説明

鉄道車両

【課題】有機ELを利用した客室照明とすることで、照明具の重量を低減し、レイアウトの自由度を高める。
【解決手段】客室空間S1の上方に位置する天井板8(天井面)に照明具7が設けられる鉄道車両である。照明具7は、シート状の有機エレクトロルミネセンスを利用したもので、天井面の表面に沿うように天井板8に直接或いは取付板を介して取り付けられ、取付状態で照明具7の表面が保護層10にて覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両、特に鉄道車両の、シート状の有機EL(有機エレクトロルミネセンス)を照明具として利用した客室内の照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の客室照明は、客室の天井面に照明具として蛍光灯を、受け金を介して取り付け、その蛍光灯をカバーで覆った間接照明が一般的である。
【0003】
このような蛍光灯による照明であると、蛍光灯を含む照明ユニットの重量が重いことから、補強部材を設けるなどして,前記照明ユニットの取り付け部分の剛性を高める必要がある。さらに、蛍光灯を取り付けるためにはさらに受け金を設ける必要があり、車両重量の増加の原因となっている。
【0004】
また、空調装置の吹き出しラインと並列に取り付けるのが主流であるが、照明具を他の天井機器とのバランスを考慮して取り付ける必要があるため、レイアウトの自由度が制限されるし、取付位置の調整等の時間を要し、工数増大の原因となっている。
【0005】
さらに、蛍光灯を露出状態で取り付けている場合には、落下により割れ、飛散するおそれもある。
【0006】
ところで、近年、省エネルギー、CO2削減の観点から、蛍光灯に替わる照明具として冷陰極(CCFL)蛍光管を用いることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
冷陰極蛍光管は、蛍光灯を細くしたような発光管で、通常の蛍光灯と同じ放電による蛍光発光体であるが、フィラメントを用いていないため発熱が少なく、高周波点灯でちらつきが少ないため、眼に優しいというメリットはあるが、発光管であるため、前述したような、通常の蛍光灯と同様の課題がある。
【0008】
また、荷棚本体の下面に、複数の照明用LEDを用いた面状照明部を配置するようにしたものが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−327836号公報
【特許文献2】特開2005−324694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献2記載のものでは、複数の照明用LEDを用いるため、高価であるし、反射拡散板や拡散照明板を用いるため、構造が複雑で、重量の面でも不利であり、また、設置場所の制約を受け、レイアウトの自由度が低い。
【0011】
本発明は、全体が光る面光源(拡散光源)として利用できる有機EL型照明具を利用した客室照明とすることで、照明具の重量を低減し、レイアウトの自由度を高めることができる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、客室の天井面に照明具が設けられる鉄道車両であって、前記照明具は、シート状の有機エレクトロルミネセンス型照明具で、前記天井面の表面に沿うように前記天井面に取り付けられ、取付状態で前記照明具の表面が保護層にて覆われていることを特徴とする。なお、照明具の天井面への取り付けは、接着、ねじ止め等の周知の取り付け手段を利用して行われる。
【0013】
このようにすれば、照明具として、面光源(拡散光源)として利用できる有機ELを用いているので、蛍光灯を用いる場合はもちろん、照明用LEDを用いる場合よりも、照明具の重量の低減が図れ、また、取り付けのために補強部材を設けたり受け金を設けたりする必要がなくなるので、照明具の軽量化や取り付けの簡素化が図れ、車両の軽量化を図る上で有利である。
【0014】
そして、客室の天井面に沿うように天井面に取り付けるだけであるので、他の天井機器との位置関係を考慮して取り付ける必要がなくなり、取り付け時の作業者の負担が低減され、また、レイアウトの自由度も高くなる。
【0015】
この場合、請求項2に記載のように、前記照明具は、シート状の有機エレクトロルミネセンスが取付板に接着されたものであり、前記取付板が天井面に取り付けられているようにしてもよいし、請求項3に記載のように、前記照明具または取付板は、前記天井面に形成された凹部内に取り付けられ、前記照明具全体が前記凹部内に設けられているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のように、客室内の天井面における照明具として、蛍光灯に代えて、有機EL型照明具を用いているので、蛍光灯などを用いる場合よりも、軽量化を図ることができる。また、取り付け部分の補強や取り付けのための受け具が不要となるので、この点からも軽量化に有利である。さらに、客室の天井面に沿うように有機EL型照明具を取り付けるだけであるので、他の天井機器との位置関係などのバランス調整が不要であり、取り付け工数の低減が図れ、レイアウトの自由度も高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る鉄道車両の屋根部の断面図である。
【図2】図1のA方向矢視図である。
【図3】本発明に係る鉄道車両における照明具取付構造を示す概略断面図である。
【図4】前記照明具取付構造の別の実施の形態を示す概略断面図である。
【図5】前記照明具取付構造の、さらに別の実施の形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、鉄道車両の屋根構体1内に配置される空調ダクト2は、客室区間S1内の空気を撹拌するための横流ファン4の左右両側に設けられ、この横流ファン4の送風は、吹き出し窓部5から、天井板6の一部である整風板6aを通じて客室空間S1内に供給されるようになっている。
【0020】
空調ダクト2の左右方向外側には、客室照明用の照明具7として、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)が設けられている。この有機EL型照明具7は、可撓性を有する矩形シート状で、厚さ2〜3mm程度である。
【0021】
具体的には、照明具7が、天井板8の下面(天井面となる表面)に沿うように前記下面(天井面)に接着層9を介して接着により取り付けられ、その取付状態で照明具7の表面は、保護層10にて覆われている。天井板8に形成された小穴8aを通じて照明具7の接続用凸部7aが天井板8上側の天井内空間S2内に挿入され、この接続用凸部7aから、図示しない各種点灯制御機器や電源との接続のための配線12が天井内空間S2において延びている。
【0022】
保護層10は、ガラス、ポリカーボーネート等の透明あるいは半透明なコーティング材料からなり、汚染・汚濁の防止を図るために設けられている。また、照明具7の周囲にはシール剤13が配置され、防水性能も確保されている。
【0023】
このような構造の照明具7を、鉄道車両の客室空間S1内の照明に採用することで、蛍光灯などの従来の照明具を用いる場合よりも、軽量化を図ることができる。また、照明具7を有機ELとすることで、照明具7を取り付けるために取り付け部分を補強したり照明具取り付けのための受け具が不要となるので、この点からも、鉄道車両全体としての軽量化に有利である。
【0024】
また、客室空間S1の天井面に沿うように照明具7を設けるだけであるので、他の天井機器との位置関係などのバランス調整が不要であり、取り付け工数の低減が図れ、レイアウトの自由度も高くなる。
【0025】
しかも、天井板8に大きな開口を設けなくても、小穴8aを設けるだけで照明具7を取り付けることができるので、従来の蛍光灯などの照明具を設ける場合のように開口周辺の補強が必要なくなるし、開口を設けることによる剛性の低下を考慮する必要がなくなるので、設置場所について大きな制約を受けることなく、前述したように接着より取り付けることができる。
【0026】
つまり、従来、剛性低下の観点から設けることができなかった、天井板8の部分に対しても、照明具7を直接に設置することができるので、天井用の照明具7の設置位置を決める、レイアウトの自由度が高くなる。その上、構造を簡素化できるので、コスト面、作業面でも有利である。
【0027】
また、照明具7を有機ELで構成するため、図示しない各種点灯制御機器からの制御信号により色や表示情報を容易に変更することができるし、また、屋根構体1と天井板8の間の天井内空間S2内に収納する、照明具7のための前記各種点灯制御機器の大きさを小さく構成することができるので、客室空間S1の高さを、従来の蛍光灯などを用いた場合より高くすることができ、客室空間S1の拡大に有利となる。
【0028】
前述したように、天井板8に接着層9を介して直接に取り付けるのではなく、図3に示すように、取付板を用いてねじ止めすることも可能である。
【0029】
その場合には、照明具7を、照明具7の大きさに対応する大きさを有する取付板21に接着などにより取り付け、その取付板21の周縁部を複数のビス22にて天井板8にねじ止めすることで、照明具7を天井板8に取り付けることができる。なお、天井板8のねじ止め部分には、内面側に取付用ねじ座23が設けられている。また、取付板21にも、天井板8の小穴8aと同様に照明具7の接続用凸部7aが貫通する貫通穴12aが小穴8aに対応して形成されている。その他の構成は、図1に示すものと同様である。
【0030】
また、図4に示すように、天井板8に、取付板21に対応する大きさの凹部8Aを形成し、その凹部8A内において、照明具7を取り付けることで、照明具7による、天井板1の外側面よりの突出部分が形成されないすることも可能である。その他の構成は、図2に示すものと同様である。なお、照明具7を直接に接着する場合には、天井板8に形成する凹部は、照明具7に対応する大きさとすればよいし、凹部8Aを設けることなく、ねじ止めすることもできるのはもちろんである。
【0031】
その場合、天井板に凹部を直接形成するのではなく、図5に示すように、天井板8に開口8Bを形成し、その開口8Bを閉塞するように、中央に凹部31Aを有するリセス構造部材31の周縁フランジ部31Bを天井板8の上側面に接合し、そのリセス構造部材31の凹部31A内に、照明具7及び取付板11を取り付けるようにすることもできる。なお、リセス構造部材31の凹部31Aの上面側には、所定の位置に取付用ねじ座23が設けられている。
【0032】
本発明は,前述した実施の形態に制限されるものではなく、次のように変更して実施することも可能である。
【0033】
(i)前記有機EL型照明具あるいは前記取付板の取付けは、磁石(例えばプレートマグネット)による吸着力を利用した吸着手段を用いることも可能である。
【0034】
(ii)既存の鉄道車両や新規の鉄道車両にのみならず、同型の鉄道車両を、一部仕様を変更して繰り返し製造する場合においても、簡単な設計変更で対応可能である。つまり、天井板8に、取り付けのための開口を設けたりする必要がないので、以前に製造した同型の鉄道車両と同様の配線経路で対応することができ、配線経路についての変更は必要なくなる。
【符号の説明】
【0035】
S1 客室空間
S2 天井内空間
1 屋根構体
7 有機EL型照明具
8 天井板
8a 小穴
8A 凹部
9 接着剤層
10 保護層
21 取付板
23 取付用ねじ座
31 リセス構造部材
31A 凹部
31B 周縁フランジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室の天井面に照明具が設けられる鉄道車両であって、
前記照明具は、シート状の有機エレクトロルミネセンス型照明具で、前記天井面の表面に沿うように前記天井面に取り付けられ、取付状態で前記照明具の表面が保護層にて覆われていることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
前記照明具は、シート状の有機エレクトロルミネセンスが取付板に接着されたものであり、
前記取付板が天井面に取り付けられている請求項1記載の鉄道車両。
【請求項3】
前記照明具または取付板は、前記天井面に形成された凹部内に取り付けられ、
前記照明具全体が前記凹部内に設けられている請求項2記載の鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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