説明

銅含有材料粗面化剤及び銅含有材料の粗面化方法

【課題】本発明は、銅含有材料の良好な外観、特に金属光沢を維持し、レジスト等の被覆材料との充分な密着性を有する化学処理を行うことができる銅含有材料粗面化剤及び銅含有材料の粗面化方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の銅含有材料粗面化剤は、(A)硫酸25〜200g/リットル、(B)過酸化水素10〜100g/リットル、(C)亜リン酸または亜リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の亜リン酸成分0.05〜20g/リットル、(D)1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールから選ばれる少なくとも1種又は2種のアゾール成分0.05〜10g/リットル、(E)塩化ナトリウムまたは塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種類又は2種類の塩素化合物成分0.005〜0.5g/リットルを含む水溶液からなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅含有材料粗面化剤及び銅含有材料の粗面化方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
銅含有材料の粗面化方法として、硫酸と過酸化水素を含有する水溶液の銅溶解又は腐食(エッチング)作用を利用した化学処理が知られており、多数報告されている。例えば、特許文献1には、プリプレグとの密着性を向上させる、無機酸及び銅の酸化剤からなる主剤と、少なくとも一種のアゾール類及び少なくとも一種のエッチング抑制剤とを含む水溶液からなるマイクロエッチング剤が開示されている。なお、特許文献1には、無機酸として硫酸、酸化剤として過酸化水素、アゾール類として、ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、エッチング抑制剤として亜リン酸、亜リン酸のナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩の例示がある。
【0003】
特許文献2には、積層材料との密着性を向上させる、無機酸、酸化剤、アゾール化合物、特定のアミド化合物を含有する水溶液からなる銅含金属材料表面粗化剤組成物;及び更にハロゲンイオンを含有するが銅含金属材料表面粗化剤組成物開示されている。なお、特許文献2には、無機酸として硫酸、銅の酸化剤として過酸化水素、アゾール化合物として、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾール、ハロゲンイオンを与える化合物として、NaClの例示がある。
【0004】
特許文献3には、積層材料との密着性を向上させ、色調悪化を起こすことのない無機酸、銅の酸化剤、アゾール化合物、特定のアリールエーテル化合物を含有する水溶液からなる銅含金属材料表面粗化剤組成物が開示されている。なお、特許文献3には、無機酸として硫酸、酸化剤として過酸化水素、アゾール化合物として、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールの例示がある。
【0005】
特許文献4には、銅に対するニッケル、クロム合金の選択エッチングのための酸成分と、銅エッチング抑制成分を含むエッチング液が開示されており、酸成分として硫酸、銅エッチング抑制剤として塩化ベンザルコニウムが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−282265号公報
【特許文献2】特開2003−105569号公報
【特許文献3】特開2005−290495号公報
【特許文献4】特開2004−190054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に開示された表面粗化は、表面を凹凸に粗化するものであり、粗化後の銅含有材料表面は、褐色乃至こげ茶色を呈する。特許文献3の表面粗化は、レジスト等の密着性を損なうことなく粗化後の色調を改善するものであるが、色調は明褐色〜茶色であった。レジスト等被覆材料との密着性を向上させるためのマイクロエッチングあるいはソフトエッチングといわれる従来の銅含有材料の化学的な手法による粗面化処理が、均質に凹凸を与えるものであるので、銅含有材料の色調が悪化し、光沢が損なわれる。
銅含有材料の化学処理による粗面化方法において、被覆材料の密着性を維持したまま銅含有材料表面の外観を改善する方法が求められている。特に充分な金属光沢を維持する方法は見出されていない。
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、銅含有材料の良好な外観、特に金属光沢を維持し、レジスト等の被覆材料との充分な密着性を有する化学処理を行うことができる銅含有材料粗面化剤及び銅含有材料の粗面化方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記問題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の組成を有する粗面化処理剤が、上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)硫酸25〜200g/リットル、(B)過酸化水素10〜100g/リットル、(C)亜リン酸または亜リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の亜リン酸成分0.05〜20g/リットル、(D)1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールから選ばれる少なくとも1種又は2種のアゾール成分0.05〜10g/リットル、(E)塩化ナトリウムまたは塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種類又は2種類の塩素化合物成分0.005〜0.5g/リットルを含む水溶液からなる銅含有材料粗面化剤である。
【0011】
また、本発明は、さらに(F)銅イオンを1〜30g/リットル含む上記に記載の銅含有材料粗面化剤である。
【0012】
また、本発明は、上記に記載の銅含有材料粗面化剤を銅含有材料の表面に接触させることを特徴とする銅含有材料の粗面化方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、銅含有材料の良好な外観、特に金属光沢を維持し、レジスト等の被覆材料との充分な密着性を有する化学処理を行うことができる銅含有材料粗面化剤及び銅含有材料の粗面化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例2で得た、粗面化された銅含有材料の5000倍、傾斜30°のSEM像
【図2】実施例12で得た、粗面化された銅含有材料の5000倍、傾斜30°のSEM像
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の銅含有材料粗面化剤(以下、粗面化剤という)は、(A)硫酸25〜200g/リットル、(B)過酸化水素10〜100g/リットル、(C)亜リン酸または亜リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の亜リン酸成分0.05〜20g/リットル、(D)1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールから選ばれる少なくとも1種又は2種のアゾール成分0.05〜10g/リットル、(E)塩化ナトリウムまたは塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種類又は2種類の塩素化合物成分0.005〜0.5g/リットルを含む水溶液からなる。
【0016】
本発明の粗面化剤における(A)成分の含有量は、25〜200g/リットル、好ましくは50〜150g/リットルである。(A)成分の含有量が25g/リットル未満であると、エッチング速度が低下するために好ましくない。一方、(A)成分の含有量が200g/リットルを超えると、硫酸銅析出の不具合を生じるために好ましくない。
【0017】
本発明の粗面化剤における(B)成分の含有量は、10〜100g/リットル、好ましくは10〜50g/リットルである。(B)成分の含有量が10g/リットル未満であると、エッチング速度が低下するために好ましくない。一方、(B)成分の含有量が100g/リットルを超えると、粗化ムラの不具合を生じるために好ましくない。
【0018】
上記(A)成分と(B)成分の比率は、エッチング速度および粗面化剤の安定性等を考慮して適宜設定することができる。例えば、(A)成分を100質量部としたとき、(B)成分は、10〜100質量部が好ましく、20〜75質量部がより好ましい。
【0019】
本発明の(C)亜リン酸成分において、亜リン酸塩としては、亜リン酸ナトリウム、亜リン酸カリウム、亜リン酸リチウム、亜リン酸アンモニウム等の水溶性の塩が挙げられる。(C)亜リン酸成分としては経済性と粗面化剤の保存安定性の観点で亜リン酸が好ましい。本発明の粗面化剤における(C)成分の含有量は、0.05〜20g/リットル、好ましくは0.1〜10g/リットルである。(C)成分の含有量が0.05g/リットル未満であると、良好な光沢が得られないために好ましくない。一方、(C)成分の含有量が20g/リットルを超えると、エッチング速度が低下する、粗化ムラが多く発生する等の不具合を生じるために好ましくない。
【0020】
本発明の粗面化剤における(D)成分を構成するアゾールは、1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールであり、粗面化剤の保存時および使用時の安定性の面で5−メチル−1H−テトラゾールが好ましい。本発明の粗面化剤における(D)成分の含有量は、0.05〜10g/リットル、好ましくは0.1〜3g/リットルである。(D)成分の含有量が0.05g/リットル未満であると、良好な光沢が得られないために好ましくない。一方、(D)成分の含有量が10g/リットルを超えると、エッチング速度の低下、被覆材料との密着性が低下する不具合を生じるために好ましくない。
【0021】
本発明の粗面化剤における(E)塩素化合物成分において、塩化ベンザルコニウムは、例えば、下記式で表される:
【化1】

(式中、Rは、炭素数8〜18のアルキル基を表す。)
【0022】
なお、多くの市販の塩化ベンザルコニウムのRは、ヤシアルコール由来の炭素数12〜14のアルキル基である。本発明に使用される塩化ベンザルコニウムとしては、入手が容易でコストが小さいので、当該塩化ベンザルコニウムが好適である。なお、後述の実施例において使用される塩化ベンザルコニウムのRは、ヤシアルコール由来の炭素数12〜14のアルキル基のものである。
【0023】
本発明の粗面化剤における(E)成分の含有量は、0.005〜0.5g、好ましくは0.01〜0.3g/リットルである。(E)成分の含有量が0.005g/リットル未満であると、良好な光沢、均質な表面外観が得られないために好ましくない。一方、(E)成分の含有量が0.5g/リットルを超えると、光沢の消失、粗面化の均質性の低下を生じるために好ましくない。なお、(E)成分としては、塩化ナトリウムより塩化ベンザルコニウムの方が光沢を得られる配合量の幅が大きく、粗面化剤調製の配合マージンが広く取れるので好ましい。
【0024】
本発明の粗面化剤は、(C)成分と(D)成分を併用することで、光沢を有し、被覆材料との密着性の良好な粗面化が得られる。本発明の粗面化剤による得られる銅含有材料の表面は、凹凸状の粗化ではなく、平滑面に多数の孔蝕状の凹部が存在する状態である。すなわち、本発明の粗面化剤は、光沢を維持するだけの平滑な面を有し、充分な密着性を付与できる孔蝕状の表面状態を与えることができる。
【0025】
本発明の粗面化剤には、本発明の効果を阻害することのない範囲で、上記で説明した必須成分(A)〜(E)以外に当該用途に使用される周知の任意成分を配合することができる。任意成分としては、グリコール類化合物、グリコールエーテル類化合物、界面活性剤、(A)及び(C)成分以外の無機酸、有機酸、アミノ酸類化合物、(D)成分以外のアゾール類化合物、ピリミジン類化合物、チオ尿素類化合物、アミン類化合物、アルキルピロリドン類化合物、有機キレート剤化合物、ポリアクリルアミド類化合物、過硫酸塩、無機塩及び銅イオンを供給する水溶性銅化合物が挙げられる。これらの任意成分を使用する場合の濃度は、一般的に0.001質量%〜10質量%の範囲である。これらを使用する主な目的は、本発明の粗面化剤の各成分の安定化および可溶化、pH調整、比重調整、粘度調整、濡れ性改善、エッチング速度の調整、粗面化ムラ防止等が挙げられる。
【0026】
グリコール類化合物としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、3,5−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール等が挙げられる。
【0027】
グリコールエーテル類化合物としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、及び3−メチル−3−メトキシ−3−メトキシブタノール等の低分子グリコールエーテル化合物、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、及びポリエチレングリコールモノブチルエーテル等の高分子グリコールエーテル化合物(分子量:200〜50000程度)が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、硫化オレフィン塩、高級アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、硫酸化脂肪酸塩、スルホン化脂肪酸塩、リン酸エステル塩、脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、グリセライド硫酸エステル塩、脂肪酸エステルのスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸メチルエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物の硫酸エステル塩、スルホコハク酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゾイミダゾールスルホン酸塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸塩、N−アシル−N−メチルタウリンの塩、N−アシルグルタミン酸又はその塩、アシルオキシエタンスルホン酸塩、アルコキシエタンスルホン酸塩、N−アシル−β−アラニン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシエチルタウリン又はその塩、N−アシル−N−カルボキシメチルグリシン又はその塩、アシル乳酸塩、N−アシルサルコシン塩、及びアルキル又はアルケニルアミノカルボキシメチル硫酸塩等が挙げられる。
【0029】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状、ブロック状の何れでもよい)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、アルキレンジアミンのエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム又はブロック付加物、グリセリン脂肪酸エステル又はそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸−N−メチルモノエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド又はそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、及びN−長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等が挙げられる。
【0030】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基或いはエステル基或いはアミド基を含有するモノ或いはジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体等が挙げられる。
【0031】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、及びイミダゾリニウムベタイン系界面活性剤等が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0032】
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、ポリリン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
有機酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、スルファミン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、レブリン酸及びβ−クロロプロピオン酸、安息香酸等のカルボン酸類、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、リン酸のC1〜C18アルキルのモノまたはジエステル、ベンゼンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0033】
アミノ酸類化合物としては、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、フェニルアラニン、トリプトファン、グルタミン酸、アスパラギン酸、リシン、アルギニン及びヒスチジン等のアミノ酸、並びにこれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0034】
アゾール類化合物としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール等のアルキルイミダゾール類;ベンゾイミダゾール、2−メチルベンゾイミダゾール、2−ウンデシルベンゾイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等のベンゾイミダゾール類;1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−1,2,4−トリアゾール、1−アミノベンゾトリアゾール、4−アミノベンゾトリアゾール、1−ビスアミノメチルベンゾトリアゾール、1−メチル−ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−クロロベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類;1H−テトラゾール、5−アミノ−1H−テトラゾール、5−フェニル−1H−テトラゾール、5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−フェニル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプト−1H−テトラゾール、5,5'−ビス−1H−テトラゾール等のテトラゾール類;ベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−フェニルチアゾール、2−アミノベンゾチアゾール、2−アミノ−6−ニトロベンゾチアゾール、2−アミノ−6−メトキシベンゾチアゾール、2−アミノ−6−クロロベンゾチアゾール等のチアゾール類が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
ピリミジン類化合物としては、例えば、ジアミノピリミジン、トリアミノピリミジン、テトラアミノピリミジン、及びメルカプトピリミジン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
チオ尿素類化合物としては、例えば、チオ尿素、エチレンチオ尿素、及びチオジグリコール、メルカプタン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0036】
アミン類化合物としては、例えば、ジアミルアミン、ジブチルアミン、トリエチルアミン、トリアミルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エタノールイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、エタノールジイソプロパノールアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリジン、及びこれらの塩酸塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0037】
アルキルピロリドン類化合物としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−プロピル−2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、N−アミル−2−ピロリドン、N−ヘキシル−2−ピロリドン、N−ヘプチル−2−ピロリドン、及びN−オクチル−2−ピロリドン等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0038】
有機キレート剤化合物としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、並びにそれらのアルカリ金属塩及びアンモニウム塩等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0039】
ポリアクリルアミド類化合物としては、例えば、ポリアクリルアミド及びt−ブチルアクリルアミドスルホン酸等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、及び過硫酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
無機塩としては、例えば、塩化カリウム、塩化アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩素酸アンモニウム、塩素酸ナトリウム、及び塩素酸カリウム等が挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0041】
銅イオンを与える化合物としては、銅、水溶性の銅塩(塩化銅、臭化銅、硫酸銅、及び水酸化銅等)等が挙げられる。
【0042】
上記の任意成分の中でも、特に配合することが好ましい成分は、(F)銅イオンを与える化合物成分、好ましくは銅である。銅イオンは、粗面化処理後の部分的な光沢ムラを抑制する効果がある。銅イオンを使用する場合、粗面化剤中のその含有量は、銅イオン換算で1〜30g/リットルであり、3〜20g/リットルがより好ましい。含有量が1g/リットル未満であると、充分な使用効果を得ることができない場合があり、一方、含有量が30g/リットルを超えると、使用効果の増加が得られないばかりか、過酸化水素の分解、銅塩析出による不具合等が生じるために好ましくない。
【0043】
本発明の粗面化剤は、上記の成分と水とを混合することにより調製することができる。混合方法は特に限定されず、周知の混合装置を用いて混合すればよい。
【0044】
本発明の粗面化剤を用いた銅含有材料の粗面化処理は、周知一般の方法により行うことができる。被粗面化材料である銅含有材料としては、銀銅合金、アルミニウム銅合金等の銅合金及び銅が挙げられ、特に銅が好適である。また、粗面化方法についても特に限定されず、浸漬法やスプレー法の接触方法を用いることがでる。粗面化処理の条件についても、使用する粗面化剤や接触方法に応じて適宜調整すればよい。
【0045】
本発明の粗面化剤をスプレー法で用いる場合、処理温度は10〜50℃、好ましくは20℃〜40℃、処理圧力は0.03〜0.2MPa、処理時間は20〜300秒であることが好ましい。
【0046】
本発明の粗面化剤を用いた銅含有材料の粗面化処理の好ましいエッチング量は、充分な被覆材料の密着性が得られる0.3μm以上が好ましく、0.5μm〜5μmがより好ましい。
【0047】
本発明の粗面化剤および粗面化方法は、金属光沢を有する粗面化を与えるので、プリント配線基板等のソルダーレジスト前処理、金メッキ前処理、ドライフィルム前処理に好ましく使用できる。
【実施例】
【0048】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
[実施例1〜3、比較例1〜4]
(A)硫酸65g/リットル、(B)過酸化水素25g/リットル、(C)表1に記載、(D)表1に記載、(E)表1に記載、残分水の組成となるように粗面化剤1〜3および比較用粗面化剤1〜4を調製した。
次いで、厚さ18μmの両面銅張積層板を、処理温度30℃、処理圧力0.05MPaの条件下で、エッチング量がほぼ1μmとなる時間である100秒間スプレーすることで粗面化処理を行なった後、銅表面の外観(光沢と色調)を目視観察した。光沢評価は、光沢のあるものを○、弱い光沢のあるものを△、光沢のないものを×とした。
次いで、この銅表面に液状レジスト(太陽インキ製造株式会社製フォトソルダーレジスト、PSR−4000G24/CA−40G23)を塗布し、90Wの水銀灯による紫外線を1cmの距離から900秒間照射してレジストを十分に硬化させた。その後、レジストを1mm間隔で10×10の碁盤目状にクロスカットし、10%塩酸に30分間浸漬させた後、JIS K−5600に従って剥離試験を行い、レジスト密着性(粗面化の良否)を評価した。密着性は、剥離なしを◎、剥離があり剥離面積20%未満を○、同20%以上を×で表した。結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
[比較例5〜11]
(A)硫酸65g/リットル、(B)過酸化水素25g/リットル、表3に記載の(亜)リン酸1.0g/リットル、表3に記載のアゾール類1.0g/リットル、(E)塩化ベンザルコニウム0.05g/リットル、残分水の組成となるように比較用粗面化剤5〜11を調製し、上記実施例と同様に外観と密着性の評価を行った。結果を表4に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
[実施例4〜7]
(A)硫酸65g/リットル、(B)過酸化水素25g/リットル、(C)表5に記載、(D)表5に記載のアゾール1.0g/リットル、(E)塩化ベンザルコニウム0.05g/リットル、残分水の組成となるように粗面化剤4〜7を調製し、上記実施例1と同様に外観と密着性の評価を行った。結果を表6に示す。
【0055】
【表5】

【0056】
【表6】

【0057】
[実施例8〜10、比較例12]
(A)硫酸65g/リットル、(B)過酸化水素25g/リットル、(C)表7記載の亜リン酸成分1.0g/リットル、(D)表7記載のアゾール、(E)塩化ベンザルコニウム0.05g/リットル、残分水の組成となるように粗面化剤8〜10および比較用粗面化剤12を調製し、上記実施例1と同様に外観と密着性の評価を行った。結果を表8に示す。
【0058】
【表7】

【0059】
【表8】

【0060】
[実施例11〜14]
(A)硫酸75g/リットル、(B)過酸化水素25g/リットル、(C)亜リン酸成分0.5g/リットル、(D)5−メチル−1H−テトラゾールまたは1,2,3−ベンゾトリアゾール0.5g/リットル、(E)塩化ベンザルコニウム0.05g/リットル、(F)表9記載、残分水の組成となるように粗面化剤11〜14を調製し、上記実施例1と同様の外観と密着性の評価に加え、目視による粗化ムラの評価を行った。結果を表10に示す。
【0061】
【表9】

【0062】
【表10】

【0063】
上記実施例2及び12で得た、粗面化された銅含有材料の5000倍、傾斜30°のSEM像を図1、2に示す。本発明の粗面化剤は、光沢を維持するだけの平滑面な面を有し、充分な密着性を付与できる孔蝕状の表面状態を与えることが確認できた。
また、上記実施例12で得た粗面化された銅含有材料の光沢度をグロス計で測定した結果、119(20°)、262(60°)、163(80°)であった。なお、粗化前は、440(20°)、547(60°)、237(80°)であった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の粗面化剤は、銅含有材料の粗面化処理に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)硫酸25〜200g/リットル、(B)過酸化水素10〜100g/リットル、(C)亜リン酸または亜リン酸塩から選ばれる少なくとも1種の亜リン酸成分0.05〜20g/リットル、(D)1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−テトラゾールから選ばれる少なくとも1種又は2種のアゾール成分0.05〜10g/リットル、(E)塩化ナトリウムまたは塩化ベンザルコニウムから選ばれる1種類又は2種類の塩素化合物成分0.005〜0.5g/リットルを含む水溶液からなる銅含有材料粗面化剤。
【請求項2】
さらに、(F)銅イオンを1〜30g/リットル含む、請求項1に記載の銅含有材料粗面化剤。
【請求項3】
(D)アゾール成分が5−メチル−1H−テトラゾールである、請求項1または2に記載の銅含有材料粗面化剤。
【請求項4】
(E)塩素化合物成分が塩化ベンザルコニウムである、請求項1ないし3のいずれか1項記載の銅含有材料粗面化剤。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項記載の銅含有材料粗面化剤を銅含有材料の表面に接触させることを特徴とする銅含有材料の粗面化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−12654(P2012−12654A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149539(P2010−149539)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】