説明

鉄道車両の床構造

【課題】所定の耐熱性を有しながら、断熱材の厚さを薄くできる、鉄道車両の床構造を提供する。
【解決手段】鉄道車両の床構造であって、車両長手方向に延びる一対の側梁2と、各側梁2間に配置され車両幅方向に延びる横梁3と、を有する台枠1と、台枠1の上面に設けられる構造床4と、構造床4の下方であって、構造床4用の空気層41aを介して配置される、第1断熱材42aと、を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両においては、一般に、床に耐熱性、つまり断熱性及び耐火性が要求される。このような要求に応えるべく、従来、鉄道車両の一般的な床構造では、構造床の下面に断熱材を配置するようになっている。そして、特許文献1では、断熱性及び耐火性を向上させるために、断熱材として、グラスウールで形成された高耐火不燃性の断熱材とセラミックファイバーで形成された高断熱・保湿性の断熱材とを組み合わせた床構造が開示されている。また、特許文献2では、水酸化物を含有する上層と構造強度を負担する中層と下面を覆う下層とを有し、中層と下層との間に断熱材を形成する、積層構造の床構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−184167号公報
【特許文献2】特開昭62−189251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、床の耐熱性を向上させるためには、床構造を複雑とし、断熱材の厚さを厚くすることによって対応が可能である。しかし、低床式車両で屋根高さや天井高さに制約のあるような車両や、床下に大型の床下機器を取り付けることが必要な車両では、床構造の上下方向長さ(厚さ)が制限され、上記のような対策では、要求される耐熱性を満足させることが困難な場合がある。
【0005】
そこで本発明の目的は、床構造の厚さに厳しい制約があっても、所定の耐熱性を有しながら、断熱材の厚さを薄くできる、鉄道車両の床構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鉄道車両の床構造が、車両長手方向に延びる一対の側梁と、前記各側梁間に配置され車両幅方向に延びる横梁と、を有する台枠と、前記台枠の上面に設けられる構造床と、前記構造床の下方であって、前記構造床用の空気層を介して配置される、第1断熱材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、構造床は、空気層を介して第1断熱材で覆われるため、空気層による断熱効果が加わり、全体としての断熱効果を向上させることによって、空気層と第1断熱材とを合わせた上下方向厚さを短くすることができる。その結果、構造床の下方の断熱構造を小さくすることができ、大型の床下機器を取り付けることができる等、床下への各種備品の配設が容易となる。
【発明の効果】
【0008】
要するに本発明によると、床構造の厚さに厳しい制約があっても、所定の耐熱性を有しながら、断熱材の厚さを薄くできる、鉄道車両の床構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る床構造を備えた鉄道車両の断面略図である。
【図2】側梁と横梁とを示す概略斜視図である。
【図3】図1のIII−III断面図である。
【図4】図3における、横梁の無い構造床部分の拡大図である。
【図5】図3における、床下機器が吊り下げられない横梁部分の拡大図である。
【図6】図3における、床下機器が吊り下げられた横梁部分の拡大図である。
【図7】床下機器が吊り下げられた横梁部分の図6と異なる断熱構造を示す図である。
【図8】第2断熱材で覆われた状態の横梁の正面図である。
【図9】第1断熱材の下面を覆う金属板を下方から見た図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】図10の一部拡大図である。
【図12】図9のXII−XII断面図である。
【図13】図12の一部拡大図である。
【図14】横梁の荷重負担を軽減する床構造の概略斜視図である。
【図15】図14の床構造において、床下火災前の状態を示す横梁の概略正面図である。
【図16】図14の床構造において、床下火災後の状態を示す横梁の概略正面図である。
【図17】第1断熱材の厚さに対する、構造床温度と炉内温度との温度比を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る床構造を備えた鉄道車両の断面略図である。鉄道車両の車両構体の最下部には台枠1が設けられている。台枠1は、レール方向、すなわち、車両長手方向(Y方向)に配設される一対の側梁2と、その一対の側梁2を、枕木方向、すなわち、車両幅方向(Z方向)に結合する複数の横梁3と、を有している。図2は、側梁2と横梁3とを示す概略斜視図である。横梁3は、Y方向に600mm〜1000mmのピッチで設けられている。横梁3には、電線や空気配管等(以下、単に「電線配管等」という)が挿通される配管孔31が、Z方向に複数並設されている。
【0011】
台枠1上には、気密床としての構造床4が設けられ、構造床4上には、Y方向に延びる複数の床受部材5が、Z方向に間隔をおいて、立設されている。床受部材5は、客室Sの床を構成する客室床6を、構造床4から一定の間隔をおいた上方で支持するようになっている。客室床6上には、乗客が着座する座席7が設けられている。
【0012】
図3は、図1のIII−III断面図である。横梁3は、断面が略I形状になっている。横梁3の下部には、下端開口部が狭くなっている矩形の吊り溝部3aが、一体に形成されており、吊り溝部3aに対し、複数の吊り下げボルト8の頭部が挿入されている。そして、吊り下げボルト8及びナット8aにブラケット9を介して、床下機器10が支持されている。
【0013】
(構造床の耐熱構造)
図4は、図3における、横梁3の無い構造床4部分の拡大図である。構造床4の下方には、空間(空気層41a)を介して、第1断熱材42aが設けられている。第1断熱材42aの上面は、第2金属板43aで、第1断熱材42aの下面は第1金属板43bで覆われている。
【0014】
第1断熱材42aは、グラスファイバーや、アルミナファイバー等を含むセラミックファイバーを用いることが好ましい。第2金属板43a、第1金属板43bは、ステンレス鋼であることが好ましい。また、第2金属板43a、第1金属板43bの外面は、研磨加工等の表面仕上げが行われることが好ましい。
【0015】
空気層41aの上下方向厚さD1は、第1断熱材42aの上下方向厚さD2より小さく、具体的には、厚さD1は、厚さD2の1/3程度である。
【0016】
(横梁の耐熱構造)
図5は、図3における、床下機器10が吊り下げられない横梁3部分の拡大図である。横梁3の下方及び少なくとも側方の一部、すなわち、横梁3のウェブ3b及び吊り溝部3aは、第2断熱材42bに覆われ、第2断熱材42bの外面は、断面コの字状の第3金属板43cで覆われている。横梁3の上面は構造床4に取り付けられており、横梁3の上部側方は、空気層41a又は第1断熱材42aに覆われている。第3金属板43cは、第2断熱材42bを介して横梁3で支持されており、第1金属板43bと第3金属板43cとは非接触となっている。
【0017】
図6は、図3における、床下機器10が吊り下げられた横梁3部分の拡大図である。横梁3のウェブ3b及び吊り溝部3aは、第2断熱材42bに覆われ、第2断熱材42bの外面は第3金属板43cで覆われている。第3金属板43cは吊り下げボルト8で支持されており、第1金属板43bと第3金属板43cとは非接触となっている。横梁3の下方であって第3金属板43cの上方には、カラー32が設けられており、吊り下げボルト8は、カラー32によってその揺動が抑制されている。
【0018】
図7は、床下機器10が吊り下げられた横梁3部分の図6と異なる耐熱構造(変形例)を示す図である。図7に示すように、横梁3の少なくとも側方の一部は、空気層41bを介して第2断熱材42bで覆われても良い。すなわち、第2断熱材42bは断面コの字状に形成され、外側面が第3金属板43cにより、内側面が第4金属板43dで覆われ、内側の第4金属板43dと横梁3との間に空気層41bが設けられている。第2断熱材42bを覆う第3金属板43c、第4金属板43dは吊り下げボルト8で支持されており、第1金属板43bと第3金属板43cとは非接触となっており、また、第1金属板43bと第4金属板43dとは非接触となっている。
【0019】
図8は、第2断熱材42bで覆われた状態の横梁3のY方向正面図である。横梁3のZ方向に並設された複数の配管孔31の内、実際電線配管等が挿通されるのは、Z方向略中央部を除く、例えば、Z方向両端部となっている。したがって、横梁3は、Z方向両端部の数個ずつの配管孔31部分を除き、第3金属板43cで覆われた第2断熱材42bで覆われるようになっている。
【0020】
第2断熱材42bは、第1断熱材42aと同様であることが好ましい。第3金属板43c及び第4金属板43dは、第2金属板43a及び第1金属板43bと同様であることが好ましい。
【0021】
(金属板取付構造)
図4に示すように、第1断熱材42aは上面と下面が、それぞれ、第2金属板43aと第1金属板43bで覆われている。ここで、第1断熱材42aの下面を覆う第1金属板43bの取付構造について、図9〜図13を用いて説明する。図9は、第1断熱材42aの下面を覆う第1金属板43bを下方から見た図である。図10は、図9のX−X断面図、図11は、図10の一部拡大図、図12は、図9のXII−XII断面図、図13は、図12の一部拡大図である。
【0022】
図10において、第1金属板43bの下方への撓みを防止するため、Y方向の横梁3間では、第1金属板43bは2枚の第1金属板43b1、43b2をY方向の略中央で結合することにより構成されている。横梁3の上部には、板状の第1板部材432が溶接で取り付けられ、第1金属板43b1及び第1金属板43b2の横梁3側端部には、Z方向視Z形状の第1支持部材433が溶接で取り付けられている。そして、第1支持部材433の端部が、横梁3と第1板部材432との間の隙間に挿入され、第1板部材432上に載置されることにより、第1金属板43b1及び第1金属板43b2の各端部が、横梁3に支持されるようになっている。床下火災においては、第1金属板43b1及び第1金属板43b2が、火炎に直接接触することとなるが、第1板部材432は第1金属板43b1及び第1金属板43b2より上側で横梁3に取り付けられる。さらに、第1金属板43b1及び第1金属板43b2は第1板部材432の下方に横梁3に向けて延在している。このような構成により第1板部材432が火炎に直接接触することを防ぐことができる。
【0023】
図9において、第1板部材432は、Z方向に間隔をおいて複数設けられている。床下火災においては、第1板部材432が分割されて横梁3に取り付けられているので、第1板部材432と横梁3との接触面積が低減されており、その結果、第1金属板43b1、43b2から横梁3への伝熱量が低減されている。したがって、横梁3の温度上昇を低減することができる。
【0024】
図11は、第1金属板43b1と第1金属板43b2との結合部の詳細を示している。構造床4の下部の、横梁3間のY方向のほぼ中央部には、構造床4から略鉛直方向に延在する第2板部材434が溶接で取り付けられている。第2板部材434とZ方向視略L字状の第2支持部材435とは、ボルト436及びナット436aによって締結されている。そして、第2支持部材435と第1金属板43b1、第1金属板43b2とは、ボルト437及びナット437aによって締結されている。ここで、第2支持部材435のうち、ボルト436及びナット436aによって第2板部材とともに締結される部分を第1被締結部といい、ボルト437及びナット437aによって第1金属板43b1及び第1金属板43b2ともに締結される部分を第2被締結部という。なお、図11において、第2板部材434は略L字状としたが、形状はこれに限られず、第2板部材434と第1金属板43b1、43b2に対して締結されればよい。
【0025】
以上のように、分割された各第1金属板43b1、43b2は、一端が横梁3と第1板部材432との間に差し込まれ、他端が、第2支持部材435を介して、ボルト436及びボルト437で、構造床4に締結されている。したがって、例えば、構造床4がアルミ合金であり、第1金属板43bがステンレス鋼である、すなわち、構造床4と第1金属板43bとが互いに異種材料であっても、上記取付構造を採用することによって、第1金属板43bは、構造床4に支持されることが可能となっている。
【0026】
第1金属板43bの下方への撓み防止のため、第1金属板43bは、第1金属板43b1と第1金属板43b2とに2分割されているが、さらに、第1金属板43b1、43b2の剛性を向上させるために、図13に示すように、第1金属板43b1、43b2の上面に、断面L字状の補剛材438を溶接で取り付けておくことが好ましい。補剛材438は、Y方向に延設されており、Z方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0027】
図13において、構造床4の下方であり、第1断熱材42aの上面を覆う第2金属板43aの上面には、構造床4を支持する第3支持部材439が設けられている。第3支持部材439は、Z方向及びY方向に間隔をおいて複数設けられている。
【0028】
(熱変形構造)
図8に示すように、床下機器10は、通常、横梁3のZ方向中央部で吊り下げられる。そして、Z方向に設けられた複数の孔31の内、実際電線配管等が挿通されるのは、Z方向略中央部を除く、例えば、Z方向両端部となっている。
【0029】
ここで、両端部の数個ずつの配管孔31は、電線配管等が挿通されているので、第2断熱材42bで覆うことができない。したがって、床下火災において、横梁3の両端部の配管孔31部分は温度が上昇し、横梁3は下方に変形し(撓み)やすくなる。したがって、床下機器10を支持する横梁3の大きな変形を防止するためには、横梁3への荷重負担を軽減する必要がある。
【0030】
図14は、横梁3の荷重負担を軽減する床構造の概略斜視図である。構造床4上には、Y方向に延びた床受部材5が、Z方向に間隔を有して、設けられている。Z方向両端部を除くZ方向略中央部に設けられた床受部材5aは、構造床4に対して、床受部材5aのY方向全長に亘って、溶接固定されている。
【0031】
図15及び図16は、それぞれ、図14の床構造において、床下火災前及び床下火災後の状態を示す横梁3の概略正面図である。図15及び図16では、第2断熱材42bを覆う第3金属板43cを削除している。図8に示すように、床下機器10は、横梁3のZ方向中央部において、吊り下げボルト8によって吊り下げられている。横梁3は、横梁3のZ方向両端部の配管孔31部分を除いて、第2断熱材42bで覆われている。
【0032】
床下火災となると、第2断熱材42bに覆われていない横梁3のZ方向両端部の配管孔31部分の温度が上昇し、横梁3が変形しやすくなる。その結果、床下機器10の荷重Gによって、横梁3は下方に撓むこととなる。ここで、横梁3の上部は構造床4に取り付けられており、構造床4の上部には、各横梁3を連結するように、床受部材5が取り付けられている。そして、床下機器10が吊り下げられるZ方向略中央部の床受部材5aは、構造床4に対して、床受部材5aのY方向全長に亘って、固定されている。なお、床受部材5aは、構造床4に対して溶接により固定されても良いし、床受部材5aと構造床4とは一体成型されても良い。したがって、図14に示すように、床受部材5aは、床下機器10の荷重Gの一部を負担することができるようになっている。すなわち、床下機器10の荷重Gの一部が、床受部材5aを通して、Y方向に平行なF1方向及びF2方向に伝達されるようになっている。
【0033】
本実施形態によれば、次のような効果を発揮できる。
(1)構造床4は、空気層41aを介して第1断熱材42aで覆われるため、断熱効果を維持しながら、空気層41aと第1断熱材42aとを合わせた上下方向厚さ(D1+D2)を短くすることができる。その結果、構造床4の下方の断熱構造を小さくすることができ、大型の床下機器10を取り付けることができる。
【0034】
構造床4の下方の断熱構造を小さくすることができる詳しい理由は、以下のとおりである。
【0035】
一般的に、伝熱形態は、熱伝導、熱伝達、熱放射(輻射)に分類され、車両の床下火災においては、熱伝導と輻射が主要なものとなる。ここで、熱伝導と輻射との関係は、温度によって異なっており、高温(500℃以上)では、輻射が熱伝導より支配的となり、低温(500℃以下)では、熱伝導が輻射より支配的となる。そして、空気層41aと第1断熱材42aとを比較すると、熱伝導性は、空気層41aの方が第1断熱材42aより低い。一方、輻射を遮断する性能は、第1断熱材42aの方が空気層41aより高い。したがって、床下火災の場合、下方の温度が高く、上方の温度が低くなるので、下方に輻射を遮断する性能の高い第1断熱材42aを配置し、上方に熱伝導性の低い空気層41aを配置することで、空気層41aと第1断熱材42aとを合わせた上下方向厚さ(以下、「厚さ」という)を最も薄くすることができる。火炎の温度を1000℃程度とすると、第1断熱材42a下面の温度は800℃程度となる。ここで、空気層41aの下面の温度を500℃程度とし(輻射が支配的となる温度では第1断熱材42で断熱し、熱伝導が支配的となる温度では空気層41aで熱伝導させる)、そして、構造床4の温度を350℃程度とするためには(例えば、構造床4に軽量なアルミ合金を使用する場合、構造床4の温度は350℃程度に抑えることが好ましい)、空気層41aの厚さD1は、第1断熱材42aの厚さD2より小さいことが好ましい。さらには、空気層41aの厚さD1は、第1断熱材42aの厚さD2の1/3程度とすることが好ましい。図17は、空気層41aの厚さD1と第1断熱材42aの厚さD2との合計を20mmとした場合において、第1断熱材42aの厚さに対する、構造床4温度と炉内温度(床下火災の温度に該当する)との温度比を示したグラフである。図17より、例えば、空気層41aの厚さD1と第1断熱材42aの厚さD2との合計が20mm程度とすれば、空気層41aの厚さD1は2.5〜5mm程度、第1断熱材42aの厚さD2は17.5〜15mm程度であることが好ましい。
【0036】
(2)第1断熱材42aの下面には、第1金属板43bが設けられているので、床下火災における火炎から、第1断熱材42aを防護することができる。また、第1金属板43bで第1断熱材42aを支持することができるので、第1断熱材42aを支持するための特別の部材を設ける必要がない。
【0037】
(3)第1断熱材42aの上面には、第2金属板43aが設けられているので、床下火災による下方から構造床4への輻射熱を低減することができる。
【0038】
(4)横梁3の下方及び少なくとも側方の一部は、第2断熱材42bで覆われる、又は、空気層41bを介して第2断熱材42bで覆われるので、床下火災において、横梁3の耐火性及び断熱性を向上させることができる。横梁3は、空気層41bを介して第2断熱材42bで覆われることによって、上述した構造床4の断熱構造と同様、空気層41bと第2断熱材42bとを合わせた厚さを短くすることができる。その結果、横梁3の周囲の断熱構造を小さくすることができる。
【0039】
(5)第2断熱材42bが、第3金属板43cで覆われるので、第2断熱材42bを床下火災における火炎から、防護することができる。また、第3金属板43c及び第4金属板43dで第2断熱材を支持することができるので、第2断熱材42bを支持するための特別の部材を設ける必要がない。
【0040】
(6)第1金属板43bと第3金属板43cとが非接触であり、第1金属板43bと第4金属板43dとが非接触となっているので、第1金属板43bと第3金属板43cとの間、及び、第1金属板43b第4金属板43dとの間で熱歪が発生し、第1金属板43bと第3金属板43cとの間、及び、第1金属板43bと第4金属板43dとの間で大きな変形や亀裂等が生じることを防止できる。
【0041】
(7)第1金属板43bは、2枚の第1金属板43b1と第1金属板43b2とに分割されているので、第1金属板43bの下方への撓み量を低減することができる。
【0042】
(8)第1金属板43bは、横梁3と第1板部材432との間の隙間に挿入され、第1板部材432上に載置されて、支持されるようになっており、構造床4とは第2支持部材435を介しボルト436、437で締結されるようになっている。したがって、横梁3、構造床4と第1金属板43bとは別材料を使用できる。例えば、横梁3、構造床4を軽量なアルミ合金とし、第1金属板43bを耐火性の高いステンレス鋼とすることができる。
【0043】
(9)第1金属板43bの上面には補剛材438が取り付けられているので、第1金属板43bの剛性を向上させることができ、その結果、第1金属板43bの下方への撓み量を低減することができる。
【0044】
(10)第2金属板43aの上面には第3支持部材439が設けられているので、第3支持部材439は、構造床4を支持し、構造床4の下方への撓み量を低減することができる。
【0045】
(11)横梁3のZ方向両端部には、配管が敷設される配管孔31がY方向に設けられており、第2断熱材42bは配管孔31を露出するように形成されているので、横梁3のZ方向両端部に、床下機器10等の電線配管等を敷設することができ、配線構造が複雑化することを防止できる。
【0046】
(12)床受部材5aは、構造床4に対して、床受部材5aのY方向全長に亘って、溶接固定されているので、床受部材5aは、床下機器10の荷重Gの一部を受けることができるようになっている。したがって、床下火災によって、横梁3の両端部の温度が上昇し、横梁3が下方に変形しやすくなる場合においても、床下機器10の荷重Gの一部が、床受部材5aに分散され、横梁3の受ける荷重が小さくなるので、横梁3の下方への変形量を低減することができる。また、横梁3の下方への変形量を低減することによって、構造床4、さらに、客室床6の下方への変形量を低減することができる。
【0047】
(13)第2金属板43a、第1金属板43b、第3金属板43c及び第4金属板43dの外面は、研磨加工等の表面仕上げが行われているので、第2金属板43a、第1金属板43b、第3金属板43c及び第4金属板43dの外面の放射率が低くなっており、その結果、第2金属板43a、第1金属板43b、第3金属板43c、及び第4金属板43dからの熱放射を小さくすることができる。
【0048】
横梁3や構造床4と同様、側梁2も、断熱材で覆われることが好ましく、さらに、空気層を介して断熱材で覆われることが好ましい。
【0049】
本実施形態では、床下機器10が吊り下げられるZ方向略中央部の床受部材5aが、構造床4に対して、床受部材5aのY方向全長に亘って、溶接固定されているが、Z方向略中央部の床受部材5aに限定せず、すべての床受部材5が、構造床4に対して、床受部材5のY方向全長に亘って、溶接固定されても良い。また、床受部材5aは、構造床4に対して溶接固定されているが、その固定方法は溶接に限定されず、床下機器10の荷重の一部を負担可能なように、構造床4に取り付けられれば良い。例えば、床受部材5aが構造床4と一体成形されても良いし、ボルト及びナットによって、床受部材5aが構造床4に対して締結されても良い。また、床受部材5aと別体となる接続部材を介して、床受部材5aが構造床4に取り付けられても良い。
【0050】
本実施形態では、配管孔31は、横梁3のZ方向両端部に設けられているが、配管孔31は、横梁3において、床下機器10が吊り下げられるZ方向略中央部の床受部材5aの略直下に対応しない範囲に設けられれば良い。
【0051】
本発明は、上記実施形態で説明した構成には限定されず、特許請求の範囲に記載した内容を逸脱することなく、当業者が考え得る各種変形例を含むことができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明では、耐熱効果を維持しつつ、空気層と断熱材とを合わせた厚さを短くすることができる、鉄道車両の床構造を提供できるので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0053】
1 台枠
2 側梁 3 横梁 3a 吊り溝部
4 構造床
41a 空気層 41b 空気層
42a 第1断熱材 42b 第2断熱材
43a 第2金属板 43b 第1金属板 43c 第3金属板
43d 第4金属板
432 第1板部材 433 第1支持部材 434 第2板部材
435 第2支持部材
436 ボルト 437 ボルト 438 補剛材 439 第3支持部材
5 床受部材 5a 床受部材
6 客室床 7 座席 8 吊り下げボルト 9 ブラケット
10 床下機器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両長手方向に延びる一対の側梁と、前記各側梁間に配置され車両幅方向に延びる横梁と、を有する台枠と、
前記台枠の上面に設けられる構造床と、
前記構造床の下方であって、構造床用の空気層を介して配置される、第1断熱材と、を備えることを特徴とする、鉄道車両の床構造。
【請求項2】
前記第1断熱材の下面に設けられる第1金属板をさらに備え、
前記構造床側から下方に向かって順に、前記構造床、前記構造床用の空気層、前記第1断熱材、前記第1金属板が配置される、請求項1記載の鉄道車両の床構造。
【請求項3】
前記第1金属板は、少なくとも2枚の金属板が締結されて構成され、
前記横梁の上部に設けられる第1板部材と、
前記第1金属板の上面から前記第1板部材に向けて延在し、前記第1金属板と前記第1板部材とを接続する第1支持部材と、
前記構造床の下面から略鉛直方向に延在する第2板部材と、
前記第1金属板の上面に設けられる第2支持部材と、をさらに備え、
前記第2板部材と前記第2支持部材とが締結されることによって、前記第1金属板が、前記構造床に取り付けられるようになっている、請求項2記載の鉄道車両の床構造。
【請求項4】
前記第2支持部材は、前記第1金属板に平行に延びる第1被締結部と、鉛直方向に延びる第2被締結部とを有する略L字状であり、
前記第1被締結部は、前記少なくとも2枚の第1金属板とともに締結され、
前記第2被締結部は、前記第2板部材とともに締結される、請求項3記載の鉄道車両の床構造。
【請求項5】
前記第1断熱材の上面に設けられる第2金属板をさらに備え、
前記構造床側から下方に向かって順に、前記構造床、前記構造床用の空気層、前記第2金属板、前記第1断熱材、前記第1金属板が配置される、請求項2記載の鉄道車両の床構造。
【請求項6】
前記横梁の少なくとも側方の一部は、第2断熱材で覆われている、請求項1記載の鉄道車両の床構造。
【請求項7】
前記横梁の少なくとも側方の一部は、横梁用の空気層を介して第2断熱材で覆われている、請求項1記載の鉄道車両の床構造。
【請求項8】
前記第2断熱材は、第3金属板で覆われている、請求項6記載の鉄道車両の床構造。
【請求項9】
前記横梁において、車両幅方向の略中央部に設けられた床受部材の略直下に対応しない範囲に、配線を敷設可能な車両長手方向に延在する配管孔をさらに備え、
前記第2断熱材は、前記配管孔を露出するように形成されている、請求項6記載の鉄道車両の床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−101596(P2012−101596A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249902(P2010−249902)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)