説明

銀ペーストの製造方法、電気光学装置の製造、溶液分離方法、および分離用容器

【課題】比重の異なる2つの溶液を含有する混合溶液を遠心分離法を用いて混合溶液の分離を行い、その後、容器を傾けて溶液を別の容器へ移し替える際に、軽い溶液に重い溶液が混入しないで分離できる方法を提供する。
【解決手段】分離用容器1および分離用容器1の基体2内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、混合溶液を比重の軽い溶液L1と比重の重い溶液H1とに分離し、仕切板3により分離用容器1の基体2内の一部を仕切ることにより、混合溶液から、いずれかの領域を抽出する際、この領域以外の他の領域を仕切板3で堰き止め、いずれかの領域を比重または密度の均一な銀ペーストとして得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀ペーストの製造方法、電気光学装置の製造、溶液分離方法、および容器混合溶液を遠心分離することに用いられる分離用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、混合溶液の分離方法として、遠心分離法が知られている。この遠心分離法では、シリンジなどの容器およびこの容器内に収納された混合溶液を回転させ、このとき回転軸垂直方向に働く遠心力により、混合溶液を、この混合溶液に含まれる比重の異なる2つ以上の領域に分離する。これにより、溶媒に銀パウダーおよびファイバなどを含む混合溶液から、所望の比重または密度の銀ペーストを得る。このほかに、混合溶液を分離する方法に関連しては、特許文献1に記載の分離方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−265606号公報(12頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、遠心分離法を用いた混合溶液の分離では、たとえば、図10(a)に示す従来の移し替え動作を示す概略動作図のように、容器201内で、比重の異なる2つの溶液H,Lを含有する混合溶液、たとえば比重の重い溶液Hと比重の軽い溶液Lとに分離される。しかし、分離された溶液H,Lを、それぞれ別々に取り出すことは困難である。たとえば、図10(b)に示すように、容器201を傾けて比重の軽い溶液Lを別の容器111へ移し替える際、比重の軽い溶液Lに比重の重い溶液Hが混入してしまうという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものである。以下の形態または適用例により実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる銀ペーストの製造方法は、溶剤、銀パウダー、およびグラスファイバを混合し混合溶液を製造する溶液混合工程と、筒状で一端が閉じ他端が開放された基体および該基体内の一部を仕切る仕切板を備えた分離用容器に前記混合溶液を注ぎ込む混合溶液注入工程と、前記分離用容器を旋回させて前記混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離する混合溶液分離工程と、比重の異なる2つ以上の前記領域のいずれかの領域に含まれる溶液を抽出する分離溶液抽出工程とを含むことを要旨とする。
【0007】
これによれば、分離用容器および分離用容器の基体内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、混合溶液を、比重の異なる2つ以上の領域に分離する。そして、仕切板により分離用容器の基体内の一部を仕切られるので、分離された2つ以上の領域のうち、いずれかの領域に含まれる溶液を抽出する際、この領域以外の他の領域に含まれる溶液を仕切板により堰き止めることができる。このため、抽出される溶液に、比重の異なる他の溶液が混入する不具合を抑制することができる。これにより、比重または密度の均一な銀ペーストとして得ることができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる銀ペーストの製造方法において、前記仕切板は、可撓性を有するスリットを放射状に備えることが好ましい。
【0009】
これによれば、分離用容器および分離用容器の基体内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、放射状のスリットにより複数に分割された仕切板が反って、基体内で堰き止める部分が小さくなる。このため、混合溶液が基体内で移動しやすくなり、混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離することが容易となる。そして、旋回を停止した後で、遠心力が働いていないとき、仕切板の反りが減り、基体内で堰き止める部分を拡大する、または基体内を2つに分割する。このため、より確実に比重の異なる2つ以上の領域に分離することができる。これにより、2つ以上の領域から、いずれかの領域に含まれる溶液を抽出する際、この領域以外の他の領域に含まれる溶液を仕切板により堰き止めることができる。これにより、比重または密度の均一な銀ペーストとして得ることができる。
【0010】
[適用例3]本適用例にかかる電気光学装置の製造方法において、第1の電極を備えた第1の基板および第2の電極を備えた第2基板に、上記記載の銀ペーストの製造方法によって製造された銀ペーストを配置し、該第1の電極または該第2の電極と導通させる塗布工程と、前記第1の電極と前記第2の電極とを前記銀ペーストを介して電気的に接続し、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程とを含むことを要旨とする。
【0011】
これによれば、比重または密度が均一な銀ペーストを配置するので、配置または塗布する量のバラツキが発生することを抑制することができる。これにより、第1の電極と第2の電極とを、短絡または断線を発生させることなく、銀ペーストを介して第1の電極と第2の電極とを電気的に接続することができる。
【0012】
[適用例4]本適用例にかかる溶液分離方法において、筒状で一端が閉じ他端が開放された基体および該基体内の一部を仕切る仕切板を備えた分離用容器に混合溶液を注ぎ込む混合溶液注入工程と、前記分離用容器を旋回させて前記混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離する混合溶液分離工程と、比重の異なる2つ以上の前記領域のいずれかの領域に含まれる溶液を抽出する分離溶液抽出工程とを含むことを要旨とする。
【0013】
これによれば、分離用容器および分離用容器の基体内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離し、仕切板により分離用容器の基体内の一部を仕切るので、分離された2つ以上の領域から、いずれかの領域を抽出する際、この領域以外の他の領域を仕切板により堰き止め、いずれかの領域を比重または密度の均一な銀ペーストとして得ることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる混合溶液を遠心分離することに用いられる分離用容器において、筒状で一端が閉じ他端が開放された基体と、前記基体内の一部を仕切る仕切板とを備えることを要旨とする。
【0015】
これによれば、分離用容器および分離用容器内に収納された混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に遠心分離し、仕切板により分離用容器内の一部を仕切るので、分離された2つ以上の領域から、いずれかの領域を抽出することができる。
【0016】
[適用例6]上記適用例にかかる分離用容器において、前記仕切板は、放射状にスリットを備え、可撓性を有していることが好ましい。
【0017】
これによれば、遠心力により、放射状のスリットにより複数に分割された仕切板が反って、基体内で堰き止める部分が小さくなるので、混合溶液が基体内で移動しやすくなり、比重の異なる2つ以上の領域に分離することが容易となる。そして、旋回を停止した後で、遠心力が働いていないとき、仕切板の反りが減り、基体内で堰き止める部分を拡大する、または基体内を2つに分割するので、より確実に比重の異なる2つ以上の領域に分離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、実施形態の分離用容器を一例として挙げて説明する。
(第1実施形態)
【0019】
図1は、第1実施形態にかかる分離用容器の概略図である。図2は、第1実施形態にかかる分離用容器を用いた銀ペーストの製造方法を示すフローチャートである。図3は、第1実施形態にかかる分離用容器を用いた遠心分離装置の概略断面図である。図4は、第1実施形態にかかる分離用容器による移し替え動作を示す概略動作図である。
以下、第1実施形態にかかる分離用容器について、図1から図4を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、分離用容器1は、基体2と仕切板3とを備えている。
基体2は、たとえば円筒状で、一端が閉じ、他端が開放されている。これにより、基体2内に、収納部4を有している。そして、基体2は、プラスティック、ガラス、または金属からなる。基体2の形状は、液滴吐出に用いるディスペンサまたはシリンジなどでかつ一端が閉じているものであってもよく、また、試験管などのようなものであってもよい。
【0021】
基体2内の収納部4には、混合溶液が収納されている。この混合溶液は、アクリル系またはエポキシ樹脂からなる溶剤、φ0.1μm程度の銀(Ag)パウダー、およびφ0.3μm程度の円柱状または棒状のグラスファイバを含有している。このグラスファイバには、金(Au)めっきが施されている。そして、この混合溶液には、比重の異なる2つ以上の領域、たとえば比重の軽い溶液L1と比重の重い溶液H1とが混在している。
【0022】
仕切板3は、基体2内の収納部4に、たとえば環状に形成されている。仕切板3は、収納部4の一部を仕切っている。仕切板3は、可撓性を有するプラスティック、金属、またはゴムからなる。なお、仕切板3は、環状に限らず、半円状などであってもよく、収納部4の少なくとも一部を仕切っていればよい。
【0023】
以下、分離用容器を用いた銀ペーストの製造方法について、図2を参照して説明する。
まず、溶液混合工程(S1)を実施する。アクリル系またはエポキシ樹脂からなる溶剤に、銀(Ag)パウダー、およびグラスファイバを、混ぜ合わせる。これにより、混合溶液を得る。
【0024】
次に、混合溶液注入工程(S2)を実施する。混合溶液を、分離用容器1に注ぎ込み、基体2内の収納部4に収納する。
【0025】
そして、混合溶液分離工程(S3)を実施する。図3に示す遠心分離装置20を用いる。図3に示すように、遠心分離装置20は、回転軸21とテーブル22とを備えている。回転軸21とテーブル22とは、プラスティックまたは金属からなる。回転軸21は、テーブル22に固定されている。
【0026】
回転軸21は、モーターなどの回転駆動機構を有している。そして、回転軸21を、たとえば矢印で示す方向に回転することにより、テーブル22を回転させる構造となっている。
【0027】
テーブル22は、分離用容器1が、少なくとも1つ以上設置する構造になっている。図3(a)では、分離用容器1が回転軸21の回転する軸に対して、傾斜して設置されている。また、図3(b)に示すように、分離用容器1の回転軸21に対する設置姿勢は、回転軸21の回転する軸に対して平行であってもよく、この場合、図3(c)に示すように、回転軸21の回転による遠心力により、分離用容器1が傾斜する機構を有していてもよい。
【0028】
テーブル22に分離用容器1を設置し、遠心分離装置20を駆動させることで、分離用容器1および基体2内の収納部4に収納された混合溶液を回転、または旋回させる。このとき、回転軸垂直方向に働く遠心力により、混合溶液を基体2内の収納部4で、混合溶液に含まれる比重の異なる2つ以上の領域、たとえば比重の軽い溶液L1で満たされた領域と比重の重い溶液H1で満たされた領域とに分離される。ここで、比重の軽い溶液L1には、溶剤、銀(Ag)パウダー、およびグラスファイバが均一に拡散している。そして、比重の重い溶液H1には、銀(Ag)パウダーおよびグラスファイバが塊となり、溶剤と混ざっている。
【0029】
その後、分離溶液抽出工程(S4)を実施する。図4に示すように、分離用容器1から、比重の軽い溶液L1を、別の容器11へ移し替える。このようにして、比重の軽い溶液L1を混合溶液から、比重の軽い溶液L1を抽出し、銀ペーストとして得る。
【0030】
ここで、溶液L1を移し替えるために分離用容器1を傾けると、溶液H1に含まれる凝集物も注ぎ口に向かって移動するが、基体2内の収納部4に設けられた仕切板3によってこの凝集物を堰き止めることができる。このため、分離溶液抽出工程(S4)において、溶液L1と溶液H1とが混合される不具合を抑制することができる。これにより、比重の異なる溶液L1,H1のうち、溶液L1のみを選択的に容器11に移し替えることができる。
【0031】
以下、この銀ペーストを用いた電気光学装置について、図5を参照して説明する。
図5は、第1実施形態にかかる電気光学装置としての液晶装置を示す概略構成図である。図5(a)は平面図、(b)は(a)のH−H断面図である。
【0032】
液晶装置100は、石英やガラスなどの基板110を含む第1の基板としての素子基板110aと、石英やガラスなどの基板120を含む第2の基板としての対向基板120aとを備えている。素子基板110aと対向基板120aとは、枠状のシール材52を介して互いに対向した状態で貼り合わされている。そして、シール材52によって区画された領域に、液晶50が封入されている。この領域は、表示に寄与する画素と、この画素を構成する画素回路とが形成される領域であり、画素回路領域8aと図示する。また、シール材52は、たとえば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などからなる接着剤であり、グラスファイバまたはガラスビーズなどを含有している。
【0033】
シール材52の外側の領域には、データ線駆動回路101および外部接続端子102が素子基板110aの一辺に沿って形成されている。そして、この一辺に隣接する二辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。データ線駆動回路101および走査線駆動回路104は、基板110上に形成された素子によって構成されている。これらの回路の形成領域を周辺回路領域8bと図示する。対向基板120aの角部においては、素子基板110aと対向基板120aとの間で電気的な導通を取るための上下導通材106が配設されている。この上下導通材106は、上述の銀ペーストからなる。
【0034】
より詳しくは、素子基板110aの液晶50側の面には、第1の電極としての引き回し配線が形成されている。この引き回し配線は、上下導通材106を介して上記共通電極に電気的に接続されている。この引き回し配線は、たとえばデータ線駆動回路101に電気的に接続され、共通電極を駆動させるための信号を、データ線駆動回路101から、図示しない共通電極へ、伝送する役割を果たす。この共通電極は、第2の電極として対向基板120aの液晶50側の面、たとえば略全面に形成されている。そして、この共通電極は、たとえば透光性を有するITO(Indium Tin Oxide)などからなる。
【0035】
以下、上述の銀ペーストを用いた電気光学装置の製造方法について、図6を参照して説明する。図6は、第1実施形態にかかる電気光学装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0036】
まず、塗布工程(S5)を実施する。対向基板120aの角部に、上述の銀ペーストを塗布し、上下導通材106を形成する。そして、グラスファイバまたはガラスビーズなどを含有する紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などの接着剤を塗布し、シール材52を形成する。
【0037】
次に、貼り合わせ工程(S6)を実施する。上下導通材106およびシール材52を形成した側の対向基板120aの面と、共通電極が形成された側の素子基板110aの面とを対向させた状態で、貼り合わせる。そして、上下導通材106およびシール材52の硬化処理を施す。
【0038】
次に、液晶注入工程(S7)を実施する。素子基板110a、対向基板120a、およびシール材52によって区画された領域に、液晶50を注入して封止する。このようにして、液晶装置を得る。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、分離用容器1および分離用容器1の基体2内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離する。たとえば比重の軽い溶液L1と比重の重い溶液H1とに分離する。そして、仕切板3により分離用容器1の基体2内の一部を仕切られるので、分離された2つ以上の領域のうち、いずれかの領域に含まれる比重の軽い溶液L1を抽出する際、この領域以外の他の領域に含まれる比重の重い溶液H1を仕切板3により堰き止めることができる。このため、抽出される比重の軽い溶液L1に、比重の重い溶液H1が混入する不具合を抑制することができる。これにより、比重または密度の均一な軽い溶液L1を、銀ペーストとして得ることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、比重または密度が均一な銀ペーストを配置するので、配置または塗布する量のバラツキが発生することを抑制することができる。これにより、第1の電極と第2の電極とを、短絡または断線を発生させることなく、銀ペーストを介して第1の電極と第2の電極とを電気的に接続することができる。
(第2実施形態)
【0041】
以下、第2実施形態について説明する。
図7は、第2実施形態にかかる分離用容器の概略断面図である。図8は、第2実施形態にかかる分離用容器の部分断面図である。図9は、第2実施形態にかかる分離用容器による移し替え動作を示す概略動作図である。第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付与し、説明を省略する。また、分離用容器を用いた遠心分離装置は、図3に示す遠心分離装置と同様の構成であるため、同一の符号を付与し、説明を省略する。
【0042】
第2実施形態にかかる分離用容器について、図7から図9を参照して説明する。
まず、第2実施形態にかかる分離用容器が、第1実施形態にかかる分離用容器に対して相違する点は、仕切板が可撓性を有し、かつ、仕切板により収納部が2つに分割されることである。
【0043】
図7および図8(a)に示すように、仕切板13は、基体2内の収納部4に形成されている。そして、仕切板13により、基体2内の収納部4を仕切り、収納部4を2つに分割している。この仕切板13は、放射状に複数のスリットを備えている。仕切板13は、プラスティックまたは金属からなり、可撓性を有している。
【0044】
遠心分離装置20を駆動させ、遠心力が加わると、図8(b)に示すように、仕切板13が反る。これにより、2つに分割された収納部4は、繋がる。そして、分離用容器1内の収納部4に収納されている混合溶液が、遠心力により移動可能となる。その後、遠心分離装置20を駆動停止させると、仕切板13は図8(a)に示す状態に戻る。このとき、比重の軽い溶液L1は、基体2内の収納部4の開放されている他端側に、仕切板13によって仕切られる。
【0045】
その後、図9に示すように、分離用容器1から、比重の軽い溶液L1を、別の容器11へ移し替える。
【0046】
以上のように、本実施形態によれば、遠心力により比重の異なる領域、たとえば比重の軽い溶液L1と比重の重い溶液H1とに分離した後に、収納部4の仕切板13により仕切られるので、分離用容器1から比重の軽い溶液L1を、抽出することができる。つまり、別の容器11へ移し替えることができる。このようにして、比重の軽い溶液L1を混合溶液から抽出し、銀ペーストとして得る。
【0047】
以下、第1実施形態と同様に、図6に示す電気光学装置の製造方法のフローチャートを参照して、図5に示す第1実施形態と同様の電気光学装置を得る。
【0048】
以上のように、分離用容器1および分離用容器1の基体2内に収納された混合溶液を旋回させることにより働く遠心力により、放射状のスリットにより複数に分割された仕切板13が反って、基体2内で堰き止める部分が小さくなる。このため、混合溶液が基体2内で移動しやすくなり、混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離することが容易となる。そして、旋回を停止した後で、遠心力が働いていないとき、仕切板13の反りが減り、基体2内で堰き止める部分を拡大する、または基体2内を2つに分割する。このため、より確実に比重の異なる2つ以上の領域に分離することができる。これにより、2つ以上の領域から、いずれかの領域に含まれる溶液を抽出する際、この領域以外の他の領域に含まれる溶液を仕切板により堰き止めることができる。これにより、比重または密度の均一な軽い溶液L1を、銀ペーストとして得ることができる。このため、抽出される比重の軽い溶液L1に、比重の重い溶液H1が混入する不具合を抑制することができる。
【0049】
また、本実施形態によれば、比重または密度が均一な銀ペーストを配置するので、配置または塗布する量のバラツキが発生することを抑制することができる。これにより、第1の電極と第2の電極とを、短絡または断線を発生させることなく、銀ペーストを介して第1の電極と第2の電極とを電気的に接続することができる。
【0050】
なお、上記課題の少なくとも一部を解決できる範囲での変形、改良などは前述の実施形態に含まれるものである。
【0051】
たとえば、分離用容器は円筒形状であるとしたが、角型の筒状であってもよく、筒状であれば、いずれの形状でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】第1実施形態にかかる分離用容器の概略図。
【図2】第1実施形態にかかる分離用容器を用いた銀ペーストの製造方法を示すフローチャート。
【図3】第1実施形態にかかる分離用容器を用いた遠心分離装置の概略断面図。
【図4】第1実施形態にかかる分離用容器による移し替え動作を示す概略動作図。
【図5】第1実施形態にかかる電気光学装置としての液晶装置を示す概略構成図。
【図6】第1実施形態にかかる電気光学装置の製造方法を示すフローチャート。
【図7】第2実施形態にかかる分離用容器の概略断面図。
【図8】第2実施形態にかかる分離用容器の部分断面図。
【図9】第2実施形態にかかる分離用容器による移し替え動作を示す概略動作図。
【図10】従来の移し替え動作を示す概略動作図。
【符号の説明】
【0053】
1…分離用容器、2…基体、3…仕切板、4…収納部、8a…画素回路領域、8b…周辺回路領域、11…容器、13…仕切板、20…遠心分離装置、21…回転軸、22…テーブル、50…液晶、52…シール材、100…液晶装置、101…データ線駆動回路、102…外部接続端子、104…走査線駆動回路、106…上下導通材、110…基板、110a…素子基板、120…基板、120a…対向基板、L,L1…比重の軽い溶液、H,H1…比重の重い溶液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤、銀パウダー、およびグラスファイバを混合し混合溶液を製造する溶液混合工程と、
筒状で一端が閉じ他端が開放された基体および該基体内の一部を仕切る仕切板を備えた分離用容器に前記混合溶液を注ぎ込む混合溶液注入工程と、
前記分離用容器を旋回させて前記混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離する混合溶液分離工程と、
比重の異なる2つ以上の前記領域のいずれかの領域に含まれる溶液を抽出する分離溶液抽出工程とを含むことを特徴とする銀ペーストの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の銀ペーストの製造方法であって、
前記仕切板は、可撓性を有するスリットを放射状に備えることを特徴とする銀ペーストの製造方法。
【請求項3】
第1の電極を備えた第1の基板および第2の電極を備えた第2の基板に、請求項1または2に記載の銀ペーストの製造方法によって製造された銀ペーストを配置し、該第1の電極または該第2の電極と導通させる塗布工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極とを前記銀ペーストを介して電気的に接続し、前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる貼り合わせ工程とを含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
筒状で一端が閉じ他端が開放された基体および該基体内の一部を仕切る仕切板を備えた分離用容器に混合溶液を注ぎ込む混合溶液注入工程と、
前記分離用容器を旋回させて前記混合溶液を比重の異なる2つ以上の領域に分離する混合溶液分離工程と、
比重の異なる2つ以上の前記領域のいずれかの領域に含まれる溶液を抽出する分離溶液抽出工程とを含むことを特徴とする溶液分離方法。
【請求項5】
混合溶液を遠心分離することに用いられる分離用容器であって、
筒状で一端が閉じ他端が開放された基体と、
前記基体内の一部を仕切る仕切板とを備えることを特徴とする分離用容器。
【請求項6】
請求項5に記載の分離用容器であって、
前記仕切板は、放射状にスリットを備え、可撓性を有していることを特徴とする分離用容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−91618(P2009−91618A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262999(P2007−262999)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】