説明

鉄道車両

【課題】車内の温度を快適に保つ床暖房装置を備え、暖房に必要な消費エネルギの低減、容易に脱着可能にする鉄道車両を提供する。
【解決手段】床材3は、車両の台枠2上に固定された根太6によって支持されている。床材3の内部には、床材内温水管32と、床材内温水管32の鉛直上面で接触し、床材3全体に熱を拡散する熱伝導の良い熱拡散板42とが設置されている。床材内温水管32は床材3の鉛直下側に接続口34を設け、床下に設置された床下主温水管31と接続管33によって分離可能に接続される。床下主温水管31は、台枠2上に設置した断熱材41の上側に設置されており、台枠2に逃げる熱量を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に係わり、特に車内の温度を快適に保つ床暖房装置を備えた鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、乗客が快適に過ごせる環境を提供するため、車内の空気温度のばらつきを少なくすることが重要である。例えば、欧州規格(EN13129、EN14750)により、車内の空気温度について許容されるばらつきが規定されている。EN13129では、垂直方向の温度のばらつきは、3K以内とすることが規定されている。
【0003】
しかしながら、空気は温度が上がると密度が下がり、その結果、暖かい空気ほど上に流れる性質を持つため、車内において、天井付近の空気温度が高く、床付近の温度が低くなる傾向にある。したがって、特に、冬季においては、床近傍の空気を暖めることが、温度ばらつきの低減に重要である。また、暖房に必要なエネルギの消費を低減することも重要である。
【0004】
上記の温度ばらつきの低減のために、空調装置から車内の荷棚下部に暖気を吹き出し、空調装置に回収される循環気及び排気口を座席下に設置し、車内の空気温度の均一化を提案したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
図13は、特許文献1に記載の鉄道車両における調和空気の吹き出し方法において、車両横断面で見た空調空気の概略な流れを示す断面図である。空調装置(図示せず)によって暖められた空気は、荷棚4の下に設けられた空調吹き出しダクト11から客室内に吹き出される。また、客室内の空気は、客室内の座席5の下に設けられた空調吸込みダクト12を通じて空調機に戻される。このような空調ダクト11,12を通じての暖房用空気の吹出しと吸込みを行う構成とすることで、客室内における暖房用の空気の流れ100は、荷棚4に沿って客室枕木方向中央部に向かって上昇し、枕木方向中央部付近で左右からの流れが衝突することで下方に流れ、床材3近傍において、枕木方向中央部から側方向に流れ、客室と空調機とを循環する。このような大きな空気の循環を作り出すことで、客室の空気温度の均一化が図られている。
【0006】
また、ヒータユニットを車両台枠上面、即ち床板下面に設置し、車内の床付近の空気を暖めることにより、車内空気温度の均一化を提案したものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
図14は、特許文献2に記載の暖房装置の構造図を示す車両横断面図である。この暖房装置では、床材3の下面と車両台枠2の間にヒータパネル21が設置されている。ヒータパネル21は、床材3を暖め、暖められた床材3を介して客室内の空気を間接的に暖めている。
【0008】
また、空調装置の消費エネルギのために、車両の駆動用機器の排熱を水によって回収し、空調装置の冷凍サイクルの効率を向上させ、エネルギの消費を低減したものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
特許文献3に記載の空調装置を説明する。当該文献記載の空調装置では、車両の駆動用機器の排熱を水によって回収し、回収した排熱を空調装置に与えることで空調装置の暖房運転時の熱交換サイクルの効率を向上させることを図っている。このような構成とすることで、空調装置の熱交換サイクルの効率が向上し、空調装置全体の消費エネルギが低減する。
前述した特許文献が開示する技術では、鉄道車両の車内温度分布の不均一さを解消する点において、解決すべき課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−132982号公報
【特許文献2】特開平3−258610号公報
【特許文献3】特開2006−248275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、鉄道車両において、車内の温度のばらつきを小さくするとともに、快適性を高めることができる床暖房装置を備えた鉄道車両を提供することである。また、同時に、床暖房装置において暖房に必要な消費エネルギの低減、容易に脱着可能な構造とした鉄道車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明による鉄道車両は、車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両であって、前記床暖房装置は、前記車内の床を構成する床材の内部に温水管を設置して成ることを特徴としている。床暖房装置においては、床材の内部に設置された温水管に温水を通して床材を温めることで、鉄道車両の車内を暖房することができる。
【0013】
また、本発明による鉄道車両は、車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両であって、前記床暖房装置は、前記車内の床を構成する床材の下面に直接接触される温水管を設置して成ることを特徴としている。床暖房装置においては、床材の下面に直接接触される温水管に温水を通して床材を温めることで、鉄道車両の車内を暖房することができる。
【0014】
また、本発明による鉄道車両は、車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両であって、前記床材は、車両の台枠に設置される根太を介して前記台枠に支持されており、前記床暖房装置は、前記根太に直接接触される温水管を設置して成ることを特徴としている。床暖房装置においては、車両の台枠に設置される根太に直接接触される温水管に温水を通し、根太を通じて床材を温めることで、鉄道車両の車内を暖房することができる。
【0015】
更に、本発明による鉄道車両は、車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両であって、前記鉄道車両は、当該鉄道車両を駆動する駆動装置を備えており、前記床暖房装置は、前記車内の床を構成する床材を温める温水管を備えており、前記駆動装置からの排熱が、前記温水管に通して流される温水の熱源とされていることを特徴としている。駆動装置からの排熱が熱源となって、前記温水管に通して流される温水を温め、この温められた温水が流れる温水管によって車内の床を構成する床材を温めることで、鉄道車両の車内を暖房することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明が提案する鉄道車両により、暖房時に低温となりやすい客室内部の床近傍の空気を暖めることができ、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができる。その結果、乗客が快適に過ごせる環境の鉄道車両を提供することができる。また、駆動装置の排熱を回収して、暖房装置の熱源とすることで、暖房に必要なエネルギの消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す、鉄道車両の横断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す、床構造の水平断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態を示す、床構造の上面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図9】本発明の第6の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図10】本発明の第7の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図11】本発明の第8の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図12】本発明の第9の実施形態を示す、床構造の断面図である。
【図13】特許文献1に記載の実施形態を示す、鉄道車両の断面図である。
【図14】特許文献2に記載の実施形態を示す、鉄道車両の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による鉄道車両の実施例を図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0019】
図1、図2、図3及び図4を参照して、本発明による鉄道車両1の第1の実施例を説明する。図1は、鉄道車両の客室の横断面図、即ち、車両長手方向に垂直な面(車幅方向に延びる面)で切断した断面図である。図2は、図1中のA部で示す、床部の枕木中心付近の断面図である。図3は図2中のB−B断面であり、図4は、床構造を上面から見た場合の図である。
【0020】
本発明による鉄道車両においては、図1に示すように、床下、即ち、台枠2の下側に熱源30が設置されており、熱源30によって温水を作り、その温水により床材3が温められる。床材3は、車両の台枠2上に設置された複数本の根太6によって支持されている。根太6の台枠2への設置は、台枠2上への固定によるのが好ましい。図2及び図3に示されているように、床材3の内部には、床材内温水管32と、床材内温水管32の車両高さ方向上面で接触し且つ床材3の全体に熱を拡散する熱伝導の良い熱拡散板42とが設置されている。床材3の内部の床材内温水管32は、床材3の車両高さ方向下側に接続口34を備えており、接続口34に繋がる接続管33を通じて、床下に設置された床下主温水管31と接続されている。温水管は、床下主温水管31と、これに接続管33及び接続口34を通じて接続される床材内温水管32とをそれぞれ別部品として構成されている。床下主温水管31は、台枠2上に設置された断熱材41の上側に設置されている。ここで、図4に示すように、床材3と床材内温水管32と接続口34とで温水床材36が構成されている。温水床材36は、車室内の全てではなく、部分的に設置しても良い。例えば、図4では、鉄道車両1の枕木中心部分(車両1の幅方向の中心部分)のみに温水床材36が設置されている。
【0021】
この鉄道車両は、上記のような、熱源30によって作った温水により床材3を温める構成とされているので、床材3を暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができる。即ち、熱源30によって作られ床下主温水管31を通ってきた温水は、接続管33及び接続口34を通り、床材内温水管32に通して流されることで床材内温水管32に供給され、床材内温水管32と接触している床材3を温める。床材内温水管32は、熱伝導の良い熱拡散板42と接触しているので、床材3を直接に温めると同時に熱拡散板42を温め、熱拡散板42は床材3との接触面積が大きいため、熱拡散板42を介しての間接的ではあるが効率的に床材3全体を温めることができる。ただし、床材3が熱伝導の良い部材で構成されている場合は、熱拡散板42は不要となる場合もある。また、床下主温水管31と台枠2の間に断熱材41を設置することで、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。更に、床材内温水管32は接続口34において、接続管33から容易に分離することができるため、床材3と床材内温水管32と接続口34とを備える温水床材36を床下主温水管31に繋がる接続管33から容易に取り外すことができる。
【0022】
以上により、本鉄道車両の実施例を構成することで、鉄道車両の車内温度を快適に保つ暖房装置を提供でき、接続管33とそれに繋がる床下主温水管31を備える給湯系から容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0023】
図5に、本発明による鉄道車両の第2の実施例を示す。図5は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。床材3は、車両の台枠2上に固定された複数本の根太6によって支持されている。床材3には、その車両高さ方向下面において、床下主温水管31が接触するように設置されている。ここで、床材3は熱伝導の良い部材とし、床下主温水管31は、床材3との接触面積を大きくするために、断面を矩形にした矩形ダクトとする。床下主温水管31は、台枠2上に設置した断熱材41の上側に設置されている。
【0024】
この鉄道車両は、上記のように、温水が中を流れる床下主温水管31を床材3に直接接触させる構成とすることで、床材3全体を直接に効率的に温めることができる。また、床下主温水管31を断面矩形形状としているので、床材3との接触面積が大きく、効率的に床材3を温めることができる。その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができる。また、床下主温水管31と台枠2との間に断熱材41を設置することで、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。また、床下主温水管31は断熱材41側に設置されているので、根太6及び床下主温水管31を台枠2側に残した状態で、床材3を容易に取り外しできる。
【0025】
以上により、本鉄道車両の実施例を構成することで、鉄道車両の車内温度を快適に保つ暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0026】
図6に、本発明による鉄道車両の第3の実施例を示す。図6は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。床材3は、車両の台枠2上に固定された複数本の根太6の上部に設置された防振ゴム43によって支持されている。床材3の内部には防振ゴム43上部の周囲のみ、芯材44が設置されている。床材3及び床材の芯材44の車両高さ方向下面に床下主温水管31が接触するように設置されている。ここで、床材の芯材44は熱伝導の良い部材とし、床下主温水管31を、床材3との接触面積を大きくするために、断面を矩形にした矩形ダクトとする。また、床材3は、熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1が備えるように熱拡散板42を設置してもよい。床下主温水管31は、台枠2上に設置した断熱材41の上側に設置されている。
【0027】
この鉄道車両は、上記のような床材3の内部に防振ゴム43と芯材44とを備える構成とすることで、床材3全体を効率的に暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができる。即ち、温水が中を流れる床下主温水管31は、床材3及び床材の芯材44と直接接触し、床材3及び床材の芯材44を温める。床下主温水管31を断面矩形形状としているので、床材3との接触面積が大きく、効率的に床材3を温めることができる。また、床材3の内部に設けた芯材44を温めることにより、効率的に床材3を温めることができる。更に、床下主温水管31と台枠2との間に断熱材41を設置することで、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。床下主温水管31は断熱材41側に設置され、防振ゴム43が根太6の上部に設置されているので、根太6と防振ゴム43及び床下主温水管31を台枠2側に残した状態で、床材3を容易に取り外しできる。
【0028】
以上により、本鉄道車両の第3の実施例を構成することで、鉄道車両の車内温度を快適に保つ暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例4】
【0029】
図7に、本発明による鉄道車両の第4の実施例を示す。図7は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。床材3は、車両の台枠2上に固定された複数本の根太6によって支持されている。床材3には、その車両高さ方向下面において、床下主温水管31が、根太6と接触するように、根太6によって支持されている。根太6は、断面図において2本の足で構成されており、床下主温水管31と接触する足部は、台枠2と接触しない形状とされている。即ち、根太6と床下主温水管31との接触部から床材3までの長さが、根太6と床下主温水管31との接触部から台枠2までの長さに対して、短くされている。また、床下主温水管31は、台枠2上に設置した断熱材41の上側に設置されている。ここで、床材3は熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1が備えるように熱拡散板42を設置してもよい。
【0030】
この鉄道車両は、上記のように床下主温水管31が根太6と接触するような構成とすることで、床材3全体を効率的に暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができる。即ち、温水が中を流れる床下主温水管31は、根太6と直接接触し根太6を温める。温められた根太は床材3と接触し、床材3を温める。根太6と床下主温水管31との接触部から床材3までの長さが、根太6と床下主温水管31との接触部から台枠2までの長さに対して短いため、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。また、床下主温水管31と台枠2の間に断熱材41を設置することで、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。更に、床下主温水管31は根太6に接触及び取り付けられているので、根太6と床下主温水管31とを台枠2側に残した状態で、床材3を容易に取り外しできる。
【0031】
以上により、本鉄道車両の第4の実施例の構成とすることで、鉄道車両の車内温度を快適に保つ暖房装置を提供でき、床材3を、根太6と床下主温水管31から分離して、容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例5】
【0032】
図8に、本発明による鉄道車両の第5の実施例を示す。図8は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。本実施例の構成は、実施例4の構成と似ているが、床下主温水管31を根太1本ごとに設置した点が相違している。例えば、本暖房装置以外に床下ダクト13がある場合に適用できる。このような構成としても、上記実施例4と同様に、床材3全体を暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができ、容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例6】
【0033】
図9に、本発明による鉄道車両の第6の実施例を示す。図9は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。床材3は車両の台枠2上に固定された複数本の根太6によって支持されている。この根太6の内部には、根太内温水管35が、根太6と接触するように設置されている。ここで、床材3は熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1に備わる熱拡散板42を設置してもよい。このような構成としても、上記実施例4と同様に、床材3全体を暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができ、容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例7】
【0034】
図10に、本発明による鉄道車両の第7の実施例を示す。図10は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。車両の台枠2上には複数個の防振ゴム押え45が固定されており、防振ゴム押え45によって防振ゴム43が固定されている。床材3は、防振ゴム43の上に設置された根太6によって支持されている。この根太6の内部には、根太内温水管35が、根太6と接触するように設置されている。ここで、床材3は熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1に備わる熱拡散板42を設置してもよい。床材3の内部には、根太6の上方を含む範囲に、図6(第3実施例)に示したものと同様の芯材44が設置されている。芯材44の車両高さ方向下面に根太内温水管35が接触するように設置されている。芯材44については熱伝導の良い部材から構成し、根太内温水管35については、床材3との接触面積を大きくするために、断面を矩形にした矩形ダクトとする。このような構成としても、上記実施例4と同様に、床材3全体を暖めることができる。即ち、温水が中を流れる根太内温水管35は床材3の芯材44と直接接触し、芯材44を温める。根太内温水管35の断面形状を矩形としているので、芯材44との接触面積が大きく、効率的に床材3を温めることができる。また、根太6,6間で床材3と台枠2との間に断熱材41を設置しており、更に根太6は熱伝導の悪い防振ゴム43によって台枠2に支持されているので、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。更にまた、本発明では、床材3は、根太内温水管35を内部に含む根太6、防振ゴム43及び防振ゴム押え45を台枠2側に残した状態で、台枠2から容易に取り外しすることが可能である。その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができ、容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例8】
【0035】
図11に、本発明による鉄道車両の第8の実施例を示す。図11は鉄道車両における、床部の枕木中心付近の断面図である。車両の台枠2上には複数個の防振ゴム押え45が固定されており、防振ゴム押え45によって防振ゴム43が固定されている。床材3は防振ゴム43の上に設置された根太6によって支持されている。根太6には、断面で見て、3つの孔が設けられており、この例では両側の孔に根太内温水管35,35が設置されている。ここで、根太内温水管35,35が設置されている根太6が、全体として、床材3内に嵌め込まれる態様で設置されている。床材3は熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1に備わる熱拡散板42を設置してもよい。上記のような構成とすることで、床材3全体を暖めることができ、その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができる。即ち、温水が中を流れる根太内温水管35は根太6と接触しており、効率良く根太6を温めることができる。また、熱伝導の悪い防振ゴム43によって、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。更に、本発明では、根太内温水管35を内部に含む根太6が、台枠2から容易に取り外し可能となっている。
【0036】
以上により、本鉄道車両の第8の実施例の構成とすることで、鉄道車両の車内温度を快適に保つ暖房装置を提供でき、根太内温水管35を根太6とともに容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【実施例9】
【0037】
図12は、本発明による鉄道車両の第9の実施例を示す。本実施例は、実施例8をより具体化したものである。車両の台枠2上には防振部材としての複数個の防振ゴム43がボルト53及びナット54で固定されており、防振ゴム43上には根太6が設置されている。床材3は、根太6によって支持されている。この根太6には、断面で見ると3つの孔が設けられており、その孔に、根太内温水管35が設置されている。ここで、床材3は熱伝導の良い部材が望ましいが、実施例1に備わる熱拡散板42を設置してもよい。根太6の上部には、室内装備品の取付金具としての取付金52がボルト53及びナット54によって設置されており、その周囲に面押え51が設置されていて、根太6は面押え51を用いて床材3を挟む態様で固定されている。このような構成とすることで、上記実施例8と同様に、床材3全体を暖めることができる。また、熱伝導の悪い防振ゴム43によって、台枠2に逃げてしまう熱量を低減することができる。更に、本発明では、根太内温水管35を内部に含む根太6が、台枠2から容易に取り外し可能となっている。その結果、車内の空気温度のばらつきを少なくすることができ、乗客が快適に過ごせる環境を提供することができ、容易に脱着可能な暖房装置を提供することが可能となる。
【0038】
また、本実施例では、根太内部に温水配管を設置したが、温水配管の代わりに電線等を通した構成として、容易に脱着可能な床材としても利用可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 車両 2 台枠
3 床材 4 荷棚
5 座席 6 根太
11 空調吹き出しダクト 12 空調吸込みダクト
13 床下ダクト
21 ヒータパネル
30 熱源
31 床下主温水管 32 床材内温水管
33 接続管 34 床下温水管接続口
35 根太内温水管 36 温水床材
41 断熱材 42 熱拡散板
43 防振ゴム 44 床材の芯材
45 防振ゴム押え
51 面押え 52 取付金
53 ボルト 54 ナット
100 室内の空気の流れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両において、
前記床暖房装置は、前記車内の床を構成する床材の内部に温水管を備えるとともに、前記床材の内部に熱伝導率の高い部材を設けていること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両において、
前記温水管は、前記床材の内部に設置された温水管と車両側に設置された温水管とを別部品として構成されており、前記床材の底面には、前記車両側の前記温水管が前記床材内部の前記温水管に対して分離可能に接続される接続口が設けられていること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両において、
前記床暖房装置は、長手方向の垂直断面形状が矩形断面である温水管を前記車内の床を構成する床材の下面に直接接触する態様で備えたこと
を特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鉄道車両において、
前記床材は、車両の台枠に設置される根太と当該根太の上部に設置された防振部材を介して前記台枠に支持されており、
前記床材の内部には、前記防振部材の上部の周囲において前記温水管と直接接触する熱伝導の良い芯材が設置されていること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
車内の床を温めることにより車内を暖房する床暖房装置を備えた鉄道車両において、
前記床材は、車両の台枠に設置される根太を介して前記台枠に支持されており、
前記床暖房装置は、前記根太に直接接触される温水管を設置して成ること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄道車両において、
前記根太における前記温水管と接触する接触部から前記床材を支持する支持部までの長さが、前記根太における前記接触部と前記台枠への設置部までの長さよりも短いこと
を特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の鉄道車両において、
前記温水管は、前記根太毎に個別の管として設置されており、
前記床暖房装置の前記温水管以外の床下ダクトが、前記温水管の側方で前記床材と前記台枠との間のスペースを利用して設置されていること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項8】
請求項5に記載の鉄道車両において、
前記温水管を前記根太の内部に設置したこと
を特徴とする鉄道車両。
【請求項9】
請求項8に記載の鉄道車両において、
前記床材は、前記車両の前記台枠に設置された防振部材と当該防振部材に支持された前記根太とを介して前記台枠に支持されており、
前記床材の内部には、前記温水管が内部に設置される前記根太と直接接触する熱伝導の良い芯材が設置されていること
を特徴とする鉄道車両。
【請求項10】
請求項8に記載の鉄道車両において、
前記床材は、前記車両の前記台枠に設置された防振部材と当該防振部材に支持された前記根太とを介して前記台枠に支持されており、
前記防振部材は、前記台枠にボルト及びナットで固定されており、
前記根太は、前記根太と前記床材とを押圧する面押さえによって前記床材を挟む態様で前記防振部材に固定されており、前記根太の上面には室内装備品の取付金具が設置されていること
を特徴とする鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−106657(P2012−106657A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257670(P2010−257670)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)