銀塩熱現像感光材料、および銀塩熱現像感光材料の画像形成方法
【課題】本発明の目的は、高感度で低カブリであり、且つ照度不軌特性、生保存性、鮮鋭性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、および該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することにある。
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
【解決手段】支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀は露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩熱現像感光材料、および銀塩熱現像感光材料の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザ・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる銀塩熱現像感光材料に関する技術が注目されている。
【0003】
この技術として、支持体上に有機脂肪酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する銀塩熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
しかし、銀塩熱現像感光材料は現像に関わる素材がすべて銀塩熱現像感光材料に内蔵されているため、湿式処理用感光材料に比べて銀塩熱現像感光材料の現像前の保存性が著しく劣るという悪い欠点があった。
【0005】
銀塩熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀粒子は、熱現像後も残留するので熱現像後の耐光性(画像保存)が必要とされる。そこで感光性ハロゲン化銀粒子としては、熱現像前の露光では現像反応(銀イオン還元剤による銀イオンの還元反応)の触媒として機能し得る潜像を該ハロゲン化銀粒子の表面に形成し、熱現像過程経過後の露光では該ハロゲン化銀粒子の表面より内部に多くの潜像を形成するようになることにより、表面における潜像形成が抑制されるハロゲン化銀粒子であることが好ましい。しかしながら、このように熱現像処理前後で潜像形成機能が変化するハロゲン化銀粒子(熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子)は従来知られていなかった。
【0006】
一般に、感光性ハロゲン化銀粒子が露光されるとハロゲン化銀粒子自身、または感光性ハロゲン化銀粒子表面上に吸着している分光増感色素が光励起されて、自由に移動できる電子を生じるが、この電子はハロゲン化銀粒子表面に存在する電子トラップ(感光中心)または当該粒子の内部にある電子トラップに競争的にトラップ(捕獲)される。従って、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子内部より表面に多く、且つ適当数ある場合には表面に優先的に潜像が形成され、現像可能となる。逆に、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子表面より内部に多く、且つ適当数ある場合には内部に優先的に潜像が形成され、現像が困難となる。換言すると、前者の場合は内部より表面の感度が高く、後者の場合は内部より表面の感度が低いと言える(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これら多くの文献に開示されてはいるが、いずれも銀塩熱現像感光材料に適したものではなかった。
【0007】
一方、発色現像薬とカプラーを含有した、臭化銀あるいはヨウ塩臭化銀を銀源とする、熱現像感光材料も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ハロゲン化銀による光散乱と吸収のために膜の濁りおよび不透明性が増加するため、実施例に記載されているようにかぶりが0.58〜1.2と極めて高くなってしまう。従って、得られる画像は一次原稿であって、直接観察し得る画像ではなく、これをもとにデジタル化して、さらに画像処理を施してかぶりを低減しかつ階調と色調を調整した再処理画像を得て始めて観察し得る画像となるものである(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
また、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる銀塩熱現像感光材料が開示され、さらには現像後の画像耐光性改良のために、沃化銀(AgI)を用いた銀塩熱現像感光材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、いずれも十分な感度・カブリレベルを達成できているものではない。
【0009】
そこで、高感度で、カブリが低く、現像後の耐光性(濃度変動、色調変動)、且つ露光前保存性(カブリの上昇、感度変動)に優れ、環境面・省エネ面で有利な銀塩熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0010】
また、感光性熱現像記録シートにより画像データを可視像としてプリントする場合、例えば可視像の濃度が不足し鮮明な画像が得られないことがある。そこで、記録シートの表面と裏面の両方に画像形成層を設けることにより、光ビームで記録シートを露光したとき表面の画像形成層と裏面の画像形成層の両方に同一の潜像を記録でき、これを熱現像し可視像を表面と裏面の両方に形成することで、濃度が大きく鮮明な可視像を得るとの技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。そして、該技術においては加熱を行う装置として、加熱プレートと押さえローラとの間に記録シートを搬送し加熱する熱現像装置が記載開示されている。しかしながら、このような加熱プレートを一枚だけ設けたものでは、加熱プレートに接する面が押さえローラ側の面より高い温度で加熱されてしまい、両面の可視像が同一(濃度)にならないので、鮮明な(かつ濃度がおおきい)可視像を得ることは困難であった。
【0011】
鮮明な可視像を得るためには、表面の画像形成層と裏面の画像形成層とを同一加熱条件で加熱し両面の可視像を同一(濃度)にする必要があり、鮮明な可視像が得られる技術が望まれていた。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】特開2003−091052号公報
【特許文献3】特開2001−312026号公報
【特許文献4】特開2003−215764号公報
【特許文献5】特開2001−13648号公報
【非特許文献1】日本写真学会編、写真工学の基礎(銀塩写真編)、コロナ社(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高感度で低カブリであり、且つ照度不軌特性、生保存性、鮮鋭性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、および該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0014】
1.支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【0015】
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
(式中、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。またR1およびR2は同じでも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を表す。)
2.前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上25以下の平板状粒子であることを特徴とする1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0016】
3.前記画像形成層が前記支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0017】
4.前記画像形成層が前記支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0018】
5.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光し、熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0019】
6.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料をX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0020】
7.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0021】
8.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置された熱現像装置を用い、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度を高く制御する制御手段を備えることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0022】
9.前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)である、ことを特徴とする8に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高感度で低カブリであり、且つ照度不軌特性、生保存性、鮮鋭性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、および該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態である、銀塩熱現像感光材料で用いる、本発明に係る一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤、バインダー、架橋剤を初めとする各種添加剤、塗布技術、露光・現像条件について順次、詳細に説明する。
【0026】
(Ch化合物:一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物)
本発明に用いられる一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物について説明する。
【0027】
前記一般式(I)において、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。
【0028】
mは2〜6の整数であり、好ましくは2〜3である。
【0029】
R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。
【0030】
R1及びR2で表される脂肪族基としては炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖、又は分岐したアルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基が挙げられる。具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、アリル、2−ブテニル、7−オクテニル、プロパルギル、2−ブチニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロドデシル等の各基が挙げられる。
【0031】
R1及びR2で表される芳香族基としては炭素数6〜20のものが挙げられ、具体的には例えばフェニル、ナフチル、アントラニル等の各基が挙げられる。
【0032】
R1及びR2で表されるヘテロ環基としては、単環でも縮合環でもよく、O、S、及びN原子、アミンオキシド基の少なくとも1種を環内に有する5〜6員のヘテロ環基が挙げられる。具体的には例えば、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキシラン、モルホリン、チオモルホリン、チオピラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール及びこれらのベンゼローグ類から導かれる基が挙げられる。
【0033】
R1及びR2で環を形成するものとしては員数4から7員環を挙げることができる。このましくは5〜7員環である。
【0034】
R1及びR2で好ましい基としてはヘテロ環基および芳香族基であり、更に好ましくはヘテロ芳香環基である。
【0035】
R1及びR2で表される脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基は更に置換基により置換されていてもよく、該置換基としてはハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基、ジエチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基等)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンズチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)が挙げられる。
【0036】
電子吸引性基を含有する置換基が特に好ましい。R1及びR2はこれらの置換基の中から単独又は複数を有することができる。またそれぞれの置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。
【0037】
以下に本発明で用いられる一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物の乳剤への添加時期は粒子形成、化学熟成前又は後のどの工程でもできる。好ましい添加時期は脱塩時〜化学増感前である。好ましい添加量は1×10-8〜1モル/Agモル、更に好ましくは1×10-6〜1×0.3モル/Agモルである。
【0042】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子である(以下、熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子ともいう。)。
【0043】
(熱変化内部潜像型ハロゲン化銀粒子)
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、熱現像前は表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子である。該ハロゲン化銀粒子は、粒子成長時にホールトラップ効果の微小な硫化銀や銀核や金属などを内部にドープすることで得られる。該ハロゲン化銀粒子が現像熱により、内部にドープされた微小核が凝集して、強い電子トラップ効果へ変換する。
【0044】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、還元増感、カルコゲン増感、貴金属増感、所謂化学増感をハロゲン化銀粒子成長時に施して得ることができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子のコア部分に施すことである。本発明においては、粒子のコア部分とは、粒子1つの銀量の0〜99%までのところを指す。好ましくは0〜50%である。
【0045】
一般的に還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、粒子形成中のpHを6.5以上、10.0以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0046】
本発明においては、下記一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物を使用することが好ましい。本発明に係るハロゲン化銀粒子のコア部分を成長するときのpHは4.0〜10.0である。好ましくはpH5.5〜8.0下でカルコゲン化銀の生成を施すことである。一般式(C−1)または(C−2)のカルコゲン放出化合物が、pHによってカルコゲン化銀の生成をコントロールができるため、ハロゲン化銀粒子の表面に大きいかぶり核の生成が抑制される。
【0047】
【化4】
【0048】
一般式(C−1)において、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR7、−NR8(R9)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子、水素原子を表す。R7、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R8及びR9はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、Z1とZ2、Z2とZ3、Z3とZ1が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0049】
一般式(C−2)において、Z4及びZ5はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR1(R2)、−OR3または−SR4を表す。R1、R2、R3及びR4はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R1及びR2は水素原子またはアシル基であってもよい。また、Z4とZ5が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0050】
以下に、一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物の具体例を示す。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
【0056】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。更に固体分散法として知られている方法によって、一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物の粉末を水または有機溶媒の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0057】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、平板状粒子、八面体、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては、特に平板状粒子、立方体状粒子、八面体が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比(AR=主平面の円相当直径/厚み)は好ましくは100/1〜2/1、より好ましくは50/1〜3/1がよい。
【0058】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることが好ましい。このことにより、高感度、高CP化、鮮鋭性が優れる効果が奏されて好ましい。より好ましくは感光性ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上、さらに好ましくは全投影面積の70%以上、最も好ましくは全投影面積の80%以上100%以下が、アスペクト比2以上の平板状粒子である。
【0059】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、電子トラップ性ドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが感度及び画像保存性上好ましい。なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像時に変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントハロゲン化銀粒子が特に好ましい。
【0060】
感光性ハロゲン化銀粒子乳剤の塗布試料を光導電測定する際、本発明に係る熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子乳剤の熱現像後の光導電度(信号の大きさ)が、熱現像前の80%以下に低下する。好ましくは50%以下に低下する。更に好ましくは25%以下に低下することである。光導電度が低下する現象は電子トラップ効果へ変換したことを示す意味である。
【0061】
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀を構成する銀及びハロゲン以外の元素または化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有するまたは当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオンまたは硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)または窒素原子などを含む無機化合物または有機化合物、またはその錯体等が挙げられる。
【0062】
金属イオンまたはその塩もしくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等または臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることができる。
【0063】
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することができる。また、カルコゲンまたは窒素を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
【0064】
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
【0065】
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、あるいはホールトラップ性ドーパントとして機能するように18族周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させてもよい。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが更に好ましい。
【0066】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種あるいは異種の化合物もしくは錯体を2種以上併用してもよい。但し、少なくとも1種は、熱現像後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0067】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10-9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-1モルの範囲がより好ましい。更に、1×10-6〜1×10−1モルが好ましい。但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0068】
本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0069】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは18族元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、1−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0070】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に亘って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0071】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。
【0072】
特に、金属化合物の粉末の水溶液、もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中、もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0073】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することができる。
【0074】
本発明の銀塩熱現像感光材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することができる。即ち、上記のドーパントまたはその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光伝導測定法等による光伝導測定により、ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光伝導の減少度を測定することにより評価できる。または、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によってもできる。
【0075】
または、銀塩熱現像感光材料とした後に、本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該銀塩熱現像感光材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光し、更に同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパント含まないハロゲン化銀粒子乳剤を使用した銀塩熱現像感光材料の感度と比較することにより評価できる。
【0076】
即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
【0077】
なお、当該材料に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光した後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び一定の露光を施し、更に通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/5以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは、1/20以下であることが好ましい。
【0078】
感光性ハロゲン化銀は光センサとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑える為、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいことが好ましい。平均粒子サイズで0.08μm以下、好ましくは0.01〜0.08μm、特に0.02〜0.06μmが好ましい。この小サイズの粒子の含有率は70%以上であることが好ましい。一方、感度や階調調整のためには、やや大きい粒子が好ましい。平均粒子サイズは0.1μm以下、好ましくは0.04〜0.1μm、特に0.05〜0.08μmが好ましい。この大サイズの粒子の含有率は30%以下であることが好ましい。
【0079】
感光性ハロゲン化銀の量は、銀塩熱現像感光材料としては後述の非感光性脂肪族カルボン酸銀に対して銀比率で2〜20%が好ましく、更に好ましくは3〜10%の間である。
【0080】
本発明の銀塩熱現像感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上、例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるものを併用してもよい。
【0081】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の使用量としては、有機脂肪酸銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上、0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上、0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上、0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機脂肪酸銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機脂肪酸銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機脂肪酸銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機脂肪酸銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0082】
上記した各種の方法によって調製される感光性ハロゲン化銀は、また粒子の表面に化学増感ができる。例えば、含硫黄化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物またはこれらの組合せによって化学増感することができる。この化学増感の方法及び手順については、例えば、米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号の各明細書、特開昭51−22430号、同51−78319号、同51−81124号等の各公報に記載されている。また、ハロゲン化銀形成成分により有機脂肪酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換させる際に、米国特許第3,980,482号明細書に記載されるように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【0083】
英国特許第1,447,454号明細書に記載されているように、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際に、ハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させたハロゲン化銀粒子を併用することもできる。また、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製し、当該粒子を併用することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換させることもできる。本発明に係るハロゲン化銀粒子は、いかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのができるが、本発明に係るハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製時に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱え、製造コントロール上は好ましい。また、本発明に係るハロゲン化銀を水溶性溶媒から有機溶媒に分散して、塗布直前に脂肪族カルボン酸銀塩の塗布液に添加、分散することもできる。または、本発明に係るハロゲン化銀は有機溶媒中調製することも可能である。
【0084】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例は、米国特許第4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許第1,498,956号の各明細書、及び特開昭53−27027号、同53−25420号等の各公報に開示されている。
【0085】
上述のように別途調製したハロゲン化銀粒子に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルで使用するのが好ましい。
【0086】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0087】
(非感光性有機脂肪酸銀塩)
本発明において、非感光性有機脂肪酸銀塩(以下、有機脂肪酸銀塩ともいう。)は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に、この中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDともいう)17029及び29963に記載された有機または無機の錯体も好ましい。これら、好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0088】
有機酸の銀塩:没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩:1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩または錯体:アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等)の反応生成物の銀塩または錯体。チオン類の銀塩または錯体:3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩または錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0089】
これらの中、好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。本発明においては、有機脂肪酸銀塩が2種以上混合されることが現像性を上げ、高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば、2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0090】
有機脂肪酸銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載される様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して有機脂肪酸銀塩の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0091】
本発明に係る有機脂肪酸銀塩は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子が好ましい。特に、アスペクト比3以上の平板状有機脂肪酸銀塩粒子であり、且つ最大面積を有する2枚のほぼ平行に相対する面(主平面)の形状異方性を小さくして、画像形成層中での充填を行うため、主平面方向から計測される該平板状有機脂肪酸銀塩粒子の針状比率の平均値が、1.1以上、10.0未満である粒子が好ましい。更に好ましい針状比率は1.1以上、5.0未満である。
【0092】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状有機脂肪酸銀塩粒子であるとは、前記平板状有機脂肪酸銀塩粒子が全有機脂肪酸銀塩粒子の50個数%以上を占めることを言う。更に、本発明に係る有機脂肪酸銀塩はアスペクト比3以上の平板状粒子が全粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0093】
本発明に係る平板状有機脂肪酸銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると有機脂肪酸銀塩粒子が最密化され易くなり、またアスペクト比が余りに高い場合には有機脂肪酸銀塩粒子同士が重なり易く、またくっついた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として銀塩熱現像感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記範囲が好ましいと考えている。
【0094】
上記の平均粒径を求めるには、分散後の有機脂肪酸銀塩を希釈して、カーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(日本電子製:2000FX型)を用いて、直接倍率5000倍にて撮影を行う。撮影したネガをスキャナでデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、平均粒径を算出する。
【0095】
また、平均厚さを求めるには、以下に示すような透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた方法により算出する。
【0096】
まず、支持体上に塗布された画像形成層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。この超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し液体窒素により−130℃以下に冷却しながらTEMを用いて、倍率5,000〜40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラ等に素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0097】
カーボン膜としては、極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0098】
その他、電子顕微鏡観察技法及び試料作製技法の詳細については、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)を、それぞれ参考にすることができる。
【0099】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024×1024画素、好ましくは2048×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じて施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって有機銀に相当する箇所を抽出する。抽出した300個以上の有機脂肪酸銀塩粒子の厚さを適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0100】
また、平板状有機脂肪酸銀塩粒子の針状比率の平均値は、下記の方法により求められる。まず、平板状有機脂肪酸銀塩粒子を含む画像形成層のバインダーを溶解可能な有機溶媒にて膨潤させて支持体上から剥離し、上記溶媒を用いた超音波洗浄、遠心分離、上澄み除去を5回繰り返す。なお、上記工程はセーフライト下で実施する。
【0101】
続いて、有機銀固形分濃度が0.01%になるようにメチルエチルケトン(MEK)にて希釈し、超音波分散した後、グロー放電により親水化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に滴下し乾燥させる。
【0102】
粒子が搭載されたフィルムは、真空蒸着装置にてフィルム面に対して30°の角度から、厚さとして3nmのPt−Cを電子ビームにより斜め蒸着した後、観察に使用することが好ましい。
【0103】
作製された試料は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて加速電圧2〜4kVにて倍率として5000〜20000倍にて2次電子像を観察し、適当な記録媒体への画像保存を行う。
【0104】
上記処理のためには、電子顕微鏡本体からの画像信号をAD変換し、直接メモリ上にデジタル情報として記録可能な装置を用いるのが便利であるが、ポラロイドフィルム等に記録されたアナログ画像もスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことにより使用できる。
【0105】
上記の画像処理の手順としては、まずヒストグラムを作製し2値化処理によって、アスペクト比3以上の有機脂肪酸銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。止むを得ず凝集した粒子は、適当なアルゴリズムまたはマニュアル操作にて切断し輪郭抽出を行う。その後、各粒子の最大長(MX LNG)及び粒子の最小幅(WIDTH)を少なくとも1000個の粒子に関して各々測定し、粒子毎に下記式にて針状比率を求める。粒子の最大長とは、粒子内の2点を直線で結んだ時の最大値を言う。また、粒子の最小幅とは粒子に外接する2本の平行線を引いた時、平行線の距離が最小値になる時の値を言う。
【0106】
針状比率=(MX LNG)÷(WIDTH)
その後、計測された全粒子に関する針状比率の平均値を算出する。上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては、米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1〜0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
【0107】
画像処理技術の詳細は、「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては、上記操作が可能であれば特に限定はされないが、一例としてニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
【0108】
前記の形状を有する有機脂肪酸銀塩粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態、及び前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0109】
平板状有機脂肪酸銀塩粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザー等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散には、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0110】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザーとしては、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0111】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0112】
平板状有機脂肪酸銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機脂肪酸銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でもジルコニアを用いることが好ましい。
【0113】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザーを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合は、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0114】
また、ビーズや部材の一部にジルコニアを使用し、分散時に分散乳剤中に混入させることができる。これが写真性能上好ましく有効である。ジルコニアの破片を分散乳剤中に後添加したり、予備分散時に予め添加したりしてもよい。具体的な方法としては特に限定されないが、一例としてジルコニアビーズを充填したビーズミルにMEKを循環させれば、高濃度のジルコニア溶液を得ることができる。これを好ましい時期に、好ましい濃度で添加してやればよい。
【0115】
感光性ハロゲン化銀と有機脂肪酸銀塩を含有する感光性乳剤中においては、銀1g当たり0.01〜0.5mgのジルコニウムを含有することが好ましく、更に好ましいジルコニウム含有量は、0.01〜0.3mgである。また好ましい含有形態としては、粒径0.02μm以下の微粒子であることが好ましい。
【0116】
このような特徴を有する感光性乳剤を調製する条件としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機または高圧ホモジナイザーなどで分散すること、その際バインダー濃度は有機脂肪酸銀塩量の0.1〜10質量%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないこと等に加えて、調液時にはディゾルバーを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0117】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積にしめる割合などは、上記アスペクト比3以上の平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上、0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の3群に分類する。
【0118】
本発明の銀塩熱現像感光材料は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、且つC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものが好ましい。
【0119】
上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。
【0120】
有機脂肪酸銀塩粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散度とは下記式で定義される。
【0121】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
有機脂肪酸銀塩の平均粒径は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmであり、平均粒径(円相当径)とは電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0122】
銀塩熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機脂肪酸銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。
【0123】
(還元剤)
本発明においては、銀イオンの還元剤として、下記一般式(1)で表される化合物を単独又は他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いることが好ましい。ここで併用する還元剤についてもビスフェノール型の還元剤であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物と併用できる還元剤は、例えば特開平11−65021号の段落番号「0043」〜「0045」、欧州特許公開EP0803764A1号の7頁34行〜18頁12行、特開2003−302723号の段落番号「0124」〜「0133」、特開2003−315954号の段落番号「0124」〜「0127」、特開2004−4650号の段落番号「0042」〜「0057」に記載されている。一般式(1)で表される化合物は有機酸銀塩を含有する画像形成層に含有させることが好ましいが、隣接する非画像形成層に含有させてもよい。
【0124】
【化9】
【0125】
前記一般式(1)において、R1は水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基であり、更に好ましくは水素原子またはアルキル基である。これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基、ホスファト基、スルファト基、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0126】
R2及びR3は各々独立に炭素原子数が3〜6の分岐アルキル基を表し、分岐アルキル基として、例えば、tert−ブチル基、tert−アミル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロブチル基、1−メチルシクロプロピル基、1−メチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。好ましくはtert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基またはtert−アミル基であり、更に好ましくはtert−アミル基である。これらの分岐アルキル基は置換基を有してもよく、置換基としては水酸基、シアノ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、イミド基、シリル基、ヒドラジノ基等が挙げられる。
【0127】
A1及びA2は各々独立に水酸基または脱保護されることにより水酸基を形成しうる基を表し、好ましくは水酸基である。脱保護されて水酸基を形成しうる基とは、酸及び/または熱の作用により脱保護して水酸基を形成する基が挙げられる。具体的にはエーテル基(メトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリフェニルメトキシ基、トリメチルシリルオキシ基等)、ヘミアセタール基(テトラヒドロピラニルオキシ基等)、エステル基(アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−ニトロベンゾイルオキシ基、ホルミルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、カルボナート基(エトキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニルオキシ基等)、スルホナート基(p−トルエンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等)、カルバモイルオキシ基(フェニルカルバモイルオキシ基等)、チオカルボニルオキシ基(ベンジルチオカルボニルオキシ基等)、硝酸エステル基、スルフェナート基(2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルオキシ基等)が挙げられる。
【0128】
n及びmは各々独立に3〜5の整数を表すが、好ましくは3または4であり、更に好ましくは3である。
【0129】
上記に例示した置換基R1、R2、R3、A1及びA2の構造は、ビスフェノール型還元剤の熱的物性ならびに結晶性を決定する因子の一つであり、熱現像感光材料における還元剤の融点、熱分解温度、結晶性が写真性能に大きく相関する。
【0130】
本発明に係る熱現像感光材料に用いる場合、融点は80〜250℃、熱分解温度は200℃以上であることが好ましい。現像処理後に感材中に還元剤が残留する熱現像感光材料は、結晶性の高い還元剤の方が保存時の物質拡散が抑制されるため、画像保存時の還元反応によるカブリ部分の濃度変動が小さくなることから、還元剤の結晶性は高い方がより好ましい。
【0131】
以下に、一般式(1)で表される還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0132】
【化10】
【0133】
【化11】
【0134】
【化12】
【0135】
【化13】
【0136】
【化14】
【0137】
【化15】
【0138】
【化16】
【0139】
【化17】
【0140】
【化18】
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
【化21】
【0144】
上記還元剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、如何なる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
【0145】
本発明では、更に米国特許3,589,903号、同4,021,249号、英国特許1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、更に、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類も、銀イオン還元剤として用いることができる。
【0146】
還元剤の使用量は、脂肪族カルボン酸銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には、脂肪族カルボン酸銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルが適当である。本発明においては、還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び脂肪族カルボン酸銀塩粒子及び溶媒から成る感光乳剤溶液に添加混合し、その、塗布する方が停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0147】
(バインダー)
本発明の銀塩熱現像感光材料に使用するバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。またはSBRラテックス、NBRラテックスなどを加えてもよい。
【0148】
本発明に係るバインダーのガラス転移温度は70℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0149】
銀塩熱現像感光材料の画像形成層に好ましいバインダーは、ポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非画像形成層においては、よりガラス転移温度(Tg)の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて上記バインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0150】
本発明に好ましく用いられるバインダーとして、下記ポリビニルアセタールが挙げられる。
【0151】
【表1】
【0152】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、画像形成層において少なくとも有機脂肪酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機脂肪酸銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0153】
(架橋剤)
バインダーには架橋剤を併用することができる。
【0154】
架橋剤としては、従来、通常の写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。これらの化合物については、特開2001−249428号公報に詳述される。
【0155】
(色調剤)
本発明の銀塩熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はRD17029号に開示されており、具体的には以下のものを挙げることができる。
【0156】
イミド類(フタルイミド等);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類及びキナゾリノン類(スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン等);ナフタールイミド類(N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);コバルト錯体(コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド等);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム誘導体、及びある種の光漂白剤の組合せ(N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)と2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組合せ);メロシアニン染料(3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組合せ(6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組合せ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも一つ化合物との組合せ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン等);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(2,4−ジヒドロキシピリミジン等)、及びテトラアザペンタレン誘導体(3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン等)等を挙げることができ、特に好ましい色調剤はフタラゾンまたはフタラジンである。
【0157】
(層構成)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の画像形成層を有している。支持体の上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも1層の非画像形成層を形成することが好ましい。画像形成層を通過する光の量、または波長分布を制御するため、画像形成層と同一側または反対側にフィルター層を形成してもよいし、画像形成層に直接、本発明に係る染料や公知の顔料等を含有させてもよい。画像形成層は複数層にしてもよく、階調の調節のため感度の異なる構成、例えば、高感層/低感層または低感層/高感層にしてもよい。
【0158】
各種の添加剤は、画像形成層、非画像形成層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。本発明の銀塩熱現像感光材料には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。
【0159】
(塗布方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を調製し、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば画像形成層、保護層)の塗布液を調製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0160】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は画像形成層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0161】
(包装材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカール状の巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。
【0162】
酸素透過率は25℃で50ml/(atm/m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/(atm/m2・day)以下であり、更に好ましくは1.0ml/(atm/m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。水分透過率は10g/(atm/m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは5g/(atm/m2・day)以下であり、更に好ましくは1g/(atm/m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば、特開平8−254793号、特開2000−206653号の各公報に記載されているものを利用することができる。
【0163】
(画像形成方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する片面型であっても、両面に画像形成層を有する両面型であってもよい。
【0164】
(両面型銀塩熱現像感光材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
【0165】
これらの銀塩熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
【0166】
(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程
(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程
(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程
(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0167】
本発明における組立体において使用する銀塩熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin)+濃度0.25の点と最小濃度(Dmin)+濃度2.0の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.0〜4.0である特性曲線を有するように調整されていることが好ましい。
【0168】
本発明に係るX線撮影系において、このような特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料を用いると脚部が非常に延びていて、且つ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、且つX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0169】
上記のような好ましい特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料は、例えば、両側の画像形成層のそれぞれを互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀乳剤層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差及びカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程高感度側の乳剤の使用比率を下げる。例えば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0170】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0171】
次に、本発明に係る蛍光増感紙(X線増感スクリーン、放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体とその片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダー)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には、一般に透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0172】
本発明において、好ましい蛍光体としては以下に示すものが挙げられる。タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体(Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y、Gd)2O2S:Tb、(Y、Gd)O2S:Tb、Tm等)、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba、Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+、Tb、BaFBr:Eu2+、Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba、Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等)、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体(ZnS:Ag(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Cu、Al等)、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、YTaO4及びそれに発光中心として各種賦活剤を加えたもの。但し、本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視または近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0173】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5〜2.0μmで、大粒径のものは10〜30μmの範囲が好ましい。
【0174】
(片面型銀塩熱現像感光材料)
本発明における片面型銀塩熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。本目的に用いられる片面型銀塩熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することが重要である。
【0175】
乳房撮影用X線感光材料としての好ましい構成要件に関しては、特開平5−45807号、同10−62881号、同10−54900号、同11−109564号の各公報記載を参考にすることができる。
【0176】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。更に好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号公報、国際公開第93/01521号パンフレットに記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特開2001−144030号公報に記載の染料は特に好ましい。
【0177】
(レーザ露光条件)
銀塩熱現像感光材料の露光は、該写真材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、該写真材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、写真材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780〜820nm)または青レーザ(400nm付近)がより好ましく用いられる。
【0178】
露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、写真材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0179】
レーザ光が、写真材料に走査される時の露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様ムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減少できる。
【0180】
また、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様ムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。
【0181】
なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常、60nm程度である。
【0182】
更に、第3の態様としては2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0183】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば、特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、レーザ・イメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0184】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0185】
このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザで入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際の、通常の1本のレーザ(波長λnm)で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λnm)、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
【0186】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λnmに対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0187】
なお、上述した第1、第2、第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている。ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩熱現像感光材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、写真材料毎に最適な値に設定することができる。
【0188】
(現像条件)
銀塩熱現像感光材料の現像条件は使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において像様に露光した銀塩熱現像感光材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜150℃、好ましくは約100〜130℃)で十分な時間(本発明は、5〜20秒の速さの迅速現像処理が好ましい)、銀塩熱現像感光材料を加熱することにより現像する。
【0189】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また150℃を超えるような高温ではバインダーが溶融し、ローラへの転写など画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機脂肪酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は外部からの水等、処理液の一切の供給なしに進行する。
【0190】
加熱する機器、装置、手段は、加熱プレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。銀塩熱現像感光材料をヒートローラまたは加熱プレートに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。さらに好ましくは、表裏で千鳥に配列された2枚以上の加熱プレートの加熱面に交互に接触しながら加熱し、かつ、第2加熱プレート(第1加熱プレートより後にある)の温度を第1加熱プレートより高温(Tn+3≧Tn+2>Tn+1)に制御するように加熱処理して現像する。
【0191】
表裏で千鳥に配列された2枚以上の加熱プレートの数はとくには限定されないが、2枚 〜10枚であることが好ましく、4枚〜8枚であることが、より好ましい。
【0192】
第2加熱プレートの温度を第1加熱プレートより高温(Tn+3≧Tn+2>Tn+1)に制御するように加熱処理して熱現像することにより、第1加熱プレートによる予備加熱、均一加熱により、現像ムラをなくす効果が奏されて好ましい。
【0193】
本発明において、本発明の銀塩熱現像感光材料を熱現像する熱現像装置は、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置され、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度をより高く制御する制御手段とを備えることが好ましい。
【0194】
前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)であることが好ましい。
【0195】
なお、現像時の本発明の銀塩熱現像感光材料の搬送速度は25mm/秒以上であることが好ましい。より好ましくは25〜120mm/秒、更に好ましくは50〜100mm/秒である。搬送速度が上記範囲内であることにより本発明の試料は迅速処理ができながら、低かぶり高感度を得られ、かつ現像ムラのない高画質の画像を得られて好ましい。
【実施例】
【0196】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0197】
実施例1
以下に示す方法に従い、銀塩熱現像感光材料を作製した。
【0198】
〔感光性ハロゲン化銀乳剤の調製〕
(感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)の調製)
(A1)
フタル化ゼラチン(平均分子量7万) 66.23g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 52.1g
沃化カリウム 1.485g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 151.1g
沃化カリウム 7.645g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.925ml
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.075g
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(G1)
56%酢酸水溶液 20.0ml
(H1)
水酸化カリウム 1.72g
化合物(B):FC−4防腐剤(5%水溶液) 10ml
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
【0199】
【化22】
【0200】
特公昭58−58288号公報に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。7分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の液を全量、14分15秒かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。脱塩、水洗する。この操作3回を繰り返した後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり652gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)を得た。
【0201】
この乳剤は平均粒子サイズ43nm(円相当径)、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。(粒子表面のAgIの含有率は3.5モル%)
(感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Em−Jの調製)
感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)と同様な方法で核形成を行った。3分後、pH10に合わせた。一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物の固体分散微粒子の水溶液を表3記載の種類、量のように添加した。30分間経過後、クエン酸溶液でpH5.8にした。その後、比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aの場合と同じように調製し、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B(比較)、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jを得た。
【0202】
(化学増感)
上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jをそれぞれ47℃に恒温し、乳剤pHを6.5にして、一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を固体分散水溶液として表3に記載の種類、量のように添加して、60分攪拌した。その後、pHを5.8に調整し、安定剤−Aを3×10-4モル/Agモル相当添加して、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−J(本発明)をそれぞれ得た。
【0203】
【化23】
【0204】
(ポリマーB溶液の合成)
0.3Lの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン20gを仕込み、50℃に加熱した。更に表2に記載の組成割合のモノマー(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gと前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマーB溶液を得た。分子量はGPCでポリスチレン換算の重量平均分子量として、5〜6万であった。
【0205】
【表2】
【0206】
DAAM:ダイサセトンアクリルアミド(協和発酵製)
Aam:アクリルアミド
ブレンマーPSE−400:−(EO)m−C18H37(m≒9)を有するメタアクリレート
ブレンマーPME−400:−(EO)m−CH3(m≒9)を有するメタアクリレート(EO;エチレンオキシ基、上記はすべて日本油脂製)。
【0207】
(有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液の調製)
ポリマーB溶液20gにメタノール60gを添加し、40℃30分攪拌した。そこに40℃に溶解した上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jそれぞれ59.2gをゆっくり滴下し、更に48℃60分攪拌した。各々のハロゲン化銀液をMEKで2倍に希釈を行い、ロータリーエバポレーターにて減圧蒸留で水分を除去し、それぞれ容量を1/3に濃縮した。この操作を2回繰り返した。有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液Em−A〜Em−Jをそれぞれ得た。
【0208】
〔有機脂肪酸銀塩分散液の調製〕
(粉末有機脂肪酸銀塩の調製)
5470mlの純水に、ベヘン酸52.3g、アラキジン酸27.1g、ステアリン酸17.45g及びパルミチン酸0.9gを80℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸カリウム溶液を得た。該有機酸カリウム溶液の温度を55℃に保ったまま高速で攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに10分間高速で攪拌した後、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、遠心脱水を行った後、質量の減少がなくなるまで窒素気流下で加熱乾燥を行った。粉末有機脂肪酸銀塩を得た。
【0209】
(有機脂肪酸銀塩分散液の調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社:Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて攪拌しながら、500gの上記の粉末有機脂肪酸銀塩を徐々に添加して十分に混合した。その後、1mm径のジルコニウムビーズ(東レ社製)を80%充填したメディア型分散機(Gettzmann社製)にて周速13m、ミル内滞留時間0.5分間にて分散を行って、有機脂肪酸銀塩分散液を調製した。
【0210】
〔感光層塗布液の調製〕
(色素安定剤液の調製)
1.0gの色素安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール14.35gに溶解し、色素安定剤液とした。
【0211】
(赤外増感色素液の調製)
0.090gの赤外増感色素−1、1.9gの2−クロロ安息香酸、10.8gの色素安定剤−2、0.1gの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、240gのMEKに溶解し、赤外増感色素液とした。
【0212】
(還元剤液の調製)
15.0gの還元剤−Aと0.33gの還元剤−B、10.9gの還元剤−C、2.39gの4−メチルフタル酸、0.045gの赤外染料1をMEK205gに溶解し還元剤液とした。
【0213】
(感光層塗布液の調製)
前記の有機脂肪酸銀塩分散液を50g、及びMEK15.11gを混合攪拌しながら18℃に保温し、前記有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液Em−A〜Em−Jをそれぞれ7.2g添加した。20分後にかぶり抑制剤−1の1%メタノール溶液を1.4g添加した。30分後、赤外増感色素液を1.2×10-4モル/Agモル相当添加して1時間攪拌した。その後、13℃に降温し、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(化合物P−1、Tg=75℃)を12.45g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(13%MEK溶液)1.1g添加して15分間攪拌した。塗布直前にデスモジュールN3300(モーベイ社製:脂肪酸イソシアネート)の22%MEK溶液2.23g、還元剤液30.4gを添加した。かぶり抑制剤−2の7%MEK溶液を6.5g、フタラジンの12.74%MEK溶液を3.34g、添加した。攪拌することにより感光層塗布液(A)〜(J)を得た。
【0214】
〔表面保護層塗布液の調製〕
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/m2になるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0215】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0216】
〔バック面塗布液の調製〕
MEK830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。溶解した液に、バック面の塗布試料における赤外染料1の吸収極大の吸光度(abs)が0.3となるように赤外染料1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社製、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1質量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社製、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌し、バック面塗布液を調製した。
【0217】
〔支持体の作製〕
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した。その一方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0218】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0219】
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0220】
(コロイド状酸化錫分散液の調製)
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加して全量を2000mlとした。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して容量が470mlになるまで濃縮し、コロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0221】
上記にて用いた化合物の構造を以下にまとめて示す。
【0222】
【化24】
【0223】
【化25】
【0224】
【化26】
【0225】
〔銀塩熱現像感光材料の作製〕
上記下引き済み支持体の両面に、表3に記載の組み合わせで感光層面側を塗布、及びバック層面側を塗布、乾燥して銀塩熱現像感光材料(試料1〜10)を作製した。
【0226】
(感光層面側の塗布)
前記調製した各感光層塗布液及び各表面保護層塗布液を用いて、支持体側から感光層及び表面保護層を、それぞれ押出しコーターを用いて同時重層塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。表面保護層は乾燥膜厚として1.5μmになる様に行った。
【0227】
(バック面側の塗布)
上記調製したバック面塗布液を、それぞれ乾燥膜厚が3μmになるように、押出しコーターを用いて塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0228】
《試料の包装》
外側〜ナイロン15μm/AL7μm(防湿層)/ポリエチレン20μ/カーボンブラック+ポリエチレン30μm(遮光層)〜内側・感剤側
〔評価〕
上記作製した銀塩熱現像感光材料(試料1〜10)について、以下の方法にて特性評価を行った。
【0229】
(Dmin及び感度の測定)
各試料を半切サイズに加工した後、コニカミノルタエムジー社製レーザイメージャーDrypro752を用いて、試料の一部が露光されながら、同時に既に露光がなされた試料の一部分が現像開始されるように改造した。露光は785nmの半導体レーザで像様露光を施した。なお、露光においては試料の露光面と露光レーザ光の角度は80度とした。また、試料毎条件A:レーザ強度16mWで30.64mm/秒で搬送し露光した。なお、高周波重畳を縦マルチモードで出力した。
【0230】
熱現像処理はヒートドラムを用いて均一加熱を行い、熱現像処理条件126℃、8秒で行った(熱現像処理条件A)。このようにして得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin=カブリ濃度)、感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、試料1の感度を100とする相対感度を表4に示した。
【0231】
(照度不軌の評価)
前記条件Aの代わりに条件B:レーザ強度30mWで57.45mm/秒で搬送し露光した他は上記条件Aの感度を求める場合と同様にして条件Bの感度を求めた。条件Aと条件Bの感度差を下式から求めた。なお、試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度差が小さいほど照度不軌の問題がなく良好である。
【0232】
条件Aと条件Bの感度差=(条件Aの感度)−(条件Bの感度)
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin部)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、試料1のそれを100とした相対値で表示した。
【0233】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin)
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0234】
(生保存性)
試料を40℃、相対湿度80%RHで1週間レーザイメージャーの機内に保存した後、露光・現像して得られた感度を評価した。試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度を未処理の試料と比べ、感度の低下幅が小さいものが生保存性に優れる。
【0235】
【表3】
【0236】
【表4】
【0237】
表4より、本発明に係る試料は、高感度、低カブリであり、且つ照度不軌、生保存性や画像耐光性に優れていることが分かった。なお、本発明の試料の階調γが2.5〜4.0の範囲にあり、医療用銀塩熱現像感光材料として適性を有していることが確認された。
【0238】
実施例2
〔感光性ハロゲン化銀乳剤〕
《感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜2−8の調製》
(ホスト粒子の調製)
蒸留水1421mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.5g、2,2′−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノール溶液160mlを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら73℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mlに希釈した溶液(A2)とヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mlに希釈した溶液(B2)を、溶液(A2)は一定流量で16分かけて全量添加し、溶液(B2)はpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物を表5の様に添加し、さらに3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、ベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mlに希釈した溶液(C2)とヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mlに希釈した溶液(D2)を、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液(D2)はpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液(C2)および溶液(D2)を添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液(C2)の添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のホスト粒子のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ作製した。
【0239】
得られた粒子は、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.39μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の30%がγ相で存在していた。
【0240】
(エピタキシャル接合の調製)
上記ホスト粒子のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8の銀1モル相当をそれぞれ反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/LのKBr溶液及び0.5モル/LのAgNO3溶液を10ml/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行った。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ作製した。
【0241】
(化学増感)
上記のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ47℃に恒温し、乳剤pHを6.5にして、一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を固体分散水溶液として表5に記載のように添加して、60分攪拌した。その後、pHを5.8に調整し、安定剤−Aを3×10-4モル/Agモル相当添加した後、省銀化剤SE−1を1×10-5モル/Agモル添加して感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜Em−2−8を得た。
【0242】
【化27】
【0243】
〔銀塩熱現像感光材料〕
《感光層塗布液の調製》
実施例1の(ポリマーB溶液の合成)〜(本発明の感光層塗布液の調製)において、実施例1の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A、Em−B、および、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−J、の代わりに、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1、Em−2−2、および、Em−2−3〜Em−2−8、をそれぞれ用いた他は、同様にして、感光層塗布液2−1、2−2、および、Em−2−3〜2−8をそれぞれ得た。
【0244】
《表面保護層塗布液の調製》
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/m2になるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0245】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0246】
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した。その両方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0247】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0248】
《銀塩熱現像感光材料の作製》
(感光層(両面)の塗布)
上記下引き済み支持体の両面に、下塗り面から感光層、表面保護層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布した。感光層は前記感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜Em−2−8から調製した各感光層塗布液2−1〜2−8を用いて、感光層の塗布銀量は脂肪酸銀とハロゲン化銀の合計で片面あたり0.57g/m2であった。これを支持体の両面に塗布した。銀塩熱現像感光材料試料201〜208を作製した。
【0249】
〔蛍光増感スクリーン、画像露光、熱現像、および評価〕
《蛍光増感スクリーンAの作製》
下塗り層の作製
特開2001−124898号公報の実施例4と同様にして、250μmのポリエチレンテレフタレート(支持体)上にアルミナ粉体よりなる乾燥後の膜厚が50μmの光反射層を形成した。
【0250】
蛍光体シートの製造
BaFBr:Eu蛍光体(平均粒径3.5μm)250g、ポリウレタン系バインダー樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:パンデックスT5265M)8g、エポキシ系バインダー樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、商品名:エピコート1001)2g、およびイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートHX)0.5gをメチルエチルケトンに加え、プロペラミキサーで分散して、粘度が25PS(25℃)の蛍光体層形成用塗布液を調製した。この塗布液を仮支持体(予めシリコーン系離型剤が塗布されているポリエチレンテレフタレートシート)の表面に塗布し、乾燥して蛍光体層を形成した。この蛍光体層を仮支持体から剥がし取って蛍光体シートを得た。
【0251】
光反射層上への蛍光体シートの付設
前記の工程で製造した光反射層付き支持体の光反射層の表面に、上記の蛍光体シートを重ね、カレンダロールにて、圧力400kgw/cm2、温度80℃の条件で加圧し、光反射層上に蛍光体層を設けた。得られた蛍光体層の厚みは125μmであり、蛍光体層中の蛍光体粒子の体積充填率は68%であった。
【0252】
表面保護層の形成
厚み6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、ラミネート法で蛍光体層上に表面保護層を設けた。このようにして、支持体、光反射層、蛍光体層および表面保護層からなる蛍光増感スクリーンAを得た。この蛍光増感スクリーンAは、390nmにピークをもつ半値幅の狭い発光する特徴を有する。
【0253】
《評価方法》
(露光と熱現像)
上記スクリーンを2枚使用して、その間に銀塩熱現像感光材料試料201〜208それぞれを挟み、像形成用組立体を作製した。この組立体に、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス発生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルターを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.10の幅でステップ露光を行った。
【0254】
露光後に、銀塩熱現像感光材料試料202〜208それぞれについては、下記の熱現像処理条件B(両面から加熱できるようにした熱現像処理)で熱現像処理して画像試料202〜208それぞれをそれぞれ得た。
【0255】
但し、露光後に、銀塩熱現像感光材料試料201については、実施例1に記載した熱現像方法(熱現像処理条件A:片面加熱熱現像処理)で熱現像処理して、画像試料201を得た。
【0256】
(熱現像処理条件B)
両面から加熱できるようにした熱現像装置を製作した(図1)。また、熱現像部の搬送ローラを小型のヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚の加熱プレートを113℃−118℃−121℃−121℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。さらに、搬送時間を合計12秒になるように設定した。
【0257】
《評価》
(Dmin及び感度の測定)
得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin=カブリ濃度)、感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、画像試料No.201の感度を100とする相対感度を表6に示した。
【0258】
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin部)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、画像試料No.201のそれを100とした相対値で表示した。
【0259】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin)
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0260】
(銀色調の評価)
作製した銀画像について目視評価を行い、下記の基準に従って銀色調の判定を行った。
【0261】
◎:診断に最適な銀色調である
○:診断に支障のない銀色調である
△:診断に問題ない程度である
×:診断に実用上許容範囲外である
(鮮鋭性の評価)
試料の10本/mmにおけるMTFを測定し、画像試料No.201のMTF値を100とする相対値で示す。
【0262】
【表5】
【0263】
【化28】
【0264】
【表6】
【0265】
表6より明らかなように、本発明の一般式(1)で表される化合物を用いると比較化合物に比べて少ない添加量で、高感度で、かつ優れた鮮鋭性をもたらし、現像処理後の画像かぶりの上昇も小さく(画像の耐光性に優れ)好ましい結果であることがわかる。
【0266】
ヒーターを千鳥配列した両面加熱現像、高速現像でも、本発明の感材は問題なく、高感度で低カブリであり、更に高品質(特に優れた鮮鋭性)であることがわかる。
【0267】
本発明の場合には、高感度で低カブリであり、且つ、画像耐光性、鮮鋭性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法、および熱現像装置を提供できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】実施例で用いた銀塩熱現像感光材料の両面から加熱できるようにした熱現像装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0269】
6 両面に画像形成層が形成された記録シート
10 熱現像装置
11 カセッテ
12 カセッテ装着部
13 取り出す吸盤
14 搬送ヒートドラム対
15 搬送ガイド
16 徐冷部
17 トレイ
18 搬送ローラ対
19 制御部
20 熱現像部
21,22,23,24 加熱プレート
25 押さえローラ(温度センサ内蔵)
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩熱現像感光材料、および銀塩熱現像感光材料の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療、印刷製版の分野では、画像形成材料の湿式処理に伴う廃液が作業性の上で問題となっており、近年では環境保全、省スペースの観点からも処理廃液の減量が強く望まれている。そこで、レーザ・イメージャーにより効率的な露光が可能で、高解像度で鮮明な黒色画像を形成することができる銀塩熱現像感光材料に関する技術が注目されている。
【0003】
この技術として、支持体上に有機脂肪酸銀塩、感光性ハロゲン化銀粒子、還元剤及びバインダーを含有する銀塩熱現像感光材料(例えば、特許文献1参照。)が知られている。
【0004】
しかし、銀塩熱現像感光材料は現像に関わる素材がすべて銀塩熱現像感光材料に内蔵されているため、湿式処理用感光材料に比べて銀塩熱現像感光材料の現像前の保存性が著しく劣るという悪い欠点があった。
【0005】
銀塩熱現像感光材料の感光性ハロゲン化銀粒子は、熱現像後も残留するので熱現像後の耐光性(画像保存)が必要とされる。そこで感光性ハロゲン化銀粒子としては、熱現像前の露光では現像反応(銀イオン還元剤による銀イオンの還元反応)の触媒として機能し得る潜像を該ハロゲン化銀粒子の表面に形成し、熱現像過程経過後の露光では該ハロゲン化銀粒子の表面より内部に多くの潜像を形成するようになることにより、表面における潜像形成が抑制されるハロゲン化銀粒子であることが好ましい。しかしながら、このように熱現像処理前後で潜像形成機能が変化するハロゲン化銀粒子(熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子)は従来知られていなかった。
【0006】
一般に、感光性ハロゲン化銀粒子が露光されるとハロゲン化銀粒子自身、または感光性ハロゲン化銀粒子表面上に吸着している分光増感色素が光励起されて、自由に移動できる電子を生じるが、この電子はハロゲン化銀粒子表面に存在する電子トラップ(感光中心)または当該粒子の内部にある電子トラップに競争的にトラップ(捕獲)される。従って、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子内部より表面に多く、且つ適当数ある場合には表面に優先的に潜像が形成され、現像可能となる。逆に、電子トラップとして有効な化学増感中心(化学増感核)やドーパント等がハロゲン化銀粒子表面より内部に多く、且つ適当数ある場合には内部に優先的に潜像が形成され、現像が困難となる。換言すると、前者の場合は内部より表面の感度が高く、後者の場合は内部より表面の感度が低いと言える(例えば、非特許文献1参照)。しかしながら、これら多くの文献に開示されてはいるが、いずれも銀塩熱現像感光材料に適したものではなかった。
【0007】
一方、発色現像薬とカプラーを含有した、臭化銀あるいはヨウ塩臭化銀を銀源とする、熱現像感光材料も知られている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、ハロゲン化銀による光散乱と吸収のために膜の濁りおよび不透明性が増加するため、実施例に記載されているようにかぶりが0.58〜1.2と極めて高くなってしまう。従って、得られる画像は一次原稿であって、直接観察し得る画像ではなく、これをもとにデジタル化して、さらに画像処理を施してかぶりを低減しかつ階調と色調を調整した再処理画像を得て始めて観察し得る画像となるものである(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
また、露光後高温(例えば、80℃以上)に加熱した場合に、還元可能な銀源(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応を通じて銀を生成する。この酸化還元反応は露光で発生した潜像の触媒作用によって促進される。露光領域中の還元可能な銀塩の反応によって生成した銀は黒色画像を提供し、これは非露光領域と対照をなし、画像の形成がなされる銀塩熱現像感光材料が開示され、さらには現像後の画像耐光性改良のために、沃化銀(AgI)を用いた銀塩熱現像感光材料が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、いずれも十分な感度・カブリレベルを達成できているものではない。
【0009】
そこで、高感度で、カブリが低く、現像後の耐光性(濃度変動、色調変動)、且つ露光前保存性(カブリの上昇、感度変動)に優れ、環境面・省エネ面で有利な銀塩熱現像感光材料を提供する技術が望まれていた。
【0010】
また、感光性熱現像記録シートにより画像データを可視像としてプリントする場合、例えば可視像の濃度が不足し鮮明な画像が得られないことがある。そこで、記録シートの表面と裏面の両方に画像形成層を設けることにより、光ビームで記録シートを露光したとき表面の画像形成層と裏面の画像形成層の両方に同一の潜像を記録でき、これを熱現像し可視像を表面と裏面の両方に形成することで、濃度が大きく鮮明な可視像を得るとの技術が開示されている(例えば、特許文献5参照)。そして、該技術においては加熱を行う装置として、加熱プレートと押さえローラとの間に記録シートを搬送し加熱する熱現像装置が記載開示されている。しかしながら、このような加熱プレートを一枚だけ設けたものでは、加熱プレートに接する面が押さえローラ側の面より高い温度で加熱されてしまい、両面の可視像が同一(濃度)にならないので、鮮明な(かつ濃度がおおきい)可視像を得ることは困難であった。
【0011】
鮮明な可視像を得るためには、表面の画像形成層と裏面の画像形成層とを同一加熱条件で加熱し両面の可視像を同一(濃度)にする必要があり、鮮明な可視像が得られる技術が望まれていた。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書
【特許文献2】特開2003−091052号公報
【特許文献3】特開2001−312026号公報
【特許文献4】特開2003−215764号公報
【特許文献5】特開2001−13648号公報
【非特許文献1】日本写真学会編、写真工学の基礎(銀塩写真編)、コロナ社(1979)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高感度で低カブリであり、且つ照度不軌特性、生保存性、鮮鋭性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、および該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0014】
1.支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
【0015】
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
(式中、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。またR1およびR2は同じでも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を表す。)
2.前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上25以下の平板状粒子であることを特徴とする1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0016】
3.前記画像形成層が前記支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0017】
4.前記画像形成層が前記支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【0018】
5.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光し、熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0019】
6.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料をX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0020】
7.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0021】
8.1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置された熱現像装置を用い、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度を高く制御する制御手段を備えることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【0022】
9.前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)である、ことを特徴とする8に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、高感度で低カブリであり、且つ照度不軌特性、生保存性、鮮鋭性、画像耐光性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、および該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態である、銀塩熱現像感光材料で用いる、本発明に係る一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物、感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤、バインダー、架橋剤を初めとする各種添加剤、塗布技術、露光・現像条件について順次、詳細に説明する。
【0026】
(Ch化合物:一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物)
本発明に用いられる一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物について説明する。
【0027】
前記一般式(I)において、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。
【0028】
mは2〜6の整数であり、好ましくは2〜3である。
【0029】
R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。
【0030】
R1及びR2で表される脂肪族基としては炭素数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖、又は分岐したアルキル、アルケニル、アルキニル又はシクロアルキル基が挙げられる。具体的には例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、デシル、ドデシル、イソプロピル、t−ブチル、2−エチルヘキシル、アリル、2−ブテニル、7−オクテニル、プロパルギル、2−ブチニル、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロドデシル等の各基が挙げられる。
【0031】
R1及びR2で表される芳香族基としては炭素数6〜20のものが挙げられ、具体的には例えばフェニル、ナフチル、アントラニル等の各基が挙げられる。
【0032】
R1及びR2で表されるヘテロ環基としては、単環でも縮合環でもよく、O、S、及びN原子、アミンオキシド基の少なくとも1種を環内に有する5〜6員のヘテロ環基が挙げられる。具体的には例えば、ピロリジン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、オキシラン、モルホリン、チオモルホリン、チオピラン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、ピリジン、フラン、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イソキサゾール、イソチアゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール及びこれらのベンゼローグ類から導かれる基が挙げられる。
【0033】
R1及びR2で環を形成するものとしては員数4から7員環を挙げることができる。このましくは5〜7員環である。
【0034】
R1及びR2で好ましい基としてはヘテロ環基および芳香族基であり、更に好ましくはヘテロ芳香環基である。
【0035】
R1及びR2で表される脂肪族基、芳香族基又はヘテロ環基は更に置換基により置換されていてもよく、該置換基としてはハロゲン原子(例えば塩素原子、臭素原子等)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、シクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アラルキル基(例えばベンジル基、2−フェネチル基等)、アリール基(例えばフェニル基、ナフチル基、p−トリル基、p−クロロフェニル基等)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等)、シアノ基、アシルアミノ基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基等)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等)、スルホニルアミノ基(例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基等)、ウレイド基(例えば3−メチルウレイド基、3,3−ジメチルウレイド基、1,3−ジメチルウレイド基等)、スルファモイルアミノ基(ジメチルスルファモイルアミノ基、ジエチルスルファモイルアミノ基等)、カルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基等)、スルファモイル基(例えばエチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基等)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基等)、スルホニル基(例えばメタンスルホニル基、ブタンスルホニル基、フェニルスルホニル基等)、アシル基(例えばアセチル基、プロパノイル基、ブチロイル基等)、アミノ基(メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトロソ基、アミンオキシド基(例えばピリジン−オキシド基等)、イミド基(例えばフタルイミド基等)、ジスルフィド基(例えばベンゼンジスルフィド基、ベンズチアゾリル−2−ジスルフィド基等)、ヘテロ環基(例えば、ピリジル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基、ベンズオキサゾリル基等)が挙げられる。
【0036】
電子吸引性基を含有する置換基が特に好ましい。R1及びR2はこれらの置換基の中から単独又は複数を有することができる。またそれぞれの置換基は更に上記の置換基で置換されていてもよい。
【0037】
以下に本発明で用いられる一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
【化3】
【0041】
一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物の乳剤への添加時期は粒子形成、化学熟成前又は後のどの工程でもできる。好ましい添加時期は脱塩時〜化学増感前である。好ましい添加量は1×10-8〜1モル/Agモル、更に好ましくは1×10-6〜1×0.3モル/Agモルである。
【0042】
(感光性ハロゲン化銀)
本発明に係る感光性ハロゲン化銀は、露光時に表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子である(以下、熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子ともいう。)。
【0043】
(熱変化内部潜像型ハロゲン化銀粒子)
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀は、熱現像前は表面潜像型で、熱現像後に内部潜像型へ変換するハロゲン化銀粒子である。該ハロゲン化銀粒子は、粒子成長時にホールトラップ効果の微小な硫化銀や銀核や金属などを内部にドープすることで得られる。該ハロゲン化銀粒子が現像熱により、内部にドープされた微小核が凝集して、強い電子トラップ効果へ変換する。
【0044】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀粒子は、還元増感、カルコゲン増感、貴金属増感、所謂化学増感をハロゲン化銀粒子成長時に施して得ることができる。特に好ましくはハロゲン化銀粒子のコア部分に施すことである。本発明においては、粒子のコア部分とは、粒子1つの銀量の0〜99%までのところを指す。好ましくは0〜50%である。
【0045】
一般的に還元増感法の具体的な化合物としてはアスコルビン酸、二酸化チオ尿素の他に、例えば、塩化第一スズ、アミノイミノメタンスルフィン酸、ヒドラジン誘導体、ボラン化合物、シラン化合物、ポリアミン化合物等を用いることができる。また、粒子形成中のpHを6.5以上、10.0以下に保持して熟成することにより還元増感することができる。
【0046】
本発明においては、下記一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物を使用することが好ましい。本発明に係るハロゲン化銀粒子のコア部分を成長するときのpHは4.0〜10.0である。好ましくはpH5.5〜8.0下でカルコゲン化銀の生成を施すことである。一般式(C−1)または(C−2)のカルコゲン放出化合物が、pHによってカルコゲン化銀の生成をコントロールができるため、ハロゲン化銀粒子の表面に大きいかぶり核の生成が抑制される。
【0047】
【化4】
【0048】
一般式(C−1)において、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基、複素環基、−OR7、−NR8(R9)、−SR10、−SeR11、ハロゲン原子、水素原子を表す。R7、R10及びR11はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基、水素原子またはカチオンを表し、R8及びR9はそれぞれ脂肪族基、芳香族基、複素環基または水素原子を表す。また、Z1とZ2、Z2とZ3、Z3とZ1が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0049】
一般式(C−2)において、Z4及びZ5はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基、複素環基、−NR1(R2)、−OR3または−SR4を表す。R1、R2、R3及びR4はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、アルキル基、アラルキル基、アリール基または複素環基を表す。但し、R1及びR2は水素原子またはアシル基であってもよい。また、Z4とZ5が環を形成してもよい。Chalcogenは硫黄、セレン、テルルを表す。
【0050】
以下に、一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物の具体例を示す。
【0051】
【化5】
【0052】
【化6】
【0053】
【化7】
【0054】
【化8】
【0055】
一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物は、水あるいは適当な有機溶媒、例えば、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール等)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。
【0056】
また、既によく知られている乳化分散法によって、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製して用いることができる。更に固体分散法として知られている方法によって、一般式(C−1)または(C−2)で表されるカルコゲン放出化合物の粉末を水または有機溶媒の中にボールミル、コロイドミル、あるいは超音波によって分散し用いることもできる。
【0057】
ハロゲン化銀粒子の形状としては立方体、平板状粒子、八面体、球状粒子、棒状粒子、ジャガイモ状粒子等を挙げることができるが、本発明においては、特に平板状粒子、立方体状粒子、八面体が好ましい。平板状ハロゲン化銀粒子を用いる場合の平均アスペクト比(AR=主平面の円相当直径/厚み)は好ましくは100/1〜2/1、より好ましくは50/1〜3/1がよい。
【0058】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上がアスペクト比2以上の平板状粒子であることが好ましい。このことにより、高感度、高CP化、鮮鋭性が優れる効果が奏されて好ましい。より好ましくは感光性ハロゲン化銀粒子の全投影面積の50%以上、さらに好ましくは全投影面積の70%以上、最も好ましくは全投影面積の80%以上100%以下が、アスペクト比2以上の平板状粒子である。
【0059】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀粒子においては、電子トラップ性ドーパントをハロゲン化銀粒子の内部に含有させることが感度及び画像保存性上好ましい。なお、熱現像前の画像形成のための露光の際には、正孔(ホール)トラップとして機能し、熱現像時に変質し、熱現像後においては電子トラップとして機能することができるドーパントハロゲン化銀粒子が特に好ましい。
【0060】
感光性ハロゲン化銀粒子乳剤の塗布試料を光導電測定する際、本発明に係る熱変換内部潜像型ハロゲン化銀粒子乳剤の熱現像後の光導電度(信号の大きさ)が、熱現像前の80%以下に低下する。好ましくは50%以下に低下する。更に好ましくは25%以下に低下することである。光導電度が低下する現象は電子トラップ効果へ変換したことを示す意味である。
【0061】
ここで用いられる電子トラップ性ドーパントとは、ハロゲン化銀を構成する銀及びハロゲン以外の元素または化合物であって、当該ドーパント自身が自由電子をトラップ(捕獲)できる性質を有するまたは当該ドーパントがハロゲン化銀粒子内に含有されることで電子トラップ性の格子欠陥等の部位が生じるものをいう。例えば、銀以外の金属イオンまたは硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲン(酸素族元素)または窒素原子などを含む無機化合物または有機化合物、またはその錯体等が挙げられる。
【0062】
金属イオンまたはその塩もしくは錯体としては、鉛イオン、ビスマスイオン、金イオン等または臭化鉛、硝酸鉛、炭酸鉛、硫酸鉛、硝酸ビスマス、塩化ビスマス、三塩化ビスマス、炭酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、塩化金酸、酢酸鉛、ステアリン酸鉛、酢酸ビスマス等を挙げることができる。
【0063】
硫黄、セレン、テルルのようなカルコゲンを含む化合物としては、写真業界において、一般にカルコゲン増感剤として知られているカルコゲン放出性の種々の化合物を使用することができる。また、カルコゲンまたは窒素を含有する有機物としては、ヘテロ環式化合物が好ましい。例えば、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、インドレニン、テトラザインデンであり、好ましくはイミダゾール、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、チアジアゾール、オキサジアゾール、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、テトラザインデンである。
【0064】
なお、上記のヘテロ環式化合物は置換基を有していてもよく、置換基として好ましくは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、スルホニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基であり、更に好ましくはアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヘテロ環基である。
【0065】
なお、本発明に用いられるハロゲン化銀粒子には、上記のドーパントのように電子トラップ性ドーパントとして機能するように、あるいはホールトラップ性ドーパントとして機能するように18族周期表の6族から11族に属する遷移金属のイオンを当該金属の酸化状態を配位子(リガンド)等により化学的に調整して含有させてもよい。上記の遷移金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Ptが更に好ましい。
【0066】
本発明において、上記の各種ドーパントについては、1種類でも同種あるいは異種の化合物もしくは錯体を2種以上併用してもよい。但し、少なくとも1種は、熱現像後の露光の際に、電子トラップ性ドーパントとして機能することが必要である。これらのドーパントはどのような化学的形態でもハロゲン化銀粒子内に導入してもよい。
【0067】
ドーパントの好ましい含有率は、銀1モルに対し1×10-9〜1×10モルの範囲が好ましく、1×10-8〜1×10-1モルの範囲がより好ましい。更に、1×10-6〜1×10−1モルが好ましい。但し、最適量はドーパントの種類、ハロゲン化銀粒子の粒径、形状等、その他環境条件等に依存するのでこれらの条件に応じてドーパント添加条件の最適化の検討をすることが好ましい。
【0068】
本発明においては、遷移金属錯体または錯体イオンとしては、下記一般式で表されるものが好ましい。
【0069】
一般式〔ML6〕m
式中、Mは18族元素周期表の6〜11族の元素から選ばれる遷移金属、Lは配位子を表し、mは0、1−、2−、3−または4−を表す。Lで表される配位子の具体例としては、ハロゲンイオン(例えば、弗素イオン、塩素イオン、臭素イオン、沃素イオン)、シアナイド、シアナート、チオシアナート、セレノシアナート、テルロシアナート、アジド及びアコの各配位子、ニトロシル、チオニトロシル等が挙げられ、好ましくはアコ、ニトロシル及びチオニトロシル等である。アコ配位子が存在する場合には、配位子の一つまたは二つを占めることが好ましい。Lは同一でもよく、また異なっていてもよい。
【0070】
これらの金属のイオンまたは錯体イオンを提供する化合物は、ハロゲン化銀粒子形成時に添加し、ハロゲン化銀粒子中に組み込まれることが好ましく、ハロゲン化銀粒子の調製、つまり核形成、成長、物理熟成、化学増感の前後のどの段階で添加してもよいが、特に核形成、成長、物理熟成の段階で添加するのが好ましく、更には核形成、成長の段階で添加するのが好ましく、最も好ましくは核形成の段階で添加する。添加に際しては、数回に亘って分割して添加してもよく、ハロゲン化銀粒子中に均一に含有させることもできるし、例えば、特開昭63−29603号、特開平2−306236号、同3−167545号、同4−76534号、同6−110146号、同5−273683号等の各公報に記載されている様に粒子内に分布を持たせて含有させることもできる。
【0071】
これらの金属化合物は、水あるいは適当な有機溶媒(例えば、アルコール類、エーテル類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類)に溶解して添加することができるが、例えば、金属化合物粉末の水溶液もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を、粒子形成中の水溶性銀塩溶液または水溶性ハライド溶液中に添加しておく方法、あるいは銀塩溶液とハライド溶液が同時に混合されるとき第3の水溶液として添加し、3液同時混合の方法でハロゲン化銀粒子を調製する方法、粒子形成中に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入する方法、あるいはハロゲン化銀調製時に予め金属のイオンまたは錯体イオンをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させる方法等がある。
【0072】
特に、金属化合物の粉末の水溶液、もしくは金属化合物とNaCl、KClとを一緒に溶解した水溶液を水溶性ハライド溶液に添加する方法が好ましい。粒子表面に添加する時には、粒子形成直後、物理熟成時途中、もしくは終了時または化学熟成時に必要量の金属化合物の水溶液を反応容器に投入することもできる。
【0073】
なお、非金属性ドーパントも上記の金属性ドーパントと同様の方法によってハロゲン化銀内部に導入することができる。
【0074】
本発明の銀塩熱現像感光材料において、上記のドーパントが電子トラップ性を有するか否かについては、次のように写真業界において従来一般的に用いられている方法で評価することができる。即ち、上記のドーパントまたはその分解物がハロゲン化銀粒子内にドープされたハロゲン化銀粒子からなるハロゲン化銀乳剤を、マイクロ波光伝導測定法等による光伝導測定により、ドーパントを含有していないハロゲン化銀粒子乳剤を基準として光伝導の減少度を測定することにより評価できる。または、当該ハロゲン化銀粒子の内部感度と表面感度の比較実験によってもできる。
【0075】
または、銀塩熱現像感光材料とした後に、本発明に係る電子トラップ性ドーパントの効果を評価する場合の方法は、例えば、当該銀塩熱現像感光材料を露光前に通常の実用的熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光し、更に同一の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線(センシトメトリーカーブ)に基づき得られる感度を当該電子トラップ性ドーパント含まないハロゲン化銀粒子乳剤を使用した銀塩熱現像感光材料の感度と比較することにより評価できる。
【0076】
即ち、本発明に係るドーパントを含有するハロゲン化銀粒子乳剤を含む前者の試料の感度は、当該ドーパントを含まない後者の試料の感度に比較して低くなっていることの確認が必要である。
【0077】
なお、当該材料に一定時間(例えば、30秒間)、紫外〜可視光または分光増感した範囲の光で光学楔を通して露光した後に、通常の熱現像条件で熱現像をしたときに得られる特性曲線に基づき得られる当該試料の感度に対して露光前に通常の熱現像条件と同じ条件で加熱して、その後に上記と同一の一定時間、及び一定の露光を施し、更に通常の熱現像条件で熱現像して得られる特性曲線に基づき得られる感度が1/5以下、好ましくは1/10以下、更に好ましくは、1/20以下であることが好ましい。
【0078】
感光性ハロゲン化銀は光センサとして機能するものであり、画像形成後の白濁を低く抑える為、また良好な画質を得るために粒子サイズが小さいことが好ましい。平均粒子サイズで0.08μm以下、好ましくは0.01〜0.08μm、特に0.02〜0.06μmが好ましい。この小サイズの粒子の含有率は70%以上であることが好ましい。一方、感度や階調調整のためには、やや大きい粒子が好ましい。平均粒子サイズは0.1μm以下、好ましくは0.04〜0.1μm、特に0.05〜0.08μmが好ましい。この大サイズの粒子の含有率は30%以下であることが好ましい。
【0079】
感光性ハロゲン化銀の量は、銀塩熱現像感光材料としては後述の非感光性脂肪族カルボン酸銀に対して銀比率で2〜20%が好ましく、更に好ましくは3〜10%の間である。
【0080】
本発明の銀塩熱現像感光材料中のハロゲン化銀乳剤は、一種だけでもよいし、二種以上、例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるものを併用してもよい。
【0081】
本発明に係る感光性ハロゲン化銀の使用量としては、有機脂肪酸銀塩1モルに対して感光性ハロゲン化銀0.01モル以上、0.5モル以下が好ましく、0.02モル以上、0.3モル以下がより好ましく、0.03モル以上、0.25モル以下が特に好ましい。別々に調製した感光性ハロゲン化銀と有機脂肪酸銀塩の混合方法及び混合条件については、それぞれ調製終了したハロゲン化銀粒子と有機脂肪酸銀塩を高速攪拌機やボールミル、サンドミル、コロイドミル、振動ミル、ホモジナイザー等で混合する方法や、あるいは有機脂肪酸銀塩の調製中のいずれかのタイミングで調製終了した感光性ハロゲン化銀を混合して有機脂肪酸銀塩を調製する方法等があるが、本発明の効果が十分に現れる限りにおいては特に制限はない。
【0082】
上記した各種の方法によって調製される感光性ハロゲン化銀は、また粒子の表面に化学増感ができる。例えば、含硫黄化合物、金化合物、白金化合物、パラジウム化合物、銀化合物、錫化合物、クロム化合物またはこれらの組合せによって化学増感することができる。この化学増感の方法及び手順については、例えば、米国特許第4,036,650号、英国特許第1,518,850号の各明細書、特開昭51−22430号、同51−78319号、同51−81124号等の各公報に記載されている。また、ハロゲン化銀形成成分により有機脂肪酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換させる際に、米国特許第3,980,482号明細書に記載されるように、増感を達成するために低分子量のアミド化合物を共存させてもよい。
【0083】
英国特許第1,447,454号明細書に記載されているように、脂肪族カルボン酸銀塩粒子を調製する際に、ハライドイオン等のハロゲン成分を脂肪族カルボン酸銀塩形成成分と共存させ、これに銀イオンを注入することで脂肪族カルボン酸銀塩粒子の生成とほぼ同時に生成させたハロゲン化銀粒子を併用することもできる。また、脂肪族カルボン酸銀塩にハロゲン含有化合物を作用させ、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによりハロゲン化銀粒子を調製し、当該粒子を併用することも可能である。即ち、予め調製された脂肪族カルボン酸銀塩の溶液もしくは分散液、または脂肪族カルボン酸銀塩を含むシート材料にハロゲン化銀形成成分を作用させて、脂肪族カルボン酸銀塩の一部を感光性ハロゲン化銀に変換させることもできる。本発明に係るハロゲン化銀粒子は、いかなる方法で画像形成層に添加されてもよく、このときハロゲン化銀粒子は還元可能な銀源(脂肪族カルボン酸銀塩)に近接するように配置するのができるが、本発明に係るハロゲン化銀粒子は予め調製しておき、これを脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製時に添加することが、ハロゲン化銀粒子調製工程と脂肪族カルボン酸銀塩粒子調製工程を分離して扱え、製造コントロール上は好ましい。また、本発明に係るハロゲン化銀を水溶性溶媒から有機溶媒に分散して、塗布直前に脂肪族カルボン酸銀塩の塗布液に添加、分散することもできる。または、本発明に係るハロゲン化銀は有機溶媒中調製することも可能である。
【0084】
ハロゲン化銀粒子形成成分としては、無機ハロゲン化合物、オニウムハライド類、ハロゲン化炭化水素類、N−ハロゲン化合物、その他の含ハロゲン化合物があり、その具体例は、米国特許第4,009,039号、同3,457,075号、同4,003,749号、英国特許第1,498,956号の各明細書、及び特開昭53−27027号、同53−25420号等の各公報に開示されている。
【0085】
上述のように別途調製したハロゲン化銀粒子に脂肪族カルボン酸銀塩の一部をコンバージョンすることで製造したハロゲン化銀粒子を併用してもよい。これらのハロゲン化銀粒子は、別途調製したハロゲン化銀粒子、脂肪族カルボン酸銀塩のコンバージョンによるハロゲン化銀粒子とも、脂肪族カルボン酸銀塩1モルに対し0.001〜0.7モル、好ましくは0.03〜0.5モルで使用するのが好ましい。
【0086】
別途調製した感光性ハロゲン化銀粒子は、脱塩工程により不要な塩類等を、例えば、ヌードル法、フロキュレーション法、限外濾過法、電気透析法等の公知の脱塩法により脱塩することができるが、脱塩しないで用いることもできる。
【0087】
(非感光性有機脂肪酸銀塩)
本発明において、非感光性有機脂肪酸銀塩(以下、有機脂肪酸銀塩ともいう。)は還元可能な銀源であり、有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、特に、この中でも長鎖の(炭素数10〜30、好ましくは15〜25)脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環化合物の銀塩が好ましい。配位子が銀イオンに対する総安定度常数として4.0〜10.0の値を持つようなリサーチ・ディスクロージャー(以下、RDともいう)17029及び29963に記載された有機または無機の錯体も好ましい。これら、好適な銀塩の例としては以下のものが挙げられる。
【0088】
有機酸の銀塩:没食子酸、蓚酸、ベヘン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩。銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩:1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等の銀塩。アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀塩または錯体:アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等)の反応生成物の銀塩または錯体。チオン類の銀塩または錯体:3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン、3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン等の銀塩または錯体。イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンズトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体または塩。サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩、及びメルカプチド類の銀塩。
【0089】
これらの中、好ましい銀塩としては、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀及びステアリン酸銀が挙げられる。本発明においては、有機脂肪酸銀塩が2種以上混合されることが現像性を上げ、高濃度、高コントラストの銀画像を形成する上で好ましく、例えば、2種以上の有機酸混合物に銀イオン溶液を混合して調製することが好ましい。
【0090】
有機脂肪酸銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号公報に記載される様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)を加えて有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム等)を調製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを混合して有機脂肪酸銀塩の結晶を調製する。その際にハロゲン化銀粒子を混在させてもよい。
【0091】
本発明に係る有機脂肪酸銀塩は種々の形状において使用できるが、平板状の粒子が好ましい。特に、アスペクト比3以上の平板状有機脂肪酸銀塩粒子であり、且つ最大面積を有する2枚のほぼ平行に相対する面(主平面)の形状異方性を小さくして、画像形成層中での充填を行うため、主平面方向から計測される該平板状有機脂肪酸銀塩粒子の針状比率の平均値が、1.1以上、10.0未満である粒子が好ましい。更に好ましい針状比率は1.1以上、5.0未満である。
【0092】
本発明において、アスペクト比3以上の平板状有機脂肪酸銀塩粒子であるとは、前記平板状有機脂肪酸銀塩粒子が全有機脂肪酸銀塩粒子の50個数%以上を占めることを言う。更に、本発明に係る有機脂肪酸銀塩はアスペクト比3以上の平板状粒子が全粒子の個数の60%以上を占めることが好ましく、更に好ましくは70%以上(個数)であり、特に好ましくは80%以上(個数)である。
【0093】
本発明に係る平板状有機脂肪酸銀塩粒子のアスペクト比は、好ましくは3〜20であり、更に好ましくは3〜10である。その理由としては、アスペクト比が低すぎると有機脂肪酸銀塩粒子が最密化され易くなり、またアスペクト比が余りに高い場合には有機脂肪酸銀塩粒子同士が重なり易く、またくっついた状態で分散され易くなるので光散乱等が起き易くなり、その結果として銀塩熱現像感光材料の透明感の低下をもたらすので、上記範囲が好ましいと考えている。
【0094】
上記の平均粒径を求めるには、分散後の有機脂肪酸銀塩を希釈して、カーボン支持膜付きグリッド上に分散し、透過型電子顕微鏡(日本電子製:2000FX型)を用いて、直接倍率5000倍にて撮影を行う。撮影したネガをスキャナでデジタル画像として取り込み、適当な画像処理ソフトを用いて粒径(円相当径)を300個以上測定し、平均粒径を算出する。
【0095】
また、平均厚さを求めるには、以下に示すような透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた方法により算出する。
【0096】
まず、支持体上に塗布された画像形成層を接着剤により適当なホルダーに貼り付け、支持体面と垂直な方向にダイヤモンドナイフを用いて厚さ0.1〜0.2μmの超薄切片を作製する。この超薄切片を、銅メッシュに支持させ、グロー放電により親水化されたカーボン膜上に移し液体窒素により−130℃以下に冷却しながらTEMを用いて、倍率5,000〜40,000倍にて明視野像を観察し、画像はフィルム、イメージングプレート、CCDカメラ等に素早く記録する。この際、観察される視野としては、切片に破れや弛みがない部分を適宜選択することが好ましい。
【0097】
カーボン膜としては、極薄いコロジオン、ホルムバールなど有機膜に支持されたものを使用することが好ましく、更に好ましくは岩塩基板上に形成し基板を溶解除去して得るか、または上記有機膜を有機溶媒、イオンエッチングにより除去して得られたカーボン単独の膜である。TEMの加速電圧としては80〜400kVが好ましく、特に好ましくは80〜200kVである。
【0098】
その他、電子顕微鏡観察技法及び試料作製技法の詳細については、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/医学・生物学電子顕微鏡観察法」(丸善)、「日本電子顕微鏡学会関東支部編/電子顕微鏡生物試料作製法」(丸善)を、それぞれ参考にすることができる。
【0099】
適当な媒体に記録されたTEM画像は、画像1枚を少なくとも1024×1024画素、好ましくは2048×2048画素以上に分解し、コンピュータによる画像処理を行うことが好ましい。画像処理を行うためには、フィルムに記録されたアナログ画像はスキャナ等でデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じて施すことが好ましい。その後、ヒストグラムを作製し、2値化処理によって有機銀に相当する箇所を抽出する。抽出した300個以上の有機脂肪酸銀塩粒子の厚さを適当なソフトでマニュアル測定し、平均値を求める。
【0100】
また、平板状有機脂肪酸銀塩粒子の針状比率の平均値は、下記の方法により求められる。まず、平板状有機脂肪酸銀塩粒子を含む画像形成層のバインダーを溶解可能な有機溶媒にて膨潤させて支持体上から剥離し、上記溶媒を用いた超音波洗浄、遠心分離、上澄み除去を5回繰り返す。なお、上記工程はセーフライト下で実施する。
【0101】
続いて、有機銀固形分濃度が0.01%になるようにメチルエチルケトン(MEK)にて希釈し、超音波分散した後、グロー放電により親水化されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に滴下し乾燥させる。
【0102】
粒子が搭載されたフィルムは、真空蒸着装置にてフィルム面に対して30°の角度から、厚さとして3nmのPt−Cを電子ビームにより斜め蒸着した後、観察に使用することが好ましい。
【0103】
作製された試料は、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて加速電圧2〜4kVにて倍率として5000〜20000倍にて2次電子像を観察し、適当な記録媒体への画像保存を行う。
【0104】
上記処理のためには、電子顕微鏡本体からの画像信号をAD変換し、直接メモリ上にデジタル情報として記録可能な装置を用いるのが便利であるが、ポラロイドフィルム等に記録されたアナログ画像もスキャナなどでデジタル画像に変換し、シェーディング補正、コントラスト・エッジ強調などを必要に応じ施すことにより使用できる。
【0105】
上記の画像処理の手順としては、まずヒストグラムを作製し2値化処理によって、アスペクト比3以上の有機脂肪酸銀塩粒子に相当する箇所を抽出する。止むを得ず凝集した粒子は、適当なアルゴリズムまたはマニュアル操作にて切断し輪郭抽出を行う。その後、各粒子の最大長(MX LNG)及び粒子の最小幅(WIDTH)を少なくとも1000個の粒子に関して各々測定し、粒子毎に下記式にて針状比率を求める。粒子の最大長とは、粒子内の2点を直線で結んだ時の最大値を言う。また、粒子の最小幅とは粒子に外接する2本の平行線を引いた時、平行線の距離が最小値になる時の値を言う。
【0106】
針状比率=(MX LNG)÷(WIDTH)
その後、計測された全粒子に関する針状比率の平均値を算出する。上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。標準試料としては、米国ダウケミカル社より市販されるユニフォーム・ラテックス・パーティクルス(DULP)が適当であり、0.1〜0.3μmの粒径に対して10%未満の変動係数を有するポリスチレン粒子が好ましく、具体的には粒径0.212μm、標準偏差0.0029μmというロットが入手可能である。
【0107】
画像処理技術の詳細は、「田中弘編 画像処理応用技術(工業調査会)」を参考にすることができ、画像処理プログラムまたは装置としては、上記操作が可能であれば特に限定はされないが、一例としてニレコ社製Luzex−IIIが挙げられる。
【0108】
前記の形状を有する有機脂肪酸銀塩粒子を得る方法としては特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態、及び前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすることなどが有効である。
【0109】
平板状有機脂肪酸銀塩粒子は、必要に応じてバインダーや界面活性剤等と共に予備分散した後、メディア分散機または高圧ホモジナイザー等で分散粉砕することが好ましい。上記予備分散には、アンカー型、プロペラ型等の一般的攪拌機や高速回転遠心放射型攪拌機(ディゾルバ)、高速回転剪断型撹拌機(ホモミキサ)を使用することができる。
【0110】
また、上記メディア分散機としては、ボールミル、遊星ボールミル、振動ボールミルなどの転動ミルや、媒体攪拌ミルであるビーズミル、アトライター、その他バスケットミル等を用いることが可能であり、高圧ホモジナイザーとしては、壁、プラグなどに衝突するタイプ、液を複数に分けてから高速で液同士を衝突させるタイプ、細いオリフィスを通過させるタイプ等、様々なタイプを用いることができる。
【0111】
メディア分散時に使用されるセラミックスビーズに用いられるセラミックスとしては、例えば、Al2O3、BaTiO3、SrTiO3、MgO、ZrO、BeO、Cr2O3、SiO2、SiO2−Al2O3、Cr2O3−MgO、MgO−CaO、MgO−C、MgO−Al2O3(スピネル)、SiC、TiO2、K2O、Na2O、BaO、PbO、B2O3、SrTiO3(チタン酸ストロンチウム)、BeAl2O4、Y3Al5O12、ZrO2−Y2O3(立方晶ジルコニア)、3BeO−Al2O3−6SiO2(合成エメラルド)、C(合成ダイヤモンド)、Si2O−nH2O、チッカ珪素、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ等が好ましい。分散時におけるビーズや分散機との摩擦による不純物生成が少ない等の理由から、イットリウム安定化ジルコニア、ジルコニア強化アルミナ(これらジルコニアを含有するセラミックスを、以下ジルコニアと略す)が特に好ましく用いられる。
【0112】
平板状有機脂肪酸銀塩粒子を分散する際に用いられる装置類において、該有機脂肪酸銀塩粒子が接触する部材の材質としてジルコニア、アルミナ、窒化珪素、窒化硼素などのセラミックス類またはダイヤモンドを用いることが好ましく、中でもジルコニアを用いることが好ましい。
【0113】
上記分散を行う際、バインダー濃度は有機銀質量の0.1〜10%添加することが好ましく、予備分散から本分散を通して液温が45℃を上回らないことが好ましい。また、本分散の好ましい運転条件としては、例えば高圧ホモジナイザーを分散手段として用いる場合には、29.42〜98.06MPa、運転回数は2回以上が好ましい条件として挙げられる。また、メディア分散機を分散手段として用いる場合は、周速が6〜13m/秒が好ましい条件として挙げられる。
【0114】
また、ビーズや部材の一部にジルコニアを使用し、分散時に分散乳剤中に混入させることができる。これが写真性能上好ましく有効である。ジルコニアの破片を分散乳剤中に後添加したり、予備分散時に予め添加したりしてもよい。具体的な方法としては特に限定されないが、一例としてジルコニアビーズを充填したビーズミルにMEKを循環させれば、高濃度のジルコニア溶液を得ることができる。これを好ましい時期に、好ましい濃度で添加してやればよい。
【0115】
感光性ハロゲン化銀と有機脂肪酸銀塩を含有する感光性乳剤中においては、銀1g当たり0.01〜0.5mgのジルコニウムを含有することが好ましく、更に好ましいジルコニウム含有量は、0.01〜0.3mgである。また好ましい含有形態としては、粒径0.02μm以下の微粒子であることが好ましい。
【0116】
このような特徴を有する感光性乳剤を調製する条件としては、特に限定されないが、有機酸アルカリ金属塩ソープ形成時の混合状態及び/または前記ソープに硝酸銀を添加する際の混合状態などを良好に保つことや、ソープと反応する硝酸銀の割合を最適にすること、分散粉砕にはメディア分散機または高圧ホモジナイザーなどで分散すること、その際バインダー濃度は有機脂肪酸銀塩量の0.1〜10質量%添加すること、乾燥から本分散終了までの温度が45℃を上回らないこと等に加えて、調液時にはディゾルバーを使用し周速2.0m/秒以上で攪拌することなどが好ましい条件として挙げられる。
【0117】
上記のような特定の投影面積値を有する有機銀粒子の投影面積や全投影面積にしめる割合などは、上記アスペクト比3以上の平板状粒子の平均厚さを求める個所で記載したと同様に、TEMを用いた方法により有機銀に相当する個所を抽出する。この際に、凝集した有機銀は一つの粒子と見なして処理し、各粒子の面積を求める。同様にして、少なくとも1,000個、好ましくは2,000個の粒子について面積を求め、それぞれについて、A:0.025μm2未満、B:0.025μm2以上、0.2μm2未満、C:0.2μm2以上の3群に分類する。
【0118】
本発明の銀塩熱現像感光材料は、A群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の70%以上であり、且つC群に属する粒子の面積の合計が測定された全粒子の面積の10%以下を満たすものが好ましい。
【0119】
上記手順で計測を行う際には、予め標準試料を用いて、1画素当たりの長さ補正(スケール補正)及び計測系の2次元歪みの補正を十分に行うことが好ましい。
【0120】
有機脂肪酸銀塩粒子は単分散粒子であることが好ましく、好ましい単分散度としては1〜30%であり、この範囲の単分散粒子にすることにより、濃度の高い画像が得られる。ここでいう単分散度とは下記式で定義される。
【0121】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
有機脂肪酸銀塩の平均粒径は0.01〜0.2μmが好ましく、更に好ましくは0.02〜0.15μmであり、平均粒径(円相当径)とは電子顕微鏡で観察される個々の粒子像と等しい面積を有する円の直径を表す。
【0122】
銀塩熱現像感光材料の失透を防ぐためには、ハロゲン化銀及び有機脂肪酸銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5〜2.2gであることが好ましい。この範囲にすることで硬調な画像が得られる。
【0123】
(還元剤)
本発明においては、銀イオンの還元剤として、下記一般式(1)で表される化合物を単独又は他の異なる化学構造を有する還元剤と併せて用いることが好ましい。ここで併用する還元剤についてもビスフェノール型の還元剤であることが好ましい。一般式(1)で表される化合物と併用できる還元剤は、例えば特開平11−65021号の段落番号「0043」〜「0045」、欧州特許公開EP0803764A1号の7頁34行〜18頁12行、特開2003−302723号の段落番号「0124」〜「0133」、特開2003−315954号の段落番号「0124」〜「0127」、特開2004−4650号の段落番号「0042」〜「0057」に記載されている。一般式(1)で表される化合物は有機酸銀塩を含有する画像形成層に含有させることが好ましいが、隣接する非画像形成層に含有させてもよい。
【0124】
【化9】
【0125】
前記一般式(1)において、R1は水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基等が挙げられる。好ましくは水素原子、アルキル基、シクロアルキル基またはアルケニル基であり、更に好ましくは水素原子またはアルキル基である。これらの置換基は更に置換基を有していてもよく、置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基、アニリノ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、アルキル及びアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリール及びヘテロ環アゾ基、イミド基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基、ホスファト基、スルファト基、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0126】
R2及びR3は各々独立に炭素原子数が3〜6の分岐アルキル基を表し、分岐アルキル基として、例えば、tert−ブチル基、tert−アミル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロブチル基、1−メチルシクロプロピル基、1−メチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、1−メチルプロピル基、1,1,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基等が挙げられる。好ましくはtert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基またはtert−アミル基であり、更に好ましくはtert−アミル基である。これらの分岐アルキル基は置換基を有してもよく、置換基としては水酸基、シアノ基、メルカプト基、ハロゲン原子、アミノ基、イミド基、シリル基、ヒドラジノ基等が挙げられる。
【0127】
A1及びA2は各々独立に水酸基または脱保護されることにより水酸基を形成しうる基を表し、好ましくは水酸基である。脱保護されて水酸基を形成しうる基とは、酸及び/または熱の作用により脱保護して水酸基を形成する基が挙げられる。具体的にはエーテル基(メトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基、ベンジルオキシ基、トリフェニルメトキシ基、トリメチルシリルオキシ基等)、ヘミアセタール基(テトラヒドロピラニルオキシ基等)、エステル基(アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−ニトロベンゾイルオキシ基、ホルミルオキシ基、トリフルオロアセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基等)、カルボナート基(エトキシカルボニルオキシ基、フェノキシカルボニルオキシ基、tert−ブチルオキシカルボニルオキシ基等)、スルホナート基(p−トルエンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基等)、カルバモイルオキシ基(フェニルカルバモイルオキシ基等)、チオカルボニルオキシ基(ベンジルチオカルボニルオキシ基等)、硝酸エステル基、スルフェナート基(2,4−ジニトロベンゼンスルフェニルオキシ基等)が挙げられる。
【0128】
n及びmは各々独立に3〜5の整数を表すが、好ましくは3または4であり、更に好ましくは3である。
【0129】
上記に例示した置換基R1、R2、R3、A1及びA2の構造は、ビスフェノール型還元剤の熱的物性ならびに結晶性を決定する因子の一つであり、熱現像感光材料における還元剤の融点、熱分解温度、結晶性が写真性能に大きく相関する。
【0130】
本発明に係る熱現像感光材料に用いる場合、融点は80〜250℃、熱分解温度は200℃以上であることが好ましい。現像処理後に感材中に還元剤が残留する熱現像感光材料は、結晶性の高い還元剤の方が保存時の物質拡散が抑制されるため、画像保存時の還元反応によるカブリ部分の濃度変動が小さくなることから、還元剤の結晶性は高い方がより好ましい。
【0131】
以下に、一般式(1)で表される還元剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0132】
【化10】
【0133】
【化11】
【0134】
【化12】
【0135】
【化13】
【0136】
【化14】
【0137】
【化15】
【0138】
【化16】
【0139】
【化17】
【0140】
【化18】
【0141】
【化19】
【0142】
【化20】
【0143】
【化21】
【0144】
上記還元剤は、溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、如何なる方法で塗布液に含有せしめ、熱現像感光材料に含有させてもよい。
【0145】
本発明では、更に米国特許3,589,903号、同4,021,249号、英国特許1,486,148号及び特開昭51−51933号、同50−36110号、同50−116023号、同52−84727号もしくは特公昭51−35727号に記載されたポリフェノール化合物、例えば2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル、6,6′−ジブロモ−2,2′−ジヒドロキシ−1,1′−ビナフチル等の米国特許3,672,904号に記載されたビスナフトール類、更に、例えば4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2−ベンゼンスルホンアミドフェノール、2,6−ジクロロ−4−ベンゼンスルホンアミドフェノール、4−ベンゼンスルホンアミドナフトール等の米国特許3,801,321号に記載されるようなスルホンアミドフェノール又はスルホンアミドナフトール類も、銀イオン還元剤として用いることができる。
【0146】
還元剤の使用量は、脂肪族カルボン酸銀塩や還元剤の種類、その他の添加剤によって変化するが、一般的には、脂肪族カルボン酸銀塩1モル当たり0.05〜10モル、好ましくは0.1〜3モルが適当である。本発明においては、還元剤を塗布直前に感光性ハロゲン化銀及び脂肪族カルボン酸銀塩粒子及び溶媒から成る感光乳剤溶液に添加混合し、その、塗布する方が停滞時間による写真性能変動が小さく好ましい場合がある。
【0147】
(バインダー)
本発明の銀塩熱現像感光材料に使用するバインダーは透明または半透明で、一般に無色であり、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば、ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、澱粉、ポリアクリル酸、ポリメチルメタクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリメタクリル酸、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリビニルアセタール類(ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等)、ポリエステル類、ポリウレタン類、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニリデン、ポリエポキシド類、ポリカーボネート類、ポリビニルアセテート、セルロースエステル類、ポリアミド類がある。これらは親水性でも非親水性でもよい。またはSBRラテックス、NBRラテックスなどを加えてもよい。
【0148】
本発明に係るバインダーのガラス転移温度は70℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0149】
銀塩熱現像感光材料の画像形成層に好ましいバインダーは、ポリビニルアセタール類であり、特に好ましいバインダーはポリビニルブチラールである。また、上塗り層や下塗り層、特に保護層やバックコート層等の非画像形成層においては、よりガラス転移温度(Tg)の高いポリマーであるセルロースエステル類、特にトリアセチルセルロース、セルロースアセテートブチレート等のポリマーが好ましい。なお、必要に応じて上記バインダーは2種以上を組み合わせて用い得る。
【0150】
本発明に好ましく用いられるバインダーとして、下記ポリビニルアセタールが挙げられる。
【0151】
【表1】
【0152】
このようなバインダーは、バインダーとして機能するのに効果的な範囲で用いられる。効果的な範囲は当業者が容易に決定し得る。例えば、画像形成層において少なくとも有機脂肪酸銀塩を保持する場合の指標としては、バインダーと有機脂肪酸銀塩との割合は15:1〜1:2、特に8:1〜1:1の範囲が好ましい。即ち、画像形成層のバインダー量が1.5〜6g/m2であることが好ましく、更に好ましくは1.7〜5g/m2である。1.5g/m2未満では未露光部の濃度が大幅に上昇し、使用に耐えない場合がある。
【0153】
(架橋剤)
バインダーには架橋剤を併用することができる。
【0154】
架橋剤としては、従来、通常の写真感光材料用として使用されている種々の架橋剤、例えば、特開昭50−96216号公報に記載されているアルデヒド系、エポキシ系、エチレンイミン系、ビニルスルホン系、スルホン酸エステル系、アクリロイル系、カルボジイミド系、シラン化合物系架橋剤を用い得るが、好ましいのはイソシアネート系化合物、シラン化合物、エポキシ化合物または酸無水物である。これらの化合物については、特開2001−249428号公報に詳述される。
【0155】
(色調剤)
本発明の銀塩熱現像感光材料には、色調剤を添加することが好ましい。好適な色調剤の例はRD17029号に開示されており、具体的には以下のものを挙げることができる。
【0156】
イミド類(フタルイミド等);環状イミド類、ピラゾリン−5−オン類及びキナゾリノン類(スクシンイミド、3−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニルウラゾール、キナゾリン及び2,4−チアゾリジンジオン等);ナフタールイミド類(N−ヒドロキシ−1,8−ナフタールイミド等);コバルト錯体(コバルトのヘキサミントリフルオロアセテート等);メルカプタン類(3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等);N−(アミノメチル)アリールジカルボキシイミド類(N−(ジメチルアミノメチル)フタルイミド等);ブロックされたピラゾール類、イソチウロニウム誘導体、及びある種の光漂白剤の組合せ(N,N′−ヘキサメチレン(1−カルバモイル−3,5−ジメチルピラゾール)、1,8−(3,6−ジオキサオクタン)ビス(イソチウロニウムトリフルオロアセテート)と2−(トリブロモメチルスルホニル)ベンゾチアゾールの組合せ);メロシアニン染料(3−エチル−5−((3−エチル−2−ベンゾチアゾリニリデン(ベンゾチアゾリニリデン))−1−メチルエチリデン)−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等);フタラジノン、フタラジノン誘導体またはこれらの誘導体の金属塩(4−(1−ナフチル)フタラジノン、6−クロロフタラジノン、5,7−ジメチルオキシフタラジノン、及び2,3−ジヒドロ−1,4−フタラジンジオン);フタラジノンとスルフィン酸誘導体の組合せ(6−クロロフタラジノン+ベンゼンスルフィン酸ナトリウムまたは8−メチルフタラジノン+p−トリスルホン酸ナトリウム);フタラジン+フタル酸の組合せ;フタラジン(フタラジンの付加物を含む)とマレイン酸無水物、及びフタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸またはo−フェニレン酸誘導体及びその無水物(フタル酸、4−メチルフタル酸、4−ニトロフタル酸及びテトラクロロフタル酸無水物)から選択される少なくとも一つ化合物との組合せ;キナゾリンジオン類、ベンズオキサジン、ナルトキサジン誘導体;ベンズオキサジン−2,4−ジオン類(1,3−ベンズオキサジン−2,4−ジオン等);ピリミジン類及び不斉−トリアジン類(2,4−ジヒドロキシピリミジン等)、及びテトラアザペンタレン誘導体(3,6−ジメルカプト−1,4−ジフェニル−1H,4H−2,3a,5,6a−テトラアザペンタレン等)等を挙げることができ、特に好ましい色調剤はフタラゾンまたはフタラジンである。
【0157】
(層構成)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体上に少なくとも1層の画像形成層を有している。支持体の上に画像形成層のみを形成してもよいが、画像形成層の上に少なくとも1層の非画像形成層を形成することが好ましい。画像形成層を通過する光の量、または波長分布を制御するため、画像形成層と同一側または反対側にフィルター層を形成してもよいし、画像形成層に直接、本発明に係る染料や公知の顔料等を含有させてもよい。画像形成層は複数層にしてもよく、階調の調節のため感度の異なる構成、例えば、高感層/低感層または低感層/高感層にしてもよい。
【0158】
各種の添加剤は、画像形成層、非画像形成層またはその他の形成層のいずれに添加してもよい。本発明の銀塩熱現像感光材料には、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いてもよい。
【0159】
(塗布方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、上述した各構成層の素材を溶媒に溶解または分散させた塗布液を調製し、それら塗布液を複数同時に重層塗布した後、加熱処理を行って形成されることが好ましい。ここで「複数同時に重層塗布」とは、各構成層(例えば画像形成層、保護層)の塗布液を調製し、これを支持体へ塗布する際に各層個別に塗布、乾燥の繰り返しをするのではなく、同時に重層塗布を行い乾燥する工程も同時に行える状態で各構成層を形成しうることを意味する。即ち、下層中の全溶剤の残存量が70質量%以下となる前に、上層を設けることである。
【0160】
各構成層を複数同時に重層塗布する方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター法、カーテンコート法、浸漬法、エアーナイフ法、ホッパー塗布法、エクストルージョン塗布法などの公知の方法を用いることができる。これらの内、より好ましくはエクストルージョン塗布法と呼ばれる前計量タイプの塗布方式である。該エクストルージョン塗布法は、スライド塗布方式のようにスライド面での揮発がないため、精密塗布、有機溶剤塗布に適している。この塗布方法は画像形成層を有する側について述べたが、バックコート層を設ける際、下引きとともに塗布する場合についても同様である。
【0161】
(包装材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、使用される前の保存時に写真性能の変質を防ぐため、あるいはロール状態の製品形態の場合にはカール状の巻き癖が付くのを防ぐために、酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料で密閉包装するのが好ましい。
【0162】
酸素透過率は25℃で50ml/(atm/m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは10ml/(atm/m2・day)以下であり、更に好ましくは1.0ml/(atm/m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。水分透過率は10g/(atm/m2・day)以下であることが好ましく、より好ましくは5g/(atm/m2・day)以下であり、更に好ましくは1g/(atm/m2・day)以下である(但し、1atmは1.01325Paである。)。酸素透過率及び/または水分透過率の低い包装材料の具体例としては、例えば、特開平8−254793号、特開2000−206653号の各公報に記載されているものを利用することができる。
【0163】
(画像形成方法)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、支持体の片面にのみ画像形成層を有する片面型であっても、両面に画像形成層を有する両面型であってもよい。
【0164】
(両面型銀塩熱現像感光材料)
本発明の銀塩熱現像感光材料は、X線増感スクリーンを用いてX線画像を記録する画像形成方法に好ましく用いることができる。
【0165】
これらの銀塩熱現像感光材料を用いて画像形成する工程は以下の工程よりなる。
【0166】
(a)該銀塩熱現像感光材料を1対のX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程
(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程
(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程
(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程
(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程。
【0167】
本発明における組立体において使用する銀塩熱現像感光材料は、X線によって階段露光し、熱現像して得られる画像が光学濃度(D)及び露光量(logE)の座標軸単位長の等しい直交座標上の特性曲線において、最小濃度(Dmin)+濃度0.25の点と最小濃度(Dmin)+濃度2.0の点とで作る平均ガンマ(γ)が3.0〜4.0である特性曲線を有するように調整されていることが好ましい。
【0168】
本発明に係るX線撮影系において、このような特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料を用いると脚部が非常に延びていて、且つ中濃度部ではガンマの高いといった優れた写真特性のX線画像が得られる。この写真特性により、X線透過量の少ない縦隔部、心陰影等の低濃度域の描写性が良好になり、且つX線透過量の多い肺野部の画像においても視覚し易い濃度となり、またコントラストも良好になるとの利点がある。
【0169】
上記のような好ましい特性曲線を有する銀塩熱現像感光材料は、例えば、両側の画像形成層のそれぞれを互いに異なった感度を持つ二層以上のハロゲン化銀乳剤層から構成するような方法で容易に製造することができる。特に、上層には高感度の乳剤を用い、下層には低感度で硬調な写真特性を有する乳剤を用いて、画像形成層を形成することが好ましい。このような二層からなる画像形成層を用いる場合における各層間のハロゲン化銀乳剤の感度差は1.5倍以上20倍以下、好ましくは2倍以上15倍以下である。なお、それぞれの層の形成に用いられる乳剤の量の比率は、用いられる乳剤の感度差及びカバリングパワーにより異なる。一般には、感度差が大きい程高感度側の乳剤の使用比率を下げる。例えば、感度差が2倍であるときの好ましい各乳剤の使用比率は、カバリングパワーがほぼ等しい場合には、銀量換算で高感度乳剤対低感度乳剤として1:20以上1:50以下の範囲の値となるように調整される。
【0170】
クロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平2−68539号公報、第13頁左下欄1行目から同第14頁左下欄9行目に記載の染料もしくは染料と媒染剤を用いることができる。
【0171】
次に、本発明に係る蛍光増感紙(X線増感スクリーン、放射線増感スクリーン)について説明する。放射線増感スクリーンは、基本構造として、支持体とその片面に形成された蛍光体層とからなる。蛍光体層は、蛍光体が結合剤(バインダー)中に分散されてなる層である。なお、この蛍光体層の支持体とは反対側の表面(支持体に面していない側の表面)には、一般に透明な保護膜が設けられていて、蛍光体層を化学的な変質あるいは物理的な衝撃から保護している。
【0172】
本発明において、好ましい蛍光体としては以下に示すものが挙げられる。タングステン酸塩系蛍光体(CaWO4、MgWO4、CaWO4:Pb等)、テルビウム賦活希土類酸硫化物系蛍光体(Y2O2S:Tb、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、(Y、Gd)2O2S:Tb、(Y、Gd)O2S:Tb、Tm等)、テルビウム賦活希土類燐酸塩系蛍光体(YPO4:Tb、GdPO4:Tb、LaPO4:Tb等)、テルビウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tb、LaOBr:Tb、Tm、LaOCl:Tb、LaOCl:Tb、Tm、LaOBr:Tb、GdOBr:Tb、GdOCl:Tb等)、ツリウム賦活希土類オキシハロゲン化物系蛍光体(LaOBr:Tm、LaOCl:Tm等)、硫酸バリウム系蛍光体〔BaSO4:Pb、BaSO4:Eu2+、(Ba、Sr)SO4:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属燐酸塩系蛍光体〔(Ba2PO4)2:Eu2+、(Ba2PO4)2:Eu2+等〕、2価のユーロピウム賦活アルカリ土類金属弗化ハロゲン化物系蛍光体(BaFCl:Eu2+、BaFBr:Eu2+、BaFCl:Eu2+、Tb、BaFBr:Eu2+、Tb、BaF2・BaCl・KCl:Eu2+、(Ba、Mg)F2・BaCl・KCl:Eu2+等)、沃化物系蛍光体(CsI:Na、CsI:Tl、NaI、KI:Tl等)、硫化物系蛍光体(ZnS:Ag(Zn、Cd)S:Ag、(Zn、Cd)S:Cu、(Zn、Cd)S:Cu、Al等)、燐酸ハフニウム系蛍光体(HfP2O7:Cu等)、YTaO4及びそれに発光中心として各種賦活剤を加えたもの。但し、本発明に用いられる蛍光体はこれらに限定されるものではなく、放射線の照射によって可視または近紫外領域の発光を示す蛍光体であれば使用できる。
【0173】
本発明で用いる蛍光増感紙は、傾斜粒径構造で蛍光体を充填することが好ましい。特に表面保護層側に大粒径の蛍光体粒子を塗布し、支持体側に小粒径の蛍光体粒子を塗布することが好ましく、小粒径のものは0.5〜2.0μmで、大粒径のものは10〜30μmの範囲が好ましい。
【0174】
(片面型銀塩熱現像感光材料)
本発明における片面型銀塩熱現像感光材料は、特に乳房撮影用X線感光材料として用いるのが好ましい。本目的に用いられる片面型銀塩熱現像感光材料は、得られる画像のコントラストを適切な範囲に設計することが重要である。
【0175】
乳房撮影用X線感光材料としての好ましい構成要件に関しては、特開平5−45807号、同10−62881号、同10−54900号、同11−109564号の各公報記載を参考にすることができる。
【0176】
(紫外蛍光スクリーンとの組合せ)
本発明の銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法としては、好ましくは400nm以下に主ピークを持つ蛍光体との組み合わせで画像形成する方法を用いることができる。更に好ましくは380nm以下に主ピークを持つ蛍光体と組み合わせて画像形成する方法が良い。両面感材、片面感材のいずれでも組立て体として用いることができる。400nm以下に主発光ピークであるスクリーンは特開平6−11804号公報、国際公開第93/01521号パンフレットに記載のスクリーンなどが使われるがこれに限られるものではない。紫外線のクロスオーバーカット(両面感光材料)とアンチハレーション(片面感光材料)の技術としては、特開平8−76307号公報に記載の技術を用いることができる。紫外線吸収染料としては、特開2001−144030号公報に記載の染料は特に好ましい。
【0177】
(レーザ露光条件)
銀塩熱現像感光材料の露光は、該写真材料に付与した感色性に対し適切な光源を用いることが望ましい。例えば、該写真材料を赤外光に感じ得るものとした場合は、赤外光域ならば如何なる光源にも適用可能であるが、レーザパワーがハイパワーであることや、写真材料を透明にできる等の点から、赤外半導体レーザ(780〜820nm)または青レーザ(400nm付近)がより好ましく用いられる。
【0178】
露光はレーザ走査露光により行うことが好ましいが、その露光方法には種々の方法が採用できる。例えば、第1の好ましい方法として、写真材料の露光面と走査レーザ光の為す角が実質的に垂直になることがないレーザ走査露光機を用いる方法が挙げられる。ここで、「実質的に垂直になることがない」とは、レーザ走査中に最も垂直に近い角度として好ましくは55〜88度、より好ましくは60〜86度、更に好ましくは65〜84度、最も好ましくは70〜82度であることを言う。
【0179】
レーザ光が、写真材料に走査される時の露光面でのビームスポット直径は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。これは、スポット径が小さい方がレーザ入射角度の垂直からのずらし角度を減らせる点で好ましい。なお、ビームスポット直径の下限は10μmである。このようなレーザ走査露光を行うことにより、干渉縞様ムラの発生等のような反射光に係る画質劣化を減少できる。
【0180】
また、第2の方法として、露光は縦マルチである走査レーザ光を発するレーザ走査露光機を用いて行うことも好ましい。縦単一モードの走査レーザ光に比べて干渉縞様ムラの発生等の画質劣化が減少する。縦マルチ化するには、合波による、戻り光を利用する、高周波重畳をかける、等の方法がよい。
【0181】
なお、縦マルチとは露光波長が単一でないことを意味し、通常、露光波長の分布が5nm以上、好ましくは10nm以上になるとよい。露光波長の分布の上限には特に制限はないが、通常、60nm程度である。
【0182】
更に、第3の態様としては2本以上のレーザを用いて、走査露光により画像を形成することも好ましい。
【0183】
このような複数本のレーザを利用した画像記録方法としては、高解像度化、高速化の要求から1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むレーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段で使用されている技術であり、例えば、特開昭60−166916号公報等により知られている。これは、光源ユニットから放射されたレーザ光をポリゴンミラーで偏向走査し、fθレンズ等を介して感光体上に結像する方法であり、レーザ・イメージャー等と原理的に同じレーザ走査光学装置である。
【0184】
レーザプリンタやデジタル複写機の画像書込み手段における感光体上へのレーザ光の結像は、1回の走査で複数ラインずつ画像を書き込むという用途から、一つのレーザ光の結像位置から1ライン分ずらして次のレーザ光が結像されている。具体的には、二つの光ビームは互いに副走査方向に像面上で数10μmオーダーの間隔で近接しており、印字密度が400dpi(dpiとは1インチ、即ち2.54cm当たりのドット数を表す)で2ビームの副走査方向ピッチは63.5μm、600dpiで42.3μmである。
【0185】
このような、副走査方向に解像度分ずらした方法とは異なり、本発明では同一の場所に2本以上のレーザで入射角を変え露光面に集光させ画像形成することも好ましい。この際の、通常の1本のレーザ(波長λnm)で書き込む場合の露光面での露光エネルギーがEである場合に、露光に使用するN本のレーザが同一波長(波長λnm)、同一露光エネルギー(En)とした場合、0.9×E≦En×N≦1.1×Eの範囲にするのが好ましい。このようにすることにより、露光面ではエネルギーは確保されるが、それぞれのレーザ光の画像形成層への反射は、レーザの露光エネルギーが低いため低減され、ひいては干渉縞の発生が抑えられる。
【0186】
なお、上述では複数本のレーザの波長をλと同一のものを使用したが、波長の異なるものを用いてもよい。この場合、λnmに対して(λ−30)<λ1、λ2、・・・・・λn≦(λ+30)の範囲にするのが好ましい。
【0187】
なお、上述した第1、第2、第3の態様の画像記録方法において、走査露光に用いるレーザとしては、一般によく知られている。ルビーレーザ、YAGレーザ、ガラスレーザ等の固体レーザ;He−Neレーザ、Arイオンレーザ、Krイオンレーザ、CO2レーザ、COレーザ、He−Cdレーザ、N2レーザ、エキシマーレーザ等の気体レーザ;InGaPレーザ、AlGaAsレーザ、GaAsPレーザ、InGaAsレーザ、InAsPレーザ、CdSnP2レーザ、GaSbレーザ等の半導体レーザ;化学レーザ、色素レーザ等を用途に併せて適時選択して使用できるが、これらの中でもメンテナンスや光源の大きさの問題から、波長が600〜1200nmの半導体レーザを用いるのが好ましい。なお、レーザ・イメージャーやレーザ・イメージセッタで使用されるレーザにおいて、銀塩熱現像感光材料に走査される時の該材料露光面でのビームスポット径は、一般に短軸径として5〜75μm、長軸径として5〜100μmの範囲であり、レーザ光走査速度は銀塩熱現像感光材料固有のレーザ発振波長における感度とレーザパワーによって、写真材料毎に最適な値に設定することができる。
【0188】
(現像条件)
銀塩熱現像感光材料の現像条件は使用する機器、装置、あるいは手段に依存して変化するが、典型的には適した高温において像様に露光した銀塩熱現像感光材料を加熱することを伴う。露光後に得られた潜像は、中程度の高温(約80〜150℃、好ましくは約100〜130℃)で十分な時間(本発明は、5〜20秒の速さの迅速現像処理が好ましい)、銀塩熱現像感光材料を加熱することにより現像する。
【0189】
加熱温度が80℃未満では短時間に十分な画像濃度が得られず、また150℃を超えるような高温ではバインダーが溶融し、ローラへの転写など画像そのものだけでなく搬送性や、現像機等へも悪影響を及ぼす。加熱することで有機脂肪酸銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により銀画像を生成する。この反応過程は外部からの水等、処理液の一切の供給なしに進行する。
【0190】
加熱する機器、装置、手段は、加熱プレート、アイロン、ホットローラ、炭素または白色チタン等を用いた熱発生器として典型的な加熱手段で行ってよい。銀塩熱現像感光材料をヒートローラまたは加熱プレートに接触させながら搬送し加熱処理して現像することが好ましい。さらに好ましくは、表裏で千鳥に配列された2枚以上の加熱プレートの加熱面に交互に接触しながら加熱し、かつ、第2加熱プレート(第1加熱プレートより後にある)の温度を第1加熱プレートより高温(Tn+3≧Tn+2>Tn+1)に制御するように加熱処理して現像する。
【0191】
表裏で千鳥に配列された2枚以上の加熱プレートの数はとくには限定されないが、2枚 〜10枚であることが好ましく、4枚〜8枚であることが、より好ましい。
【0192】
第2加熱プレートの温度を第1加熱プレートより高温(Tn+3≧Tn+2>Tn+1)に制御するように加熱処理して熱現像することにより、第1加熱プレートによる予備加熱、均一加熱により、現像ムラをなくす効果が奏されて好ましい。
【0193】
本発明において、本発明の銀塩熱現像感光材料を熱現像する熱現像装置は、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置され、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度をより高く制御する制御手段とを備えることが好ましい。
【0194】
前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)であることが好ましい。
【0195】
なお、現像時の本発明の銀塩熱現像感光材料の搬送速度は25mm/秒以上であることが好ましい。より好ましくは25〜120mm/秒、更に好ましくは50〜100mm/秒である。搬送速度が上記範囲内であることにより本発明の試料は迅速処理ができながら、低かぶり高感度を得られ、かつ現像ムラのない高画質の画像を得られて好ましい。
【実施例】
【0196】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「%」は「質量%」を示す。
【0197】
実施例1
以下に示す方法に従い、銀塩熱現像感光材料を作製した。
【0198】
〔感光性ハロゲン化銀乳剤の調製〕
(感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)の調製)
(A1)
フタル化ゼラチン(平均分子量7万) 66.23g
化合物(A)(10%メタノール水溶液) 10ml
臭化カリウム 0.32g
水で5429mlに仕上げる
(B1)
0.67モル/L硝酸銀水溶液 2635ml
(C1)
臭化カリウム 52.1g
沃化カリウム 1.485g
水で660mlに仕上げる
(D1)
臭化カリウム 151.1g
沃化カリウム 7.645g
ヘキサクロロイリジウム(IV)酸カリウム(1%水溶液) 0.925ml
ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム 0.075g
水で1982mlに仕上げる
(E1)
0.4モル/L臭化カリウム水溶液 下記銀電位制御量
(F1)
水酸化カリウム 0.71g
水で20mlに仕上げる
(G1)
56%酢酸水溶液 20.0ml
(H1)
水酸化カリウム 1.72g
化合物(B):FC−4防腐剤(5%水溶液) 10ml
水で151mlに仕上げる
化合物(A):
HO(CH2CH2O)n(CH(CH3)CH2O)17(CH2CH2O)mH (m+n=5〜7)
【0199】
【化22】
【0200】
特公昭58−58288号公報に示される混合撹拌機を用いて溶液(A1)に溶液(B1)の1/4量及び溶液(C1)全量を温度35℃、pAg8.09に制御しながら、同時混合法により4分45秒を要して添加し核形成を行った。7分間経過後、溶液(B1)の3/4量及び溶液(D1)の液を全量、14分15秒かけて同時混合法により添加した。5分間撹拌した後、溶液(G1)を全量添加し、ハロゲン化銀乳剤を沈降させた。脱塩、水洗する。この操作3回を繰り返した後、溶液(H1)を加え、60℃に昇温し、更に120分撹拌した。最後にpHが5.8になるように調整し、銀量1モル当たり652gになるように水を添加し、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)を得た。
【0201】
この乳剤は平均粒子サイズ43nm(円相当径)、粒子サイズの変動係数12%、〔100〕面比率92%の単分散立方体沃臭化銀粒子であった。(粒子表面のAgIの含有率は3.5モル%)
(感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B〜Em−Jの調製)
感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A(比較)と同様な方法で核形成を行った。3分後、pH10に合わせた。一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物の固体分散微粒子の水溶液を表3記載の種類、量のように添加した。30分間経過後、クエン酸溶液でpH5.8にした。その後、比較の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−Aの場合と同じように調製し、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B(比較)、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jを得た。
【0202】
(化学増感)
上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jをそれぞれ47℃に恒温し、乳剤pHを6.5にして、一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を固体分散水溶液として表3に記載の種類、量のように添加して、60分攪拌した。その後、pHを5.8に調整し、安定剤−Aを3×10-4モル/Agモル相当添加して、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−J(本発明)をそれぞれ得た。
【0203】
【化23】
【0204】
(ポリマーB溶液の合成)
0.3Lの四つ口セパラブルフラスコに滴下装置、温度計、窒素ガス導入管、攪拌装置及び還流冷却管を付し、メチルエチルケトン20gを仕込み、50℃に加熱した。更に表2に記載の組成割合のモノマー(単位g)を秤量し、更にN,N′−アゾビスイソバレロニトリル2gと前記モノマーに加えた混合液を、フラスコ中に2時間かけて滴下し、同温度にて5時間反応させた。その後メチルエチルケトン80gを添加し冷却、ポリマー50質量%のポリマーB溶液を得た。分子量はGPCでポリスチレン換算の重量平均分子量として、5〜6万であった。
【0205】
【表2】
【0206】
DAAM:ダイサセトンアクリルアミド(協和発酵製)
Aam:アクリルアミド
ブレンマーPSE−400:−(EO)m−C18H37(m≒9)を有するメタアクリレート
ブレンマーPME−400:−(EO)m−CH3(m≒9)を有するメタアクリレート(EO;エチレンオキシ基、上記はすべて日本油脂製)。
【0207】
(有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液の調製)
ポリマーB溶液20gにメタノール60gを添加し、40℃30分攪拌した。そこに40℃に溶解した上記の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−B、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−Jそれぞれ59.2gをゆっくり滴下し、更に48℃60分攪拌した。各々のハロゲン化銀液をMEKで2倍に希釈を行い、ロータリーエバポレーターにて減圧蒸留で水分を除去し、それぞれ容量を1/3に濃縮した。この操作を2回繰り返した。有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液Em−A〜Em−Jをそれぞれ得た。
【0208】
〔有機脂肪酸銀塩分散液の調製〕
(粉末有機脂肪酸銀塩の調製)
5470mlの純水に、ベヘン酸52.3g、アラキジン酸27.1g、ステアリン酸17.45g及びパルミチン酸0.9gを80℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化カリウム水溶液540.2mlを添加し、濃硝酸6.9mlを加えた後、55℃に冷却して有機酸カリウム溶液を得た。該有機酸カリウム溶液の温度を55℃に保ったまま高速で攪拌した。次に1モル/Lの硝酸銀溶液760.6mlを2分間かけて添加し、さらに10分間高速で攪拌した後、濾過により水溶性塩類を除去した。その後、濾液の電導度が2μS/cmになるまで脱イオン水による水洗、濾過を繰り返し、遠心脱水を行った後、質量の減少がなくなるまで窒素気流下で加熱乾燥を行った。粉末有機脂肪酸銀塩を得た。
【0209】
(有機脂肪酸銀塩分散液の調製)
ポリビニルブチラール粉末(Monsanto社:Butvar B−79)14.57gをメチルエチルケトン(MEK)1457gに溶解し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて攪拌しながら、500gの上記の粉末有機脂肪酸銀塩を徐々に添加して十分に混合した。その後、1mm径のジルコニウムビーズ(東レ社製)を80%充填したメディア型分散機(Gettzmann社製)にて周速13m、ミル内滞留時間0.5分間にて分散を行って、有機脂肪酸銀塩分散液を調製した。
【0210】
〔感光層塗布液の調製〕
(色素安定剤液の調製)
1.0gの色素安定剤−1、0.31gの酢酸カリウムをメタノール14.35gに溶解し、色素安定剤液とした。
【0211】
(赤外増感色素液の調製)
0.090gの赤外増感色素−1、1.9gの2−クロロ安息香酸、10.8gの色素安定剤−2、0.1gの5−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、240gのMEKに溶解し、赤外増感色素液とした。
【0212】
(還元剤液の調製)
15.0gの還元剤−Aと0.33gの還元剤−B、10.9gの還元剤−C、2.39gの4−メチルフタル酸、0.045gの赤外染料1をMEK205gに溶解し還元剤液とした。
【0213】
(感光層塗布液の調製)
前記の有機脂肪酸銀塩分散液を50g、及びMEK15.11gを混合攪拌しながら18℃に保温し、前記有機溶媒液中の感光性ハロゲン化銀分散液Em−A〜Em−Jをそれぞれ7.2g添加した。20分後にかぶり抑制剤−1の1%メタノール溶液を1.4g添加した。30分後、赤外増感色素液を1.2×10-4モル/Agモル相当添加して1時間攪拌した。その後、13℃に降温し、バインダー樹脂としてポリビニルアセタール樹脂(化合物P−1、Tg=75℃)を12.45g添加して30分攪拌した後、テトラクロロフタル酸(13%MEK溶液)1.1g添加して15分間攪拌した。塗布直前にデスモジュールN3300(モーベイ社製:脂肪酸イソシアネート)の22%MEK溶液2.23g、還元剤液30.4gを添加した。かぶり抑制剤−2の7%MEK溶液を6.5g、フタラジンの12.74%MEK溶液を3.34g、添加した。攪拌することにより感光層塗布液(A)〜(J)を得た。
【0214】
〔表面保護層塗布液の調製〕
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/m2になるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0215】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0216】
〔バック面塗布液の調製〕
MEK830gを攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(EastmanChemical社製、CAB381−20)84.2g、ポリエステル樹脂(Bostic社製、VitelPE2200B)4.5gを添加し溶解した。溶解した液に、バック面の塗布試料における赤外染料1の吸収極大の吸光度(abs)が0.3となるように赤外染料1を添加し、さらにメタノール43.2gに溶解したフッ素系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)4.5gとフッ素系活性剤(大日本インク社製、メガファッグF120K)2.3gを添加して、溶解するまで十分に攪拌を行った。最後に、MEKに1質量%の濃度でディゾルバー型ホモジナイザーにて分散したシリカ(W.R.Grace社製、シロイド64X6000)を75g添加、攪拌し、バック面塗布液を調製した。
【0217】
〔支持体の作製〕
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した。その一方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。更に、もう一方の面に下記の下引塗布液Bを用いて下引層bを乾燥膜厚が0.1μmとなるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0218】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0219】
(下引塗布液B)
下記コロイド状酸化錫分散液37.5g、ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(20/30/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)3.7g、ブチルアクリレート/スチレン/グリシジルメタクリレート(40/20/40%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)14.8gと界面活性剤(UL−1)0.1gを混合し、水で1000mlに仕上げて下引塗布液Bとした。
【0220】
(コロイド状酸化錫分散液の調製)
塩化第2錫水和物65gを、水/エタノール混合溶液2000mlに溶解して均一溶液を調製した。次いで、これを煮沸し、共沈殿物を得た。生成した沈殿物をデカンテーションにより取り出し、蒸留水にて数回水洗した。沈殿物を洗浄した蒸留水中に硝酸銀を滴下し、塩素イオンの反応がないことを確認後、洗浄した沈殿物に蒸留水を添加して全量を2000mlとした。更に、30%アンモニア水を40ml添加し、水溶液を加温して容量が470mlになるまで濃縮し、コロイド状酸化錫分散液を調製した。
【0221】
上記にて用いた化合物の構造を以下にまとめて示す。
【0222】
【化24】
【0223】
【化25】
【0224】
【化26】
【0225】
〔銀塩熱現像感光材料の作製〕
上記下引き済み支持体の両面に、表3に記載の組み合わせで感光層面側を塗布、及びバック層面側を塗布、乾燥して銀塩熱現像感光材料(試料1〜10)を作製した。
【0226】
(感光層面側の塗布)
前記調製した各感光層塗布液及び各表面保護層塗布液を用いて、支持体側から感光層及び表面保護層を、それぞれ押出しコーターを用いて同時重層塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。表面保護層は乾燥膜厚として1.5μmになる様に行った。
【0227】
(バック面側の塗布)
上記調製したバック面塗布液を、それぞれ乾燥膜厚が3μmになるように、押出しコーターを用いて塗布・乾燥を行った。乾燥温度は100℃、露点温度10℃の乾燥風を用いて5分間かけて乾燥した。
【0228】
《試料の包装》
外側〜ナイロン15μm/AL7μm(防湿層)/ポリエチレン20μ/カーボンブラック+ポリエチレン30μm(遮光層)〜内側・感剤側
〔評価〕
上記作製した銀塩熱現像感光材料(試料1〜10)について、以下の方法にて特性評価を行った。
【0229】
(Dmin及び感度の測定)
各試料を半切サイズに加工した後、コニカミノルタエムジー社製レーザイメージャーDrypro752を用いて、試料の一部が露光されながら、同時に既に露光がなされた試料の一部分が現像開始されるように改造した。露光は785nmの半導体レーザで像様露光を施した。なお、露光においては試料の露光面と露光レーザ光の角度は80度とした。また、試料毎条件A:レーザ強度16mWで30.64mm/秒で搬送し露光した。なお、高周波重畳を縦マルチモードで出力した。
【0230】
熱現像処理はヒートドラムを用いて均一加熱を行い、熱現像処理条件126℃、8秒で行った(熱現像処理条件A)。このようにして得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin=カブリ濃度)、感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、試料1の感度を100とする相対感度を表4に示した。
【0231】
(照度不軌の評価)
前記条件Aの代わりに条件B:レーザ強度30mWで57.45mm/秒で搬送し露光した他は上記条件Aの感度を求める場合と同様にして条件Bの感度を求めた。条件Aと条件Bの感度差を下式から求めた。なお、試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度差が小さいほど照度不軌の問題がなく良好である。
【0232】
条件Aと条件Bの感度差=(条件Aの感度)−(条件Bの感度)
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin部)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、試料1のそれを100とした相対値で表示した。
【0233】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin)
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0234】
(生保存性)
試料を40℃、相対湿度80%RHで1週間レーザイメージャーの機内に保存した後、露光・現像して得られた感度を評価した。試料1の感度差を100とする相対感度差を表4に示した。この感度を未処理の試料と比べ、感度の低下幅が小さいものが生保存性に優れる。
【0235】
【表3】
【0236】
【表4】
【0237】
表4より、本発明に係る試料は、高感度、低カブリであり、且つ照度不軌、生保存性や画像耐光性に優れていることが分かった。なお、本発明の試料の階調γが2.5〜4.0の範囲にあり、医療用銀塩熱現像感光材料として適性を有していることが確認された。
【0238】
実施例2
〔感光性ハロゲン化銀乳剤〕
《感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜2−8の調製》
(ホスト粒子の調製)
蒸留水1421mlに1質量%ヨウ化カリウム溶液4.3mlを加え、さらに0.5モル/L硫酸を3.5ml、フタル化ゼラチン36.5g、2,2′−(エチレンジチオ)ジエタノールの5質量%メタノール溶液160mlを添加した溶液を、ステンレス製反応壷中で撹拌しながら73℃に液温を保ち、硝酸銀22.22gに蒸留水を加え218mlに希釈した溶液(A2)とヨウ化カリウム36.6gを蒸留水にて366mlに希釈した溶液(B2)を、溶液(A2)は一定流量で16分かけて全量添加し、溶液(B2)はpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。その後、一般式(C−1)または(C−2)で表される化合物を表5の様に添加し、さらに3.5質量%の過酸化水素水溶液を10ml添加し、ベンゾイミダゾールの10質量%水溶液を10.8ml添加した。さらに、硝酸銀51.86gに蒸留水を加えて508.2mlに希釈した溶液(C2)とヨウ化カリウム63.9gを蒸留水にて639mlに希釈した溶液(D2)を、溶液Cは一定流量で80分かけて全量添加し、溶液(D2)はpAgを10.2に維持しながらコントロールダブルジェット法で添加した。銀1モル当たり1×10-4モルになるよう六塩化イリジウム(III)酸カリウム塩を溶液(C2)および溶液(D2)を添加しはじめてから10分後に全量添加した。また、溶液(C2)の添加終了の5秒後に六シアン化鉄(II)カリウム水溶液を銀1モル当たり3×10-4モル全量添加した。0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調整し、攪拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程をおこなった。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のホスト粒子のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ作製した。
【0239】
得られた粒子は、純ヨウ化銀乳剤であり、平均投影面積直径0.93μm、平均投影面積直径の変動係数17.7%、平均厚み0.057μm、平均アスペクト比16.3の平板状粒子が全投影面積の80%以上を占めていた。球相当直径は0.39μmであった。X線粉末回折分析による解析の結果、ヨウ化銀の30%がγ相で存在していた。
【0240】
(エピタキシャル接合の調製)
上記ホスト粒子のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8の銀1モル相当をそれぞれ反応容器に入れた。pAgは38℃で測定して10.2であった。次いで、ダブルジェット添加により、0.5モル/LのKBr溶液及び0.5モル/LのAgNO3溶液を10ml/分で20分間にわたって添加し、実質的に10モル%臭化銀をAgIホスト乳剤上にエピタキシャル状に沈殿させた。操作中、pAgは10.2に維持した。さらに、0.5mol/L濃度の硫酸を用いてpHを3.8に調製し、撹拌を止め、沈降/脱塩/水洗工程を行った。1mol/L濃度の水酸化ナトリウムを用いてpH5.9に調整し、pAg11.0のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ作製した。
【0241】
(化学増感)
上記のハロゲン化銀分散物2−1〜2−8をそれぞれ47℃に恒温し、乳剤pHを6.5にして、一般式(I)で表されるカルコゲン化合物を固体分散水溶液として表5に記載のように添加して、60分攪拌した。その後、pHを5.8に調整し、安定剤−Aを3×10-4モル/Agモル相当添加した後、省銀化剤SE−1を1×10-5モル/Agモル添加して感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜Em−2−8を得た。
【0242】
【化27】
【0243】
〔銀塩熱現像感光材料〕
《感光層塗布液の調製》
実施例1の(ポリマーB溶液の合成)〜(本発明の感光層塗布液の調製)において、実施例1の感光性ハロゲン化銀乳剤Em−A、Em−B、および、化学増感済み感光性ハロゲン化銀乳剤Em−C〜Em−J、の代わりに、感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1、Em−2−2、および、Em−2−3〜Em−2−8、をそれぞれ用いた他は、同様にして、感光層塗布液2−1、2−2、および、Em−2−3〜2−8をそれぞれ得た。
【0244】
《表面保護層塗布液の調製》
MEKを865g攪拌しながら、セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製、CAB171−15)を96g、ポリメチルメタクリル酸(ローム&ハース社製、パラロイドA−21)を4.5g、ベンゾトリアゾールを1.5g、F系活性剤(旭硝子社製、サーフロンKH40)を1.0g添加し溶解した。次に、下記マット剤分散液30gを添加して攪拌し、酸化防止剤の化合物Oを0.045g/m2になるように添加し、表面保護層塗布液を調製した。
【0245】
〔マット剤分散液の調製〕
セルロースアセテートブチレート(Eastman Chemical社製:CAB171−15)7.5gをMEK42.5gに溶解し、その中に、炭酸カルシウム(Speciality Minerals社製:Super−Pflex200)5gを添加し、ディゾルバー型ホモジナイザーにて8000rpmで30分間分散し、マット剤分散液を得た。
【0246】
《支持体の作製》
濃度0.170に青色着色したポリエチレンテレフタレートフィルムベース(厚み175μm)の両面に、0.15kV・A・min/m2のコロナ放電処理を施した。その両方の面に、下記の下引塗布液Aを用いて下引層aを乾燥膜厚が0.2μmになるように塗設した。その後、複数のロール群から成るフィルム搬送装置を有する熱処理式オーブンの中で、130℃で15分の熱処理を行った。
【0247】
(下引塗布液A)
ブチルアクリレート/t−ブチルアクリレート/スチレン/2−ヒドロキシエチルアクリレート(30/20/25/25%比)の共重合体ラテックス液(固形分30%)270g、界面活性剤(UL−1)0.6g及びメチルセルロース0.5gを混合した。更に、シリカ粒子(富士シリシア社製:サイロイド350)1.3gを水100gに添加し、超音波分散機(ALEX Corporation社製:Ultrasonic Generator、周波数25kHz、600W)にて30分間分散処理した分散液を加え、最後に水で1000mlに仕上げて下引塗布液Aとした。
【0248】
《銀塩熱現像感光材料の作製》
(感光層(両面)の塗布)
上記下引き済み支持体の両面に、下塗り面から感光層、表面保護層の順番でスライドビード塗布方式にて同時重層塗布した。感光層は前記感光性ハロゲン化銀乳剤Em−2−1〜Em−2−8から調製した各感光層塗布液2−1〜2−8を用いて、感光層の塗布銀量は脂肪酸銀とハロゲン化銀の合計で片面あたり0.57g/m2であった。これを支持体の両面に塗布した。銀塩熱現像感光材料試料201〜208を作製した。
【0249】
〔蛍光増感スクリーン、画像露光、熱現像、および評価〕
《蛍光増感スクリーンAの作製》
下塗り層の作製
特開2001−124898号公報の実施例4と同様にして、250μmのポリエチレンテレフタレート(支持体)上にアルミナ粉体よりなる乾燥後の膜厚が50μmの光反射層を形成した。
【0250】
蛍光体シートの製造
BaFBr:Eu蛍光体(平均粒径3.5μm)250g、ポリウレタン系バインダー樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、商品名:パンデックスT5265M)8g、エポキシ系バインダー樹脂(油化シェルエポキシ(株)製、商品名:エピコート1001)2g、およびイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業(株)製、商品名:コロネートHX)0.5gをメチルエチルケトンに加え、プロペラミキサーで分散して、粘度が25PS(25℃)の蛍光体層形成用塗布液を調製した。この塗布液を仮支持体(予めシリコーン系離型剤が塗布されているポリエチレンテレフタレートシート)の表面に塗布し、乾燥して蛍光体層を形成した。この蛍光体層を仮支持体から剥がし取って蛍光体シートを得た。
【0251】
光反射層上への蛍光体シートの付設
前記の工程で製造した光反射層付き支持体の光反射層の表面に、上記の蛍光体シートを重ね、カレンダロールにて、圧力400kgw/cm2、温度80℃の条件で加圧し、光反射層上に蛍光体層を設けた。得られた蛍光体層の厚みは125μmであり、蛍光体層中の蛍光体粒子の体積充填率は68%であった。
【0252】
表面保護層の形成
厚み6μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の片面にポリエステル系の接着剤を塗布し、ラミネート法で蛍光体層上に表面保護層を設けた。このようにして、支持体、光反射層、蛍光体層および表面保護層からなる蛍光増感スクリーンAを得た。この蛍光増感スクリーンAは、390nmにピークをもつ半値幅の狭い発光する特徴を有する。
【0253】
《評価方法》
(露光と熱現像)
上記スクリーンを2枚使用して、その間に銀塩熱現像感光材料試料201〜208それぞれを挟み、像形成用組立体を作製した。この組立体に、0.05秒のX線露光を与え、X線センシトメトリーを行った。使用したX線装置は、東芝(株)製の商品名DRX−3724HDであり、タングステンターゲットを用いた。三相にパルス発生器で80kVpの電圧をかけ、人体とほぼ等価な吸収を持つ水7cmのフィルターを通したX線を光源とした。距離法にてX線露光量を変化させ、logE=0.10の幅でステップ露光を行った。
【0254】
露光後に、銀塩熱現像感光材料試料202〜208それぞれについては、下記の熱現像処理条件B(両面から加熱できるようにした熱現像処理)で熱現像処理して画像試料202〜208それぞれをそれぞれ得た。
【0255】
但し、露光後に、銀塩熱現像感光材料試料201については、実施例1に記載した熱現像方法(熱現像処理条件A:片面加熱熱現像処理)で熱現像処理して、画像試料201を得た。
【0256】
(熱現像処理条件B)
両面から加熱できるようにした熱現像装置を製作した(図1)。また、熱現像部の搬送ローラを小型のヒートドラムに変更することによりフィルムシートの搬送が可能になるように改造した。4枚の加熱プレートを113℃−118℃−121℃−121℃に設定し、ヒートドラムの温度は120℃に設定した。さらに、搬送時間を合計12秒になるように設定した。
【0257】
《評価》
(Dmin及び感度の測定)
得られた熱現像処理済み試料の濃度を、光学濃度計(コニカミノルタフォトイメージング社製:PD−82)で測定し、濃度Dと露光量Log(1/E)からなる特性曲線を作成し、最小濃度(Dmin=カブリ濃度)、感度を測定した。なお、感度は最小濃度より1.0高い濃度を与える露光量の逆数の対数と定義した。なお、画像試料No.201の感度を100とする相対感度を表6に示した。
【0258】
(画像耐光性)
上記の方法で熱現像処理をした各試料を、更に37℃、55%RHの室内で、3日間光源台上、蛍光灯下に放置した前後での最小濃度部分(Dmin部)の光学濃度を測定し、下式に従い最小濃度(Dmin)の変動(ΔDmin)を求め、これを画像耐光性の尺度とし、画像試料No.201のそれを100とした相対値で表示した。
【0259】
ΔDmin=(蛍光灯曝射後のDmin)−(蛍光灯曝射前のDmin)
なお、使用した光源台上の温度、照度、は45℃、8000ルックス、であった。
【0260】
(銀色調の評価)
作製した銀画像について目視評価を行い、下記の基準に従って銀色調の判定を行った。
【0261】
◎:診断に最適な銀色調である
○:診断に支障のない銀色調である
△:診断に問題ない程度である
×:診断に実用上許容範囲外である
(鮮鋭性の評価)
試料の10本/mmにおけるMTFを測定し、画像試料No.201のMTF値を100とする相対値で示す。
【0262】
【表5】
【0263】
【化28】
【0264】
【表6】
【0265】
表6より明らかなように、本発明の一般式(1)で表される化合物を用いると比較化合物に比べて少ない添加量で、高感度で、かつ優れた鮮鋭性をもたらし、現像処理後の画像かぶりの上昇も小さく(画像の耐光性に優れ)好ましい結果であることがわかる。
【0266】
ヒーターを千鳥配列した両面加熱現像、高速現像でも、本発明の感材は問題なく、高感度で低カブリであり、更に高品質(特に優れた鮮鋭性)であることがわかる。
【0267】
本発明の場合には、高感度で低カブリであり、且つ、画像耐光性、鮮鋭性、銀色調に優れた銀塩熱現像感光材料、及び該銀塩熱現像感光材料を用いた画像形成方法、および熱現像装置を提供できることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0268】
【図1】実施例で用いた銀塩熱現像感光材料の両面から加熱できるようにした熱現像装置の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0269】
6 両面に画像形成層が形成された記録シート
10 熱現像装置
11 カセッテ
12 カセッテ装着部
13 取り出す吸盤
14 搬送ヒートドラム対
15 搬送ガイド
16 徐冷部
17 トレイ
18 搬送ローラ対
19 制御部
20 熱現像部
21,22,23,24 加熱プレート
25 押さえローラ(温度センサ内蔵)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
(式中、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。またR1およびR2は同じでも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上25以下の平板状粒子であることを特徴とする請求項1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項3】
前記画像形成層が前記支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項4】
前記画像形成層が前記支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光し、熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料をX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置された熱現像装置を用い、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度を高く制御する制御手段を備えることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項9】
前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)である、ことを特徴とする請求項8に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項1】
支持体の少なくとも一方の面に感光性ハロゲン化銀、非感光性有機脂肪酸銀塩、還元剤及びバインダーを含む画像形成層を有する銀塩熱現像感光材料において、該感光性ハロゲン化銀が露光時に表面潜像型であり、熱現像後に内部潜像型へ変換し、かつ、該画像形成層が下記一般式(I)で表されるカルコゲン放出化合物を含有することを特徴とする銀塩熱現像感光材料。
一般式(I) R1−(Ch)m−R2
(式中、Chは硫黄原子、セレン原子またはテルル原子を表す。R1及びR2は脂肪族基、芳香族基、ヘテロ環基または互いに結合して環を形成することができる原子群を表す。またR1およびR2は同じでも異なっていてもよい。mは2〜6の整数を表す。)
【請求項2】
前記感光性ハロゲン化銀の全投影面積の10%以上100%以下がアスペクト比2以上25以下の平板状粒子であることを特徴とする請求項1に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項3】
前記画像形成層が前記支持体に対し一方の面側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項4】
前記画像形成層が前記支持体に対し両方の面側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の銀塩熱現像感光材料。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料をレーザ光で露光し、熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について画像形成をする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法であって、(a)該銀塩熱現像感光材料をX線増感スクリーンの間に設置することにより像形成用組立体を得る工程、(b)該組立体とX線源との間に被検体を配置する工程、(c)該被検体にエネルギーレベルが25〜125kVpの範囲にあるX線を照射する工程、(d)該銀塩熱現像感光材料を該組立体から取り出す工程、(e)取り出した該銀塩熱現像感光材料を80〜150℃の範囲の温度で加熱する工程を含んでなることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料を、25mm/秒以上120mm/秒以下で搬送しながら熱現像することを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の銀塩熱現像感光材料について、加熱プレートを2枚以上有し、該加熱プレートは、銀塩熱現像感光材料が供給されるほうから順に、第1加熱プレート、第2加熱プレートの順に、銀塩熱現像感光材料に対して一方の面側、他方の面側、の順に、交互に千鳥に配置された熱現像装置を用い、加熱面に交互に接触させながら銀塩熱現像感光材料を加熱し、かつ、前記第1加熱プレートより前記第2加熱プレートの加熱温度を高く制御する制御手段を備えることを特徴とする銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【請求項9】
前記制御手段は前記第1加熱プレート及び前記第2加熱プレートの各々の加熱温度を検出し、前記第1加熱プレートを目標温度T1に制御すると共に前記第2加熱プレートを目標温度T2に制御し、かつT2>T1(℃)である、ことを特徴とする請求項8に記載の銀塩熱現像感光材料の画像形成方法。
【図1】
【公開番号】特開2008−225053(P2008−225053A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63227(P2007−63227)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ポラロイド
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]