説明

鉄筋撮影用補助具

【課題】 確実かつ容易に鉄筋に着脱可能であり、工事現場記録撮影作業の大部分を一人で行うことができ、撮影時間の短縮によるコストダウンを図ることが可能な鉄筋撮影用補助具を提供する。
【解決手段】 現場記録写真の撮影の際に鉄筋Rに取り付けられて目印とされるマーカー本体2Aを有し、このマーカー本体2Aの正面側には彩色が施された識別部3が設けられているとともに、前記マーカー本体2Aの背面側には前記鉄筋Rを着脱可能に狭持する狭持部4が設けられており、前記狭持部4は、前記鉄筋Rの節Jに係止可能な間隔で縦方向に並列される複数の狭持腕41から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事や土木工事等の工事現場記録写真の撮影において用いられる鉄筋撮影用補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築工事や土木工事等において、鉄筋が規格通りに施工されているか否かを確認するために工事経過を正確に示す記録保存用の写真を取っておくことが義務づけられている。この場合、記録写真を見て施工状況を確認するときの検証作業を容易にするため、鉄筋にマーカーを取り付けて目印としたり、一緒に標尺を写り込ませて鉄筋間の距離を表示したり、黒板を写り込ませて記録を保持したりすることが一般的に行われる。また、撮影には標尺や黒板を持つ人等が別途必要であり、複数人の作業となっている。従来、このような作業の効率化を進めるために鉄筋撮影用のマーカーや標尺、あるいは標尺や黒板を保持する保持具がいくつか提案されている。
【0003】
例えば、特開2003−25258号公報では、幅が5cm、長さ6cmを標準としたロール状のゴム用マーク本体からなる鉄筋マークが開示されている(特許文献1)。この特許文献1に記載の発明によれば、ロール状のゴム用マーク本体は鉄筋に巻き付けられることにより密着して落ちなくなり、また、その鉄筋から簡単に取り外すことができるとされている。
【0004】
また、実開平3−76101号公報では、背面にゴム磁石を接着させた現場記録写真用繊維性巻尺が開示されている(特許文献2)。この特許文献2に記載の発明によれば、背面のゴム磁石が鉄筋にピッタリと磁着するため、巻尺を直線状に張った状態に保持することができるとされている。
【0005】
さらに、実開平5−36310号公報では、支柱の下端に複数の脚と、前記支柱に標尺を取り付けるための支持部とからなる標尺支持具が開示されている(特許文献3)。この特許文献3に記載の発明によれば、標尺を標尺支持具により起立させることにより、人手を少なくさせて、確実かつ明瞭に記録撮影することができるとされている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−25258号公報
【特許文献2】実開平3−76101号公報
【特許文献3】実開平5−36310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、鉄筋への取り付けや取り外しに際し、ロール状のゴム用マーク本体はその都度引き延ばさなければならず、手間や時間を要するという問題がある。また、数回使用することにより巻き付ける力が低下し、鉄筋から落ち易くなったり、ずれ易くなったりするという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に記載された発明においては、鉄筋とゴム磁石との接触面積が狭いため十分な磁着力を得られず、巻尺が落下したり、自重により撓んでしまい正確な長さが計測できないという問題がある。
【0009】
さらに、特許文献3に記載の発明においては、足場の悪い所では安定せず標尺が倒れてしまうという問題がある。また、標尺の位置決めの際の調整は支持具ごと動かさなければならず、手間や時間を要するという問題がある。さらに三脚の構造であるため高所での使用に適しない。また、同様な問題は黒板を保持する場合も存在している。
【0010】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、確実かつ容易に鉄筋に着脱可能であり、工事現場記録撮影作業の大部分を一人で行うことができ、撮影時間の短縮によるコストダウンを図ることが可能な鉄筋撮影用補助具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る鉄筋撮影用補助具は、現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて目印とされるマーカー本体を有しており、このマーカー本体の正面側には彩色が施された識別部が設けられているとともに、前記マーカー本体の背面側には前記鉄筋を着脱可能に狭持する狭持部が設けられており、前記狭持部は、前記鉄筋の節に係止可能な間隔で縦方向に並列される複数の狭持腕から構成されている点にある。
【0012】
本発明の一態様として、前記各狭持腕の縦方向の間隔が前記鉄筋の節の間隔とほぼ等しく形成されており、縦方向に隣設された前記各狭持腕によってそれらの間の前記鉄筋の節を狭持可能に構成されてもよい。
【0013】
また、本発明の一態様として、前記狭持腕の基端部には一対の係止爪が形成されているとともに、前記マーカー本体の背面側には前記係止爪を嵌入させて係止可能な係止溝が形成されており、前記狭持部を前記マーカー本体に対して着脱交換可能に構成されてもよい。
【0014】
また、本発明の一態様として、前記マーカー本体には連結孔が形成されており、この連結孔には他のマーカー本体に連結された連結紐が通されて結ばれるように構成してもよい。
【0015】
本発明に係る鉄筋撮影用補助具は、現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて鉄筋撮影用の標尺や黒板等を保持する保持具本体を有しており、この保持具本体の正面側には磁石が固定されているとともに、前記保持具本体の背面側には前記鉄筋を着脱可能に狭持する狭持部が設けられており、前記狭持部は、前記鉄筋の節に係止可能な間隔で縦方向に並列される複数の狭持腕から構成されている点にある。
【0016】
本発明の一態様として、前記各狭持腕の縦方向の間隔が前記鉄筋の節の間隔とほぼ等しく形成されており、縦方向に隣設された狭持腕同士によってそれらの間の前記鉄筋の節を狭持可能に構成されてもよい。
【0017】
また、本発明の一態様として、前記狭持腕の基端部には一対の係止爪が形成されているとともに、前記保持具本体の背面側には前記係止爪を嵌入させて係止可能な係止溝が形成されており、前記狭持部を前記保持具本体に対して着脱交換可能に構成されてもよい。
【0018】
また、本発明の一態様として、前記保持具本体には連結孔が形成されており、この連結孔には他の保持具本体に連結された連結紐が通されて結ばれるように構成してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、鉄筋撮影用補助具を確実かつ容易に鉄筋に着脱すことができるとともに、工事現場記録撮影作業の大部分を一人で行うことができて撮影時間の短縮によるコストダウンを効果的に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る鉄筋撮影用補助具の一実施形態として、現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて目印とされる鉄筋撮影用マーカー1Aを一例に挙げて説明する。図1は、本第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aの後方から見た斜視図であり、図2から図5は、それぞれ本第一実施形態の正面図、右側面図、平面図、および背面図である。なお、左側面図は右側面図と対称に表れ、底面図は平面図と対称に表れる。
【0021】
各図に示すように、本第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aは、円盤状に形成されたマーカー本体2Aと、このマーカー本体2Aの正面側に設けられた円形キャップ状の識別部3と、前記マーカー本体2Aの背面側に設けられて鉄筋Rを狭持する狭持部4とから構成されている。なお、マーカー本体2Aおよび識別部3は円盤状や円形キャップ状に限定されるものではなく、断面矩形状や断面多角形状等、適宜選択してよい。
【0022】
以下、各構成についてより詳細に説明すると、本第一実施形態におけるマーカー本体2Aは、図6および図7に示すように、ABS樹脂(Acrylonitrile butadiene styrene共重合構成樹脂)によって適当な厚みを有する円盤状に形成されている。このマーカー本体2Aの正面側には、識別部3を嵌入させるために前記マーカー本体2Aの外縁に沿って円形状にくり抜かれた識別嵌入凹部21Aが形成されている。そして、この識別嵌入凹部21Aの内壁面には、後述する識別部3の識別係止爪33の嵌入を容易にさせる嵌入テーパ溝22が左右に形成されている。この嵌入テーパ溝22の奥側には識別係止爪33を引っ掛けて係止させるための識別係止受面23が形成されている。
【0023】
また、図7に示すように、マーカー本体2Aの背面側には、狭持部4を取り付けるための狭持取付孔24が形成されている。この狭持取付孔24は、後述する狭持部4の左右一対の狭持取付脚43を縦方向に複数対嵌入させられるように左右一対で縦長状に開口されている。そして、これら狭持取付孔24の嵌入口縁部のうち外側の縦長状の縁部には、狭持取付脚43の先端に形成された狭持係止爪44を容易に滑り込ませられるように内方に傾斜されたテーパ状縁面25が形成されている。また、前記狭持取付孔24の奥側には、狭持係止爪44を引っ掛けて係止させるための狭持係止受面26が形成されている。
【0024】
また、図6および図7に示すように、マーカー本体2Aには、複数の鉄筋撮影用マーカー1Aを連結する連結紐Wを通すために、正面から背面にかけて貫通された連結孔27が形成されている。本第一実施形態では、金型による成型の際に必要な抜き孔を連結孔27として利用するため、前述した左右一対の嵌入テーパ溝22と重なる位置に形成される。但し、この位置や個数に限るものではないし、後述する識別部3の識別キャップ32までも貫通させた連結孔27としてもよい。また、必ずしも連結孔27として使用する必要はないし、連結紐Wを連結しなくてもよい。
【0025】
なお、本第一実施形態におけるマーカー本体2Aの素材はABS樹脂を用いているが、これに限定されるものではなく、その他の合成樹脂やアルミニウム合金などの金属、木材等適宜選択すればよい。
【0026】
つぎに、本第一実施形態における識別部3は、図8から図11に示すように、前述した識別嵌入凹部21Aに嵌入可能な外周壁を備えた筒状の識別嵌入凸部31と、この識別嵌入凸部31の上端から半径方向に拡開されたフランジを備えているとともにマーカー本体2Aの正面全体をほぼ覆うような傘状に形成された識別キャップ32とを有している。また、前記識別嵌入凸部31は、左右水平の位置で2カ所分断されており、分離された部位の先端をわずかに伸ばして外側に曲げて延出されることにより、全体として識別係止爪33を構成している。そして、この識別係止爪33は、嵌入テーパ溝22の傾斜度や識別嵌入受面23の形状に合わせた形状に形成されている。
【0027】
なお、識別キャップ32の形状は、前述した円形状に限定されるものではなく、楕円形状や多角形状等、適宜選択することが可能であるし、識別係止爪33の形状や係止方法についても同様に適宜変更してよい。
【0028】
また、前記識別部3の材質は、識別係止爪33を嵌入テーパ溝22に沿って撓ませて識別係止受面23に係止可能な程度に弾力性を有することが必要であるため、例えばPET樹脂(Poly Ethylene Terephthalate樹脂)等を採用しているが、これに限る必要はなく、適宜必要な機能を発揮しうる材質に変更してよい。また、本第一実施形態における識別部3は、記録写真における識別性を向上させるために塗料を含有させて任意の色彩が施されている。
【0029】
なお、本第一実施形態では、マーカー本体2Aに用いたABS樹脂と、識別部3に用いたPET樹脂とは、接着剤による接着が困難であるため、前述したように、識別係止爪33を識別係止受面23に係止させて前記識別部3を固定している。ただし、識別部3の固定方法はこれに限定されるものではなく、圧着や螺着等により固定してもよく、また別体ではなく一体成型により形成してもよい。
【0030】
また、上記塗料としては、一般的な色彩塗料に限らず、反射塗料や蓄光塗料等、様々な塗料が含まれる。また、識別キャップ32の表面に着色することによって彩色を施してもよい。また、識別キャップ32の色は鉄筋の種類や径に応じて適宜色分けして容易に判別できるようにしてもよい。
【0031】
つぎに、本第一実施形態における狭持部4について説明する。狭持部4は、図1および図5に示すように、弾力性を有する複数の狭持腕対41,41が縦方向に所定間隔を隔てて並列されている。本実施形態では、三組の狭持腕対41,41によって構成されているが、これに限るものではなく、二組あるいは四組以上の狭持腕対41,41によって構成してもよい。また、上下に隣接された各狭持腕対41,41の間隔は、それぞれの狭持腕41が鉄筋Rの節Jに係止可能に設けられている。
【0032】
また、各狭持腕対41,41は、図示しない基板に一体的に設けられてもよいが、本第一実施形態では、それぞれ別体の独立した基板に設けられており、各狭持腕対41,41ごとに交換が可能である。つまり、各狭持腕対41,41は、図12から図14に示すように、略矩形板状に形成された狭持基板42と、この狭持基板42の背面側から突出形成された左右一対の狭持腕41と、前記狭持基板42の正面側に突出形成された左右一対の狭持取付脚43とを有している。
【0033】
前記狭持基板42の形状は略矩形板状に限らず、適宜変更してよい。また、各狭持腕対41,41の間隔や各狭持腕41の湾曲度合いは、狭持する鉄筋Rの外径寸法に合わせて鉄筋Rを確実に狭持して落下しないように決定される。さらに各狭持腕41の先端には、鉄筋Rの狭持力を付与しやすいように楕円球状に膨拡された膨拡ヘッド45が形成されている。
【0034】
一方、一対の狭持取付脚43は、マーカー本体2Aに形成された一対の狭持取付孔24の間隔に合わせた間隔を隔てて設けられている。また、各狭持取付脚43は、狭持基板42の上下寸法と等しい縦長さに形成されており、その先端をそれぞれ外側に曲げられて狭持係止爪44が形成されている。そして、狭持係止爪44は、前記狭持取付孔24のテーパ状縁面25や狭持係止受面26の形状に合わせた形状に形成されている。
【0035】
また、狭持部4の材質は、鉄筋Rに対して適度な狭持力を発揮しうる弾性材により構成されており、例えばPET樹脂により構成できるが、これに限定されるものではない。
【0036】
なお、各狭持腕41は、鉄筋Rに対して着脱を繰り返して使用されるため、個別に破損しやすい。このため、本第一実施形態では狭持腕対41,41のそれぞれが着脱交換可能に別体として構成されているが、これに限られるものではなく、一体的な狭持部4としてマーカー本体2Aに着脱交換可能に構成してもよい。また、本第一実施形態のように狭持腕対41,41を別体に形成することで、鉄筋Rの節の間隔に合わせて上下の狭持腕対41,41間にスペーサを挟んで間隔を調整することが可能となる。
【0037】
また、本第一実施形態における各狭持腕対41,41は、左右の狭持腕41をそれぞれ平行に配置しているが、これに限られるものではなく、縦方向にずらして配置してもよい。たとえば、図15に示すように、鉄筋Rによっては、その節Jが鉄筋RのリブLを境界として縦方向にずれているものがあり、このような左右の高さが異なる鉄筋Rの節Jに合わせて各狭持腕41の高さを左右でずらして配置すれば、それぞれの狭持腕41が鉄筋Rの節Jに係止されるためずれ落ちにくい狭持力が得られる。
【0038】
さらに、狭持腕41を左右一対にして構成するのではなく、図16に示すように、単独の狭持腕41として平面視略C字形状に形成し、これら複数の狭持腕41を縦一列に所定の間隔を隔てて配置する構成としてもよい。
【0039】
なお、本第一実施形態におけるマーカー本体2A、識別部3および狭持部4は、それぞれ別体として形成されているが、これらを適宜一体的に成型してもよい。
【0040】
つぎに、本第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aの作用について説明する。
【0041】
まず、鉄筋撮影用マーカー1Aを製造する場合、マーカー本体2Aの正面側に識別部3を取り付けるとともに、前記マーカー本体2Aの背面側に狭持部4を取り付けて完成させる。マーカー本体2Aに識別部3を取り付ける場合、識別嵌入凸部31を識別嵌入凹部21Aに当てて押し込むことで、識別係止爪33が嵌入テーパ溝22に沿って嵌入され、当該識別係止爪33が識別係止受面23に係止されて取り付けを完了する。
【0042】
また、マーカー本体2Aに狭持部4を取り付ける場合、狭持取付脚43を狭持取付孔24に合わせて押し込むことで、狭持係止爪44が狭持取付孔24のテーパ状縁面25に沿って奥側に容易に滑り込み、当該狭持係止爪44が狭持係止受面26に係止されて取り付けを完了する。このようにして三組の狭持腕対41,41を順次取り付けることによって、縦方向に三組の狭持腕対41,41が並べられた狭持部4を完成させる。
【0043】
さらに、連結紐Wにより複数の鉄筋撮影用マーカー1Aを連結する場合、マーカー本体2Aに識別部3を取り付ける前に連結紐Wをマーカー本体2Aの連結孔27の背面側から挿入して、正面側で連結孔27に係止しうる結び目をつくることで、鉄筋撮影用マーカー1Aに連結紐Wを取り付ける。同様にして、連結紐Wの他端を他の鉄筋撮影用マーカー1Aの連結孔27に順次結びつけることにより、複数の鉄筋撮影用マーカー1Aを連結する。なお、連結紐Wによる複数の鉄筋撮影用マーカー1Aの連結方法は上記のものに限定されるものではなく、例えば、連結紐Wは接着剤により連結孔27に固定してもよい。また、一本の連結紐Wを用いて、その連結紐Wをマーカー本体2Aの連結孔の左右いずれか一方に背面側から挿入して他方の連結孔27から引き出し、さらに他の鉄筋撮影用マーカー1Aの連結孔27に通して端部を留めるようにしてもよい。
【0044】
つぎに、本第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aを鉄筋Rに取り付ける場合の各構成部の作用について説明する。図17は、本第一実施形態における鉄筋撮影用マーカー1Aを鉄筋Rに取り付けた場合の使用状態を示す背面側から見た斜視図である。図17に示すように、本第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aは、現場記録写真の撮影の際に所定の鉄筋Rに取り付けられて目印とされる。鉄筋Rに取り付ける場合、鉄筋撮影用マーカー1Aの各狭持腕対41,41の間に鉄筋Rの節Jと節Jとの間を押し当てて鉄筋Rに対して押し込むことにより、狭持腕対41,41は弾性変形して左右に拡開し、鉄筋Rの外周を狭持腕対41,41の中に抱え込む。これにより、各狭持腕対41,41の弾性力によって鉄筋Rの外周面を狭持するとともに、それぞれの狭持腕41やその先端の膨拡ヘッド45が鉄筋Rの節Jに引っかかることで係止し、鉄筋撮影用マーカー1Aが鉄筋Rに取り付けられる。
【0045】
また、狭持腕41の縦方向の間隔は鉄筋Rの節の間隔とほぼ等しく形成されているため、縦方向に配列された狭持腕41同士により上下から鉄筋Rの節Jを狭持する。これにより、鉄筋撮影用マーカー1Aに鉄筋Rの軸方向の負荷が与えられても、軸方向にずれにくくなる。なお、対をなさない単独の狭持腕41を使用した場合も狭持力の差は生じる可能性はあるが、同様の作用が得られる。
【0046】
一方、鉄筋撮影用マーカー1Aを鉄筋Rから取り外す場合には、鉄筋撮影用マーカー1Aの上下いずれか一方を支点にして他方を手前に引き離すようにすることで、簡単に鉄筋Rから取り外せる。
【0047】
また、本第一実施形態における識別部3および狭持部4は、それぞれ識別係止爪33および狭持係止爪44によってマーカー本体2Aと係止されることで取り付けられているため、必要に応じて適宜交換可能である。たとえば、狭持部4の狭持腕41は、鉄筋Rに繰り返し着脱される際に開閉を繰り返すため破損しやすいところ、この破損した狭持腕41のみを交換すればよい。あるいは、鉄筋Rの径や節Jの間隔に対応して狭持腕41を適宜好適なものに交換することも可能である。
【0048】
さらに、複数の鉄筋撮影用マーカー1Aを連結紐Wにより連結した場合、その連結紐Wは各鉄筋撮影用マーカー1Aを鉄筋Rから取り外したときや意図せず外れてしまったときに、バラバラにさせず、紛失や地面に落下して破損するのを防ぐ。
【0049】
以上のような鉄筋撮影用補助具の一実施形態である鉄筋撮影用マーカー1Aによれば、つぎのような効果が得られる。
1.鉄筋Rに容易に着脱することができる。
2.取り付けた鉄筋撮影用マーカー1Aが軸方向にずれたり、落ちたりしにくい。
3.狭持部4を任意に交換することによって径や種類の異なる鉄筋Rに容易に対応できる鉄筋撮影用マーカー1Aを提供することができる。
4.記録写真で検証する際に識別し易い。
5.連結紐Wで連結することにより、紛失や破損を防ぐことができる。
【0050】
つぎに、本発明に係る鉄筋撮影用補助具の他の実施形態として、現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて鉄筋撮影用の標尺や黒板等を保持する鉄筋撮影用保持具1Bを一例に挙げて説明する。図18から図21は、それぞれ本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bの正面図、右側面図、平面図、および背面図である。なお、左側面図は右側面図と対称に表れ、底面図は平面図と対称に表れる。以下、本第二実施形態に係る鉄筋撮影用保持具1Bの構成のうち、前述した第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aの構成と同一若しくは相当する構成については同一の符号を付して再度の説明を省略する。
【0051】
本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bは、円盤状に形成された保持具本体2Bと、この保持具本体2Bの正面側に取り付けられる保持部5と、前記保持具本体2Bの背面側に取り付けられて鉄筋Rを狭持する狭持部4とを有している。本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bは、鉄筋Rに取り付けられて標尺(スケール)Sや黒板等を保持するためのものであり、前述した鉄筋撮影用マーカー1Aの識別部3に代えて保持部5を設けた点に特徴がある。
【0052】
本第二実施形態における保持具本体2Bは、円盤状に形成されており、その正面側には保持部5である磁石51を嵌入させるために円盤形状にくり抜かれた磁石嵌入凹部21Bが形成されている。また、保持具本体2Bの背面側には、前述した第一実施形態の鉄筋撮影用マーカー1Aと同様、狭持部4の狭持係止爪44を嵌入させて係止可能な狭持取付孔24が所定間隔を隔てて形成されている。
【0053】
本第二実施形態における保持部5は、標尺Sや黒板を磁力によって保持するためのものであり、磁石嵌入凹部21Bに合わせて円盤状に形成された磁石51から構成される。この磁石51は主にネオジウムマグネットにより構成されている。前記磁石51の表面は標尺S等を保持しやすいように平面状に形成されている。また、前記磁石51は、保持具本体2Bの磁石嵌入凹部21Bに嵌入されるが、固定方法は種々選択することが可能であり、たとえば接着材を用いて前記磁石嵌入凹部21Bに固着される。
【0054】
なお、本第二実施形態で保持される標尺Sや黒板等は、鉄板などの磁性体が用いられる。仮に標尺S等がアルミニウムや木材等の磁性の弱い材料乃至磁性体ではない材料で形成されている場合、標尺S等の背面に鉄板などの磁性の強い部材を貼り付けて保持させたり、鉄製ケースに入れて保持させればよい。
【0055】
また、保持具本体2Bは、前述した鉄筋撮影用マーカー1Aのマーカー本体2Aと同一の金型によって形成することが可能であるため、嵌入テーパ溝22等が形成される場合があるが、前記磁石51の固着にあたって特に阻害はない。
【0056】
なお、本第二実施形態では、保持部5として磁石51を採用しているが、これに限る必要はなく、たとえば保持部5と標尺S等とにファスナーテープを貼付して保持する構成を採用してもよい。
【0057】
つぎに、本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bの作用について説明する。
【0058】
まず、保持部5である磁石51を保持具本体2Bに取り付ける場合を説明する。本第二実施形態における保持部5は、磁石嵌入凹部21Bの内側面に接着剤を塗布し、磁石51を磁石嵌入凹部21Bに押し込むように嵌入することで、保持具本体2Bに接着固定され取り付けを完了する。また、狭持部4は前述した鉄筋撮影用マーカー1Aと同様、狭持取付脚43を狭持取付孔24に挿入して狭持係止爪44を狭持係止受面25に係止させることで取り付けを完了する。
【0059】
つぎに、本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bを鉄筋Rに取り付け、かつ標尺Sを磁着させる場合の各構成部の作用について説明する。図22は、本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bを鉄筋Rに取り付けた場合の使用状態を正面から見た使用状態正面図である。図22に示すように、本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bは、狭持部4により現場記録写真の撮影の際に所定の鉄筋Rに取り付けられる。また、保持部5の磁石51により標尺Sや黒板を磁着させて保持する。これにより、別途、人手をかけることなく標尺Sを写真に写り込ませて鉄筋R間の距離を表示したり、黒板に書かれた現場の情報を写り込ませたりすることができる。
【0060】
また、標尺Sや黒板を本第二実施形態の鉄筋撮影用保持具1Bから取り外す場合は、標尺Sや黒板を磁石51から引き離すことにより、磁力が弱まって容易に取り外せる。さらに、完全に取り外さなくても標尺Sや黒板をずらして調整することも可能である。
【0061】
したがって、以上のような鉄筋撮影用補助具の他の実施形態である鉄筋撮影用保持具1Bによれば、以下のような効果を奏することができる。
1.標尺Sや黒板を任意の場所に容易に着脱可能であり、取り付け後の調整も容易であるため実用性が高い。
2.取り付けた鉄筋撮影用保持具1Bが軸方向にずれたり、落ちたりしにくい。
3.狭持部4を任意に交換することによって径や種類の異なる鉄筋に容易に対応できる鉄筋撮影用保持具1Bを提供することができる。
4.図22に示すように連結紐Wで連結することにより、取り外したときや意図せず外れたとき等に紛失や破損を防ぐことができる。
【0062】
なお、本発明に係る鉄筋撮影用補助具は、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0063】
例えば、図示しないが、マーカー本体2Aや保持具本体2Bの側面に凹みを設けて、背面側の狭持部4の方向を手の感触でわかるようにしてもよく、上下を示すマークを正面側に設けてもよい。これにより、背面側を見なくてもスムーズに取り付け作業を行うことができ、夜間の工事や暗い場所での工事にも好適である。
【0064】
また、本発明に係る鉄筋撮影用補助具は、工事現場の記録撮影以外であっても適宜適用することができる。例えば、建築・土木工事における土間コンクリートの水平の目印として使用したり、案内板や注意板の固定のために使用したり、電気配管等の軽量資材の固定のために使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る鉄筋撮影用補助具の一実施形態である鉄筋撮影用マーカーを示す斜視図である。
【図2】本第一実施形態を示す正面図である。
【図3】本第一実施形態を示す右側面図である。
【図4】本第一実施形態を示す平面図である。
【図5】本第一実施形態を示す背面図である。
【図6】本第一実施形態におけるマーカー本体を示す正面図である。
【図7】本第一実施形態におけるマーカー本体を示す背面図である。
【図8】本第一実施形態における識別部を示す正面図である。
【図9】本第一実施形態における識別部を示す右側面図である。
【図10】本第一実施形態における識別部を示す平面図である。
【図11】本第一実施形態における識別部を示す背面図である。
【図12】本第一実施形態における狭持部を示す平面図である。
【図13】本第一実施形態における狭持部を示す背面図である。
【図14】本第一実施形態における狭持部を示す右側面図である。
【図15】本第一実施形態における狭持腕の他の配置状態を示す背面図である。
【図16】本第一実施形態における狭持部の他の実施形態を示す平面図である。
【図17】本第一実施形態の使用状態を示す斜視図である。
【図18】本発明に係る鉄筋撮影用補助具の第二の実施形態である鉄筋撮影用標尺保持具を示す正面図である。
【図19】本第二実施形態を示す右側面図である。
【図20】本第二実施形態を示す平面図である。
【図21】本第二実施形態を示す背面図である。
【図22】本第二実施形態の使用状態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0066】
1A 鉄筋撮影用マーカー
1B 鉄筋撮影用保持具
2A マーカー本体
2B 保持具本体
3 識別部
4 狭持部
5 保持部
21A 識別部嵌入凹部
21B 磁石嵌入凹部
22 嵌入テーパ溝
23 識別係止受面
24 狭持取付孔
25 テーパ状縁面
26 狭持係止受面
27 連結孔
31 識別嵌入凸部
32 識別キャップ
33 識別係止爪
41 狭持腕
42 狭持基板
43 狭持取付脚
44 狭持係止爪
45 膨拡ヘッド
51 磁石
R 鉄筋
J 節
L リブ
W 連結紐
S 標尺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて目印とされるマーカー本体を有しており、
このマーカー本体の正面側には彩色が施された識別部が設けられているとともに、前記マーカー本体の背面側には前記鉄筋を着脱可能に狭持する狭持部が設けられており、
前記狭持部は、前記鉄筋の節に係止可能な間隔で縦方向に並列される複数の狭持腕から構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項2】
請求項1において、前記各狭持腕の縦方向の間隔が前記鉄筋の節の間隔とほぼ等しく形成されており、縦方向に隣設された前記各狭持腕によってそれらの間の前記鉄筋の節を狭持可能に構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記狭持腕の基端部には一対の係止爪が形成されているとともに、前記マーカー本体の背面側には前記係止爪を嵌入させて係止可能な係止溝が形成されており、前記狭持部を前記マーカー本体に対して着脱交換可能に構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、前記マーカー本体には連結孔が形成されており、この連結孔には他のマーカー本体に連結された連結紐が通されて結ばれている鉄筋撮影用補助具。
【請求項5】
現場記録写真の撮影の際に鉄筋に取り付けられて鉄筋撮影用の標尺や黒板等を保持する保持具本体を有しており、
この保持具本体の正面側には磁石が固定されているとともに、前記保持具本体の背面側には前記鉄筋を着脱可能に狭持する狭持部が設けられており、
前記狭持部は、前記鉄筋の節に係止可能な間隔で縦方向に並列される複数の狭持腕から構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項6】
請求項5において、前記各狭持腕の縦方向の間隔が前記鉄筋の節の間隔とほぼ等しく形成されており、縦方向に隣設された前記各狭持腕によってそれらの間の前記鉄筋の節を狭持可能に構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、前記狭持腕の基端部には一対の係止爪が形成されているとともに、前記保持具本体の背面側には前記係止爪を嵌入させて係止可能な係止溝が形成されており、前記狭持部を前記保持具本体に対して着脱交換可能に構成されている鉄筋撮影用補助具。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれかにおいて、前記保持具本体には連結孔が形成されており、この連結孔には他の保持具本体に連結された連結紐が通されて結ばれている鉄筋撮影用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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