説明

鋸刃の切粉除去方法及び装置並びに回転ブラシ

【課題】鋸刃に付着した切粉を回転ブラシによって除去する方法及び装置並び回転ブラシを提供する。
【解決手段】鋸刃1に付着した切粉を除去するために外周面15が鋸刃1に接触した回転ブラシ3を軸心回りに回転すると共に、当該回転ブラシ3における軸心長さの中心位置を揺動中心Oとして前記回転ブラシ3の回転面を前記軸心長さ方向に揺動する。鋸刃に付着した切粉を除去するための回転ブラシは、当該回転ブラシ3の中心部に、当該回転ブラシ3を軸に取付けるためのセンタブッシュ9を備え、このセンタブッシュ9に備えた取付孔13を、前記回転ブラシ3の中心軸に対して傾斜してある。切粉除去装置は、当該回転ブラシ装置における回転ブラシ3の中心部に、当該回転ブラシ3をブラシ支持軸5に取付けるためのセンタブッシュ9を備え、前記ブラシ支持軸5の先端部に備えたブラシ取付軸7の軸心を前記ブラシ支持軸5の軸心に対して傾斜してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば帯鋸盤や丸鋸盤などの鋸盤における鋸刃(帯鋸刃、丸鋸刃)に付着した切粉を除去する方法及び装置並びに回転ブラシに係り、さらに詳細には、鋸刃に外周面が接触して回転する回転ブラシの回転面を揺動して切粉除去を行う方法及び装置並びに回転ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば横型帯鋸盤などの鋸盤によって金属製のワークの切断を行うと、当該鋸盤に備えた鋸刃には切削屑としての切粉が付着する。したがって鋸刃に付着した切粉の除去を行うために、回転ブラシの外周面を前記鋸刃に接触させて切粉の除去を行うことが行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭47−21506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載のごとき従来の構成においては、回転ブラシの回転面は当該回転ブラシの駆動軸に対して常に直交した状態にある。したがって、鋸刃と回転ブラシにおける外周面との接触関係は常に一定の関係にあり、切粉の除去を効果的に行うには問題がある。そこで、前記特許文献1に記載の構成においては、駆動ワイヤーブラシを回転する駆動軸に偏心カムを備えて従動ブラシを上下に揺動する構成を採用しているが、前記駆動ワイヤーブラシは同一平面において単に回転しているにすぎないものである。すなわち、駆動ワイヤーブラシによる切粉の除去をより効果的に行うには問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前述したごとき従来の問題に鑑みてなされたもので、鋸刃の切粉除去方法であって、鋸刃に付着した切粉を除去するために外周面が鋸刃に接触した回転ブラシを軸心回りに回転すると共に、当該回転ブラシにおける軸心長さの中心位置を揺動中心として前記回転ブラシの回転面を前記軸心長さ方向に揺動することを特徴とするものである。
【0006】
また、鋸刃に付着した切粉を除去するための回転ブラシであって、当該回転ブラシの中心部に、当該回転ブラシを軸に取付けるためのセンタブッシュを備え、このセンタブッシュに備えた取付孔を、前記回転ブラシの中心軸に対して傾斜してあることを特徴とするものである。
【0007】
また、前記回転ブラシにおいて、センタブッシュは回転ブラシに対して着脱交換自在であり、かつ軸方向の一対に分割してあることを特徴とするものである。
【0008】
また、鋸刃に付着した切粉を除去するための回転ブラシ装置であって、当該回転ブラシ装置における回転ブラシの中心部に、当該回転ブラシをブラシ支持軸に取付けるためのセンタブッシュを備え、前記ブラシ支持軸の先端部に備えたブラシ取付軸の軸心を前記たブラシ支持軸の軸心に対して傾斜してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転ブラシは回転平面を揺動しつつ回転するので、回転ブラシの外周面の鋸刃に対する接触部は往復動して鋸刃に付着している切粉を払うように作用するので、鋸刃に付着している切粉を効果的に除去することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る回転ブラシの構成を示す説明図である。
【図2】回転ブラシの揺動と鋸刃との関係を示す説明図である。
【図3】回転ブラシと鋸刃との関係を示す別形態の説明図である。
【図4】回転ブラシと鋸刃との関係を示す別形態の説明図である。
【図5】回転ブラシの別形態の構成を示す説明図である。
【図6】回転ブラシ装置の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明するに、帯鋸盤や丸鋸盤の鋸盤は既によく知られた構成であるから、鋸盤の構成についての説明は省略する。また、鋸刃としての帯鋸刃や丸鋸刃も周知の構成であるから、鋸刃として帯鋸刃の場合を例示し、帯鋸刃と回転ブラシとの関係について説明することとする。
【0012】
図1を参照するに、本実施形態においては、鋸刃としての帯鋸刃1における鋸歯1Tの歯先側に回転ブラシ3が配置してある。すなわち、帯鋸刃1における鋸歯1Tの歯先側には、帯鋸刃1の走行方向(矢印A方向)及びワークに対する帯鋸刃1の切込み方向(図1(A)において上下方向)に対して直交する方向の軸(駆動軸、ブラシ支持軸)5が配置してあり、この軸5の先端部に備えたブラシ取付軸7に、前記回転ブラシ3におけるブラシ台金3Aの中心部に一体的に備えたセンタブッシュ9が嵌合し、取付ナット11によって着脱可能に取付けてある。
【0013】
前記センタブッシュ9は、前記回転ブラシ3を前記軸5におけるブラシ取付軸7に取付けるためのブッシュであって、このセンタブッシュ9には、前記ブラシ取付軸7と嵌合する取付孔13が備えられている。この取付孔13の軸心13Sは回転ブラシ3の中心軸3Sに対して角度αだけ傾斜してある。そして、前記軸心13Sと中心軸3Sの交差位置Oは、前記回転ブラシ3における軸心長さのほぼ中心位置に設定してある。
【0014】
上記構成により、回転ブラシ3を、軸5のブラシ取付軸7に取付けて固定した状態において軸5を回転すると、センタブッシュ9に備えた取付孔13が回転ブラシ3の中心軸3Sに対して傾斜してあることにより、回転ブラシ3の回転平面(中心軸3Sと直交する平面)は、前記交差位置Oを中心位置(揺動中心)として揺動することになる。したがって、鋸刃1における鋸歯1Tに接触した回転ブラシ3の外周面(接触面)15は、図2(A)〜(D)に示すように、回転ブラシ3の回転に従って、外周面15の一端側15Aから他端側15Bへ、及びその逆方向へ次第に接触位置を変えることになる。
【0015】
すなわち、回転ブラシ3は回転平面を揺動しつつ回転するので、鋸刃1の鋸歯1Tに接触した外周面は鋸歯1Tの位置を横切るように往復動するものであって、鋸刃1における鋸歯1Tに付着している切粉を払い落とすように作用するものであって、鋸刃1に付着している切粉の除去を効果的に行い得るものである。換言すれば、回転ブラシ3の外周面に対する鋸刃1の接触位置は、回転ブラシ3の外周面に対して相対的に蛇行する態様となるものである。
【0016】
ところで、前記実施形態においては、鋸刃1の走行方向Aに対して軸5を直交する方向に配置した場合について例示したが、図3(A),(B)に示すように、鋸刃1の走行方向Aに対して軸5を平行に、又は適宜に傾斜した状態に配置することも可能である。
【0017】
また、鋸刃1における鋸歯1Tの歯先側に限ることなく、図4(A),(B)に示すように、鋸刃1の1側面又は両側面に回転ブラシ3を配置することも可能である。この場合、軸5は、鋸刃1の側面と平行であって、図4(A)に示すように、鋸刃1の走行方向Aに対して直交するように配置することや、図4(B)に示すように、走行方向Aの方向へ、又はその逆方向へ軸5を傾斜して配置することも可能である。
【0018】
なお、前述の実施形態においては、回転ブラシ3にセンタブッシュ9が一体的に固定してある場合について例示した。しかし、回転ブラシ3とセンタブッシュ9等の関係を、図5に示すごとき構成とすることも可能である。すなわち、センタブッシュ9を、回転ブラシ3に対して着脱交換自在であって、締付フランジ9Fを備えた軸方向の一対の分割片9A,9Bに分割した構成とする。そして、回転ブラシ3に備えたブラシ台金3Aの中心穴に各分割片9A,9Bを嵌合し、軸5のブラシ取付軸7に取付けて取付ナット11によって締付けるときに、前記分割片9A,9Bの締付フランジ9Fによって回転ブラシ3のブラシ台金3Aを一体的に取付固定する構成とすることも可能である。
【0019】
この場合、回転ブラシ3が消耗したとき、前記センタブッシュ9の各分割片9A,9Bを、交換した新しい別個の回転ブラシ3に対して共通部品として使用可能なものである。
【0020】
ところで、前記説明においては、回転ブラシ3に備えたセンタブッシュ9における取付孔13を傾斜して備えた場合について例示した。しかし、センタブッシュ9に備えた取付孔13を傾斜して備えるか、軸5におけるフランジ取付軸7を予め傾斜して備えるかは相対的なものである。したがって、図6に示すように、軸5におけるフランジ取付軸7を予め傾斜した構成の回転ブラシ装置として、前記フランジ取付軸7に回転ブラシ3を着脱交換自在に又は一体的に備えた構成とすることも可能なものである。
【0021】
前記説明より理解されるように、回転ブラシ3を回転すると共に回転ブラシ3の回転面を揺動するものであるから、鋸刃1に接触した回転ブラシ3の外周面の接触部は、鋸刃1に対して回転しつつ往復動することとなり、鋸刃1に付着している切粉を払いのける作用をなすものであり、付着している切粉の除去を効果的に行い得るものである。
【0022】
なお、回転ブラシ3は、ある程度消耗したときには、表裏を逆にして装着することにより、再度使用することが可能なものである。
【符号の説明】
【0023】
1 鋸刃(帯鋸刃)
3 回転ブラシ
5 軸(駆動軸、ブラシ支持軸)
7 ブラシ取付軸
9 センタブッシュ
11 取付ナット
13 取付孔
15 外周面(接触面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋸刃の切粉除去方法であって、鋸刃に付着した切粉を除去するために外周面が鋸刃に接触した回転ブラシを軸心回りに回転すると共に、当該回転ブラシにおける軸心長さの中心位置を揺動中心として前記回転ブラシの回転面を前記軸心長さ方向に揺動することを特徴とする鋸刃の切粉除去方法。
【請求項2】
鋸刃に付着した切粉を除去するための回転ブラシであって、当該回転ブラシの中心部に、当該回転ブラシを軸に取付けるためのセンタブッシュを備え、このセンタブッシュに備えた取付孔を、前記回転ブラシの中心軸に対して傾斜してあることを特徴とする回転ブラシ。
【請求項3】
請求項2に記載の回転ブラシにおいて、センタブッシュは回転ブラシに対して着脱交換自在であり、かつ軸方向の一対に分割してあることを特徴とする回転ブラシ。
【請求項4】
鋸刃に付着した切粉を除去するための回転ブラシ装置であって、当該回転ブラシ装置における回転ブラシの中心部に、当該回転ブラシをブラシ支持軸に取付けるためのセンタブッシュを備え、前記ブラシ支持軸の先端部に備えたブラシ取付軸の軸心を前記たブラシ支持軸の軸心に対して傾斜してあることを特徴とする回転ブラシ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94900(P2013−94900A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240184(P2011−240184)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(390014672)株式会社アマダ (548)
【出願人】(504279326)株式会社アマダマシンツール (65)
【Fターム(参考)】