説明

鋳鉄管導通部保護方法及び鋳鉄管導通部保護構造

【課題】地中に埋設した金属管の電位を一定にするための管外配線を、管体に取り付ける導通取付部を、簡便かつ確実に保護する。
【解決手段】側方が開放された溝22に硬化性樹脂23を充填したカバー材21を用いる。ボルト11や圧着端子14などからなる、管表面上の導通取付部20に、充填した硬化性樹脂23が潜り込むようにしてカバー材21を押し付ける。押し出された樹脂が導通取付部20の管体側面にまで回り込み、強固な保護構造を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地中に埋設する金属管を導通一体型にするための導通取付部の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路が敷設されている付近に、ガス管、水道管、各種ケーブル管などの金属製の埋設管が設けられている場合、レールに流れる電流が地中に漏れ出て、その漏れ電流(いわゆる迷走電流)が、それらの埋設管にしばしば電食を生じさせる。
【0003】
このような電食を防止する手法として、埋設管全体の電位を一定にするように、管軸方向に隣り合う管体同士を導線で繋ぎ、管路全体の電位を一定にする方法がある。例えば、特許文献1にはその方法について、金属管と導線を繋ぐ接点の取り付け方が記載されている。この接点となる導通取付部は、ネジ穴を有する金属製の固定台を金属管の表面に溶接固定した上で、外側に向いたそのネジ穴に、導線に繋がる金属端子をネジ留めしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−281136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この導通取付部は、そのままでは固定台や端子などの金属部分が露出して腐食されやすいため、取り付け後に補修用塗料をハケ塗りして保護する作業が行われている。しかしながら、ハケ塗りでは導通取付部の形状が複雑であるため、金属端子の管体側などに塗り残しがあっても気づきにくく、確認作業のために手間がかかっていた。
【0006】
そこでこの発明は、簡便な方法で、より確実に導通取付部を保護できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、管外配線に沿わせることができる溝を端部まで形成させたカバー材を用い、そのカバー材の溝に、後で硬化させることが可能な樹脂を充填し、このカバー材を溝に充填した樹脂から導通取付部に押し付け、この樹脂で前記導通取付部を覆った後、樹脂を硬化させることで前記の課題を解決したのである。
【0008】
具体的には、埋設管の表面に導通取付部を形成させる現場で、樹脂をカバー材の溝に充填する。充填後は速やかにカバー材を導通取付部に被せ、硬化前の樹脂を押し付けることで、導通取付部の外周側にあるネジ頭や端子、導線は樹脂の中に潜り込んでいく。樹脂はカバー材によって外周側を押さえられているため、導通取付部が樹脂に潜り込むとともに、余剰の樹脂は溝の開放された部分からはみ出ることになる。このはみ出る樹脂のほとんどは端部側、すなわち導線に沿って溝の端部から溢れることになるが、樹脂の一部は導通取付部の端子の管体側にも回り込んで、導通取付部のために管にあけた孔の周辺も十分に覆うこととなる。これにより、導通取付部及びその周囲の導線が空気と接する部分が無くなる。なお、このような効果を得るため、カバー材の溝幅は、少なくとも導通取付部の管周方向の幅よりも広くする必要がある。
【0009】
カバー材を導通取付部上に取り付けた後、樹脂を硬化させる。硬化させる方法は特に限定されるものではなく、樹脂としては、エポキシパテやポリエステルパテなどの時間経過により硬化していく樹脂の他に、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂などを用いて、取り付け後に紫外線や熱を当てて硬化させてもよい。また、単独では硬化しない樹脂であっても、紫外線硬化剤や熱硬化剤などを混合して充填することで利用可能である。ただし、いずれの場合でも、硬化前の樹脂は、導通取付部に押し付けることで十分に変形可能な程度の柔らかさを持つことが必要である。
【0010】
カバー材の形状は特に限定されるものではないが、導線に沿って設置するための溝が少なくとも一の方向の端部で側方に開放されている必要がある。導線の端となる導通取付部に取り付けるのであれば一方でよいが、導線の途中である導通取付部に取り付けるのであれば、導線に沿って二方向の端部が開放されている必要がある。これらの場合、カバー材及び溝はいずれも導線に沿って直線状であればよい。カバー材の横断面形状、すなわち導線に垂直な方向の断面形状は特に限定されないが、カバー材が半円筒状、すなわち、カバー材及び溝が同心の半円柱状であるものであると特に好ましい。外側が半円柱状であると、取り付け後に何らかの外的因子に引っ掛かって外れる可能性が少なくなる。また、溝が半円柱状であると、押し付ける際に樹脂の圧力が偏りにくくなる。
【0011】
また、導線の分岐点である導通取付部に取り付けるカバー材は、溝がT字状、Y字状、十字状等に刻まれて、それぞれの溝の端部が側方に、すなわち導線方向に開放されているものでもよい。この場合、カバー材は溝に沿って形成されていてもよいし、円柱や角柱の一方の底面にT字状等の形状の溝が刻まれたものでもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる補修方法によると、溝に充填した樹脂が溝から押し出されて導通取付部及びその周辺をくまなく覆うため、従来の塗料のハケ塗りに比べて保護漏れが残る可能性を実用上十分な程度にまで低くすることができる。また、この補修方法によって形成される保護構造は、導通取付部を覆った樹脂をさらにカバー材で覆っているため、取り付け後に樹脂まで剥がれる可能性は低く、強固である。また、腐食に対する防護効果だけでなく、物理的な衝撃からも導通取付部を保護する効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明を実施する管体同士の継手部周辺の概略図
【図2】この発明を実施する導通取付部とカバー材との構成分解図
【図3】この発明を実施する導通取付部を外周側から見た図
【図4】(a)導通取付部にカバー材を被せる直前の状態図、(b)導通取付部により樹脂が押し出されてカバー端からはみ出た図、(c)カバー端からはみ出た樹脂を切除した後の図
【図5】断面形状が半四角柱状であるカバー材の斜視図
【図6】断面形状が半八角柱状であるカバー材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の具体的な実施形態を図面とともに説明する。
図1は、この発明を実施する導通取付部を設けた、金属製の管体1,1’を継手部2で接続した箇所の外形図である。管体1の受口に、管体1’の挿口が挿入されて継手部2を構成している。管体1’の継手部2よりやや後方の外周には、サドル部材5が嵌められており、そのサドル部材5のフランジ部6に管軸直角方向のボルト軸7が挿通されて、そのボルト軸7に回転自在の推進用ローラ8が設けられている。また、サドル部材5と一体に、外側に突出するフランジ9が設けてある。
【0015】
継手部2を挟むこれら両管体1,1’は、ケーブル10に収納された導線12で電気的に接続されている。その導線12と管体1,1’の金属製である本体とを導通させる導通取付部20、20’が、継手部2及びサドル部材5等からやや離れた箇所に設けてある。
【0016】
この導通取付部20、20’の構成を図2により説明する。管体1の外周面に金属製の固定台13が溶接により固定されている。固定台13と管体1の金属部分とは、その溶接された接触面を接点として導通している。その固定台13にボルト11がねじ込まれており、その固定台13が管体1の金属部分と溶接により導通していることで、管体1とボルト11とが導通する。なお、管体1の金属部分とは、管体1の表面を覆う保護塗装16より内周側の、金属管本体17のことである。固定台13が溶接される部分の保護塗装16は溶接前に削るか、又は溶接の際に剥がれるので、固定台13と管体1との間には保護塗装16が無い。
【0017】
一方、ケーブル10,10の保護樹脂被覆に収容された金属製の導線12、12の端部には、圧着端子14、14が設けてある。この圧着端子14、14を重ねてボルト11により固定台13のネジ穴に固定する。これにより、ボルト11及び固定台13を介して、いずれの圧着端子14、14ともに、管体1の金属管本体17に導通する。図3は前記のように形成させた導通取付部20を外周側から見た図である。
【0018】
この導通取付部20に、半円筒状のカバー材21を被せる。半円筒の内側に形成した両端が開放された溝22には、この被せる作業を行う直前にパテなどの硬化性樹脂23を充填する。カバー材21の全長及び溝22の幅は、導通取付部20全体を覆うことができる大きさである。図4(a)に示すように、溝の向きとケーブル10,10の延びる方向を合わせ、導通取付部20を溝22に充填した硬化性樹脂23で覆うようにして、カバー材21を押し付ける。この際、図4(b)に示すように、硬化性樹脂23が導通取付部20によって押し出されるとともに、圧着端子14の管体1側や固定台13の周囲にも硬化性樹脂23が回り込み、導通取付部20全体を硬化性樹脂23で覆うことができる。その後、必要に応じて図4(c)に示すように、カバー材21の端部からはみ出した硬化性樹脂23を切除する。
【0019】
その後、時間経過や紫外線照射、加熱などにより、硬化性樹脂23を硬化させて、カバー材21を管体1、1’表面に固定する。
【0020】
その他の実施形態として、カバー材21が異なる形態であっても同様に実施可能である。例えば図5は、外形と溝の両方が半四角柱状のカバー材24であり、外形と溝の両方が図6は半八角柱状のカバー材25である。それぞれの溝もカバー材24,25同様の形状であり、カバー材21と同様に硬化性樹脂23を溝に充填して用いることができる。
【符号の説明】
【0021】
1、1’ 管体
2 継手部
3 推進力伝達部材
5 サドル部材
6 フランジ部
7 ボルト軸
8 推進用ローラ
9 フランジ
10 ケーブル
11 ボルト
12 導線
13 固定台
14 圧着端子
16 保護塗装
17 金属管本体
20 導通取付部
21、24,25 カバー材
22 溝
23 硬化性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が塗装で保護された金属管の、前記塗装の下の管本体と管外に配した導線とを導通させた導通取付部の保護方法において、
溝を有し、少なくともその溝の一の端部で側方に開放されたカバー材の前記溝に、その後に硬化させることができる樹脂を充填し、
前記カバー材を、前記溝の方向を前記導線の方向に合わせて、前記樹脂に前記導通取付部及び前記導線が潜り込むように押し付け、前記カバー材で前記導通取付部を覆った後、前記樹脂を硬化させることにより前記カバー材を前記導通取付部上に固定する導通取付部の保護方法。
【請求項2】
前記溝は直線状であり、前記溝の両端が側方に開放されたものである請求項1に記載の導通取付部の保護方法。
【請求項3】
前記溝は半円筒状である請求項1又は2に記載の導通取付部の保護方法。
【請求項4】
前記カバー材を前記導通取付部に押し付けた後、前記溝の開放された方向に前記カバー材の端部からはみ出た樹脂を除去する、請求項1乃至3のいずれかに記載の導通取付部の保護方法。
【請求項5】
表面が塗装で保護された鋳鉄管路の、前記塗装の下の管本体と管外に配した導線とを導通させた導通取付部を、前記導線の方向に沿った溝を有しその溝に充填した硬化性樹脂を保持するカバー材で覆い、前記硬化性樹脂を前記導通取付部に潜り込ませた、導通取付部の保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−47295(P2012−47295A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190873(P2010−190873)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】