説明

鉄欠乏およびヘモクロマトーシスの検出法

絶対的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、機能的鉄欠乏、または潜伏性機能的鉄欠乏を検出するための新しい診断パラメータまたは診断指標が開示されている。パラメータは、RBCの大きさの係数、(MCV×MRV)1/2の式によって定義されるRSfi、または(MCV×MRV)/100の式によって定義されるRSf、(MCV×Hgb)/100の式によって定義される容積ヘモグロビン係数(VHf)、および(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義される容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)を含む。絶対的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、機能的鉄欠乏、または潜伏性機能的鉄欠乏を検出するために、これらのパラメータを使用する方法をさらに開示する。ヘモクロマトーシスを検出するために、RSfを使用する方法もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、赤血球および網状赤血球パラメータの特定の関数を使用する、鉄欠乏およびヘモクロマトーシスの検出の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
鉄欠乏(ID)は世界的規模で最も一般的な単一欠乏状態である。影響を受けた肉体労働をする個人の能力を低下させ、また子供の成長および学習の双方を減退させるので経済的に重要である。
【0003】
貧血を伴うまたは貧血を伴わない絶対的鉄欠乏、および機能的鉄欠乏(FID)は高頻度の病態であり、これらの患者は鉄欠乏赤血球生成を有する。絶対的鉄欠乏は体内鉄分総量の減少と定義される。鉄欠乏性貧血(IDA)は、鉄欠乏が赤血球生成を減退させ、貧血の発現を引き起こすほど十分に重度である場合に発生する。機能的鉄欠乏は体内鉄分総量が正常である、または増加したとしても、鉄が「閉止」され、赤血球の生成が得られない状態を表す。この状態は、慢性腎不全を有する血液透析中の患者に主に観察される。
【0004】
鉄状態は、血液学的指標および生化学的指標を使用して測定することができる。鉄状態のそれぞれのパラメータは、身体の異なる鉄区分における変化を反映し、異なるレベルの鉄除去で影響を受ける。特定の鉄測定には、ヘモグロビン(Hgb)、平均細胞容積(MCV)、ヘマトクリット値(Hct)、赤血球プロトポルフィリン、血漿鉄、トランスフェリン、トランスフェリン飽和率(TSAT)、血清フェリチン(SF)、ならび近年になって可溶性トランスフェリン受容体(sTfR)および赤血球分布幅(RDW)が含まれる。
【0005】
正常な鉄状態の標準値は、SFは100±60ng/mlならびにHgbは女性では12−17g/dlおよび男性では14−19g/dlである。潜伏性鉄欠乏の標準値は、SFは22ng/ml未満およびHgbは正常より若干低い。鉄欠乏性貧血の標準値は、SFは22ng/ml未満、Hgbは女性では12g/dl未満および男性では13g/dl未満である。
【0006】
ヘモグロビン(Hgb)は他のどんな鉄状態パラメータより長く使用されてきた。貧血が発現すると、それは鉄欠乏の重症度の定量的尺度を提供する。ヘモグロビン測定は便利で容易なスクリーニング方法であり、妊娠中または幼年期のような、鉄欠乏の有病率が高い場合にとりわけ有用である。鉄状態の尺度としてのヘモグロビンの使用を制限するものは、特異性の欠如であり(B12または葉酸欠乏症、遺伝性疾患、および慢性感染症などの因子が赤血球生成を制限するように)、また正常と鉄欠乏母集団との値における著しい重複に起因する相対的無感覚である。鉄欠乏性貧血を特定するために、ヘモグロビンは鉄状態のより選択的な測定とともに測定される。
【0007】
平均細胞容積(MCV)における減少は、貧血の発現開始とほとんど同時に鉄欠乏が重度になる場合に発生する。サラセミアおよび慢性疾患の貧血が解消されると、それは鉄欠乏の極めて特異的な兆候となる。カットオフ値の80flは、成人での正常下限値として許容される。
【0008】
赤血球分布幅(RDW)は、貧血の分類のための他のパラメータと組み合わせて近年使用されてきている。それは赤血球の大きさにおけるばらつきを反映し、赤血球不同症の微妙な度合いを検出するために使用することができる。RDWはRBCヒストグラムから直接算出される。血液学分析装置にて2つの異なる算出値が提供された。RDW−CVは、MCVで除した一標準偏差での分布曲線の幅の比率として測定される。RDW−SDは、20%の頻度レベルでの分布幅の直接測定である。通常、赤血球のための大きさの分布曲線は、10±1.5%のRDW−CV値および42±5(fl)のRDW−SDと非常に対称的である。細胞の大きさにおける比較的大きなばらつきを意味する高RDWは、大赤血球性か、または小赤血球性細胞の出現によりもたらされる。赤血球分布幅の増加は、鉄欠乏の最も初期の血液学的徴候であると見られる。
【0009】
現在のところ最も一般に使用される鉄状態パラメータは、トランスフェリン飽和率(TSAT)および血清フェリチン(SF)である。しかしながら、双方とも鉄状態の間接的尺度である。トランスフェリンは、貯蔵部位から赤血球前駆細胞へ鉄を輸送する、2つの鉄結合部位を含有する輸送タンパクである。TSAT(すなわち、鉄が占める総結合部位のパーセンテージ)は、赤血球生成に使用可能な鉄の尺度である。TSATは血清鉄を総鉄結合能(TIBC)、循環トランスフェリンの量で除し、100で乗じて計算する。フェリチンは、いくらかの量が血清中で遊離した状態で、細網内皮系(RES)内に主に含有される貯蔵タンパクである。鉄過剰の条件下で、フェリチン産生は血漿鉄における増加を相殺するために増加する。従って、血清中のフェリチン濃度は、貯蔵部での鉄の量を反映する。
【0010】
慢性腎疾患を有する患者については、TSATが20%未満およびSFが100ng/ml未満の場合に絶対的鉄欠乏が診断される場合がある。鉄状態パラメータが適切な鉄貯蔵を示すので、機能的鉄欠乏は診断がより困難な場合がある。FIDを定義する際に異なる基準があり、以下の表に示すように、それらのうち1つは、Kidney Disease Outcomes Quality Initiative−K/DOQI (非特許文献1)によって刊行されている。
【0011】
(Kidney Disease Outcomes、Quality Initiative K/DOQI(米国)による機能的鉄欠乏(FID)および絶対的鉄欠乏(AID)の定義)
【0012】
【化1】

トランスフェリン飽和率の使用を制限するものは、血清鉄のそれら、すなわち、広域日内変動および低特異性を反映することである。TSATはまた炎症性疾患においても減少する。トランスフェリン飽和率は、鉄状態の他の指標と併用して人口研究において一般に使用される。他方では、フェリチンは急性反応物質であるので、その血中濃度は慢性炎症、感染、悪性腫瘍および肝疾患の存在下で上昇する場合がある。アルコールの消費もまた、血清フェリチンを独立して上昇させることが示唆されてきた。
【0013】
近年、鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の有用性を有する、いくつかの新しい赤血球および網状赤血球パラメータが報告されてきた。前記パラメータのうち2つは、Bayer ADVIA(R)120血液学分析装置(非特許文献2)により報告された低色素性赤血球%(%Hypoと称される)およびCHr(網状赤血球ヘモグロビン含有量)である。CHrは式(CHr=MCVr×CHCMr)によって定義され、式中MCVrは平均網状赤血球細胞容積であり、CHCMrは、光学的細胞間ヘモグロビン測定によって取得される、網状赤血球の平均ヘモグロビン濃度である。
【0014】
網状赤血球は、寿命が1から2日だけの未成熟赤血球である。これらが最初に骨髄から遊離するとき、それらのヘモグロビン含有量の測定は、赤血球生成が直ちに利用できる鉄の量を提供することができる。これらの網状赤血球における正常より少ないヘモグロビン含有量は、需要に対して不十分な鉄供給の兆候である。これらの網状赤血球におけるヘモグロビンの量はまた、成熟赤血球でのヘモグロビンの量に相当する。CHrは近年、鉄欠乏および機能的鉄欠乏のための試験として多数の研究で評価されてきており、高感度および高度に特異的であることが発見されている。しかしながら、閾値が研究所および使用する機器に応じて異なるので、正確な閾値は設定されていない。
【0015】
エポエチンは赤血球の刺激的生産において有効であるが、ヘムに結合するための適切な鉄供給がなければ、赤血球は低色素、すなわち、ヘモグロビン含有量が不十分となるであろう。従って、鉄欠乏の状態では、骨髄を離れる赤血球の大幅なパーセンテージが、低いヘモグロビン値となるであろう。ヘモグロビン含有量が28g/dl未満の赤血球のパーセンテージを測定することによって、鉄欠乏を検出することができる。パーセンテージが10%より高い低色素性赤血球は、鉄欠乏と相関関係を有してきた。%Hypoは、光学的細胞間ヘモグロビン測定の基づくBayer ADVIA120血液学分析装置によって報告される。
【0016】
%HypoおよびCHrと相関関係を有すると最近報告された2つの他のパラメータは、Sysmex XE−2100血液学分析装置(Machin S.J.ら、Functional Iron Deficiency and New Red Cell Parameters on the Sysmex XE−2100,ISLH2001Industry−Sponsored Workshops,ISLH XIVth International Symposium.2001)によって報告されたRBC−YおよびRET−Yである。RBC−Yは、成熟赤血球集団内の前方光散乱ヒストグラムの平均値であり、RET−Yは、Sysmex XE−2100血液学分析装置での網状赤血球測定にて取得した網状赤血球集団内の前方光散乱ヒストグラムの平均値である。
【0017】
鉄欠乏の検出のために今までに使用されてきたその他のパラメータは、MRV/MCVの、または(MRV/MCV)における比率(dRと称する)であり、ここでMRVは平均網状赤血球細胞容積であり、MCVは平均赤血球容積である。通常、1.35より高いMRV/MCVの比率は、鉄欠乏の兆候であると見なされる。
【0018】
さらに、疾患の診断および治療を支援する点からの異なる側面では、疾患が発生する前に特定の血液学的状態を検出することが望ましい。潜伏性鉄欠乏(LID)は、月経に起因して、また時折貧弱な食生活に起因して、排卵期の女性において高頻度を有することがよく知られている。潜伏性鉄欠乏とは、鉄欠乏が存在するがまだ貧血ではないものを指す。一般集団における潜伏性機能的鉄欠乏(LFID)およびヘモクロマトーシス(HEM)が比較的に高頻度であることもまた、よく知られている。潜伏性機能的鉄欠乏とは、機能的鉄欠乏の貧血の前段階を指す。他方では、ヘモクロマトーシス、鉄過負荷による疾病の最も一般的な型は、身体に過度の量の鉄を吸収および貯蔵させる遺伝性疾患である。余分の鉄を臓器に蓄積し、臓器に損傷を引き起こす。治療をしなければ、疾病はこれらの臓器を不全にさせる可能性がある。臨床的に、予防的な処置を施すために、早期にこれらの状態を検出することが重要である。
【0019】
追加費用を伴わず、病態の早期検出を支援することができる、機器にて定期的に実行される血液分析の間に、自動血液学分析装置にて報告される既存の血液学的パラメータを使用して、絶対的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、機能的鉄欠乏、および潜伏性機能的鉄欠乏などの、鉄欠乏を検出することができることは望ましい。
【非特許文献1】Eknoyan Gら、Continuous quality improvement:DOQI becomes K/DOQI and is updated.National Kidney Foundation’s Dialysis Outcomes Quality Initiative.Am J Kidney Dis.2001年1月;37(1):179−194
【非特許文献2】Thomas Cら、Biochemical Markers and Hematologic Indices in the Diagnosis of Functional Iron Deficiency Clinical Chemistry(2002)48:7、1066−1076
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の要旨)
一側面では、本発明は、赤血球および網状赤血球の関数を使用して、絶対的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、機能的鉄欠乏、または潜伏性機能的鉄欠乏の検出の方法を提供する。
【0021】
一実施態様では、前記方法は、血液学分析装置にて前記患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに前記血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)および網状赤血球の平均細胞容積(MRV)を取得する工程と、前記MCVおよび前記MRVの積の関数として定義されるRBCの大きさの係数(RSf)を取得する工程と、前記RSfを所定の基準と比較する工程と、前記RSfが前記所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。本明細書では、RSfは(MCV×MRV)1/2の式によって定義されるRSfか、または(MCV×MRV)/100の式によって定義されるRSfである。
【0022】
その他の実施態様では、前記方法は、血液学分析装置にて前記患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに前記血液サンプルのMCVおよび総ヘモグロビン濃度(Hgb)を取得する工程と、MCVおよびHgbの積の関数として定義される容積ヘモグロビン係数(VHf)を取得する工程と、前記VHfを所定の基準と比較する工程と、前記VHfが前記所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。本明細書では、VHfは、(MCV×Hgb)/100の式によって定義される。
【0023】
さらなる実施態様では、前記方法は、血液学分析装置にて前記患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに前記血液サンプルのMCV、Hgb、および前記赤血球分布幅(RDW)を取得する工程と、MCV、HgbおよびRDWの関数として定義される容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)を取得する工程と、前記VHDWfを所定の基準と比較する工程と、前記VHDWf係数が前記所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。本明細書では、VHDWfは、(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義される。
【0024】
その他の側面では、本発明は、RSfを使用するヘモクロマトーシスの検出の方法を提供する。前記方法は、血液学分析装置にて前記患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに前記血液サンプルの前記MCVおよび前記MRVからRSfを取得する工程と、前記RSfを所定の基準と比較する工程と、前記RSfが前記所定の基準を満たす場合は、ヘモクロマトーシスの兆候を報告する工程とを含む。
【0025】
さらなる側面では、本発明は、上方で定義した血液学分析装置での関数または指標を生成する方法を提供する。
【0026】
一実施態様では、血液学分析装置での血液サンプルのRBCの大きさの係数(RSf)を生成する方法は、第一のサンプル混合物を形成するために血液サンプルの第一のアリコートと血液希釈剤を混合する工程、前記血液学分析装置にて前記第一のサンプル混合物を分析する工程、および赤血球の平均赤血球容積(MCV)を取得する工程と、第二のサンプル混合物を形成するために前記血液サンプルの第二のアリコートを網状赤血球試薬システムに暴露する工程、前記血液学分析装置にて前記第二のサンプル混合物を分析する工程、および網状赤血球の平均赤血球容積(MRV)を取得する工程と、取得したMCVおよびMRVを使用してRBCの大きさの係数(RSfまたはRSf)を取得する工程と、前記血液学分析装置での前記血液サンプルの前記RSfを報告する工程とを含む。
【0027】
その他の実施態様では、血液学分析装置での血液サンプルの容積ヘモグロビン係数(VHf)を生成する方法は、第一のサンプル混合物を形成するために血液サンプルの第一のアリコートと血液希釈剤を混合する工程、前記血液学分析装置にて前記第一のサンプル混合物を分析する工程、および赤血球の平均赤血球容積(MCV)を取得する工程と、第二のサンプル混合物を形成するために前記血液サンプルの第二のアリコートを試薬システムと反応させる工程、前記血液学分析装置にて前記第二のサンプル混合物を分析する工程、および総ヘモグロビン濃度(Hgb)を取得する工程と、取得したMCVおよびHgbを使用して容積ヘモグロビン係数(VHf)を取得する工程と、前記血液学分析装置での前記血液サンプルの前記VHfを報告する工程とを含む。
【0028】
この方法は、容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)を生成する工程をさらに含むことができ、ここで前記方法は、前記第一のサンプル混合物の分析から前記赤血球の分布幅(RDW)を取得する工程と、取得したMCV、Hgb、およびRDWを使用してVHDWfを取得する工程と、前記血液学分析装置での前記血液サンプルの前記VHDWfを報告する工程とを含む。
【0029】
本発明の利点は、本発明の例となる実施態様を示す添付図面と併せて、以下の説明から明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
一側面では、本発明は、赤血球および網状赤血球パラメータの特定の関数を使用する、鉄欠乏を検出するための方法を提供する。本明細書で使用する鉄欠乏の用語は、絶対的鉄欠乏(ID)、潜伏性鉄欠乏(LID)、機能的鉄欠乏(FID)および潜伏性機能的鉄欠乏(LFID)を含む。
【0031】
文献でしばしば鉄欠乏と称される、絶対的鉄欠乏は、体内鉄分総量の減少と定義される。鉄欠乏性貧血(IDA)は、鉄欠乏が赤血球生成を減退させ、貧血の発現を引き起こすほど十分に重度である場合に発生する。潜伏性鉄欠乏とは、鉄欠乏が存在するがまだ貧血ではないものを指す。他方では、機能的鉄欠乏は、体内鉄分総量が正常または増加しているが、鉄が赤血球の生成を得られない状態を定義する。この状態は、慢性腎不全を有する血液透析中の患者に主に観察される。潜伏性機能的鉄欠乏とは、機能的鉄欠乏の貧血の前段階を指す。上記のように、鉄欠乏の異なる型を有する個人は、鉄欠乏性赤血球生成の異なる程度を有する。
【0032】
一実施態様では、前記方法は、血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)および網状赤血球の平均細胞容積(MRV)の積の関数を使用し、本明細書ではそれは、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を含む鉄欠乏を検出するための、RBCの大きさの係数(RSf)を指す。より具体的には、方法は以下の工程、(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに血液サンプルのMCVおよびMRVを取得する工程と、(b)血液サンプルのRSfを取得する工程と、(c)RSfを所定の基準と比較する工程と、(d)RSfが所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。
【0033】
好ましい一実施態様では、RSfは(MCV×MRV)1/2の式によって定義され、本明細書ではRSfと称する。代替の実施態様では、RSfは(MCV×MRV)/100の式によって定義され、本明細書ではRSfと称する。所定の基準は通常、本発明の様々な実施態様にて以下に詳細に記載するように、特定の診断パラメータのカットオフ値である。頻繁に使用される一基準は、特定のパラメータまたは指標の受信者動作特性(ROC)分析のカットオフ値である。
【0034】
赤血球を測定するためには、血液サンプルは通常、サンプルチャンバまたは槽の中で希釈剤により実質上希釈する。非集中フロー開口を有するインピーダンス測定を使用して、血液サンプルは約6250:1の希釈比で希釈することができる。測定に集中フロー用フローセルを使用する場合は、希釈比は290:1など、大幅に低くてもよい。血液学分析装置にて測定する間に赤血球細胞容積および形態を維持するために、等張希釈剤を血液サンプルを希釈するのに使用する。通常、希釈剤は1つ以上のアルカリ性金属塩を含有する。様々な市販の等張血液希釈剤が、血液サンプルを希釈するために使用することができる。適切な例には、米国特許第4,521,518号、第4,528,274号、第5,935,857号および第6,706,526号に記載の希釈剤が含まれるが、それらに限定されない。
【0035】
伝導液中で懸濁される粒子または血球がフローセルまたは開口に浸透する場合は、電気信号またはパルスは、インピーダンスの増加に起因して測定することができる。電気パルスは、血液サンプルの血球の数を計数するために使用されてきた。他方では、パルス波形、パルス高およびパルス幅は、粒子の容積または大きさに直接関連し、測定された細胞の容積に換算することができる。異なる容積を有する2つ以上の異なる血球を含有するサンプルを測定する場合は、測定から取得したヒストグラムは、これらの血球の容積分布を表すことができる。DCインピーダンス測定装置を装備した血液分析装置による、血球の計数およびサイジングのために使用される検出方法および装置は、米国特許第2,656,508号、第3,810,011号および第5,125,737号に概して記載されており、それらの全体は参照することによって本明細書に組み込まれる。本明細書では、句「血球のサイジング」とは、細胞容積の測定を指す。
【0036】
別法として、低角光散乱測定もまた、血球の計数およびサイジングのために使用することができる。本明細書では、用語「低角光散乱測定」とは、入射光線から10度未満の範囲で測定される光散乱信号を指す。
【0037】
細胞容積測定では、細胞容積分布ヒストグラムを取得する。赤血球測定については、取得したヒストグラムは、赤血球分布ヒストグラムと称する。正常な血液サンプルについては、幅が狭い明確な赤血球分布、通常ガウス分布が取得される。臨床的に異常な血液サンプルについては、高容積側か、または低容積側への分布のずれ、非対称分布、高容積側か、低容積側、または両側への人口拡張など、分布の様々なひずみが観察されてきた。平均細胞容積(MCV)および赤血球分布幅(RDW)は、赤血球分布ヒストグラムから計算する。
【0038】
血液サンプルの総ヘモグロビン濃度(Hgb)は通常、血液サンプルのアリコートを細胞融解試薬と混合することによって、自動血液学分析装置にて測定される。細胞融解試薬に暴露した時点で赤血球は完全に融解し、またヘモグロビンはサンプル混合物へと遊離し、細胞融解試薬中のリガンドと接触した時点で色原体を形成する。ヘモグロビン色原体は次いで、所定の波長でUV−VIS分光学によって測定され、Hgbは前記測定から計算される。
【0039】
Hgbを測定するために適切な一融解試薬には、米国特許第4,521,518号、第4,528,274号、第5,935,857号および第6,706,526号に記載の希釈剤などの等張血液希釈剤、および米国特許第5,763,280号、第5,834,315号および第6,573,102号に記載の融解試薬などの融解試薬が含まれ、これらはその全体を参照することによって本明細書に組み込まれる。別法として、試薬システムはまた、米国特許第5,882,934号に記載の単一融解試薬であってもよく、その全体は参照することによって本明細書に組み込まれる。さらに、ヘモグロビンを測定するために当技術分野で知られている様々な細胞融解試薬は、本発明の目的のために使用することができる。
【0040】
血液サンプル中の網状赤血球は、光散乱、吸収、インピーダンスおよび/またはそれらの組み合わせを使用する、ルーチンサンプル分析におけるいくつかの高性能血液学分析装置にて測定および報告される。最も一般に報告されるパラメータには、網状赤血球パーセント(RET%)および絶対数(RET#)、網状赤血球容積(MRV)、ならびに未成熟網状赤血球比(IRF)が含まれる。具体的な測定方法にもよるが、他の網状赤血球パラメータもまた、血液学分析装置によって提供される。
【0041】
Coulter LH750またはCoulter GENTM血液学分析装置(Beckman Coulter社 カリフォルニア州フラートン)にて、血液サンプルのいくつかのアリコートは、異なる分析形態で同時に分析する。CBC形態では、血液サンプルの第一のアリコートは、第一のサンプル混合物を形成するために等張血液希釈剤によって希釈され、赤血球および血小板は第一のサンプル混合物から測定する。同時に、血液サンプルの第二のアリコートは、第二のサンプル混合物から第二のサンプル混合物を形成するために、血液希釈剤および細胞融解試薬と混合し、ヘモグロビンおよび白血球を測定する。様々な赤血球パラメータは、数ある中でも、平均細胞容積(MCV)、赤血球分布幅(RDW)、総ヘモグロビン濃度(Hgb)、および平均赤血球ヘモグロビン(MCH)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)などの微分パラメータを含む測定から報告される。これらの血液学分析装置で報告されるRDWは、MCVで除した一標準偏差での分布曲線の幅の比率として測定されるRDW−CVである。
【0042】
Retic形態では、血液サンプルの第3のアリコートを網状赤血球試薬システムに暴露する。より具体的には、血液サンプルの第3のアリコートを、メチレンブルーを含有する網状赤血球染色試薬と混合し、次いで第3のサンプル混合物を形成するために、融解試薬/定着試薬と混合する。メチレンブルー、非蛍光色素染料は、網状赤血球内の残留RNAを沈殿させることによって、成熟赤血球からの網状赤血球の分化を達成するために使用する。第3のサンプル混合物は次いで、VCS検出方法によって測定する。網状赤血球パラメータのうちで、MRV、平均球体化細胞容積(MSCV)、未成熟網状赤血球比(IRF)、ならびに高光散乱網状赤血球パーセントおよび絶対数(HLR%およびナンバー記号)が機器によって報告される。網状赤血球はまた、様々な市販の血液学分析装置にて知られているように、蛍光測定を使用して測定することができる。
【0043】
本明細書では、VCS検出方法または技術とは、集中フローセルに浸透する細胞によって生成される直流(DC)信号および高周波(RF)信号および中角光散乱(LS)信号の多次元測定を指す。これら3つの測定のうちで、DCおよびRF測定の双方は、伝導性媒質内に運ばれる細胞がフローセルに浸透するにつれて増加するインピーダンスを検出する、インピーダンス測定である。この技術は、米国特許第5,125,737号に十分に記載されており、その全体は参照することによって本明細書に組み込まれる。
【0044】
上述したように、Bayer血液学分析装置によって報告されたCHr(網状赤血球ヘモグロビン含有量)は近年、鉄欠乏および機能的鉄欠乏を検出するために使用されてきており、高感度および高度に特異的であることが発見されている。通常、CHrが28pg未満または29pg未満のカットオフ値が、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を決定するのに使用される。他方では、低色素性赤血球のパーセンテージもまた、鉄欠乏を決定するのに使用されてきた。%Hypoが5%未満を正常と見なす。2つの異なる基準、より具体的には、5%より高い、および10%より高い%Hypoが使用されてきた。10%より高い%Hypoが、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を定義するためにより一般に使用されてきた(Locatelli、Fら、Revised European best practice guidelines for the management of anaemia in patients with chronic renal failure, Nephrology and Dialysis Transplantation,第19巻、2004年5月(付録2))。
【0045】
実施例1は、CHrと比較して鉄欠乏を検出するためにRSfを使用する、本発明の方法を例示する。示すように、Coulter LH750およびGENS血液学分析装置にて、981の臨床全血サンプルを分析し、血液学分析装置にて報告されたMCVおよびMRVを使用して、それぞれの血液サンプルに対してRSfを計算した。同じ血液サンプルはまた、Bayer ADVIA120血液学分析装置にて分析した。RSfの受信者動作特性(ROC)分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を定義するための基準として28pg未満のCHrを使用して実行した。この基準を使用して、99のサンプルを異常と見なし、882を正常と見なした。
【0046】
図1は、取得したRSfのROC曲線示す。Y軸上で感度を描き(真陽性の比)、またX軸上で100特異性(偽陽性の比)を描く。完全な差別化のある試験は、真陽性の比が100%である(完全な感度)である場合、左上角を通過するROC曲線を有する。差別化のない試験のための理論曲線は、左下角から上右角まで45度の対角線である。曲線が上左角に接近するほど、試験の精度は高くなる。さらに、ROC曲線の下の領域(AUC)はまた、診断試験の臨床精度の公約数である。RSfのためのROC分析からのAUCは0.948であり、RSfがCHrと高度に相関関係を有することを示す。AUCおよびROC曲線の値は、RSfが絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の際にCHrと同様の診断能力を有することを示す。カットオフが102.3以下の状態で、RSfはそれぞれ、感度が91.9%、特異性が82.2%であった。
【0047】
ROC分析はまた、RSfのためにも実行した。RSfのAUCは0.948である。カットオフが104.73以下の状態で、RSfはそれぞれ、感度が91.9%、特異性が82.2%であった。示すように、RSfおよびRSfの双方に対するROC分析結果は同じであった。この実施例は、RSfおよびRSfが鉄欠乏の検出の際に実質上相当することを示す。本明細書では、カットオフとは、RSfおよびRSfのROC分析のカットオフ値を指し、それぞれ上述したように、MCVおよびMRVはフェムトリットル(fl)で表す。本明細書ではこれらの係数は、鉄欠乏を検出するための指標として使用する。
【0048】
さらに、カットオフ値は、異なる患者集団で異なってもよいことが理解されるであろう。例えば、血液透析中の腎不全の患者については、これらの患者が異常に高いMCVを有するので、RSfのカットオフは約105.1であることが発見されている。実施例1では、研究した患者集団は、サラセミアおよび溶血性貧血など他の状態を含むが、RSfのカットオフは102.3であることが分かる。CHrのための推奨カットオフは、使用する特定の血液学分析装置に応じて異なってもよいことがさらに留意される。比較研究では、比較対象の基準の設定もまた、カットオフ値に影響を与えることができる。しかしながら、既知の臨床的設定では、RSfまたはRSfのカットオフ値は経験的に決定することができる。
【0049】
MCVを測定する場合、測定するものは、血液サンプルを採取する前の120日間に生成された赤血球の平均の大きさまたは容積である(赤血球の平均寿命が縮まる場合を除く)ことが理解することができる。他方では、MRVを測定する場合、測定するものは、血液サンプルを採取する前の3日未満の期間内の、つい最近生成された赤血球の大きさまたは容積である。成熟赤血球および網状赤血球の双方において、90%を超える細胞内含有量はヘモグロビンであるので、これらの赤血球の大きさは、細胞のヘモグロビン含有量と直接相関関係を有する。従って、MCVおよびMRVの双方の積の関数として、RSfは網状赤血球および成熟赤血球の双方の細胞ヘモグロビン含有量を間接的に反映する。
【0050】
実施例1に例示するように、RSfは、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を検出するためにCHrと統計的に十分相関関係を有する。これらの結果は、RSfが絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の際に、CHrと同様の診断能力を有することを示す。RSfが鉄欠乏、または鉄欠乏性赤血球生成の条件下で、細胞的特徴を反映することを理解することができる。鉄欠乏では、2つの異常な細胞特性、血色素減少症(赤血球および網状赤血球における低いヘモグロビン値)および小赤血球症(低赤血球および網状赤血球容積)が通常観察される。鉄欠乏を検出する際、RSfは、網状赤血球および赤血球の双方の細胞の大きさおよびヘモグロビン含有量の減少を知らせる一方で、CHrは、網状赤血球ヘモグロビン含有量の減少、すなわち、低色素性網状赤血球を知らせる。従って、RSfおよびCHrの双方が、鉄欠乏、または鉄欠乏性赤血球生成の条件下で細胞的特徴を反映する。
【0051】
さらに、さらなる実施態様では、RSfはまた、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を決定するための他の生化学的指標と併せて使用することができる。表1は、sTfR/logフェリチンとともにRSfを使用する実施例を例示する。本明細書では、sTfRは可溶性トランスフェリン受容体である。sTfR−F指標と称する、sTfR/logフェリチンは、機能的鉄欠乏の診断において臨床的に使用されてきた。
【0052】
(表1.血液透析中、慢性腎疾患を有する患者に対する診断基準)
【0053】
【表1】

さらなる実施態様では、本発明の方法は、絶対的鉄欠乏、潜在的鉄欠および機能的鉄欠乏を含む、鉄欠乏を検出するために、本明細書では容積ヘモグロビン係数(VHf)と称する、MCVおよびHgbの積の関数を使用する。小球性貧血は鉄欠乏に起因する典型的な病態であるので、この関数は小球性貧血関数(MAf)とも称する。より具体的には、方法は以下の工程、(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに血液サンプルのMCVおよびHgbを取得する工程と、(b)血液サンプルのVHfを取得する工程と、(c)VHfを所定の基準と比較する工程と、(d)VHfが所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。好ましい実施態様では、VHfは、(MCV×Hgb)/100の式によって定義される。
【0054】
実施例1は、Bayer ADVIA120血液学分析装置によって報告されるCHrと比較して、絶対的鉄欠乏または機能的鉄欠乏を検出するためにVHfを使用する方法を例示する。VHfは、Coulter LH−750血液学分析装置にて報告されるMCVおよびHgbを使用して、1230の臨床全血サンプルのために計算した。VHfのROC分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を定義するための基準として28pg未満のCHrを使用して実行した。この基準を使用して、177のサンプルを異常と見なし、1053を正常と見なした。図2は、取得したVHfのROC曲線を示す。ROC分析からのAUCは0.921であり、VHfがCHrと高度に相関関係を有することを示す。AUCおよびROC曲線の値は、VHfが絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の際にCHrと同様の診断能力を有することを示す。カットオフが9.0未満の状態で、VHfはそれぞれ、感度が88.7%、特異性が84.8%であった。本明細書では、カットオフとは、(MCV×Hgb)/100の式によって定義されるVHfのROC分析のカットオフ値であり、MCVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはデシリットル当たりのグラム(g/dl)で表す。本明細書ではこの係数は、鉄欠乏を検出するための指標として使用する。カットオフ値は使用する機器および患者集団に応じて異なることができるので、それは既知の臨床的設定において決定できることが留意される。
【0055】
実施例2は、Bayer ADVIA120血液学分析装置によって報告される%Hypoと比較して、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を検出するためにVHfを使用する方法をさらに例示する。VHfのROC分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を定義するための基準として10%より高い%Hypoを使用して、247の臨床全血サンプルにて実行した。VHfのAUCは0.834である。カットオフが10.2未満の状態で、VHfはそれぞれ、感度が81%、特異性が77%であった。これらの結果は、VHfが絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の際に、%Hypoと同様の診断能力を有することを示す。さらに、患者の血清フェリチン濃度およびTSAT値とは無関係に、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を検出するために使用できることが発見された。
【0056】
さらに、実施例4は、排卵期の、非貧血性女性における潜伏性鉄欠乏を検出するためにVHfを使用する実施例を示す。示すように、211の排卵期の、非貧血性女性のグループにおけるVHf値は、正常と潜伏性鉄欠乏の女性との間で統計的有意差を有する。これらの結果は、VHfが潜伏性鉄欠乏を検出するために使用できることを示す。
【0057】
その上さらなる実施態様では、本発明は、本明細書では容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)と称する、MCV、HgbおよびRDWの関数を使用して、絶対的鉄欠乏、機能的鉄欠乏、および潜伏性機能的鉄欠乏を含む、鉄欠乏を検出するための方法を提供する。方法は以下の工程、(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析する工程、ならびに血液サンプルのMCV、RDWおよびHgbを取得する工程と、(b)取得したMCV、RDWおよびHgbを使用して血液サンプルのVHDWfを取得する工程と、(c)VHDWfを所定の基準と比較する工程と、(d)VHDWfが所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程とを含む。好ましい実施態様では、VHDWfは、(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義される。
【0058】
実施例3は、基準として10%より高い%Hypoを使用して、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏を検出するためにVHDWfを使用する方法を例示する。VHDWfのROC分析は、異常を定義するための基準として10%より高い%Hypoを使用して、166の臨床全血サンプルにて実行した。この基準を使用して、64のサンプルを異常と見なし、102を正常と見なした。図3Aは、ROC曲線を示す。ROC分析からのAUCは0.832であり、カットオフが5.0以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が85.9%、特異性が66.7%であった。本明細書では、カットオフとは、(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義されるVHDWfのROC分析のカットオフ値であり、MCVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはデシリットル当たりのグラム(g/dl)で表し、RDWはパーセンテージで表す。本明細書ではこの係数は、鉄欠乏を検出するための指標として使用する。
【0059】
VHDWfのさらなるROC分析は、異常を定義するための基準として5%より高い%Hypoを使用して実行した。この基準を使用して、89のサンプルを異常と見なし、77を正常と見なした。図3Bは、取得したROC曲線を示す。AUCは0.857であった。カットオフが5.8以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が91.0%、特異性が71.4%であった。これらの結果は、VHDWfが高感度であり、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出において、%Hypoと同様の能力を有していることを示す。
【0060】
実施例4は、排卵期の、非貧血性女性における潜伏性機能的鉄欠乏を検出するためにVHDWfを使用する実施例を示す。示すように、211の排卵期の、非貧血性女性のグループにおけるVHDWf値は、潜伏性機能的鉄欠乏の女性と正常な女性との間で統計的有意差を有した。図4は、潜伏性機能的鉄欠乏を検出するためのVHDWfのROC曲線を示す。潜伏性機能的鉄欠乏の検出については、AUCは0.80であり、カットオフが12.04以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が86.7%、特異性が78.7%であった。この結果は、VHDWfが潜伏性機能的鉄欠乏を検出するために使用できることを示し、この理由のため、それはLFID係数(LFIDf)とも称される。
【0061】
その他の側面では、本発明は、ヘモクロマトーシス(HEM)を検出するためにRSfを使用する方法にさらに方向付けられる。実施例4は、排卵期の、非貧血性女性におけるヘモクロマトーシスを検出するためにRSfを使用する実施例を示す。示すように、211の排卵期の、非貧血性女性のグループにおけるRSf値は、ヘモクロマトーシスの女性と正常な女性との間で統計的有意差を有した。図5は、ヘモクロマトーシスを検出するためのRSfのROC曲線を示す。ヘモクロマトーシスの検出については、AUCは0.77であり、カットオフが92.4より高い状態で、RSfはそれぞれ、感度が100.0%、特異性が49.4%であった。これらの結果は、RSfがヘモクロマトーシスを検出するために使用できることを示す。
【0062】
鉄欠乏、機能的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、潜伏性機能的鉄欠乏およびヘモクロマトーシスを検出する際に、新しいパラメータRSf、VHfおよびVHDWfを使用する本発明の方法は、時間節約的および低コスト的手法であることが理解されるであろう。上述のように、これらのパラメータは、追加費用を伴わず、自動網状赤血球測定から取得することができる。患者から血液を採取してから約15分で血液学的分析結果を得ることができるので、ターンアラウンドタイムは非常に短い。
【0063】
以下の実施例は、本発明の実例となるものであり、特許請求の範囲で定義する、本発明の範囲を限定するよう解釈されるものでは決してない。手順の開示に従って、様々な他の要素および割合を用いてよいことが理解されるであろう。
【実施例】
【0064】
実施例1
貧血の共同研究を、ReCAMH、Catholic University Rome(イタリア)、University College Hospital、ロンドン(英国)、University Clinical Centre、リュブリャナ(スロベニア)、Maxima Medisch Centrum、フェルトホーフェン(オランダ)、Inselspital Universitatsspital、ベルン(スイス)を含み、欧州において5つの異なる参加センターで実行した。合計1230の全血サンプルをこれら5つのセンターで収集し、Coulter LH750またはCoulter GENS血液学分析装置(Beckman Coulter,Inc.カリフォルニア州、フラートン)、およびBayer ADVIA120または2120血液学分析装置(Bayer Diagnostics、ニューヨーク州、タリタウン)にて分析した。血液学分析装置は、製造業者が推奨する標準操作条件下で操作した。病態には、r−HuEPO/静脈内鉄治療下の慢性腎疾患血液透析患者、鉄欠乏性貧血、潜伏性鉄欠乏、および機能的鉄欠乏を含めた。血清フェリチンデータが入手可能な場合、鉄欠乏性貧血は、Hgbが12g/dl未満およびSFが22ng/ml未満と定義し、潜伏性鉄欠乏は、SFが22ng/ml未満およびHgbが12g/dlより多いと定義した。絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏はまた、28pg未満のCHrおよび/または10%より高い%Hypoを使用して定義した。本研究では、様々な正常な対象および臨床患者は、臨床化学試験を受けなかったことが留意される。
【0065】
Coulter LH−750またはCoulter GENS血液学分析装置(Beckman Coulter社 カリフォルニア州フラートン)にて、医師が網状赤血球パラメータを要請した場合は、CBC形態、およびRetic形態を使用してサンプルを分析した。第一のサンプル混合物を形成するために、血液サンプルの1.6μlの第一のアリコートを6250:1の希釈比でIsoton3Eによって希釈し、前記混合物はDCインピーダンス測定によって測定し、赤血球パラメータを生成した。血液サンプルの28μlの第二のアリコートを6mlのIsoton3Eで希釈し、次いで第二のサンプル混合物を形成するために1mlのLyse S III diffと混合した。第二のサンプル混合物の吸収を約540nmで測定し、Hgbを取得した。血液サンプルの34μlの第3のアリコートを0.2mlのRetic Stain試薬と混合し、次いで第3のサンプル混合物を形成するために2.0mlのRetic Lyseと混合し、前記混合物はVCS測定方法によって測定し、網状赤血球パラメータを取得した。上述の試薬はすべてBeckman Coulter,Incの製品であった。
【0066】
Coulter血液学分析装置にて報告されるMCVおよびMRVを使用して、981のサンプルのためにRSfを計算し、ここでMCVおよびMRVは双方ともフェムトリットル(fl)で表した。医師が血液検査を指示し、網状赤血球パラメータのためにすべてのサンプルを分析したわけではないことが留意される。RSfについての受信者動作特性(ROC)分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏または機能的鉄欠乏を定義するための基準として28pg未満のCHrを使用して実行した。この基準を使用して、99のサンプルを異常と見なし、882を正常と見なした。図1は、取得したRSfのROC曲線示す。RSfのためのROC曲線の下の領域(AUC)は0.948である。カットオフが102.3以下の状態で、RSfはそれぞれ、感度が91.9%、特異性が82.2%であった。
【0067】
ROC分析はまた、RSfのためにも実行した。RSfのためのROC分析からのAUCは、0.948であった。カットオフが104.73以下の状態で、RSfはそれぞれ、感度が91.9%、特異性が82.2%であった。RSfおよびRSfの双方に対するROC分析結果は同じであったことが留意される。この実施例は、RSfおよびRSfが鉄欠乏の検出の際に実質上相当することを示す。
【0068】
Coulter血液学分析装置にて報告されるMCVおよびHgbを使用して、それぞれの血液サンプルのためにVHfを計算し、ここでMCVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはデシリットル当たりのグラム(g/dl)で表した。VHfのROC分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏または機能的鉄欠乏を定義するための基準として28pg未満のCHrを使用して実行した。この基準を使用して、177のサンプルを異常と見なし、1053を正常と見なした。図2は、取得したVHfのROC曲線を示す。AUCは0.921であった。カットオフが9.0以下の状態で、VHfはそれぞれ、感度が88.7%、特異性が84.8%であった。
【0069】
実施例2
University College Hospital、ロンドン(英国)で、247の全血サンプルを収集し、Coulter LH−750およびBayer ADVIA120血液学分析装置それぞれにて分析した。血液学分析装置は双方とも、標準操作条件下で操作した。
【0070】
Coulter LH−750血液学分析装置にて報告されるMCVおよびHgbを使用して、それぞれの血液サンプルのためにVHfを計算し、ここでMCVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはg/dlで表した。VHfのROC分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏または機能的鉄欠乏を定義するための基準として10%より高い%Hypoを使用して実行した。AUCは0.834であった。カットオフが10.2以下の状態で、VHfはそれぞれ、感度が81%、特異性が77%であった。
【0071】
実施例3
University College Hospital、ロンドン(英国)で、166の全血サンプルを収集し、Coulter LH750血液学分析装置にて分析し、さらにBayer ADVIA120血液学分析装置にて分析した。血液学分析装置は、標準操作条件下で操作した。対象には、鉄の静脈内投与を伴うr−HuEPOの治療下の慢性腎疾患血液透析患者、鉄欠乏性貧血、および潜伏性鉄欠乏の患者を含めた。こられの状態の定義は、実施例1に記載したものと同じであった。
【0072】
Coulter LH−750血液学分析装置にて報告されるMCV、HgbおよびRDWを使用して、それぞれの血液サンプルのためにVHDWfを計算し、ここでMCVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはg/dlで表し、RDWはパーセンテージで表した。VHDWfのROC分析は、異常な、すわなち、絶対的鉄欠乏または機能的鉄欠乏を定義するための基準として10%より高い%Hypoを使用して実行した。この基準を使用して、64のサンプルを異常と見なし、102を正常と見なした。図3Aは、ROC曲線を示す。ROC分析からのAUCは、0.832であった。カットオフが5.0以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が85.9%、特異性が66.7%であった。
【0073】
VHDWfのさらなるROC分析は、異常を定義するための基準として5%より高い%Hypoを使用して実行した。この基準を使用して、89のサンプルを異常と見なし、77を正常と見なした。図3Bは、取得したROC曲線を示す。AUCは0.857であった。カットオフが5.8以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が91.0%、特異性が71.4%であった。この実施例が示すように、VHDWfは、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の際に高感度を有した。
【0074】
実施例4
12g/dlと13g/dlとの間のヘモグロビンを有する、年齢12から45歳の211人の連続無作為の女性から全血サンプルを収集した。標準操作条件下でCoulter LH750血液学分析装置にて血液サンプルを分析し、完全血球算定(CBC)および網状赤血球パラメータを取得した。血清鉄(Fe)、トランスフェリン(Tf)、血清フェリチン(SF)、トランスフェリン飽和率(TSAT)を含む鉄の分析結果を化学分析装置にて取得した。さらに、SFが100ng/mlより高い、正常または鉄の多いすべての女性については、遺伝性ヘモクロマトーシスの存在もまた分析した。
【0075】
本研究から、31の潜伏性鉄欠乏、7の潜伏性機能的鉄欠乏、9のヘモクロマトーシス、および164の正常な鉄の分析結果を識別した。本明細書では、潜伏性鉄欠乏はSFが22ng/ml未満であることにより定義され、潜伏性機能的鉄欠乏はTSATが20%未満およびSFが100ng/mより多いことにより定義され、ヘモクロマトーシスはSFが100ng/mlより多く、またTSATが50%より多いことにより定義される。さらに、先述のように、本研究に関与するすべての女性は、12と13g/dlとの間のHgbを有した。これら9人のヘモクロマトーシス患者の遺伝学研究は、H63Dに対して3つのヘテロ接合体変異および2つのホモ接合体変異、ならびにgen C282Tに対して1つのヘテロ接合体変異を示した。
【0076】
Coulter LH750血液学分析装置から報告されるMCV、MRV、RDWおよびHgbからのそれぞれのサンプルのためにRSf、RSf、VHfおよびVHDWfを計算し、ここでMCVおよびMRVはフェムトリットル(fl)で表し、Hgbはg/dlで表し、RDWはパーセンテージで表した。T−スチューデント検定およびROC分析をこれらのパラメータにて実行した。表2に示すように、正常な女性と潜伏性鉄欠乏の女性との間でVHfに統計的有意差が存在した。表3に示すように、正常な女性と潜伏性機能的鉄欠乏の女性との間でVHDWfに統計的有意差が存在した。表中のカットオフ値は、ROC分析から得ていることが留意される。
【0077】
図4は、潜伏性機能的鉄欠乏を検出するためのVHDWfのROC曲線を示す。潜伏性機能的鉄欠乏の検出については、ROC分析からのAUCは0.80であり、カットオフが12.04以下の状態で、VHDWfはそれぞれ、感度が86.7%、特異性が78.7%であった。
【0078】
【表2】

表4に示すように、RSfは正常な女性とヘモクロマトーシスを有する女性との間で統計的有意差を有した。RSfのROC分析を実行した。図5は、ヘモクロマトーシスを検出するためのRSfのROC曲線を示す。AUCは0.77であった。ヘモクロマトーシスの検出については、カットオフが92.4より高い状態で、RSfはそれぞれ、感度が100.0%、特異性が49.4%であった。RSfのROC分析もまた実行した。RSfのAUCは0.77であり、カットオフが96.1以上状態で、RSfはそれぞれ、感度が100.0%、特異性が49.4%であった。RSfおよびRSfの双方に対するROC分析結果は実質上同じであったことが留意される。
【0079】
とりわけ好ましい実施態様を参照して本発明を説明してきた。しかしながら、本発明の精神から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、添付の特許請求の範囲内にかかる変更を含むことを意図していることが理解されるであろう。本発明を詳細に説明し、添付図面に絵画的に示してきたとはいえ、これらは本発明の範囲に関し限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろその好ましい実施態様の適例であると解釈されるべきである。しかしながら、上記の明細書に記載し、添付の特許請求の範囲および法的同等物に定義した本発明の精神および範囲内で、様々な修正および変更を行うことができることが理解されるであろう。本明細書に引用した特許および他の刊行物のすべては、参照することにより明示的に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、実施例1に記載するように、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の基準としてCHrを使用した、RSfのROC曲線である。
【図2】図2は、実施例1に記載するように、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の基準としてCHrを使用した、VHfのROC曲線である。
【図3】図3Aおよび図3Bは、実施例3に記載するように、絶対的鉄欠乏および機能的鉄欠乏の検出の基準として、それぞれ10%より高い、および5%より高い%Hypoを使用した、VHDWfのROC曲線である。
【図4】図4は、潜伏性機能的鉄欠乏を検出するためのVHDWfのROC曲線である。
【図5】図5は、ヘモクロマトーシスを検出するためのRSfのROC曲線である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄欠乏の検出の方法であって、
(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析し、該血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)および網状赤血球の平均細胞容積(MRV)を取得する工程と、
(b)該MCVおよび該MRVの積の関数として定義されるRBCの大きさの係数(RSf)を取得する工程と、
(c)該RSfを所定の基準と比較する工程と、
(d)該RSfが該所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記RSfは、(MCV×MRV)1/2の式によって定義されるRSfである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記RSfは、(MCV×MRV)/100の式によって定義されるRSfである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄欠乏は、絶対的鉄欠乏、または機能的鉄欠乏を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
鉄欠乏の検出の方法であって、
(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析し、該血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)および総ヘモグロビン濃度(Hgb)を取得する工程と、
(b)該MCVおよび該Hgbの積の関数として定義される容積ヘモグロビン係数(VHf)を取得する工程と、
(c)該VHfを所定の基準と比較する工程と、
(d)該VHfが該所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項6】
前記VHfは、(MCV×Hgb)/100の式によって定義される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記鉄欠乏は、絶対的鉄欠乏、潜伏性鉄欠乏、または機能的鉄欠乏を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
鉄欠乏の検出の方法であって、
(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析し、該血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)、赤血球分布幅(RDW)および総ヘモグロビン濃度(Hgb)を取得する工程と、
(b)該MCV、該Hgbおよび該RDWの関数として定義される容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)を取得する工程と、
(c)該VHDWfを所定の基準と比較する工程と、
(d)該VHDWf係数が該所定の基準を満たす場合は、鉄欠乏の兆候を報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項9】
前記VHDWfは、(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記鉄欠乏は、絶対的鉄欠乏、機能的鉄欠乏、または潜伏性機能的鉄欠乏を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ヘモクロマトーシスの検出の方法であって、
(a)血液学分析装置にて患者の血液サンプルを分析し、該血液サンプルの赤血球の平均細胞容積(MCV)および網状赤血球の平均細胞容積(MRV)を取得する工程と、
(b)該MCVおよび該MRVの積の関数として定義されるRBCの大きさの係数(RSf)を取得する工程と、
(c)該RSfを所定の基準と比較する工程と、
(d)該RSfが該所定の基準を満たす場合は、ヘモクロマトーシスの兆候を報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
前記RSfは、(MCV×MRV)1/2の式によって定義されるRSfである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記RSfは、(MCV×MRV)/100の式によって定義されるRSfである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
血液学分析装置にて血液サンプルのRBCの大きさの係数(RSf)を生成する方法であって、
(a)血液サンプルの第一のアリコートと血液希釈剤を混合して、第一のサンプル混合物を形成して、該血液学分析装置にて該第一のサンプル混合物を分析し、そして赤血球の平均赤血球容積(MCV)を取得する工程と、
(b)該血液サンプルの第二のアリコートを網状赤血球試薬システムに暴露し、第二のサンプル混合物を形成し、該血液学分析装置にて該第二のサンプル混合物を分析し、そして網状赤血球の平均赤血球容積(MRV)を取得する工程と、
(c)工程(a)から取得された該MCVおよび工程(b)から取得された該MRVを使用して該RBCの大きさの係数(RSf)を取得する工程であって、該RSfは該MCVおよび該MRVの積の関数として定義される、工程と、
(d)血液学分析装置での該血液サンプルの該RSfを報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項15】
前記RSfは、(MCV×MRV)1/2の式によって定義されるRSfである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記RSfは、(MCV×MRV)/100の式によって定義されるRSfである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
血液学分析装置にて血液サンプルの容積ヘモグロビン係数(VHf)を生成する方法であって、
(a)血液サンプルの第一のアリコートと血液希釈剤を混合して、第一のサンプル混合物を形成し、該血液学分析装置にて該第一のサンプル混合物を分析し、そして赤血球の平均赤血球容積(MCV)を取得する工程と、
(b)該血液サンプルの第二のアリコートを試薬システムと反応させて、第二のサンプル混合物を形成し、該血液学分析装置にて該第二のサンプル混合物を分析し、そして総ヘモグロビン濃度(Hgb)を取得する工程と、
(c)工程(a)からの該MCVおよび工程(b)からの該Hgbを使用して該容積ヘモグロビン係数(VHf)を取得する工程であって、該VHfは該MCVおよび該Hgbの積の関数として定義される工程と、
(d)該血液学分析装置での該血液サンプルの該VHfを報告する工程と、
を含む、方法。
【請求項18】
前記VHfは、(MCV×Hgb)/100の式によって定義される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
容積ヘモグロビン/分布係数(VHDWf)を生成する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法であって、工程(a)は前記赤血球の分布幅(RDW)を取得する工程をさらに含み、工程(c)は前記MCV、前記Hgb、および該RDWを使用して該VHDWfを取得する工程であって、該VHDWfは該MCV、該Hgb、および該RDWの関数として定義される工程をさらに含み、また工程(d)は前記血液学分析装置での前記血液サンプルの該VHDWfを報告する工程をさらに含む、方法。
【請求項20】
前記VHDWfは、(MCV×Hgb)/(RDW×10)の式によって定義される、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−511861(P2009−511861A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532438(P2008−532438)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037087
【国際公開番号】WO2007/035916
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(507316789)ベックマン コールター, インコーポレイテッド (34)
【Fターム(参考)】