説明

鋳物廃砂の無害化及び再利用方法

【課題】簡便な方法による鋳物廃砂の無害処理方法の提供を目的とし、さらに、無害化処理された鋳物廃砂の再利用方法の提供を目的とする。
【解決手段】鋳物廃砂を酸洗浄することを特徴とする鋳物廃砂の無害化処理方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物の鋳造における鋳型又は中子等の材料に用いられる鋳物砂が使用後に廃砂となった場合に、その鋳物廃砂を無害化及び再利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳物を鋳造する工程では鋳型、中子等の原料に山砂やケイ砂が用いられ、これらの鋳物砂はベントナイト、澱粉等を粘結剤として添加しながら繰り返し利用されているが、鋳物品質を確保するために再利用できない砂は鋳物廃砂として発生する。
鋳物砂は鉄系合金、銅系合金、アルミ系合金等、各種合金系の鋳造に使用されていることから、鋳物廃砂には有害となる物質が含まれていることが想定され、これまでは産業廃棄物として埋め立て処理されてきたが、埋め立て地の不足、環境負荷物質低減等の観点から再利用方法の構築が要望されている。
【0003】
鋳物廃砂の再利用方法としてアスファルト骨材に利用する方法が提案され、これまで特許文献1,2に開示する方法が公知である。
しかし、特許文献1に開示する方法は、大きさ2.5mm以下の鋳物廃砂をそのままアスファルトの細骨材として再利用するものであり、有害物質が含まれている鋳物廃砂にそのまま適用できない。
特許文献2に開示する方法は、アルカリ系鋳物廃砂を選別し、アスファルト骨材に用いるものであり、この方法も有害物質が含まれている鋳物廃砂には適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭56−45951号公報
【特許文献2】特開平9−323138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、簡便な方法による鋳物廃砂の無害処理方法の提供を目的とし、さらに、無害化処理された鋳物廃砂の再利用方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る鋳物廃砂の無害化処理方法は、鋳物廃砂(以下、必要に応じて単に廃砂という。)を酸洗浄することを特徴とする。
【0007】
廃砂は粒状物であることから希釈した酸水溶液に浸漬あるいは酸水溶液をスプレーする等して、廃砂を酸水溶液に接触させるだけで酸水溶液中に有害物質を溶出させることができる。
その後に水洗をし、酸分を除去することで鋳物廃砂を無害化できる。
なお、効率的に酸洗い及び水洗いをするには撹拌機で撹拌するのが好ましい。
【0008】
酸洗浄に用いる酸は、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸が安価でよい。
その中でも塩酸が多くの種類の有害物質に効果的である。
また、酸の濃度も有害物質の溶出効率とその後の水洗効率とを考慮し、適宣設定することになるが1mol/l〜6mol/lの範囲が好ましい。
酸による溶出効率を高めるには40℃以上に加温するのが好ましく、さらには沸点に近い温度に加温してもよい。
【0009】
上記のように無害化処理した鋳物廃砂は再生砂として、各種用途に適用できる。
本発明者らは、各種用途の中でもアスファルト骨材への適用を詳細に検討した結果、アスファルト舗装において従来の細砂の代替として、本発明に係る無害化処理鋳物廃砂を用いると混合アスファルトの量を低減できることが明らかになった。
【発明の効果】
【0010】
本発明は鋳物廃砂を酸で洗浄し、その後に水洗により酸分を除去するだけで容易に無害化できる。
再生された鋳物廃砂は再生砂として各種用途に再利用できるが、その中でもアスファルトに細砂として配合すると混合物中の最適アスファルト(OAC)の配合量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】モデル廃砂に対する酸洗浄による各元素の回収率を示す。
【図2】密粒度Ac(13F)再生材入りにおける再生砂の配合率と最適アスファルト量の試験結果を示す。
【図3】密粒度Ac(20F)改質材入りにおける再生砂の配合率と最適アスファルト量の試験結果を示す。
【図4】無害化処理装置のフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
廃砂の酸洗浄効果をモデル砂を用いて検討した結果について、以下説明する。
<モデル廃砂の作成>
Alを修飾したケイ砂100gに対してBi,Ce,Dy,Gd,Im,Lu,Pr,Ta,V,Wの各元素2.5ppm溶液100mlを加えて、230rpmの速度で撹拌しながら24時間放置した。
次に精製水100mlで10回水洗し、80℃×24時間乾燥させてモデル廃砂を作成した。
<モデル廃砂の酸洗浄試験>
上記にて作成したモデル廃砂1gに対して4mol/l濃度のHCl,5mlを加え、ヒートブロック式加熱分解装置を用いて1時間加熱し、その後に口径47mmのガラス繊維濾紙(GF/C)を用いて吸引濾過し、ICP−AESにより各元素の濃度を測定し、酸洗浄による各元素の回収率を算出した。
その結果を図1のグラフに示す。
この結果から、概ね回収率が90%を越えていた。
【0013】
次に石川県内の鋳造工場にて発生した鋳物廃砂を用いて試験評価した。
<予備調査>
入手した鋳物廃砂に有する有害物質を確認するために各種試験を実施した。
(1)溶出試験
環境省の定める「土壌の汚染に係る環境基準(溶出基準)(環境省告示第46号)」に従い、試験した結果を下記の表1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
(2)含有量試験
環境省の定める「土壌汚染対策の指定基準(含有量基準)(環境省告示第19号)」に従い、試験した結果を下記の表2に示す。
【0016】
【表2】

【0017】
(3)鋳物廃砂の全量、定性分析試験
鋳物廃砂に含まれている物質を確認するために底質調査法により全量試験をした結果を下記表3に示し、エネルギー分散型蛍光X線分析装置にて定性分析試験をした結果を下記表4に示す。
【0018】
【表3】

【0019】
【表4】

【0020】
上記表1〜4の結果から表中に□で示したように、銅、鉛、亜鉛が多く含まれていることが判明した。
【0021】
次に、上記にて入手した鋳物廃砂の酸洗浄を行った。
廃砂300gに対して4mol/l HCl水溶液3,000mlを加え、液温が沸点に近い温度(約105℃)になるように加熱し、3〜4時間酸洗浄処理した。
なお、30分毎に約2分間撹拌した。
この酸洗浄を2回行った。
次に水による水洗を5回繰り返した。
水洗の際には撹拌を実施した。
【0022】
上記の酸洗浄及びその後の水洗浄により得られた再生砂の各種試験を前述した予備調査と同様の方法で実施した結果を下記に表に示す。
【0023】
【表5】

【0024】
【表6】

【0025】
【表7】

【0026】
表5〜7の結果から本発明に係る酸洗浄により鋳物廃砂が無害化された。
【0027】
次に、上記にて得られた再生砂の物性を評価した。
密度試験及び粒度試験結果を下記の表8に示す。
【0028】
【表8】

【0029】
この結果、アスファルト舗装において再生砂は細砂の代替に適していることが明らかになった。
【0030】
次に、再生砂を細砂の代替材としてのアスファルト混合試験を実施した。
代表的なアスファルト混合物(Ac)において再生砂の配合率と最適アスファルト量(OAC)の関係を評価した結果を図2のグラフ及び図3のグラフに示す。
このことから再生砂の配合率を高くすると、OACの値が減少する傾向が認められた。
【0031】
次に、再生砂入りアスファルト混合物の品質試験を実施した。
【0032】
【表9】

【0033】
【表10】

【0034】
【表11】

【0035】
【表12】

【0036】
【表13】

【0037】
表9〜表13にて再生砂入りとは本発明に係る酸洗浄及び水洗浄した再生砂をいい、参考に焼却灰を配合したデータも示した。
以上の試験結果から本発明に係る再生砂はアスファルトの骨材として有用であることが分かる。
なお、表9中、再生材とは道路等の補修工事で発生するアスファルトコンクリート発生材を破砕又は解体し、分級した骨材(再生骨材)をいう。
また、事前審査認定配合とは公共工事で従来から使用されている一般的なアスファルト混合物で、公的な機関で品質が保証されたアスファルト混合物の配合のことをいう。
【0038】
図4に鋳物廃砂の無害化処理装置の例のフロー図を示す。
鋳物廃砂はホッパー1に投入され、スクリューフィーダー2等の搬送機を用いて第一酸洗浄装置11に投入する。
第一酸洗浄装置11は、酸水溶液3を添加し2〜5時間の滞留を経て、鋳物廃砂を次工程に送るが、複数回に分けて酸洗浄してもよく、本実施例では第二酸洗浄装置12を設けた例になっている。
もちろん、1段目の酸洗浄のみでもよい。
酸洗浄装置から発生したガスは、ガス処理装置4に送られる。
洗浄後の酸水溶液は循環槽5に回収され、有害金属類を含む酸洗浄後の液はタンク6を経由して重金属回収装置7に送られる。
酸洗浄が終了した廃砂は第一水洗装置21に送られ、撹拌機21aで撹拌水洗される。
本実施例では、水洗工程も2回に分けた例になっていて、第一固液分離装置22にて回収された水洗後の廃砂は第二水洗装置23に送られ、2回目の水洗が行われ、第二固液分離装置にて回収された廃砂は再生砂として貯えられる。
洗浄水は洗浄水回収槽25に回収され、微小砂を回収装置26にて除去した後にタンク27を経て中和処理される。
【符号の説明】
【0039】
3 酸水溶液
4 ガス処理装置
7 重金属回収装置
11 第一酸洗浄装置
12 第二酸洗浄装置
21 第一水洗装置
21a 撹拌機
22 第一固液分離装置
23 第二水洗装置
23a 撹拌機
24 第二固液分離装置
25 洗浄水回収槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物廃砂を酸洗浄することを特徴とする鋳物廃砂の無害化処理方法。
【請求項2】
酸洗浄した鋳物廃砂をアスファルト骨材に用いることを特徴とする鋳物廃砂の再利用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−206092(P2012−206092A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75842(P2011−75842)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(598161473)株式会社金沢舗道 (2)
【Fターム(参考)】