説明

銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法

【課題】低比重で銀と同等の導電性を有し安価であり、導電フィラー材料として好適な銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法を提供する。
【解決手段】(I)アルミニウム粉末表面に銀被覆を有し、例えば、銀2〜65重量%を被覆した平均粒径0.5〜50μmの銀被覆アルミニウム粉末であって、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の銀被覆アルミニウム粉末、(II)銀と沈澱を生じない有機酸または有機酸塩によってアルミニウム粉末をエッチングした後に、このアルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させ、引き続き、還元剤と硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀被覆を形成することを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド用塗料や回路形成用導電ペーストなどの導電フィラー材料として好適な銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法に関するものであり、より詳しくは、低比重で銀と同等の導電性を有し、しかも安価な銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波シールド用導電塗料、回路形成用導電ペースト、電極用導電ペーストなどに用いられる導電フィラーとして、銀、銅、ニッケルなどの金属粉末や、これらの金属をセラミックス粉末や樹脂粉末に被覆したものが用いられていた。
【0003】
ところが、銀単味の粉末は低抵抗で信頼性は高いが高価であるため用途が限られる。銅は還元剤を添加することによって導電性ペーストのフィラーとして用いることができるが、高温多湿下での信頼性が低く、また使用する樹脂の種類によっては樹脂の分解が促進され銅害を及ぼすことがあるため用途が限られている。ニッケルは導電性が低いので電磁波シールド用塗料のフィラーとして用いられている程度で回路形成用導電ペーストには殆ど使用されていない。また、これらの金属は何れも比重が大きく、樹脂組成物の比重も大きくなってしまう欠点があった。
【0004】
これらの問題を改善するために、銅粉末を銀で被覆した銀被覆銅粉末も用いられているが、基になる電解銅粉末は形状が複雑で銀で完全に被覆することが難しく、高温多湿下では露出した銅の部分から酸化が進み信頼性が低くなる欠点があった。また、セラミックス粉末や樹脂粉末にこれらの金属を被覆した導電フィラーは担体が軽量であることを利用して比重を小さくし、あるいは繊維状、鱗片状などの形状効果を付与することができるので導電フィラーの添加量を少なくしても導電性を得ることができ、樹脂組成物の比重を小さくすることが可能となるが、担体そのものに導電性がないため体積抵抗率が大きくなり回路形成用導電ペーストへの使用は難しい問題があった。
【0005】
また、導電性樹脂ペーストや導電性接着剤のフィラーとして銀被覆アルミニウム粉末を用いた例が知られているが、従来の銀被覆アルミニウム粉末は、銀被覆が不十分であるため導電性が低いと云う問題がある。
【0006】
【特許文献1】特許第3574738号公報(銀被覆銅粉末の使用例)
【特許文献2】特開平9−296158号公報(銀被覆ガラス粉末の使用例)
【特許文献3】特開平11−35914号公報(銀被覆アルミニウム粉末の使用例)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の導電フィラーにおける上記問題を解決したものであり、低比重で銀と同等の導電性を有し、しかも安価であり、従って、電磁波シールド用塗料や回路形成用導電ペーストなどの導電フィラー材料として好適な銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]〜[4]に示す構成によって上記問題を解決した銀被覆アルミニウム粉末とその製造方法に関する。
〔1〕アルミニウム粉末表面に銀被覆を有し、圧縮体積抵抗が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする銀被覆アルミニウム粉末。
〔2〕銀2〜65重量%を被覆した平均粒径0.5〜50μmの銀被覆アルミニウム粉末であって、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である上記[1]の銀被覆アルミニウム粉末。
〔3〕樹脂分2重量部および銀被覆アルミニウム粉末8重量部の含有比を有する樹脂塗膜において、塗膜の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である上記[1]または上記[2]の銀被覆アルミニウム粉末。
〔4〕銀イオンと沈澱を生じない有機酸または有機酸塩によってアルミニウム粉末をエッチングし(エッチング工程)、引き続き、このアルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させ(銀置換工程)、引き続き、還元剤と硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀被覆を形成する(銀メッキ工程)ことを特徴とする銀被覆アルミニウム粉末の製造方法。
〔5〕エッチング工程において、アルミニウム粉末をエッチングする有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸の何れかを用い、その塩としてナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の何れかを用いる上記[4]の製造方法。
〔6〕銀置換工程において、アンモニア水を含む硝酸銀水溶液を用いる上記[4]または上記[5]の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の銀被覆アルミニウム粉末は、圧縮体積抵抗が1×10-2Ω・cm以下であり、具体的には、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であり、ほぼ銀に近い導電性が得られる。従って、導電フィラーとして用いたときに、少量で高い導電性を得ることができる。具体的には、例えば、銀2〜65重量%を被覆した平均粒径0.5〜50μmの銀被覆アルミニウム粉末を用い、樹脂分2重量部および銀被覆アルミニウム粉末8重量部の含有比を有する樹脂塗膜において、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下の塗膜を形成することができる。この塗膜の抵抗率は銀粒子を用いた場合の抵抗率に近く、銀粒子を用いるよりも各段に安価に導電材料を形成することができる。
【0010】
本発明の製造方法によれば、アルミニウム粉末表面に銀被覆を安定に形成することができるので、従来の銀被覆金属粉末よりも格段に導電性の良い銀被覆アルミニウム粉末を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
〔銀被覆アルミニウム微粒子〕
本発明の銀被覆アルミニウム微粒子は、圧縮体積抵抗が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とし、具体的には、例えば、銀2〜65重量%を被覆した平均粒径0.5〜50μmの銀被覆アルミニウム粉末であって、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である銀被覆アルミニウム粉末である。
【0012】
本発明の銀被覆アルミニウム粉末は、導電フィラーとして用いる場合、銀の被覆量は2〜65重量%が好ましい。一般に、銀の被覆量はアルミニウム粉末の平均粒径と所望する導電性によって定められるが、概ね2〜65重量%が好ましい。銀の被覆量が2重量%より少ないと、導電フィラーとして分散した時に銀どうしの接点が形成され難くなるので、十分な導電性が得られなくなる。一方、銀被覆量が65重量%より多いと、比重が大きくなりコストも高くなるばかりか導電性も頭打ちになるので好ましくない。
【0013】
アルミニウム粉末の表面は完全に銀で覆われる必要はなく、銀被覆率は50%以上であれば好ましい。銀がドット状あるいは網目状に付着しても銀どうしの接点が形成されれば導電性は確保される。またアルミが露出した部分は酸化膜(不動態皮膜)で覆われるためそれ以上の酸化は進まないので高温多湿下でも導電性が損なわれることはない。なお、本発明の製造方法によれば、銀被覆率が高く、銀被覆率50%以上のアルミニウム粉末を容易に得ることができる。
【0014】
導電フィラーとして用いる場合、アルミニウム粉末の平均粒径は0.5〜50μmが好ましく、粉末の形状は、球状、粒状、鱗片状など用途によって選択すればよい。平均粒径は鱗片状の場合は長径の平均が0.5〜50μmであればよい。平均粒径が0.5μmより小さいと銀の被覆量を多く必要とし導電フィラーとして必要な導電性を得るために含有量を多くする必要があり好ましくない。一方、平均粒径が50μmより大きいと回路形成用導電ペーストとして使用した場合に微細なパターンに対応できないので好ましくない。
【0015】
本発明の銀被覆アルミニウム粉末は、銀被覆量2〜65重量%において、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であり、ほぼ銀に近い導電性を有している。従って、樹脂分2重量部および銀被覆アルミニウム粉末8重量部の含有比を有する樹脂塗膜において、体積抵抗率1×10-2Ω・cm以下の塗膜を形成することができる。本発明の銀被覆アルミニウム粉末について、平均粒径5μmの球状銀粉を用い、上記と同様の含有率を有する樹脂塗膜の体積抵抗率は0.8×10-3Ω・cmであり、ほぼ銀を用いた場合に近い導電性が得られる。
【0016】
〔製造方法〕
本発明の上記銀被覆アルミニウム粉末は、銀と沈澱を生じない有機酸または有機酸塩によってアルミニウム粉末をエッチングし(エッチング工程)、引き続き、このアルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させ(銀置換工程)、引き続き、還元剤と硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀被覆を形成する(銀メッキ工程)ことによって製造することができる。
【0017】
本発明の製造方法は、第一段階として、銀と沈澱を生じない有機酸または有機酸塩によってアルミニウム粉末をエッチングする(エッチング工程)。銀と沈澱を生じない有機酸としては、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸などを用いることができる。また、その塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などを用いることができる。
【0018】
本発明の製造方法は、第二段階として、エッチング液からアルミニウム粉末を取り出さずに、このアルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させる(銀置換工程)。
【0019】
アルミニウム粉末をエッチングして表面の酸化膜を除去すると、エッチング液中ではアルミニウム金属面が露出した状態となり、アルミニウムの溶解反応が継続して起こるので酸化膜は形成されないが、アルミニウム粉末をエッチング液から取り出すと再び表面に酸化膜が形成されるので、導電性の高い粉末を得ることができない。そこで、本発明の製造方法では、エッチング液からアルミニウム粉末を取り出さずに第二段階の処理を進める。
【0020】
エッチングによってアルミニウム粉末表面の酸化膜を除去する際に、同時に銀メッキを行うと、アルミニウム粉末表面に銀が析出し、この部分に局部電池が形成されることになり、アルミニウムの溶解が局部的に促進され、反応の制御が難しくなるため、均質な銀被覆を形成することが困難である。
【0021】
そこで、本発明の製造方法では、アルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させ(銀置換工程)、その後に、引き続き、還元剤と硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀被覆を形成する(銀メッキ工程)。このような二段階の処理を行うことによって、均質な銀被覆を形成することができる。
【0022】
アルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えると、アルミニウム粉末表面が溶解してアルミニウムイオンとなる際に電子を放出し、これが硝酸銀水溶液の銀イオンを還元して、アルミニウム粉末表面に銀の置換膜として析出する。この銀置換反応によってアルミニウム粉末表面に薄い銀の下地膜が形成される。この銀下地膜の上に無電解メッキによって所望の厚さの銀被覆を形成する。
【0023】
銀置換工程においては、アンモニア水を含む硝酸銀水溶液を用いるとよい。アンモニアによって銀アンミン錯体が形成され、アルミニウム粉末の表面に均質な銀下地膜を形成することができる。
【0024】
銀置換工程の後に無電解銀メッキを行う。具体的には、銀置換したアルミニウム粉末を含む上記溶液を静置し、上澄みを除去する。一方、所定量の硝酸銀、アスコルビン酸(還元剤)、アンモニア水、水酸化ナトリウムをイオン交換水に溶解して無電解銀メッキ液を調製し、この無電解銀メッキ液を、上澄みを除去した上記溶液に加えて攪拌し、アルミニウム粉末表面の銀下地膜の上に銀を還元析出させて銀被覆を形成する。アスコルビン酸は還元剤として銀に作用し、水酸化ナトリウムによってメッキ液はpH13〜14の強アルカリになり、銀の還元反応が促進される。
【0025】
本発明の製造方法において、有機酸またはその塩でエッチングする(エッチング工程)前に、無機酸や水酸化アルカリなどで予備的なエッチングを行ってもよい。予備的なエッチングに用いる液は、希釈した塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、硫酸、燐酸など何れでもよいが、希釈した硫酸−燐酸混合液は反応が穏やかでコントロールし易いので予備的なエッチングに適している。
【0026】
予備的なエッチングを行って酸化膜を除去した後に、アルミニウム粉末をエッチング液から取り出し、自然酸化膜が形成されたアルミニウム粉末を用いてもよい。
【実施例】
【0027】
〔実施例1〕
予め硫酸−燐酸混合水溶液によって予備エッチングした平均粒径2μmのアルミニウム粉末(東洋アルミニウム社製)150gを用い、これを撹拌しながらクエン酸水溶液を加えて10分間エッチングを行った。クエン酸水溶液はイオン交換水にクエン酸50gを溶解して1Lにしたものを用いた。このエッチングの後に、撹拌しながら硝酸銀水溶液を加えて2分間反応させて銀を置換させた。この硝酸銀水溶液は硝酸銀40.0g、28%アンモニア水100mlをイオン交換水1Lに溶解して調製したものを用いた。銀置換後に、上澄みをデカンテーションにより除去した後、無電解銀メッキ液を加え直ちに撹拌して銀メッキを形成した。この無電解銀メッキ液は、硝酸銀180.0g、アスコルビン酸100g、28%アンモニア水160ml、水酸化ナトリウム50gをイオン交換水2Lに溶解して調製したものを用いた。攪拌を1時間行って反応を終了した。上澄みに塩酸を加えたところ塩化銀の白沈は生成しなかったので銀は全て還元されていたことが確認されて。これを水洗し乾燥して279.9gの銀被覆アルミニウム粉末を得た。
【0028】
〔実施例2〕
予め1N塩酸水溶液によって予備エッチングした平均粒径5μmのアルミニウム粉末(東洋アルミニウム社製)200gを用い、これを撹拌しながらリンゴ酸ナトリウム水溶液を加えて10分間エッチングを行った。リンゴ酸ナトリウム水溶液はイオン交換水にリンゴ酸ナトリウム80gを溶解して2Lにしたものを用いた。このエッチングの後に、撹拌しながら硝酸銀水溶液を加えて2分間反応させて銀を置換させた。この硝酸銀水溶液は硝酸銀60.0g、28%アンモニア水50mlをイオン交換水1Lに溶解して調製したものを用いた。銀置換後に、上澄みをデカンテーションにより除去した後、無電解銀メッキ液を加え直ちに撹拌して銀メッキを形成した。この無電解銀メッキ液は、硝酸銀60.0g、アスコルビン酸50g、28%アンモニア水80ml、水酸化ナトリウム25gをイオン交換水2Lに溶解して調製したものを用いた。攪拌を1時間行って反応を終了した。上澄みに塩酸を加えたところ塩化銀の白沈は生成しなかったので銀は全て還元されていたことが確認されて。これを水洗し乾燥して248.8gの銀被覆アルミニウム粉末を得た。
【0029】
〔実施例3〕
予め0.5N水酸化ナトリウム水溶液によって予備エッチングした平均粒径45μmのアルミニウム粉末(東洋アルミニウム社製)500gを用い、これを撹拌しながらクエン酸アンモニウム水溶液を加えて10分間エッチングを行った。クエン酸アンモニウム水溶液はイオン交換水にクエン酸アンモニウム100gを溶解して3Lにしたものを用いた。このエッチングの後に、撹拌しながら硝酸銀水溶液を加えて2分間反応させて銀を置換させた。この硝酸銀水溶液は硝酸銀7.0g、28%アンモニア水10mlをイオン交換水1Lに溶解して調製したものを用いた。銀置換後に、上澄みをデカンテーションにより除去した後、無電解銀メッキ液を加え直ちに撹拌して銀メッキを形成した。この無電解銀メッキ液は、硝酸銀10.0g、アスコルビン酸10g、28%アンモニア水16ml、水酸化ナトリウム5gをイオン交換水3Lに溶解して調製したものを用いた。攪拌を1時間行って反応を終了した。上澄みに塩酸を加えたところ塩化銀の白沈は生成しなかったので銀は全て還元されていたことが確認されて。これを水洗し乾燥して509.1gの銀被覆アルミニウム粉末を得た。
【0030】
〔比較例1〜3〕
予備エッチングの後にクエン酸によるエッチング工程および銀置換工程を行わず、その他は実施例1と同様にして銀被覆アルミニウム粉末283.6gを得た(比較例1)。
予備エッチングの後にリンゴ酸ナトリウム水溶液によるエッチング工程および銀置換工程を行わず、その他は実施例2と同様にして銀被覆アルミニウム粉末250.9gを得た(比較例2)。
予備エッチングの後にクエン酸アンモニウム水溶液によるエッチング工程および銀置換工程を行わず、その他は実施例3と同様にして銀被覆アルミニウム粉末510.1gを得た(比較例3)。
【0031】
実施例1〜3および比較例1〜3の銀被覆アルミニウム粉末について、銀被覆量をICP発光分析装置で分析した。この結果を表1に示した。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例1〜3および比較例1〜3の銀被覆アルミニウム粉末を、直径25mmの孔の開いた樹脂製の筒に直径25mmの円柱状の銀めっき銅電極をセットした体積抵抗率測定器に挟み、100kg/cm2の圧力で圧縮しながら体積抵抗率を測定した。この結果を表2に示した。
【0034】
【表2】

【0035】
実施例1〜3および比較例1〜3の銀被覆アルミニウム粉末を、アクリルラッカー(関西ペイント社製アクリックNo.1000クリヤー)に導電フィラーとして混合し、樹脂固形分量20wt%および粉末量80wt%のペーストを形成した。これをPETフィルム上に150μmの厚さで塗布し、乾燥後、四探針抵抗率計(ダイアインスツルメンツ社製ロレスタGP)で体積抵抗率を測定した。この結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
本発明の銀被覆アルミニウム粉末について、平均粒径5μmの球状銀粉を用い、上記と同様のペーストを作成し、この抵抗率を測定した。この体積抵抗率は0.8×10-3Ω・cmであり、ほぼ銀を用いた場合に近い導電性が得られた。
【0038】
実施例1の銀被覆アルミニウム粉末について、電子顕微鏡写真を図1に示した。図示するように、アルミニウム粉末の表面全体に銀被覆が形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施例1の銀被覆アルミニウム粉末の電子顕微鏡写真

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム粉末表面に銀被覆を有し、圧縮体積抵抗が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする銀被覆アルミニウム粉末。
【請求項2】
銀2〜65重量%を被覆した平均粒径0.5〜50μmの銀被覆アルミニウム粉末であって、圧力100kg/cm2下の圧縮体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である請求項1の銀被覆アルミニウム粉末。
【請求項3】
樹脂分2重量部および銀被覆アルミニウム粉末8重量部の含有比を有する樹脂塗膜において、塗膜の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である請求項1または請求項2の銀被覆アルミニウム粉末。
【請求項4】
銀イオンと沈澱を生じない有機酸または有機酸塩によってアルミニウム粉末をエッチングし(エッチング工程)、引き続き、このアルミニウム粉末を含むエッチング液に硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀を置換させ(銀置換工程)、引き続き、還元剤と硝酸銀水溶液を加えてアルミニウム粉末表面に銀被覆を形成する(銀メッキ工程)ことを特徴とする銀被覆アルミニウム粉末の製造方法。
【請求項5】
エッチング工程において、アルミニウム粉末をエッチングする有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、シュウ酸、アスコルビン酸、エチレンジアミン四酢酸の何れかを用い、その塩としてナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩の何れかを用いる請求項4の製造方法。
【請求項6】
銀置換工程において、アンモニア水を含む硝酸銀水溶液を用いる請求項4または請求項5の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−53436(P2010−53436A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222831(P2008−222831)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(597065282)三菱マテリアル電子化成株式会社 (151)
【Fターム(参考)】