説明

鉄製矢板およびその挿入方法

【課題】 鉄製矢板の地中への挿入をスムーズに行う。
【解決手段】 両側を親杭20にガイドされて地中に挿入される鉄製矢板10であって、鉄製矢板10の所定位置に取り付けられ、鉄製矢板10を挿入するリードパイル30の先端が挿入方向に対して係止される係止部11と、鉄製矢板10における挿入方向先端部に設けられ、鉄製矢板10を地中へ挿入するときには鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出し、鉄製矢板10を地中から引き抜くときには鉄製矢板10の板面10aを含む面内に格納される回動部材40とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄製矢板およびその挿入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建物の地下部分などを構築するために地面の一部を掘削すると、それまで安定していた地盤が掘削側に崩れるので、これを支えるために山留作業が行われる。
【0003】
この山留作業では、掘削領域に対して所定の間隔でH形鋼(親杭)を打設した後、当該領域よりやや広めに人の背丈程度(約1.5m)掘削する。次に、下から順に多数枚の木製の横矢板を親杭間に直列に設置し、ずれ止めの桟木やくさびを取り付ける。最後に、横矢板と地盤との間の空隙を埋め戻す。そして、掘削から埋め戻しまでの工程を最終掘削深さに達するまで繰り返す。
【0004】
このような工法では、地盤を掘削してから横矢板を設置しているために、横矢板を設置しようとすると土砂が崩れるおそれがあり、スムーズに横矢板を設置することができない場合がある。
【0005】
また、横矢板は人手により一枚一枚設置されるために、設置に手間がかかり作業効率がよいとは言えない。同様に、一度に最終掘削深さまで掘削することができないので、この点でも作業効率がよいとは言えない。
【0006】
さらに、掘削と埋め戻しとを繰り返せば、掘削が深くなるほど横矢板と地面との間の空隙を埋め戻すことが困難となって地中の深い部分に空隙が残ったりその部分の地盤が脆弱になることから、周辺地盤が沈下するおそれがある。
【0007】
そして、横矢板を縦方向に多数枚直列に設置するため、工事終了後に横矢板を引き抜き、回収することは不可能である。
【0008】
以上のような問題を解消するための技術として、例えば実公昭44−25225号公報(特許文献1)には、最終掘削深さの長さを有する鉄製の矢板(鉄製矢板)を用い、この矢板の打ち込み側先端に掛金を突設し、圧入柱の先端を掛け金に引っかけて圧入柱により矢板を地中に挿入していく技術が開示されている。
【0009】
この技術によれば、掘削前に矢板が埋設されているために、土砂の崩落を懸念することなく掘削作業を行うことができ、安全で作業効率がよくなる。また、矢板は圧入柱によりその先端に打ち込み力を与えることにより地中に引き込まれる形で挿入されるので、圧縮力がかからず高強度でなくてもよい。さらに、矢板を一度で最終掘削深さまで打ち込めるので作業効率がよい。
【特許文献1】実公昭44−25225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、鉄製矢板を地中に挿入する際に、鉄製矢板の板面と地面とのフリクションが大きくなり、スムーズに埋設していくことができない。
【0011】
そこで、本発明は、鉄製矢板の地中への挿入をスムーズに行うことのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の鉄製矢板は、両側を支持柱にガイドされて地中に挿入される鉄製矢板であって、鉄製矢板の所定位置に取り付けられ、鉄製矢板を挿入する挿入柱の先端が挿入方向に対して係止される係止部と、鉄製矢板における挿入方向先端部に設けられ、鉄製矢板を地中へ挿入するときには鉄製矢板の板面を含む面から突出し、鉄製矢板を地中から引き抜くときには鉄製矢板の板面を含む面内に格納される回動部材とを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の好ましい形態において、回動部材は、鉄製矢板における挿入方向先端部に所定の間隔を空けて溶接された複数の第1の鋼管と、棒状体が固定された第2の鋼管と、第2の鋼管を第1の鋼管の間に配置して第1の鋼管と第2の鋼管とを貫通し、第1の鋼管を介して第2の鋼管を鉄製矢板に回動可能に取り付ける支柱と、支柱の両端に取り付けられ、当該支柱の第1の鋼管および第2の鋼管からの離脱を阻止するストッパとを有することを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに好ましい形態において、棒状体には、当該棒状体が鉄製矢板の板面を含む面から突出するように回動した状態で鉄製矢板の挿入方向に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに好ましい形態において、回動部材は、鉄製矢板における挿入方向先端部の全長にわたって設けられていることを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに好ましい形態において、係止部は、鉄製矢板の板面における挿入方向先端の中央部に取り付けられていることを特徴とする。
【0017】
本発明のさらに好ましい形態において、挿入柱を鉄製矢板の板面に沿って通すガイド部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0018】
また、上記課題を解決するため、本発明の鉄製矢板の挿入方法は、所定の間隔を空けて複数の支持柱を地中に打設し、前述した鉄製矢板に、先端を係止部に係止して挿入柱を取り付け、鉄製矢板の両側が支持柱にガイドされるようにして挿入柱を地中に押し込むことにより鉄製矢板を地中の所定深さまで挿入し、埋設された鉄製矢板を地中に残して挿入柱を引き抜くことを特徴とする。
【0019】
そして、上記課題を解決するため、本発明の鉄製矢板の挿入方法は、所定の間隔を空けて地面に複数の第1の縦穴を掘削し、第1の縦穴に硬化材を注入するとともに支持柱を挿入し、第1の縦穴の間に第2の縦穴を掘削し、第2の縦穴に硬化材を注入し、前述した鉄製矢板に、先端を係止部に係止して挿入柱を取り付け、鉄製矢板の両側が支持柱にガイドされるようにして挿入柱を第2の縦穴内に挿入することにより鉄製矢板を地中の所定深さまで挿入し、埋設された鉄製矢板を地中に残して挿入柱を引き抜くことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0021】
すなわち、本発明によれば、鉄製矢板を地中へ挿入するときには、挿入方向先端部に取り付けられた回動部材の棒状体が鉄製矢板の板面を含む面から突出して地盤を切削するので、鉄製矢板挿入時における鉄製矢板の板面と地盤との摩擦が低減され、鉄製矢板の地中への挿入をスムーズに行うことがことが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、棒状体が鉄製矢板の板面を含む面から突出するように回動した状態で鉄製矢板の挿入方向に傾斜するテーパ面が形成されていれば、回動部材における地盤の切削抵抗がより小さくなり、鉄製矢板の地中への挿入を一層スムーズに行うことが可能になる。
【0023】
さらに、本発明によれば、鉄製矢板を引き抜くときには、回動部材40が鉄製矢板の板面を含む面内に格納されるので、引き抜き中において回動部材が地盤に対する引き抜き抵抗とならず、鉄製矢板の引き抜きもスムーズに行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添付図面において同一の部材には同一の符号を付しており、また、重複した説明は省略されている。なお、ここでの説明は本発明が実施される最良の形態であることから、本発明は当該形態に限定されるものではない。
【0025】
図1は本発明の一実施の形態である鉄製矢板を親杭およびリードパイルとともに示す正面図、図2は図1の背面図、図3は鉄製矢板に取り付けられた回動部材および係止部を示す側面図、図4は図1のA−A線に沿った断面図、図5は図4の一部を拡大して示す断面図、図6は図1のB−B線に沿った断面図、図7は図6の一部を拡大して示す断面図、図8は親杭に対する鉄製矢板の嵌り込み状態を示す断面図、図9は鉄製矢板に設けられた回動部材を示す斜視図、図10は図9の回動部材がとる2つの位置を示す斜視図、図11は鉄製矢板の挿入方法を構成するプロセスの一部を示す斜視図、図12は鉄製矢板の挿入方法を構成するプロセスの他の一部を示す斜視図、図13は図11および図12を経た鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図、図14は図13に続く鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図、図15は図14に続く鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図、図16は挿入された鉄製矢板の引き抜きを示す斜視図、図17は鉄製矢板が地中に挿入されている状態における回動部材および鉄製矢板が地中から引き抜かれている状態における回動部材を示す説明図、図18は本発明の他の実施の形態である鉄製矢板の挿入方法を示す説明図である。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施の形態における鉄鋼製の矢板つまり鉄製矢板10は、例えば建物の地下部分などを構築するために地面の一部を掘削して内部空間を形成する際、地盤が掘削側に崩れるのを防止してこれを支えるための山留作業に用いられるものであり、当該鉄製矢板10とH形鋼である親杭(支持柱)20により地中連続壁が形成される。
【0027】
すなわち、鉄製矢板10は、予め所定間隔を空けて地中に打設された親杭20に両側をガイドされ、断面H形を有するリードパイル(挿入柱)30に先導されるようにして地中に挿入される。
【0028】
このような鉄製矢板10には、鉄製矢板10を地中へ挿入するときには鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出し、引き抜くときには鉄製矢板10の板面10aを含む面内に格納される回動部材40が、挿入方向先端部に取り付けられている。なお、この回動部材40の詳細については後述する。
【0029】
鉄製矢板10の一方側の板面10aにおける挿入方向先端には、リードパイル30の先端が挿入方向に対して係止される係止部11が取り付けられている。係止部11は例えば山形鋼を所定の長さに切断して、あるいは溝形鋼を長さ方向に切断するとともに所定の長さに切断して、これを鉄製矢板10に溶接することにより、図3に示すように、側方から見て略L字形の形状を呈し、挿入方向後方に向かって開口するように板面10aに取り付けられている。また、図1および図4に示すように、係止部11は所定の間隔を空けて短手方向の2カ所に取り付けられている。
【0030】
図5に示すように、このような2つの係止部11の間に断面H形のリードパイル30のウエブ30aが位置するようにして一方のフランジ30bが嵌り込むことにより、リードパイル30は鉄製矢板10の挿入方向に対しては係止部11に係止されるが、挿入方向とは反対の方向に対しては離脱自在となる。
【0031】
なお、本実施の形態においては、係止部11は鉄製矢板10の板面10aにおける挿入方向先端の中央部に取り付けられているが、これよりも後方よりであってもよい。但し、実施の形態に示す位置に取り付ければ、鉄製矢板10の先端に打ち込み力が与えられて地中に引き込まれる形で挿入され、鉄製矢板10に圧縮力がかからないので望ましい。
【0032】
図1および図6に示すように、鉄製矢板10には、係止部11の取り付け位置から全長の略半分程度挿入方向後方にいった位置に、リードパイル30を係止部11に係止する際にこのリードパイル30のフランジ30bを鉄製矢板10の板面10aに沿って通すリードパイルフランジガイド(ガイド部材)12が設けられている。このリードパイルフランジガイド12は、図7に示すように、リードパイル30のウエブ30aとの干渉を回避しつつフランジ30bを挟み込む断面略L字形の形状となっており、フランジ30bを両側から挟み込んで横方向の動きを規制するためにフランジ30bの両側にそれぞれ配置されている。
【0033】
さらに、図1および図2に示すように、鉄製矢板10の挿入方向後端の中央部にはボルト孔13が2カ所に形成されている。リードパイル30には、このボルト孔13に対応するボルト孔31が形成されている。したがって、鉄製矢板10のボルト孔13とリードパイル30のボルト孔31とを位置合わせしてボルト止めすることにより、係止部11に係止されてリードパイルフランジガイド12に通されたリードパイル30は鉄製矢板10に固定される。
【0034】
そして、図1および図8に示すように、鉄製矢板10の対向する2つの挿入方向に沿った辺には、地中に打設された親杭20のフランジ20aを挟んで挿入時に両側をガイドするための親杭フランジガイド14が、それぞれ3カ所に設けられている。
【0035】
さて、前述したように、鉄製矢板10には、鉄製矢板10を地中へ挿入するときには鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出し、引き抜くときには鉄製矢板10の板面10aを含む面内に格納される回動部材40が、挿入方向先端部に取り付けられている。
【0036】
この回動部材40は、図9に示すように、鉄製矢板10における挿入方向先端部に所定の間隔を空けて溶接された複数の第1の鋼管41と、棒状体43が固定された第2の鋼管42と、第2の鋼管42を第1の鋼管41の間に配置して第1の鋼管41と第2の鋼管42とを貫通し、第1の鋼管41を介して第2の鋼管42を鉄製矢板10に蝶番状に回動可能に取り付ける支柱44とを有している。そして、支柱44の両端には、支柱44が第1の鋼管41および第2の鋼管42から離脱することを阻止するためのストッパ45が取り付けられている。
【0037】
このような回動部材40は、支柱44を支点にして回動することにより、図10に示すように、鉄製矢板10を地中へ挿入するときには棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出し(図10(a))、引き抜くときには、略90°回動して、棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面内に格納される(図10(b))。
【0038】
そして、棒状体43には、図示するように、棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出するように回動した状態(図10(a))で鉄製矢板10の挿入方向に傾斜するテーパ面43aが形成されている。
【0039】
なお、本実施の形態においては、回動部材40は鉄製矢板10における挿入方向先端部の全長にわたって設けられているが、一部に設けられていてもよい。
【0040】
また、本実施の形態においては、第1の鋼管41が3個設けられ、よってこの第1の鋼管41の間に配置される第2の鋼管42は2個設けられているが、第1の鋼管41は複数であればよく、2個あるいは4個以上であってもよい。したがって、第2の鋼管42は、第1の鋼管41が2個の場合には1個設けられる。
【0041】
このような鉄製矢板10の挿入方法について説明する。
【0042】
まず、掘削領域に対して所定の間隔で親杭20を打設する(図11)。なお、図11においては、1枚の鉄製矢板10の挿入を説明するため、2本の親杭20のみが図示されている。
【0043】
次に、前述した鉄製矢板10に、リードパイルフランジガイド12にリードパイル30のフランジ30bを通す。そして、リードパイル30の先端が係止部11に当たるまでこれをスライドさせ、鉄製矢板10のボルト孔13とリードパイル30のボルト孔31とを位置合わせしてボルト止めしてリードパイル30を鉄製矢板10に取り付ける(図12(a)、(b)、(c))。
【0044】
そして、杭打設用の重機(図示せず)を使用し、鉄製矢板10の両側が親杭20にガイドされるようにしてリードパイル30を地中に押し込み、鉄製矢板10を地中の所定深さまで挿入する(図13(a)、(b))。すなわち、重機でリードパイル30を把持してこれを例えば1m地中に押し込み、その後例えば1m上昇して再度リードパイル30を把持して例えば1m地中に押し込む。これを必要回数だけ繰り返す。
【0045】
このとき、鉄製矢板10は親杭フランジガイド14により親杭20のフランジ20aにガイドされながら地中に押し込まれるので、鉄製矢板10が親杭20から外れることなく、正確な位置に挿入される。
【0046】
また、リードパイル30が鉄製矢板10の先端に設けられた係止部11に係止することにより、鉄製矢板10の先端に打ち込み力が与えられて地中に引き込まれる形で挿入されるので、鉄製矢板10に圧縮力がかからず、高強度でなくても変形することがない。
【0047】
そして、鉄製矢板10を地中へ挿入するときには、図17(a)に示すように、挿入方向先端部に取り付けられた回動部材40の棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出するので、この回動部材40が接する地盤を切削することにより、鉄製矢板10挿入時における鉄製矢板10の板面10aと地盤との摩擦が低減され、鉄製矢板10の地中への挿入をスムーズに行うことができる。
【0048】
なお、棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面から突出するように回動した状態では鉄製矢板10の挿入方向に傾斜するテーパ面43aが形成されているので、回動部材40における地盤の切削抵抗がより小さくなり、鉄製矢板10の地中への挿入は一層スムーズに行われるようになっている。
【0049】
鉄製矢板10を地中の所定深さまで挿入したならば、リードパイル30と鉄製矢板10とを固定しているボルトを外し、埋設された鉄製矢板10を地中に残してリードパイル30を引き抜く(図14(a))。
【0050】
これにより、図15に示すように、鉄製矢板10の設置が完了する。このような鉄製矢板10の挿入を打設した親杭20間で順次行うことにより地中連続壁が形成される。そして、地中連続壁の内側を掘削すると内部空間が形成されるので、ここに所定の建造物等を構築する。
【0051】
建造物等を構築後には、図16に示すように、鉄製矢板10および親杭20を地中から撤去することができる。なお、撤去には、例えば引き抜き用の重機が用いられる。
【0052】
鉄製矢板10を引き抜くときには、図17(b)に示すように、回動部材40が略90°回動して、棒状体43が鉄製矢板10の板面10aを含む面内に格納される。したがって、鉄製矢板10と回動部材40とが直線状になるため、引き抜き中において回動部材40が地盤に対する引き抜き抵抗とならず、鉄製矢板10の引き抜きもスムーズに行うことができる。
【0053】
さて、以上では、鉄製矢板10を山留作業に用いた場合を説明したが、止水壁として用いることもできる。
【0054】
この場合には、図18に示すように、オーガーを用い、所定の間隔を空けて地面に複数の第1の縦穴51を掘削する(図18(a))。次に、第1の縦穴51にセメントミルク(硬化材)52を注入するとともに親杭20を挿入する(図18(b))。そして、第1の縦穴51の間に第2の縦穴53を掘削し、第2の縦穴53にもセメントミルク52を注入する(図18(c))。そして、前述した要領で容量で、鉄製矢板10の両側が親杭20にガイドされるようにしてこれを地中の所定深さまで挿入する。このとき、リードパイル30が第2の縦穴53内に挿入されるようにする(図18(d))。最後に、埋設された鉄製矢板10を地中に残してリードパイル30を引き抜くと(図18(e))、親杭20と鉄製矢板10とを巻き込む形でセメントミルク52が固化し、親杭20と鉄製矢板10との隙間から水が漏れることがなくなり、止水壁が形成される(図18(f))。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態である鉄製矢板を親杭およびリードパイルとともに示す正面図である。
【図2】図1の背面図である。
【図3】鉄製矢板に取り付けられた回動部材および係止部を示す側面図である。
【図4】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図5】図4の一部を拡大して示す断面図である。
【図6】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図7】図6の一部を拡大して示す断面図である。
【図8】親杭に対する鉄製矢板の嵌り込み状態を示す断面図である。
【図9】鉄製矢板に設けられた回動部材を示す斜視図である。
【図10】図9の回動部材がとる2つの位置を示す斜視図である。
【図11】鉄製矢板の挿入方法を構成するプロセスの一部を示す斜視図である。
【図12】鉄製矢板の挿入方法を構成するプロセスの他の一部を示す斜視図である。
【図13】図11および図12を経た鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図である。
【図14】図13に続く鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図である。
【図15】図14に続く鉄製矢板の挿入方法を示す斜視図である。
【図16】挿入された鉄製矢板の引き抜きを示す斜視図である。
【図17】鉄製矢板が地中に挿入されている状態における回動部材および鉄製矢板が地中から引き抜かれている状態における回動部材を示す説明図である。
【図18】本発明の他の実施の形態である鉄製矢板の挿入方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
10 鉄製矢板
10a 板面
11 係止部
12 リードパイルフランジガイド
13 ボルト孔
14 親杭フランジガイド
20 親杭(支持柱)
20a フランジ
30 リードパイル(挿入柱)
30a ウエブ
30b フランジ
31 ボルト孔
40 回動部材
41 第1の鋼管
42 第2の鋼管
43 棒状体
43a テーパ面
44 支柱
45 ストッパ
51 第1の縦穴
52 セメントミルク(硬化材)
53 第2の縦穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側を支持柱にガイドされて地中に挿入される鉄製矢板であって、
前記鉄製矢板の所定位置に取り付けられ、前記鉄製矢板を挿入する挿入柱の先端が挿入方向に対して係止される係止部と、
前記鉄製矢板における挿入方向先端部に設けられ、前記鉄製矢板を地中へ挿入するときには前記鉄製矢板の板面を含む面から突出し、前記鉄製矢板を地中から引き抜くときには前記鉄製矢板の板面を含む面内に格納される回動部材と、
を備えたことを特徴とする鉄製矢板。
【請求項2】
前記回動部材は、
前記鉄製矢板における挿入方向先端部に所定の間隔を空けて溶接された複数の第1の鋼管と、
棒状体が固定された第2の鋼管と、
前記第2の鋼管を前記第1の鋼管の間に配置して前記第1の鋼管と前記第2の鋼管とを貫通し、前記第1の鋼管を介して前記第2の鋼管を前記鉄製矢板に回動可能に取り付ける支柱と、
前記支柱の両端に取り付けられ、当該支柱の前記第1の鋼管および前記第2の鋼管からの離脱を阻止するストッパと、
を有することを特徴とする請求項1記載の鉄製矢板。
【請求項3】
前記棒状体には、
当該棒状体が前記鉄製矢板の板面を含む面から突出するように回動した状態で前記鉄製矢板の挿入方向に傾斜するテーパ面が形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の鉄製矢板。
【請求項4】
前記回動部材は、前記鉄製矢板における挿入方向先端部の全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の鉄製矢板。
【請求項5】
前記係止部は、前記鉄製矢板の板面における挿入方向先端の中央部に取り付けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の鉄製矢板。
【請求項6】
前記挿入柱を前記鉄製矢板の板面に沿って通すガイド部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の鉄製矢板。
【請求項7】
所定の間隔を空けて複数の支持柱を地中に打設し、
請求項1〜6の何れか一項に記載の鉄製矢板に、先端を前記係止部に係止して挿入柱を取り付け、
前記鉄製矢板の両側が前記支持柱にガイドされるようにして前記挿入柱を地中に押し込むことにより前記鉄製矢板を地中の所定深さまで挿入し、
埋設された前記鉄製矢板を地中に残して前記挿入柱を引き抜く、
ことを特徴とする鉄製矢板の挿入方法。
【請求項8】
所定の間隔を空けて地面に複数の第1の縦穴を掘削し、
前記第1の縦穴に硬化材を注入するとともに支持柱を挿入し、
前記第1の縦穴の間に第2の縦穴を掘削し、
前記第2の縦穴に硬化材を注入し、
請求項1〜6の何れか一項に記載の鉄製矢板に、先端を前記係止部に係止して挿入柱を取り付け、
前記鉄製矢板の両側が前記支持柱にガイドされるようにして前記挿入柱を前記第2の縦穴内に挿入することにより前記鉄製矢板を地中の所定深さまで挿入し、
埋設された前記鉄製矢板を地中に残して前記挿入柱を引き抜く、
ことを特徴とする鉄製矢板の挿入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−265907(P2006−265907A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−84119(P2005−84119)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【特許番号】特許第3681746号(P3681746)
【特許公報発行日】平成17年8月10日(2005.8.10)
【出願人】(393022506)丸紅建材リース株式会社 (6)
【Fターム(参考)】