説明

鋳型造型装置

【課題】 ガス硬化性鋳物砂を用いる造型装置において、所要の強度を有する鋳型を安定的に製造可能とすることを課題とする。
【解決手段】 溶剤で溶融された粘結剤と砂とを混練してなる混練砂をエアブローにより成形型50のキャビティ53に吹き込み充填し、鋳型を造型する鋳型造型装置1において、ブローヘッド10内の混練砂の量と温度をそれぞれ検出すセンサ36、37を備え、該混練砂の量及び温度と、混練砂充填時のエアブロー量とをパラメータとして、ブローヘッド10内に残存する溶剤量を算出し、この残存溶剤量と、所要の強度の鋳型を製造するのに必要な溶剤量とから、ブローヘッド10内に追加噴霧する溶剤噴霧量を求め、溶剤噴霧装置34により、その量の溶剤を混練砂充填時ごとに追加噴霧するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス硬化性鋳物砂を用いて鋳型を製造する鋳型造型装置に関し、鋳型製造技術の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
例えばエンジンのシリンダブロック鋳造用の中子等の製造方法として、溶剤で溶かしたフェノール樹脂とポリイソシアネート化合物等の2種の粘結剤を砂に加えて混練したガス硬化性鋳物砂(以下、「混練砂」という)をエアブローによって成形型内に吹き込み充填すると共に、その後、該型内にトリエチルアミンガス等の硬化促進ガスを通気させ、このガスの作用によって前記2種の粘結剤を硬化させることにより、鋳型を製造する方法が知られている。
【0003】
その場合に、前記混練砂は予めブローヘッドに貯留され、該ブローヘッドから1回の造型作業ごとに必要量が成形型に充填されるのが通例で、その際、混練砂は、粘結剤が溶剤により適度に溶融された状態でブローヘッドに供給されるが、該ブローヘッドへの供給後、成形型への充填までの時間の経過によって硬化するという問題がある。これは、前記溶剤が揮発し、2種の粘結剤が型への充填前に反応、硬化することによるものである。
【0004】
つまり、図6に示すように、ブローヘッドに供給された直後の混練砂は、溶剤Aによって2種の粘結剤B1、B2の反応が抑えられ、これらの粘結剤B1、B2は反応硬化していない状態にあるが、ブローヘッドへの供給後、時間が経過すると、図7に示すように、溶剤Aが揮発してしまって、粘結剤B1、B2が反応し、例えばフェノール樹脂とポリイソシアネート化合物の場合、ウレタン樹脂B3となって砂Cに固着した状態となる。
【0005】
そして、混練砂がブローヘッド内でこのような状態となると、粘結剤の粘性が増加してエアブローによる成形型への充填性が悪化し、また充填後に成形型に供給される硬化促進ガスが十分に作用しなくなり、その結果、所要の強度を有する鋳型が得られないことになるのである。
【0006】
ガス硬化性の混練砂を用いた造型作業における上記のような問題に対し、例えば特許文献1には、混練砂の可使時間を延長するために、鋳型製造工程中にブローヘッド内の混練砂に、例えば鋳型300個製造当り、混練直後の含有量の一定範囲の割合の溶剤を追加供給することが記載されている。また、この文献には、混練砂中に残留している溶剤の量が温度等に依存することが示唆されている。
【0007】
【特許文献1】特開平3−47647号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載のものは、混練直後の含有量の一定範囲の割合で溶剤を追加供給しようとするものであり、また、定期的に追加供給する構成であるから、溶剤の追加供給量が一定しなかったり、前回の追加供給時から次回の追加供給時までの間に混練砂中の溶剤が揮発して含有率が変化することになる。したがって、各回の鋳型造型時における混練砂中の溶剤量が常に最適量とは限らないことになり、その結果、溶剤含有量が不足し或いは過剰となって、所要の強度を有する鋳型が得られないおそれがある。
【0009】
そこで、本発明は、ガス硬化性の混練砂を用いる鋳型造型装置において、溶剤含有量を適切にコントロールすることにより、所要の強度を有する鋳型を安定的に製造可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は次のように構成したことを特徴とする。
【0011】
まず、本願の請求項1に記載の発明は、溶剤で溶融された粘結剤と砂とを混練してなる混練砂をエアブローにより成形型のキャビティに吹き込み充填し、鋳型を造型する鋳型造型装置において、前記混練砂を収容し、下部に該混練砂をキャビティに吹き込むブローノズルを有するブローヘッドと、混練砂の吹き込み時に前記ブローヘッド内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置と、ブローヘッド内の混練砂の温度を検出する砂温検出手段と、ブローヘッド内の混練砂の量を検出する砂量検出手段と、ブローヘッド内の混練砂に溶剤を噴霧する溶剤噴霧装置と、前記砂温検出手段で検出したフローヘッド内の混練砂の温度と砂量検出手段で検出した混練砂の量とに基づき、前記溶剤噴霧装置から噴霧する溶剤の量を制御する噴霧量制御手段とが備えられていることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の鋳型造型装置において、前記溶剤噴霧装置は、キャビティへの混練砂の充填時ごとに、噴霧量制御手段によって制御された量の溶剤を噴霧することを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1又は請求項2に記載の鋳型造型装置において、前記加圧気体供給装置による加圧気体の供給量を検出する加圧気体供給量検出手段が備えられ、前記噴霧量制御手段は、前記加圧気体供給量検出手段で検出された加圧気体の供給量に基づき、前記溶剤噴霧装置から噴霧する溶剤の量を制御することを特徴とする。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋳型造型装置において、前記ブローヘッド内に、前記溶剤噴霧装置から溶剤を噴霧する際に該ブローヘッド内の混練砂を撹拌する撹拌装置が備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成したことにより、本願各請求項の発明によれば、次の効果が得られる。
【0016】
まず、請求項1に記載の発明によれば、溶剤噴霧装置により、ブローヘッド内の混練砂に対して溶剤が噴霧されることにより、混練砂の成形型への吹き込み前に、揮発による溶剤の不足によりブローヘッド内で粘結剤が反応し、該粘結剤ないし混練砂が硬化することが抑制される。その場合に、前記溶剤噴霧装置による溶剤の噴霧量は、制御手段により、ブローヘッド内における混練砂の温度と混練砂の量とに基づいて制御されることになる。
【0017】
つまり、ブローヘッド内の混練砂に含有されている溶剤の量は、その混練砂の量と、温度に応じた揮発量に依存するので、これらのパラメータを用いることによりブローヘッド内に残存している溶剤量が適正に推定されることになり、これにより、所要の強度の鋳型を得るための必要溶剤量に対する不足量、即ち前記溶剤噴霧装置によって噴霧すべき量が精度よく求められることになる。その結果、粘結剤の反応ないし硬化が効果的に抑制され、粘結剤の粘性が増加することなく、混練砂が成形型に良好に充填されると共に、硬化促進ガスが有効に作用することになって、所要の強度を有する鋳型が製造されることになる。
【0018】
その場合に、請求項2に記載の発明によれば、溶剤の噴霧は、キャビティへの混練砂の充填時ごとに、ブローヘッド内における混練砂の温度と量とに基づいて制御された量で行われるから、キャビティへの充填時における混練砂中の溶剤の含有量が常に最適にコントロールされることになり、所要の強度を有する鋳型が安定的に製造されることになる。
【0019】
また、請求項3に記載の発明によれば、溶剤噴霧量の制御に際して、前記混練砂の温度と量とに加え、混練砂充填時の加圧気体の供給量もパラメータとして考慮されることになるが、この加圧気体の供給量はブローヘッド内の溶剤の揮発量に対応するので、このパラメータを考慮することにより、ブローヘッド内に残存している溶剤量が一層適正に推定されることになり、したがって、前記溶剤噴霧装置による噴霧量がさらに適切に調整され、所要の強度を有する鋳型がさらに安定的に製造されることになる。
【0020】
そして、請求項4に記載の発明によれば、溶剤噴霧装置によりブローヘッド内に溶剤が噴霧される際、具体的には、噴霧と並行して又は噴霧直後に、該ブローヘッド内に備えられた撹拌装置が混練砂を撹拌するので、成形型に充填される混練砂に溶剤が均等に分布することになり、所要の強度を有する鋳型が一層安定的に製造されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
図1に示すように、この実施の形態に係る鋳型造型装置1は、下部が砂吹込み部11とされ、上部が該砂吹込み部11に連通する砂収容部12とされたブローヘッド10と、該ブローヘッド10における砂収容部12の直上方に配置された混練機20とを有し、ブローヘッド10における砂吹込み部11の下方に、上型51、下型52等でなる成形型50が配置されるようになっている。
【0023】
そして、前記ブローヘッド10における砂吹込み部11の下面には、下方へ延びる複数のブローノズル13…13が備えられ、これらのノズル13…13の下端部が、下方に配置された成形型50(上型51)の上面を貫通して該成形型50のキャビティ53内を臨むようになっており、ブローヘッド10内の混練砂xがこれらのノズル13…13を通ってキャビティ53内に供給されるようになっている。
【0024】
また、ブローヘッド10における砂収容部12の側面には、エアブロー口14と溶剤噴霧口15とが開口され、エアブロー口14には、常時一定圧力の加圧エアを貯留しているエアタンク31から電磁弁32を介して導かれたエア通路33が接続され、溶剤噴霧口15には溶剤噴霧装置34から導かれた溶剤通路35が接続されている。
【0025】
また、該砂収容部12の側面の比較的上方の位置には、該収容部12内に収容されている混練砂xの上面の高さを検出することにより、ブローヘッド10内に存在する砂量を検出する光学式センサからなる砂量センサ36が取り付けられており、また、該砂収容部12の側面の比較的下方の位置には、該砂収容部12内の混練砂xの温度を検出する砂温センサ37が取り付けられている。
【0026】
さらに、ブローヘッド10内には、砂吹込み部11内の混練砂xを攪拌するアジテータ16が配置され、該アジテータ16を回転駆動するアジテータ駆動装置17が備えられている。
【0027】
一方、前記混練機20は、下面が開口した混練容器21と、その開口した下面を開閉するシャッター22と、該シャッター22を開閉させるシャッター駆動装置23と、モータ24によって回転して前記混練容器21内の砂を攪拌する攪拌部材25とを有する。
【0028】
そして、シャッター22が閉じている状態で、混練容器21内に、例えば珪砂等の鋳物砂と、溶剤によって溶融されたフェノール樹脂でなる第1粘結剤と、同じく溶剤によって溶融されたポリイソシアネート化合物でなる第2粘結剤とが供給され、これらが前記攪拌部材25によって攪拌されることにより、図7に示すような混練砂xが生成されるようになっており、前記シャッター22が開いたときに、この混練砂xが下方のブローヘッド10における砂収容部12に投入されるようになっている。
【0029】
ここで、前記第1粘結剤となるフェノール樹脂としては、例えば、ベンジルェーテル基をその分子内に有するフェノール、ノボラック又はこれらから誘導される樹脂が用いられる。また、前記第2粘結剤となるポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が用いられる。さらに、前記溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系、脂環式炭化水素系、芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系、ケトン系、エステル系、工一テル系、アルコール系等の有機溶剤の単独又は混合したものが用いられる。
【0030】
以上の構成に加えて、この鋳型造型装置1にはコントロールユニット40が備えられている。
【0031】
このコントロールユニット40は、ブローヘッド10の下方に成形型50がセットされたときに、前記電磁弁32に開信号を出力する。これにより、エアタンク31に貯留されている一定圧力の加圧エアが、所定時間、ブローヘッド10における砂収容部12の上部から該ブローヘッド10内に吹き込まれ、その圧力によって砂吹込み部11内の混練砂xがブローノズル13…13を通って成形型50のキャビティ53内に吹き込み充填されることになる。そして、その後、硬化促進ガス供給装置(図示せず)により、キャビティ53内の混練砂xにトリエチルアミンガス等の硬化促進ガスが通気され、これにより、キャビティ53内で粘結剤ないし混練砂が硬化し、所定形状の鋳型が製造されることになる。
【0032】
また、コントロールユニット40は、混練機20における攪拌部材駆動用のモータ24に駆動信号を出力し、混練容器21内に供給されている鋳物砂と、溶剤によって溶融されたフェノール樹脂でなる第1粘結剤と、同じく溶剤によって溶融されたポリイソシアネート化合物でなる第2粘結剤とを混練して混練砂xを生成させると共に、砂量センサ36からの信号が示すブローヘッド10の砂収容部12内の砂量が所定量以下に減少したときに、シャッター駆動装置23に開信号を出力する。これにより、シャッター22が開いて、混練容器21内の混練砂xがブローヘッド10の砂収容部12に投入され、該ブローヘッド10内には常に一定量以上の混練砂xが保持されて、鋳型製造作業が連続的に行われることになる。
【0033】
さらに、コントロールユニット40は、前記砂量センサ36からの信号と、砂温センサ37からの信号とを入力し、これらの信号が示すブローヘッド10内における混練砂xの量及び温度と、前記エアタンク31内の加圧エアの圧力と電磁弁32の開時間とから求まるエアブロー量とから、溶剤の噴霧量を算出し、ブローヘッド10内への溶剤の追加噴霧の制御を行う。また、これと併せて、アジテータ駆動装置17に駆動信号を出力し、ブローヘッド10内の混練砂xに追加噴霧された溶剤を均一に分布させる制御を行う。
【0034】
次に、前記ブローヘッド10内へ溶剤を追加噴霧する基本的な考え方について説明する。
【0035】
図2に示すように、所定の鋳型(中子)強度を得るためには、粘結剤に対する溶剤の比率(重量%)をaからbの間の比率にする必要がある。そこで、前記混練機20で混練される混練砂xは、溶剤比率がaからbの間の中間値に設定されている。ブローヘッド10内の混練砂xは、エアブローにより吹き込み充填するごとに、砂温、砂量およびエアブロー量により溶剤揮発量が変化するため、この揮発溶剤量に相当する溶剤量を追加噴霧し、前記溶剤比率がaからbの間、好ましくは中間値になるようにする。このような考えの基に、溶剤の追加噴霧制御を行う。
【0036】
次に、前記コントロールユニット40による溶剤の追加噴霧制御の具体的動作を図3に示すフローチャートに従って説明する。
【0037】
まず、ステップS1で、図1に示す砂温センサ37からの信号が示すブローヘッド10内の混練砂xの温度を入力し、次いでステップS2で、砂量センサ36からの信号が示すブローヘッド110内に存在する混練砂xの量を入カする。また、ステップS3で、エアタンク31内に貯留している加圧エアの圧力と予め設定された電磁弁32の開時間とから、1回の混練砂充填作業ごとに吹き込まれるエアブロー量を算出する。
【0038】
そして、ステップS4で、この砂温、砂量及びエアブロー量をパラメータとして、混練砂充填作業ごとの溶剤揮発量を算出する。この算出は、次のように行われる。
【0039】
図4及び図5は、砂量X3におけるエアブロー量X2と砂温X1とに関連した溶剤揮発量Yを示している。エアブロー量X2が多くなるほど、砂温X1が高くなるほど溶剤揮発量Yは増加し、また、砂量X3が多いほど溶剤揮発量Yは増加する特性となる。この特性データは、最大の砂量の時と、最後の充填作業前の最小の砂量の時にエアブロー量と砂温とに関連した溶剤揮発量が予め実験により求められ、この特性データが前記コントロールユニット40に記憶されている。ステップS5の溶剤噴霧量Zは、この特性データに基づいて設定される。
【0040】
次に、砂量X3におけるエアブロー量X2と砂温X1とに関連した溶剤揮発量について、詳細に説明する。
【0041】
混練砂充填前に、前記混練機20で混練された混練砂xがブローヘッド10の砂収容部12に投入され、この時が最大の砂量(例えば100Kg)となる。この時のエアブロー量と砂温とに関連した溶剤揮発量は、図4に示すような関係となる。そして、1回の混練砂充填作業ごとに、例えば2.5Kgの混練砂を吹き込み、所定回数の充填作業を行い、最後の充填作業前の最小の砂量(例えば50Kg)の時は、図5に示すような特性となる。なお、所定回数の混練砂充填作業が完了した後は、前記混練機20で混練された混練砂xをブローヘッド10内に追加投入して、上記最大の砂量(例えば100Kg)となるようにする。その後も上記と同じ混練砂充填作業が行われる。
【0042】
したがって、ブローヘッド10の混練砂xの砂量X3が最大の時は、図4の特性データにより、砂量センサ36により検出された砂量X3と、砂温センサ37により検出された砂温X1及びエアブロー量X2とから溶剤揮発量Yが算出される。
【0043】
また、ブローヘッド10の混練砂xの砂量X3が混練砂充填作業ごとに変化する際は、砂量センサ36により検出された砂量X3と、砂温センサ37により検出された砂温X1及びエアブロー量X2とから図4及び図5の特性データを読み取り、下記の式により溶剤揮発量Yが算出される。
【0044】
溶剤揮発量Y=(砂量最大時の溶剤揮発量Y−砂量最小時の溶剤揮発量Y)×(最大砂量−各充填前の砂量)/(最大砂量−最小砂量)
さらに、ブローヘッド10の混練砂xの砂量X3が最小の時は、図5の特性データにより、砂量センサ36により検出された砂量X3と、砂温センサ37により検出された砂温X1及びエアブロー量X2とから溶剤揮発量Yが算出される。
【0045】
上記のようにステップS5で、溶剤噴霧量Zが設定された後は、ステップS6で、この量Zを噴霧するように溶剤噴霧装置34に噴霧信号を出力すると共に、ステップS7で、アジテータ駆動装置17に駆動信号を出力し、その後、ステップS8で、電磁弁32を所定時間、開くように信号を出力する。
【0046】
これにより、成形型50のキャビティ53内には所要の強度が得られる量の溶剤が均等に混ぜ合わされた混練砂xが吹込み充填されることになる。そして、以上の処理が各充填作業時ごとに行われることにより、所要の強度を有する鋳型が安定して製造されることになる。
【0047】
なお、前記実施の形態においては、図4及び図5の特性データに基づいて溶剤噴霧量Zを設定するようにしているが、これに替えて、各混練砂充填時ごとに砂量X3におけるエアブロー量X2と砂温X1とに関連した溶剤揮発量Yの特性データを実験により求め、この特性デ一タを前記コントルールユニツト40に記憶させ、各混練砂充填時ごとに特性データを読み取って溶剤噴霧量Zを設定するようにしても良い。
【0048】
また、各混練砂充填時のエアブロー量を変化させることなく、決められた所定値に設定している際は、所定値のエアブロー量X2に対応した砂温X1と砂量X3とに関連した溶剤揮発量Yの特性データに基づいて溶剤噴霧量Zを設定することになる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上のように本発明によれば、ガス硬化性鋳物砂を用いる鋳型造型装置として、所要の強度を有する鋳型が安定して製造されることになるから、この種の鋳型の製造産業において好適に利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態に係る鋳型造型装置の概略構成図である。
【図2】鋳型強度と粘結剤の溶剤比率との相関図である。
【図3】溶剤追加噴霧制御の動作を示すフローチャートである。
【図4】砂量最大時のエアブロー量X2と砂温X1と溶剤揮発量X3との関係を示す特性図である。
【図5】砂量最小時のエアブロー量X2と砂温X1と溶剤揮発量X3との関係を示す特性図である。
【図6】粘結剤B1、B2が被覆された混錬砂を示す模式図である。
【図7】溶剤が不足している状態を示す図6と同様の模式図である。
【符号の説明】
【0051】
1 鋳型造型装置
10 ブローヘッド
13 ブローノズル
16 アジテータ(撹拌装置)
31 エアタンク(加圧気体供給装置)
32 電磁弁(加圧気体供給装置)
35 溶剤噴霧装置
36 砂量検出手段
37 砂温検出手段
40 コントロールユニット(噴霧量制御手段、加圧気体供給量検出手段)
50 成形型
53 キャビティ
x 混練砂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤で溶融された粘結剤と砂とを混練してなる混練砂をエアブローにより成形型のキャビティに吹き込み充填し、鋳型を造型する鋳型造型装置において、
前記混練砂を収容し、下部に該混練砂をキャビティに吹き込むブローノズルを有するブローヘッドと、
混練砂の吹き込み時に前記ブローヘッド内に加圧気体を供給する加圧気体供給装置と、
ブローヘッド内の混練砂の温度を検出する砂温検出手段と、
ブローヘッド内の混練砂の量を検出する砂量検出手段と、
ブローヘッド内の混練砂に溶剤を噴霧する溶剤噴霧装置と、
前記砂温検出手段で検出したフローヘッド内の混練砂の温度と砂量検出手段で検出した混練砂の量とに基づき、前記溶剤噴霧装置から噴霧する溶剤の量を制御する噴霧量制御手段とが備えられていることを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の鋳型造型装置において、
前記溶剤噴霧装置は、キャビティへの混練砂の充填時ごとに、噴霧量制御手段によって制御された量の溶剤を噴霧することを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項3】
前記請求項1又は請求項2に記載の鋳型造型装置において、
前記加圧気体供給装置による加圧気体の供給量を検出する加圧気体供給量検出手段が備えられ、
前記噴霧量制御手段は、前記加圧気体供給量検出手段で検出された加圧気体の供給量に基づき、前記溶剤噴霧装置から噴霧する溶剤の量を制御することを特徴とする鋳型造型装置。
【請求項4】
前記請求項1から請求項3のいずれかに記載の鋳型造型装置において、
前記ブローヘッド内に、前記溶剤噴霧装置から溶剤を噴霧する際に該ブローヘッド内の混練砂を撹拌する撹拌装置が備えられていることを特徴とする鋳型造型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−149352(P2008−149352A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−340796(P2006−340796)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【出願人】(507102333)アシュランドジャパン株式会社 (2)
【Fターム(参考)】