説明

鉄道車両

【課題】窓ガラスの表面温度を客室の室温に近づけて、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】座席10の背面12a側に通風路31を形成し、その通風路31の一方の開口である吸込口33を座部14の下側の空間である下部空間37に開口させ、他方の開口である吹出口35を窓ガラス6の下側で客室側に開口させる。よって、下部空間37に配設される温調装置16からの空気Aを窓ガラス6へ送ることができる。そのため、窓ガラス6の表面温度を客室の室温に近づけて、窓ガラス6の表面への輻射による熱の移動により乗客が冷やされることを抑制して、暖房の効果を確保することができる。その結果、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に関し、特に、窓ガラスの表面温度を客室の室温に近づけて、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両における暖房は、座席の下に設けたヒータによって、その周囲の空気を暖め、暖気を自然対流により上昇させることで、客室全体を暖める方式や、空調装置によって生成された暖気を座席の下に設けた吹出口から吹き出し、客室内を上昇させることで、客室全体を暖める方式、或いは、空調機によって生成された暖気を天井に設けた吹出口から吹き出し、横流ファン等のファンによって拡散させることで、客室全体を暖める方式などが一般的であった(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−49984号公報(例えば、第2図など)
【特許文献2】特開平1−94013号公報(例えば、第3図など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、鉄道車両の場合、外気に直接接触する窓ガラスが低い温度になるところ、上述した従来の鉄道車両では、客室の室温を所望の温度に到達させることができたとしても、窓ガラスの表面温度を客室の室温に十分に近づけることができなかった。特に、乗客が背面を窓ガラスが設けられた側壁側へ向けて着座するタイプの座席(いわゆるロングシート)の場合、座席により暖気の対流が遮られ、乗客の背面側には暖気が届き難いため、窓ガラスを十分に暖めることができない。
【0005】
窓ガラスは面積が広く乗客から見た場合の視野角が大きいため、窓ガラスの表面からもたらされる輻射熱により乗客が冷やされ、暖房の効果が損なわれる。また、客室内の暖気が窓ガラスに冷やされ重くなることで、窓ガラスに沿う下降気流(いわゆるコールドドラフト)が発生するため、その冷気が乗客に当たり、暖房の効果が損なわれる。その結果、暖房時の乗客の快適性が損なわれるという問題点があった。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、窓ガラスの表面温度を客室の室温に近づけて、乗客の快適性の向上を図ることができる鉄道車両を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1記載の鉄道車両は、側構体に取着される窓ガラスと、前記側構体に背面を向けて配設される座席と、その座席と床面との間に形成される下部空間の空気を暖める温調装置と、を備えるものであり、前記座席の下部空間に開口する吸込口と、前記窓ガラスが面する客室空間に開口する吹出口とを有し、それら吹出口および吸込口を連通させると共に、前記座席の背面と側構体との間に形成される通風路を備えている。
【0008】
請求項2記載の鉄道車両は、請求項1記載の鉄道車両において、前記客室空間において客室側に面して立設される側壁面を備え、その側壁面に前記吹出口が開口されている。
【0009】
請求項3記載の鉄道車両は、請求項2記載の鉄道車両において、前記側壁面と所定間隔を隔てつつ対向する対面部材を備え、その対面部材が前記吹出口に面する位置に配設されている。
【0010】
請求項4記載の鉄道車両は、請求項3記載の鉄道車両において、前記側壁面から前記座席へ向けて延設される延設面を備え、その延設面と前記対面部材との間に間隙が設けられている。
【0011】
請求項5記載の鉄道車両は、請求項4記載の鉄道車両において、前記吹出口は、前記延設面から離間した位置に配設されている。
【0012】
請求項6記載の鉄道車両は、請求項2から5のいずれかに記載の鉄道車両において、前記側壁面は、前記吹出口と前記延設面との間に位置する面が、少なくとも前記吹出口の上方に位置する面よりも客室と反対側へ後退して形成されている。
【0013】
請求項7記載の鉄道車両は、請求項1記載の鉄道車両において、前記客室空間において天井側に面して延設される上壁面を有する上板部材と、その上板部材と所定間隔を隔てつつ対向する下板部材とを備え、前記上壁面に前記吹出口が開口されている。
【0014】
請求項8記載の鉄道車両は、請求項1から7のいずれかに記載の鉄道車両において、前記座席の下部空間に開口する排出口を有すると共に、前記通風路の中途から分岐して形成され、前記排出口と前記吹出口とを連通させる分岐路を備え、前記通風路は、垂直方向に延設される垂直通風路と、その垂直通風路から水平方向へ延設されると共に前記垂直通風路よりも前記吸込口側に位置する水平通風路とを少なくとも備え、前記分岐路は、前記垂直通風路の直下に接続され垂直方向に延設される垂直分岐路を少なくとも備える。
【0015】
請求項9記載の鉄道車両は、請求項8記載の鉄道車両において、前記分岐路の排出口は、前記通風路の吸込口よりも下方に位置する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の鉄道車両によれば、座席の背面と側構体との間に通風路が形成され、その通風路によって、座席の下部空間に開口する吸込口と、窓ガラスが面する客室空間に開口する吹出口とが連通されているので、温調装置により下部空間の空気が暖められると、その暖められた空気(暖気)が、吸込口から通風路内へ取り込まれると共に、その通風路内へ取り込まれた暖気が、自然体流により又は送風装置による強制対流により、通風路内を吹出口へ向けて上昇され、吹出口に達した暖気が、その吹出口から客室空間へ吹き出される。その結果、吹出口から吹き出された暖気により、窓ガラスが暖められる。
【0017】
このように、本発明によれば、吹出口から吹き出した暖気により窓ガラスを暖めることができるので、その窓ガラスの表面温度を客室の室温に効率的に近づけることができる。その結果、かかる窓ガラスの表面からもたらされる輻射熱により乗客が冷やされることを抑制して、暖房の効果を確保することができるので、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
【0018】
また、吹出口から客室空間に吹き出された暖気は、窓ガラスの際に沿って上昇しつつ、窓ガラスを暖めるので、窓ガラスにより冷やされて重くなった客室空間の空気(冷気)が下降気流となるコールドドラフトの発生を効率的に抑制することができる。その結果、窓ガラスに沿って下降する冷気が乗客に当たることを抑制して、暖房の効果を確保することができるので、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができるという効果がある。
【0019】
請求項2記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、客室空間において客室側に面して立設される側壁面を備え、その側壁面に吹出口を開口させる構成であるので、乗客が不用意に落下させた所有物等が吹出口から通風口内へ入り込むことを抑制することができるという効果がある。
【0020】
即ち、鉄道車両においては、乗客の手の届く範囲に吹出口を設けると、乗客が不用意に落下させた所有物等(例えば、切符、装飾品あるいは髪の毛など)が吹出口から通風路内へ入り込むと、その所有物が紛失するだけでなく、通風路を詰まらせて、空調不良の原因にもなる。そのため、落下物が吹出口へ入り込まないようにする必要がある。一方で、送風量を確保するために、吹出口の開口面積は大きくとることが好ましい。
【0021】
これに対し、本発明の鉄道車両によれば、上述したように、側壁面に吹出口を開口させる構成であるので、物が落下する際の軌跡上に吹出口が開口することを回避することができるので、乗客が所有物を不用意に落下させた場合でも、その落下物が吹出口から通風路内へ入り込むことを抑制することができる。
【0022】
請求項3記載の鉄道車両によれば、請求項2記載の鉄道車両の奏する効果に加え、側壁面と所定間隔を隔てつつ対向する対面部材を備え、その対面部材を吹出口に面する位置に配設する構成であるので、暖気の吹き出し量を確保しつつ、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図ることができるという効果がある。
【0023】
即ち、本発明の鉄道車両によれば、側壁面と所定間隔を隔てつつ対向する対面部材により吹出口を遮蔽する構成であるので、かかる側壁面と対面部材との対向面間に暖気が通過するのに十分な断面積の風路を確保することができ、その結果、吹出口を遮蔽しつつ、暖気の吹き出し量を確保することができる。
【0024】
ここで、鉄道車両においては、乗客に快適な居住空間を提供するために、通風路の内部が視認できないようにすることが好ましいところ、本発明の鉄道車両によれば、側壁面の吹出口に面する位置に対面部材を対向配置する構成であるので、例えば、格子状の部材を吹出口に取着する構成と比較して、上述のように、暖気の吹き出し量を確保しつつ、通風路の内部をより一層視認し難くすることができるので、客室における意匠性の向上を図ることができる。
【0025】
更に、本発明の鉄道車両によれば、側壁面の吹出口に面する位置に対面部材を対向配置して、吹出口の開口面を対面部材で遮蔽する構成であるので、例えば、乗客が所有物を不用意に落下させた落下物が落下した面で跳ね返り、その跳ね返り方向の延長線上に吹出口が位置する場合でも、かかる落下物が吹出口から通風路内へ入り込むことを確実に抑制することができる。
【0026】
請求項4記載の鉄道車両によれば、請求項3記載の鉄道車両の奏する効果に加え、側壁面から座席へ向けて延設される延設面を備え、その延設面と対面部材との間に間隙を設ける構成であるので、例えば、乗客が所有物を、側壁面と対面部材との対向面間に落下させた場合でも、その落下物を延設面で受け止めることができると共に、その落下物を延設面と対面部材との間の間隙から回収することができるという効果がある。
【0027】
請求項5記載の鉄道車両によれば、請求項4記載の鉄道車両の奏する効果に加え、吹出口を延設面から離間した位置に配設する構成であるので、例えば、乗客が所有物を、側壁面と対面部材との対向面間に落下させ、その落下物が延設面で跳ね返った場合でも、吹出口が延設面から離間している分、跳ね返った落下物が吹出口から通風路へ入り込むことをより確実に抑制することができるという効果がある。
【0028】
また、延設面の上のゴミやホコリ、或いは、乗客が不用意に載置した所有物などの物体が、車体の傾きなどにより、延設面上を側壁面へ向けて移動し、延設面と対面部材との間の間隙を通過した場合であっても、吹出口が延設面から離間していることにより、上述した物体が吹出口から通風路へ入り込むことを抑制することができるという効果がある。
【0029】
請求項6記載の鉄道車両によれば、請求項2から5のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、側壁面の面の内、吹出口と延設面との間に位置する面を、少なくとも吹出口の上方に位置する面よりも客室と反対側へ後退して形成する構成であるので、例えば、乗客が所有物を、側壁面と対面部材との対向面間に落下させ、その落下物が延設面で跳ね返った場合でも、落下物が跳ね返えされる位置から吹出口までの距離を離間させることができるので、その分、跳ね返った落下物が吹出口から通風路へ入り込むことをより確実に抑制することができるという効果がある。
【0030】
請求項7記載の鉄道車両によれば、請求項1記載の鉄道車両の奏する効果に加え、前記客室空間において天井側に面して延設される上壁面を有する上板部材と、その上板部材と所定間隔を隔てつつ対向する下板部材とを備え、上壁面に吹出口を開口する構成であるので、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図りつつ、暖気の吹き出し量を確保することができるという効果がある。
【0031】
即ち、本発明の鉄道車両によれば、対向配置した上板部材と下板部材との対向面間を通風路からの暖気の通路とし、上板部材に吹出口を開口する構成であるので、かかる吹出口の直下に下板部材を配置することができる。これにより、吹出口から通風路の内部が視認されることを抑制して、客室における意匠性の向上を図ることができる。
【0032】
また、このように、吹出口の直下に下板部材を配置する構成であれば、例えば、乗客が所有物を吹出口へ落下させた場合でも、その落下物を下板部材で受け止めて、通風口内へ入り込むことを抑制することができるだけでなく、落下物を回収することができる。
【0033】
更に、本発明の鉄道車両によれば、上述のように、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図ることができるので、落下物の侵入防止用に、例えば、格子状の部材を吹出口に取着する等の対策を不要とすることができ、その分、暖気が通過するのに十分な断面積を確保することができる。その結果、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図りつつ、暖気の吹き出し量を確保することができる。
【0034】
請求項8記載の鉄道車両によれば、請求項1から7のいずれかに記載の鉄道車両の奏する効果に加え、座席の下部空間に開口する排出口を有すると共に、通風路の中途から分岐して形成され、排出口と吹出口とを連通させる分岐路を備える構成であるので、例えば、ゴミやホコリ等が吹出口から入り込んだ場合でも、かかるゴミやホコリ等を分岐路へ分別して、通風路(分岐路との接続部よりも吸込口側の通風路)内に入り込むことを抑制することができる。その結果、ゴミやホコリ等が通風路に付着すると共に、そのゴミやホコリ等が付着した通風路を通過した暖気が客室へ送風されることを抑制することができるという効果がある。
【0035】
即ち、本発明の鉄道車両によれば、垂直通風路が垂直方向に延設されると共に、その垂直通風路から水平方向へ水平通風路が延設される一方で、分岐路の垂直分岐路は、通風路の垂直通風路の直下に接続されると共に垂直方向に延設される構成であるので、吹出口からゴミやホコリ等が入り込んだ場合には、そのゴミやホコリ等が通風路の垂直通風路に到達すると、その垂直通風路に沿って垂直方向へ落下させる、即ち、垂直分岐路へ向けて落下させることができる。これにより、垂直通風路を落下するゴミやホコリ等が、水平通風路に入り込むことを抑制し、垂直分岐路へ落下させる(分岐路へ分別する)ことができ、その結果、ゴミやホコリ等が通風路(分岐路との接続部よりも吸込口側の通風路)内に入り込むことを抑制することができる。
【0036】
また、本発明の鉄道車両によれば、下部空間に開口する排出口を分岐路が備える構成であるので、分岐路へ分別されたゴミやホコリ等を排出口から排出させて、回収することができ、その結果、分岐路の詰まりを抑制することができるという効果がある。同様に、乗客が所有物を不用意に吹出口へ落下させた場合でも、かかる所有物を排出口から下部空間へ排出させ、回収することができるという効果がある。
【0037】
請求項9記載の鉄道車両によれば、請求項8記載の鉄道車両の奏する効果に加え、分岐路の排出口を通風路の吸込口よりも下方に位置させる構成であるので、温調装置により下部空間の空気が暖められた場合に、その暖められた空気(暖気)が、吸込口から通風路へ取り込まれるようにすると共に、排出口から分岐路へ取り込まれることを抑制して、その分、ゴミやホコリ等が付着した分岐路を通過した暖気が客室へ送風されることを抑制することができるという効果がある。
【0038】
更に、分岐路の排出口を通風路の吸込口よりも下方に位置させる構成とすることで、分岐路へ分別され排出口から下部空間へ排出されたゴミやホコリ等が、吸込口から通風路へ取り込まれることを抑制することができるので、ゴミやホコリ等が通風路から客室へ送り返されることを抑制することができるという効果がある。即ち、排出口が吸込口よりも上方に位置する構成では、排出口からゴミやホコリ等が排出されると、そのゴミやホコリ等が落下する際に、吸込口に到達して、その吸込口に吸い込まれるところ、本発明の鉄道車両によれば、これを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】(a)は、本発明の第1実施の形態における鉄道車両の側面図であり、(b)は、図1(a)のIb−Ib線における鉄道車両の断面図である。
【図2】図1(b)のIIを拡大して示した側構体の拡大断面図である。
【図3】図2のIIIを拡大して示した側構体の拡大断面図である。
【図4】(a)は、第2実施の形態における側構体の断面図であり、(b)は、第3実施の形態における側構体の断面図である。
【図5】第4実施の形態における側構体の拡大断面図である。
【図6】第5実施の形態における側構体の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、鉄道車両100の構成について説明する。図1(a)は、本発明の第1実施の形態における鉄道車両100の側面図であり、図1(b)は、図1(a)のIb−Ib線における鉄道車両100の断面図である。なお、図面の簡素化のために、座席10は、側面を示している。
【0041】
鉄道車両100は、図1(a)に示すように、床構体3と、側構体5と、屋根構体7と、窓ガラス6と、座席10と、温調装置16とを備えている。
【0042】
床構体3は、乗客が乗車する領域を形成する部材であり、図1(a)及び図1(b)に示すように、レールR上を転動する台車1上(図1(a)上側)に配設されている。側構体5は、その床構体3の両側(図1(b)紙面垂直方向両側)にそれぞれ1個ずつ立設され鉄道車両100の壁を構成する部材である。なお、側構体5の詳細構成については、後述する。
【0043】
屋根構体7は、それら一対の側構体5の上側(図1(a)上側)を接続すると共に鉄道車両100の屋根を構成する部材である。窓ガラス6は、透光性のガラスにて構成されており、図1(a)に示すように、側構体5に開口される窓開口5aに嵌め込まれている。
【0044】
座席10は、乗客が腰かけるためのものであり、図1(b)に示すように、背もたれ12と、座部14とを備えている。背もたれ12は、乗客の背を支えるための部材であり、側構体5の客室側の側面である内壁23に背面12aが取り付けられている。座部14は、乗客の尻を支える部材であり、側構体5から客室側に向けて突出して形成されている。
【0045】
温調装置16は、客室の空気を吸い込んで暖められた空気A(図2参照)を送出する装置であり、図1(b)に示すように、座部14の床構体3側(図1(b)下側)の面である座部下面14a(図2参照)に取り付けられている。よって、暖められた空気Aを効率良く乗客へ送ることができる。即ち、暖められた空気Aは、客室を上昇する方向に自然対流するので、その対流を利用することによって、暖められた空気Aを効率良く乗客へ送ることができる。
【0046】
また、温調装置16の送風口は、座席10の幅方向(図1(b)紙面垂直方向)へ窓ガラス6と同じ間隔を有すると共に窓ガラス6に対応した床構体3側(図1(b)下側)に配設されている。よって、後述する吹出口35を後述する吸込口33に対して垂直方向上側へ配設することが可能となる。よって、空気Aの対流を損なうことなく、吹出口35へ送ることができる。
【0047】
次いで、図2および図3を参照して、側構体5の構成について説明する。図2は、図1(b)のIIを拡大して示した側構体5の拡大断面図であり、図3は、図2のIIIを拡大して示した側構体5の拡大断面図である。なお、図2及び図3では、空気Aの流れを実線矢印で示している。
【0048】
側構体5は、上述したように、鉄道車両100の壁を構成する部材であり、図2及び図3に示すように、外壁21と、内壁23と、区画壁25と、通風路31と、吸込口33と、吹出口35と、天板27と、保持部材28と、対面部材29と、を備えている。
【0049】
外壁21は、図2及び図3に示すように、金属板にて構成され鉄道車両100の外壁を成す部材であり、内壁23は、客室を区画する部材であり、背もたれ12が取り付けられている。区画壁25は、外壁21と内壁23との間に配設される壁であり、床構体3の上面から窓ガラス6下端まで連続して形成されている。
【0050】
通風路31は、図2及び図3に示すように、吸込口33と吹出口35との間を結ぶ風路であり、内壁23と区画壁25との間の空間として構成されている。
【0051】
吸込口33は、図2に示すように、通風路31の床構体3側(図2下側)の開口であり、座部14と床構体3との間の空間である下部空間37に開口している。そのため、温調装置16から送出された空気Aが吸込口33を介して通風路31に流入される。
【0052】
よって、温調装置16で暖められた空気Aの一部を流通させるので、乗客の脚部のほてりを低減することができる。即ち、通風路31に温調装置16で暖められた空気Aの一部が流通される分、座部14の先端側(図2左側)へ流れて乗客の脚部にあたる空気Aの量を減らすことができる。その結果、温調装置16から排出される空気の総量を確保して、暖房性を確保しつつ、乗客の脚部のほてりを防止することができる。
【0053】
吹出口35は、図2に示すように、通風路31の窓ガラス6側(図2上側)の開口であり、窓ガラス6の下端側の客室側に開口している。そのため、通風路31を流通した空気Aが窓ガラス6の下端側に排出される。その空気Aによって窓ガラス6が暖められる。その結果、乗客から窓ガラス6への輻射による熱の移動を低減し、乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0054】
また、吹出口35から排出された空気Aは、窓ガラス6に沿って上昇するので、コールドドラフト(窓によって冷やされた空気が下降する現象)を防止して、乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0055】
また、吹出口35は、座席10の幅方向(図2紙面垂直方向)へ窓ガラス6に沿って窓ガラス6の両側端部の内の一端側から他端側まで延設されている。よって、窓ガラス6を幅方向において全体を暖めることができる。
【0056】
また、窓ガラス6とその窓ガラス6に隣接する窓ガラス6との間の壁部には、吹出口35の形成が省略されている。よって、壁部へ空気Aを送ることを省略して、壁部よりも温度が下がりやすい窓ガラス6にのみ空気Aを送るので、鉄道車両100の客室の空調環境を均一とすることができる。
【0057】
また、吸込口33は、座席10の幅方向(図2紙面垂直方向)へ温調装置16の送風口に沿って温調装置16の送風口の両側端部の内の一端側から他端側まで延設されている。よって、吸込口33は、温調装置16の送風口からの空気Aを主に取り込むことができる。例えば、吸込口33が温調装置16の送風口から温調装置16が空気を清浄するフィルターを備える構成である場合には、清浄された空気Aを主に送ることができる。
【0058】
また、図2に示すように、温調装置16の取り付け位置は、窓ガラス6の下端側に対して距離がある位置とされているので、通風路31の高低差を長く確保することができる。それに加えて、吸込口33と吹出口35との間の温度差も大きいので、通風路31には、強い対流を生じさせることができる。よって、空気Aを送り込むための動力を不要として、窓ガラス6に空気Aを送って、窓ガラス6を暖めることができる。その結果、空調の構造を複雑化することなく、空調効率を高めることができる。
【0059】
天板27は、図3に示すように、略断面L字形状の板状体として構成され内壁23の上側(図3上側)の端部に接続される部材であり、延設面27aと、側壁面27bとを備えている。延設面27aは、内壁23が接続される側の反対側に形成される平面であり、屋根構体7(図1(b)参照)側(図3上側)に向いている。側壁面27bは、延設面27aに連続して形成される平面であり、延設面27aに対して屋根構体7(図1(b)参照)側(図3上側)に向けて延設されると共に客室側(図3左側)に向いている。
【0060】
保持部材28は、図3に示すように、窓開口5a(図1(a)参照)を形成する外壁21の縁部との間で窓ガラス6に取り付けられたゴムGを挟み込む部材であり、断面コの字形状に構成され区画壁25の上端に取り付けられると共にコの字の開口を窓ガラス6側(図3右側)に向けて配設されている。
【0061】
その保持部材28は、開口と反対側の部位に側壁面28aを備えており、その側壁面28aは、前述した側壁面27bを含む平面に含まれる平面として構成されている。その、側壁面27bと側壁面28aとの間に、吹出口35が形成されているので、吹出口35は、水平方向(図3左右方向)に開口される。例えば、吹出口35が垂直方向に開口している場合には、落下した異物が入りやすい。これに対し本実施の形態では、吹出口35が水平方向に開口されているので、落下した異物を入り難くすることができる。
【0062】
対面部材29は、吹出口35へ異物の混入を防ぐための部材であり、図3に示すように、断面視半円形状の板状体として構成され、側面視(図3左側から右側方向視)において、後述する吹出口35全体を覆い隠すように構成されている。
【0063】
即ち、対面部材29は、側壁面27bと側壁面28aとの間の間隔(図3上下方向寸法値)よりも大きな幅寸法(図3上下方向寸法値)に構成され、側壁面27b及び側壁面28aから水平方向(図3左右方向)へ所定の距離離間した位置で、且つ、側面視において、側壁面27b及び側壁面28aの両面に重なり合う位置に配設されている。よって、対面部材29と吹出口35への異物の混入を防止することができる。
【0064】
また、対面部材29は、側壁面28aとの間に隙間である隙間38を有した状態に配設されている。よって、対面部材29を吹出口35の開口方向に配設し異物の混入を防止した場合であっても、空気Aの流通を確保することができる。
【0065】
また、対面部材29は、延設面27aとの間に隙間である隙間39を有した状態に配設されている。よって、異物が隙間38を通過して延設面27a上に落下した場合であっても、隙間39から落下した異物を容易にとり出すことができる。
【0066】
また、対面部材29は、客室側(図3左側)断面半円形状に構成されているので、吹出口35からの空気Aによって、暖められると輻射による熱の移動が放射状に行われる。よって、乗客にむらなく熱を与えることができるので、乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0067】
また、上述したように、天板27は、延設面27aに対して屋根構体7(図1(b)参照)側(図3上側)に向けて延設される側壁面27bを備えているので、延設面27a上に落下した異物が吹出口35を介して通風路31へ落下することを防止することができる。即ち、吹出口35が延設面27aから上側(図3上側)に離間した位置に形成されているので、異物の通風路31への落下を防止することができる。
【0068】
また、後述する吹出口35の開口方向(図3左方向)に対面部材29が配設されているので、通風路31の内部を見えないようにすることができる。よって、鉄道車両100の内装の見栄えを良くすることができる。
【0069】
通風路31は、温調装置16で暖められた空気Aを床構体3側から窓ガラス6の下端側へ向けて流通させるための流路であり、図2に示すように、外壁21と内壁23との間の空間を区画壁25によって分離して形成される空間である。このように、通風路31は、外壁21と内壁23との間の空間に形成されているので、通風路31を設置するために、別途スペースを確保することを不要とすることができる。その結果、客室空間を広く確保することができる。
【0070】
次いで、図4(a)を参照して、第2実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、側壁面27bと側壁面28aとが同一平面上に配設され、その側壁面27bと側壁面28aとの間の隙間に吹出口35が形成される場合を説明したが、第2実施の形態における鉄道車両によれば、側壁面27bが側壁面28aよりも区画壁25側(図4右側)に位置された構成とされている。
【0071】
なお、上記した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、後述第3実施の形態、第4実施の形態および第5実施の形態についても同様とする。
【0072】
図4(a)は、第2実施の形態における側構体205の断面図であり、図3に対応する。また、図4(a)では、空気Aの流れを実線矢印で示している。
【0073】
第2実施の形態における鉄道車両は、図4(a)に示すように、天板227を有する側構体205を備えている。天板227は、座席10側(図4左側)から区画壁25側を結ぶ方向において、座席10側(図4(a)左側)から区画壁25側(図4(a)右側)へ側壁面28aを越えて延設される延設面227aと、その延設面227aの区画壁25側(図4右側)の端部から保持部材28側(図4(a)上側)へ延設される側壁面227bとを備えている。
【0074】
よって、異物の通風路31への落下を防止することができる。即ち、側壁面227bが側壁面28aよりも区画壁25側(図4(a)右側)に位置しているので、対面部材29と側壁面28aと間の隙間238aよりも対面部材29と側壁面227bとの間の隙間238bの方が区画壁25側(図4(a)右側)へ広くなる。
【0075】
そのため、隙間238aを通って落下してきた異物は、隙間238bの対面部材29側(図4(a)左側)を通って延設面227a上へ落ちる頻度が高くなる。即ち、隙間238aを通って落下してきた異物は、吹出口235から離れた位置に落下するので、通風路31へ異物が落下することを防止することができる。
【0076】
次いで、図4(b)を参照して、第3実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、側壁面27bと側壁面28aとが同一平面上に配設され、その側壁面27bと側壁面28aとの間の隙間に吹出口35が形成される場合を説明したが、第3実施の形態における鉄道車両によれば、上板部材327に吹出口335が貫通形成され、吹出口335の下側に下板部材325aが配設されている。
【0077】
図4(b)は、第3実施の形態における側構体305の断面図であり、図3に対応する。また、図4(b)では、空気Aの流れを実線矢印で示している。第3実施の形態における鉄道車両は、図4(b)に示すように、上板部材327と、区画壁325とを有する側構体305を備えている。
【0078】
上板部材327は、図4(b)に示すように、通風路31の上側(図4(b)上側)を覆った状態として配設されており、窓ガラス6側(図4(b)右側)に吹出口335が貫通形成されている。
【0079】
区画壁325は、上側(図4(b)上側)の端部に下板部材325aが形成されており、その下板部材325aは、平板状に形成されると共に上板部材327と所定の隙間を有しつつ区画壁325の上端(図4(b)上端)の部位から窓ガラス6側(図4(b)右側)に延設されている。
【0080】
また、下板部材325aは、屋根構体7(図1(b)参照)側に面する水平な平坦面として構成される回収面325bを備えており、その回収面325bは、上板部材327に貫通形成された吹出口335の鉛直方向下方に位置されている。これにより、回収面325bが客室からの視界を遮るので、吹出口335から通風路31の内部が視認されることを抑制して、客室における意匠性の向上を図ることができる。
【0081】
また、このように、吹出口335の直下に上板部材327を配置し、上板部材327の上壁面327aが水平に構成されているので、例えば、乗客が所有物を吹出口へ落下させた場合でも、その落下物を上板部材327で受け止めて、通風路31内へ入り込むことを抑制することができるだけでなく、落下物を回収することができる。
【0082】
更に、第3実施の形態によれば、上述のように、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図ることができるので、落下物の侵入防止用に、例えば、格子状の部材を吹出口に取着する等の対策を不要とすることができ、その分、空気Aが通過するのに十分な断面積を確保することができる。その結果、意匠性の向上と落下物の侵入防止効果の向上とを図りつつ、空気Aの吹き出し量を確保することができる。
【0083】
また、吹出口335の鉛直方向下側には、下板部材325aが配設されているので、空気Aは、下板部材325aより内壁23側(図4(b)左側)に位置する通風路31を上昇した後に、吹出口335へ向かって流れるので、内壁23から窓ガラス6側(図4(b)右側)へ流れる。
【0084】
そのため、吹出口335から客室に放出された後でも、空気Aは、窓ガラス6側へ向かって流れるので、窓ガラス6を効率よく暖めることができ、その窓ガラス6の表面温度を客室の室温に効率的に近づけることができる。よって、かかる窓ガラス6の表面への輻射による熱の移動により乗客が冷やされることを抑制して、暖房の効果を確保することができる。その結果、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0085】
次いで、図5を参照して、第4実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、水平方向に開口する吹出口35と、その吹出口35に隙間38を隔てて対面して配設される対面部材29とを備えることで、異物が通風路31へ混入することを防止するように構成される場合を説明したが、第4実施の形態における鉄道車両によれば、空気Aを流通させる第1通風路431a、水平通風路431b及び第2垂直通風路431cとは別に、異物を回収する回収路431dを備えた構成とされている。
【0086】
図5は、第4実施の形態における側構体405の拡大断面図であり、図2の一部(座席の上部および座席下部)を拡大した図に対応する。また、図5では、空気Aの流れを実線矢印で示すと共に異物の落下方向を破線矢印で示しており、図6に関しても同様に示している。
【0087】
第4実施の形態における鉄道車両は、図5に示すように、上板部材427と、分離壁426とを有する側構体405を備えている。上板部材427は、通風路431の上側(図5上側)を覆った状態として配設されており、窓ガラス6側(図5右側)に吹出口435が貫通形成されている。
【0088】
分離壁426は、下側(図5下側)の端部として構成を断面くの字形状に折り曲げた板状体として構成され、内壁23と区画壁25との間に所定の間隔を保って配設されている。よって、内壁23と分離壁426との間に第1通風路431aが形成され、区画壁25と分離壁426との間に回収路431dが形成される。
【0089】
その第1通風路431aは、座席10の下側の開口として構成される吸込口433に接続され、回収路431dは、座席10の下側の開口として構成され吸込口433の下側に配設される排出口441に接続される。
【0090】
また、分離壁426の上側(図5上側)の端部は、図5に示すように、上板部材427の下側の面として構成される下壁面427bから所定の距離だけ垂直方向へ離間して配設されており、垂直方向(図5上下方向)において分離壁426の上側(図5上側)の端部と下壁面427bとの間に水平通風路431bが形成される。
【0091】
また、分離壁426の上側の端部は、吹出口435の外縁で窓ガラス6から最も離間した外縁よりさらに窓ガラス6から離間しており、垂直方向(図5上下方向)において吹出口435と分離壁426の上側の端部との間には、第2垂直通風路431cが形成される。
【0092】
例えば、ゴミやホコリ等の異物が吹出口435から入り込んだ場合でも、その異物は、第2垂直通風路431cを介して回収路431dへ分別される。即ち、回収路431dは、第2垂直通風路431cの鉛直方向下側に形成され、第1通風路431aは、水平通風路431bを介して第2垂直通風路431cに接続されているので、異物が第2垂直通風路431cを通って落下した場合には、水平通風路431bへ入り込むことを防止して、回収路431dへ送られる。その後、回収路431dへ送られた異物は、排出口441から下部空間37へ排出されるので、容易に回収することができる。
【0093】
一方、温調装置16から送出され吸込口433から吸入された空気Aは、第1通風路431aを通って垂直に上昇し、その後、水平通風路431bを通って水平方向に移動し、第2垂直通風路431cを垂直に上昇して吹出口435から排出される。
【0094】
即ち、第4実施の形態では、空気Aの排出と、異物の回収とを両立させることができる。また、吹出口435を異物が通過しても排出口441から排出されるので、異物が通過しないように吹出口435の開口面積を小さくする必要がなく、そのため、吹出口435の開口幅(図5左右方向寸法値)を狭くしたり、網などを取り付けたりすることを省くことができる。よって、開口面積を大きく設定して、空気Aの流量を増加させることができるので、窓ガラス6を効率良く暖めることができる。
【0095】
その結果、窓ガラス6の表面への輻射による熱の移動により乗客が冷やされることを抑制して、暖房の効果を確保することで、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0096】
また、吸込口433は、排出口441の上側(図5上側)に形成されているので、排出口441から排出されたゴミやホコリ等の異物が吸込口433へ入ることを防止することができる。また、吸込口433と排出口441とは、分離壁426の下端部433aによって分けられており、下端部433aは、温調装置16の吸込口よりも屋根構体7(図1(b)参照)側(図5上側)に配設されている。
【0097】
そのため、ゴミやホコリ等の異物が排出口441から排出される場合には、温調装置16の吸込口よりも下側に排出することができる。よって、温調装置16がホコリを吸い込んで、再び客室へ送ることを防止することができる。その結果、客室の空気Aを清潔に保つことができる。
【0098】
また、下端部433aを温調装置16全体よりも下側に配設することで、異物として乗客の所有物、例えば、カギなどの金属の小物などが吹出口435から落下した場合に、温調装置16へ衝突することを防止して、温調装置16の破損を回避することができる。
【0099】
次いで、図6を参照して、第5実施の形態について説明する。第1実施の形態における鉄道車両100によれば、内壁23と区画壁25との間が通風路31のみで構成される場合を説明したが、第5実施の形態における鉄道車両によれば、空気Aを流通させる第1通風路531aとは別に、異物を回収する回収路531dを備えた構成とされている。
【0100】
図6は、第5実施の形態における側構体505の拡大断面図であり、図2の一部(座席の上部および座席下部)を拡大した図に対応する。
【0101】
第5実施の形態における鉄道車両は、図6に示すように、分離壁526を有する側構体505を備えている。
【0102】
分離壁526は、下側(図6下側)の端部として構成を断面くの字形状に折り曲げた板状体として構成され、内壁23と区画壁25との間に所定の間隔を保って配設されている。よって、内壁23と分離壁526との間に第1通風路531aが形成され、区画壁25と分離壁526との間に回収路531dが形成される。その第1通風路531aは、座席10の下側の開口として構成される吸込口533に接続され、回収路531dは、座席10の下側の開口として構成され吸込口533の下側に配設される排出口541に接続される。
【0103】
また、分離壁526の上側(図6上側)の端部は、図6に示すように、天板27の下側の面として構成される下壁面27cから所定の距離だけ垂直方向へ離間して配設されており、垂直方向(図6上下方向)において分離壁526の上側(図6上側)の端部と側壁面27bとの間に水平通風路531bが形成される。
【0104】
また、分離壁526の上側の端部は、吹出口35の外縁で窓ガラス6から最も離間した外縁よりさらに窓ガラス6から離間しており、垂直方向(図6上下方向)において吹出口35と分離壁526の上側の端部との間には、第2垂直通風路531cが形成される。
【0105】
例えば、ゴミやホコリ等の異物が吹出口35から入り込んだ場合でも、その異物は、第2垂直通風路531cを介して回収路531dへ分別される。即ち、回収路531dは、第2垂直通風路531cの鉛直方向下側に形成され、第1通風路531aは、水平通風路531bを介して第2垂直通風路531cに接続されているので、異物が第2垂直通風路531cを通って落下した場合には、水平通風路531bへ入り込むことを防止して、回収路531dへ送られる。その後、回収路531dへ送られた異物は、排出口541から下部空間37へ排出されるので、容易に回収することができる。
【0106】
一方、温調装置16から送出され吸込口533から吸入された空気Aは、第1通風路531aを通って垂直に上昇し、その後、水平通風路531bを通って水平方向に移動し、第2垂直通風路531cを垂直に上昇して吹出口35から排出される。
【0107】
即ち、第5実施の形態では、空気Aの排出と、異物の回収とを両立させることができる。また、吹出口35を異物が通過しても排出口541から排出されるので、異物が通過しないように吹出口35の開口面積を小さくする必要がなく、そのため、吹出口35の開口幅(図6左右方向寸法値)を狭くしたり、網などを取り付けたりすることを省くことができる。よって、開口面積を大きく設定して、空気Aの流量を増加させることができるので、窓ガラス6を効率良く暖めることができる。
【0108】
その結果、窓ガラス6の表面への輻射による熱の移動により乗客が冷やされることを抑制して、暖房の効果を確保することで、暖房時の乗客の快適性の向上を図ることができる。
【0109】
また、吸込口533は、排出口541の上側(図6上側)に形成されているので、排出口541から排出されたゴミやホコリ等の異物が吸込口533へ入ることを防止することができる。また、吸込口533と排出口541とは、分離壁526の下端部533aによって分けられており、下端部533aは、温調装置16の吸込口よりも屋根構体7(図1(b)参照)側(図6上側)に配設されている。
【0110】
そのため、ゴミやホコリ等の異物が排出口541から排出される場合には、温調装置16の吸込口よりも下側に排出することができる。よって、温調装置16がホコリを吸い込んで、再び客室へ送ることを防止することができる。その結果、客室の空気Aを清潔に保つことができる。
【0111】
また、下端部533aを温調装置16全体よりも下側に配設することで、異物として乗客の所有物、例えば、カギなどの金属の小物などが吹出口35から落下した場合に、温調装置16へ衝突することを防止して、温調装置16の破損を回避することができる。
【0112】
なお、上述した回収路431d,531dは、請求項8記載の「垂直分岐路」を含んでおり、回収路431d,531dの直線状に形成された領域(図5及び図6参照)が請求項8記載の「垂直分岐路」に対応する。
【0113】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0114】
例えば、上記各実施の形態で挙げた数値(例えば、各構成の数量や寸法など)は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0115】
第1実施の形態では、吹出口35を水平方向に開口させると共に吹出口35の開口方向に隙間38を有した状態に対面部材29を配設した構成とされる場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、天板27、保持部材28及び対面部材29を省略し、複数の貫通孔が形成されたプレートを備え、そのプレートで内壁23の上側縁部と区画壁25の上側縁部との隙間全体を接続する構成としても良い。
【0116】
この場合、貫通孔の開口面積を除外したい異物よりも小さく設定することで、異物の除外と空気Aの窓への送出とを両立させることができる。即ち、プレートを容易に製造することができるので、製品コストの削減を図ることができる。
【0117】
また、上記各実施の形態では、吹出口35,235,335,435が1個の開口として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、その開口に複数の貫通孔を有したプレートを嵌め込んでも良い。この場合、異物の混入をさらに防止することができる。
【0118】
また、第1実施の形態では、客室の空気を吸い込んで空気を暖めて送出する装置として構成される温調装置16を備える場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、下部空間37に配置されるヒータ(発熱体)を備えても良い。または、別の場所に配置された温調装置からのダクトが下部空間37へ空気を送る構成としても良い。即ち、下部空間37に、窓ガラス6の下部の空気よりも暖かい空気が送り込まれていれば良い。
【0119】
また、通風路31,431,531内に配置されるヒータ(発熱体)を備えても良い。または、別の場所に配置された温調装置からダクトが通風路31,431,531へ空気を送る構成としても良い。即ち、通風路31,431,531に窓ガラス6の下部の空気よりも暖かい空気が送り込まれていれば良い。
【符号の説明】
【0120】
100 鉄道車両
3 床構体(床面)
5,205,305,405,505 側構体
6 窓ガラス
10 座席
12a 背面
16 温調装置
325a 下板部材
325b 回収面(下板部材の一部)
27a,227a 延設面
27b 側壁面
227b 側壁面(吹出口と延設面との間に位置する面)
327,427 上板部材
327a,427a 上壁面
28a 側壁面(吹出口の上方に位置する面)
29 対面部材
31,431,531 通風路
431a,531a 第1通風路(通風路の一部、垂直通風路)
431b,531b 水平通風路(通風路の一部)
431c,531c 第2垂直通風路(通風路の一部、垂直通風路)431d,531d 回収路(分岐路)
33,433,533 吸込口
35,235,335,435 吹出口
37 下部空間
441 排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体に取着される窓ガラスと、前記側構体に背面を向けて配設される座席と、その座席と床面との間に形成される下部空間の空気を暖める温調装置と、を備えた鉄道車両において、
前記座席の下部空間に開口する吸込口と、前記窓ガラスが面する客室空間に開口する吹出口とを有し、それら吹出口および吸込口を連通させると共に、前記座席の背面と側構体との間に形成される通風路を備えていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記客室空間において客室側に面して立設される側壁面を備え、
その側壁面に前記吹出口が開口されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記側壁面と所定間隔を隔てつつ対向する対面部材を備え、
その対面部材が前記吹出口に面する位置に配設されていることを特徴とする請求項2記載の鉄道車両。
【請求項4】
前記側壁面から前記座席へ向けて延設される延設面を備え、
その延設面と前記対面部材との間に間隙が設けられていることを特徴とする請求項3記載の鉄道車両。
【請求項5】
前記吹出口は、前記延設面から離間した位置に配設されていることを特徴とする請求項4記載の鉄道車両。
【請求項6】
前記側壁面は、前記吹出口と前記延設面との間に位置する面が、少なくとも前記吹出口の上方に位置する面よりも客室と反対側へ後退して形成されていることを特徴とする請求項2から5のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項7】
前記客室空間において天井側に面して延設される上壁面を有する上板部材と、
その上板部材と所定間隔を隔てつつ対向する下板部材とを備え、
前記上壁面に前記吹出口が開口されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両。
【請求項8】
前記座席の下部空間に開口する排出口を有すると共に、前記通風路の中途から分岐して形成され、前記排出口と前記吹出口とを連通させる分岐路を備え、
前記通風路は、垂直方向に延設される垂直通風路と、その垂直通風路から水平方向へ延設されると共に前記垂直通風路よりも前記吸込口側に位置する水平通風路とを少なくとも備え、
前記分岐路は、前記垂直通風路の直下に接続され垂直方向に延設される垂直分岐路を少なくとも備えることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の鉄道車両。
【請求項9】
前記分岐路の排出口は、前記通風路の吸込口よりも下方に位置することを特徴とする請求項8記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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