鉄道車両用外幌の構造
【課題】連結部空間内の騒音が外部へ放出されることを抑制する遮音性の向上を図り、かつ、この遮音性の向上によっても外幌の耐久性を高める。
【解決手段】
車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部13と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部17とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部13と肩幌部17の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部13の先部の肉厚を、該側幌部13の内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部17における内側基部21aと外側基部22aと先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とする鉄道車両用外幌の構造。
【解決手段】
車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部13と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部17とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部13と肩幌部17の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部13の先部の肉厚を、該側幌部13の内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部17における内側基部21aと外側基部22aと先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とする鉄道車両用外幌の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両用外幌の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両における車体間の連結部の空間に、渡り通路を形成する内幌を設けるとともに該内幌の両側の外側に、車両の走行時に発生する騒音が車体間より放射されることを抑制する外幌を設ける構造が知られている。
【0003】
この構造として従来、例えば、図29乃至図31に示すように、連結された一方の車体101の妻面102と他方の車体103の妻面104間に通路105を構成する内幌106を架設し、該内幌106の左右の両側に、内幌106と離間して、一方の車体101の妻面102からU字状に突設した可撓性を有する一方の外幌107と、他方の車体103の妻面104からU字状に突設した可撓性を有する他方の外幌108を設け、これらの先部を図29、31に示すように、相互に対向接触させている。
【0004】
そして、この外幌107、108は、図30に示すように、車体101(103)の左右側面である略直立部、すなわち、妻面の側部111の範囲のみに設けられ、妻面102、104の肩部(車体の肩部)112と屋根部113に沿った部分には設けられていない。
【0005】
このような外幌107、108においては、連結部空間114内から車体の左右方向への騒音の放射は抑制されるが、連結部空間114内からの騒音が肩部112の開放部115を通じて矢印Kのように外部へ放射され車外への影響を与える。
【0006】
また、屋根側の開口部116から矢印Lのように放射される騒音の発生を抑制することが好ましい。
【0007】
そこで、従来、前記の外幌107、108を、車体の妻面における左右両側に配置するのみではなく、図32に示すように、略垂直の側幌部200の上部を延長して、前記妻面(車体)の肩幌部112において、外側へ膨出する湾曲状の肩幌部201を延設し、かつ、屋根縁に沿った屋根側幌部202を延設して前記妻面の肩部112の開口部115及び屋根側の開口部116からの騒音低減を図るものが特許文献1に知られている。
【特許文献1】特開2008−201405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記図32に示す外幌は、図33に示すように、横断面形状がU状で、かつ、その両側基部203、204を腰のある厚肉で形成し、先部205を可撓性を高めるために両側基部203、204よりも薄肉に形成されており、このような断面形状の外幌を前記図32に示すような肩幌部201において使用すると、次のような問題が生じる。
【0009】
前記の外幌の肩幌部201は、側幌部200と屋根側幌部202を結ぶ一体の形状となることから柔軟に変形し難くなる。
【0010】
そのため、この肩幌部201において、腰(剛性)が強い厚肉の両側基部203、204を有する外幌を使用した場合には、肩幌部201における内側辺300に大きなしわが多数発生し、かつ、該内側辺300の剛性が大きいことから、対向する外幌との間で擦れ
合うと、該部での亀裂が生じやすく、この亀裂が生じると、該部を起点として亀裂が広がり、外幌の耐久性が低減する虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、この湾曲状の肩幌部の耐久性を高める構造にして、耐久性の良い鉄道車両用外幌の構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部と肩幌部の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部の先部の肉厚を、該側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記肩幌部における前記側幌部と反対側の上部に、妻面の屋根縁に沿った上幌部を延設し、該上幌部の横断面形状を、前記側幌部の横断面形状と同等に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記上幌部における前記肩幌部と反対の側に、妻面の屋根縁に沿った屋根側幌を配置するとともに該屋根側幌の横断面形状を前記側幌部の横断面形状と同等に形成して、該屋根側幌と前記上幌部とで車両の連結部空間の上部全体を覆うようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことで、肩幌部の変形が容易になり、該部で発生するしわを少なくするとともに小さくし、亀裂の発生を低減して外幌の耐久性を高めることができる。
【0016】
請求項2記載の発明においては、上幌部を設けたものにおいても前記と同様の効果を発揮できる。
【0017】
請求項3記載の発明においては、屋根側幌を設けたものにおいても前記と同様の効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、図1乃至図28に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図12は実施例1を示す。
図1乃至図3は本発明の外幌を車体の妻面に付設した状態を示し、図1は側面図、図2は図1のA−A線で妻面側を見た図、図3は平面図である。
【0020】
連結された一方の車体1の妻面2の出入口3と、他方の車体4の妻面5の出入口6との間には、蛇腹状の内幌7が架設され、該内幌7内に渡り通路7aが形成されている。
【0021】
前記一方の車体1の妻面2には、前記内幌7の外側であって、妻面2の外周部に位置して一方の外幌8が付設されている。該一方の外幌8は、左側幌9と右側幌10と屋根側幌11の3部材に分割して構成されている。
【0022】
前記左側幌9は、妻面2の左側縁2a(車体の左側面12)に沿って内側に位置し略垂直方向に立上がるように形成された側幌部13と、妻面2の屋根縁2a(車体の屋根面14)に沿って内側に位置し、略水平方向で、車体妻面の内側(妻面の中央X−X)へ向うように形成された上幌部15と、前記側幌部13と上幌部15との間を、妻面2の肩部18において車体の肩面16より内側に位置して外方へ膨出するように湾曲して結合した肩幌部17とからなり、これら側幌部13と上幌部15と肩幌部17は継がって形成されている。
【0023】
すなわち、略垂直方向に立上がる側幌部13の上部に、妻面の中央側に中心O(図4参照)を有し、外側へ膨出するように湾曲した肩幌部17が延設され、更に、該肩幌部17の上部に略水平方向で妻面の内側(妻面の中央X−X)方向へ向うように上幌部15が延設されている。なお、実施例では、車体の肩面16が曲面で形成され、この曲面に沿って前記外幌の肩幌部17が湾曲に形成されている。
【0024】
更に、左側幌9は、前記側幌部13と上幌部15と肩幌部17を、該各部が後述するU状の横断面形状で、かつ、図2に示す一連の形状で、型成形により一体成形されているかもしくは、平板をU状に折り曲げて形成した前記側幌部13と上幌部15と、U状の横断面形状に型成形された肩幌部17を図2に示すような形状に継なげて形成されている。この左側幌9は、合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0025】
前記右側幌10は、図2に示すように、前記左側幌9に対して、車体1の妻面2の中央X−Xを中心として左右対称の形状に形成され、かつ、その構造は前記左側幌9と同様である。そのため、右側幌10については、前記左側幌9と同一部分に前記と同一符号を付して、その説明を省略する。なお、図の実施例では、右側幌10における上部幌15の水平方向の長さは、左側幌9の上部幌15よりも若干短く形成されている。
【0026】
前記屋根側幌11は、前記左側幌9の上幌部15の先端と、右側幌10の上幌部15の先端との間に、図2に示すように配置されている。
【0027】
次に、前記左側幌9の断面形状について図4乃至図8により詳述する。
図4に示す左側幌9の側幌部13の横断面形状(B−B線断面)は、図5に示すように、基端側に開口部25を有するU状に形成されている。すなわち、所定の間隔を有して平行に配置した板状の内側基部21と板状の外側基部22と、該両基部21、22の先部を連結する先細状(図の実施例では略半円状)の先部23とからなる。また、両基部21、22は、これを妻面に付設した際に、その妻面からの突出状態を保持するために剛性が大きく可撓性の小さい厚肉T1に形成され、先部23は、両基部21、22より薄肉T2に形成され、該先部23が両基部21、22に比べて剛性が小さく可撓性を大きくして形成されている。また、基部21、22から先部23への連結部24は、肉厚が漸減するように形成されている。
【0028】
前記上幌部15の横断面形状(B−B線断面)は、前記側幌部13の図5に示す横断面形状(B−B線断面)と同様に、妻面に固定される内側基部21と外側基部22とこれらの先を連結した先部23とでU状に形成した形状であり、その肉厚も同様に形成されているか、これらの肉厚、形状等の寸法は妻面の構造で異なることもある。
【0029】
前記肩幌部17の横断面形状(C−C線断面)は、図6に示すように、基端側に開口部25を有するU状に形成され、その外周形状は前記図5に示す側幌部13の外周形状と同一形状である。また、その板状の内側基部21aと板状の外側基部22aの肉厚T2は、前記図5に示す側幌部13の先部23の肉厚T2と同等に形成され、更に、その先部23aの肉厚T2は、前記図5の先部23の肉厚T2と同等に形成されている。すなわち、肩幌部17における内側基部21aと外側基部22aと先部23aの肉厚T2は前記側幌部13、上幌部15の内側基部21と外側基部22の肉厚T1よりも薄く形成されている。したがって、肩幌部17における図4に示す湾曲部R全体が薄肉に形成され、側幌部13、上幌部15よりも可撓性が大きくなっている。
【0030】
また、肩幌部17における両側基部21a、22aから側幌部13及び上部幌15への連結部25の肉厚は、図8に示すように、漸増している。
【0031】
また、前記右側幌10の側幌部13、肩幌部17、上部幌15も前記左側幌9の側幌部13、肩幌部17、上部幌15と同様の構造であるため、その説明は省略する。
【0032】
次に、車体1の妻面2に対する前記左側幌9と右側幌10の取付構造を図9乃至図11により説明する。
【0033】
なお、この取付構造を図2に示す右側幌10により説明する。
図9は図2におけるF−F線断面図、図10は図2におけるG−G線断面図、図11は図2おけるH−H線断面図である。
【0034】
前記車体1の妻面2には、前記右側幌10の側幌部13、肩幌部17、上部幌15を取付ける位置に沿って、かつ、これらの全長にわたって図9乃至図11に示すような、横断面が凹状の取付板40が一連に配置され、その基板41がボルト42により車体1の妻面に固定されている。
【0035】
そして、右側幌10の取付けは、図9乃至図11に示すように、両基部21、22、21a、22aの基端部21b、22bにおいて、前記取付板40、押え金45、47、及びボルト46、48で車体に取付けられている。
【0036】
なお、図2の左側幌9の車体1の妻面2に対する取付構造は、前記右側幌10の取付構造と同様であるため、その説明は省略する。
【0037】
上記の取付けにより、外幌8は、その内側基部21、21aと外側基部22、22aが妻面2より垂直に突出するように妻面2に固定されて取付けられる。
【0038】
次に、前記屋根側幌11について説明する。
該屋根側幌11は、その横断面形状(図2のH’―H’線断面形状)が、前記左右側幌9、10における上部幌15の横断面形状(H−H線断面形状)と同様に形成され、前記左側幌9の上幌部15の先端部と右側幌10の上部幌15の先端部との間において、図2に示すように、車体1の妻面2の屋根縁2a(車体の屋根面14)に沿って内側に位置して配置されている。更に、該屋根側幌11は、前記左右側幌9、10と同様に、合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0039】
該屋根側幌11の車体1の妻面2に対する取付構造は、前記図11に示す取付構造と同様である。そのため、その取付構造の説明は省略する。
【0040】
前記他方の車体4の妻面5には、図1、図3及び図12(b)に示すように、前記内幌7の外側であって、前記外幌8と同様に妻面5の外周部に沿って、かつ、前記外幌8と対向して他方の外幌8Aが付設されている。
【0041】
該他方の外幌8Aは、前記一方の外幌8と同様に左右側幌9、10と屋根側幌11とからなり、該他方の外幌8Aの左右側幌9、10は前記一方の外幌8と同様の側幌部13と肩幌部17と上幌部15とからなり、これらの横断面形状及び車体4との取付構造は前記一方の外幌8と同様である。更に、この外幌8Aにおける左右側外幌9、10と屋根側幌11も前記と同様に合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0042】
そして、一方の外幌8と他方の外幌8Aが、図1、3に示すように、相互に分割されて、一方の外幌8の先部23、23aと他方の外幌8Aの先部23、23aが、両車体1、4間の略中央で相互に押し付け合うように車体1、4に付設されている。
【0043】
なお、前記一方の外幌8における屋根側幌11と上幌部15との接合部8cと他方の外幌8Aにおける屋根側幌11と上幌部15との接合部8dは、図3に示すように、左右方向に齟齬して配置されている。
【0044】
前記側幌部13、肩幌部17、上幌部15、屋根側幌11は、図1、3及び図9乃至図11に示すように、その外側基部22、22aが車体1、4の妻面2、5の縁2a、5a(車体1、4の外面)より妻面2、5の内側へ所定の距離M偏位(図11参照)して配置されている。
【0045】
そして、前記側幌部13、肩幌部17、上幌部15、屋根側幌11の外側の妻面2には、図9乃至図11に示すように、妻面2、5の縁2a、5aから外側基部22、22aに向って外側へ膨出するように湾曲した湾曲部材50がボルト51により固設されている。
【0046】
前記実施例1においては、前記の構成により、次のような作用、効果を発揮する。
両車体1、4に付設された両外幌8、8Aの先部相互が接触することにより、両車体1、4間の連結部空間の外周部が両外幌8、8Aで被覆され、車両走行中における連結部空間内の騒音の側方への放射は側幌部13で抑制され、車体肩部からの斜め上方への放射は肩幌部17で抑制され、上方への放射は上幌部15及び屋根側幌11で抑制される。
【0047】
したがって、本実施例1においては、前記図29乃至図31に示す従来の外幌107、108において発生していた妻面の肩部からの騒音の放射(図30の矢印K方向の放射)を抑制できる。また、上部幌15及び屋根側幌11を設けたことにより、上方への騒音の放射を抑制できる。
【0048】
次に、車両走行中において、両外幌8、8Aが押し付けあった状態で相対的に変位すると、側幌部13と上幌部15及び屋根側幌11は、これらが略直線状であるため、内側又は外側へ容易に変位し、しわの発生が少なく亀裂の発生も少ない。
【0049】
また、肩幌部17においては、該肩幌部17の内側基部21aと外側基部22aの肉厚を、側幌部13、上幌部15の内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄くし、かつ、先部23aの肉厚も薄くしたので、該肩幌部17における内周部の変形が容易になり、肩幌部17での剛性が小さくなり、柔軟に変形できる。そのため、両外幌8、8Aの押付け状態での変位に際して、該肩幌部17が容易に変形し、発生するしわが少なくなるとともに小さくなり、該肩幌部17での亀裂の発生を低減できる。
【実施例2】
【0050】
前記実施例1では屋根側幌11を設けたが、図13、14、15に示すように、前記屋根側幌11を設けず、前記左側幌9及び右側幌10のみで外幌を構成しても良い。
【0051】
なお、本実施例2の左側幌9及び右側幌10の形状、材質、妻面への取付構造は前記実施例1と同様であるため、前記と同一の部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施例2においては、前記実施例1と比べて、屋根側幌11が存在しないため、直上の開口された上部400から騒音が発生するが、左右側幌9、10の側幌部13、肩幌部17、上幌部15が存在することにより、車体(連結部)間の騒音が側方及び斜め上方へ放射されることを抑制できる。
【0053】
車体連結部間の騒音が直上からの騒音であれば車外への影響は少ないため、本実施例2においても騒音対策として有効である。
【0054】
従って、本実施例2においても、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【実施例3】
【0055】
前記実施例2は、屋根側幌11を設けず、肩幌部17の上端側に上幌部15を延長形成したものであるが、前記実施例2において、上幌部15を設けない外幌にしてもよい。
【0056】
すなわち、図14において、Z−Z線からの先の上幌部15を無くし、側幌部13と肩幌部17のみで形成してもよい。
【0057】
その他の構造は前記実施例2と同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
本実施例3においても有効な遮音効果を発揮でき、前記実施例2と同様の作用、効果を発揮する。
【実施例4】
【0059】
図16乃至図21は実施例4を示すもので、前記実施例1おける湾曲部材50を無くして、前記実施例1の左側幌9と右側幌10と屋根側幌11を、夫々の外面(厳密には取付板40の外面)が、車体妻面2の左側縁2aと車体妻面2の右側縁2aと妻面2の屋根側縁2aと同一面に位置するように配置したものである。
【0060】
図18において、左側幌9は、前記実施例1の左側幌9と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。また、図18において、右側幌10は、前記実施例1の右側幌10と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。
【0061】
これら左右側幌9、10は、その上幌部15、15の正面形状が前記実施例1と若干相違する外は前記実施例1の左右側幌9、10と同一である。
【0062】
そして、該実施例4の左右側幌部13、13は、その外面13aが、図19に示すように、車体の左右側面12と同一面上に位置するように配置され、上幌部15、15は、その外面15aが、図21に示すように、車体の屋根面14と同一面に位置するように配置され、肩幌部17、17は、その外面17aが、図20に示すように、車体の肩面16と同一面上に位置するように配置されている。
【0063】
更に、図18において、屋根側幌11は、前記実施例1の屋根側幌11と同様の幌で、該実施例4の屋根側幌11は、その正面形状が前記実施例1と若干相違する他は前記実施例1の屋根側幌11と同一である。
【0064】
そして、該実施例4の屋根側幌11は、その外面11aが図21と同様に車体の屋根面14と同一面上に位置するように配置されている。
【0065】
該実施例4における側幌部13の横断面(F−F線断面)構造を図19に示し、肩幌部17の横断面(G−G線断面)構造を図20に示し、上幌部15の横断面(H−H線断面)と屋根側幌11の横断面(H’−H’線断面)構造を図21に示す。
【0066】
これらの構造は、前記実施例1の構造と比較して、前記湾曲部材50を除き実施例1と同様であるため、前記実施例1と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施例4においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。
【実施例5】
【0068】
図22及び図23は実施例5を示すもので、本実施例5は、前記実施例4において、屋根側幌11を除いたものである。その他の構造は前記実施例4と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施例5においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例4と同様の作用、効果を発揮できる。
【実施例6】
【0070】
図24乃至図27は実施例6を示すもので、前記実施例1における湾曲部材50を無くして、前記実施例1の左側幌9と右側幌10と屋根側幌11を、夫々の外面が、車体妻面2の左側縁2aと車体妻面2の右側縁2aと車体妻面2の屋根側縁2aに対して内側において近接するように配置したものである。
【0071】
図24において、左側幌9は、前記実施例1の左側幌9と同様の幌で、前記と同様に側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。また、図24において、右幌部10は、前記実施例1の右側幌10と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。
【0072】
これら左右側幌9、10は、その上幌部15、15の正面形状が前記実施例1と若干相違する外は前記実施例1の左右側幌9、10と同一である。
【0073】
そして、該実施例6の左右側幌部13、13は、その外面13aが、図25に示すように、妻面2の左右側縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面13aが、車体の左右側面12より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0074】
また、上幌部15、15は、その外面15aが図27に示すように、妻面2の屋根側縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面15aが、車体の屋根面14より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0075】
更に、肩幌部17、17は、その外面17aが図26に示すように、妻面2の肩縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面17aが車体の肩面16より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0076】
更に、図24において、屋根側幌11は、前記実施例1の屋根側幌11と同様の幌で、該実施例6の屋根側幌11は、その正面形状が前記実施例1と若干相違する他は前記実施例1の屋根側幌11と同一である。
【0077】
そして、該実施例6の屋根側幌11は、その外面11aが図27と同様に車体の屋根面14からH3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0078】
該実施例6における側幌部13の横断面構造を図25に示し、肩幌部17の横断面構造を図26に示し、上幌部15の横断面と屋根側幌11の横断面構造を図27に示す。
【0079】
これらの構造は、前記実施例1の構造と比較して、前記湾曲部材50を除き、実施例1と同様であるため、前記実施例1と同一部材には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
本実施例6においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
【0081】
更に、本実施例6は、妻面の縁部が図25乃至27のように曲面で形成されているものにおいて、その曲面部をさけて外幌を取付けることができる。
【実施例7】
【0082】
図28は実施例7を示すもので、本実施例7は、前記実施例6において、屋根側幌11を除いたものである。その他の構造は前記実施例6と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
本実施例7においても、前記実施例6と同様の作用、効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1を示すもので、車体の連結部の側面図。
【図2】図1のA−A線で妻面側から見た正面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】図2における左側幌の正面図。
【図5】図4のB−B線断面図。
【図6】図4のC−C線断面図。
【図7】図4のD視図。
【図8】図4の正面図において図5のE−E部で切断した正断面図。
【図9】図2におけるF−F線拡大断面図。
【図10】図2におけるG−G線拡大断面図。
【図11】図2におけるH−H線拡大断面図。
【図12】本発明の実施例1における外幌の配置状態を示すもので、(a)は一方の車体側、(b)は他方の車体側を示す。
【図13】本発明の実施例2を示す外幌の配置状態を示す平面図。
【図14】図13におけるI−I線で妻面を見た図。
【図15】図13における外幌の配置状態を示すもので、(a)は一方の車体側、(b)は他方の車体側を示す。
【図16】本発明の実施例4を示す車体の連結部の側面図。
【図17】図16の平面図。
【図18】図16のP−P線で妻面側から見た正面図。
【図19】図18のF−F線断面図。
【図20】図18のG−G線断面図。
【図21】図18のH−H線断面図。
【図22】本発明の実施例5を示す平面図。
【図23】図22における車体の妻面側から見た正面図。
【図24】本発明の実施例6を示すもので、車体の妻面側を見た正面図。
【図25】図24におけるS−S線断面図。
【図26】図24におけるT−T線断面図。
【図27】図24におけるU−U線断面図。
【図28】本発明の実施例7を示すもので、車体の妻面側を見た正面図。
【図29】従来の外幌を示す車体の連結部の側面図。
【図30】図29のJ−J線で妻面側を見た正面図。
【図31】図29の平面図。
【図32】従来の外幌を示す妻面側から見た正面図。
【図33】図32の外幌のN−N線拡大断面図。
【符号の説明】
【0085】
1、4 車体
2、5 妻面
8、8A 外幌
9、10 左右側幌
13 側幌部
15 上幌部
17 肩幌部
18 妻面の肩部
21、21a 内側基部
22、22a 外側基部
23、23a 先部
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両用外幌の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両における車体間の連結部の空間に、渡り通路を形成する内幌を設けるとともに該内幌の両側の外側に、車両の走行時に発生する騒音が車体間より放射されることを抑制する外幌を設ける構造が知られている。
【0003】
この構造として従来、例えば、図29乃至図31に示すように、連結された一方の車体101の妻面102と他方の車体103の妻面104間に通路105を構成する内幌106を架設し、該内幌106の左右の両側に、内幌106と離間して、一方の車体101の妻面102からU字状に突設した可撓性を有する一方の外幌107と、他方の車体103の妻面104からU字状に突設した可撓性を有する他方の外幌108を設け、これらの先部を図29、31に示すように、相互に対向接触させている。
【0004】
そして、この外幌107、108は、図30に示すように、車体101(103)の左右側面である略直立部、すなわち、妻面の側部111の範囲のみに設けられ、妻面102、104の肩部(車体の肩部)112と屋根部113に沿った部分には設けられていない。
【0005】
このような外幌107、108においては、連結部空間114内から車体の左右方向への騒音の放射は抑制されるが、連結部空間114内からの騒音が肩部112の開放部115を通じて矢印Kのように外部へ放射され車外への影響を与える。
【0006】
また、屋根側の開口部116から矢印Lのように放射される騒音の発生を抑制することが好ましい。
【0007】
そこで、従来、前記の外幌107、108を、車体の妻面における左右両側に配置するのみではなく、図32に示すように、略垂直の側幌部200の上部を延長して、前記妻面(車体)の肩幌部112において、外側へ膨出する湾曲状の肩幌部201を延設し、かつ、屋根縁に沿った屋根側幌部202を延設して前記妻面の肩部112の開口部115及び屋根側の開口部116からの騒音低減を図るものが特許文献1に知られている。
【特許文献1】特開2008−201405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、前記図32に示す外幌は、図33に示すように、横断面形状がU状で、かつ、その両側基部203、204を腰のある厚肉で形成し、先部205を可撓性を高めるために両側基部203、204よりも薄肉に形成されており、このような断面形状の外幌を前記図32に示すような肩幌部201において使用すると、次のような問題が生じる。
【0009】
前記の外幌の肩幌部201は、側幌部200と屋根側幌部202を結ぶ一体の形状となることから柔軟に変形し難くなる。
【0010】
そのため、この肩幌部201において、腰(剛性)が強い厚肉の両側基部203、204を有する外幌を使用した場合には、肩幌部201における内側辺300に大きなしわが多数発生し、かつ、該内側辺300の剛性が大きいことから、対向する外幌との間で擦れ
合うと、該部での亀裂が生じやすく、この亀裂が生じると、該部を起点として亀裂が広がり、外幌の耐久性が低減する虞がある。
【0011】
そこで、本発明は、この湾曲状の肩幌部の耐久性を高める構造にして、耐久性の良い鉄道車両用外幌の構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の課題を解決するために請求項1記載の発明は、車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部と肩幌部の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部の先部の肉厚を、該側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記肩幌部における前記側幌部と反対側の上部に、妻面の屋根縁に沿った上幌部を延設し、該上幌部の横断面形状を、前記側幌部の横断面形状と同等に形成したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の発明において、前記上幌部における前記肩幌部と反対の側に、妻面の屋根縁に沿った屋根側幌を配置するとともに該屋根側幌の横断面形状を前記側幌部の横断面形状と同等に形成して、該屋根側幌と前記上幌部とで車両の連結部空間の上部全体を覆うようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことで、肩幌部の変形が容易になり、該部で発生するしわを少なくするとともに小さくし、亀裂の発生を低減して外幌の耐久性を高めることができる。
【0016】
請求項2記載の発明においては、上幌部を設けたものにおいても前記と同様の効果を発揮できる。
【0017】
請求項3記載の発明においては、屋根側幌を設けたものにおいても前記と同様の効果を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を、図1乃至図28に基づいて説明する。
【実施例1】
【0019】
図1乃至図12は実施例1を示す。
図1乃至図3は本発明の外幌を車体の妻面に付設した状態を示し、図1は側面図、図2は図1のA−A線で妻面側を見た図、図3は平面図である。
【0020】
連結された一方の車体1の妻面2の出入口3と、他方の車体4の妻面5の出入口6との間には、蛇腹状の内幌7が架設され、該内幌7内に渡り通路7aが形成されている。
【0021】
前記一方の車体1の妻面2には、前記内幌7の外側であって、妻面2の外周部に位置して一方の外幌8が付設されている。該一方の外幌8は、左側幌9と右側幌10と屋根側幌11の3部材に分割して構成されている。
【0022】
前記左側幌9は、妻面2の左側縁2a(車体の左側面12)に沿って内側に位置し略垂直方向に立上がるように形成された側幌部13と、妻面2の屋根縁2a(車体の屋根面14)に沿って内側に位置し、略水平方向で、車体妻面の内側(妻面の中央X−X)へ向うように形成された上幌部15と、前記側幌部13と上幌部15との間を、妻面2の肩部18において車体の肩面16より内側に位置して外方へ膨出するように湾曲して結合した肩幌部17とからなり、これら側幌部13と上幌部15と肩幌部17は継がって形成されている。
【0023】
すなわち、略垂直方向に立上がる側幌部13の上部に、妻面の中央側に中心O(図4参照)を有し、外側へ膨出するように湾曲した肩幌部17が延設され、更に、該肩幌部17の上部に略水平方向で妻面の内側(妻面の中央X−X)方向へ向うように上幌部15が延設されている。なお、実施例では、車体の肩面16が曲面で形成され、この曲面に沿って前記外幌の肩幌部17が湾曲に形成されている。
【0024】
更に、左側幌9は、前記側幌部13と上幌部15と肩幌部17を、該各部が後述するU状の横断面形状で、かつ、図2に示す一連の形状で、型成形により一体成形されているかもしくは、平板をU状に折り曲げて形成した前記側幌部13と上幌部15と、U状の横断面形状に型成形された肩幌部17を図2に示すような形状に継なげて形成されている。この左側幌9は、合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0025】
前記右側幌10は、図2に示すように、前記左側幌9に対して、車体1の妻面2の中央X−Xを中心として左右対称の形状に形成され、かつ、その構造は前記左側幌9と同様である。そのため、右側幌10については、前記左側幌9と同一部分に前記と同一符号を付して、その説明を省略する。なお、図の実施例では、右側幌10における上部幌15の水平方向の長さは、左側幌9の上部幌15よりも若干短く形成されている。
【0026】
前記屋根側幌11は、前記左側幌9の上幌部15の先端と、右側幌10の上幌部15の先端との間に、図2に示すように配置されている。
【0027】
次に、前記左側幌9の断面形状について図4乃至図8により詳述する。
図4に示す左側幌9の側幌部13の横断面形状(B−B線断面)は、図5に示すように、基端側に開口部25を有するU状に形成されている。すなわち、所定の間隔を有して平行に配置した板状の内側基部21と板状の外側基部22と、該両基部21、22の先部を連結する先細状(図の実施例では略半円状)の先部23とからなる。また、両基部21、22は、これを妻面に付設した際に、その妻面からの突出状態を保持するために剛性が大きく可撓性の小さい厚肉T1に形成され、先部23は、両基部21、22より薄肉T2に形成され、該先部23が両基部21、22に比べて剛性が小さく可撓性を大きくして形成されている。また、基部21、22から先部23への連結部24は、肉厚が漸減するように形成されている。
【0028】
前記上幌部15の横断面形状(B−B線断面)は、前記側幌部13の図5に示す横断面形状(B−B線断面)と同様に、妻面に固定される内側基部21と外側基部22とこれらの先を連結した先部23とでU状に形成した形状であり、その肉厚も同様に形成されているか、これらの肉厚、形状等の寸法は妻面の構造で異なることもある。
【0029】
前記肩幌部17の横断面形状(C−C線断面)は、図6に示すように、基端側に開口部25を有するU状に形成され、その外周形状は前記図5に示す側幌部13の外周形状と同一形状である。また、その板状の内側基部21aと板状の外側基部22aの肉厚T2は、前記図5に示す側幌部13の先部23の肉厚T2と同等に形成され、更に、その先部23aの肉厚T2は、前記図5の先部23の肉厚T2と同等に形成されている。すなわち、肩幌部17における内側基部21aと外側基部22aと先部23aの肉厚T2は前記側幌部13、上幌部15の内側基部21と外側基部22の肉厚T1よりも薄く形成されている。したがって、肩幌部17における図4に示す湾曲部R全体が薄肉に形成され、側幌部13、上幌部15よりも可撓性が大きくなっている。
【0030】
また、肩幌部17における両側基部21a、22aから側幌部13及び上部幌15への連結部25の肉厚は、図8に示すように、漸増している。
【0031】
また、前記右側幌10の側幌部13、肩幌部17、上部幌15も前記左側幌9の側幌部13、肩幌部17、上部幌15と同様の構造であるため、その説明は省略する。
【0032】
次に、車体1の妻面2に対する前記左側幌9と右側幌10の取付構造を図9乃至図11により説明する。
【0033】
なお、この取付構造を図2に示す右側幌10により説明する。
図9は図2におけるF−F線断面図、図10は図2におけるG−G線断面図、図11は図2おけるH−H線断面図である。
【0034】
前記車体1の妻面2には、前記右側幌10の側幌部13、肩幌部17、上部幌15を取付ける位置に沿って、かつ、これらの全長にわたって図9乃至図11に示すような、横断面が凹状の取付板40が一連に配置され、その基板41がボルト42により車体1の妻面に固定されている。
【0035】
そして、右側幌10の取付けは、図9乃至図11に示すように、両基部21、22、21a、22aの基端部21b、22bにおいて、前記取付板40、押え金45、47、及びボルト46、48で車体に取付けられている。
【0036】
なお、図2の左側幌9の車体1の妻面2に対する取付構造は、前記右側幌10の取付構造と同様であるため、その説明は省略する。
【0037】
上記の取付けにより、外幌8は、その内側基部21、21aと外側基部22、22aが妻面2より垂直に突出するように妻面2に固定されて取付けられる。
【0038】
次に、前記屋根側幌11について説明する。
該屋根側幌11は、その横断面形状(図2のH’―H’線断面形状)が、前記左右側幌9、10における上部幌15の横断面形状(H−H線断面形状)と同様に形成され、前記左側幌9の上幌部15の先端部と右側幌10の上部幌15の先端部との間において、図2に示すように、車体1の妻面2の屋根縁2a(車体の屋根面14)に沿って内側に位置して配置されている。更に、該屋根側幌11は、前記左右側幌9、10と同様に、合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0039】
該屋根側幌11の車体1の妻面2に対する取付構造は、前記図11に示す取付構造と同様である。そのため、その取付構造の説明は省略する。
【0040】
前記他方の車体4の妻面5には、図1、図3及び図12(b)に示すように、前記内幌7の外側であって、前記外幌8と同様に妻面5の外周部に沿って、かつ、前記外幌8と対向して他方の外幌8Aが付設されている。
【0041】
該他方の外幌8Aは、前記一方の外幌8と同様に左右側幌9、10と屋根側幌11とからなり、該他方の外幌8Aの左右側幌9、10は前記一方の外幌8と同様の側幌部13と肩幌部17と上幌部15とからなり、これらの横断面形状及び車体4との取付構造は前記一方の外幌8と同様である。更に、この外幌8Aにおける左右側外幌9、10と屋根側幌11も前記と同様に合成ゴム等の可撓性を有する弾性材で形成されている。
【0042】
そして、一方の外幌8と他方の外幌8Aが、図1、3に示すように、相互に分割されて、一方の外幌8の先部23、23aと他方の外幌8Aの先部23、23aが、両車体1、4間の略中央で相互に押し付け合うように車体1、4に付設されている。
【0043】
なお、前記一方の外幌8における屋根側幌11と上幌部15との接合部8cと他方の外幌8Aにおける屋根側幌11と上幌部15との接合部8dは、図3に示すように、左右方向に齟齬して配置されている。
【0044】
前記側幌部13、肩幌部17、上幌部15、屋根側幌11は、図1、3及び図9乃至図11に示すように、その外側基部22、22aが車体1、4の妻面2、5の縁2a、5a(車体1、4の外面)より妻面2、5の内側へ所定の距離M偏位(図11参照)して配置されている。
【0045】
そして、前記側幌部13、肩幌部17、上幌部15、屋根側幌11の外側の妻面2には、図9乃至図11に示すように、妻面2、5の縁2a、5aから外側基部22、22aに向って外側へ膨出するように湾曲した湾曲部材50がボルト51により固設されている。
【0046】
前記実施例1においては、前記の構成により、次のような作用、効果を発揮する。
両車体1、4に付設された両外幌8、8Aの先部相互が接触することにより、両車体1、4間の連結部空間の外周部が両外幌8、8Aで被覆され、車両走行中における連結部空間内の騒音の側方への放射は側幌部13で抑制され、車体肩部からの斜め上方への放射は肩幌部17で抑制され、上方への放射は上幌部15及び屋根側幌11で抑制される。
【0047】
したがって、本実施例1においては、前記図29乃至図31に示す従来の外幌107、108において発生していた妻面の肩部からの騒音の放射(図30の矢印K方向の放射)を抑制できる。また、上部幌15及び屋根側幌11を設けたことにより、上方への騒音の放射を抑制できる。
【0048】
次に、車両走行中において、両外幌8、8Aが押し付けあった状態で相対的に変位すると、側幌部13と上幌部15及び屋根側幌11は、これらが略直線状であるため、内側又は外側へ容易に変位し、しわの発生が少なく亀裂の発生も少ない。
【0049】
また、肩幌部17においては、該肩幌部17の内側基部21aと外側基部22aの肉厚を、側幌部13、上幌部15の内側基部21と外側基部22の肉厚よりも薄くし、かつ、先部23aの肉厚も薄くしたので、該肩幌部17における内周部の変形が容易になり、肩幌部17での剛性が小さくなり、柔軟に変形できる。そのため、両外幌8、8Aの押付け状態での変位に際して、該肩幌部17が容易に変形し、発生するしわが少なくなるとともに小さくなり、該肩幌部17での亀裂の発生を低減できる。
【実施例2】
【0050】
前記実施例1では屋根側幌11を設けたが、図13、14、15に示すように、前記屋根側幌11を設けず、前記左側幌9及び右側幌10のみで外幌を構成しても良い。
【0051】
なお、本実施例2の左側幌9及び右側幌10の形状、材質、妻面への取付構造は前記実施例1と同様であるため、前記と同一の部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
本実施例2においては、前記実施例1と比べて、屋根側幌11が存在しないため、直上の開口された上部400から騒音が発生するが、左右側幌9、10の側幌部13、肩幌部17、上幌部15が存在することにより、車体(連結部)間の騒音が側方及び斜め上方へ放射されることを抑制できる。
【0053】
車体連結部間の騒音が直上からの騒音であれば車外への影響は少ないため、本実施例2においても騒音対策として有効である。
【0054】
従って、本実施例2においても、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮することができる。
【実施例3】
【0055】
前記実施例2は、屋根側幌11を設けず、肩幌部17の上端側に上幌部15を延長形成したものであるが、前記実施例2において、上幌部15を設けない外幌にしてもよい。
【0056】
すなわち、図14において、Z−Z線からの先の上幌部15を無くし、側幌部13と肩幌部17のみで形成してもよい。
【0057】
その他の構造は前記実施例2と同様であるため、その説明を省略する。
【0058】
本実施例3においても有効な遮音効果を発揮でき、前記実施例2と同様の作用、効果を発揮する。
【実施例4】
【0059】
図16乃至図21は実施例4を示すもので、前記実施例1おける湾曲部材50を無くして、前記実施例1の左側幌9と右側幌10と屋根側幌11を、夫々の外面(厳密には取付板40の外面)が、車体妻面2の左側縁2aと車体妻面2の右側縁2aと妻面2の屋根側縁2aと同一面に位置するように配置したものである。
【0060】
図18において、左側幌9は、前記実施例1の左側幌9と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。また、図18において、右側幌10は、前記実施例1の右側幌10と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。
【0061】
これら左右側幌9、10は、その上幌部15、15の正面形状が前記実施例1と若干相違する外は前記実施例1の左右側幌9、10と同一である。
【0062】
そして、該実施例4の左右側幌部13、13は、その外面13aが、図19に示すように、車体の左右側面12と同一面上に位置するように配置され、上幌部15、15は、その外面15aが、図21に示すように、車体の屋根面14と同一面に位置するように配置され、肩幌部17、17は、その外面17aが、図20に示すように、車体の肩面16と同一面上に位置するように配置されている。
【0063】
更に、図18において、屋根側幌11は、前記実施例1の屋根側幌11と同様の幌で、該実施例4の屋根側幌11は、その正面形状が前記実施例1と若干相違する他は前記実施例1の屋根側幌11と同一である。
【0064】
そして、該実施例4の屋根側幌11は、その外面11aが図21と同様に車体の屋根面14と同一面上に位置するように配置されている。
【0065】
該実施例4における側幌部13の横断面(F−F線断面)構造を図19に示し、肩幌部17の横断面(G−G線断面)構造を図20に示し、上幌部15の横断面(H−H線断面)と屋根側幌11の横断面(H’−H’線断面)構造を図21に示す。
【0066】
これらの構造は、前記実施例1の構造と比較して、前記湾曲部材50を除き実施例1と同様であるため、前記実施例1と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0067】
本実施例4においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮する。
【実施例5】
【0068】
図22及び図23は実施例5を示すもので、本実施例5は、前記実施例4において、屋根側幌11を除いたものである。その他の構造は前記実施例4と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施例5においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例4と同様の作用、効果を発揮できる。
【実施例6】
【0070】
図24乃至図27は実施例6を示すもので、前記実施例1における湾曲部材50を無くして、前記実施例1の左側幌9と右側幌10と屋根側幌11を、夫々の外面が、車体妻面2の左側縁2aと車体妻面2の右側縁2aと車体妻面2の屋根側縁2aに対して内側において近接するように配置したものである。
【0071】
図24において、左側幌9は、前記実施例1の左側幌9と同様の幌で、前記と同様に側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。また、図24において、右幌部10は、前記実施例1の右側幌10と同様の幌で、前記と同様に、側幌部13、肩幌部17、上幌部15を有する。
【0072】
これら左右側幌9、10は、その上幌部15、15の正面形状が前記実施例1と若干相違する外は前記実施例1の左右側幌9、10と同一である。
【0073】
そして、該実施例6の左右側幌部13、13は、その外面13aが、図25に示すように、妻面2の左右側縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面13aが、車体の左右側面12より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0074】
また、上幌部15、15は、その外面15aが図27に示すように、妻面2の屋根側縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面15aが、車体の屋根面14より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0075】
更に、肩幌部17、17は、その外面17aが図26に示すように、妻面2の肩縁2aに形成された曲部R1の内端に位置するように、すなわち、外面17aが車体の肩面16より前記曲部R1の内端までの距離H3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0076】
更に、図24において、屋根側幌11は、前記実施例1の屋根側幌11と同様の幌で、該実施例6の屋根側幌11は、その正面形状が前記実施例1と若干相違する他は前記実施例1の屋根側幌11と同一である。
【0077】
そして、該実施例6の屋根側幌11は、その外面11aが図27と同様に車体の屋根面14からH3だけ内側に入った位置に配置されている。
【0078】
該実施例6における側幌部13の横断面構造を図25に示し、肩幌部17の横断面構造を図26に示し、上幌部15の横断面と屋根側幌11の横断面構造を図27に示す。
【0079】
これらの構造は、前記実施例1の構造と比較して、前記湾曲部材50を除き、実施例1と同様であるため、前記実施例1と同一部材には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0080】
本実施例6においても、前記湾曲部材50を除き、前記実施例1と同様の作用、効果を発揮できる。
【0081】
更に、本実施例6は、妻面の縁部が図25乃至27のように曲面で形成されているものにおいて、その曲面部をさけて外幌を取付けることができる。
【実施例7】
【0082】
図28は実施例7を示すもので、本実施例7は、前記実施例6において、屋根側幌11を除いたものである。その他の構造は前記実施例6と同様であるため、前記と同一部分には前記と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0083】
本実施例7においても、前記実施例6と同様の作用、効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施例1を示すもので、車体の連結部の側面図。
【図2】図1のA−A線で妻面側から見た正面図。
【図3】図1の平面図。
【図4】図2における左側幌の正面図。
【図5】図4のB−B線断面図。
【図6】図4のC−C線断面図。
【図7】図4のD視図。
【図8】図4の正面図において図5のE−E部で切断した正断面図。
【図9】図2におけるF−F線拡大断面図。
【図10】図2におけるG−G線拡大断面図。
【図11】図2におけるH−H線拡大断面図。
【図12】本発明の実施例1における外幌の配置状態を示すもので、(a)は一方の車体側、(b)は他方の車体側を示す。
【図13】本発明の実施例2を示す外幌の配置状態を示す平面図。
【図14】図13におけるI−I線で妻面を見た図。
【図15】図13における外幌の配置状態を示すもので、(a)は一方の車体側、(b)は他方の車体側を示す。
【図16】本発明の実施例4を示す車体の連結部の側面図。
【図17】図16の平面図。
【図18】図16のP−P線で妻面側から見た正面図。
【図19】図18のF−F線断面図。
【図20】図18のG−G線断面図。
【図21】図18のH−H線断面図。
【図22】本発明の実施例5を示す平面図。
【図23】図22における車体の妻面側から見た正面図。
【図24】本発明の実施例6を示すもので、車体の妻面側を見た正面図。
【図25】図24におけるS−S線断面図。
【図26】図24におけるT−T線断面図。
【図27】図24におけるU−U線断面図。
【図28】本発明の実施例7を示すもので、車体の妻面側を見た正面図。
【図29】従来の外幌を示す車体の連結部の側面図。
【図30】図29のJ−J線で妻面側を見た正面図。
【図31】図29の平面図。
【図32】従来の外幌を示す妻面側から見た正面図。
【図33】図32の外幌のN−N線拡大断面図。
【符号の説明】
【0085】
1、4 車体
2、5 妻面
8、8A 外幌
9、10 左右側幌
13 側幌部
15 上幌部
17 肩幌部
18 妻面の肩部
21、21a 内側基部
22、22a 外側基部
23、23a 先部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部と肩幌部の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部の先部の肉厚を、該側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とする鉄道車両用外幌の構造。
【請求項2】
前記肩幌部における前記側幌部と反対側の上部に、妻面の屋根縁に沿った上幌部を延設し、該上幌部の横断面形状を、前記側幌部の横断面形状と同等に形成したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用外幌の構造。
【請求項3】
前記上幌部における前記肩幌部と反対の側に、妻面の屋根縁に沿った屋根側幌を配置するとともに該屋根側幌の横断面形状を前記側幌部の横断面形状と同等に形成して、該屋根側幌と前記上幌部とで車両の連結部空間の上部全体を覆うようにしたことを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用外幌の構造。
【請求項1】
車体の妻面に付設される外幌において、妻面の側縁に沿った側幌部と、妻面の肩部において湾曲した肩幌部とを連設するとともにこれらを弾性材で形成し、前記側幌部と肩幌部の横断面形状を、内側基部と外側基部とこれらの先を連結した先部とでU状に形成し、前記側幌部の先部の肉厚を、該側幌部の内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成し、前記肩幌部における内側基部と外側基部と先部の肉厚を、前記側幌部における内側基部と外側基部の肉厚よりも薄く形成したことを特徴とする鉄道車両用外幌の構造。
【請求項2】
前記肩幌部における前記側幌部と反対側の上部に、妻面の屋根縁に沿った上幌部を延設し、該上幌部の横断面形状を、前記側幌部の横断面形状と同等に形成したことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用外幌の構造。
【請求項3】
前記上幌部における前記肩幌部と反対の側に、妻面の屋根縁に沿った屋根側幌を配置するとともに該屋根側幌の横断面形状を前記側幌部の横断面形状と同等に形成して、該屋根側幌と前記上幌部とで車両の連結部空間の上部全体を覆うようにしたことを特徴とする請求項2記載の鉄道車両用外幌の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公開番号】特開2010−143540(P2010−143540A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−326146(P2008−326146)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000147198)株式会社成田製作所 (7)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000147198)株式会社成田製作所 (7)
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