説明

鉛蓄電池

【課題】電解液の成層化現象の抑制と、充電受け入れ性の向上とを図ることができる鉛蓄電池を提供する。
【解決手段】正極活物質を格子体に充填してなる正極板1と負極活物質を格子体に充填してなる負極板2とをセパレータ3を介して積層してなる極板群4を備えた鉛蓄電池において、正極板1を横方向の全体に亘って厚みが薄く形成された第1の部分101と横方向の全体に亘って第1の部分よりも厚みが厚く形成された第2の部分102とにより構成し、第1の部分101及び第2の部分102が極板の縦方向に交互に並ぶようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛蓄電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されているように、鉛蓄電池においては、正極活物質を格子体に充填したものからなる正極板と、負極活物質を格子体に充填したものからなる負極板とをセパレータを介して積層して、正極板の集電タブ(耳部)どうし及び負極板の集電タブどうしをそれぞれ正極ストラップ及び負極ストラップで接続することにより極板群を構成し、電槽内に設けられた複数のセル室内にそれぞれ極板群を電解液とともに収容して複数のセルを構成している。そして隣り合うセル間をセル間接続部によって接続することにより複数のセルを直列に接続し、両端のセルからそれぞれ導出した正極端子及び負極端子を電槽の蓋を貫通させて上部に導出している。
【0003】
鉛蓄電池は、自動車のエンジンを始動させる始動装置や、自動車に搭載された各種の電装品等を駆動するために広く用いられている。近年、自動車用の分野では、環境の保護と燃費の改善とを図るため、特許文献2に示されているように、停車時にエンジンを止め、発車時にエンジンを再始動するアイドリングスタートストップ(以下ISSと略す。)が実施され始めている。ISSでは、エンジンの始動と停止とが頻繁に繰り返され、始動時に鉛蓄電池で大電流放電が行なわれる上に、停車中には充電が停止された状態で車載の電装品負荷への電力の供給が行なわれるため、放電電気量が非常に多くなる。
【0004】
ISSを行なう車両に搭載される鉛蓄電池に対しても、通常の車両に搭載される鉛蓄電池と同様に、車両により駆動される交流発電機の整流出力で、レギュレータを通して定電圧充電が行なわれるが、使用中の水分解による電解液の減少を極力する少なくするために、近年、充電電圧の設定値が低くなる傾向にある。また最近、充電制御車と呼ばれる車両が使われるようになっているが、この種の車両では、充電電圧が低いことに加え、車両駆動用エンジンの負荷に合わせて充電電圧を変化させる方式が採用されるようになっている。
【0005】
ISSを行なうエンジン駆動車両や、充電制御車においては、電池の充電が行なわれ難いため、電池が完全な充電状態にはなり難いという問題がある。このような使用条件下では、鉛蓄電池が十分に充電されないため、電池は放電過多の状態で使用されることが多くなる。
【特許文献1】特開平9−312155号公報
【特許文献2】特開2006−210134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような状態で充放電サイクルが繰り返されると、鉛蓄電池内の極板で頻繁に使用される部分とそうでない部分とが生じ、電流を取り出す集電タブの部分に近い極板上部と、集電タブから離れた極板下部とで活物質の利用率に差が生じる。そのため極板下部では充放電の繰返しに伴って充電不足の状態になり、極板の表面に放電生成物(硫酸鉛)の蓄積(サルフェーション)が起こる。このような状態になると、極板の下部で酸化、還元が行なわれにくくなるため、電池性能が低下する。
【0007】
また充電が完全に行なわれない状況では、電解液の濃度が上部で薄く、下部で濃くなる成層化現象が発生し、更にサルフェーションを促進させる。
【0008】
電解液の成層化現象が起ると、主として電池内の下部でサルフェーションが生じ、極板の上部と下部とで反応が不均一になって、主として極板の上部だけで反応が起こるようになる。この場合、正極板については、その上部で活物質の格子体からの剥離などが生じ、これが電池性能の早期の低下につながって、電池の寿命を短くする。従って、ISSを行う車両に搭載される鉛蓄電池においては、電解液の成層化現象を極力抑制する必要がある。
【0009】
またISSを行う場合のように、発電機からの充電電流の供給が頻繁に停止する場合には、電池の容量不足を招かないようにするために、短時間で充電を行う必要があるため、電池の充電受け入れ性を向上させる必要がある。しかし上記のようにサルフェーションが生じ、主として極板の上部だけで反応が起こる状態になると、充電受け入れ性が悪くなるのを避けられない。
【0010】
本発明の目的は、電解液の成層化現象の抑制と、充電受け入れ性の向上とを図ることができるようにした鉛蓄電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、正極活物質を格子体に充填してなる正極板と負極活物質を格子体に充填してなる負極板とをセパレータを介して積層してなる極板群を備えた鉛蓄電池を対象としたもので、本発明においては、正極板及び負極板の少なくとも一方が、極板の横方向の全体に亘って厚みが薄く形成された第1の部分と極板の横方向の全体に亘って前記第1の部分よりも厚みが厚く形成された第2の部分とを有し、第1の部分及び第2の部分が極板の縦方向に交互に並ぶように設けられている。
【0012】
上記の第1の部分は、例えば、格子体に活物資を充填した後に、極板の第1の部分とすべき部分をローラ掛けによりプレスして、その厚みを第2の部分の厚みより薄くすることにより形成することができる。
【0013】
なお本明細書においては、極板の電槽内で上下方向に沿う方向を縦方向とし、極板の縦方向及び厚み方向の双方に対して直角な方向を極板の横方向としている。
【0014】
上記のように、正極板及び負極板の少なくとも一方を、横方向の全長に亘って厚みが薄く形成された第1の部分と、横方向の全長に亘って第1の部分よりも厚みが厚く形成された第2の部分とにより構成して、第1の部分と第2の部分とが縦方向に交互に並ぶようにしておくと、厚みが厚い第2の部分が極板間の隙間(厳密には、隣り合う極板のうち第1の部分及び第2の部分により構成された極板と該隣り合う極板間に介在するセパレータとの間の隙間)内に突出する凸部を形成して、該凸部が極板間の隙間を上下に仕切るため、電解液の比重が大きい部分が下方に移動するのを抑制することができる。また第1の部分の厚みが薄いことにより、平均極板間距離が長くなるため、電解液の流動を促進して、電池内の下部に比重が大きい電解液が滞留するのを防ぐことができ、これらにより、電解液の成層化現象が生じるのを抑制して、電極の下部でサルフェーションが生じるのを防ぐことができる。
【0015】
従って、極板の上部と下部とで反応が不均一になって、極板の上部だけで反応が起こる状態が生じるのを防ぐことができ、正極板の上部で活物質の格子体からの剥離などが生じて、電池性能が早期に低下するのを防ぐとともに、電池の充電受入れ性を向上させることができる。
【0016】
上記第1の部分と第2の部分とを有する極板は、その最上部に位置する部分を厚みが薄い第1の部分とするように形成することが好ましい。
【0017】
上記のように、極板の最上部に位置する部分を厚みが薄い第1の部分として、極板の上部での極板間距離を広くしておくと、電解液の流動性を良好にすることができるため、電槽内の上部及び下部の電解液の濃度差を少なくすることができ、電解液の成層化現象が生じるのを抑制することができる。
【0018】
本発明の好ましい態様では、上記第1の部分が、極板の一部を厚み方向に圧縮(プレス)して厚みを減じることにより形成される。
【0019】
上記のように、極板の一部を厚み方向に圧縮して厚みを減じることにより第1の部分を形成すると、活物質の粒子どうしの結合を強くすることができるため、活物質の剥離が生じるのを防ぐことができ、活物質の剥離により電池寿命が短くなるのを防ぐことができる。
【0020】
上記のように、極板の一部を厚み方向に圧縮(プレス)して厚みを減じることにより第1の部分と第2の部分とを形成する場合、該第1の部分と第2の部分とを設ける極板は、活物質の剥離が生じ易い正極板とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、正極板及び負極板の少なくとも一方を、横方向の全長に亘って厚みが薄く形成された第1の部分と、横方向の全長に亘って第1の部分より厚みが厚く形成された第2の部分とにより構成して、第1の部分と第2の部分とが縦方向に交互に並ぶようにしたので、厚みが厚い第2の部分により、極板間の隙間を上下に仕切って、電解液の比重が大きい部分が下方に移動するのを抑制することができ、電池内の上部と下部とで電解液の濃度に大きな差が生じるのを防ぐことができる。
【0022】
また極板の第1の部分の厚みが薄いことにより、平均極板間距離が長くなるため、電池内での電解液の流動性をよくして、電池の下部に比重が大きい電解液が滞留するのを防ぐことができ、これによっても、極板間の上部と下部とで電解液の濃度に差が生じるのを抑制することができる。
【0023】
従って、本発明によれば、電解液の成層化を抑制して、電極の下部でサルフェーションが生じるのを防ぐことができるため、極板の上部のみで反応が起こる状態が生じるのを防ぐことができ、正極板の上部で活物質が剥離する状態が早期に生じて、電池寿命が短くなるのを防ぐことができる。
【0024】
更に、極板の第1の部分で活物質を厚み方向に圧縮して、活物質の粒子どうしを強固に結合したことにより、活物質が剥離しにくくすることができるため、電池の寿命を長くすることができる。
【0025】
また本発明によれば、極板の下部でサルフェーションが生じにくくして、極板の上部でも下部でも反応を行なわせることができるようにしたため、電池の充電受入性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下図面を参照して本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
前述のように、本発明においては、正極板及び負極板の少なくとも一方が、極板の横方向の全体に亘って厚みが薄く形成された第1の部分と極板の横方向の全体に亘って前記第1の部分よりも厚みが厚く形成された第2の部分とを有していて、該第1の部分及び第2の部分が極板の縦方向に交互に並ぶように設けられている。
【0027】
図1(A)及び(B)はそれぞれ本実施形態で用いる正極板1を模式的に示した正面図及び右側面図である。本実施形態で用いる正極板1は、該極板の横方向に平行に延びる2つの帯状の第1の部分101(図中薄墨色に見える部分)と、同じく極板の横方向に平行に延びる2つの帯状の第2の部分102とからなっていて、第1の部分101と第2の部分102とが、極板の縦方向に交互に並ぶように配列されている。第1の部分101及び第2の部分102は、極板の最上部に第1の部分101が、また極板の最下部に第2の部分102がそれぞれ配置されるように設けられていて、第1の部分101が第2の部分102よりも薄い厚みを持つように形成されている。
【0028】
上記の正極板は、格子体に活物資を充填した後、極板をローラで圧縮して活物質を固める際に、第1の部分101とすべき部分での圧縮量を第2の部分102とすべき部分での圧縮量よりも大きくすることにより作製することができる。
【0029】
本実施形態では、正極板をその片面側からローラでプレスすることにより、第1の部分101と第2の部分102とを形成しているため、図1(B)に示されているように、第1の部分101及び第2の部分102により正極板1の片面にのみ凹部r及び凸部pが形成され、これらが極板の縦方向に交互に配列される。
【0030】
なお図1において、符号1aを付して示した部分は格子体(図示せず。)の上部に該格子体と一体に形成された集電タブ(耳部)である。
【0031】
一方本実施形態で用いる負極板は、格子体に活物質を充填した後、その全体をローラにより均一に圧縮して、全体がほぼ均一な厚みを有するように形成される。
【0032】
図2は、上記のようにして得られた正極板1と均一な厚みを有する負極板2とをセパレータ3を介して積層することにより構成された極板群4の一部を示している。図2において、2aは負極板2の格子体に設けられた集電タブである。極板群を構成する一連の正極板の集電タブ1aは、図示しない正極ストラップにより相互に接続され、一連の負極板2の集電タブ2aは負極ストラップにより相互に接続される。図2から明らかなように、本実施形態においては、正極板1の第2の部分102により形成された凸部pが、隣り合う正極板1及び負極板2の間の隙間(厳密には、各正極板1と該正極板に対向するセパレータ3との間の隙間)g内に突出して、隣り合う極板間の隙間gを上下方向に複数の領域に仕切っている。
【0033】
このように極板間の隙間が上下に複数の領域に仕切られていると、極板間の隙間が仕切られていない場合に比べて、電槽内の上部で電解液の濃度が薄くなり、電槽内の下部で電解液の濃度が濃くなる、電解液の成層化現象が生じるのを抑制することができるため、極板の下部でサルフェーションが生じるのを抑制して、極板の上部でも下部でも電池反応をほぼ均一に行わせることができ、正極板の上部で活物質の格子体からの剥離などが生じて、電池性能が早期に低下するのを防ぐことができる。また、極板の上部でも下部でも電池反応をほぼ均一に行わせることができるため、電池の充電受入性を向上させることができる。以下本発明の実施例と比較例とについて説明する。
【実施例】
【0034】
本実施例では、酸化鉛からなる鉛粉に水と希硫酸とを加えて練合することにより、活物質ペーストを得た。このペーストを鉛格子体に充填した後、正極板の第1の部分101を形成するための大径部と、第2の部分102を形成するための小径部とを有するローラを用いて、極板の片面にその横方向に沿ってローラ掛けをすることにより、図1に示したように、極板の横方向に平行に延びる2つの第1の部分101,101と、第1の部分よりも厚みが厚い第2の部分102,102とを形成して正極板1を作製した。本実施例では、第1の部分101の厚みが1.4mm〜1.6mmの範囲に収まり、第2の部分102の厚みが1.6mm〜1.9mmの範囲に収まるようにした。
【0035】
また負極板は、格子体にペーストを充填した後、極板の全体に均一にローラ掛けをして全体を均一に圧縮することにより、厚みがほぼ1.3mmとなるように作製した。
【0036】
上記のようにして得た正極板1及び負極板2を熟成し、乾燥した後、正極板1と負極板2とを、セパレータ3を介して積層し、正極板の集電タブ同士及び負極板の集電タブ同士をそれぞれ接続する正極ストラップ及び負極ストラップを形成して、正極板7枚、負極板8枚からなる極板群4を多数作製した。セパレータ3としては通常総厚みが0.7〜1.5mmのものが用いられているが、本実施例では、総厚みが0.7mmのセパレータを用いた。このようにして作製した多数の極板群4の中から平均極板間距離が約0.75mm,0.95mm及び1.2mmのものを選んで、同じ平均極板間距離を有する極板群を電槽の各セル室内に収容し、電槽の蓋を溶着して、極板が未化成の状態にあるセル数が6の鉛蓄電池を組み立てた。平均極板間距離が約0.75mm,0.95mm及び1.2mmの極板群を用いた実施例の鉛蓄電池をそれぞれ実施例1、実施例2及び実施例3とした。なお極板間距離は、正極板の凹部rの表面と負極板の表面との間の距離(凹部rの深さ+セパレータ3の厚さ)である。
【比較例】
【0037】
全体が均一な厚み(1.6mm)を有する正極板と全体が均一な厚み(1.3mm)を有する負極板を用い、その他の点は上記実施例と同様とした鉛蓄電池を比較例として組み立てた。
【0038】
上記のようにして組み立てた実施例及び比較例の鉛蓄電池の電槽内に電解液(希硫酸)を注入して通電することにより電槽化成を行ない、5時間率容量として36Ah相当の鉛蓄電池を作製した。
【0039】
実施例1及び比較例の電池について、25℃でSOC(充電状態)が90%となるように放電を行ない、6時間放置した後、14.0V(100Amax)の定電圧充電を30秒間行なって、充電受入性試験を行なった。
【0040】
実施例1及び比較例の電池について測定した結果から、充電電流と充電時間との関係を示す図3に示すような充電カーブを作成し、この充電カーブから5秒目充電電気量での比較を行なって、極板間距離と充電受入性との関係を調べた。5秒目充電電気量を反応面積当りの充電受入性(充電電気量)に換算して、実施例1ないし3について、充電受入性と平均極板間距離との関係を比較した結果を図4に示した。この結果から、極板間距離を長くすることにより充電受入性が向上することが明らかになった。
【0041】
なお図4の横軸の「平均極板間距離」は、正極板の凹部表面と負極板の表面との間の距離の平均値で、正極板の凸部表面と負極板の表面との間の距離(セパレータの厚さ)と、正極板の凹部表面と負極板の表面との間の距離とを凸部面積と凹部面積との比で加重平均したものである。実施例では、正極板の一面側では、凸部表面積:凹部表面積=4:6であり、正極板の他面側では、凸部表面積:凹部表面積=10:0であるため、凸部表面積と凹部表面積との比を14:6として加重平均を行なった。
【0042】
実施例1ないし3及び比較例の詳細なデータは下記の表1の通りである。
【表1】

【0043】
表1において、充電電気量(Ah/cm)を演算する式を実施例1のデータを用いて示すと下記の通りである。
(49A×30sec)÷(10cm×10cm×2/枚×7枚/セル×6セル×3600sec)=4.9×10−5Ah/cm
上記の式において、「10cm×10cm」は正極板のサイズを示し、「2/枚」は、表裏両面について演算していることを示し、「7枚/セル」は1セル当たりの正極板の枚数を示している。
【0044】
次に実施例1ないし3の鉛蓄電池と、比較例の鉛蓄電池とについて、JISで定められている軽負荷試験を行なった。この試験では、25Aの定電流放電を4分行なった後、14.8V(25Amax)の定電圧充電を10分行なう過程を1サイクルとして、放電と充電とを繰り返し行なった。そして480サイクル毎に430A放電を行なって、その30秒目の電圧を測定し、30秒目電圧が7.2Vを下回った時点を寿命とした。この軽負荷試験の結果を図5に示した。図5から明らかなように、いずれの実施例も、比較例に比べて、サイクル寿命が向上している。
【0045】
上記のように充電受入性及びサイクル寿命が向上する理由は下記の通りであると考えられる。即ち、正極板の第1の部分101により平均極板間距離が長くなることにより電解液の流動性が向上するため、電池内の下部に電解液の比重が大きい部分が滞留するのを防ぐことができる。また正極板の第2の部分により形成される凸部pによって極板間の隙間が上下に仕切られることで電解液の比重が大きい部分が下方に移動するのを抑制することができ、これらにより、電池の上部の電解液濃度と下部の電解液濃度との差を少なくして、電解液の成層化を抑制できる。そのため、電極の下部でサルフェーションが生じるのを抑制することができ、極板の上部でのみ反応が起こって、正極板の上部で活物質の剥離が生じるのを防ぐことができる。また極板の上部でも下部でも反応を行なわせることができるため、充電受入性を向上させることができる。
【0046】
上記の例では、正極板のみを第1の部分と第2の部分とにより構成したが、図6に示すように、正極板1を厚みが薄い第1の部分101と厚みが厚い第2の部分102とにより構成するとともに、負極板2を厚みが薄い第1の部分201と厚みが厚い第2の部分202とにより構成するようにしてもよい。
【0047】
また負極板のみを第1の部分と第2の部分とにより構成し、正極板は均一な厚みを有するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(A)及び(b)はそれぞれ本発明の実施形態で用いる正極板を模式的に示した正面図及び右側面図である。
【図2】図1の正極板と均一な厚みを有する負極板とを用いて構成した極板群の一部を模式的に示した側面図である。
【図3】実施例及び比較例の充電受入性を調べる実験で得られた測定結果に基づいて作成した充電カーブを示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1ないし3の充電受入性と平均極板間距離との関係を比較して示したグラフである。
【図5】本発明の実施例1ないし3と比較例とについて行なった軽負荷試験の結果を示したグラフである。
【図6】本発明の他の実施形態に係わる鉛蓄電池で用いる極板群の一部を模式的に示した側面図である。
【符号の説明】
【0049】
1 正極板
101 第1の部分
102 第2の部分
2 負極板
3 セパレータ
4 極板群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を格子体に充填してなる正極板と負極活物質を格子体に充填してなる負極板とをセパレータを介して積層してなる極板群を備えた鉛蓄電池において、
前記正極板及び負極板の少なくとも一方は、極板の横方向の全体に亘って厚みが薄く形成された第1の部分と極板の横方向の全体に亘って前記第1の部分よりも厚みが厚く形成された第2の部分とを有し、
前記第1の部分及び第2の部分は極板の縦方向に交互に並ぶように設けられていることを特徴とする鉛蓄電池。
【請求項2】
前記第1の部分は、極板の一部を厚み方向にプレスして厚みを減じることにより形成されている請求項1に記載の鉛蓄電池。
【請求項3】
前記第1の部分と第2の部分とを有する極板は、その最上部に位置する部分が第1の部分からなるように形成されている請求項1または2に記載の鉛蓄電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−272203(P2009−272203A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123102(P2008−123102)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000001203)新神戸電機株式会社 (518)
【Fターム(参考)】