説明

鋳造装置

【課題】本発明は、シールパッキンを使用することなく、また、分割面の加工精度も高くすることなく、キャビティの真空を維持できる真空鋳造用金型を提供する。
【解決手段】鋳造装置は、第1の金型と、第2の金型と、離型剤とを備える。第1の金型は、第1の型面と、この第1の型面の縁から一定の距離以上離れた位置に設けられた凹部とを有する。第2の金型は、第2の型面を有し第1の金型に接合される。離型剤は、少なくとも凹部で囲われる内側の領域の第1の金型および第2の金型に塗布され、加熱されることでゲル化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、離型剤を塗布して使用する金型を備える鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融したアルミニウムまたはその合金を真空鋳造する場合、キャビティ内を減圧するために、キャビティの周りを囲う溝が設けられ、シールパッキンが装着される金型がある。ワークを金型から離れやすくするために離型剤がキャビティ内面に塗布される。このとき使用される離型剤として、加熱されることでゲル化して粘性が増すものや、鋳造温度が高い場合に適応したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−149358号公報
【特許文献2】特開平11−277211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複雑な形状のキャビティの場合、溶湯が隅々まで行き渡るようにするために溶湯や金型の温度を高めに設定することがある。また、アルミニウムに比べてマグネシウムの方がより高い温度で鋳造しなければならない。しかし、真空鋳造で用いられるシールパッキンは、マグネシウムの鋳造温度条件で使用されることによって、耐久性が低下し、消耗品として頻繁に交換しなければならなくなる。真空度が低下すると、ワークが酸化してしまったり、細部に溶湯がうまく流れなかったりするため、シール性能を維持することが重要である。
【0005】
鋳造温度が高くてシールパッキンを使用できない場合、分割面の合わせ精度を向上させるとともに金型の分割面の表面粗度を細かくすることで、キャビティの密閉性を確保できるかもしれない。しかし、金型の製造コストが高くなるだけでなく、製造工程において分割面に傷を付けないように管理しなければならない。
【0006】
そこで本発明は、シールパッキンを使用することなく、また、分割面の加工精度も高くすることなく、キャビティの真空を維持できる鋳造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の鋳造装置は、第1の金型と、第2の金型と、離型剤とを備える。第1の金型は、第1の型面と、この第1の型面の縁から一定の距離以上離れた位置に設けられた凹部とを有する。第2の金型は、第2の型面を有し第1の金型に接合される。離型剤は、少なくとも凹部で囲われる内側の領域の第1の金型および第2の金型に塗布され、加熱されることでゲル化する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の鋳造装置の第1の金型を示す斜視図。
【図2】図1に示した第1の金型に接合される第2の金型の斜視図。
【図3】図1および図2に示した真空鋳造用金型を用いる鋳造装置の概略図。
【図4】図3に示した真空鋳造用金型のキャビティ内面に離型剤を塗布した状態の断面図。
【図5】図4に示した真空鋳造用金型の第1の金型と第2の金型とを合わせる直前の断面図。
【図6】図5に示した第1の金型と第2の金型とを合わせた状態の断面図。
【図7】図6に示した真空鋳造用金型に溶湯を注入した状態の断面図。
【図8】第2の実施形態の鋳造装置の第1の金型を示す斜視図。
【図9】図8に示した真空鋳造用金型の第1の金型と第2の金型とを合わせる直前の断面図。
【図10】図9に示した第1の金型と第2の金型とを合わせた状態の断面図。
【図11】図10に示した真空鋳造用金型に溶湯を注入した状態の断面図。
【図12】第3の実施形態の鋳造装置の第1の金型を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の実施形態の真空鋳造用金型10は、図1から図7を参照して説明する。この真空鋳造用金型10は、図1に示すキャビティ金型としての第1の金型11と、図2に示すコア金型としての第2の金型12と、第1の金型11に形成された凹部13と、離型剤14とを備える。
【0010】
第1の金型11は、図1に示すように第1の型面111を有している。第1の型面111は、この真空鋳造用金型10によって鋳造される製品の分割線に対して第1側の外形を形成する。第2の金型12は、図2に示すように第2の型面121を有している。第2の型面121は、製品の分割線に対して第2側の外形を形成する。第1の型面111および第2の型面121は、図1および図2にそれぞれ示すように、射出部112,122と、製品部113,123と、オーバフロー部114,124とを含む。また第1の型面111および第2の型面121は、図3に示すように第1の金型11と第2の金型12とが合わされることによって、キャビティCを形成する。
【0011】
射出部112は、図3に示す真空鋳造装置1の溶湯供給口2に接続され、製品となる金属または合金の溶湯Mが供給される。製品部113,123は、製品を形成する部分である。オーバフロー部114,124は、射出部112,122に対して製品部113,123よりも溶湯Mの流れの下流側に設けられている。このオーバフロー部114,124は、製品部113,123の隅々にまで溶湯Mを十分に行き渡らせるために必要な部分である。
【0012】
凹部13は、第1の金型11および第2の金型12の少なくとも一方に形成される。第1の実施形態において凹部13は、図1に示すように第1の金型11に形成されている。この凹部13は、第1の型面111および第2の型面121の縁に沿って一定の距離だけ離れた位置に形成され、第1の型面111の外周を一続きに囲っている。つまり、第1の金型11および第2の金型12が合わされた場合には、凹部13は、第1の型面111および第2の型面121を囲う。第1の実施形態の凹部13の断面形状は、図5から図7に示すように角形である。ただし、同じ機能を満たすのであれば、凹部13の断面形状は、角形以外に半円形、楔形、台形などであっても良い。
【0013】
また、第1の実施形態の場合、図2に示すように凹部13に対応する位置に凸部15を有している。この凸部15は、図6に示すように凹部13との間に隙間を残した状態で凹部13に嵌合する。凸部15は、凹部13に嵌合することによって、第1の金型11と第2の金型12とを位置決めする機能も有する。凹部13がキャビティCの外周を囲んでいるのに対して、凸部15は、部分的に設けられても良い。また
離型剤14は、加熱されることによってゲル化する材料が使用される。離型剤14は、第1の金型11および第2の金型12の少なくとも凹部13で囲われる内側の領域に塗布される。第1の実施形態の場合、第2の金型12は、凹部13に対応する位置に凸部15が設けられているので、離型剤14を塗布すべき領域を判別しやすい。離型剤14は、図4に示すように、第1の金型11および第2の金型12が合わされる前に、第1の型面111および第2の型面121を含む凹部13よりも内側の領域に塗布される。離型剤14が塗布された状態の第1の金型11および第2の金型12が図5に示すように合わされると、キャビティCと凹部13との間の部分に塗布された離型剤14は、凹部13と凸部15との間にできる隙間に入り込む。
【0014】
真空鋳造用金型10は、溶湯Mを流し込める温度まで加熱される。離型剤14は、加熱されることによって図6に示すようにゲル化する。したがって、凹部13と凸部15との間にできた隙間に入り込んだ離型剤14は、加熱されてゲル化し、シール材と同じ機能を果たすようになり、キャビティCを真空引きした場合にも気密に保つ。なお、キャビティC側に流れた離型剤14は、溶湯Mによって押し流される。また、図5および図6において、キャビティCに塗布される離型剤14は、誇張して図示している。
【0015】
以上のように構成された真空鋳造用金型10は、図3に示す真空鋳造装置1に装着されて製品を真空鋳造する。真空鋳造装置1は、プランジャ3、溶湯タンク31、真空タンク40、真空ポンプ4、吸引配管102、バルブ103、離型剤回収機5、および制御装置6を備える。
【0016】
プランジャ3は、溶かされた金属の溶湯Mを貯留する溶湯タンク31から溶湯供給口2を介して溶湯Mを真空鋳造用金型10に押し込む。真空タンク40は、真空鋳造用金型10のオーバフロー部114,124よりも下流に設けられる吸出し口101に、吸引配管102を通して接続される。真空タンク40の容量は、キャビティCの容量に対して十分に大きい。真空ポンプ4は、接続された真空タンク40を真空引きする。バルブ103および離型剤回収機5は、吸引配管102の途中に取り付けられている。離型剤回収機5は、内部にフィルタ51を有した遠心冷却装置であって、真空鋳造用金型10から出された離型剤14を分離し回収する。バルブ103は、キャビティCと真空タンク40を遮断するために設けられているので、真空鋳造用金型10と離型剤回収機5の間、または、離型剤回収機5と真空タンク40の間のどちらに設けられていてもよい。離型剤回収機5および吸引配管102の容積がさほど大きくなければ、キャビティCから排出される離型剤14が詰まらないようにするために、離型剤回収機5の下流側にバルブ103を配置する。
【0017】
制御装置6は、真空鋳造用金型10に取り付けられた金型温度計104、プランジャ3、溶湯タンク31内の温度を計測する溶湯温度計32、真空ポンプ4、真空タンク40に取り付けられた圧力センサ41、バルブ103にそれぞれ接続されている。制御装置6は、真空鋳造用金型10および溶湯Mの温度が真空鋳造に適した温度であるか金型温度計104および溶湯温度計32によって確認し、真空タンク40が十分に減圧されているか圧力センサ41によって確認する。真空鋳造用金型および溶湯Mの温度が設定値から外れている場合、制御装置6は、付属のヒータの運転条件を調整し温度条件を整える。また、真空タンクの圧力が目標とする真空度を満たしていない場合、制御装置6は、真空ポンプ4を稼動させる。
【0018】
次に、上記の真空鋳造装置1による真空鋳造の動作を説明する。まず、図4に示すように、第1の金型11および第2の金型12の合わせ面の全体に離型剤14を塗布する。すなわち、キャビティCを構成する第1の型面111と第2の型面121だけでなく、凹部13および凸部15が設けられているキャビティCの周辺領域にも離型剤14を一様に塗布する。
【0019】
離型剤14が塗布された第1の金型11および第2の金型12は、図5および図6のように合わされ、加熱される。真空鋳造用金型10の温度が300℃ぐらいであると、図6に示すように、離型剤14はゲル化する。したがって、凹部13に入り込んだ離型剤14は、ゲル化することによって、シール材と同様の機能を発揮する。
【0020】
このように、マグネシウム合金を溶湯Mとする真空鋳造のように鋳造温度が一般のシール材の耐熱温度を超えるような場合でも、キャビティCを真空引きするための密閉性が確保される。また、シール性を確保するために離型剤14を塗布するだけであるので、シール材を配置する部分の形状が複雑であっても、作業はシール材を別途取り付けるよりも簡単である。
【0021】
温度条件が満たされている場合、制御装置6は、バルブ103を開いてキャビティCを真空タンク40と連通させる。真空鋳造用金型10は、凹部13でゲル化した離型剤によってキャビティCが密閉されているので、キャビティCの内部が真空に近い状態まで一気に減圧される。なお、真空引きしたことによって真空タンク40の内圧が低下したことを圧力センサ41で検出すると、制御装置6は、真空ポンプ4を作動させ、設定された圧力まで真空タンク40を真空引きする。
【0022】
制御装置6は、バルブ103を開くのとほぼ同時にプランジャ3によって溶湯Mを真空鋳造用金型10のキャビティCに送り込む。溶湯Mは、射出部112,122からキャビティCに入り、均等に分配されて製品部113,123へ流れる。第1の金型11および第2の金型12を合わせたことによって、キャビティC側に押し出された離型剤14は、溶湯Mによって押し流される。溶湯Mは、製品部113,123を越えてさらにオーバフロー部114,124へ流れ込み、固まる。第1の金型11と第2の金型12を離して製品を取り出し、射出部112,122とオーバフロー部114,124、およびバリを取ることで鋳造した製品が得られる。
【0023】
次の製品を鋳造する場合は、第1の型面111、第2の型面121、凹部13、凸部15を含む第1の金型11および第2の金型12の合わせ面の全体に離型剤14を塗布して合わせるだけでよい。離型剤14を塗布するだけで、製品を1回鋳造するごとにシール材を交換しているのと同じ品質が得られる。
【0024】
第2の実施形態の真空鋳造用金型10は、図8から図11を参照して説明する。第2の実施形態の真空鋳造用金型10は、図8に示すキャビティ金型となる第1の金型11の凹部13の形状および第2の金型12に凸部15を有していない点が、第1の実施形態の真空鋳造用金型10と異なっており、その他の構成は同じである。したがって、これら以外の点は、同じ機能を有する構成に同一の符号を付して第1の実施形態の説明を参酌するものとし、以下での説明を省略する。
【0025】
図8に示すように第1の金型11の凹部13は、第1の型面111の縁から一定の距離だけ離れた位置からこの第1の金型11の外周部までの領域に形成されている。つまり、第1の型面111の縁から一定の距離だけ離れた位置の外周部分が全体的に1段下がっている。第2の金型12は、図9から図11に示すように第2の型面121の外周から第2の金型12の外周まで平坦である。第2の金型12は、第2の型面121の外周に、この凹部13と同様の凹部を向かい合わせに設けてもよいし、第1の実施形態の凸部15を設けても良い。
【0026】
上述のように第1の金型11が形成された第2の実施形態の真空鋳造用金型10は、図9に示すように第1の金型11および第2の金型12の接合面に離型剤14を塗布して合わせると、第1の型面111および第2の型面121から凹部13までの間の離型剤14が、図10に示すように凹部13に押し出される。凹部13は、図8に示すようにキャビティCの外周を一続きに囲っている。したがって、離型剤14が多く塗布された場合でも、凹部13の中で流動して拡がるので、凹部13を越えて金型の外部へはみ出しにくい。
【0027】
第1の実施形態の場合と同様に、金型が300℃ぐらいに加熱されると、離型剤14が図10に示すようにゲル化し、キャビティCを気密にシールする。そして図3の真空鋳造装置1にこの真空鋳造用金型10をセットして鋳造すると、図11のようにキャビティCの内部が溶湯Mで満たされる。図10および図11に示すように、第1の金型11と第2の金型12を合わせたことによって凹部13に押し出された離型剤14は、キャビティC側に集積されている。この離型剤14がゲル化するので、第1の実施形態と同じように、シール材を装着したのと同じ機能を発揮する。
【0028】
第3の実施形態の真空鋳造用金型10は、図12を参照して説明する。第3の実施形態の真空鋳造用金型10は、図12に示すキャビティ金型となる第1の金型11に突き出しピンを装備している。第1および第2の実施形態の真空鋳造用金型10と同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。凹部13は、第1の金型11の外周縁に沿って一続きにキャビティCの周りを一周囲んでいる。第1の金型11は、キャビティCから凹部13までの領域に、第1の金型11と第2の金型12を合わせる方向に貫通する複数個の穴115を有している。
【0029】
突き出しピン105は、穴115の内径よりわずかに小さい太さを有しており、それぞれの穴115に装着される。突き出しピン105は、第1の金型11を第2の金型12から離すように、第1の金型11の接合面から突出するように駆動される。突き出しピン105は、同時に操作されても良いし、すべての突き出しピン105が同時に飛び出すように構成されていてもよい。
【0030】
図12に示すように、突き出しピン105の先端は、穴115の端部よりも少し引っ込んでいる。そして、第1の金型11は、それぞれの穴115を個別に凹部13と連通させる溝116をさらに備えている。第2の金型12は、凹部13に対応する位置に、凸部を有していても良いし、凹部13に向き合う同じ形状の凹部を設けても良いし、第2の型面121から第2の金型12の外周縁まで平坦であってもよい。穴115および溝116を第2の金型12に形成し、突き出しピン105を第2の金型12に配置してもよい。
【0031】
以上のように第1の金型11が構成された第3の実施形態の真空鋳造用金型10は、第1の金型11および第2の金型の接合面に離型剤14を塗布して合わせると、第1の型面111および第2の型面121から凹部13までの間に塗布された離型剤14が、凹部13に入り込むだけでなく、突き出しピン105が挿入された穴115にも流れ込む。穴115は、突き出しピン105が自由に移動する程度の嵌め合い公差に形成されているので、キャビティCを真空引きしたときに空気が流入してしまう経路となり得る。
【0032】
第3の実施形態の真空鋳造用金型10において、加熱するとゲル化する離型剤14は、穴115にも流入するので、穴115と突き出しピン105との間のわずかな隙間も一つ一つ気密に密閉することができる。また、穴115の端部は、溝116によって凹部13に連通している。キャビティCと凹部13との間に塗布された余分な離型剤14は、近くの穴115によって回収されるとともに、凹部13へ供給される。第1の金型11と第2の金型12の接合面に塗布された離型剤14を早く回収でき、金型を合わせる時間が短縮される。
【0033】
図3に示す真空鋳造装置1にこの真空鋳造用金型10をセットして鋳造すると、第1および第2の実施形態と同様に、キャビティCの外周に設けた凹部13に流入した離型剤14が加熱されることによってゲル化し、シール材の役割を果たす。ゲル化する前の離型剤14は液状であるため取り扱いが容易である。
【0034】
したがって、製品の分割線が複雑な形状であっても、キャビティCを構成する型面の周囲を取り囲むように凹部を形成し、加熱されてゲル化する離型剤を塗布することで、第1から第3の実施形態の真空鋳造用金型10と同様に、キャビティCの機密性を容易に確保することができる。
【0035】
この真空鋳造用金型は、上述した2分割の金型に限らず、3分割以上の多分割の真空鋳造用金型として実施可能である。多分割の真空鋳造用金型とする場合、製品の分割線に対応する金型のすべての接合面にわたって一続きに連通する凹部を、キャビティの外形から一定距離の位置に形成する。離型剤を接合面に塗布して加熱することで、キャビティを真空引きできる程度に各金型どうしの間をシールすることができる。このように、離型剤がゲル化することによって、シール材の役割を果たす。したがって、複雑に組み合わされる多分割の金型であっても、真空引きできる程度にキャビティを簡単に気密に密閉することができる。
【0036】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【0037】
以下に原出願の特許出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
鋳造される製品の分割線に対して第1側の外形を形成する第1の型面を有する第1の金型と、
前記第1の金型に接合されて前記分割線に対して第2側の外形を形成する第2の型面を有する第2の金型と、
前記第1の金型および前記第2の金型を合わせることによってキャビティを形成する前記第1の型面および前記第2の型面の接合部に沿って一定の距離で前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも一方に形成される凹部と、
前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも前記凹部で囲われる内側の領域に塗布され加熱されることによってゲル化する離型剤と、
を備える真空鋳造用金型。
[2]
前記第1の金型は、前記凹部を有し、
前記第2の金型は、隙間を残して前記凹部に嵌合する凸部を有し、
前記接合部から前記凹部までの間に塗布された前記離型剤の一部は、前記第1の金型および前記第2の金型を合わされることによって前記隙間に入り込む、[1]に記載の真空鋳造用金型。
[3]
前記第1の型面および前記第2の型面は、前記製品となる金属の溶湯が供給される射出部と、前記製品を形成する製品部と、前記射出部に対して前記製品部よりも前記溶湯の流れの下流側に設けられるオーバフロー部とを含み、
前記凹部は、前記第1の型面および前記第2の型面の外周を一続きに囲う、[1]に記載の真空鋳造用金型。
[4]
前記凹部は、前記接合部に沿って一定の距離だけ離れた位置から前記第1の金型および前記第2の金型の外周部までの領域に形成される、[1]に記載の真空鋳造用金型。
[5]
前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも一方は、前記キャビティから前記凹部までの領域に前記第1の型面および前記第2の型面を合わせる方向に貫通する穴を有し、
前記穴に通されて前記第1の金型を前記第2の金型から離す突き出しピンと、
前記凹部から前記穴まで連通する溝と、を備える[1]に記載の真空鋳造用金型。
[6]
キャビティを形成する第1の型面および第2の型面の接合部に沿って一定の距離だけ離れた位置に前記キャビティの外周を囲う一続きの凹部を、前記第1の型面を有する第1の金型および前記第2の型面を有する第2の金型の少なくとも一方に形成し、
少なくとも前記凹部よりも内側の前記キャビティを含む領域に、加熱されることによってゲル化する離型剤を塗布し、
前記離型剤を塗布した前記第1の金型と前記第2の金型を合わせることによって、少なくとも前記キャビティと前記凹部との間の領域の前記離型剤を前記凹部へ浸入させ、
前記第1の金型および前記第2の金型を加熱して前記離型剤をゲル化させることによって前記キャビティを真空引きできる程度に前記第1の金型と前記第2の金型の間をシールする、ことを含む真空鋳造方法。
【0038】
以下に分割直前の原出願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
第1の型面を有する第1の金型と、
第2の型面を有し前記第1の金型に接合される第2の金型と、
前記第1の型面および前記第2の型面の縁から一定の距離以上離れた位置の前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも一方に形成される凹部と、
少なくとも前記凹部で囲われる内側の領域の前記第1の金型および前記第2の金型に塗布され加熱されることによってゲル化する離型剤と
を備える真空鋳造用金型。
[2]
前記第1の金型は、前記凹部を有し、
前記第2の金型は、隙間を残して前記凹部に嵌合する凸部を有し、
前記縁から前記凹部までの間に塗布された前記離型剤の一部は、前記第1の金型および前記第2の金型が合わされることによって前記隙間に入り込む、[1]に記載された真空鋳造用金型。
[3]
前記第1の型面および前記第2の型面は、前記製品となる金属の溶湯が供給される射出部と、前記製品を形成する製品部と、前記射出部に対して前記製品部よりも前記溶湯の流れの下流側に設けられるオーバフロー部とを含み、
前記凹部は、前記第1の型面および前記第2の型面の外周を一続きに囲う、[1]に記載された真空鋳造用金型。
[4]
前記凹部は、前記縁に沿って一定の距離以上離れた位置から前記第1の金型および前記第2の金型の外周部までにわたる領域の全体に形成される、[1]に記載された真空鋳造用金型。
[5]
前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも一方は、前記縁から前記凹部までの領域に前記第1の金型および前記第2の金型を合わせる方向に貫通する穴を有し、
前記穴に通されて前記第1の金型を前記第2の金型から離す突き出しピンと、
前記凹部から前記穴まで連通する溝と、を備える[1]に記載された真空鋳造用金型。
[6]
第1の型面を有する第1の金型および第2の型面を有する第2の金型の少なくとも一方に、前記第1の型面および前記第2の型面の縁から一定の距離以上離れた位置に前記第1の型面および前記第2の型面の外周を囲う一続きの凹部を形成し、
少なくとも前記凹部よりも内側の領域に、加熱されることによってゲル化する離型剤を塗布し、
前記離型剤が塗布された前記第1の金型と前記第2の金型を合わせることによって、少なくとも前記縁から前記凹部までの間の領域に塗布された前記離型剤を前記凹部へ浸入させ、
前記第1の金型および前記第2の金型を加熱して前記離型剤をゲル化させることによって前記第1の金型と前記第2の金型の間をシールする、ことを含む真空鋳造方法。
[7]
型面およびこの型面の周囲を取り囲む凹部がそれぞれに形成された複数の金型と、
それぞれの前記金型の少なくとも前記凹部よりも内側の領域に塗布され加熱されるとゲル化する離型剤と、を含む真空鋳造用金型。
[8]
分割された複数の金型のそれぞれに形成される型面の外周に一続きに連通する凹部を形成し、それぞれの前記金型の前記凹部よりも内側の領域に加熱されるとゲル化する離型剤を塗布し、複数の前記金型を組み合わせたのち加熱することによって前記凹部よりも内側をシールする、ことを含む真空鋳造方法。
【符号の説明】
【0039】
1…真空鋳造装置、10…真空鋳造用金型、11…第1の金型、12…第2の金型、13…凹部、14…離型剤、15…凸部、105…突き出しピン、111…第1の型面、121…第2の型面、112,122…射出部、113,123…製品部、114,124…オーバフロー部、115…穴、116…溝、C…キャビティ、M…溶湯。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の型面と、該第1の型面の縁から一定の距離以上離れた位置に設けられた凹部とを有する第1の金型と、
第2の型面を有し前記第1の金型に接合される第2の金型と、
少なくとも前記凹部で囲われる内側の領域の前記第1の金型および前記第2の金型に塗布され加熱されることによってゲル化する離型剤と
を備える鋳造装置。
【請求項2】
凹部と、この凹部に囲まれた型面とが設けられた第1の金型と、
前記第1の金型に接合される第2の金型と、
それぞれの前記金型の少なくとも前記凹部よりも内側の領域に塗布され加熱されるとゲル化する離型剤と
を含む鋳造装置。
【請求項3】
前記第2の金型は、隙間を残して前記凹部に嵌合する凸部を有し、
前記縁から前記凹部までの間に塗布された前記離型剤の一部は、前記第1の金型および前記第2の金型が合わされることによって前記隙間に入り込む
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項4】
前記第1の型面および前記第2の型面は、前記製品となる金属の溶湯が供給される射出部と、前記製品を形成する製品部と、前記射出部に対して前記製品部よりも前記溶湯の流れの下流側に設けられるオーバフロー部とを含み、
前記凹部は、前記第1の型面および前記第2の型面の外周を一続きに囲う
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項5】
前記凹部は、前記縁に沿って一定の距離以上離れた位置から前記第1の金型および前記第2の金型の外周部までにわたる領域の全体に形成される
請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項6】
前記第1の金型および前記第2の金型の少なくとも一方は、前記縁から前記凹部までの領域に前記第1の金型および前記第2の金型を合わせる方向に貫通する穴を有し、
前記穴に通されて前記第1の金型を前記第2の金型から離す突き出しピンと、
前記凹部から前記穴まで連通する溝と
を備える請求項1または請求項2に記載された鋳造装置。
【請求項7】
型面およびこの型面の周囲を取り囲む凹部が接合面の少なくともどちらか一方に設けられた複数の金型と、
前記金型の少なくとも前記凹部よりも内側の領域に塗布され加熱されるとゲル化する離型剤と
を含む鋳造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−672(P2012−672A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126664(P2011−126664)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【分割の表示】特願2010−139791(P2010−139791)の分割
【原出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【特許番号】特許第4843742号(P4843742)
【特許公報発行日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】