鉄道車両の構体構造
【課題】簡単な骨構造で且つ部品数を低減して、縦骨と横骨とが均一な品質で安定的に接合された鉄道車両の構体構造を提供する。
【解決手段】外板Peの内側に、縦横に配した骨FMh、FMvを接合して構成される鉄道車両の側構体構造BSは、開口部D、Wを除き鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向Dhに延在して配され、外板Peに溶接接合される第1の骨FMhと、第1の方向Dhに概ね垂直な第2の方向Dvに連続して配される外板Peに溶接接合される第2の骨FMvsとを備え、第2の骨FMvsは、第1の方向Dhに所定の長さだけ延在する平板状のガセット部Pgtが一体的に形成され、ガセット部Pgtがレーザー溶接Wlによって、第1の骨FMhに接合されている。
【解決手段】外板Peの内側に、縦横に配した骨FMh、FMvを接合して構成される鉄道車両の側構体構造BSは、開口部D、Wを除き鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向Dhに延在して配され、外板Peに溶接接合される第1の骨FMhと、第1の方向Dhに概ね垂直な第2の方向Dvに連続して配される外板Peに溶接接合される第2の骨FMvsとを備え、第2の骨FMvsは、第1の方向Dhに所定の長さだけ延在する平板状のガセット部Pgtが一体的に形成され、ガセット部Pgtがレーザー溶接Wlによって、第1の骨FMhに接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の構体構造、詳しくは、外板の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の側構体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の構体構造は、一般的に、外板の内側に縦横に配した骨が接合されて成る(例えば、特許文献1、2、3参照)。同構体構造においては、溶接による歪みや乗客などの荷重負荷による外板の座屈、面外変形を抑えてその平滑度を確保するために、骨の種々な配し方、接合の仕方に工夫がなされている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の構体構造は縦横に配した骨の数を少なくして、それら骨で囲われる外板の内面に横向きまたは縦向きのリブを密に並べて配し、スポット溶接により溶接接合することにより対応している。特許文献2に記載の構体構造は縦横の骨の交差部での一方の骨の分断端部と他方の非分断骨とを、骨間の面内変形を抑える効果を持つガセットと呼ばれる継手板で接続した継手構造を多く採用して対応している。また、図9に示す別の従来例の構体構造では、縦横の骨a、bの交差とそれによる分断を少なくした配置とし、外板cに対する骨a、bの数ないしは面積比率を高めて対応している。
【0004】
特許文献1に記載の構体構造は、骨の数は少ないがリブの数が多く、リブの製作や取付の作業に手間が掛かりコスト高と共に車両の重量化も招き、鉄道車両のさらなる高速化と並び省資源化と省エネ化に不利である。特許文献2に記載の構体構造は、骨の数がやや多い上、縦横の骨の交差部での分断による継手板による接続箇所が多く構造が複雑で製作に手間が掛かりコスト高になる。図9に示す構体構造は、縦向きの骨に2連形態のものを用いて見掛け上の骨の数を少なくしている。しかし、実質的には骨の数は多く、外板に対する骨の面積比率が高く、取り付けの手間も含めてコスト高と共に車両の重量化も招き、鉄道車両のさらなる高速化と並び省資源化と省エネ化に対応し難い。
【0005】
図10に、上述の問題の解消を図るべく、特許文献3に提案されている構体構造を模式的に示す。図10に示す構体構造は、外板Pe(図11(a))の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の構体構造において、複数の横向きの骨(以降、「横骨」)FMhが、縦向きの骨(以降、「縦骨」)FMvに優先して窓Wや出入口Dの開口を除き車両長手方向Dhに延在すると共に、車両長手方向Dh及び車両床面(図示せず)に垂直な車両高さ方向Dvに互いに隣接して配された状態で、外板に溶接接合されている。縦骨FMvは、外板に溶接接合された横骨FMhに溶接接合される。これにより、外板に溶接接合されて連結されている複数の横骨FMhが、縦骨FMvによってさらに連結される。なお、横骨FMhと縦骨FMvとは、ガセットGtを介して連結される。
【0006】
図10において、出入口Dの開口端部に隣接する縦骨FMvを縦骨FMvdと表し、窓W部の開口端部に隣接する縦骨FMvを縦骨FMvwとして表記して識別している。同図において、縦骨FMvd及び縦骨FMvwの円Y及び円Zで囲まれた部分の詳細な構造をそれぞれ図11及び図13に示す。
【0007】
まず、図11を参照して、出入口Dの開口端部に隣接する縦骨FMvdにおける、縦骨FMvdと横骨FMhとのガセットGtによる連結について説明する。図11(a)にガセットGtを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図11(b)にガセットGtを、車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図11(c)にガセットGtを窓W側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。
【0008】
外板Pe上に、横骨FMh及び縦骨FMvdが、横骨FMhの先端部が縦骨FMvdの下側に位置するように載置されている。つまり、外板Peに対向する横骨FMhの上面は、縦骨FMvdの上面より低い。この横骨FMhの上面と縦骨FMvdの上面の位置の差を打ち消すように段差が設けられたガセットGtが縦骨FMvdと横骨FMhの上面にそれぞれ栓溶接Wpにより連結されている。
【0009】
図12を参照して、縦骨FMvdとガセットGtに対する寸法精度要求について述べる。図12(a)に図11(a)におけるガセットGtを示し、図12(b)に図11(a)における、互いに栓溶接Wpで連結されている横骨FMh及び縦骨FMvdと外板Peを拡大して示している。
【0010】
図12(a)に示すように、ガセットGtは所定(本例においては、10mm)の段差が設けられている。図12(b)において、ガセットGt(図12(a))の段差の左右の上面は縦骨FMvdの上面及び横骨FMhの上面にそれぞれ接して栓溶接Wpされる。縦骨FMvdも所定の段差(本例においては、40mm)を有している。そして、横骨FMhも所定高さ(本例においては、30mm)を有している。そのため、ガセットGtを縦骨FMvdと横骨FMhに正しく接合させるためには、縦骨FMvd、横骨FMh及びガセットGtの自身及び相互の寸法形状精度を確保する必要がある。
【0011】
図13を参照して、窓Wの開口端部に隣接する縦骨FMvwにおける縦骨FMvと横骨FMhとのガセットGtによる連結について説明する。図13(a)にガセットGtを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図13(b)にガセットGtを、車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図13(c)にガセットGtを出入口D側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。同図に示すように、窓Wの下部に位置する一本の横骨FMhの上下に配された2本の縦骨FMvwと、横骨FMhとがガセットGtによって互いに連結されている。なお、外板Peに対向する横骨FMhの上面は、縦骨FMvwの上面より低い。この横骨FMhの上面と縦骨FMvwの上面の位置の差を打ち消すように段差が設けられたガセットGtが縦骨FMvwと横骨FMhとの上面にそれぞれ栓溶接Wpにより連結されている。縦骨FMvw及びガセットGtの形状は、図11に示した縦骨FMvdおよびガセットGtの形状とは若干異なるものの、栓溶接Wpによる溶接に関する要求は基本的に同じである。
【0012】
上述のように、特許文献3に記載の構造では、横骨FMhと縦骨FMvとは別体の簡単な形状のガセットGtを用い、栓溶接Wpによって接合されている。結果、リブの数(特許文献1)や、縦横の骨の交差部での分断による継手板による接続箇所(特許文献2)や、外板に対する骨の面積比率(図9)を抑えることで、製造コスト及び車両重量の増大の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−262228号公報
【特許文献2】特開平9−30414号公報
【特許文献3】特許第4440832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3に記載の構体構造においては、栓溶接の接合力は強く、かつ溶接(接合)対象である縦骨FMv、横骨FMh、及びガセットGtの個々の形状や相互の位置関係などの状態に応じて作業者が工夫することによって、適切に溶接できる。つまり、縦骨FMv、横骨FMh、ガセットGt、及び外板Peの個々のばらつきや、構体構造の組み立て現場での状態を、栓溶接作業者によって吸収或いは調整できるという利点がある。
【0015】
しかしながら、このような作業者による現場合わせ作業の品質は、作業者の熟練度や能力に負う度合いが高い。作業者が変われば栓溶接の品質がばらつき、ガセットGtによる縦骨FMv及び横骨FMhの接合強度がばらつき、構体構造の強度のばらつき、しいては車両構体の強度を損なうことにもなる。なお、このような場合、構体構造の組み立て後の構体の強度補正作業を必要とする。なお、同一の作業者によっても、程度の差はあるにしても、栓溶接の品質のばらつきは生じることは言うまでも無い。
【0016】
よって、上述の問題に鑑みて、本発明は、簡単な骨構造で且つ部品数を低減して、縦骨と横骨とが均一な品質で安定的に接合された鉄道車両の構体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決する為に、本発明は、外板の内側に、縦横に配した骨を接合して構成される鉄道車両の側構体構造であって、
開口部を除き前記鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向に延在して配され、前記外板に溶接接合される第1の骨と、
前記第1の方向に概ね垂直な第2の方向に連続して配される前記外板に溶接接合される第2の骨とを備え、
前記第2の骨は、前記第1の方向に所定の長さだけ延在する平板状のガセット部が一体的に形成され、当該ガセット部がレーザー溶接によって、前記第1の骨に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、鉄道車両用の側構体において、部品点数を低減すると共に縦骨と横骨とを均一な品質で安定的に接合できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る側構体構造を示す正面図である。
【図2】図1において、ガセット一体型縦骨の円Aで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図3】図2のガセット一体型縦骨におけるガセット部の寸法精度要求の説明図である。
【図4】図1において、ガセット一体型縦骨の円Bで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図5】本発明に係るガセット一体型縦骨のガセット部におけるレーザー溶接位置の説明図である。
【図6】本発明に係るガセット一体型縦骨のガセット部におけるレーザー溶接長と、従来の栓溶接との関係を表す図である。
【図7】図1の側構体構造の変形例を示す正面図である。
【図8】図7において、ガセット一体型縦骨の円Cで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図9】従来の側構体構造の一例を示す正面図である。
【図10】特許文献3に記載の側構体構造を示す正面図である。
【図11】図10において、縦骨の円Yで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図12】図11における縦骨、ガセット、及び横骨に対する寸法精度要求の説明図である。
【図13】図10において、縦骨の円Zで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7及び図8を参照して、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の構体構造について説明する。まず、図1に、本発明の実施の形態に係る構体構造を模式的に示す。同図は、上述の図10と同様に、但し本発明の実施の形態に係る側構体構造を、車両長手方向Dh及び車両高さ方向Dvに垂直な、車両の幅方向に見た状態を示している。本実施の形態に係る側構体構造BSは、図10における縦骨FMvdとガセットGt及び縦骨FMvwとガセットGtが、それぞれガセット一体型縦骨FMvsd及びガセット一体型縦骨FMvswに交換されている。
【0021】
基本的に、ガセット一体型縦骨FMvsdは、従来の縦骨FMvに所定数のガセットGtが一体的に形成されている。つまり縦骨FMvに相当する縦骨部Pfmvdの側部(出入口Dの開口端部側より離間した側面)より所定数のガセット部Pgtdが、出入口Dより離間するように車両長手方向Dh方向に連続的に延在している。一方、ガセット一体型縦骨FMvswは、縦骨FMvに相当する縦骨部Pfmvwの側部(窓Wに隣接する側面)より、1枚の矩形状のガセット部Pgtwが窓W側に向かって連続的に延在している。なお、図1において、ガセット一体型縦骨FMvsd及びガセット一体型縦骨FMvswの円A及び円Bで囲まれた部分の詳細な構造をそれぞれ図2及び図4に示す。
【0022】
まず、図2を参照して、ガセット一体型縦骨FMvsdと横骨FMhとの連結について説明する。図2(a)に、ガセット一体型縦骨FMvsdを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図2(b)にガセット部Pgtdを上から車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図2(c)にガセット部Pgtdを窓W側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。
【0023】
図2に示すように、ガセット部Pgtdの下面に、横骨FMhの上面が接した状態で、ガセット部Pgtdの上面から横骨FMhの上面に向かってレーザー溶接Wlが施されて、連結される。レーザー溶接Wlは、必要とされる接合強度を得るために所定の方向に所定の長さに渡って行われる。なお、図2(b)に示す例においては、ガセット部Pgtdの延在方向(車両長手方向Dh)に平行にレーザー溶接Wlhが2本、ガセット一体型縦骨FMvsdの延在方向(車両高さ方向Dv)に平行にレーザー溶接Wlvが1本施されている。本発明においては、従来の栓溶接Wpにレーザー溶接Wlが置き換えられるものであり、この観点より、必要とされるレーザー溶接Wlの長さ等の条件について、後ほど図6を参照して詳しく説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、縦骨部Pfmvdは、横骨FMhの高さよりも大きい所定の段差を有する。縦骨部Pfmvdは、横骨FMhに近接する方向にほぼ直角に折り曲げられて、横骨FMhの上面に接するガセット部Pgtdに繋がっている。なお、縦骨部Pfmvdはこれ以外の形状を有してもよく、例えば、横骨FMhに近接する方向に傾斜して、ガセット部Pgtdに繋がってもよい。
【0025】
次に、図3を参照して、ガセット一体型縦骨FMvsdに対する寸法精度要求について説明する。図3(a)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsdには、2段に渡って所定の段差が設けられている。ガセット一体型縦骨FMvsdの下面(外板Peの内面に接する面)と、ガセット部Pgtdの下面(横骨FMhの上面に接する面)とは、所定の段差(本例においては、30mm)を有している。そして、横骨FMhも所定高さ(本例においては、30mm)を有している。
【0026】
そのため、ガセット部Pgtdを横骨FMhに正しく接合させるためには、ガセット一体型縦骨FMvsdにおいて、図3(b)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsdの下面とガセット部Pgtdの下面との段差の寸法形状精度のみを確保すればよい。さらに、上述したように、ガセット一体型縦骨FMvsdの縦骨部Pfmvdは、横骨FMhに近接する方向にほぼ直角に折り曲げられて、あるいは傾斜して、ガセット部Pgtdに繋がっている。上記段差の寸法形状や横骨FMhの高さに誤差があっても、縦骨部Pfmvdの直角に折り曲げられた部分、あるいは傾斜した部分の変形によって、誤差を吸収することが可能である。
【0027】
次に、図4を参照して、ガセット一体型縦骨FMvswと横骨FMhとの連結について説明する。図4(a)に、ガセット一体型縦骨FMvswを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図4(b)にガセット部Pgtwを車両幅方向Dwに見た様子を示す。
【0028】
上述した通り、ガセット一体型縦骨FMvsdが所定数のガセット部Pgtdを含む。そして、所定数のガセット部Pgtdのそれぞれは、出入口Dより離間するように車両長手方向Dh方向に連続的に延在している。これに対し、ガセット一体型縦骨FMvswは1枚の矩形状のガセット部Pgtwを含む。具体的には、ガセット一体型縦骨FMvswにおいて、縦骨部Pfmvwの側部(窓Wに隣接する側面)より、1枚の矩形状のガセット部Pgtwが窓W側に向かって連続的に延在している。図4(a)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvswは、いわゆるハット形状の断面を有し、車両の内部に向かって開口する凹部を形成している。この開口は、電線などのケーブル類を収容するダクトとして用いられる。
【0029】
図4に示すように、ガセット部Pgtwの下面に、横骨FMhの上面が接した状態で、ガセット部Pgtwの上面から横骨FMhの上面に向かってレーザー溶接Wlが施されて、連結される。レーザー溶接Wlは、必要とされる接合強度を得るために所定の方向に所定の長さに渡って行われる。なお、図4(b)に示す例においては、ガセット部Pgtwの延在方向(車両長手方向Dh)に平行にレーザー溶接Wlhが2本施されている。本発明においては、従来の栓溶接Wpがレーザー溶接Wlに置き換えられるものである。この観点より、必要とされるレーザー溶接Wlの長さ等の条件について、後ほど図6を参照して説明する。
【0030】
次に、図4(a)を参照して、ガセット一体型縦骨FMvswに対する寸法精度要求について説明する。ガセット一体型縦骨FMvswは、そのガセット部Pgtwの下面が横骨FMhの上面に接した状態で、レーザー溶接により連結される。ガセット部Pgtwを横骨FMhに正しく接合させるためには、ガセット一体型縦骨FMvswにおいて、ガセット部Pgtwの下面の寸法形状精度のみを確保すればよい。
【0031】
次に、図5を参照して、レーザー溶接Wlの施工箇所について説明する。レーザー溶接には、接合される2つの部材(ガセット部Pgtと横骨FMh)の接合面での平面度および離間距離の管理が重要である。本発明に係るガセット一体型縦骨FMvsdのガセット部Pgtは、縦骨部Pfmvと一体的に形成されているが、図5に示すように、縦骨部Pfmvから屈曲された後に横骨FMhと接するようにして、レーザー溶接される。この意味において、ガセット一体型縦骨FMvsdの板厚をtとした、屈曲部の曲率半径を2.5tとすると、ガセット部Pgtのハット形状の頭頂の平坦部は、それぞれ端から2.5tが屈曲している。そのために、安全をみて、ガセット部Pgtの頭頂の平坦部の両端からそれぞれ4t以上内部の領域がレーザー溶接に適していると判断される。
【0032】
次に図6を参照して、レーザー溶接Wlの長さに対する要求について説明する。図6は、所定の接合強度を得るために必要な溶接面積を、レーザー溶接(溶接長)及び従来の栓溶接(断面積)それぞれについて示す図である。同図より、栓溶接に取って代わるために必要なレーザー溶接長を知ることができる。なお、レーザー溶接の強度は、栓溶接とは異なり、溶接線長によって決定される。また、レーザー溶接は、同一の線長であっても、その向きや場所によっても、ガセット部Pgtと横骨FMhとの溶接強度は異なる。よって、レーザ溶接する場所や方向に基づいて、図6より読み取れるレーザー溶接長を適宜修正して決定されるものである。
【0033】
次に図7及び図8を参照して、図1に示した側構体構造の変形例について説明する。同図に示すように、本変形例に係る側構体構造BS’は、側構体構造BSにおいて、ガセット一体型縦骨FMvswがガセット一体型縦骨FMvsw’に交換されている。なお、ガセット一体型縦骨FMvsw’は、上述のガセット一体型縦骨FMvsdと概ね同様の形状に構成されている。但し、ガセット一体型縦骨FMvsdが出入口Dの開口端部に、縦骨部Pfmvdが隣接して、ガセット部Pgtdが同開口(出入口D)端部より離間する(窓Wに向う)方向に延在している。これに対して、ガセット一体型縦骨FMvsw’では、縦骨部Pfmvw’が窓Wの開口端部に隣接して、ガセット部Pgtw’が同開口(窓W)端部より離間する(出入口Dに向かう)方向に延在している。
【0034】
このように、ガセット部Pgt(Pgtd、Pgtw、及びPgtw’を総称)が開口端部の他方側に延在する点に関しては、ガセット一体型縦骨FMvs(ガセット一体型縦骨FMvsd、FMvsw、及びFMvsw’を総称)とも同じである。つまり、開口端部においては、ガセット部Pgtは、一体的に形成されている縦骨部Pfmv(縦骨部Pfmvd、Pfmvw、及びPfmvw’を総称)を横骨FMhの一端にレーザー溶接により接続している。
【0035】
なお、図8に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsw’においては、ガセット一体型縦骨FMvswにおけるのと同様に、ガセット部Pgtw’の一部が、出入口Dの開口端部から窓Wの下部に渡って延在する横骨FMhをレーザー溶接Wlhで縦骨部Pfmvw’に接続している。
【0036】
上述のように、従来は横骨と縦骨とを接合するのに、側構体の組み立て現場で、別体のガセットを横骨と縦骨とにまたがって載置させ(現場合わせ)、ガセットを横骨と縦骨との両方に栓溶接している。本発明では、ガセット部と縦骨部とが一体的に形成されたガセット一体型縦骨を用いて、ガセット部を横骨にレーザー溶接して側構体を構成している。これにより、従来必須であるガセットの縦骨への栓溶接を不要とし、ガセットの作成、準備、管理、及びガセットの栓溶接に要する工数低減を実現している。つまり、本発明においては、ガセット部には従来のガセットでは必須であった縦骨との溶接に供される部分を不要として、その分の軽量化、省資源化を実現している。
【0037】
また、実施形態に示したように、ガセット部は接合する横骨の個々に対応して個々に縦骨部より車両長手方向に延在させても良いし、変形例に示すように接合する横骨の個々に対応するのではなく、車両長手方向に所定の長さだけ延在させてもよい。変形例の場合は、実施の形態の場合に比べてガセット部の量が多くなるが、ガセット一体型縦骨つまり側構体の構造強度はより強くなる。なお、実施の形態及び変形例の何れの場合においても、従来は個別に分離していたガセットが車両高さ方向に連続したガセット部として縦骨部と一体的に構成されているために、従来のガセットを用いた側構体構造にくらべて、より強い構造強度を得る。
【0038】
また、ガセット部と横骨との接合は、従来の作業者の手作業による栓溶接の代わりに、レーザー溶接装置により自動化されたレーザー溶接が用いられる。これにより、現場合わせ及び作業者の熟練度、また作業者の状態に起因する溶接品質のバラツキを抑えて、側構体構造としての品質を向上すると共に安定できる。また、レーザー溶接(機械化)により工数も削減でき、省資源化及び省エネ化も実現できる。なお、上述の実施の形態及び変形例においては、ガセット一体型縦骨は、その縦骨部を開口部の端部に近接して用いる例が示されている。しかしながら、ガセット一体型縦骨FMvsは、図4或いは図5に示す形状に構成した場合には、縦骨部を開口部の端部ではなく、横骨上の任意の位置に配置して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、鉄道車両の構体、つまり、外板の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の側構体の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
BS、BS’ 側構体構造
Pe 外板
D 出入口
W 窓
FMvsd、FMvsw、FMvsw’ ガセット一体型縦骨
Pfmvd、Pfmvw、Pfmvw’ 縦骨部
Pgtd、Pgtw、Pgtw’ ガセット部
FMh 横骨
Wl、Wlv、Wlh レーザー溶接
FMv、FMvd、FMvw 縦骨
Gt ガセット
Wp 栓溶接
Dh 車両長手方向
Dv 車両高さ方向
Dw 車両幅方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の構体構造、詳しくは、外板の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の側構体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の構体構造は、一般的に、外板の内側に縦横に配した骨が接合されて成る(例えば、特許文献1、2、3参照)。同構体構造においては、溶接による歪みや乗客などの荷重負荷による外板の座屈、面外変形を抑えてその平滑度を確保するために、骨の種々な配し方、接合の仕方に工夫がなされている。
【0003】
具体的には、特許文献1に記載の構体構造は縦横に配した骨の数を少なくして、それら骨で囲われる外板の内面に横向きまたは縦向きのリブを密に並べて配し、スポット溶接により溶接接合することにより対応している。特許文献2に記載の構体構造は縦横の骨の交差部での一方の骨の分断端部と他方の非分断骨とを、骨間の面内変形を抑える効果を持つガセットと呼ばれる継手板で接続した継手構造を多く採用して対応している。また、図9に示す別の従来例の構体構造では、縦横の骨a、bの交差とそれによる分断を少なくした配置とし、外板cに対する骨a、bの数ないしは面積比率を高めて対応している。
【0004】
特許文献1に記載の構体構造は、骨の数は少ないがリブの数が多く、リブの製作や取付の作業に手間が掛かりコスト高と共に車両の重量化も招き、鉄道車両のさらなる高速化と並び省資源化と省エネ化に不利である。特許文献2に記載の構体構造は、骨の数がやや多い上、縦横の骨の交差部での分断による継手板による接続箇所が多く構造が複雑で製作に手間が掛かりコスト高になる。図9に示す構体構造は、縦向きの骨に2連形態のものを用いて見掛け上の骨の数を少なくしている。しかし、実質的には骨の数は多く、外板に対する骨の面積比率が高く、取り付けの手間も含めてコスト高と共に車両の重量化も招き、鉄道車両のさらなる高速化と並び省資源化と省エネ化に対応し難い。
【0005】
図10に、上述の問題の解消を図るべく、特許文献3に提案されている構体構造を模式的に示す。図10に示す構体構造は、外板Pe(図11(a))の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の構体構造において、複数の横向きの骨(以降、「横骨」)FMhが、縦向きの骨(以降、「縦骨」)FMvに優先して窓Wや出入口Dの開口を除き車両長手方向Dhに延在すると共に、車両長手方向Dh及び車両床面(図示せず)に垂直な車両高さ方向Dvに互いに隣接して配された状態で、外板に溶接接合されている。縦骨FMvは、外板に溶接接合された横骨FMhに溶接接合される。これにより、外板に溶接接合されて連結されている複数の横骨FMhが、縦骨FMvによってさらに連結される。なお、横骨FMhと縦骨FMvとは、ガセットGtを介して連結される。
【0006】
図10において、出入口Dの開口端部に隣接する縦骨FMvを縦骨FMvdと表し、窓W部の開口端部に隣接する縦骨FMvを縦骨FMvwとして表記して識別している。同図において、縦骨FMvd及び縦骨FMvwの円Y及び円Zで囲まれた部分の詳細な構造をそれぞれ図11及び図13に示す。
【0007】
まず、図11を参照して、出入口Dの開口端部に隣接する縦骨FMvdにおける、縦骨FMvdと横骨FMhとのガセットGtによる連結について説明する。図11(a)にガセットGtを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図11(b)にガセットGtを、車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図11(c)にガセットGtを窓W側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。
【0008】
外板Pe上に、横骨FMh及び縦骨FMvdが、横骨FMhの先端部が縦骨FMvdの下側に位置するように載置されている。つまり、外板Peに対向する横骨FMhの上面は、縦骨FMvdの上面より低い。この横骨FMhの上面と縦骨FMvdの上面の位置の差を打ち消すように段差が設けられたガセットGtが縦骨FMvdと横骨FMhの上面にそれぞれ栓溶接Wpにより連結されている。
【0009】
図12を参照して、縦骨FMvdとガセットGtに対する寸法精度要求について述べる。図12(a)に図11(a)におけるガセットGtを示し、図12(b)に図11(a)における、互いに栓溶接Wpで連結されている横骨FMh及び縦骨FMvdと外板Peを拡大して示している。
【0010】
図12(a)に示すように、ガセットGtは所定(本例においては、10mm)の段差が設けられている。図12(b)において、ガセットGt(図12(a))の段差の左右の上面は縦骨FMvdの上面及び横骨FMhの上面にそれぞれ接して栓溶接Wpされる。縦骨FMvdも所定の段差(本例においては、40mm)を有している。そして、横骨FMhも所定高さ(本例においては、30mm)を有している。そのため、ガセットGtを縦骨FMvdと横骨FMhに正しく接合させるためには、縦骨FMvd、横骨FMh及びガセットGtの自身及び相互の寸法形状精度を確保する必要がある。
【0011】
図13を参照して、窓Wの開口端部に隣接する縦骨FMvwにおける縦骨FMvと横骨FMhとのガセットGtによる連結について説明する。図13(a)にガセットGtを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図13(b)にガセットGtを、車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図13(c)にガセットGtを出入口D側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。同図に示すように、窓Wの下部に位置する一本の横骨FMhの上下に配された2本の縦骨FMvwと、横骨FMhとがガセットGtによって互いに連結されている。なお、外板Peに対向する横骨FMhの上面は、縦骨FMvwの上面より低い。この横骨FMhの上面と縦骨FMvwの上面の位置の差を打ち消すように段差が設けられたガセットGtが縦骨FMvwと横骨FMhとの上面にそれぞれ栓溶接Wpにより連結されている。縦骨FMvw及びガセットGtの形状は、図11に示した縦骨FMvdおよびガセットGtの形状とは若干異なるものの、栓溶接Wpによる溶接に関する要求は基本的に同じである。
【0012】
上述のように、特許文献3に記載の構造では、横骨FMhと縦骨FMvとは別体の簡単な形状のガセットGtを用い、栓溶接Wpによって接合されている。結果、リブの数(特許文献1)や、縦横の骨の交差部での分断による継手板による接続箇所(特許文献2)や、外板に対する骨の面積比率(図9)を抑えることで、製造コスト及び車両重量の増大の防止を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平5−262228号公報
【特許文献2】特開平9−30414号公報
【特許文献3】特許第4440832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3に記載の構体構造においては、栓溶接の接合力は強く、かつ溶接(接合)対象である縦骨FMv、横骨FMh、及びガセットGtの個々の形状や相互の位置関係などの状態に応じて作業者が工夫することによって、適切に溶接できる。つまり、縦骨FMv、横骨FMh、ガセットGt、及び外板Peの個々のばらつきや、構体構造の組み立て現場での状態を、栓溶接作業者によって吸収或いは調整できるという利点がある。
【0015】
しかしながら、このような作業者による現場合わせ作業の品質は、作業者の熟練度や能力に負う度合いが高い。作業者が変われば栓溶接の品質がばらつき、ガセットGtによる縦骨FMv及び横骨FMhの接合強度がばらつき、構体構造の強度のばらつき、しいては車両構体の強度を損なうことにもなる。なお、このような場合、構体構造の組み立て後の構体の強度補正作業を必要とする。なお、同一の作業者によっても、程度の差はあるにしても、栓溶接の品質のばらつきは生じることは言うまでも無い。
【0016】
よって、上述の問題に鑑みて、本発明は、簡単な骨構造で且つ部品数を低減して、縦骨と横骨とが均一な品質で安定的に接合された鉄道車両の構体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決する為に、本発明は、外板の内側に、縦横に配した骨を接合して構成される鉄道車両の側構体構造であって、
開口部を除き前記鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向に延在して配され、前記外板に溶接接合される第1の骨と、
前記第1の方向に概ね垂直な第2の方向に連続して配される前記外板に溶接接合される第2の骨とを備え、
前記第2の骨は、前記第1の方向に所定の長さだけ延在する平板状のガセット部が一体的に形成され、当該ガセット部がレーザー溶接によって、前記第1の骨に接合されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、鉄道車両用の側構体において、部品点数を低減すると共に縦骨と横骨とを均一な品質で安定的に接合できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係る側構体構造を示す正面図である。
【図2】図1において、ガセット一体型縦骨の円Aで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図3】図2のガセット一体型縦骨におけるガセット部の寸法精度要求の説明図である。
【図4】図1において、ガセット一体型縦骨の円Bで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図5】本発明に係るガセット一体型縦骨のガセット部におけるレーザー溶接位置の説明図である。
【図6】本発明に係るガセット一体型縦骨のガセット部におけるレーザー溶接長と、従来の栓溶接との関係を表す図である。
【図7】図1の側構体構造の変形例を示す正面図である。
【図8】図7において、ガセット一体型縦骨の円Cで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図9】従来の側構体構造の一例を示す正面図である。
【図10】特許文献3に記載の側構体構造を示す正面図である。
【図11】図10において、縦骨の円Yで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【図12】図11における縦骨、ガセット、及び横骨に対する寸法精度要求の説明図である。
【図13】図10において、縦骨の円Zで囲まれた部分の詳細構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に図1、図2、図3、図4、図5、図6、図7及び図8を参照して、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の構体構造について説明する。まず、図1に、本発明の実施の形態に係る構体構造を模式的に示す。同図は、上述の図10と同様に、但し本発明の実施の形態に係る側構体構造を、車両長手方向Dh及び車両高さ方向Dvに垂直な、車両の幅方向に見た状態を示している。本実施の形態に係る側構体構造BSは、図10における縦骨FMvdとガセットGt及び縦骨FMvwとガセットGtが、それぞれガセット一体型縦骨FMvsd及びガセット一体型縦骨FMvswに交換されている。
【0021】
基本的に、ガセット一体型縦骨FMvsdは、従来の縦骨FMvに所定数のガセットGtが一体的に形成されている。つまり縦骨FMvに相当する縦骨部Pfmvdの側部(出入口Dの開口端部側より離間した側面)より所定数のガセット部Pgtdが、出入口Dより離間するように車両長手方向Dh方向に連続的に延在している。一方、ガセット一体型縦骨FMvswは、縦骨FMvに相当する縦骨部Pfmvwの側部(窓Wに隣接する側面)より、1枚の矩形状のガセット部Pgtwが窓W側に向かって連続的に延在している。なお、図1において、ガセット一体型縦骨FMvsd及びガセット一体型縦骨FMvswの円A及び円Bで囲まれた部分の詳細な構造をそれぞれ図2及び図4に示す。
【0022】
まず、図2を参照して、ガセット一体型縦骨FMvsdと横骨FMhとの連結について説明する。図2(a)に、ガセット一体型縦骨FMvsdを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図2(b)にガセット部Pgtdを上から車両高さ方向Dv及び車両長手方向Dhに垂直な車両幅方向Dw(図示せず)に見た様子を示し、図2(c)にガセット部Pgtdを窓W側から車両長手方向Dh方向に見た様子を示す。
【0023】
図2に示すように、ガセット部Pgtdの下面に、横骨FMhの上面が接した状態で、ガセット部Pgtdの上面から横骨FMhの上面に向かってレーザー溶接Wlが施されて、連結される。レーザー溶接Wlは、必要とされる接合強度を得るために所定の方向に所定の長さに渡って行われる。なお、図2(b)に示す例においては、ガセット部Pgtdの延在方向(車両長手方向Dh)に平行にレーザー溶接Wlhが2本、ガセット一体型縦骨FMvsdの延在方向(車両高さ方向Dv)に平行にレーザー溶接Wlvが1本施されている。本発明においては、従来の栓溶接Wpにレーザー溶接Wlが置き換えられるものであり、この観点より、必要とされるレーザー溶接Wlの長さ等の条件について、後ほど図6を参照して詳しく説明する。
【0024】
図2(a)に示すように、縦骨部Pfmvdは、横骨FMhの高さよりも大きい所定の段差を有する。縦骨部Pfmvdは、横骨FMhに近接する方向にほぼ直角に折り曲げられて、横骨FMhの上面に接するガセット部Pgtdに繋がっている。なお、縦骨部Pfmvdはこれ以外の形状を有してもよく、例えば、横骨FMhに近接する方向に傾斜して、ガセット部Pgtdに繋がってもよい。
【0025】
次に、図3を参照して、ガセット一体型縦骨FMvsdに対する寸法精度要求について説明する。図3(a)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsdには、2段に渡って所定の段差が設けられている。ガセット一体型縦骨FMvsdの下面(外板Peの内面に接する面)と、ガセット部Pgtdの下面(横骨FMhの上面に接する面)とは、所定の段差(本例においては、30mm)を有している。そして、横骨FMhも所定高さ(本例においては、30mm)を有している。
【0026】
そのため、ガセット部Pgtdを横骨FMhに正しく接合させるためには、ガセット一体型縦骨FMvsdにおいて、図3(b)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsdの下面とガセット部Pgtdの下面との段差の寸法形状精度のみを確保すればよい。さらに、上述したように、ガセット一体型縦骨FMvsdの縦骨部Pfmvdは、横骨FMhに近接する方向にほぼ直角に折り曲げられて、あるいは傾斜して、ガセット部Pgtdに繋がっている。上記段差の寸法形状や横骨FMhの高さに誤差があっても、縦骨部Pfmvdの直角に折り曲げられた部分、あるいは傾斜した部分の変形によって、誤差を吸収することが可能である。
【0027】
次に、図4を参照して、ガセット一体型縦骨FMvswと横骨FMhとの連結について説明する。図4(a)に、ガセット一体型縦骨FMvswを車両高さ方向Dvに上から見た様子を示し、図4(b)にガセット部Pgtwを車両幅方向Dwに見た様子を示す。
【0028】
上述した通り、ガセット一体型縦骨FMvsdが所定数のガセット部Pgtdを含む。そして、所定数のガセット部Pgtdのそれぞれは、出入口Dより離間するように車両長手方向Dh方向に連続的に延在している。これに対し、ガセット一体型縦骨FMvswは1枚の矩形状のガセット部Pgtwを含む。具体的には、ガセット一体型縦骨FMvswにおいて、縦骨部Pfmvwの側部(窓Wに隣接する側面)より、1枚の矩形状のガセット部Pgtwが窓W側に向かって連続的に延在している。図4(a)に示すように、ガセット一体型縦骨FMvswは、いわゆるハット形状の断面を有し、車両の内部に向かって開口する凹部を形成している。この開口は、電線などのケーブル類を収容するダクトとして用いられる。
【0029】
図4に示すように、ガセット部Pgtwの下面に、横骨FMhの上面が接した状態で、ガセット部Pgtwの上面から横骨FMhの上面に向かってレーザー溶接Wlが施されて、連結される。レーザー溶接Wlは、必要とされる接合強度を得るために所定の方向に所定の長さに渡って行われる。なお、図4(b)に示す例においては、ガセット部Pgtwの延在方向(車両長手方向Dh)に平行にレーザー溶接Wlhが2本施されている。本発明においては、従来の栓溶接Wpがレーザー溶接Wlに置き換えられるものである。この観点より、必要とされるレーザー溶接Wlの長さ等の条件について、後ほど図6を参照して説明する。
【0030】
次に、図4(a)を参照して、ガセット一体型縦骨FMvswに対する寸法精度要求について説明する。ガセット一体型縦骨FMvswは、そのガセット部Pgtwの下面が横骨FMhの上面に接した状態で、レーザー溶接により連結される。ガセット部Pgtwを横骨FMhに正しく接合させるためには、ガセット一体型縦骨FMvswにおいて、ガセット部Pgtwの下面の寸法形状精度のみを確保すればよい。
【0031】
次に、図5を参照して、レーザー溶接Wlの施工箇所について説明する。レーザー溶接には、接合される2つの部材(ガセット部Pgtと横骨FMh)の接合面での平面度および離間距離の管理が重要である。本発明に係るガセット一体型縦骨FMvsdのガセット部Pgtは、縦骨部Pfmvと一体的に形成されているが、図5に示すように、縦骨部Pfmvから屈曲された後に横骨FMhと接するようにして、レーザー溶接される。この意味において、ガセット一体型縦骨FMvsdの板厚をtとした、屈曲部の曲率半径を2.5tとすると、ガセット部Pgtのハット形状の頭頂の平坦部は、それぞれ端から2.5tが屈曲している。そのために、安全をみて、ガセット部Pgtの頭頂の平坦部の両端からそれぞれ4t以上内部の領域がレーザー溶接に適していると判断される。
【0032】
次に図6を参照して、レーザー溶接Wlの長さに対する要求について説明する。図6は、所定の接合強度を得るために必要な溶接面積を、レーザー溶接(溶接長)及び従来の栓溶接(断面積)それぞれについて示す図である。同図より、栓溶接に取って代わるために必要なレーザー溶接長を知ることができる。なお、レーザー溶接の強度は、栓溶接とは異なり、溶接線長によって決定される。また、レーザー溶接は、同一の線長であっても、その向きや場所によっても、ガセット部Pgtと横骨FMhとの溶接強度は異なる。よって、レーザ溶接する場所や方向に基づいて、図6より読み取れるレーザー溶接長を適宜修正して決定されるものである。
【0033】
次に図7及び図8を参照して、図1に示した側構体構造の変形例について説明する。同図に示すように、本変形例に係る側構体構造BS’は、側構体構造BSにおいて、ガセット一体型縦骨FMvswがガセット一体型縦骨FMvsw’に交換されている。なお、ガセット一体型縦骨FMvsw’は、上述のガセット一体型縦骨FMvsdと概ね同様の形状に構成されている。但し、ガセット一体型縦骨FMvsdが出入口Dの開口端部に、縦骨部Pfmvdが隣接して、ガセット部Pgtdが同開口(出入口D)端部より離間する(窓Wに向う)方向に延在している。これに対して、ガセット一体型縦骨FMvsw’では、縦骨部Pfmvw’が窓Wの開口端部に隣接して、ガセット部Pgtw’が同開口(窓W)端部より離間する(出入口Dに向かう)方向に延在している。
【0034】
このように、ガセット部Pgt(Pgtd、Pgtw、及びPgtw’を総称)が開口端部の他方側に延在する点に関しては、ガセット一体型縦骨FMvs(ガセット一体型縦骨FMvsd、FMvsw、及びFMvsw’を総称)とも同じである。つまり、開口端部においては、ガセット部Pgtは、一体的に形成されている縦骨部Pfmv(縦骨部Pfmvd、Pfmvw、及びPfmvw’を総称)を横骨FMhの一端にレーザー溶接により接続している。
【0035】
なお、図8に示すように、ガセット一体型縦骨FMvsw’においては、ガセット一体型縦骨FMvswにおけるのと同様に、ガセット部Pgtw’の一部が、出入口Dの開口端部から窓Wの下部に渡って延在する横骨FMhをレーザー溶接Wlhで縦骨部Pfmvw’に接続している。
【0036】
上述のように、従来は横骨と縦骨とを接合するのに、側構体の組み立て現場で、別体のガセットを横骨と縦骨とにまたがって載置させ(現場合わせ)、ガセットを横骨と縦骨との両方に栓溶接している。本発明では、ガセット部と縦骨部とが一体的に形成されたガセット一体型縦骨を用いて、ガセット部を横骨にレーザー溶接して側構体を構成している。これにより、従来必須であるガセットの縦骨への栓溶接を不要とし、ガセットの作成、準備、管理、及びガセットの栓溶接に要する工数低減を実現している。つまり、本発明においては、ガセット部には従来のガセットでは必須であった縦骨との溶接に供される部分を不要として、その分の軽量化、省資源化を実現している。
【0037】
また、実施形態に示したように、ガセット部は接合する横骨の個々に対応して個々に縦骨部より車両長手方向に延在させても良いし、変形例に示すように接合する横骨の個々に対応するのではなく、車両長手方向に所定の長さだけ延在させてもよい。変形例の場合は、実施の形態の場合に比べてガセット部の量が多くなるが、ガセット一体型縦骨つまり側構体の構造強度はより強くなる。なお、実施の形態及び変形例の何れの場合においても、従来は個別に分離していたガセットが車両高さ方向に連続したガセット部として縦骨部と一体的に構成されているために、従来のガセットを用いた側構体構造にくらべて、より強い構造強度を得る。
【0038】
また、ガセット部と横骨との接合は、従来の作業者の手作業による栓溶接の代わりに、レーザー溶接装置により自動化されたレーザー溶接が用いられる。これにより、現場合わせ及び作業者の熟練度、また作業者の状態に起因する溶接品質のバラツキを抑えて、側構体構造としての品質を向上すると共に安定できる。また、レーザー溶接(機械化)により工数も削減でき、省資源化及び省エネ化も実現できる。なお、上述の実施の形態及び変形例においては、ガセット一体型縦骨は、その縦骨部を開口部の端部に近接して用いる例が示されている。しかしながら、ガセット一体型縦骨FMvsは、図4或いは図5に示す形状に構成した場合には、縦骨部を開口部の端部ではなく、横骨上の任意の位置に配置して用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、鉄道車両の構体、つまり、外板の内側に縦横に配した骨を接合した鉄道車両の側構体の製造に利用できる。
【符号の説明】
【0040】
BS、BS’ 側構体構造
Pe 外板
D 出入口
W 窓
FMvsd、FMvsw、FMvsw’ ガセット一体型縦骨
Pfmvd、Pfmvw、Pfmvw’ 縦骨部
Pgtd、Pgtw、Pgtw’ ガセット部
FMh 横骨
Wl、Wlv、Wlh レーザー溶接
FMv、FMvd、FMvw 縦骨
Gt ガセット
Wp 栓溶接
Dh 車両長手方向
Dv 車両高さ方向
Dw 車両幅方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外板の内側に、縦横に配した骨を接合して構成される鉄道車両の側構体構造であって、
開口部を除き前記鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向に延在して配され、前記外板に溶接接合される第1の骨と、
前記第1の方向に概ね垂直な第2の方向に連続して配される前記外板に溶接接合される第2の骨とを備え、
前記第2の骨は、前記第1の方向に所定の長さだけ延在する平板状のガセット部が一体的に形成され、当該ガセット部がレーザー溶接によって、前記第1の骨に接合されていることを特徴とする側構体構造。
【請求項2】
前記第2の骨は、前記開口部の端部に隣接して配され、前記ガセット部は前記開口部の端部より離間するように延在することを特徴とする請求項1に記載の側構体構造。
【請求項3】
前記第2の骨は、前記開口部の端部及び前記第1の骨の端部に隣接して配されていることを特徴とする請求項2に記載の側構体構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記鉄道車両の出入口であることを特徴とする、請求項3に記載の側構体構造。
【請求項5】
前記開口部は、前記鉄道車両の窓であることを特徴とする、請求項2に記載の側構体構造。
【請求項6】
前記ガセット部は、前記第1の骨に対応して、部分的に突出した形状であることを特徴とする、請求項2及び請求項3の何れか1項に記載の側構体構造。
【請求項7】
前記ガセット部は、前記第1の骨に関係なく全体的に突出形状であることを特徴とする、請求項1及び請求項5の何れか一項に記載の側構体構造。
【請求項1】
外板の内側に、縦横に配した骨を接合して構成される鉄道車両の側構体構造であって、
開口部を除き前記鉄道車両の長手方向に平行な第1の方向に延在して配され、前記外板に溶接接合される第1の骨と、
前記第1の方向に概ね垂直な第2の方向に連続して配される前記外板に溶接接合される第2の骨とを備え、
前記第2の骨は、前記第1の方向に所定の長さだけ延在する平板状のガセット部が一体的に形成され、当該ガセット部がレーザー溶接によって、前記第1の骨に接合されていることを特徴とする側構体構造。
【請求項2】
前記第2の骨は、前記開口部の端部に隣接して配され、前記ガセット部は前記開口部の端部より離間するように延在することを特徴とする請求項1に記載の側構体構造。
【請求項3】
前記第2の骨は、前記開口部の端部及び前記第1の骨の端部に隣接して配されていることを特徴とする請求項2に記載の側構体構造。
【請求項4】
前記開口部は、前記鉄道車両の出入口であることを特徴とする、請求項3に記載の側構体構造。
【請求項5】
前記開口部は、前記鉄道車両の窓であることを特徴とする、請求項2に記載の側構体構造。
【請求項6】
前記ガセット部は、前記第1の骨に対応して、部分的に突出した形状であることを特徴とする、請求項2及び請求項3の何れか1項に記載の側構体構造。
【請求項7】
前記ガセット部は、前記第1の骨に関係なく全体的に突出形状であることを特徴とする、請求項1及び請求項5の何れか一項に記載の側構体構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−18369(P2013−18369A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153322(P2011−153322)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)
【Fターム(参考)】
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