説明

鉄道車両用の段積みストッカー

【課題】
鉄道車両のメンテナンス工場において、重量物を狭いスペースに保管する。
【解決手段】
鉄道車両用の段積みストッカー100は、入庫用コンベア11と、出庫用コンベア12と、複数台の搬送コンベア20を有する。複数台の搬送コンベア位置に対応して保管用基台16が備えられている。入庫用コンベアと出庫用コンベア間に複数の搬送コンベアを一直線状に配置する。保管用基台の両側面であって上部に開閉可能な支え腕40を配置する。記複数の搬送コンベアのそれぞれの中間部に上下に移動可能なリフター17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は段積みストッカーに係り、特に鉄道車両のメンテナンス工場に配置して好適な段積みストッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の段積みストッカーの例が、特許文献1および特許文献2に記載されている。これらの公報では、リフターを用いたストッカーシステムにおいて、コンベヤ上に複数段積み重ねた空容器を容器昇降支受機体により1箱ずつ段バラシをし、その後再び段積みする工程を繰り返すことが記載されている。その際、ストッカーシステムの設置場所等の設置条件に適合させるために、特許文献1では段積み状態の容器をコンベヤ上に1箱ずつ降ろす段バラシ用の容器昇降支受機体と、下ろした容器を所定位置まで移動させた後にその場所で1個ずつ上昇させて積み重ねる段積み用の容器昇降支受機体との間隔を調整可能にしている。また、特許公報2では簡易な装置で省力化を図るために、低床型コンベヤ上に所定の間隔を保持して一対の容器昇降支受機体を対向配置し、一方の段バラシ用の容器昇降支受機体の容器支受体で段積みした容器のうち、最下段の容器から順次ばらして他方の段積み用の容器昇降支受機体の位置まで移動させる。そして、移動した容器を掛止爪で係止して所定の高さまで上昇させている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−305925号公報
【0004】
【特許文献2】特開平10−7253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の段積みストッカーは、比較的軽量部材を比較的余裕のある場所で用いる際には有効であるが、鉄道車両の部品等をストックするストッカーとして用いるものではないので、重量物の搬送や、鉄道車両のメンテナンス工場等の十分なスペースが確保できない位置でいかに効率よくストックするかについては十分には考慮されていなかった。鉄道車両のメンテナンス工場では、ストッカーがストックする新幹線用エアコン装置や変圧器の大きさは、長さが3.2m、幅が2.4m、高さが0.8mもあり、重量は約2トンにも達する。したがって、新幹線の修理工場のように、専用のストック位置を確保できる場合を除いて、既設の小規模な臨修工場ではストッカーのための専用のスペースを確保することが困難である。そのため、作業に支障のない範囲で、空スペースにストック部品を平置きするのが実状である。その結果、ストック可能な量が限られ、機種の多様化に対応できないという不都合が生じている。
【0006】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、自動倉庫(スタッカクレーン方式)を設置できない狭隘なスペースにも設置可能で、かつ自動的に入出庫できる鉄道車両用のストッカーを実現することにある。本発明の他の目的は、鉄道車両用のストッカーにおいて、在庫管理を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の特徴は、入庫用コンベアと、出庫用コンベアと、複数台の搬送コンベアを有し、この複数台の搬送コンベア位置に対応して設けられた保管用基台とを備え、専用パレットに載置された物品を保管する鉄道車両用の段積みストッカーにおいて、前記入庫用コンベアと出庫用コンベア間に複数の搬送コンベアを一直線状に配置し、前記保管用基台の両側面であって上部に開閉可能な支え腕を配置し、前記複数の搬送コンベアのそれぞれの中間部に上下に移動可能なリフターを設けたことにある。
【0008】
そしてこの特徴において、支え腕は、閉じたときに上面部がほぼ水平になり、前記専用パレットの底面部を支持可能であるのがよく、リフターは前記支え腕の専用パレット支持面よりも上方まで専用パレットの底面を持ち上げることが可能であることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開閉可能な支え腕を搬送コンベアの位置に設けた保管用貴台に設け、リフターで専用パレットを支え腕の上方まで持ち上げることを可能にしたので、狭隘なスペースであっても、効率よく重量物を保管できる。また、在庫管理が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る段積みストッカー100の一実施例を、図1ないし図5を用いて説明する。図1は、段積みストッカーの3面図であり、同図(a)はその上面図、同図(b)はその正面図、同図(c)はその側面図である。図2は、この段積みストッカー100に用いる専用パレット30の3面図であり、同図(a)〜(c)は、それぞれ上面図および正面図、側面図である。図3は専用パレット30上に積載した鉄道車両用部品を段バラシするときに用いる専用パレット110を係止する段バラシ用支え腕120の動作を説明する図である
本実施例では、一直線状に6個の搬送コンベア20を並べている。搬送コンベア20の群の一方端には入庫用コンベアが11、反対端には出庫用コンベア12が、搬送コンベア20群の方向に向きを合わせて配置されている。各コンベア11、12、20は、その高さがほぼ同じに位置決めされている。さらに、各コンベア11、12、30では、コンベアベルトの回転方向両端側に、コンベアベルトを回転駆動する駆動ローラが取り付けられた駆動軸および従動ローラが取り付けられた従動軸が配置されている。駆動ローラおよび従動ローラは、各コンベアの幅方向両端側に配置されており、コンベアベルトは、幅方向両端側に配置されている。すなわち、1対のコンベアベルトの幅方向中間位置は、空間部になっている。各コンベア11、12、20の駆動軸には図示しない駆動モータが取り付けられており、図示しない制御装置からの制御指令に応じて同期して回転する。
【0011】
搬送コンベア20のコンベアベルトの回転方向両端部であって、その幅方向両外側には、支柱16aが連立されている。支柱16aは、ベース板16bに取り付けられており、ベース板16bとともに保管用基台16を形成する。各支柱16aの上部には、詳細を図3に示す段バラシ用支え腕40が取り付けられている。段バラシ用支え腕40は、搬送コンベア20の幅方向に揺動可能に、支柱16aに取り付けられている。
【0012】
各搬送コンベア20に形成された空間部には、リフター17が配置されている。リフター17は、専用パレット30の底面に当接する当接部材18bと、保管用基台16のベース板16bに固定された底部材17cと、中間部を互いにピンで固定され交差する交差部材17aとを有する。交差部材17aは、底部材17cおよび当接部材17bに摺動可能に取り付けられている。
【0013】
図2に、専用パレット30の詳細を示す。専用パレット30は、矩形状の底板34の各角部に屹立させた4本の支柱32と、隣り合う2本の支柱32間に斜めに渡された補強材38と、底板34の縁部を補強する縁部材36とを有する。専用パレット30の対向する2辺は、斜めの補強部材38が配置されていないので、この方向をコンベア11、12、20の幅方向と一致させて、コンベア11、12、20上に載置する。
【0014】
支柱16aの上部に取り付ける段バラシ用支え腕40は、シリンダロッド機構48により、回動可能になっている。具体的には、L字型の支え台部材42は、短辺部が専用パレット30の底面を支持可能になっており、長辺の端部がピン42aにより回動可能に支柱16aに取り付けられている。L字型の支え台部材42の長辺の途中に、係止部材43が固定されている。そして、係止部材43は支え台部材42の支え部と反対方向に延びている。
【0015】
係止部材43の先端部にピン42bにより、リンク部材45が回動可能に取り付けられている。シリンダロッド機構48は、一端がリンク部材45の先端部にピン45aで回動可能に取り付けられている。シリンダロッド機構48の他端は、ピン48aにより支柱16aに取り付けられている。シリンダロッド機構48は、シリンダ48cとこのシリンダに一端側が挿入されたロッド48bとを有しており、シリンダロッド機構48を回動させることにより、ロッド48bのシリンダ48cへの挿入長さが変化する。図3に示すように、専用パレット30を保持する状態(同図(b)参照)から専用パレット30を保持する状態を解除する(同図(a))ときは、図示しない制御装置が、シリンダロッド機構48のピン48aに連結されたモータを駆動する。
【0016】
このように構成した段積みストッカー100の動作を、以下に説明する。本実施例では、保管用基台16ごとに最大4個の専用パレット30を積載可能である。したがって、本システムでは、最大24個の専用パレットを使用できる。初めに、段積み動作を説明する。段積み動作では、空の専用パレット30を入庫コンベヤ11上に載置する。図示しない天井クレーンや可動式のリフター、フォークリフト等を用いて、専用パレット30上に鉄道車両用のエアコン装置や変圧器を載置する。
【0017】
図示しない制御装置が、保管物を載せた専用パレット30の搬送位置および保管位置を指令し、入出庫コンベア11、12および搬送コンベア20を同期して回転させる。なお、このとき、搬送位置が入出庫コンベア11、12間の途中までであれば、入庫コンベア11から搬送位置までのコンベア20だけを回転させるようにしてもよい。また、物品の搬送を終えたコンベア11、20を停止させるようにしてもよい。
【0018】
搬送位置および保管位置の詳細を、図4を用いて説明する。各コンベア11、12、20および保管位置には、2つの指標A、Bからなる番号(A−B)が付されている。指標Aは、コンベア11、12、20の並び順を示す指標であり、0が入庫コンベア11、1〜6が搬送コンベア20、7が出庫コンベア12を表す。指標Bは、専用パレット30の積層方向位置(高さ位置)を示す指標であり、0はコンベア11、12、20上にある状態を、1は段バラシ用支え腕40に専用パレット30の底面が支持されている状態を、2〜4は専用パレット30が積層されている状態をそれぞれ示す。
【0019】
例えば、A指標として4番地を指定すると、1−0の状態からスタートし、4−0の状態になるまで入庫コンベヤ11および搬送コンベア20上を、物品が載置された専用パレット30が自動搬送され、4個目の搬送コンベア20の位置まで搬送され、4−0の状態で停止する。4個目の搬送コンベア20まで専用パレット30が搬送されたのを制御装置が検出すると、段バラシ用支え腕40を制御装置が駆動し、シリンダロッド機構48を回動させる。これにより、段バラシ用支え腕40は外側に開く。4個目の搬送コンベア20位置に設けたリフター17が伸びてリフター17の当接部材17bが上昇し、専用パレット30の底面に当接する。
【0020】
リフター17の当接部材17bはさらに上昇を続け、段バラシ用支え腕40より若干上の位置まで上昇したら停止する。リフター17の上昇が停止したら、制御装置が段バラシ用支え腕40を起動させ、段バラシ用支え腕40を専用パレット30の支持状態である閉じる状態にする。段バラシ用支え腕40が閉じた状態であることを確認して、リフター17を下降させる。この状態を、図5に示す。
【0021】
リフター17が下降すると、専用パレット20の底面は段バラシ用支え腕40の支持部に当接し、以後リフター17の代わりに段バラシ用支え腕40が専用パレット20支持する。リフター17は下降を続け、リフター17の当接部材17bが搬送コンベア20の上面よりも下に引き込まれ、他の専用パレット20の搬送に支障をきたさない位置で保持される。コンベア11、12、20での搬送およびリフター17の上昇、段バラシ用支え腕40の開閉、リフター17の下降の一連の動作を繰り返して、専用パレット30に保持された物品を保管位置に保管できる。なお、上下に積層される専用パレット30は、上側に位置する専用パレット30の底面に、下側に位置する専用パレット30の支柱32の先端が嵌合するので、積層による不具合、特に地震時であってもずれを生じない。
【0022】
次に、段バラシ動作を説明する。上記とは逆の手順で段バラシ用支え腕40およびリフター17を使用して必要な専用パレット30を取り出す。具体的には、4番地に専用パレット30が4段積みされていて、4−4の位置に保管された専用パレット30を段バラシする例では、初めに4−1の位置に保管された専用パレット30を段バラシする。このとき、リフター17が上昇し4−1〜4−4に保管された専用パレット30全体を段バラシ用支え腕40の上方へ持ち上げる。段バラシ用支え腕40を開く。
【0023】
4−2の位置に保管され専用パレット30が段バラシ用支え腕40より若干上に到達したら、リフター17を下げる。段バラシ用支え腕40を閉じる。リフター17を下限まで下げ、4−1の位置にある専用パレット30を搬送コンベヤ20上に載せる。4−2〜4−4の位置に保管された専用パレット30は、段バラシ用支え腕40に支えられ、4−1に保管された専用パレット30を切り離すことができる。4−0の位置へ4−1の位置にある専用パレット30が降ろされたので、搬送コンベヤ20を使用して3−0→2−0→1−0の順に専用パレット30を搬送する。
【0024】
次に、4−2の位置に保管された専用パレット30を4−0の位置に降ろし、3−0→2−0の順に搬送する。さらに、4−3の位置に保管された専用パレットを4-0の位置に降ろし、3−0の位置に搬送する。最後に、4−4の位置に保管された専用パレット30を、4−0へ降ろし、搬送コンベヤ20および出庫コンベヤ12を使用して4−0→5−0→6−0→7−0の順に専用パレット30を搬送する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る段積みストッカーの一実施例の3面図。
【図2】図1に示した段積みストッカーに用いる専用パレットの3面図。
【図3】図1に示した段積みストッカーに用いる段バランス用支え腕の動作を説明する図。
【図4】段積みおよび段ばらし動作を説明する図。
【図5】段ばらし機能を説明する図。
【符号の説明】
【0026】
11…入庫コンベア、12…出庫コンベア、16…保管用基台、17…リフター、20…搬送コンベア、30…専用パレット、40…段バラシ用支え腕、50…物品、100…段積みストッカー。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入庫用コンベアと、出庫用コンベアと、複数台の搬送コンベアを有し、この複数台の搬送コンベア位置に対応して設けられた保管用基台とを備え、専用パレットに載置された物品を保管する鉄道車両用の段積みストッカーにおいて、前記入庫用コンベアと出庫用コンベア間に複数の搬送コンベアを一直線状に配置し、前記保管用基台の両側面であって上部に開閉可能な支え腕を配置し、前記複数の搬送コンベアのそれぞれの中間部に上下に移動可能なリフターを設けたことを特徴とする鉄道車両用の段積みストッカー。
【請求項2】
前記支え腕は、閉じたときに上面部がほぼ水平になり、前記専用パレットの底面部を支持可能であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用の段積みストッカー。
【請求項3】
前記リフターは前記支え腕の専用パレット支持面よりも上方まで専用パレットの底面を持ち上げることが可能であることを特徴とする請求項2に記載の鉄道車両用の段積みストッカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−206258(P2006−206258A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−20550(P2005−20550)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(000233077)株式会社 日立インダストリイズ (97)
【Fターム(参考)】