説明

銀鏡薄膜形成設備

【課題】 薬液混合率や銀鏡反応速度などの銀鏡反応条件の変化に原因して、銀鏡薄膜に厚みムラや色ムラなどの不良が生じることを抑制する。
【解決手段】 混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液A、Bを被処理物2の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物2に向けて噴出する薬液噴出手段3A、3Bと、この薬液噴出手段3A、3Bによる被処理物2に向けた薬液噴出に並行して被処理物2を回転させる回転手段5とを設けてある銀鏡薄膜形成設備において、回転手段5を、薬液噴出手段3による薬液噴出で被処理物2に付着する反応済み薬液を被処理物2から離脱飛散可能な回転速度で被処理物2を回転させる構成にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡薄膜形成設備に関し、より詳しくは、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の銀鏡薄膜形成設備は、例えば、表面銀鏡処理用の複数種の薬液として、アンモニア性硝酸銀水溶液やアンモニア性炭酸銀水溶液などのアンモニア性銀塩水溶液と、苛性ソーダ水溶液とブドウ糖や果糖などの炭水化物系の還元剤水溶液との混合液とを被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物に噴出することにより、アンモニア性銀塩水溶液に含まれる銀イオンが還元されて析出した銀を被処理物の表面に付着させて被処理物の表面に銀鏡薄膜を形成し、これにより、被処理物に金属光沢を付与するものである。
【0003】
ところで、従来、この種の設備では、被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、銀鏡処理用の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段としての噴出ノズルを設け、そして、被処理物を載せた載置台を銀鏡処理ブース内に搬送する搬送装置と、薬液噴出手段による被処理物への薬液噴出に並行して被処理物を回転させる回転手段とを設け、その回転手段による被処理物の回転により噴出ノズルに対する被処理物の対向面を入れ替えることで、被処理物の各面に対しもれ無く薬液が噴出されるようにしていた。(下記特許文献1参照)
【0004】
【特許文献1】特開2005−152827号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の如き従来の銀鏡薄膜形成設備では、被処理物の回転により被処理物の各面に薬液が噴出されるようにしているものの、被処理物の表面に形成される銀鏡薄膜に厚みムラや色ムラなどの不良が生じ、製品の品質低下を招くことがある問題があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、合理的な改良により上記の如き問題を効果的に解消する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1特徴構成は銀鏡薄膜形成設備に係り、その特徴は、
混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段と、この薬液噴出手段による被処理物に向けた薬液噴出に並行して被処理物を回転させる回転手段とを設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記回転手段は、前記薬液噴出手段による薬液噴出で被処理物に付着する反応済み薬液を遠心作用により被処理物から離脱飛散させる回転速度で被処理物を回転させる構成にしてある点にある。
【0008】
つまり、この種の銀鏡処理について鋭意研究を行った結果、単に噴出ノズルに対する対向面の入れ替えのために被処理物を回転させるだけの先述の従来設備では、噴出した複数種の薬液どうしを銀鏡反応させることにおいて、被処理物の表面に分散して付着した反応済み薬液が、後続の未反応薬液と混合することで、その後続未反応薬液の濃度が不確定に変化したり、また、被処理物の表面に分散して付着した反応済み薬液が、反応による析出銀と被処理物の表面との間に介在したりするなどのことが生じ、それらのことで、銀鏡薄膜に厚みムラや色ムラなどの不良が生じてしまうことを知見した。
【0009】
これに対し、上記第1特徴構成であれば、被処理物の表面に付着した反応済み薬液を回転手段による被処理物の回転において遠心作用により被処理物から離脱飛散させることができるから、上記の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止することができ、これにより、製品品質を大幅に向上することができるとともに、製品の歩留まりも大幅に向上することができる。
【0010】
なお、上記第1特徴構成の実施において、被処理物の表面に付着した反応済み薬液を遠心作用により離脱飛散させる回転速度は、被処理物の種別や使用薬液の種別、或いは、作業域の温湿度状態等の種々の条件によって異なるが、概ね80〜140回転/分を目安とした回転速度が好適である。
【0011】
本発明の第2特徴構成は、第1特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回転手段は、被処理物回転速度の変更操作が可能な構成にしてある点にある。
【0012】
つまり、上記第2特徴構成であれば、被処理物の種別や使用薬液の種別、或いは、作業域の温湿度状態等の種々の条件によって、適度な反応時間を確保しながら反応済み薬液を極力効果的に離脱飛散させ得る最適の被処理物回転速度が異なる場合でも、上記の変更操作により、それら条件に応じた最適の回転速度で被処理物を回転させることができ、このことにより、前述の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を一層効果的かつ確実に防止することができる。
【0013】
本発明の第3特徴構成は、第2特徴構成の実施において好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回転手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ被処理物回転速度を自動的に変更する構成にしてある点にある。
【0014】
つまり、上記第3特徴構成にあれば、複数の被処理物を順次に銀鏡処理する場合において、適度な反応時間を確保しながら反応済み薬液を極力効果的に離脱飛散させ得る最適の被処理物回転速度が順次処理する被処理物の種別によって異なることにかかわらず、被処理物の回転速度を被処理物夫々の種別に応じた最適な回転速度に自動的に変更することができ、これにより、前述の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止しながら生産工程の自動化を図ることが可能となる。
【0015】
本発明の第4特徴構成は、第1〜第3特徴構成のいずれかの実施において好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回転手段は、被処理物回転方向の切り替えが可能な構成にしてある点にある。
【0016】
つまり、上記第4特徴構成であれば、被処理物の表面の凹凸形状などにより、被処理物を一方向に回転させるだけでは被処理物表面の反応済み薬液を十分に離脱飛散させることができないような場合でも、上記回転方向の切り替えにより被処理物から確実に反応済み薬液を離脱飛散させることができるから、前述の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を一層効果的かつ確実に防止することができる。
【0017】
なお、第4特徴構成の実施において、回転手段を被処理物の種別に応じた経時的切り替えパターンで被処理物回転方向を自動的に切り替える構成にすれば、被処理物の形状等の種別によらず一層効果的かつ確実に反応済み薬液を被処理物から離脱飛散させることができて、前述の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良をさらに効果的かつ確実に防止することができる。
【0018】
本発明の第5特徴構成は、第4特徴構成の実施において好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記回転手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ被処理物回転方向を自動的に選択する構成にしてある点にある。
【0019】
つまり、上記第5特徴構成であれば、複数の被処理物を順次に銀鏡処理する場合において、被処理物表面の反応済み薬液を十分に離脱飛散させることのできる最適の被処理物回転方向が順次処理する被処理物の種別によって異なることにかかわらず、被処理物夫々の種別に応じた最適の回転方向が自動的に選択されるようにすることができ、これにより、前述の如き反応済み薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を一層効果的かつ確実に防止しながら生産工程の自動化を図ることが可能となる。
【0020】
本発明の第6特徴構成は、第1〜第5特徴構成のいずれかの実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記薬液噴出手段は、前記回転手段による被処理物の回転において遠心作用により被処理物から離脱飛散する反応済み薬液が形成する飛散域から外れた位置から薬液を噴出する構成にしてある点にある。
【0021】
つまり、被処理物に向けて表面銀鏡処理用の薬液を噴出するのに、被処理物から離脱飛散する反応済み薬液が形成する飛散域から薬液を噴出する場合、その噴出薬液と飛散域内を飛散する反応済み薬液との衝突の確率が高くなって、被処理物に到達する未反応薬液の量や被処理物に到達する析出銀量が変化したり、或いはまた、噴出薬液と飛散域内を飛散する反応済み薬液とが混合して未反応の噴出薬液の濃度が変化するなどのことが生じ、そのことで、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を防止する効果が制限されることになる。
【0022】
それに対して、反応済み薬液の飛散域から外れた位置から薬液を噴出する上記第6特徴構成であれば、被処理物に向けて噴出される表面銀鏡処理用の薬液と被処理物から離脱飛散する反応済み薬液との衝突の確率を低減することができるから、その衝突に原因する上記の如き不都合を効果的に回避することができ、これにより、銀鏡薄膜に厚みムラや色ムラなどの不良が生じることを一層効果的かつ確実に防止することができる。
【0023】
本発明の第7特徴構成は銀鏡薄膜形成設備に係り、その特徴は、
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記作業域の域内温度又は域内湿度を設定値に調整する域内調整手段を設けてある点にある。
【0024】
つまり、この種の銀鏡処理について鋭意研究の結果、被処理物に銀鏡処理を施す作業域の域内温度や域内湿度によって銀鏡反応速度などの銀鏡反応条件が変化し、これら域内温度や域内湿度の変化による反応条件の変化も銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良の一因となることを知見した。
【0025】
これに対し、被処理物に銀鏡処理を施すための作業域の域内温度又は域内湿度を設定値に調整する上記第7特徴構成であれば、域内温度又は域内湿度の変化に原因する銀鏡反応条件の変化を抑制することができて、作業域の域内温度又は域内湿度を銀鏡反応上の好適な温度又は湿度に保つことができ、これにより、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止することができて、製品品質を大幅に向上することができ、また、製品の歩留まりも大幅に向上することができる。
【0026】
なお、上記第7特徴構成を前記第1〜第6特徴構成と併せて実施すれば、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良をさらに効果的に防止することができる。
【0027】
本発明の第8特徴構成は、第7特徴構成の実施において好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記域内調整手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ域内温度又は域内湿度の設定値を自動的に変更する構成にしてある点にある。
【0028】
つまり、上記第8特徴構成であれば、複数の被処理物を順次に銀鏡処理する場合において、銀鏡反応上の好適な域内温度又は域内湿度が順次処理する被処理物の種別によって異なることにかかわらず、作業域の域内温度又は域内湿度を被処理物夫々の種別に応じた銀鏡反応上の好適な温度又は湿度に自動的に変更することができ、これにより、域内温度又は域内湿度の不適合に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止しながら生産工程の自動化を図ることが可能となる。
【0029】
本発明の第9特徴構成は銀鏡薄膜形成設備に係り、その特徴は、
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記作業域内に換気用空気を噴出する空気噴出部を作業域の天井部に設けるとともに、
作業域内の空気を作業域外に排出する空気排出部を作業域の下方に設けてある点にある。
【0030】
つまり、この種の銀鏡処理について鋭意研究の結果、被処理物に銀鏡処理を施す作業域内は薬液噴出に伴い多量のミスト状薬液が浮遊することになるが、このミスト状の薬液が被処理物の表面における形成後の銀鏡薄膜に付着したり、或いは、ミスト状の薬液が後続の噴出薬液と空中で混合することで複数種の薬液の混合比率が変化したりするなどのことが生じ、それらのことで、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良の一因となることを知見した。
【0031】
これに対し、上記第9特徴構成であれば、作業域内に上方から下方に向かう空気流を生じさせて、この空気流と重力とにより作業域内に浮遊するミスト状の薬液を効率良く作業域外に排出することができから、上記の如き作業域内に浮遊するミスト状の薬液に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止することができ、これにより、製品品質を大幅に向上することができるとともに、製品の歩留まりも大幅に向上することができる。
【0032】
なお、上記第9特徴構成を前記第1〜第8特徴構成と併せて実施すれば、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良をさらに効果的に防止することができる。
【0033】
本発明の第10特徴構成は銀鏡薄膜形成設備に係り、その特徴は、
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記薬液噴出手段から噴出される薬液の温度、又は、その薬液とともに前記薬液噴出手段により噴出される薬液噴出用空気の温度又は湿度を設定値に調整する調整手段を設けてある点にある。
【0034】
つまり、この種の銀鏡処理の変化について鋭意研究の結果、薬液噴出手段から噴出される薬液の温度や、その薬液とともに薬液噴出手段により噴出される薬液噴出用の空気の温湿度によって銀鏡反応速度などの銀鏡反応条件が変化し、これら噴出薬液の温度変化や薬液噴出用空気の温湿度変化による反応条件の変化も、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良の一因となることを知見した。
【0035】
これに対し、薬液噴出手段から噴出される薬液の温度、又は、その薬液とともに噴出手段により噴出される薬液噴出用空気の温度又は湿度を設定値に調整する上記第10特徴構成であれば、噴出薬液の温度、又は、薬液噴出用空気の温度又は湿度の変化に原因する銀鏡反応条件の変化を抑制することができて、噴出薬液の温度、又は、薬液噴出用空気の温度又は湿度を銀鏡反応上の好適な温度又は湿度に保つことができ、これにより、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止することができて、製品品質を大幅に向上することができるとともに、製品の歩留まりも大幅に向上することができる。
【0036】
なお、上記第10特徴構成を前記第1〜第9特徴構成と併せて実施すれば、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良をさらに効果的に防止することができる。
【0037】
本発明の第11特徴構成は、第10特徴構成の実施に好適な実施形態を特定するものであり、その特徴は、
前記調整手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ薬液の温度、又は、薬液噴出用空気の温度又は湿度の設定値を自動的に変更する構成にしてある点にある。
【0038】
つまり、上記第11特徴構成であれば、複数の被処理物を順次に銀鏡処理する場合において、銀鏡反応上の好適な薬液の温度、又は、薬液噴出用空気の温度又は湿度が順次処理する被処理物の種別によって異なることにかかわらず、薬液の温度又は薬液噴出用空気の温度又は湿度を被処理物夫々の種別に応じた銀鏡反応上の好適な温度又は湿度に自動的に変更することができ、これにより、薬液の温度、薬液噴出用空気の温度又は湿度の不適合に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止しながら生産工程の自動化を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1は、銀鏡薄膜形成設備の全体構成を示し、この設備では、例えば、セラミック、金属、合成樹脂などを材料とした被処理物の表面に銀鏡薄膜を形成する銀鏡処理を実施する。1はトンネル状の銀鏡処理ブースであり、この銀鏡処理ブース1は、被処理物2に向けて活性剤Eを噴出することで被処理物2に活性処理を施す活性化室U1、活性処理後の被処理物2を静置する静置室U2、静置後の被処理物2に向けて洗浄液Dを噴出することで被処理物2に付着した余剰活性剤Eを除去する活性剤洗浄室U3、静置に続き洗浄した被処理物2に向けて表面銀鏡処理用の薬液A(例えば、アンモニア性銀塩水溶液)、及び、薬液B(例えば、苛性ソーダ水溶液と還元剤水溶液との混合液)を噴出することで被処理物2に銀鏡処理を施す銀鏡室U4、銀鏡処理後の被処理物2に向けて洗浄液Cを噴出することで被処理物2に付着した余剰薬液A、Bを除去する銀鏡薬液洗浄室U5、銀鏡処理に続き洗浄した被処理物2に向けて水切用空気A1を噴出することで被処理物2に付着した洗浄液Eを吹き飛ばす水切室U6を、その順に被処理物搬送方向の上手側から並べて配置した構成にしてある。
【0040】
前記活性化室U1、活性剤洗浄室U3、銀鏡室U4、銀鏡薬液洗浄室U5の各々には、銀鏡処理ブース1外に配置された薬液A〜Eごとの圧送タンクTa〜TeからポンプPにより薬液供給路Ra〜Reを通じて個別に導かれた所定薬液を被処理物2の上方から被処理物2に向けて噴出する薬液噴出ユニット3Aを配設するとともに、同様にして導かれた所定薬液を被処理物2の側方から被処理物2に向けて噴出する補助薬液噴出ユニット3B(図2、図3を参照のこと)を配設してある。また、水切室U6には、銀鏡処理ブース1外に配置された空調機SA1で新鮮空気Aoを温湿度調整して生成したのちにファンdにより空気供給路RA1を通じて導かれた水切用空気A1を被処理物2の上方から被処理物2に向けて噴出する空気噴出具4を配設してある。
【0041】
6は、被処理物2を載置する略円盤形状の載置台Tを活性化室U1に給送する被処理物供給部、7は水切室U6から載置台Tを受ける被処理物受け部である。また、8は複数の載置台Tを被処理物供給部6から各室U1〜U6を経て被処理物受け部7まで順次に搬送する搬送手段である。
【0042】
5は、各室U1〜U6の各々に配設された回転手段としての回転支持装置であり、この回転支持装置5は、搬送手段8により室内に搬送された載置台Tを支持するとともに、薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bによる被処理物2への薬液噴出に並行して載置台Tとともに被処理物2を縦軸芯X周りで適宜回転させるものである。
【0043】
9は、室天井部から垂下して各室U1〜U6の上部域どうしを仕切ることで隣接室間での噴出薬液の混和を阻止する透光性の仕切壁であり、各室U1〜U6どうしの間、被処理物供給部6と活性化室U1との間、水切室U6と被処理物受け部7との間に夫々配設してある。
【0044】
10は、(図2、図3を参照)各室U1〜U6において仕切壁9の下に形成される室出入口夫々の扉体10Aを開閉操作する扉開閉装置であり、この扉開閉装置10は、被処理物2を各室U1〜U6に搬出入するときに扉体10Aを開き操作して被処理物2の搬出入を許し、そして、室内部で被処理物2に上述の各処理を行うときには扉体10Aを閉じ操作する。
【0045】
つまり、この銀鏡薄膜形成設備は、扉開閉装置10との連携下で搬送手段8により複数の被処理物2を各室U1〜U6に順次に搬送するとともに、各室U1〜U6において搬送手段8との連携下で回転支持装置5により被処理物2を適宜回転させながら各処理を実行することで、被処理物2の表面に銀鏡薄膜を形成する銀鏡処理を複数の被処理物2に対し順次、自動的に実施する構成にしてある。なお、銀鏡処理ブース1内で噴出された各薬液A〜Eは、銀鏡処理ブース1下部の薬液ごとの専用回収槽15に貯留されたのち、専用排液通路16を通じて廃棄又は再利用される。
【0046】
11は、予め記憶させた設定生産スケジュールに従って、又は、被処理物受け部6に装備した検出手段としての被処理物検出器17による被処理物2の形状種や素材種などの種別の検出に基づいて、後述する各制御を行う制御盤である。
【0047】
SA2は、空気供給部から供給された新鮮空気Aoの温度及び湿度を調整して換気用空気A2を生成する空調機であり、13は、ファンdにより空調機SA2から空気供給路RA2を通じて各室U1〜U6の室天井部に導かれた換気用空気A2を室天井部のほぼ全面から室内に下向き層流状に噴出するエアチャンバである。また、14は、各室U1〜U6の室内空気Auを下方から排出するとともに、その排出空気をファンdにより排気路14aを通じて外部に排出する排出口であり、空調機SA2により各室U1〜U6における室内空気Auの温度及び湿度を調整するとともに、エアチャンバ13からの空気吹き出しと室内空気Auの下方への排出とで発生する層流状の下向き室内気流及び重力により室内におけるミスト状の浮遊薬液(すなわち、噴出に伴いミスト化した薬液や後述する被処理物2の回転による被処理物2からの離脱飛散に伴いミスト化した薬液など)を室内から効率良く排出する。
【0048】
図2〜図5は銀鏡室U4を示し、これに代表するように、前記回転支持装置5は、室内の平面視中央部において上向きに突出する縦ケース部と、その縦ケース部の下端部からブース横側方に延びる横ケース部とからなる正面視L字状の載置台支持ケース5Aを備えており、縦ケース部の上端には、載置台Tの中央部に形成した嵌合孔tに対し下方から嵌入させる位置決め手段としての嵌入凸部5eを設けた載置台受座5dを縦軸芯X周りで回転自在に設けてある。
【0049】
また、載置台支持ケース5Aには、ブース外側面部に設置したモータ5Bの回転力を載置台受座5dに伝達する回転シャフト5a、5c、べベルギア5bを内装してあり、嵌入凸部5eを嵌合孔tに嵌入させて載置台Tを載置台受座5dに受け止め支持させた状態において、モータ5Bの回転により載置台受座5dを回転させることで載置台Tをそれに載置の被処理物2とともに縦軸芯X周りで回転させる構成にしてある。
【0050】
前記回転モータ5Bは、活性化室U1、洗浄室U3、U5、及び、水切室U6においては、比較的低い各々所定の回転速度(例えば、30回転/分程度)で被処理物2を回転させるように速度調整され、また、銀鏡室U4においては、薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bによる被処理物2に向けた薬液噴出に並行して、その薬液噴出で被処理物2に付着した反応済み薬液を遠心力により被処理物2から離脱飛散させる比較的高い回転速度(例えば、120回転/分程度)で被処理物2を回転させるように速度調整される。
【0051】
なお、静置室U2においては、載置台Tを回転させることなく、その載置台Tに載置の被処理物2を静置する。
【0052】
前記薬液噴出ユニット3Aは、略下向き四つ又形状の支持部材3aにおける下方先端部の夫々に薬液噴出ガン3bを被処理物搬送方向に駆動揺動させる状態に取り付けるとともに、駆動チェーン3cを介して支持部材3aの上部に連結した駆動モータ3dの正逆回転により被処理物搬送方向に対して直交する横方向(以下、搬送直交方向と称することがある。)で往復移動する構成にしてあり、これら揺動動作及び往復移動により被処理物2に対して噴出角度、噴出位置を変更しながら均一に各薬液A〜Eを噴出するようにしてある。
【0053】
また、前記補助薬液噴出ユニット3Bは、室内壁部に配設された略横向き二又形状の支持部の先端に一対の薬液噴出ガン3bを取り付けて構成し、この補助薬液噴出ユニット3Bにより被処理物2の側面にも各薬液A〜Eを噴出するようにしてある。
【0054】
薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bの薬液噴出ガン3bには、図示しないが、対応の各薬液A〜Eを各別に供給する薬液供給路Ra〜Reと空気供給路RA3とを接続してあり、空調機SA3で温湿度調整した新鮮空気Aoを薬液噴出用空気A3として空気供給路RA3を通じ薬液供給路Ra〜Reからの各薬液A〜Eとともに薬液噴出ガン3bに個別に供給するようにしてある。
【0055】
すなわち、空気供給路RA3を通じて薬液噴出ガン3bに供給した薬液噴出用空気A3を薬液噴出ガン3bから各薬液A〜Eとともに被処理物2に向けて噴出させ、これにより、各薬液A〜Eを噴霧状態(すなわち、スプレー状態)で被処理物2に向けて噴出させる。
【0056】
銀鏡室U4の薬液噴出ガン3bは、図6に示すように、一対の薬液噴出ガン3bを一セットとして、一方の薬液噴出ガン3bに薬液A供給用の薬液供給路Raを接続し、他方の薬液噴出ガン3bに薬液B供給用の薬液供給路Rbを接続してあり、その一セットの薬液噴出ガン3bを、それらの先端部どうしが近づく側に夫々所定角度に傾けて配置することで、一方の薬液噴出ガン3bから噴出される薬液Aと他方の薬液噴出ガン3bから噴出される薬液Bとが被処理物2の近傍から被処理物2の表面に至る重複領域P2で混合して銀鏡反応を発現する構成にしてある。
【0057】
つまり、この銀鏡薄膜形成設備では、銀鏡室U4において、薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bから被処理物2に向けて噴出された銀鏡処理用の薬液A、Bが被処理物2への到達直後又は到達過程である重複領域P2で銀鏡反応を発現するため、この銀鏡反応による析出銀と反応済み薬液との両方が被処理物2の表面に分散して付着することになるが、前述のように被処理物2の回転による遠心作用により付着反応済み薬液を被処理物2から離脱飛散させることによって、その付着反応済み薬液が後続の未反応薬液A、Bと混合して、その後続未反応薬液A、Bの濃度が不確定に変化したり、また、付着反応済み薬液が後続薬液A、Bの反応による析出銀と被処理物2の表面との間に介在したりするなどのことに原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を効果的に防止する。
【0058】
また、銀鏡室U4の薬液噴出ガン3bにおける薬液供給路Ra、Rbの接続部から薬液吐出口3eに至る薬液通路には、その先端の薬液吐出口3eに極力近付けて、薬液通路開閉用の開閉弁3fを設けてあり、これにより、開閉弁3fを開いた薬液噴出状態から開閉弁3fを閉じて薬液噴出を停止したときの薬液吐出口3fからの薬液落下を防止して、その落下薬液が銀鏡処理済みの被処理物2に付着することによる品質低下を防止するようにしてある。
【0059】
さらにまた、銀鏡室U4の薬液噴出ガン3bは、図3に示す如く、回転支持装置5による被処理物2の回転で被処理物2の周りに形成される反応済み薬液飛散域P1の上方位置に配置することで、この飛散域P1から外れた位置から薬液A、Bを噴出するようにしてあり、これにより、これら薬液噴出ガン3bから噴出された薬液A、Bと飛散域P内を飛散する反応済み薬液との衝突の確率を低減するようにしてある。
【0060】
前記空気供給路RA2の銀鏡室U4に対する分流路部分には、銀鏡室U4に供給する換気用空気A2の温湿度を個別に調整する空調機18を介装してあり、具体的には、この空調機18は、銀鏡室U4内に配設した温湿度検出器19により検出される銀鏡室U4の室内温度及び室内湿度に基づき銀鏡室U4に対する換気用空気A2の温湿度を個別に調整することで、銀鏡室U4の室内温度又は室内湿度を設定値に調整する構成にしてある。
【0061】
これに対し、前記制御盤11は、前記の設定生産スケジュールに従って、又は、被処理物検出器17による被処理物2の種別の検出に基づいて、銀鏡室U4の室内温湿度の設定値を銀鏡室U4に搬入される被処理物2の種別に応じて自動的に変更する構成にしてあり、これにより、銀鏡室U4の室内温湿度を被処理物2夫々の種別に応じた銀鏡反応上の好適な温湿度に自動的に変更するようにしてある。
【0062】
また、銀鏡室U4で用いる銀鏡処理用薬液A、Bの圧送タンクTa、Tbには、それら圧送タンクTa、Tb内の薬液A、Bの温度(つまり、銀鏡室U4において薬液噴出ガン3bから噴出する薬液A、Bの温度)を設定値に調整する薬液温度制御器S1、S2を設け、これに対し、前記制御部11は、前記の生産スケジュールに従って、又は、被処理物検出器17による被処理物2の種別の検出に基づいて、薬液A、Bの温度の設定値を銀鏡室U4に搬入される被処理物2の種別に応じて自動的に変更する構成にしてあり、これにより、銀鏡室U4において薬液噴出ガン3bから噴出する薬液A、Bの温度を被処理物2夫々の種別に応じた銀鏡反応上の好適な温度に自動的に変更するようにしてある。
【0063】
さらに、前記空気供給路RA3の銀鏡室U4に対する分流路部分には、銀鏡室U4に供給する薬液噴出用空気A3の温湿度を設定値に調整する空調機20を介装し、これに対し、前記制御盤11は、前記の生産スケジュールに従って、又は、被処理物検出器17による被処理物2の種別の検出に基づいて、銀鏡室U4に供給する薬液噴出用空気A3の設定値を銀鏡室U4に搬入される被処理物2の種別に応じて自動的に変更する構成にしてあり、これにより、銀鏡室U4において噴出する薬液噴出用空気A3の温湿度を被処理物2夫々の種別に応じた銀鏡反応上の好適な温湿度に自動的に変更するようにしてある。
【0064】
そしてまた、制御盤11は、前記の設定生産スケジュールに従って、又は、被処理物検出器17による被処理物2の種別の検出に基づいて、銀鏡室U4の回転モータ5Bの回転速度を銀鏡室U4に搬入される被処理物2の種別に応じて自動的に変更する構成にしてあり、これにより、銀鏡室U4における被処理物2の回転速度を被処理物2夫々の種別に応じて、適度な反応時間を確保しながら反応済み薬液を極力効果的に離脱飛散させ得る最適の回転速度に自動的に変更するようにしてある。
【0065】
加えて、制御盤11は、前記の生産スケジュールに従って、又は、被処理物検出器17による被処理物2の種別の検出に基づいて、銀鏡室U4の回転モータ5Bの回転方向、及び、回転方向の経時的切り替えパターンを自動的に変更する構成にしてあり、これにより、銀鏡室U4における被処理物2の回転方向、及び、回転方向の経時的切り替えパターンを被処理物2夫々の種別に応じて、被処理物2から反応済み薬液を効果的かつ確実に離脱飛散させ得る最適なものに自動的に変更するようにしてある。
【0066】
すなわち、この銀鏡薄膜形成設備では、設定生産スケジュール、又は、被処理物検出器17からの被処理物2の種別の検出に基づいて、銀鏡室U4内に搬送された被処理物2の種別に応じ、被処理物2の回転速度、被処理物2の回転方向及び回転方向の経時的切り替えパターンを被処理物2夫々に応じた最適なものに自動変更するとともに、薬液噴出用空気A3の温湿度、銀鏡処理用の薬液A、Bの温度、銀鏡室U4の室内温湿度を被処理物2夫々に応じた好適なものに自動変更することで、複数の被処理物2を順次、自動的に処理する場合において、銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良を一層効果的かつ確実に防止する。
【0067】
前記扉体10Aは、図3に示す如く、それが閉じ状態にあるとき、被処理物2の搬送方向視で隣室から見て被処理物2及びその周囲を十分に覆い隠し、かつ、上縁部が仕切壁9の下縁部とラップする横寸法L1と縦寸法L2とを有するものにしてあり、本例では、被処理物2を載置する載置台Tの直径Rよりも大なる横寸法L1で、かつ、仕切壁9の下縁部から載置台Tの下端までの長さLよりも大なる縦寸法L2にしてある。
【0068】
前記扉開閉装置10は、図2〜図5に示す如く、被処理物受け部7付近に配設のエアシリンダ10Cに連結された各室U1〜U6に対する共通回動シャフト10Bに、各室U1〜U6に対する前記扉体10Aを取り付けて構成してあり、搬送手段8との連携下でエアシリンダ10Cにより共通回動シャフト10Bをシャフト軸芯周り約90度の範囲で回動操作することで、扉体10Aを共通回動シャフト10Bのシャフト軸芯周りで揺動させて、図3、図5に示す閉じ状態と図2、図4に示す開き状態とに切り替えるようにしてある。そして、開き状態では、被処理物2の通過ライン直上域hから側方に外れた位置に位置するようにしてある。
【0069】
つまり、この扉開閉装置10は、薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bからの薬液噴出の際、扉体10Aを前記閉じ状態にしておくことで、噴出薬液が隣室に浸出するのを防止し、特に銀鏡室U4については、回転支持装置5による回転遠心力で被処理物2から離脱飛散する反応済み薬液が隣室まで飛散して被処理物2に付着することを防止する。
【0070】
また、被処理物2を搬送するときに扉体10Aを開き状態にするのに、扉体10Aを被処理物2の通過ライン直上域hから側方に外れた位置に位置させることで、扉体10Aに付着した薬液(特に、銀鏡室U4については回転遠心力により被処理物2から離脱飛散して閉じ状態の扉体10Aに付着した反応済み薬液)が室出入口を通過する被処理物2に落下付着することを防止し、これらのことにより、それら薬液の落下付着に原因する銀鏡薄膜の厚みムラや色ムラなどの不良も効果的かつ確実に防止する。
【0071】
前記搬送手段8は、図7、図8に示す如く、載置台Tを被処理物搬送方向の上手室における回転支持装置5の載置台受座5dから下手側隣接室における回転支持装置5の載置台受座5dまで略水平に移送する移送装置8Aと、この移送装置8Aを昇降させることで、各室U1〜U6における回転支持装置5の載置台受座5dに対して載置台Tを離着座させる昇降装置8Bとから構成してあり、昇降装置8Bによる移送装置8Aの上昇により載置台Tを載置台受座5dから上方に離座させる上昇工程と、離座させた載置台Tを移送装置8Aにより下手側隣接室へ移送する往動工程(図7(イ)〜(ロ)参照)と、昇降装置8Bによる移送装置8Aの下降により載置台Tを下手側隣接室の載置台受座5dに着座させる下降工程(図8(イ)〜(ロ)参照)と、載置台Tを下手側隣接室に残して下降状態の移送装置8Aを上手側に戻す復動工程とを、その順に繰り替えることで載置台T及びそれに載置の被処理物2を搬送方向下手側へ順次送るようにしてある。
【0072】
前記移送装置8Aは、搬送対象の載置台Tを載置支持する一対の搬送レール8aをブース長手方向にわたらせた状態で複数のレール受け部材8bにより被処理物搬送方向に摺動自在に支持するとともに、この搬送レール8aを被処理物搬送方向で押し引き操作するレール駆動部8cをレール受け部材8bの下部に固定して構成してあり、このレール駆動部8cによる押し引き操作により搬送レール8aを被処理物搬送方向で往復摺動させることで、その往動をもって前記往動工程を行い、また、その復動をもって前記復動工程を行うようにしてある。
【0073】
前記レール駆動部8cは、ボールネジ8eを回転自在な状態でレール受け部材8bに対し連結固定するとともに、そのボールネジ8eに螺合させたスライダ8fの上端を搬送レール8aに連結して構成してあり、搬送レール8aの押し引き操作としては、駆動モータ8dによるボールネジ8eの正逆回転駆動によりスライダ8fを被処理物搬送方向で往復移動させることで、搬送レール8aを図7(イ)の状態と図7(ロ)の状態とに亘って室間隔で往復移動させる構成にしてある。
【0074】
前記昇降装置8Cは、一対の長尺角棒状の支持フレーム8gを被処理物供給部6と被処理物受け部7とにわたらせて固設し、この支持フレーム8gを基台として、エアシリンダ8hによる共通操作棒8iの押し引き操作により移送装置8Aのレール受け部材8bを昇降させるリンクユニット8Dを2室ごとに1個の間隔で複数個設けて構成してある。
【0075】
前記リンクユニット8Dは、上端を前記レール受け部材8bに枢支連結した第1リンク部材8jと、上端を第1リンク部材8jの中央部に枢支連結するとともに、下端を支持フレーム8gに枢支連結した第2リンク部材8kとを備え、これら第1、第2リンク部材8j、8kは、レール受け部材8bと第1リンク部材8jとの枢支点が側面視で支持フレーム8gと第2リンク部材8kとの枢支点の直上方に位置する状態に組み付けてある。
【0076】
また、第1リンク部材8jの下端には、支持フレーム8g上を被処理物搬送方向に転動させる転輪8mを取り付けてあり、各第1リンク部材8jの転輪8mを前記共通操作棒8iに対し枢着することで、エアシリンダ8hによる共通操作棒8iの押し引き操作により各第1リンク部材8jの転輪8mを支持フレーム8g上で同調させて転動させる構成にしてある。
【0077】
つまり、共通操作棒8iの押し引き操作により各第1リンク部材8jの転輪8mを第2リンク部材8k側に寄せて、各第1リンク部材8jの傾き角度をK2からK1にする(図8(イ)(ロ)参照)ことで、レール受け部材8bを上昇させて搬送レール8aを上昇させる前記上昇工程を行い、また、共通操作棒8iの押し引き操作により各第1リンク部材8jの転輪8mを第2リンク部材から離れる側に寄せて、各第1リンク部材8jの傾き角度をK1からK2にすることで、レール受け部材8bを下降させて搬送レール8aを下降させる前記下降工程を行うようにしてある。
【0078】
なお、薬液噴出ユニット3A及び補助薬液噴出ユニット3Bは、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液A、Bを被処理物2の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物2に向けて噴出する薬液噴出手段を構成し、銀鏡室U4は、被処理物2の表面に銀鏡処理を施すための作業域を構成し、エアチャンバ13は、作業域内に換気用空気A2を噴出する空気噴出部を構成し、排気口14は、作業域内の空気(本例では、銀鏡室U4の室内空気Au)を作業域外に排出する空気排出部を構成する。
【0079】
また、空調機18、温湿度検出器19により作業域の域内温度又は域内湿度(本例では、銀鏡室U4の室内温度又は室内湿度)を設定値に調整する域内調整手段を構成し、薬液温度制御器S1、S2、空調機20により薬液噴出手段から噴出される薬液A、Bの温度、又は、その薬液A、Bとともに前記薬液噴出手段により噴出される薬液噴出用空気A3の温度又は湿度を設定値に調節する調整手段を構成する。
【0080】
[別実施形態]
次に本発明の別実施形態を列記する。
前述の実施形態では、活性化室U1、活性剤洗浄室U2、銀鏡室U4、銀鏡薬液洗浄室U5の夫々を1室づつ設けていたが、これらの室を必要に応じて分割してもよい。
【0081】
また、上述の如く室を分割した場合において、分割した室の前段と後段とで、回転支持装置5による回転速度や回転方向、回転方向の切り替えパターンを必要に応じ変更してもよく、また、薬噴出手段から噴出される薬液A〜Eの濃度や噴出量、銀鏡処理用薬液A、Bの混合比率などを必要に応じ変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】銀鏡薄膜形成設備の全体構成を示す説明図
【図2】被処理物搬送時における銀鏡室の被処理物搬送直交方向断面図
【図3】薬液噴出時における銀鏡室の被処理物搬送直交方向断面図
【図4】被処理物搬送時における銀鏡室の被処理物搬方向断面図
【図5】薬液噴出時における銀鏡室の被処理物搬送方向断面図
【図6】銀鏡処理用薬液の噴出状態を示す説明図
【図7】搬送装置の説明図
【図8】搬送装置の説明図
【符号の説明】
【0083】
1 銀鏡処理ブース
2 被処理物
3A 薬液噴出手段(薬液噴出ユニット)
3B 薬液噴出手段(補助薬液噴出ユニット)
5 回転手段(回転支持装置)
8 搬送手段
13 空気流入部(エアチャンバ)
14 空気排出部(排出口)
17 検出手段
A、B 銀鏡処理用の薬液
U4 作業域(銀鏡室)
Au 域内空気(室内空気)
A2 換気用空気
A3 薬液噴出用空気
P1 飛散域
18、19 域内調整手段
20、S1、S2 調整手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段と、この薬液噴出手段による被処理物に向けた薬液噴出に並行して被処理物を回転させる回転手段とを設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記回転手段は、前記薬液噴出手段による薬液噴出で被処理物に付着する反応済み薬液を遠心作用により被処理物から離脱飛散させる回転速度で被処理物を回転させる構成にしてある銀鏡薄膜形成設備。
【請求項2】
前記回転手段は、被処理物回転速度の変更操作が可能な構成にしてある請求項1記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項3】
前記回転手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ被処理物回転速度を自動的に変更する構成にしてある請求項2記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項4】
前記回転手段は、被処理物回転方向の切り替えが可能な構成にしてある請求項1〜3のいずれか1項に記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項5】
前記回転手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ被処理物回転方向を自動的に選択する構成にしてある請求項4記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項6】
前記薬液噴出手段は、前記回転手段による被処理物の回転において遠心作用により被処理物から離脱飛散する反応済み薬液が形成する飛散域から外れた位置から薬液を噴出する構成にしてある請求項1〜5のいずれか1項に記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項7】
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記作業域の域内温度又は域内湿度を設定値に調整する域内調整手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備。
【請求項8】
前記域内調整手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ域内温度又は域内湿度の設定値を自動的に変更する構成にしてある請求項7記載の銀鏡薄膜形成設備。
【請求項9】
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記作業域内に換気用空気を噴出する空気噴出部を作業域の天井部に設けるとともに、
作業域内の空気を作業域外に排出する空気排出部を作業域の下方に設けてある銀鏡薄膜形成設備。
【請求項10】
被処理物の表面に銀鏡処理を施すための作業域を形成する銀鏡処理ブースを設けるとともに、混合により銀鏡反応を発現する表面銀鏡処理用の複数種の薬液を被処理物の表面又はその近傍で反応させる状態で前記作業域内の被処理物に向けて噴出する薬液噴出手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備であって、
前記薬液噴出手段から噴出される薬液の温度、又は、その薬液とともに前記薬液噴出手段により噴出される薬液噴出用空気の温度又は湿度を設定値に調整する調整手段を設けてある銀鏡薄膜形成設備。
【請求項11】
前記調整手段は、設定生産スケジュールに従って、又は、検出手段による被処理物の種別の検出に基づいて被処理物の種別に応じ薬液の温度、又は、薬液噴出用空気の温度又は湿度の設定値を自動的に変更する構成にしてある請求項10記載の銀鏡薄膜形成設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−186731(P2007−186731A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−3678(P2006−3678)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(000149790)株式会社大気社 (136)
【出願人】(506012534)有限会社ジェイ・エー・コーティング (2)
【Fターム(参考)】