCOプローブで測定した。組成物のpHも測定した。データを表3に提示する。
【0067】
【表4】

データは前処理組成物が貯蔵したときに不安定でありCOを放出したことを示す。したがって、2つの成分を空間的に隔離することが必要であった。
【0068】
このようにして本発明は、本発明の目的を満たし、安定で安全で廉価な新規な染色系である染色系、および、染色効果を増進するケラチン繊維の染色方法を提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケラチン繊維を前処理組成物および発色剤に順次に接触させる段階を含み、
i.前処理組成物が
(a)0.5から5重量%の還元剤を含む0.5から25重量%のpH2未満の鉄塩と、
(b)3から6のpH範囲で有効なバッファと、
(c)δhが1から10(MPa)1/2およびδpが10から25(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む浸透増進剤と、
を含み、
成分(b)をケラチン繊維に接触させる前の360分以内に成分(a)または(c)と混合し、
ii.発色剤が天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物から選択され、
接触順序が任意の順番である、ケラチン繊維の染色方法。
【請求項2】
鉄塩が塩化第二鉄または塩化第一鉄またはそれらの組合せである請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項3】
成分(b)をケラチン繊維に接触させる前の60分以内に成分(a)または(c)と混合する請求項1または2記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項4】
成分(b)をケラチン繊維に接触させる前の30分以内に成分(a)または(c)と混合する請求項1から3のいずれか一項に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項5】
前記還元剤が−0.4V未満の標準還元電位を有する群から選択される請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項6】
前記還元剤が、亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムまたはそれらの混合物の1種以上から選択される請求項5に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項7】
前記発色剤が非アルコール溶液として提供される請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項8】
前記加水分解性タンニンが没食子酸、タンニン酸、カテキン、ポリフェノールおよびそれらの誘導体から選択される請求項1から7のいずれか一項に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項9】
前記加水分解性タンニンが没食子酸メチル、没食子酸またはそれらの混合物から選択される請求項8に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項10】
前記加水分解性タンニンの天然資源が、ターミナリア種(Terminalia)、たとえば、チェブラ(chebula)、ベレリカ(bellerica)、アルジェナ(arjuna)、茶、ムクナ プルーリエン(Mucuna pruriens)などの没食子および他の没食子酸に富む資源から選択される請求項1から9のいずれか一項に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項11】
2つの接触段階の間にケラチン繊維を洗浄する請求項1から10のいずれか一項に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項12】
前記浸透増進剤が、δhが10から30(MPa)1/2およびδpが5から15(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む第二溶媒系を含む請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法。
【請求項13】
i.(a)0.5から5重量%の還元剤を含む0.5から25重量%のpH2未満の鉄塩を含む溶液/懸濁液と、
(b)3から6のpH範囲で有効なバッファと、
(c)δhが1から10(MPa)1/2およびδpが10から25(MPa)1/2であるHansen溶解パラメーターを有している1種以上の溶媒を含む浸透増進剤と、
を含み、(a)、(b)、(c)が空間的に隔離して維持されている前処理組成物と、
ii.天然または合成の資源から得られた加水分解性タンニンまたはその分解生成物または誘導体またはそれらの混合物から選択された発色剤と、
iv.使用説明書と、
を含む、請求項1に記載のケラチン繊維の染色方法を実施するためのキット。

【公表番号】特表2012−510968(P2012−510968A)
【公表日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538924(P2011−538924)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/064768
【国際公開番号】WO2010/063533
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】