説明

鉱石内のカルシウムエレメントの分析、検出方法

本発明は、鉱石内のカルシウムエレメントの含有量決定方法である。鉱石を加熱下で塩酸と硝酸によって分解し、過塩素酸を加え、冷却し、塩を溶かすため少量の水を加えて溶液を沸とうし、冷却し、一定量に希釈し、乾燥濾紙を通して濾過して乾燥ビーカーに入れ、トリエタノールアミンによって干渉イオンからマスクし、KOHによって溶液のpH値を調節し、カルセイン−チモールフタレイン アミンを指示薬として用い、EDTA滴定によりカルシウム含有量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉱石内のカルシウムエレメント分析、検出方法、特に鉱石内のカルシウム含有量を定めるための分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機器分析と従来の化学分析は主としてカルシウム含有量を定めるために用いられている。機器分析は分析感度を向上するために用いられるが、炭酸塩のカルシウム含有量は多くの場合より高く、従って、測定誤差が大きく精度は低下する。化学分析は主としてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)錯滴定曲線及び過マンガン酸カリウム容量測定方法によって成される。最近は、EDTA錯滴定が通常のカルシウム含有量を定めるために一般に用いられているが、カルシウムイオン含有量の特別な比のための好ましい指示薬を選ぶ必要があり、また、干渉エレメントの含有量に応じて好ましいマスク剤を選ぶ必要がある。この化学分析方法においては、不純エレメントからのカルシウムの分離を促進するためアンモニウム塩を加える必要があり、その促進のためには2時間以上の長い時間が必要となり、複数回の濾過と洗浄及び一連の錯不純物分離工程が必要となり、そのために多くの試薬が必要となり、コスト高、長い工程及び操作効率の低下を生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の欠点を除くようにしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の目的は、鉱石内のカルシウムエレメント含有量を単純、急速且つ正確に定める分析方法を得るにある。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明においては、サンプルを塩酸、硝酸によって分解し、くん煙が出る(smoking)迄過塩素酸によって処理し、メスフラスコに移して一定の量を取り出し、乾燥濾紙を通してタングステンやモリブデン等の不純エレメントを除去してから乾燥ビーカーに入れ、濾過液の所望量を取り出し、鉄、マンガン、アルミニウム等の干渉イオンをマスクするためこれにトリエタノールアミンを加え、水酸化カリウムでpH値を調節し、混合指示薬としてカルセイン−チモールフタレインを加えカルシウムを直接標準EDTA溶液で滴定する。本発明の工程においては、
【0006】
(1)サンプルを加熱処理するためこれに塩酸と硝酸とを加え、くん煙が出る迄過塩素酸を加え、冷却後沸とうによって塩が溶けるよう少量の水を加え、
【0007】
(2)テスト溶液を冷却後所望のメスフラスコに移して一定量の溶液を取り出し、タングステンとモリブデンのような不純エレメントからカルシウムを分離するため乾燥濾紙を通して濾過してから乾燥ビーカーに入れ、
【0008】
(3)濾過液の所望量を計量し、干渉イオンをマスクするためこれにトリエタノールアミンを加え、
【0009】
(4)水酸化カリウムで溶液のpH値を調節し、
【0010】
(5)混合指示薬としてカルセイン−チモールフタレインを用い、
【0011】
(6)標準EDTA溶液でカルシウム含有量を直接滴定し、分析結果を計算する。
【0012】
上記工程(1)において加熱処理の間に用いる塩酸は1.19g/mlの濃度の濃縮塩酸であり、硝酸が1.42g/mlの濃度の濃縮硝酸であり、過塩素酸が1.67g/mlの濃度の濃縮酸である。
【0013】
上記工程(2)において一定量のテスト溶液を取り出した後、乾燥濾過を介して乾燥ビーカーに入れ、初めの5〜10mlの濾液を捨てる。上記工程(3)において鉄、アルミニウム、マンガン、等の干渉イオンをマスクするためのマスク剤は濃度30%〜50%のトリエタノールアミン溶液である。
【0014】
上記工程(4)において溶液のpH値は、100〜200g/lの濃度の水酸化カリウムにより調節する。
【0015】
上記工程(5)においては指示薬としてカルセイン−チモールフタレイン混合指示薬を用いる。
【0016】
上記工程(6)における滴定のための標準EDTA溶液の濃度は0.02〜0.03モル/リットルである。
【0017】
本発明方法で用いる標準溶液の調合と校正は以下の通りである。
【0018】
(1)標準カルシウム溶液
【0019】
過乾燥カルシウム炭酸塩(濃度99.95%以上)の正確に計量された2.4972グラムを250mlのビーカーに入れ、10mlの塩酸溶液(1+1)を加えて溶かし、1〜2分間沸とうして二酸化炭素を除去し、冷却して容積1000mlのメスフラスコに移し、水で薄め十分に振とうする。この溶液は1ミリリットル当り1.0ミリグラムのカルシウムを含有する。
【0020】
(2)標準EDTA溶液の調合と校正
【0021】
調合:重量15〜20グラムのNa2EDTAを200mlの熱水に溶かし、濾過し、冷却し、次いで2000mlに薄め、十分に混合し、濃度を0.02〜0.03モル/リットルの溶液に調合する。
【0022】
校正:10.00mlの標準カルシウム溶液(1.0mg/ml)を計量し、250mlのビーカーに入れ、水で薄め100mlとする。本発明においては次の工程を実行する。
【0023】
カルシウムのための標準EDTA溶液の滴定量Tは

で計算する。
【0024】
ここでTはCa(g/ml)のための標準EDTA溶液の滴定量、
【0025】
ρは標準カルシウム溶液の濃度(g/ml)、
【0026】
3 は計算された標準カルシウム溶液の容積(ml)、
【0027】
4 は校正中に消費される標準EDTA溶液の容積である。
【0028】
本発明方法においては、分析結果は以下の滴定方法により計算する。
【0029】

【0030】
ここでTはCa(g/ml)のための標準EDTA溶液の滴定量、
【0031】
Vは滴定中に消費される標準EDTA溶液の容積(ml)、
【0032】
0 はブランクテスト中に消費される標準EDTA溶液の容積(ml)、
【0033】
m はサンプルサイズ(g)、
【0034】
1 はテスト溶液の合計容積(ml)、
【0035】
2 は用いられたテスト溶液の容積(ml)である。
【0036】
本発明によればカルシウムのための従来の分析方法の欠点、即ち、濾過、洗条及び一連の錯不純物分離工程が複数回必要であり、より多くの試薬が必要であり、コスト高であり、長い工程が必要であり、操作効率が低い等の欠点を除くことができ、鉱石内のカルシウム含有量を単純、急速且つ正確に分析できる。
【実施例1】
【0037】
サンプル決定(サンプルA−0268、A−0269、WJ−101)
【0038】
サンプル0.2000〜1,000グラムを250mlのビーカーにいれ1.19g/mlの濃度の塩酸を10〜15mlを加え、時計ガラスでカバーし、5〜10分間加熱分解し、僅かに冷却し、1.42g/mlの濃度の硝酸を5〜10ml加え、約3〜5mlの溶液が除去される迄加熱分解を続け、僅かに冷却し、1.67g/mlの濃度の過塩素酸を1〜4ml加え、濃いくん煙が出る迄加熱し、冷却し、時計ガラスとビーカーの壁を水で洗い、溶けた塩を分解するため加熱沸とうし、室温に冷却する。
【0039】
上記溶液を好ましいメスフラスコに移し、水を加え十分に振とうし、乾燥濾紙を介して乾燥ビーカーに入れ、初めの5〜10mlの濾液を捨て、始めのビーカーから所望量の濾液を取り出し、100mlの水を加え30%〜50%の濃度のトリエタノールアミン溶液20〜30mlを加え、溶液のpH値を100〜200g/lの濃度の水酸化カリウムにより調節し、カルセイン−チモールフタレイン混合指示薬0.1〜0.2グラムを加え、背景を黒に設定し、濃度0.02〜0.03モル/リットルの標準EDTA溶液で滴定し、ブランクテストも行なった。
【0040】
本発明方法によって3つのサンプルをテストした。各サンプルは同一条件で6回テストした。分析結果は表1に示すように消費された標準EDTAの容量と、カルシウムのための上記標準EDTA溶液の滴定に応じて計算した。テストは中国標準(GB/T6150.5−2008)に応じてなされ、テスト結果はチャンシーリサーチ インステチュート オブ ノン フェラスメタロジィの結果と比較した。
【0041】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)サンプルを加熱処理するためこれに塩酸と硝配とを加え、くん煙が出る迄過塩素酸を加え、冷却し、沸とうにより塩が溶けるよう小量の水を加える工程と、
(2)サンプルの溶液を冷却後100〜250mlのメスフラスコに移して一定量の溶液を取り出し、タングステンとモリブデンのような不純エレメントから少なくともある程度のカルシウムを分離するため乾燥濾紙を通して濾過し乾燥ビーカーに入れ、
(3)濾過液の所望量を計量し、干渉イオンをマスクするためこれにトリエタノールアミンを加え、
(4)水酸化カリウムで溶液のpH値を調節し、
(5)混合指示薬としてカルセイン−チモールフタレインを用い、
(6)標準EDTA溶液でカルシウムの含有量を直接滴定し、分析結果を計算する
工程より成ることを特徴とする鉱石内のカルシウムエレメントの分析、検出方法。
【請求項2】
上記工程(1)における塩酸が1.19g/mlの濃度の濃縮塩酸であり、硝酸が1.42g/mlの濃度の濃縮硝酸であり、過塩素酸が1.67g/mlの濃度が濃縮酸であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
タングステンとモリブデンの不純エレメントの一部を上記工程(2)で除去することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
上記工程(3)におけるトリエタノールアミン溶液の濃度が30%〜50%であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
上記工程(4)における溶液のpH値が、100〜200g/lの濃度の水酸化カリウムにより調節されることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
上記工程(5)において混合指示薬としてカルセイン−チモールフタレインを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
上記工程(6)においてカルシウムエレメントを滴定するための標準EDTA溶液の濃度が0.02〜0.03モル/リットルであることを特徴とする請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2013−509566(P2013−509566A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535585(P2012−535585)
【出願日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【国際出願番号】PCT/CN2009/076285
【国際公開番号】WO2011/050552
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(512114707)チャンシー レア アース アンド レア メタルズ タングステン グループ コーポレーション (3)
【住所又は居所原語表記】No.118,Beijing West Road,Nanchang,Jiangxi 330046, P.R.of China
【Fターム(参考)】