説明

銀めっきされた線材端子を備えた圧入ダイオード

本発明は、特に整流器に使用するための圧入ダイオードであって、ダイオードチップ(7)と、支持体にダイオード(1)を圧入するための、圧入ダイオード(1)の第1の端子を形成するソケットコンタクト(3)と、圧入ダイオード(1)の第2の端子を形成する線材コンタクト(2)とを有している形式のものに関する。良好にはんだ付け可能で耐腐食性の圧入ダイオード(1)は、線材コンタクト(2)に少なくとも部分的に銀層(10)を設け、ソケットコンタクト(3)には有利には銀層(10)を設けないことによって製作され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の形式の圧入ダイオード及びこのような圧入ダイオードを製作するための、請求項5の上位概念に記載の形式の方法に関する。
【0002】
中・高出力用のダイオードを「圧入ダイオード」として構成することは公知である。これらの圧入ダイオードはとりわけ整流器用途に使用され且つ今日の自動車用発電機のブリッジ整流器の重要な構成部材である。
【0003】
公知の整流ダイオードは主として圧入ダイオードの第1の端子を形成するソケットコンタクトと、圧入ダイオードの第2の端子を形成する「線材コンタクト」と、これらのコンタクト間にはんだ付けされた本来のダイオード半導体チップとを有している。ソケットコンタクトは、支持体エレメントの切欠きにダイオードを圧入するために役立つ。線材コンタクトには例えばプリント配線板がはんだ付けされ得る。
【0004】
図1には従来技術から公知の、ソケットコンタクト3とダイオードチップ7と線材コンタクト2とを備えた圧入ダイオードが示されている。認識されるように、ソケットコンタクト3は同時に支持体エレメントとの熱的且つ電気的な接続部を形成する比較的広幅の圧入区分を有している。ダイオードチップ7は、例えばはんだ付け又は溶接によってソケットコンタクト3と線材コンタクト2との間で固定されている。各はんだ層は符号8によって示されている。
【0005】
線材コンタクト2はダイオードチップ7を取り付けるための比較的広幅の線材ヘッド5と、外部からアクセス可能な、比較的細長い線材軸部4とを有している。例えば自動車用発電機の場合は、線材軸部4がステータコイルの1位相に接続される。
【0006】
ソケットコンタクト3も線材コンタクト2も、一般には銅から製作されており且つニッケル層6によって被覆されており、このニッケル層6は特に銅と支持体エレメントの材料(大抵はアルミニウム)との間の腐食シールドとして働く。更に、圧入ダイオード1はプラスチックカバー9によってカバーされている。
【0007】
上で述べたように、線材コンタクト2ははんだ付け又は溶接によってプリント配線板に固定され得る。線材コンタクトをはんだ付けしようとする場合は、ダイオード1の金属表面全体を電気すずめっきする。このすずめっきは一般に、圧入ダイオード1がばら荷として電気めっき式でコーティングされるバレルすずめっき法で行われる。この方法は特に簡単且つ廉価である。
【0008】
但し、例えば自動車等におけるラフな周辺条件下での運転では、すずめっきされた圧入ダイオードにしばしば問題が発生する。
【0009】
即ち、自動車用発電機の整流器における著しい温度変化及び振動負荷によって、ソケットコンタクトのすず表面と、ダイオードが圧入された支持体エレメントの壁との間に微細運動が生ぜしめられる。従って、支持体エレメントとしてアルミニウム冷却薄板を使用した場合は擦過腐食を生ぜしめ、その結果、圧入ダイオード1の過熱及び故障をもたらす恐れのある大きな接触抵抗が考慮される。
【0010】
従って本発明の課題は、ソケットコンタクトが擦過腐食し難く且つ線材コンタクトが良好にはんだ付け可能な表面を有している圧入ダイオード若しくは該圧入ダイオードの製作法を提供することである。更に、当該の圧入ダイオードはできるだけ廉価に製作され得るのが望ましい。
【0011】
この課題は本発明に基づいて、請求項1及び請求項5記載の構成手段によって解決される。本発明の別の構成は従属請求項に記載されている。
【0012】
本発明の本質的な視点は、圧入ダイオードの線材コンタクトに、少なくとも部分的に銀製の表面層を設け且つソケットコンタクトを1材料から製作するか、若しくはソケットコンタクトに支持体エレメントの材料と相俟ってできるだけ少ない腐食を生ぜしめる金属層を設けるという点にある。銀コーティングは特に良好なはんだ付け特性を有しており、更に約300℃以上の温度の融点を有している。この温度は、圧入ダイオードの製作中、例えばソケットコンタクトと線材コンタクトとの間にダイオードチップをはんだ付けする際又はカバーの硬化時に発生する。従って、銀は他の可能な材料に比べて有利である。
【0013】
ソケットコンタクトは、アルミニウムに対する電気化学的なポテンシャルの大きな差に基づいて有利には銀めっきされず、例えばニッケル層が設けられている。ニッケルは、銀よりもはるかに入手し易く延いてはアルミニウムと相俟って腐食し難い傾向にある。但し、ソケットコンタクトと線材コンタクトの異なる表面コーティングの欠点は、圧入ダイオードの銀めっきが廉価なばら荷法では実施され得ないという点にある。
【0014】
従って、線材コンタクトは有利には個別に(圧入ダイオードを組み立てる前に)銀めっきされる。この場合、有利には線材コンタクト全体ではなく、線材コンタクトの一部のみが銀めっきされる。本発明の有利な構成では、ダイオードチップの取付けのために使用される線材コンタクトの区分には銀層は設けられていない。線材コンタクトを完全に銀めっきすることは大抵不都合である。それというのも、銀は、ダイオードチップをはんだ付けするために使用されるはんだと相俟って、例えばプラスチックによるカバー等の、圧入ダイオードの引き続く加工のためには融点が低すぎる合金を形成するからである。従って、ダイオードチップを取り付けるための領域は、有利には切り欠かれる。
【0015】
部分銀めっきされた線材コンタクトを製作するためには、例えば線材コンタクトの線材軸部を下向きにフレームにセットして、この線材軸部を電気めっき槽に浸漬する。
【0016】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。図1の説明に関しては明細書冒頭を参照されたい。
【0017】
図2に示した圧入ダイオードのコンタクトには付加的な銀層10が設けられている。当該の圧入ダイオード1は主としてソケットコンタクト3と、線材コンタクト2と、これらのコンタクト2,3間にはんだ付けされた本来のダイオード半導体チップ7とを有している。この場合、はんだ層は符号8によって示されている。
【0018】
ソケットコンタクト3は、例えばアルミニウム薄板等の支持体エレメントに圧入するための拡張区分を有している。圧入によって同時に永続的で熱的且つ電気的なコンタクトが製作される。
【0019】
線材コンタクト2はダイオードチップ7との接続に役立つ線材ヘッド5と、線材軸部4とを有しており、この線材軸部4において圧入ダイオード1は例えばプリント配線板と接続可能である。
【0020】
ソケットコンタクト3と線材コンタクト2とは、ニッケル層6の設けられた銅から成っている。ダイオードチップ7を保護するために、圧入ダイオード1の中心区分はプラスチック9によってカバーされている。
【0021】
このカバー9から突出するコンタクト領域には銀層10が設けられている。この場合、ニッケル層は銅と銀層10との間の拡散シールドとして働く。銀層10を製作するためには、ダイオードを例えばバレル法でばら荷として電気めっきしてコーティングすることができる。
【0022】
但し、例えばアルミニウム等の特定の材料から成る支持体エレメントを使用する場合、この実施例は、銀と支持体材料との間に著しい腐食が発生する恐れがあるという欠点を有している。
【0023】
この問題が発生しない本発明の別の実施例が図3及び図4に示されている。
【0024】
図3には部分銀めっきを備えた線材コンタクト2が示されている。この場合、銀めっきは線材コンタクト2の線材軸部4にしか位置しておらず、ダイオードチップ7の取り付けられる区分5には位置していない。
【0025】
このような部分銀めっきされた線材コンタクト2は、例えば線材コンタクト2を個別に(線材軸部4を下向きにして)フレームにセットし、線材軸部4を電気めっき槽に浸漬することによって製作可能である。その後、線材コンタクト2は残りのコンポーネント3,7と接合されて、プラスチックによりカバーされる。この場合、ソケットコンタクト3は銀めっきされておらず、ニッケル層6の設けられた例えば銅から成っている。これにより、アルミニウム製の支持体エレメントを使用した場合にニッケル層6とアルミニウムとの間の電食が、銀10とアルミニウムとの間の電食よりも大幅に少なくなる。
【0026】
その結果、極めて良好にはんだ付け可能な線材コンタクト2と、腐食問題無しでアルミニウム支持体に圧入可能なソケットコンタクト3とを備えた圧入ダイオードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】従来技術から公知の圧入ダイオードを示した図である。
【図2】本発明の第1実施例に基づく銀コーティングを備えた圧入ダイオードを示した図である。
【図3】部分的に銀コーティングを有する線材コンタクトを示した図である。
【図4】部分的に銀めっきされた線材コンタクトと銀めっきされていないソケットコンタクトとを備えた圧入ダイオードを示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に整流器に使用するための圧入ダイオードであって、ダイオードチップ(7)と、支持体にダイオード(1)を圧入するための、圧入ダイオード(1)の第1の端子を形成するソケットコンタクト(3)と、圧入ダイオード(1)の第2の端子を形成する線材コンタクト(2)とを有している形式のものにおいて、
線材コンタクト(2)に少なくとも部分的に銀層(10)が設けられていることを特徴とする、銀めっきされた線材端子を備えた圧入ダイオード。
【請求項2】
ダイオードチップ(7)を取り付けるために使用される線材コンタクト(2)の区分(5)に銀層(10)が設けられていない、請求項1記載の圧入ダイオード。
【請求項3】
ソケットコンタクト(3)に銀層(10)が設けられていない、請求項1又は2記載の圧入ダイオード。
【請求項4】
線材コンタクト(2)がニッケル層(6)を有しており、該ニッケル層に銀層(10)が被着されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の圧入ダイオード。
【請求項5】
ダイオードチップ(7)と、支持体にダイオード(1)を圧入するための、圧入ダイオード(1)の第1の端子を形成するソケットコンタクト(3)と、圧入ダイオード(1)の第2の端子を形成する線材コンタクト(2)とを備えた圧入ダイオードの製作法において、
線材コンタクト(2)を個別化した状態で少なくとも部分的に銀層(10)を設け、その後、銀めっきした線材コンタクト(2)とソケットコンタクト(3)とダイオードチップ(7)とを互いに結合することを特徴とする、圧入ダイオードの製作法。
【請求項6】
ダイオードチップ(7)を取り付けるために使用される線材コンタクト(2)の区分(5)に銀層(10)を設けない、請求項5記載の方法。
【請求項7】
ソケットコンタクト(3)に銀層(10)を設けない、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
線材コンタクト(2)を銅から製作し、該銅にニッケル層(6)及び銀層(10)を設ける、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2006−527913(P2006−527913A)
【公表日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515686(P2006−515686)
【出願日】平成16年6月19日(2004.6.19)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001285
【国際公開番号】WO2005/020322
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】