説明

鉱物採取システムおよび鉱物採取方法

【課題】どれだけの資源が海底の何処から回収されるかを、ケーソンごとに簡単にエコロジカルに確認することができる鉱物採取システムを提供する。
【解決手段】バイオリーチング液BLを収容したケーソン100が海底BSに設置される。ケーソン100に搭載されているイオンセンサ110,CCDカメラ120がバイオリーチング液BLによる鉱物採取の状態を検出する。ケーソン100のイオンセンサ110,CCDカメラ120と結線されている洋上ブイ200が海面SSに浮遊する。洋上ブイ200に搭載されている無線送信機210がイオンセンサ110,CCDカメラ120の検出状態情報を無線送信する。無線送信される検出状態情報を無線受信機310が無線受信する。無線受信された検出状態情報をケーソン100ごとにデータベースサーバ320が記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底資源の回収が可能かを確認する鉱物採取システム、その鉱物採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10に示すように、海底には鉱物資源が存在しており、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、等と呼称されている。そして、日本のEEZ(Exclusive Economic Zone)は世界第六位と広大であり、その海底には膨大な鉱物資源が存在していることが確認されている。
【0003】
しかし、このような海底資源は、数百から数千メートルもの深海に存在している。このため、研究目的での微量な採取などはされていても、実用レベルでの採掘は困難とされている。現在、上述のような海底資源の採掘方法の提案がある(特許文献1)。
【0004】
その技術では、洋上における採鉱船の位置をGPS信号受信器を用いて測定し、測定したデータに基づき、バケット付ロープの繰出位置および洋上ブイ引揚位置におけるロープの鉛直傾斜角および洋上ブイ水平方向角を測定する。
【0005】
この測定値および洋上ブイGPS信号受信器のデータから、ロープの鉱床への着底点および離底点を計算し、さらにバケットのドレッジ音を音響装置で探知し、これらにより採鉱船の適正な位置および洋上ブイ方位を求め、採鉱船の運動を外舷スラスタ、サイドスラスタにより適正に制御して採鉱する。
【0006】
特許文献1の技術では、上述のような構成により、水深800ないし2000mの海山の傾斜面や平坦なテラス状の海底表面上の比較的狭小な面積に高い賦存密度で存在する採鉱物を、バケット付ロープを用いて効率よく採取できるとされている。
【0007】
同様に、バケット付ロープで海底資源を採掘する他の提案もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−057721号公報
【特許文献2】特開昭58−168794号公報
【特許文献3】特開2007−049992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述のようにバケット付ロープで海底から資源を採掘する手法では、海底を物理的に掘削することになる。このため、希少な遺伝子を持つ深海生物などに多大な影響を及ぼす懸念がある。
【0010】
また、数千メートルもの深海までバケット付ロープを到達させて海底資源を採掘することは、現実的には非常に困難であり、実現したとしても膨大な機材とエネルギとが必要となる。
【0011】
さらに、前述のように現在では海底資源が存在する位置は確認されているが、どれだけの海底資源が実際に回収できるかは確認されていない。このため、位置が確認されている海底資源を、どれだけ回収できるかを確認する必要がある。
【0012】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、どれだけの海底資源を実際に回収できるかを簡単にエコロジカルに確認することができる鉱物採取システム、その鉱物採取方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の鉱物採取システムは、鉱物資源を採取するバイオリーチング液を収容して海底に設置されるケーソンと、ケーソンに搭載されていてバイオリーチング液による鉱物資源の採取状態を検出する状態検出手段と、ケーソンの状態検出手段と結線されていて海面に浮遊する洋上ブイと、洋上ブイに搭載されていて状態検出手段の検出状態情報を無線送信する無線送信手段と、無線送信される検出状態情報を無線受信する無線受信手段と、無線受信された検出状態情報をケーソンごとに記憶する結果記憶手段と、を有する。
【0014】
本発明の鉱物採取方法は、バイオリーチング液を収容したケーソンを海底に設置し、ケーソンに搭載されている状態検出手段でバイオリーチング液の状態を検出し、ケーソンの状態検出手段と結線されている洋上ブイを海面に浮遊させ、洋上ブイに搭載されている無線送信手段で状態検出手段の検出状態情報を無線送信し、無線送信される検出状態情報を無線受信手段で無線受信し、無線受信された検出状態情報をケーソンごとに結果記憶手段で記憶する。
【0015】
なお、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の鉱物採取システムでは、バイオリーチング液を収容したケーソンが海底に設置される。ケーソンに搭載されている状態検出手段がバイオリーチング液の状態を検出する。ケーソンの状態検出手段と結線されている洋上ブイが海面を浮遊する。洋上ブイに搭載されている無線送信手段が状態検出手段の検出状態情報を無線送信する。無線送信される検出状態情報を無線受信手段が無線受信する。無線受信された検出状態情報をケーソンごとに結果記憶手段が記憶する。このため、例えば、バイオリーチング液を収容したケーソンを海底の複数の位置に設置することにより、どれだけの資源が海底の何処から回収されるかを、ケーソンごとに簡単にエコロジカルに確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態の鉱物採取システムを示す模式図である。
【図2】鉱物採取システムの物理構造を示すブロック図である。
【図3】鉱物採取システムを示す模式図である。
【図4】鉱物採取システムを示す模式図である。
【図5】鉱物採取システムを示す模式図である。
【図6】鉱物採取システムを示す模式図である。
【図7】データベースサーバの物理構造を示すブロック図である。
【図8】洋上ブイの処理動作を示すフローチャートである。
【図9】データベースサーバの処理動作を示すフローチャートである。
【図10】海底に存在する鉱物資源の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。本発明の鉱物採取システム1000は、図1および図2に示すように、鉱物資源MRを採取するバイオリーチング液BLを収容して海底BSに設置されるケーソン100と、ケーソン100に搭載されていてバイオリーチング液BLによる鉱物資源MRの採取状態を検出する状態検出手段であるイオンセンサ110,CCD(Charge Coupled Device)カメラ120と、ケーソン100のイオンセンサ110,CCDカメラ120と結線されていて海面SSに浮遊する洋上ブイ200と、洋上ブイ200に搭載されていてイオンセンサ110,CCDカメラ120の検出状態情報を無線送信する無線送信手段である無線送信機210と、無線送信される検出状態情報を無線受信する無線受信手段である無線受信機310と、無線受信された検出状態情報をケーソン100ごとに記憶する結果記憶手段であるデータベースサーバ320と、を有する。
【0019】
また、本実施の形態の鉱物採取システム1000は、図2に示すように、洋上ブイ200に搭載されていて現在位置情報を検出するGPS端末220を、さらに有する。そして、無線送信機210は、検出状態情報と現在位置情報とを無線送信し、無線受信機310は、検出状態情報と現在位置情報とを無線受信し、データベースサーバ320は、ケーソン100ごとに検出状態情報と現在位置情報とを記憶する。
【0020】
さらに、ケーソン100は、鉱物資源MRを析出する海底BSに設置される。バイオリーチング液BLは、海底BSから析出する鉱物資源MRを採取する。イオンセンサ110は、検出状態情報としてバイオリーチング液BL中の鉱物資源MRのイオン濃度を検出する。また、CCDカメラ120は、検出状態情報としてバイオリーチング液BLにより鉱物資源MRが採取される海底BSの画像を撮像する。
【0021】
なお、このように鉱物資源MRを析出する海底BSは、いわゆる、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、等からなる。図10に示すように、海底熱水鉱床は、鉱物資源MRとして、銅、鉛、金、銀、ゲルマニウム、ガリウム、等を析出する。
【0022】
コバルトリッチクラストは、マンガン、銅、ニッケル、コバルト、白金、等を析出する。マンガン団塊は、マンガン、ニッケル、銅、コバルト、等の数種の有用金属を析出する。
【0023】
そして、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、上述のような海底BSの種類などに対応して、複数種類の鉱物資源MRの少なくとも一つを採取するバイオリーチング液BLがケーソン100に収容される。例えば、硫黄酸化微生物のバイオリーチング液BLは、鉱物資源MRとして硫化鉱物を採取する。
【0024】
また、本実施の形態の鉱物採取システム1000は、ケーソン100と洋上ブイ200とに連結されている配管130と、ケーソン100の内部で鉱物資源MRを採取したバイオリーチング液BLを配管130で洋上ブイ200から回収する鉱物回収手段である鉱物回収タンカー400とを、さらに有する。
【0025】
洋上ブイ200に設置されている配管130の上端は開閉自在な取水口131として形成されており、鉱物回収タンカー400は、配管130の取水口131に連結されてバイオリーチング液BLの回収や交換を実行するポンプバルブ410を有する。
【0026】
さらに、本実施の形態の鉱物採取システム1000は、洋上ブイ200に搭載されていて電力を生成する電力生成手段である太陽電池パネル230と、生成された電力をイオンセンサ110,CCDカメラ120と無線送信機210とに供給する電力供給手段である蓄電池240とを、さらに有する。
【0027】
このため、洋上ブイ200とケーソン100とは通電ケーブル250でも連結されており、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、この通電ケーブル250は、前述の配管130と一体に形成されている。
【0028】
なお、上述のように洋上ブイ200とケーソン100とを物理的に連結する配管130および通電ケーブル250は、数百〜数千メートルもの長大なものとなり、干満差、波浪、海流、等の影響も受ける。
【0029】
このため、配管130および通電ケーブル250は、高度な引張強度が要求されることになる。そこで、配管130、通電ケーブル250、その補強外皮(図示せず)等を、グラファイト、ウィスカ、カーボンナノチューブ、等で形成してもよい。
【0030】
無線受信機310とデータベースサーバ320とは、例えば、陸上のデータセンタ300に設置されている。データベースサーバ320は、いわゆるコンピュータ装置からなり、実装されているコンピュータプログラムに対応して動作する。
【0031】
このようにコンピュータプログラムに対応して動作するデータベースサーバ320は、例えば、図7に示すように、無線受信機310にケーソン100ごとに検出状態情報(と現在位置情報とケーソンID(Identity)と)を無線受信させる無線受信手段321、無線受信された検出状態情報(と現在位置情報とケーソンIDと)をケーソン100ごとに記憶する情報記憶手段322、記憶された検出状態情報を所定の採取完了情報と比較する情報比較手段323、比較された採取完了情報を超過していた検出状態情報(と現在位置情報)をケーソン100の識別情報であるケーソンIDとともにディスプレイユニット(図示せず)や鉱物回収タンカー400に報知出力する情報出力手段324、等を論理的に有する。
【0032】
このような各種手段をデータベースサーバ320に論理的に構築するコンピュータプログラムは、例えば、無線受信機310にケーソン100ごとに検出状態情報(と現在位置情報とケーソンIDと)を無線受信させる無線受信処理、無線受信された検出状態情報(と現在位置情報とケーソンIDと)をケーソン100ごとに記憶する情報記憶処理、記憶された検出状態情報を所定の採取完了情報と比較する情報比較処理、比較された採取完了情報を超過していた検出状態情報(と現在位置情報)をケーソン100の識別情報であるケーソンIDとともにディスプレイユニットや鉱物回収タンカー400などに報知出力する情報出力処理、等をデータベースサーバ320に実行させるように記述されている。
【0033】
上述のような構成において、本実施の形態の鉱物採取システム1000による鉱物採取方法を以下に順番に説明する。まず、前述のように、海底熱水鉱床、コバルトリッチクラスト、マンガン団塊、等の鉱物資源MRを析出する海底BSは、一般に公知である。
【0034】
そこで、このような海底BSに設置されるケーソン100を用意する。このケーソン100は、図1および図3に示すように、海底トンネルの工事に利用される既存製品などが流用され、底面のみ開口したボックス状に形成されている。
【0035】
そして、その底面開口の近傍内側の左右両側などに、例えば、耐圧防水仕様の一対のCCDカメラ120が広角レンズおよび照明器具(ともに図示せず)とともに装着される。このように装着されたCCDカメラ120は、ケーソン100が設置された内側の海底BSを隈無く撮像することになる。
【0036】
また、例えば、ケーソン100の上部内面には、バイオリーチング液BLの鉱物資源MRのイオン濃度であるイオン濃度を検出するイオンセンサ110が設置される。これらのイオンセンサ110とCCDカメラ120とは、洋上ブイ200の蓄電池240および無線送信機210に通電ケーブル250で接続される。
【0037】
本実施の形態では、図2に示すように、ケーソン100ごとにケーソンIDが付与されている。そして、ケーソン100と洋上ブイ200とが一対一に連結されているので、例えば、その洋上ブイ200にケーソンIDが記憶されている。
【0038】
つぎに、上述のようなケーソン100および洋上ブイ200が、後述する鉱物回収タンカー400や専用の作業船などで、鉱物資源MRを析出する海底BSの上方の海面SSまで搬送される(図示せず)。
【0039】
そして、図3に示すように、洋上ブイ200は、その海面SSに設置され、ケーソン100は、海面SSから沈降されて上述の海底BSに設置される。このとき、ケーソン100には、バイオリーチング液BLが収容されているので、このバイオリーチング液BLがケーソン100のバラストを兼用することになる。
【0040】
また、ケーソン100の沈降過程でバイオリーチング液BLが流出することを防止するため、ケーソン100の底面はカバー部材140で密閉される。図4に示すように、このようなケーソン100が海底BSに着底すると、カバー部材140はトンネル工事に利用されている既存の工法などにより取り外される(図示せず)。
【0041】
このようにバイオリーチング液BLを収容したケーソン100が、鉱物資源MRを析出する海底BSに設置されると、図5に示すように、その鉱物資源MRがバイオリーチング液BLに採取されることになる。
【0042】
なお、実際には鉱物資源MRを析出する海底BSは広大であり、複数箇所に存在することから、上述のようなケーソン100および洋上ブイ200は、一度に複数が設置される。
【0043】
上述のような状態でケーソン100が放置されると、そのバイオリーチング液BLが海底BSから析出する鉱物資源MRを採取する。このとき、洋上ブイ200では、太陽電池パネル230が電力を生成して蓄電池240に蓄積され、この蓄電池240に蓄積された電力でケーソン100のイオンセンサ110とCCDカメラ120とが駆動される。
【0044】
このような駆動は、例えば、図8に示すように、毎日一回、毎週一回、毎月一回、などの一定周期で実行される(ステップS1−Y)。このように駆動されるイオンセンサ110が検出するイオン濃度とCCDカメラ120が撮像する海底BSの画像とは(ステップS2)、検出状態情報として洋上ブイ200の無線送信機210から上述の駆動周期でケーソンIDとともに送信される。
【0045】
このとき、GPS端末220により現在位置情報が検出され(ステップS3)、この現在位置情報も上述の無線送信データに付与される(ステップS4)。このような無線送信データは、例えば、図5および図9に示すように、無線通信衛星330を経由して、陸上のデータセンタ300の無線受信機310で無線受信される(ステップT1−Y)。
【0046】
このデータセンタ300では、図2に示すように、無線受信された無線送信データが複数のケーソン100ごとにデータベースサーバ320に蓄積される(ステップT2)。このデータベースサーバ320では、例えば、検出状態情報であるイオン濃度が読み出され(ステップT3)、所定の閾値となる採取完了情報と比較される。
【0047】
そして、この採取完了情報を超過したイオン濃度のケーソンIDが(ステップT4−Y)、例えば、現在位置情報とともにディスプレイユニットに報知出力される(ステップT5)。これにより、そのケーソン100のバイオリーチング液BLが所定濃度まで鉱物資源MRを採取したことが確認される。
【0048】
また、検出状態情報である海底BSの画像がディスプレイユニットに画像表示される、そこで、これを専門家が視認することでも、そのケーソン100のバイオリーチング液BLが所定濃度まで鉱物資源MRを採取したことが確認される。
【0049】
上述のようにケーソン100のバイオリーチング液BLが所定濃度まで鉱物資源MRを採取したことが確認されると、図1に示すように、そのケーソンIDと洋上ブイ200の現在位置情報とが鉱物回収タンカー400に連絡される。
【0050】
この鉱物回収タンカー400は、連絡された現在位置情報に対応して洋上ブイ200の位置まで移動し、図6に示すように、そのポンプバルブ410を洋上ブイ200の配管130の取水口131に連結する。
【0051】
このような状態で鉱物回収タンカー400がポンプ機構(図示せず)を駆動することにより、ケーソン100に収容されているバイオリーチング液BLが鉱物回収タンカー400に回収される。
【0052】
この回収を完了した鉱物回収タンカー400は、例えば、内蔵タンク(図示せず)を切り替えてポンプ機構を駆動することにより、他のバイオリーチング液BLをケーソン100に充填する。
【0053】
上述のような回収作業を鉱物回収タンカー400が複数のケーソン100で実行することにより、特定の鉱物資源MRを採取したバイオリーチング液BLが高効率に回収される。
【0054】
本実施の形態の鉱物採取システム1000では、上述のようにバイオリーチング液BLを収容したケーソン100が海底BSに設置される。そのケーソン100に搭載されているイオンセンサ110,CCDカメラ120がバイオリーチング液BLの状態を検出する。
【0055】
ケーソン100のイオンセンサ110,CCDカメラ120と結線されている洋上ブイ200が海面SSに浮遊する。洋上ブイ200に搭載されている無線送信機210がイオンセンサ110,CCDカメラ120の検出状態情報を無線送信する。
【0056】
無線送信される検出状態情報をデータセンタ300の無線受信機310が無線受信する。無線受信された検出状態情報をケーソン100ごとにデータベースサーバ320が記憶する。
【0057】
このため、バイオリーチング液BLを収容したケーソン100を海底BSの複数の位置に設置することにより、どれだけの資源が海底BSの何処から回収されるかを、ケーソン100ごとに簡単に確認することができる。
【0058】
特に、海底BSの鉱物資源MRをバイオリーチング液BLで回収するので、例えば、このバイオリーチング液BLがケーソン100から周囲に流出しても、深海の貴重な遺伝子の生物(図示せず)などに影響することがない。このため、極めてエコロジカルに海底BSの鉱物資源MRを回収することができる。
【0059】
さらに、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、バイオリーチング液BLを収容したケーソン100を海面SSから投入して海底BSに設置する。このため、ケーソン100に専用のバラスト(図示せず)を搭載する必要がなく、海底BSに設置された初期状態のケーソン100にバイオリーチング液BLを注入する必要もない。
【0060】
しかも、ケーソン100としては海底トンネルなどの工事に利用されている既存製品を流用することができる。このため、巨大なケーソンを専用に形成する必要がなく、鉱物採取システム1000を簡単に構築することができる。
【0061】
なお、前述のようにケーソン100と洋上ブイ200とは配管130および通電ケーブル250で連結されている。しかし、ケーソン100は、数百〜数千メートルもの深海の海底BSに設置される。
【0062】
このため、上述の配管130および通電ケーブル250は長大である。このため、ケーソン100が海底BSに固定されていても、洋上ブイ200は海面SSを広範囲に移動することになる。
【0063】
しかし、洋上ブイ200には現在位置情報を検出するGPS端末220も搭載されており、無線送信機210は、検出状態情報と現在位置情報とを無線送信し、無線受信機310は、検出状態情報と現在位置情報とを無線受信し、データベースサーバ320は、ケーソン100ごとに検出状態情報と現在位置情報とを記憶する。
【0064】
このため、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、海面SSを浮遊する洋上ブイ200の現在位置を確実に確認することができ、鉱物資源MRの回収作業を迅速に実行することができる。
【0065】
また、ケーソン100は、鉱物資源MRを析出する海底BSに設置され、バイオリーチング液BLは、海底BSから析出する鉱物資源MRを採取し、イオンセンサ110は、検出状態情報としてバイオリーチング液BL中の鉱物資源MRのイオン濃度を検出する。
【0066】
このため、海底BSに設置されたケーソン100のバイオリーチング液BLにより採取された鉱物資源MRの濃度が、データセンタ300のデータベースサーバ320まで無線送信されることになる。
【0067】
このため、データセンタ300では、鉱物資源MRを所定濃度まで採取したバイオリーチング液BLのケーソン100を遠隔から確認することができる。従って、そのケーソン100のバイオリーチング液BLを鉱物回収タンカー400に回収させることができる。
【0068】
さらに、ケーソン100のCCDカメラ120は、検出状態情報としてバイオリーチング液BLにより鉱物資源MRが採取される海底BSの画像を撮像する。このため、撮像された海底BSの画像がデータセンタ300のデータベースサーバ320まで無線送信されることになる。
【0069】
このため、データセンタ300では、専門家が海底BSの画像を確認することにより、やはり鉱物資源MRを所定濃度まで採取したバイオリーチング液BLのケーソン100を遠隔から確認することができる。
【0070】
また、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、ケーソン100と洋上ブイ200とに配管130が連結されており、ケーソン100の内部で鉱物資源MRを採取したバイオリーチング液BLを配管130で洋上ブイ200から鉱物回収タンカー400が回収する。
【0071】
このため、ケーソン100は海底BSに設置したままバイオリーチング液BLを海面SSで回収することができる。さらに、このように鉱物資源MRを採取したバイオリーチング液BLの回収が完了したら、別種のバイオリーチング液BLを鉱物回収タンカー400から配管130でケーソン100に供給することもできる。
【0072】
従って、一つの鉱物資源MRを採取するバイオリーチング液BLを順次交換することにより、海底BSに設置したケーソン100を繰り返し利用して複数種類の鉱物資源MRを効率的に回収することができる。
【0073】
また、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、洋上ブイ200に搭載されている太陽電池パネル230が電力を生成し、生成された電力を蓄電池240が蓄電してイオンセンサ110,CCDカメラ120と無線送信機210とGPS端末220とに供給する。
【0074】
このため、バイオリーチング液BLは鉱物資源MRの採取に多大な時間が必要であるが、これを問題とすることなく、イオンセンサ110,CCDカメラ120と無線送信機210とGPS端末220とを稼働させることができる。
【0075】
さらに、本実施の形態の鉱物採取システム1000では、洋上ブイ200が無線送信する各種データが無線通信衛星330を経由して陸上のデータセンタ300で無線受信される。
【0076】
このため、陸地から大幅に離反しているEEZ領域にケーソン100とともに洋上ブイ200が設置されても、陸上のデータセンタ300まで各種データを無線送信することができる。
【0077】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態では無線受信機310とデータベースサーバ320とが陸上のデータセンタ300に設置されており、このデータセンタ300から鉱物回収タンカー400に回収指令などの各種データが無線送信されることを例示した。
【0078】
しかし、上述のような無線受信機310とデータベースサーバ320とが鉱物回収タンカー400に搭載されていてもよく、洋上ブイ200と同様に海面SSに浮遊する洋上センタ(図示せず)に設置されていてもよい。
【0079】
また、上記形態ではバイオリーチング液BLを収容したケーソン100を海面SSから投入して海底BSに設置することにより、ケーソン100に専用のバラストを搭載する必要がなく、海底BSに設置された初期状態のケーソン100にバイオリーチング液BLを注入する必要もないことを例示した。
【0080】
しかし、海水を収容したケーソン100を海面SSから投入して海底BSに設置し、そのケーソン100に配管130からバイオリーチング液BLを注入してもよい。この場合、沈降させるケーソン100の底面開口をカバー部材140で密閉する必要がなく、海底BSに設置されたケーソン100からカバー部材140を取り外す必要もない。
【0081】
さらに、上記形態では鉱物回収タンカー400が配管130からケーソン100のバイオリーチング液BLを回収してから、新規のバイオリーチング液BLを配管130からケーソン100に注入することを例示した。
【0082】
しかし、ケーソン100と洋上ブイ200とに二本の配管(図示せず)を並列に連結しておき、一方の配管からケーソン100のバイオリーチング液BLを回収しながら、他方の配管からケーソン100に新規のバイオリーチング液BLを注入してもよい。
【0083】
この場合、一対の配管をケーソン100の上部と下部とに連結しておき(図示せず)、比重が小さいバイオリーチング液BLをケーソン100の上部の配管から回収するとともに比重が大きい新規のバイオリーチング液BLを下部の配管から注入する、または、比重が大きいバイオリーチング液BLをケーソン100の下部の配管から回収するとともに比重が小さい新規のバイオリーチング液BLを上部の配管から注入することにより、新規のバイオリーチング液BLの混入を抑制しながら鉱物資源MRを採取したバイオリーチング液BLを良好に回収することもできる。
【0084】
さらに、上記形態ではケーソン100にイオンセンサ110とともにCCDカメラ120が搭載されていることを例示した。しかし、このCCDカメラ120の搭載を省略することも可能である。
【0085】
また、上記形態ではケーソン100のイオンセンサ110およびCCDカメラ120と洋上ブイ200の無線送信機210およびGPS端末220とが、毎日一回などの周期で自動的に稼働することを例示した。
【0086】
しかし、洋上ブイ200に常時稼働する無線受信機を搭載しておき、データセンタ300から遠隔操作によりケーソン100のイオンセンサ110や洋上ブイ200の無線送信機210などを稼働させてもよい。
【0087】
この場合、ケーソン100のイオンセンサ110や洋上ブイ200の無線送信機210などをデータセンタ300の所望のタイミングで稼働させることができるので、鉱物資源MRごとに所用時間が相違する確認作業を効率化することが期待できる。
【0088】
さらに、上記形態ではケーソン100と洋上ブイ200とが一対一に連結されていることを例示した。しかし、一個の洋上ブイ200に複数のケーソン100が連結されていてもよい。この場合、鉱物資源MRを析出する広大な海底BSに複数のケーソン100を設置しても、その複数のケーソン100に一個の洋上ブイ200で対応することができる。
【0089】
また、上記形態では洋上ブイ200に電力生成手段として、太陽光で電力を生成する太陽電池パネル230が搭載されていることを例示した。しかし、このような電力生成手段として、波浪で電力を生成する機構、干満差で電力を生成する機構、海底BSと海面SSとの温度差で電力を生成する機構、等が搭載されていてもよい(何れも図示せず)。
【0090】
同様に、海底BSと海面SSとの温度差で電力を生成する機構、海流で電力を生成する機構、海底熱水鉱床の温度で電力を生成する機構、等が電力生成手段としてケーソン100に搭載されていてもよい(何れも図示せず)。
【0091】
また、上記形態では、事前に鉱物資源MRの存在がマッピングされている海底BSにケーソン100が設置され、ケーソン100ごとに実際の鉱物資源MRの検出状態情報を結果記憶手段が記憶することのみ例示した。
【0092】
しかし、上述のように記憶されたケーソン100ごとの検出状態情報から鉱物資源MRの実際の採取状態を新規にマッピングする資源マッピング部(図示せず)を、データセンタ300のデータベースサーバ320が有してもよい。
【0093】
このように作成される鉱物資源マップ(図示せず)は、実際の鉱物資源MRの採掘可否状態を反映しているので、例えば、より効率的な鉱物資源MRの採掘などに利用することができる。
【0094】
さらに、上述のように鉱物資源MRの存在がマッピングされている従来の鉱物資源マップと、実際の採掘状況を反映した新規の鉱物資源マップとを、比較することにより、例えば、鉱物資源MRが多量に埋蔵されていると予想されていた地域から実際には少量の鉱物資源MRしか採掘されないことや、鉱物資源MRが少量しか埋蔵されていないと予想されていた地域から実際には多量の鉱物資源MRが採掘されること、などの判明が期待される。
【0095】
さらに、上記形態ではバイオリーチング液BLが充分なイオン濃度まで鉱物資源MRを採取したときに、これがイオンセンサ110やCCDカメラ120の検出状態情報としてデータセンタ300のデータベースサーバ320まで無線送信されると、その検出状態情報に基づいて、鉱物回収タンカー400がバイオリーチング液BLの回収作業を実行することを例示した。
【0096】
しかし、バイオリーチング液BLの流出や死滅などがイオンセンサ110やCCDカメラ120の検出状態情報としてデータベースサーバ320まで無線送信されると、その検出状態情報に基づいて、鉱物回収タンカー400がバイオリーチング液BLの補充や交換などのメンテナンス作業を実行するようなことも想定できる。
【0097】
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0098】
100 ケーソン
110 イオンセンサ
120 CCDカメラ
130 配管
131 取水口
140 カバー部材
200 洋上ブイ
210 無線送信機
220 GPS端末
230 太陽電池パネル
240 蓄電池
250 通電ケーブル
300 データセンタ
310 無線受信機
320 データベースサーバ
321 無線受信手段
322 情報記憶手段
323 情報比較手段
324 情報出力手段
330 無線通信衛星
400 鉱物回収タンカー
410 ポンプバルブ
1000 鉱物採取システム
BL バイオリーチング液
BS 海底
MR 鉱物資源
SS 海面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物資源を採取するバイオリーチング液を収容して海底に設置されるケーソンと、
前記ケーソンに搭載されていて前記バイオリーチング液による前記鉱物資源の採取状態を検出する状態検出手段と、
前記ケーソンの前記状態検出手段と結線されていて海面に浮遊する洋上ブイと、
前記洋上ブイに搭載されていて前記状態検出手段の検出状態情報を無線送信する無線送信手段と、
無線送信される前記検出状態情報を無線受信する無線受信手段と、
無線受信された前記検出状態情報を前記ケーソンごとに記憶する結果記憶手段と、
を有する鉱物採取システム。
【請求項2】
前記洋上ブイに搭載されていて現在位置情報を検出するGPS端末を、さらに有し、
前記無線送信手段は、前記検出状態情報と前記現在位置情報とを無線送信し、
前記無線受信手段は、前記検出状態情報と前記現在位置情報とを無線受信し、
前記結果記憶手段は、前記ケーソンごとに前記検出状態情報と前記現在位置情報とを記憶する請求項1に記載の鉱物採取システム。
【請求項3】
前記ケーソンは、前記鉱物資源を析出する前記海底に設置され、
前記バイオリーチング液は、前記海底から析出する前記鉱物資源を採取し、
前記状態検出手段は、前記検出状態情報として前記バイオリーチング液中の前記鉱物資源のイオン濃度を検出する請求項1または2に記載の鉱物採取システム。
【請求項4】
前記ケーソンは、前記鉱物資源を析出する前記海底に設置され、
前記バイオリーチング液は、前記海底から析出する前記鉱物資源を採取し、
前記状態検出手段は、前記検出状態情報として前記バイオリーチング液により前記鉱物資源が採取される前記海底の画像を撮像する請求項1ないし3の何れか一項に記載の鉱物採取システム。
【請求項5】
前記ケーソンと前記洋上ブイとに連結されている配管と、
前記ケーソンの内部で前記鉱物資源を採取した前記バイオリーチング液を前記配管で前記洋上ブイから回収する鉱物回収手段とを、
さらに有する請求項3または4に記載の鉱物採取システム。
【請求項6】
前記洋上ブイに搭載されていて電力を生成する電力生成手段と、
生成された前記電力を前記状態検出手段と前記無線送信手段とに供給する電力供給手段とを、
さらに有する請求項1ないし5の何れか一項に記載の鉱物採取システム。
【請求項7】
前記ケーソンは、事前に前記鉱物資源の存在がマッピングされている前記海底に設置され、
前記結果記憶手段は、前記ケーソンごとに実際の前記鉱物資源の前記検出状態情報を記憶し、
記憶された前記ケーソンごとの前記検出状態情報から前記鉱物資源の実際の前記採取状態を新規にマッピングする資源マッピング手段を、さらに有する請求項1ないし6の何れか一項に記載の鉱物採取システム。
【請求項8】
バイオリーチング液を収容したケーソンを海底に設置し、
前記ケーソンに搭載されている状態検出手段で前記バイオリーチング液の状態を検出し、
前記ケーソンの前記状態検出手段と結線されている洋上ブイを海面に浮遊させ、
前記洋上ブイに搭載されている無線送信手段で前記状態検出手段の検出状態情報を無線送信し、
無線送信される前記検出状態情報を無線受信手段で無線受信し、
無線受信された前記検出状態情報を前記ケーソンごとに結果記憶手段で記憶する、鉱物採取方法。
【請求項9】
前記ケーソンは、前記鉱物資源を析出する前記海底に設置され、
前記バイオリーチング液は、前記海底から析出する前記鉱物資源を採取し、
前記状態検出手段は、前記検出状態情報として前記バイオリーチング液による前記鉱物資源のイオン濃度を検出する請求項8に記載の鉱物採取方法。
【請求項10】
前記ケーソンと前記洋上ブイとに配管を連結しておき、
前記ケーソンの内部で前記鉱物資源を採取した前記バイオリーチング液を前記配管で前記洋上ブイから鉱物回収手段により回収する、請求項9に記載の鉱物採取方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−157795(P2011−157795A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−22795(P2010−22795)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】