説明

鉄道車両用構体

【課題】シアプレートを接合することなく吹寄部の強度を高めた鉄道車両用構体を提供すること。
【解決手段】側構体、屋根構体、妻構体および台枠が接合され、側構体は、車体長手方向に分割された複数のブロックの接合により構成されたものであって、側構体を構成する窓ブロック20は、幕板パネル21、吹寄パネル22および腰板パネル23がそれぞれ端面同士を突き合わせた接合部がレーザ溶接され、吹寄パネル22は、当該窓ブロック20に形成される窓開口部の窓隅部Rを含むものであり、幕板パネル21および腰板パネル23よりも高強度の板材により形成されるようにした鉄道車両用構体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外板にシアプレートを接合することなく吹寄部の強度を高めた鉄道車両用構体に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両用構体は、例えば図4に示すように、側構体が構体ブロックなどのパーツを接合して組み合わされたものがある。鉄道車両用構体は、そうした側構体の上部に屋根構体が、前後には妻構体がそれぞれ接合され、更にその下には台枠が接合して構成される。図示する側構体100は、車端窓ブロック102と中間窓ブロック103、そして窓ブロック102,103の間に側入口ブロック104が接合されている。
【0003】
車端窓ブロック102や中間窓ブロック103は、例えば上下に分けられた上部外板と下部外板との接合によって側外板が形成され、その車体内側には強度を保つため骨部材などが接合されている。そして、中間窓ブロック103は、せん断力のかかりやすい吹寄部に、補強部材としてシアプレート110が外板の裏面に張り合わされている。このシアプレート110は、例えば板厚2mmの外板に対し、厚さ1.5mmのステンレス鋼板であって、窓開口部120の左右両側の吹寄部にそれぞれ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−012861号公報
【特許文献2】特開2003−191842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鉄道車両用構体は、吹寄部の強度をシアプレート110によって確保しているが、そのシアプレート110は、中間窓ブロック103を構成する外板の裏面に重ねられ、レーザ溶接等によって接合される。その際、吹寄部の強度を確保するにはシアプレート110が外板に対して全体的に接合している必要があり、溶接箇所はシアプレート110の全面に及ぶため、レーザ溶接の溶接距離が長くなってしまう。従って、従来の鉄道車両用構体は、シアプレート110を取り付けるため構造が複雑になって作業工数が増すばかりではなく、その溶接作業自体も手間のかかるものであった。
【0006】
本発明は、かかる課題を解決すべく、シアプレートを接合することなく吹寄部の強度を高めた鉄道車両用構体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鉄道車両用構体は、側構体、屋根構体、妻構体および台枠が接合され、前記側構体は、車体長手方向に分割された複数のブロックの接合により構成されたものであって、前記側構体を構成する窓ブロックは、幕板パネル、吹寄パネルおよび腰板パネルがそれぞれ端面同士を突き合わせた接合部がレーザ溶接され、前記吹寄パネルは、当該窓ブロックに形成される窓開口部の窓隅部を含むものであり、前記幕板パネルおよび腰板パネルよりも高強度の板材であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る鉄道車両用構体の前記窓ブロックは、前記幕板パネル、吹寄パネルおよび腰板パネルが所定幅の帯状の板材であり、それぞれ端面同士を上下に突き合わせた接合部がレーザ溶接され、接合後に前記吹寄パネルに前記窓開口部が切り抜かれて形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両用構体の前記窓ブロックは、前記幕板パネルおよび腰板パネルの形状が凸形の板材であり、前記吹寄パネルの形状が四角形の板材であり、前記幕板パネルおよび腰板パネルの左右の凹んだ部分に前記吹寄パネルが配置され、それぞれの端面同士を突き合わせた接合部がレーザ溶接され、接合後に前記吹寄パネルの一部が切り取られることにより前記窓開口部が形成されたものであることが好ましい。
また、本発明に係る鉄道車両用構体の前記吹寄パネルは、前記幕板パネルおよび腰板パネルと同じ材料の板材であって板厚が厚いものであること、又は前記幕板パネルおよび腰板パネルと同じ板厚であって高強度の材料の板材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シアプレートを張り合わせる必要のあった吹寄部を構成する吹寄プレートを、高強度の板材によって構成するようにしたため、シアプレートを接合することなく吹寄部の強度を高めた鉄道車両用構体を提供することが可能になり、特に吹寄パネルが窓ブロックに形成される窓開口部の窓隅部を含むものであるため、その窓隅部に補強プレートを設けなくとも強度を確保することができる。そのため、シアプレートや補強プレートの接合を不要とすることで作業の簡素化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】側構体を構成する中間窓ブロックを示した図である。
【図2】第1実施形態の中間窓ブロックについて、その製造過程を示した図である。
【図3】第2実施形態の中間窓ブロックについて、その製造過程を示した図である。
【図4】鉄道車両用構体を構成する側構体を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明に係る鉄道車両用構体の実施形態について図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の鉄道車両用構体は、図4に示す従来例と同様に側構体が構体ブロックなどのパーツを接合して組み合わされたものである。特に、シアプレートによって吹寄部の強度を高める必要のあった中間窓ブロックに特徴を有するものであり、具体的にはシアプレートを無くした点に特徴を有する。そこで先ず、シアプレートを必要としない中間窓ブロックについて説明する。
【0012】
中間窓ブロック10は、幕板パネル11、吹寄パネル12および腰板パネル13を接合した外板であって、中央に大きく窓開口部15が形成されている。従来、こうした幕板パネル11、吹寄パネル12および腰板パネル13に相当する板材は、同一材料であり同一の板厚のものを使用して構成されていた。しかし、この中間窓ブロック10は、吹寄パネル12が幕板パネル11および腰板パネル13とは異なる板厚や異なる材質で構成されている。すなわち、幕板パネル11および腰板パネル13には標準強度鋼板(DLT鋼板)が、吹寄パネル12には超高強度鋼板(HT鋼板)がそれぞれ使用され、吹寄パネル12は、幕板パネル11や腰板パネル13よりも高強度の材料によって構成される。
【0013】
例えば、全てのパネルが同じステンレス鋼板を使用した場合でも、幕板パネル11および腰板パネル13の板厚を1.5mmとし、吹寄パネル12の板厚を3.0mmとする。或いは、全てのパネルの板厚を同じにした場合であっても、幕板パネル11および腰板パネル13より、吹寄パネル12に強度の高いステンレス鋼板を用いる。そして、吹寄パネル12が幕板パネル11および腰板パネル13によって上下に挟み込まれ、図1に示すように、突合せ端面同士の重なった接合線18に沿ってレーザ溶接が行われる。
【0014】
こうして接合された幕板パネル11、吹寄パネル12および腰板パネル13によって、一枚の中間窓ブロック10が形成される。板厚の異なる各パネルを使用した場合には、車体表面側に段差が生じないように面一に接合される。中間窓ブロック10は、せん断力のかかりやすい吹寄部が吹寄パネル12によって強度が高められるため、補強部材であるシアプレートを付加する必要がなくなった。そして、その吹寄パネル12は突合せによる接合継手をレーザ溶接するだけであるため、溶接部が接合線18であって溶接距離が短く、溶接を簡素化することができ、作業負担の軽減が図られた。
【0015】
ところで、鉄道車両用構体のように窓開口部15が形成される場合、応力が集中する4箇所の窓隅部Rについて補強する必要がある。中間窓ブロック10の場合には、窓隅部RがDLT鋼板によって形成されているため、4箇所の窓隅部Rには補強プレートを張り合わせなければならない。そこで次に、窓隅部Rへの強度を確保した中間窓ブロックの構成について説明する。
【0016】
図2は、第1実施形態の中間窓ブロックについて、その製造過程を示した図である。この中間窓ブロック20は、長さの等しい帯状のパネルを上下に三枚突き合わせて接合したものである。つまり、上段の幕板パネル21および下段の腰板パネル23にはDLT鋼板が使用され、中段の吹寄パネル22にはHT鋼板が使用される。その幕板パネル21、吹寄パネル22および腰板パネル23が、パネルの端面同士を図示するように突合せ、その端面同士が重なった接合線28に沿ってレーザ溶接が行われる。幕板パネル21、吹寄パネル22および腰板パネル23による外板が形成される。
【0017】
吹寄パネル22は、この中間窓ブロック20に形成する窓開口部の高さ寸法よりも幅(図面上下方向の寸法)が大きい板材である。従って、幕板パネル21、吹寄パネル22および腰板パネル23が接合された後に、破線で示す窓開口線25に沿って吹寄パネル22が切り抜かれ、中央部分に窓開口部が形成される。そのため、この中間窓ブロック20では、窓開口部の四隅に位置する窓隅部RがHT鋼板からなる吹寄パネル22によって構成されるので、補強プレートを設けなくても強度を確保することができる。よって、部品点数を減らすとともに、工数を減らすことにより作業を簡素化することができた。
【0018】
次に、図3は、第2実施形態の中間窓ブロックについて、その製造過程を示した図である。この中間窓ブロック30は、形状が凸形の幕板パネル31および腰板パネル33と、その間にあって左右の凹んだ位置に配置される四角形の吹寄パネル32によって構成される。ここでも幕板パネル31および腰板パネル33にはDLT鋼板が使用され、吹寄パネル32にはHT鋼板が使用される。そうした幕板パネル31、吹寄パネル32および腰板パネル33が、パネルの端面同士が図示するように突合せられ、その端面同士が重なった接合線38に沿ってレーザ溶接が行われる。
【0019】
幕板パネル31、吹寄パネル32および腰板パネル33による外板が形成され、中央には窓開口部になる開口部35があいている。左右の吹寄パネル32は、この開口部35を左右に拡張するように、破線で示す窓開口線36に沿って切り取られ、中間窓ブロック30の窓開口部が形成される。従って、この中間窓ブロック30でも、窓開口部の四隅に位置する窓隅部RがHT鋼板からなる吹寄パネル32によって構成されているため、補強プレートを設けなくても強度を確保することができる。よって、部品点数を減らすとともに、工数を減らすことにより作業を簡素化することができた。
【0020】
以上、本発明に係る鉄道車両用構体の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
前記図3に示した実施形態では、窓開口部の形成において吹寄パネル32のみを一部切り取った場合を示したが、幕板パネル31および腰板パネル33を含めて切り取るようにしてもよい。
前記実施形態では、図4に示す中間窓ブロック103に相当する構成のみを示して説明したが、図4に示す窓ブロック102に相当するものであってもよい。
【符号の説明】
【0021】
20 中間窓ブロック
21 幕板パネル
22 吹寄パネル
23 腰板パネル
25 窓開口線
R 窓隅部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体、屋根構体、妻構体および台枠が接合され、前記側構体は、車体長手方向に分割された複数のブロックの接合により構成された鉄道車両用構体において、
前記側構体を構成する窓ブロックは、幕板パネル、吹寄パネルおよび腰板パネルがそれぞれ端面同士を突き合わせた接合部がレーザ溶接され、前記吹寄パネルは、当該窓ブロックに形成される窓開口部の窓隅部を含むものであり、前記幕板パネルおよび腰板パネルよりも高強度の板材であることを特徴とする鉄道車両用構体。
【請求項2】
請求項1に記載する鉄道車両用構体において、
前記窓ブロックは、前記幕板パネル、吹寄パネルおよび腰板パネルが所定幅の帯状の板材であり、それぞれ端面同士を上下に突き合わせた接合部がレーザ溶接され、接合後に前記吹寄パネルに前記窓開口部が切り抜かれて形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用構体。
【請求項3】
請求項1に記載する鉄道車両用構体において、
前記窓ブロックは、前記幕板パネルおよび腰板パネルの形状が凸形の板材であり、前記吹寄パネルの形状が四角形の板材であり、前記幕板パネルおよび腰板パネルの左右の凹んだ部分に前記吹寄パネルが配置され、それぞれの端面同士を突き合わせた接合部がレーザ溶接され、接合後に前記吹寄パネルの一部が切り取られることにより前記窓開口部が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両用構体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する鉄道車両用構体において、
前記吹寄パネルは、前記幕板パネルおよび腰板パネルと同じ材料の板材であって板厚が厚いものであること、又は前記幕板パネルおよび腰板パネルと同じ板厚であって高強度の材料の板材であることを特徴とする鉄道車両用構体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−10468(P2013−10468A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145641(P2011−145641)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】