説明

鉛の炭酸化方法

【課題】鉛含有物からPbを回収するに際して、例えば、非鉄製錬の乾式煙灰中のPbを回収する際に、安定して、鉛含有物から効率良く鉛を回収するとともに、中和剤の使用量を低減する方法を提供する。
【解決手段】鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウム溶液によりスラリーにする際、溶液のpHを8〜10にすることで、炭酸化率が95%以上にすることができる。さらに、溶液のpHを8〜9、スラリー濃度を100〜200g/L、温度を60〜80℃にすることで炭酸化残渣中のナトリウム品位が0.2〜1.5mass%程度に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛含有物からPbを回収するに際して、鉛を炭酸化する方法に関する。例えば、非鉄製錬の乾式煙灰中のPbを回収する際に、好適に利用できる。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収するため、特許文献1では、煙灰を硫酸浸出し、硫酸鉛にした後、炭酸ソーダとリパルプすることで炭酸鉛にする。その後、スルファミン酸溶液により炭酸鉛を浸出後、電解採取で液中の鉛を二酸化鉛と電気鉛として回収している。
【0003】
技術文献1において、炭酸鉛をスルファミン酸溶液で浸出する際、炭酸鉛中のナトリウムが浸出液であるスルファミン酸と反応し、スルファミン酸ナトリウムとして溶液中に入り込んでしまう。
一度溶液中に入り込んだナトリウムは、電解採取により抜き出すことができず、蓄積することから、繰り返し電解採取後液を用いて炭酸鉛を浸出する際、遊離のスルファミン酸濃度が低下することから、浸出液中の鉛濃度を一定にするためにもナトリウムと反応した分のスルファミン酸を新たに追加する必要がある。
【0004】
しかし、本発明では、炭酸化の条件を見直すことで炭酸鉛中のナトリウム品位が低下し、効率よくスルファミン酸で浸出し、鉛を回収することができる。
【特許文献1】特願2008-089484 鉛の電解方法 出願人:日鉱金属株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術に対して、安定して、鉛含有物から効率良く鉛を回収するとともに、中和剤の使用量を低減する方法が要望されている。
更には、pH調整剤のNaが、炭酸鉛に混入を防止する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため以下の発明を成した。
(1)鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウム溶液によりスラリーにする際、溶液のpHを8〜10鉛の炭酸化方法にすることで、炭酸化率が95%以上にすることができる鉛の炭酸化方法。
【0007】
(2)鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウム溶液によりスラリーにする際、溶液のpHを8〜9、スラリー濃度を100〜200g/L、温度を60〜80℃にすることで炭酸化残渣中のナトリウム品位が0.2〜1.5mass%程度に抑えることができる鉛の炭酸化方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、
(1)硫酸鉛のスラリーに、炭酸ナトリウムを投入し、炭酸鉛になる割合(以
下、炭酸化率と記す)を95%以上にすることができる。
【0009】
(2)また一方、炭酸鉛中に含まれているNa品位を0.2〜0.5 mass%程度まで低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
本発明の原料は、例えば、鉛含有物は、鉛15〜45mass%、錫3〜7mass%、ビスマス 2〜4mass%、銅 0.2〜1mass%、亜鉛2〜8mass%、硫黄 3〜7%含有する。
より具体的な例としては、ダスト処理工程から産出する鉛滓(主成分:PbSO4)、銅転炉ダスト等がある。
上記鉛含有物を、水によりリパルプし、炭酸ナトリウムにより脱SO4した炭酸化残渣(主成分:PbCO3)とする。
炭酸ナトリウムは、リパルプ液中のpHが8〜10になるようにして、添加する。
該炭酸化方法としては、その一例の処理フローを図1に示す。
【0011】
図2に示すように、炭酸溶液をpH=9、1-5時間反応した結果、反応時間1時間程度で炭酸化率は、95%以上あることを確認することができた。
【0012】
次に炭酸化溶液のpHと炭酸化率推移を確認した。
その結果、図3に示すように、浸出液のpHが高くなるにつれ、炭酸化率が増加することが分かり、pH=8以上であれば、炭酸化率は、95%以上あることが判明した。
【0013】
しかし、ナトリウムに関しては、pHを上げると炭酸化残渣中のナトリウム品位が増加する傾向が見られた。
炭酸化残渣中のナトリウムの形態を確認した結果、炭酸水素ナトリウムとして混入していることが判明した。
これは、pHを上げることにより、炭酸イオンよりも炭酸水素イオンが安定し、溶解度が低い炭酸水素ナトリウムとして、炭酸化残渣中に混入したためだと推測される。
更に鉛滓と炭酸ナトリウムをリパルプする際の温度と炭酸化残渣中のナトリウム品位の関係として、図4に示すように、温度が低いと共に炭酸化残渣中のナトリウム品位が増加する傾向が見られた。
これは、温度が低下すると炭酸ナトリウムは、炭酸水素ナトリウムになりやすいためだと推測される。
本発明においては、鉛の炭酸化率が高いとともに、ナトリウムの混入を防止する方法を提示する。
その方法としては、硫酸鉛を、100〜200g/Lのスラリー濃度で、温度:60〜80度にし、炭酸化溶液のpH=8〜9にするものである。
これにより、図5に示すように、スラリー濃度を200g/Lで行った場合、炭酸化残渣中のNa品位を0.5〜1.2 mass%まで低減するとともにPbの炭酸化率を95%以上することができる。
次に図6に示すようにスラリー濃度を100g/Lで行った場合、炭酸化残渣中のNa品位を0.2〜0.5 mass%まで低減するとともにPbの炭酸化率を95%以上することができる。
これは、スラリー濃度上昇により未反応の炭酸ナトリウムを巻き込んだためだと推測される。
【実施例】
【0014】
(実施例1)(鉛の炭酸化率を良好にすると共にナトリウム品位を低減する方法)
原料である本発明における鉛含有物は、ダスト処理工程から産出する鉛滓(主成分:PbSO4)を水によりスラリー濃度:100g/Lまでリパルプし、炭酸ナトリウムをpH=3〜10になるように炭酸化試験を実施した。
【0015】
炭酸化溶液の温度を70〜80度でpHを8〜10まで上げて、5時間反応した結果、炭酸化率は、95%以上あることを確認することができた。
図6に示すように、pHを8〜9に調整することにより、残渣として得られる炭酸鉛中のNaを、0.2〜0.5 mass%に、保持することができた。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一態様である炭酸化手順フロー
【図2】本発明の一態様である炭酸化の反応時間と炭酸化率の関係
【図3】本発明の一態様である炭酸化溶液のpHと炭酸化率の推移
【図4】本発明の一態様である炭酸化溶液の温度(30℃、70℃)と炭酸化残渣中のNa品位(単位:mass %)の推移
【図5】本発明の一態様である炭酸化溶液(スラリー濃度:200g/L)のpHと炭酸化残渣中のNa品位(単位:mass%)の推移
【図6】本発明の一態様である炭酸化溶液(スラリー濃度:100g/L)のpHと炭酸化残渣中のNa品位(単位:mass %)の推移

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウム溶液によりスラリーにする際、溶液のpHを8〜10にすることで、炭酸化率が95%以上にすることができることを特徴とする鉛の炭酸化方法。
【請求項2】
鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウム溶液によりスラリーにする際、溶液のpHを8〜9、スラリー濃度を100〜200g/L、温度を60〜80℃にすることで炭酸化残渣中のナトリウム品位が0.2〜1.5mass%程度に抑えることができることを特徴とする鉛の炭酸化方法。
































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−222167(P2010−222167A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70126(P2009−70126)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】