説明

鉛筆芯

【課題】 曲げ強度、圧縮強度などの機械的強度、摩耗性、消去性、筆記感を損なうことなく、従来にない十分な発色性及び描線濃度を発揮せしめることができる鉛筆芯を提供する。
【解決手段】 配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3〜90重量%含有することを特徴とする鉛筆芯。
前記ガラス粉体は、シリカであることが好ましく、また、平均厚さ0.1〜2μm、アスペクト比5〜150であり、かつ、平面度が200nm以下のフレーク状であるもの、または、平均粒径0.1〜50μm、真球度0.1〜50μmの粒状であるものが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてシャープペンシル用、木軸用の鉛筆芯、色鉛筆芯などの鉛筆芯に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉛筆芯において、要求される重要特性としては、筆記感が良好で描線の発色性が良く、機械的強度が強いことである。
【0003】
従来の鉛筆芯としては、例えば、板状酸化チタンを含有することにより、強度と発色性とが優れた固形描画材(例えば、特許文献1参照)、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が管状に凝集した粒子である多孔性粉体を使用して、実用強度を有しながら筆記時の良好な発色性などを有する固形描画材(例えば、特許文献2参照)、板状アルミナ表面に予め金属水酸化物の粒子を配置し固着させ、更に高級脂肪酸で被覆されている複合板状アルミナを使用する良好な発色性と曲げ強さを共に有した固形描画材(例えば、特許文献3参照)が知られている。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3の技術を用いて鉛筆芯を得る場合、配合工程や焼成工程等で、配合した板状酸化チタン、多孔性粉体、複合板状アルミナ多孔性粉体の凝集、沈降や分離などが生じたりすると同時に粉体の形状も鉛筆芯として良好ではないということがあり、未だ強度と発色性とが十分といえない点に課題がある。
【0005】
一方、顔料微粒子の凝集を防止し、化粧料、塗料等に配合した場合にごろつき感を防止して肌上での伸びなどの使用感が良く、また、基板上での伸びが良く、隠蔽性が高く、きれいな色調を呈する、金属酸化物コロイド粒子に由来する金属酸化物を母材とし、その内部に黒色顔料5〜70重量%分散して含有する黒色光輝性薄片、該黒色光輝性薄片を含有する化粧料、インキ組成物等が知られている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、上記特許文献4に記載される黒色光輝性薄片は、きれいな色調を有するものであるが、鉛筆芯に用いた場合に、更なる発色性と強度とを備えることが必要となるものであり、未だ開発すべき課題が多くある鉛筆芯となるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−138239号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開2005−162798号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開2006−16477号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】国際公開WO2005/028568号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、曲げ強度、圧縮強度などの機械的強度、摩耗性、消去性、筆記感を損なうことなく、従来にない十分な発色性及び描線濃度を発揮せしめることができる鉛筆芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意研究を行った結果、特定構造物性を有するガラス粉体を含有することにより、上記目的の鉛筆芯が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(14)に存する。
(1) 配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3〜90重量%含有することを特徴とする鉛筆芯。
(2) 前記ガラス粉体は、シリカであることを特徴とする上記(1)記載の鉛筆芯。
(3) 前記ガラス粉体は、平均厚さ0.1〜2μm、アスペクト比5〜150であり、かつ、平面度が200nm以下のフレーク状であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の鉛筆芯。
(4) 前記ガラス粉体は、平均粒径0.1〜50μm、真球度0.1〜50μmの粒状であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の鉛筆芯。
(5) 前記ガラス粉体は、該ガラス粉体に分散・内包する微粒子の平均粒径が1〜300nmの範囲となるナノ粒子内包ガラス粉体であることを特徴とする上記(1)〜(4)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(6) 前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(7) 前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種と、ワックス及び/又は有機高分子とからなることを特徴とする上記(1)〜(5)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(8) 前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子の含有量がガラス粉体中に5〜80重量%であることを特徴とする上記(1)〜(7)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(9) 前記ガラス粉体が、有機金属化合物を含有し、更に、10〜80重量%を含む溶液を用いてゾルゲル法によって合成されることを特徴とする上記(1)〜(8)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(10) 前記ガラス粉体と共に、黒鉛が含有されること特徴とする上記(1)〜(9)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(11) 黒鉛の体積平均径(mv値)が0.2〜1μmであることを特徴とする上記(10)に記載鉛筆芯。
(12) 鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯であることを特徴とする上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(13) 鉛筆芯が焼成色鉛筆芯であることを特徴とする上記(1)〜(11)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
(14) 鉛筆芯が非焼成色鉛筆芯であることを特徴とする上記(1)〜(5)、(7)〜(11)の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲げ強度、圧縮強度などの機械的強度、摩耗性、消去性、筆記感を損なうことなく、従来にない十分な発色性及び描線濃度を発揮せしめることができる鉛筆芯が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ガラス粉体の平面度等を測定するための電子顕微鏡(SEM)画像に基づく説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明の鉛筆芯は、配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3〜90重量%含有することを特徴とするものである。
【0013】
本発明に用いるガラス粉体は、金属酸化物コロイド粒子に由来する金属酸化物を母材とし、その内部に微粒子が分散・内包させたガラス粉体であり、母材内部に鉛筆芯の着色剤成分となる微粒子を分散・内包させることにより、曲げ強度、圧縮強度などの機械的強度、摩耗性、消去性、筆記感を損なうことなく、従来にない十分な発色性及び描線濃度を発揮せしめるものである。
用いるガラス粉体において、母材となる金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムなどから選ばれる少なくとも1種を主成分とするものが挙げられる。また、金属酸化物コロイド粒子としては、シリカコロイド粒子、酸化アルミニウムコロイド粒子、酸化亜鉛コロイド粒子、酸化ジルコニウムコロイド粒子または二酸化チタンコロイド粒子などが挙げられる。この金属酸化物コロイド粒子に由来する金属酸化物を母材とすることにより母材中に着色剤成分となる微粒子を均一に分散した状態で含有させることができ、得られるガラス粉体の隠蔽性(可視光に対する)を高めることができる。
なお、母材として金属アルコキシドまたは金属有機酸塩に由来する金属酸化物を使用した場合には、この母材中に含有させた着色剤成分となる微粒子の分散性は不十分となり、得られるガラス粉体の隠蔽性はそれほど高くないものとなる。
【0014】
本発明に用いるガラス粉体において、母材となる金属酸化物の内部に分散・内包する微粒子としては、鉛筆芯の各用途、例えば、シャープペンシル用、木軸用の鉛筆芯、色鉛筆芯、非焼成鉛筆芯などの各用途により、好適な微粒子を分散・内包することができ、シャープペンシル用、木軸用の焼成鉛筆芯、焼成色鉛筆芯用の微粒子としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
カーボンブラックとしては、例えば、オイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、及びランプブラックなどが挙げられる。ダイヤモンド粒子としては、例えば、爆発法、静圧法、衝撃圧縮法、EACVD法、気相合成法及び液相成長法で作製したダイヤモンド粒子が挙げられ、形態としては、例えば、多結晶ダイヤモンド粒子、単結晶ダイヤモンド粒子およびクラスターダイヤモンドなどが挙げられる。具体的には、ナノ炭素研究所社製の商品名「ナノアマンドB」、東名ダイヤモンド工業社製のMDシリーズ、住石マテリアルズ社製のSCMナノダイヤ、SCMファインダイヤ、ナノテックシステムズ社製CD(Cluster Diamond)、CDS(Cluster Diamond Slurry)、GCD(Graphite Cluster Diamond)、GCDS(graphite Cluster Diamond slurry)、JETRO社製人口ダイヤモンド等を用いることができる。
カーボンナノチューブとしては、例えば、単層ナノチューブ(SWNT)、2層ナノチューブ(DWNT)、多層ナノチューブ(MWNT)からなるものが挙げられ、具体的には、三井物産社製のカーボンナノチューブ、CNT.Ltd社製のSWNT、DWNT、MWNT、GSI Creos社製のカルベール、昭和電工社製のVGCFなどを用いることができ、これらは非晶質であっても、フッ素等の添加物が添加されているものであってもよい。
カーボン粒子であるフラーレンとしては、例えば、C60、70、76、78、82、C84、C90等、種々の炭素数のものが挙げられ、具体的には、フロンティアカーボン社製ナノムパープル、ナノムブラック、ナノムスペクトラなどの種々のフラーレン製品を使用でき、金属内包フラーレン、分子内包フラーレン等炭素以外の物質を含むものも用いることができる。
金属酸化物としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化銀などが挙げられ、無機顔料、有機顔料、染料として、例えば、鉄黒、紺青、群青、青色1号、ベンガラ、黒酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化チタン、黄酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、魚鱗箔、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、青色2号、青色404号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、DPPレッド、黄色4号、黄色5号、緑色3号、溶性・不溶性アゾ系、銅フタロシアニン系、キナクリドン系、ベンズイミダゾロン系、アンスラキノン系、縮合ポリアゾ系、染付顔料、金ナノ粒子などが挙げられる。
【0015】
また、非焼成鉛筆芯、非焼成色鉛筆芯等用の微粒子としては、上記カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種と、ワックス類及び/又は有機高分子とが挙げられる。
ワックス類としては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カスターワックス、ベヘニルアルコールなどが挙げられ、有機高分子としては、カルボキシルメチルセルロース、デンプン、タラカントガム、ポリエチレンなどが挙げ荒れる。
【0016】
本発明に用いるガラス粉体において、好ましくは、発色性、平滑性、粉体強度の点から、母材となる金属酸化物の内部に分散・内包する微粒子の平均粒径は、1〜300nmの範囲、更に好ましくは、10〜250nmの範囲となるナノサイズとなるものが望ましい。この範囲となる粒径を用いることにより、ナノ粒子内包ガラス粉体として好適に供することができる
【0017】
用いるガラス粉体における上記微粒子の含有量は、ガラス粉体中に、好ましくは、5〜80重量%、更に好ましくは10〜70重量%含有されることが望ましい。この含有量が5重量%未満の場合は、着色成分の発色が少なく隠蔽性が悪く、一方、80重量%を超えると、ガラス粉体が脆くなってその機械的強度が低下することとなる。
また、用いる微粒子の形状としては、不定形、球状、円柱状、紡錘状等、特に限定はされないが、好ましくは、上記平均粒径の範囲となるものが望ましい。なお、上記微粒子の含有量(含有率、重量%)は、〔(ガラス粉体の重量)/(微粒子の重量)〕×100によって算出した。
【0018】
本発明に用いるガラス粉体は、鉛筆芯の各用途により、好適な大きさ、形状のものを用いることができ、好ましくは、フレーク状、粒状、球状、棒状、針状、中空状となるガラス粉体が望ましい。
ガラス粉体がフレーク状の場合には、平均厚さ0.1〜2μm、アスペクト比5〜150であり、かつ、平面度が200nm以下となるものが好ましく、更に好ましくは、平均厚さ0.1〜1μm、アスペクト比5〜100であり、かつ、平面度が0.1〜100nmとなるものが望ましい。
この平均厚さが0.1μm未満では、製造が困難で、かつ、破砕され易いなどの問題が生じることとなり、一方、2μmを超えると、鉛筆芯に含有した場合、強度が弱く、書き味が悪くなる。また、アスペクト比が5未満では、凝集を起こし易くなり、一方、平均アスペクト比が150を超えると、強度が弱くなる。更に、平面度が200nmを越えると、筆記時の滑りが悪く、描画材の密度低下が発生する結果として強度も低下する
【0019】
また、ガラス粉体が粒状の場合には、平均粒径0.1〜50μm、真球度0.1〜50μmとなるものが好ましく、更に好ましくは、平均粒径1〜30μm、真球度0.1〜10μmとなるものが望ましい。
この平均粒径が0.1μm未満では、ガラス粉体が凝集し易いため、むらとなりやすく、一方、50μmを超えると、強度が弱くなる。また、真球度0.1μm未満では粒子の製造が困難でコストアップの割りに強度が出ない結果となり、一方、50μmを越えると、強度、書き味とも著しく低下する結果となり、好ましくない。
なお、上記ガラス粉体の平均粒径はレーザー回折・散乱式粒度分布測定装置、例えば、マイクロトラックII(日機装(株)製)により、平均厚さは電子顕微鏡による黒色光輝性薄片50個測定の単純平均により、平均アスペクト比は上記平均粒径の値を上記平均厚さ値で除することによりそれぞれ求めることができる。また、本発明(後述する実施例等を含む)において、「真球度」とは、JIS B 1501に玉軸受用鋼球の測定方法として規定されているものと同等のものをいう。これによると真球度は、測定する鋼球1個を真円度測定機で互いに90°をなす2または3赤道平面上の鋼球表面の輪郭を測定し、それぞれの最小外接円から鋼球表面までの半径方向の距離の最大値として求めるとあるが、本発明のガラス粉体は微小過ぎるためこの方法では計れないためJISに準拠した測定を行うこととした。SEMまたはTEM画面上で観察される粒子10個の1赤道平面についてのみ、最小外接円から粒子表面までの半径方向の距離の最大の値として真円度を画像処理によって測定し、真球度の値とした。
【0020】
本発明のガラス粉体は、有機金属化合物を含有し、更に、10〜80重量%を含む溶液を用いてゾルゲル法によって合成(製造)することができる。例えば、フレーク状の場合は、金属の有機化合物と水を含む溶液に上記微粒子を分散させてなる原液を調製し、この原液を、平滑面を有する基材の表面に塗布して塗膜を形成し、次いで、この塗膜を加熱乾燥処理により薄片状として、次いで生成した薄片を前記基材より剥離した後、この剥離した薄片を200〜1,200℃で焼成し、必要に応じて粉砕・分級して、任意の平均厚さ、アスペクト比、平面度等となるフレーク状のガラス粉体を製造することができる。
また、粒状の場合は、上記原液を加熱オイルバス中に滴下して熱硬化させた後、オイルを除去し、200〜1200℃で焼成し、必要に応じて粉砕、分級して目的の平均粒径、真球度等となるガラス粉体を製造することができる。
更に必要に応じて、母材内に微粒子を分散・内包する際に、鉛筆芯に用いられる既知の染料を含有しても良く、また、得られたガラス粉体の表面をシリコーン、フッ素系樹脂等で表面処理して適宜疎水化処理を施してもよい。
【0021】
本発明に用いることができるガラス粉体としては、具体的には、微粒子が酸化チタン、母材がシリカとなるフレーク状の微粒子酸化チタン分散・内包多孔質シリカフレーク、市販品では、ナノフレックスNPT30K3TA(日本板硝子社製)、微粒子がカーボンブラック、母材がシリカとなるフレーク状の微粒子カーボンブラック分散・内包シリカフレーク、微粒子が群青、母材がシリカとなるフレーク状の微粒子群青分散・内包シリカフレーク、微粒子がベンガラ、母材がシリカとなるフレーク状の微粒子ベンガラ分散・内包シリカフレーク、酸化クロム分散・内包シリカフレーク、金属酸化物焼結顔料分散・内包シリカフレーク、有機顔料(アゾ・フタロシアニン等)分散・内包シリカフレーク、及びそれらの多孔体、微粒子がカーボンブラック、母材がシリカとなる微粒子カーボンブラック分散・内包多孔質球状シリカ、微粒子が群青、母材がシリカとなる微粒子群青分散・内包多孔質球状シリカ、微粒子がベンガラ、母材がシリカとなる微粒子ベンガラ分散・内包多孔質球状シリカ、金属酸化物焼結顔料分散・内包球状シリカ、有機顔料(アゾ・フタロシアニン等)分散・内包球状シリカ、及びそれらの多孔体、などを用いることができる。
【0022】
本発明に用いるガラス粉体は、上述の如く、ナノサイズとなるカーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料などの微粒子(ナノ粒子)が分散した状態で母材中に固定化されるため、再凝集せず、低粘度化が可能となり、同様に微粒子(ナノ粒子)がナノ分散しているため発色性が良好となり、マトリックスによって付加価値が得られるものとなる。また、ガラス粉体(母材)をシリカとすることにより、低屈折率化によって光の散乱や反射が抑えられ、ガラス粉体(母材)を酸化アルミウム、酸化ジルコニアとすることにより、硬硬度でき、更に、ガラス粉体(母材)を酸化チタンとすることにより、光屈折率化を発揮せしめることができる。
特に好ましくは、上記特性の微粒子(ナノ粒子)を分散・内包したガラス粉体〔母材が二酸化ケイ素(シリカ)〕となるものが、光の散乱や反射が抑えられ特に好ましい発色性、強度等を発揮せしめる点から望ましい。
【0023】
これらのガラス粉体の含有量としては、鉛筆芯組成物全量に対して、3〜90重量%とすること、好ましくは、30〜80重量%とすることが望ましい。
このガラス粉体の含有量が3重量%未満であると、十分な発色性が得られず、また、光沢の変化も無い結果となり、一方、90重量%を超えると、強度が著しく低下し、好ましくない。
【0024】
本発明の鉛筆芯は、上述の如く、配合組成物としてガラス粉体を含有するものであるが、その他の成分は鉛筆芯種により、体質材、潤滑剤、バインダー成分などの各成分を適宜選択して用いることができる。
例えば、鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯では、配合組成物としてガラス粉体以外に、黒鉛を少なくとも含有することが好ましく、また、非焼成鉛筆芯では、油脂とワックス類、樹脂を少なくとも含有することが好ましく、更に、焼成鉛筆芯では、体質材とセラミック結合材とを少なくとも含有することが好ましい。また、シャープペンシル用焼成鉛筆芯では、その他の成分として、結合材としてポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、ピッチ、セルロース、ポリアクリロニトリル、安定剤として、ステアリン酸Ca−Zn、ステアリン酸マグネシウム、可塑剤としてジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、焼成後の芯に含浸する油としては、α−オレフィンオリゴマー、脂肪酸エステル、スピンドル油、ワックス類、各種シリコーンオイル、金属石鹸等を用いることができ、非焼成鉛筆芯又は焼成鉛筆芯では、その他の成分として、上記ガラス粉体以外の色材、潤滑剤、バインダー成分、各種シリコーンオイル、ラード、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、セルロイド及びその他の熱可塑性樹脂等を用いることができる。
【0025】
本発明で用いる黒鉛としては、天然黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などが挙げられ、セラミック結合材としては、結晶質又は非晶質のSiO、Si、Al、ZrO、MgO、窒化ホウ素、B、AlNなどが挙げられ、これらは各単独又は2種以上を用いてもよいものである。好ましくは、潤滑性・強度の点から、黒鉛の体積平均粒径(mv値)が0.2〜20μmとなるものが望ましい。なお、本発明(後述する実施例等を含む)における体積平均径(mv値)は、レーザー回折・散乱法における測定結果から体積で重みづけされた平均径をいい、例えば、鱗片状黒鉛では、マイクロトラック(日機装社製、3100II)を用いて乾式測定することができ、微粒子では、ナノトラック〔日機装社製、UPA−EX150(内部プローブ型)〕を用いて測定することができる。
【0026】
また、本発明で用いる体質材としては、従来の鉛筆芯に使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、いずれも使用することができる。例えば、窒化ホウ素、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム等の白色系体質材や、鉛筆芯の色相によっては、有色系の体質材も使用することができ、当然これら数種類の混合物も使用できる。特に、好ましくは、その物性、形状から窒化ホウ素、カオリン、タルクが挙げられる。
【0027】
本発明で用いる色材としては、例えば、一般に用いられている筆記具用のインキ組成物に分類されているものであれば、いずれも使用でき、例えば、水性顔料インキ、水性染料インキ、油性顔料インキ、油性染料インキ等を用いることができるが、これらに限定されるものではない。
潤滑剤としては、一般的に潤滑剤に分類されているものであればいずれも使用することができ、潤滑油であってもグリースであっても使用することができる。潤滑油としては、例えば、エンジンオイル等の鉱物油、α−オレフィンオリゴマー、各種シリコーンオイル、エステルオイル等の合成油、ヒマシオイル等の植物油などが挙げられ、グリースとしては、例えば、カルシウム石鹸グリース、リチウム石鹸グリース等の石鹸系、ベントングリース、シリカゲルグリース等の非石鹸系、ジメチルシリコーンオイルなどが挙げられるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
本発明に用いるバインダー成分としては、従来の鉛筆芯に使用されているものであれば、特に限定されるものではなく、いずれも使用することができる。例えば、カルボキシルメチルセルロース等のセルロース類、ポリビニルピロニドン等のポリビニル類、ポリオキシエチレン等のポリエーテル類、ポリアクリル酸等のアクリル酸類、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)縮合体等の無機高分子、モンモリロナイト等の粘土、セラミックガラス等が挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上混合して用いることができる。
【0029】
また、用いる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩素化塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトンなどを挙げられる。
用いる有機溶剤は、上記熱可塑性樹脂を溶解し得る可塑剤となるものが好ましく、具体的には、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジアリルイソフタレート、プロピレンカーボネート、アルコール類、ケトン類、エステル類などを用いることができる。
【0030】
本発明の鉛筆芯は、上記ガラス粉体の他、各鉛筆芯種、例えば、シャープペンシル用焼成鉛筆芯、非焼成鉛筆芯、焼成鉛筆芯に用いる各成分(体質材、界面活性剤、香料、熱可塑性樹脂、有機溶剤など)を混練、成型、乾燥及び非酸化性雰囲気下で焼成処理、または、非焼成処理(50〜120℃で低温乾燥)して鉛筆芯体を得、該鉛筆芯体の気孔内に潤滑剤を充填することにより製造することができる。
例えば、鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯の製造では、好ましくは、強度、濃度、書き味の点から、(a)ガラス粉体、又はガラス粉体と黒鉛とが合計で30〜90重量%と、(b)熱可塑性合成樹脂、無機合成樹脂、あるいはそのハイブリッド樹脂とが合計で30〜60重量%と、(c)該熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤(可塑剤)10〜30重量%及び(d)その他(安定剤などの成分)0.01〜5重量%とをヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により成型した後、電気炉で110〜250℃で乾燥し、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下)で800〜1400℃、20〜40時間で焼成して鉛筆芯体を得、該鉛筆芯体の気孔内にα−オレフィンオリゴマー、各種シリコーンオイル、エステルオイル等の合成油、ヒマシオイル等の植物油、グリース等の潤滑剤を含浸などにより充填することにより製造することが望ましい。
【0031】
また、鉛筆芯が焼成色鉛筆芯の製造では、好ましくは、強度、濃度、書き味の点から、(a)微粒子として、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種が分散・内包されたガラス粉体と体質材とが合計で30〜90重量%、及び(b)熱可塑性合成樹脂30〜60重量%と、(c)該熱可塑性合成樹脂を溶解し得る有機溶剤(可塑剤)10〜30重量%及び(d)その他(安定剤などの成分)0.01〜5重量%とをヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により成型した後、電気炉で110〜250℃で乾燥し、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下)あるいは大気雰囲気下で600〜1400℃、1〜10時間で焼成して鉛筆芯体Aを得、該鉛筆芯体の気孔内にα−オレフィンオリゴマー、各種シリコーンオイル、エステルオイル等の合成油、ヒマシオイル等の植物油、グリース等の潤滑剤を含浸などにより充填することにより製造することが望ましい。必要に応じ、鉛筆芯体を大気雰囲気600℃程度で焼成後、金属の有機化合物を含浸し、非酸化性雰囲気あるいは大気雰囲気で900℃〜1300℃で焼成することによりセラミック複合芯体を合成し、染料を含浸して鉛筆芯に着色してもよい。
【0032】
このように構成される鉛筆芯では、配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体、具体的には、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料などの微粒子が分散した状態でガラス粉体本体(母材)中に固定化されるため、鉛筆芯の製造の際(二混練、焼成)や製造後にも、ガラス粉体の再凝集が生じることがなく、低粘度化が可能となり、同様に微粒子が良好に分散しているため発色性が良好となり、マトリックスによって付加価値が得られ、しかも、曲げ強度、圧縮強度などの機械的強度、摩耗性、消去性、筆記感を損なうことなく、従来にない十分な発色性及び描線濃度を発揮せしめることができる鉛筆芯が提供されるものとなる。また、ガラス粉体(母材)をシリカとすることにより、光の散乱や反射が抑えられ特に好ましい発色性、強度等を発揮せしめることができるものとなる。
【実施例】
【0033】
次に、実施例及び比較例等により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例等に限定されるものではない。
【0034】
〔実施例1〜11及び比較例1〜6〕
用いるガラス粉体の平面度、アスペクト比等の物性、微粒子の真球度は、下記測定方法により測定した。
(平面度等の測定方法)
a−b面が直角となってSEMで観察されている図1のような粒子に接し、且つ粒子長軸端部同士を結ぶ線分に平行な線の最大値を測定する。(n=10)
アスペクト比は、図1からc軸長を測定し、a−b面は観察画像から計測し、その比により算出した。
(真球度の測定方法)
SEMまたはTEM画面上で観察される粒子10個の最小外接円から粒子表面までの半径方向の距離の最大の値として求めた。
【0035】
(実施例1)
ガラス粉体A:微粒子酸化チタン分散・内包多孔質シリカフレーク
(ナノフレックスNTS30K3TA、日本板硝子社製、微粒子酸化チタンの大きさ:約φ30nm、内包量30重量%、ガラス粉体の平面度30nm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1.1μm、アスペクト比10) 40重量部
ポリ塩化ビニル(結合材) 40重量部
ステアリン酸Ca−Zn(安定剤) 1重量部
ジオクチルフタレート(可塑剤) 19重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、窒素ガス雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理した後、直径0.565mm、長さ60mmに切断後、ジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm2/s、屈折率1.401、信越化学社製)を120℃−24時間浸漬し、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0036】
(実施例2)
実施例1のガラス粉体Aにおける微粒子酸化チタンをカーボンブラック(大きさ:24nm、内包量30重量%)に代えたガラス粉体B(平面度30nm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1.1μm、アスペクト比10)を用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0037】
(実施例3)
実施例1のガラス粉体Aにおける微粒子酸化チタンを群青(大きさ:100nm、内包量30重量%)に代えたガラス粉体C(平面度30nm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1.1μm、アスペクト比10)を用いた以外は上記実施例1と同様、但し、焼成温度を1000℃を800℃に変更して、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0038】
(実施例4)
実施例1のガラス粉体Aにおける微粒子酸化チタンをベンガラ(大きさ:100nm、内包量30重量%)に代えたガラス粉体D(平面度30nm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1.1μm、アスペクト比10)を用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0039】
(実施例5)
実施例1のガラス粉体Aの形状を平均粒径mv値が5μmで、真球度1μmの粒状したガラス粉体Eを用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0040】
(実施例6)
実施例2のガラス粉体Bの形状を平均粒径mv値が5μmで、真球度1μmの粒状したガラス粉体Fを用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0041】
(実施例7)
実施例3のガラス粉体Cの形状を平均粒径mv値が5μmで、真球度1μmの粒状したガラス粉体Gを用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0042】
(実施例8)
実施例1のガラス粉体Aをビーズミルで平均粒径mv値が0.5μmに粉砕し、真球度が0.3μmの粒状したガラス粉体を用いた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0043】
(実施例9)
実施例1のガラス粉体Aの含有量40重量部のうち、20重量部を平均粒径(mv値)が1μmの黒鉛に代えた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0044】
(実施例10)
実施例1のガラス粉体Aの平面度30nm、a−b面粒径5μm、c軸の厚さ0.4μm、アスペクト比12.5となるガラス粉体Hに代えた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0045】
(実施例11)
実施例2のガラス粉体Bの平面度30nm、a−b面粒径5μm、c軸の厚さ0.4μm、アスペクト比12.5となるガラス粉体Iに代えた以外は上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0046】
(比較例1)
鱗片状天然黒鉛A(平面度0.2μmのab面、mv値8μm、c軸の厚さ1μm、アスペクト比8) 40重量部
ポリ塩化ビニル(結合材) 40重量部
ステアリン酸Ca−Zn(安定剤) 1重量部
ジオクチルフタレート(可塑剤) 19重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥後、窒素ガス雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理することによって、直径0.565mm、長さ60mmの焼成鉛筆芯体を製造した。
次いで、上記実施例1で用いた液体A中に、上記焼成鉛筆芯体を1MPaで加圧含浸し、焼成鉛筆芯を得た。
【0047】
(比較例2)
鱗片状シリカ:製品名「シルリーフ」日本板硝子社製(平面度1μm、a−b面粒径11μm、c軸の厚さ1μm、アスペクト比11) 40重量部
ポリ塩化ビニル(結合材) 40重量部
ステアリン酸Ca−Zn(安定剤) 1重量部
ジオクチルフタレート(可塑剤) 19重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、窒素ガス雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理した後、直径0.565mm、長さ60mmに切断後、ジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm2/s、屈折率1.401、信越化学社製)を120℃−24時間浸漬し、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0048】
(比較例3)
比較例2の「シルリーフ」を鱗片状シリカ(製品名「シルキーフレーク」、日本板硝子社製)(平面度0.02μm、a−b面粒径10μm、c軸の厚さ0.4μm、アスペクト比25)に代えた以外は、上記比較例2と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0049】
(比較例4)
鱗片状シリカ:製品名「シルキーフレーク」(平面度0.02μm、a−b面粒径10μm、c軸の厚さ0.4μm、アスペクト比25) 30重量部
カーボンブラック 10重量部
ポリ塩化ビニル(結合材) 40重量部
ステアリン酸Ca−Zn(安定剤) 1重量部
ジオクチルフタレート(可塑剤) 19重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合分散し、加圧ニーダー、ロールで混練し、成形後、ジオクチルフタレートを乾燥し、窒素ガス雰囲気中にて1000℃、10時間で焼成処理した後、直径0.565mm、長さ60mmに切断後、ジメチルシリコーンオイルKF96−30CS(動粘度30mm2/s、屈折率1.401、信越化学社製)を120℃−24時間浸漬し、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0050】
(比較例5)
実施例1のガラス粉体Aの配合量を2重量部とし、他の体質材として黒鉛の配合量を38重量部にした以外は、上記実施例1と同様にして、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0051】
(比較例6)
実施例1のガラス粉体Aの配合量を90重量部とし、他の10重量部を実施例1と同様の比率で各成分を配合し、シャープペンシル用焼成芯体を製造した。
【0052】
上記実施例1〜11及び比較例1〜6で得られた各焼成鉛筆芯(シャープペンシル用鉛筆芯)について、下記各方法により、曲げ強度、圧縮強度(N)、摩耗量(mm)、濃度、消去率(%)、摩擦係数(静、動)、官能評価による筆記感、色見の評価を行った。
これらの結果を下記表1に示す。
【0053】
(曲げ強度の測定方法)
JIS S 6005:2007に規定されている曲げ強さ試験で曲げ強度を測定した(n=100)。
(圧縮強度の測定方法)
芯を平面上に横置き固定し、テンシロン(ORIENTEC RTC−1150A)で横幅2mm、縦幅5mmの圧縮治具で上から圧縮試験して破壊強度を測定した(n=100)。
【0054】
(摩耗試験の試験方法)
筆記角度75°、荷重300gf、筆記距離5m筆記した際の芯の摩耗長さを測定した(n=10)。
(濃度の測定方法)
磨耗試験で筆記した描線を濃度計(sakura DENSITO METER PDA65小西六写真工業株式会社)で測定した値である(n=10×4ヵ所)。
【0055】
(消去率の測定方法)
摩耗試験で筆記した描線を消しゴム(EP−105E)で5往復させた後の描線消去率を求めた(n=10)。
(摩擦係数の測定方法)
JIS S 6005:2007に規定されている画線機を用いた画線方法における画線中の全摩擦力の平均値を筆記荷重で割った値(n=10)を「動摩擦係数」とし、摩擦の最大値を筆記荷重で割った値を「静摩擦係数」とした。
【0056】
(反射光の測定方法)
摩耗試験で筆記した描線を分光測色計(分光測色計:CM−3600d コニカミノルタ製)で測定したL*値である(n=10×4ヵ所)。
【0057】
〔筆記感、色見の評価方法〕
10人の被験者が400字詰め原稿用紙を1枚「三菱鉛筆芯」と繰り返し筆記し、当社既存品(三菱鉛筆芯社製、「SHU」0.5mm−HB)と比較して下記各項目の相対評価を行った。
筆記感は、滑らかに感じるか否かで比較し下記評価基準で評価した。
評価基準(平均値):
◎:非常に良い
○:既存品より良い
△:既存品と同等
×:既存品より悪い
色見は、当社既存品(三菱鉛筆芯社製、「SHU」0.5mm−HB)と比較して、肉眼による官能評価した。
【0058】
【表1】

【0059】
上記表1の結果から明らかなように、本発明範囲の鉛筆芯となるシャープペンシル用焼成芯は、本発明の範囲外となる比較例1〜6に較べて、全て画線機による筆記が可能であり、かつ、比較例1〜4に較べて、曲げ強度、圧縮強度などの性能を損なうことなく、濃い描線濃度を有し、しかも、L*が小さく、黒く、従来にないシャープペンシル用焼成芯が得られることが判明した。また、比較例5及び6は、配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体の含有量が本発明の範囲から外れる場合であり、筆記不能は画線機による筆記ができないものであり、本発明の効果を発揮できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
シャープペンシル用鉛筆芯、木軸用鉛筆芯、色鉛筆芯などに好適な描線濃度を有する鮮やかな色相となる鉛筆芯が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配合組成物として微粒子を分散・内包させたガラス粉体を鉛筆芯全量に対して、3〜90重量%含有することを特徴とする鉛筆芯。
【請求項2】
前記ガラス粉体は、シリカであることを特徴とする請求項1記載の鉛筆芯。
【請求項3】
前記ガラス粉体は、平均厚さ0.1〜2μm、アスペクト比5〜150であり、かつ、平面度が200nm以下のフレーク状であることを特徴とする請求項1又は2記載の鉛筆芯。
【請求項4】
前記ガラス粉体は、平均粒径0.1〜50μm、真球度0.1〜50μmの粒状であることを特徴とする請求項1又は2記載の鉛筆芯。
【請求項5】
前記ガラス粉体は、該ガラス粉体に分散・内包する微粒子の平均粒径が1〜300nmの範囲となるナノ粒子内包ガラス粉体であることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項6】
前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項7】
前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子が、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン、黒鉛化カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、ダイヤモンド、金属酸化物、無機顔料、有機顔料、染料から選ばれる少なくとも1種と、ワックス及び/又は有機高分子とからなることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項8】
前記ガラス粉体に分散・内包する微粒子の含有量がガラス粉体中に5〜80重量%であることを特徴とする請求項1〜7の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項9】
前記ガラス粉体が、有機金属化合物を含有し、更に、10〜80重量%を含む溶液を用いてゾルゲル法によって合成されることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項10】
前記ガラス粉体と共に、黒鉛が含有されること特徴とする請求項1〜9の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項11】
黒鉛の体積平均径(mv値)が0.2〜1μmであることを特徴とする請求項10に記載鉛筆芯。
【請求項12】
鉛筆芯がシャープペンシル用焼成鉛筆芯であることを特徴とする請求項1〜11の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項13】
鉛筆芯が焼成色鉛筆芯であることを特徴とする請求項1〜11の何れか一つに記載の鉛筆芯。
【請求項14】
鉛筆芯が非焼成色鉛筆芯であることを特徴とする請求項1〜5、7〜11の何れか一つに記載の鉛筆芯。

【図1】
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【公開番号】特開2011−213757(P2011−213757A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−80382(P2010−80382)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】