説明

鉄道車両用チャイルドシート

【課題】 座席への装着が容易であり、幼児を安全に着席させることができる鉄道車両用チャイルドシートを提供する。
【解決手段】 鉄道車両用チャイルドシートにおいて、鉄道車両内の座席1のシート2の幅と同じ幅を有し、前記座席1の背もたれ4側に所定の高さを持って密着するように配置される折り畳み型のチャイルドシート5と、このチャイルドシート5上に着席した幼児7に装着されるシートベルト8とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用チャイルドシートに関するものであり、特に、新幹線や特急列車などへ配置する携帯型鉄道車両用チャイルドシートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の多くは大人用の座席しかなく、通常、幼児は大人の膝の上に座らせている。従来の大人用座席に幼児が一人で座った場合、車窓の高さに目が届かないので、幼児は車窓から外の景色を満喫することができない。また、シートベルトがないので転落の危険性がある。
幼児が座席に一人で座るための鉄道車両用チャイルドシートとしては、下記に開示されるようなものがあった。
【0003】
(1)水戸岡鋭治氏がJR九州の特急列車のために新しくデザインした、二人用座席の1つが子供専用、もう1つが大人専用となっている「親子座席」
(2)背もたれと、座席面と、子供を車両用チャイルドシートに固定するための一体型ベルトシステムとを有する車両用チャイルドシート(下記特許文献1参照)
(3)航空機や電車に持ち込むことを想定した、折畳式チャイルドシート(下記特許文献2参照)
(4)大人用座席とは別個に設置されるチャイルドシート(下記特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−247825号公報
【特許文献2】特開2000−343993号公報
【特許文献3】特開2001−088796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した(1)の親子座席では、子供専用座席に大人が座ることができない。そのため、特に、新幹線など大人の利用客が多い車両では、この親子座席を適用することは難しいといった問題があった。
また、上記した(2)の一体型ベルトシステムを有する車両用チャイルドシートは、その取付けが煩雑であり、迅速な着脱を要求される新幹線などへの適用には難があるといった問題があった。
【0006】
さらに、上記した(3)の折畳式チャイルドシートは、持ち歩き可能な携帯型チャイルドシートを座席へ設置するものであり、鉄道車両の座席へ備え付けておくものとして考慮されたものではない。
そこで、大人用座席を必要に応じて子供用座席にすることができる、着脱が簡単、コンパクトに収納できるチャイルドシートが望まれている。
【0007】
本発明は、上記状況に鑑みて、座席への装着が容易であり、幼児を安全に着席させることができる鉄道車両用チャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道車両用チャイルドシートにおいて、鉄道車両内の座席のシートの幅と同じ幅を有し、前記座席の背もたれ側に所定の高さを持って密着するように配置される折り畳み型のチャイルドシートと、このチャイルドシート上に着席した幼児に装着されるシートベルトとを具備することを特徴とする。
【0009】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記チャイルドシートは幅方向中央で半分に折り畳み可能で、その裏面に起倒自在に配置されるロックピン付き脚部を具備することを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記チャイルドシートは幅方向両外側部を軸にして中央部から観音開きが可能な、前記チャイルドシートの両側に設けられる、枢着部材及びロックピン付き脚片を具備することを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔3〕記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記座席のシートの両脇にレールガイドを取り付けるとともに、前記脚片の先端部にレールを配備し、前記レールガイド上に前記レールをスライド係合させることにより、前記座席のシートに前記チャイルドシートを設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、座席への着脱が容易であり、また、コンパクトに折り畳むことができ、収納しやすい鉄道車両用チャイルドシートを提供することができる。
さらに、設置したチャイルドシートの座面は、大人用座席の座面より高くなるので、小さい幼児でも一人で座席に着席し、車窓からの眺めを満喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図である。
【図3】本発明の第1実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図である。
【図6】本発明の第2実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【図7】本発明の第2実施例の変形例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図である。
【図8】本発明の第2実施例の変形例を示す鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図である。
【図9】本発明の第2実施例の変形例を示す鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の鉄道車両用チャイルドシートは、鉄道車両内の座席のシートの幅と同じ幅を有し、前記座席の背もたれ側に所定の高さを持って密着するように配置される折り畳み型のチャイルドシートと、このチャイルドシート上に着席した幼児に装着されるシートベルトとを具備する。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図、図2はその鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図であり、図2(a)はそのチャイルドシートが2つに折り畳まれた状態(脚は倒されている状態)を示す図、図2(b)はそのチャイルドシートが広げられた状態(脚は倒されている状態)を示す図、図2(c)はそのチャイルドシートが広げられた状態(脚が起こされている状態)を示す図、図3はその鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【0015】
これらの図において、1は鉄道車両内の座席、2は座席1のシート、3は座席1のひじ掛け、4は座席1の背もたれ、5は座席1のシート2に装着される鉄道車両用チャイルドシート、5Aは面ファスナーからなる接続部、6は鉄道車両用チャイルドシート5の裏面に設けられる脚、6Aはチャイルドシート5を使用するために脚6を起こした際にロックを掛けるロックピン、6Bは畳まれている状態の脚6が収納される凹み、7は座席1に着席する幼児、8は幼児7の胴回りと股の間を通して座席1のシート2に幼児7を固定するシートベルトである。
【0016】
本実施例では、鉄道車両用チャイルドシート5は、図2に示すように、幅方向中央部で半分に折り畳まれる構造となっており、折り畳まれた時に露出する側面である接続部5Aには面ファスナーが設けられていて、チャイルドシート5を広げて使用する際に左右の座面を安定的に接続する。また、鉄道車両用チャイルドシート5の裏面には2本の脚6が配置されており、チャイルドシート5が半分に折り畳まれた状態の時は裏面に設けられた凹み6Bに収納される。なお、鉄道車両用チャイルドシート5の脚6の本数は、ここでは両側に1本ずつで合計2本だけ配置しているが、両側に2本ずつで合計4本配置するようにしてもよい。この鉄道車両用チャイルドシート5を設置することにより、チャイルドシート5の座面が高くなり、幼児7は大人と同様に車窓から外の景色を楽しむことができる。さらに、シートベルト8によりチャイルドシート5に幼児7を安全に着席させることができる。
【0017】
図3を参照しながら、本実施例の鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を説明する。
(1)まず、図3(a)に示すように、半分に折り畳まれた状態から、鉄道車両用チャイルドシート5の片側の脚6を起こして、座席1のシート2の背もたれ4側に密着させて配置する(ステップS1)。
【0018】
(2)次に、図3(b)に示すように、鉄道車両用チャイルドシート5のもう一方の脚6を起こす(ステップS2)。
(3)次に、図3(c)に示すように、鉄道車両用チャイルドシート5の座面が座席1の座面に水平になるように広げる(ステップS3)。なお、チャイルドシート5は座席1のシート2の幅と同じ幅で構成されている。
【0019】
(4)上記ステップS3で広げた鉄道車両用チャイルドシート5に、図3(d)に示すように、幼児7を座らせる(ステップS4)。
(5)最後に、図2(e)に示すように、幼児7の胴回りと股の間を通してシートベルト8を装着し、座席1のシート2に固定する(ステップS5)。なお、シートベルト8がチャイルドシート5に一体に取り付けられている場合は、座らせる際にシートベルト8が幼児7の胴回りと股の間を通るようにしてもよい。
【0020】
図4は本発明の第2実施例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図、図5はその鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図であり、図5(a)はそのチャイルドシートの脚片が畳まれた状態を示す図、図5(b)はそのチャイルドシートの脚片が起こされた状態(ロックが掛かった状態)を示す図、図6はその鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【0021】
これらの図において、11は鉄道車両内の座席、12は座席11のシート、13は座席11のひじ掛け、14は座席11の背もたれ、15は座席11のシート12に装着される鉄道車両用チャイルドシートである。このチャイルドシート15は、図5(a)に示すように、裏面に畳まれる2枚の脚片16を備えている。この2枚の脚片16は、図5(b)に示すように、チャイルドシート15の幅方向の両外側部を軸にして枢着部材16Aにより中央から両側へ観音開きに開かれ、垂下状になるとロックピン16Bでロックされるように構成されている。
【0022】
図6を参照しながら、本実施例の鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を説明する。
(1)まず、図6(a)に示すように、鉄道車両用チャイルドシート15の2枚の脚片16を開いて、座席11のシート12の背もたれ14側に密着させて配置する。(ステップS11)。なお、チャイルドシート15は座席11のシート12の幅と同じ幅で構成されている。
【0023】
(2)上記ステップS11で配置した鉄道車両用チャイルドシート15に、図6(b)に示すように、幼児17を座らせる(ステップS12)。
(3)最後に、図6(c)に示すように、幼児17の胴回りと股の間を通してシートベルト18を装着し、座席11のシート12に固定する(ステップS13)。なお、第1実施例と同様に、シートベルト18がチャイルドシート15に一体に取り付けられている場合は、座らせる際にシートベルト18が幼児17の胴回りと股の間を通るようにしてもよい。
【0024】
このように構成することで、鉄道車両用チャイルドシート15の脚片16を起こして座席11に設置することにより、チャイルドシート15の座面が高くなり、幼児17は大人と同様に車窓から外の景色を楽しむことができる。
図7は本発明の第2実施例の変形例を示す鉄道車両用チャイルドシートの装着状態を示す模式図であり、図7(a)はその全体斜視図、図7(b)は座席のシートに取付けられるレールガイドの斜視図、図8はその鉄道車両用チャイルドシートの構造を示す模式図であり、図8(a)はそのチャイルドシートの脚片が畳まれた状態を示す図、図8(b)はその鉄道車両用チャイルドシートの脚片が起こされた状態(ロックが掛かった状態)を示す図、図9はその鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を示す模式図である。
【0025】
これらの図において、11〜14,17,18は第2実施例で示した通りであり、この変形例では、さらに、車両内の座席11のシート12の両脇にレールガイド20を配置する。このレールガイド20は、例えば、図7(b)に示すように、レールガイド部20Aが設けられており、その裏面20Bは面ファスナーからなる。21は鉄道車両用チャイルドシートであり、図8(a)に示すように、裏面に畳まれる2枚の脚片22を備えている。この2枚の脚片22は、図8(b)に示すように、チャイルドシート21の幅方向の両外端部を軸にして中央から両側へ枢着部材22Aにより観音開きに開かれ、垂下状になるとロックピン22Bでロックされるように構成されている。また、この2枚の脚片22の先端部にはレールガイド部20Aとスライド係合するレール23が設けられている。
【0026】
図9を参照しながら、本変形例の鉄道車両用チャイルドシートの座席への装着過程を説明する。
(1)まず、図9(a)に示すように、座席11のシート12の両脇にレールガイド20を取り付ける(ステップS21)。
(2)次いで、図9(b)に示すように、鉄道車両用チャイルドシート21の2枚の脚片22を開き、この2枚の脚片22の先端部に設けられたレール23をシート12の手前側からレールガイド20のレールガイド部20Aにスライド係合させ、座席11のシート12の背もたれ14側に密着させてチャイルドシート21を配置する(ステップS22)。
【0027】
(3)上記ステップS22で配置した鉄道車両用チャイルドシート21に、図9(c)に示すように、幼児17を座らせる(ステップS23)。
(4)最後に、図9(d)に示すように、幼児17の胴回りと股の間を通してシートベルト18を装着し、座席11のシート12に固定する。なお、シートベルト18がチャイルドシート21との一体型の場合は、第1,第2実施例と同様に装着する(ステップS24)。
【0028】
このように構成することで、鉄道車両用チャイルドシート21の脚片22を起こして座席11に設置することにより、チャイルドシート21の座面が高くなり、幼児17は大人と同様に車窓から外の景色を楽しむことができる。また、レールガイド20のレールガイド部20Aにチャイルドシート21の2枚の脚片22の先端部に設けられたレール23をスライド係合させてチャイルドシート21を設置するようにしたので、第2実施例のチャイルドシート15に比べて座席への着脱をより容易に行うことができるとともに、チャイルドシート21が座席11のシート12により安全に固定される。
【0029】
上記各実施例において示した鉄道車両用チャイルドシートは、例えば座席のひじ掛け3,13内に折り畳んで収納しておくことも可能である。
また、本発明の鉄道車両用チャイルドシートは、第1,第2実施例に示すように、座席のシート幅と同じ幅で構成されているので、シートに設置後はひじ掛けと密着して固定されるが、更なる安全を期するために、座席へ固定するための固定ベルト等を具えるようにしてもよい。さらに、第2実施例の変形例では、固定ベルト等に代えて、設置後のレールのスライドを防止するロック機構を設けてもよい。
【0030】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の鉄道車両用チャイルドシートは、座席への装着が容易であり、幼児を安全に着席させることができる鉄道車両用チャイルドシートとして利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1,11 鉄道車両内の座席
2,12 座席のシート
3,13 座席のひじ掛け
4,14 座席の背もたれ
5,15,21 鉄道車両用チャイルドシート
5A 面ファスナーからなる接続部
6 脚
6A,16B,22B ロックピン
6B 凹み
7,17 幼児
8,18 シートベルト
16,22 脚片
16A,22A 枢着部材
20 レールガイド
20A レールガイド部
20B 面ファスナーを有する裏面
23 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両内の座席のシートの幅と同じ幅を有し、前記座席の背もたれ側に所定の高さを持って密着するように配置される折り畳み型のチャイルドシートと、
該チャイルドシート上に着席した幼児に装着されるシートベルトとを具備することを特徴とする鉄道車両用チャイルドシート。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記チャイルドシートは幅方向中央部で半分に折り畳み可能で、その裏面に起倒自在に配置されるロックピン付き脚部を具備することを特徴とする鉄道車両用チャイルドシート。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記チャイルドシートは幅方向両外側部を軸にして中央部から観音開きが可能な、前記チャイルドシートの両側に設けられる、枢着部材及びロックピン付き脚片を具備することを特徴とする鉄道車両用チャイルドシート。
【請求項4】
請求項3記載の鉄道車両用チャイルドシートにおいて、前記座席のシートの両脇にレールガイドを取り付けるとともに、前記脚片の先端部にレールを配備し、前記レールガイド上に前記レールをスライド係合させることにより、前記座席のシートに前記チャイルドシートを設置することを特徴とする鉄道車両用チャイルドシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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