説明

鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法及び装置

本発明は、鋼ストリップ(1)の表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法であって、ストリップが、該ストリップに接触することによって該ストリップを案内する円筒状の壁部を有する回転するロール(8)の外面円弧(813)に沿って移動させられ、レーザアブレーションビームが、ロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿って、ストリップ及びロールの目標接触点(11)に選択的に入射するように、内部キャビティを通って円筒状の壁部へ供給され、ビームが、該ビームに対して透明な壁部開口(811)を通って壁部を通過し、接触点のレーザアブレーションからのスペクトルプラズマ放射分布が、スペクトル測定ユニットへ供給されるために、ロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿って、開口を通って、光学的フィードバックによって収集され、入射及びフィードバックのために使用される外面に対して垂直な軸線が、ロールと同期した回転で移動させられることを特徴とする、方法に関する。本発明は、本発明の方法を実施するための複数の実施の態様を備える装置、及びこの装置の有利な使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び2の前提部に記載の、鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法及び装置に関する。
【0002】
本発明は、特に、連続的に移動する金属ストリップを浸漬することによって被着された金属皮膜、例えば合金化プロセスが行われた亜鉛合金皮膜の品質制御に関する。
【0003】
連続的に移動する圧延された鋼ストリップの溶融亜鉛めっきは公知技術である。溶融亜鉛めっきは、基本的に2つの態様を含む。1つの態様は、溶融亜鉛めっき炉から出たストリップが、溶融亜鉛の浴内へ斜めに下降し、前記溶融亜鉛に浸漬されたロールによって鉛直方向に上方へ変向されるものである。もう一つの態様は、移動する鋼ストリップが、磁気的に維持された溶融亜鉛を含む鉛直方向チャネルを通過させる前に、炉から出るときに鉛直方向に上方へ変向するものである。
【0004】
この被着の形成運動学は、当業者に公知であり、2004年10月の"La Revue de Metallurgie CIT"におけるGiorgi他による"Modeling of galvanizing reactions"を含む多くの機会に開示されてきた。この文献は、溶融した皮膜形成混合物とストリップとの接触がストリップから鉄の溶解を生ぜしめ、これは、第1に、ストリップの表面における、化合物Fe2Al5Znxの約0.1μmの化合物層の形成に関与し、第2に、Fe2Al5Znx層が連続的に形成されるまで、溶融した混合物の浴へ拡散する。Fe2Al5Znx層は、保護亜鉛層を支持するために働くが、溶解した鉄は、溶融した混合物における"垢"として知られる、Fe、Al及びZnを含む析出物の形成に寄与する。
【0005】
亜鉛ベースの金属合金による鋼ストリップの皮膜形成は、例えば車体、家庭用機器、及び構造物において、多くの用途を有する。複数の皮膜は、ストリップに提供されると、組成及び可能な処理により顕著である。
【0006】
1つのこのような皮膜は、再加熱による"合金化"プロセスが行われ、このプロセスは、拡散を利用し、鋼における鉄と皮膜における亜鉛との間に合金を形成する。このタイプの皮膜は、概して、短縮形"GA"又は用語"ガルバニール"と呼ばれる。GA溶融亜鉛めっきは、腐食に対する鋼の良好な保護と、空隙率及び表面組織等の特定の品質とを提供し、鋼を特に塗料により適したものにして、塗料の付着力を高め、被覆されたストリップの抵抗溶接を容易にする。これらの理由から、溶融亜鉛めっきは、主に、自動車産業において利用される。
【0007】
GA皮膜の鉄・亜鉛合金は、種々異なる結晶メッシュ及び組成を有する複数の相の形態で提供されてよい。皮膜が深絞り及び塗装のための最適な特性を提供することを保証するために、研究は、皮膜の表面における鉄含有量が、ゼロに達することなく低くなければならないことを示している。多くのパラメータがガルバニール層の微細構造に影響しやすく、ストリップの化学的組成及び皮膜形成浴の化学的組成、ストリップの表面粗さ、皮膜形成浴の温度、結局、合金化炉における温度及びストリップの移動速度が影響する。
【0008】
それぞれのパラメータの影響をよりよく理解しかつ皮膜形成されたストリップの品質を監視するために、ガルバニール被着物の厚さに亘って亜鉛、鉄及びアルミニウム含有量の分布を追跡するための手段を規定するために、研究が行われた。皮膜形成されたストリップのサンプルにおける合金の元素の濃度分布を決定するための複数の方法が提案されており、これらの方法は、グロー放電発光スペクトル分析(GD−OES)や、レーザ誘起ブレークダウン分光(LIBS)スペクトル測定を含んでいる。国際公開第00/08446号は、レーザアブレーション(LIBS)を使用するこのような分析方法のための基礎を開示しており、米国特許出願公開第2003/0016353号明細書は、測定精度を高めるための多くの改良を提供している。
【0009】
しかしながら、上記分析方法は、ストリップが毎秒3mを超える速度で移動するような溶融亜鉛めっきラインにおける実時間の使用のために行うのは極めて困難である。
【0010】
公知の形式においては、LIBS法は、分析されるターゲットを極めて高い温度に加熱しかつストリップの目標点において、加熱された材料のスペクトル線特性を生ぜしめるために、レーザと物質との相互作用を利用する。従って、パルスレーザが、極めて短い時間、約10ナノ秒の間、数十ミリジュールのパワーで、極めて弱い面を狙って、ターゲットに照射される。マイクロプラズマが発生され、このマイクロプラズマは、放射の連続を発射し、数マイクロ秒の後、第1のスペクトル線が発現し、前記線は、ターゲット、ひいてはストリップ皮膜を形成した材料の特性である。分光計は、連続のバックグラウンドノイズが十分に低減された時、レーザ発射後の数マイクロ秒の間の測定期間の間に放射された光の分光分析を行うために使用される。
【0011】
レーザ発射と分光計測定との間の一回のマイクロ秒の遅れの間、及び毎秒約3mの移動のために、ストリップ、ひいてはターゲットと、プラズマとは、3mmだけ移動させられる。移動するターゲットにおいて測定を行うために、当業者は、レーザの発射軸線と、測定装置の光軸との間の位置ずれを生ぜしめるが、これは十分な精度で達成することが極めて困難である。なぜならば、特に、溶融亜鉛めっきの間のストリップの移動速度は、前記ストリップの厚さ、溶融亜鉛めっき炉の加熱能力、対象となる皮膜の厚さ、液体皮膜を乾燥するための装置の性能に関連して、著しく変化することができるからである。
【0012】
さらに、ストリップにおける又はストリップの移動軌道における固有の振動又は変形により、数μmの局所的目標精度が要求される場合に、前記測定が極めて不正確になる。記事"New approach to online monitoring of the Al depth profile of the hot dip galvanized sheet steel using LIBS"、H.Balzer他、2006年3月29日発行、Springer Verlag 2006は、この目的のために、複雑な振動相殺を用いるサンプルシステムを開示している。この記事は、このシステムが、工業的な関係において要求される速度は約3〜4m/sであるにもかかわらず低いストリップ移動速度(1m/s未満)のために設計されていることに言及している。従って、このようなシステムは、結果として生じる振動を相殺することが不可能である。
【0013】
本発明の課題は、鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析測定を可能にすることであり、この測定は、前記ストリップは移動しているということを考慮すると適切である。ストリップは、様々な寸法又は様々な移動速度のもの、場合によっては1m/sより高いものであってよい。
【0014】
このような測定は、請求項1に記載の方法を用いることにより可能となる。同様に、前記方法を実施するための装置も、個々に発明に適応された複数の有利な択一的な実施の形態を網羅する複数の従属請求項に開示されている。最後に、発明の範囲に適した前記装置の使用も従属請求項によって開示されている。
【0015】
鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法において、以下のステップ、すなわち、
前記ストリップが、該ストリップと接触することによって該ストリップを案内する円筒状の壁部を有する回転するロールの外面円弧に沿って移動させられ、
ロールの外面に対して垂直な軸線に沿って、ストリップとロールとの目標接触点に光学的に入射するように、内部キャビティを通って前記円筒状の壁部にレーザアブレーションビームが提供され、該ビームは、該ビームに対して透明な壁部開口を通って前記壁部を通過し、
接触点のレーザアブレーションからのスペクトルプラズマ放射分布が、スペクトル測定ユニットへ提供されるために、ロールの外面に対して垂直な軸線に沿った、開口を通る光学的フィードバックによって収集され、
光学的な入射及びフィードバックのために使用される、外面に対して垂直な軸線が、ローラと同期して回転移動させられることを特徴とする方法を使用する。
【0016】
ロールは、有利には、ストリップ駆動ロール又はストリップによって駆動される案内ロール等の、あらゆるタイプの駆動ロール又はベアリングロールであってよい。主な態様は、本発明による測定方法が、ストリップが円弧部分において(例えば90゜で)接触しかつ接触したままであることを保証し、これにより、レーザの目標点がロールの外面とストリップとの共通部分に正確に位置するというものである。これにより、測定が所望の範囲の外で行われる危険性が排除される。なぜならば、移動するストリップの全ての振動が完全に減衰させられるからである。ロールは、自然な張力を加え、前記ロールの外面に対するストリップの完全な平坦化を促進する。ロールとストリップとの間の関連する引張りシステムは、いかなる場合にも、この目的のために組み込むことができる。
【0017】
この方法は、多数の択一的な実施の形態を有する単純な装置を用いて実施されてよく、このことは、特に、鋼ストリップ処理ラインにおけるロールへの前記装置の装着を容易にする。
【0018】
特に、鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のために適応された、本発明による方法を実施するためのこのような装置は、
レーザアブレーションビームのエミッタと、スペクトルプラズマ放射のレシーバとが設けられており、
エミッタの出力部に配置された、レーザアブレーションビームをロールキャビティを通って案内するように設計された、目標接触点への前記ビームの入射を保証するための光学的案内手段を有する、第1の光学的経路が設けられており、
レシーバの入力部に配置された、スペクトルプラズマ放射分布を前記光学的案内手段を通って収集するように設計された、第2の光学的経路が設けられており、
少なくとも光学的案内手段が、機械的な結合手段によってロールの回転と同期して回転可能であることを特徴としてよい。
【0019】
目標点へのレーザの与えられた入射及びプラズマ分布の光学的フィードバックを保証するために、光学的案内手段は、垂直軸線とロールの回転軸線とに対して45゜だけ傾斜させられたダイクロイックミラーを含んでいてよい。このミラーは、入射ビーム及び光学的フィードバックビームが垂直軸線に沿って方向付けられることを可能にし、単一の光学的経路が垂直軸線上で使用されること可能にする。従って、ダイクロイックミラーは、少なくとも垂直軸線上に配置されている。
【0020】
有利には、第1の光学的経路は、分配を改良するために、すなわち目標点へ直接に又はダイクロイックミラーを介して反射及び/又は透過のそれぞれによって入射光を送るか又はプラズマによって放射された光を案内することを可能にする、光ファイバ又はエアガイド等の光導波路を含んでいてよい。ダイクロイックミラーが設けられた装置の択一的な実施の形態を、少なくとも1つの全反射ミラーを代用することにより実現することもできる。
【0021】
同様に、第2の光学的経路は、プラズマ分布ビームをレシーバへ送るために、光ファイバ又はエアガイド等の光導波路を含んでいてよい。
【0022】
(垂直軸線上で)ロールのキャビティ内に配置されたダイクロイックミラーの代わりに、第1及び第2の光学的経路は、光学的案内手段としての90゜屈曲部を有する少なくとも1つの光ファイバを有していてよく、これにより、ロールの回転軸線に沿ったファイバゾーンと、目標接触点に対して垂直な軸線に沿ったファイバゾーンとを形成している。しかしながら、エミッタとレシーバとがロールの同じ側において単一のファイバ(又は複数のファイバの束)によって送られるならば、エミッタから出てレシーバに進入する2つのビームを分離する等のために、ダイクロイックミラーの配置は、顕著にロールのキャビティの外である。
【0023】
求められる多数の構成上の要求に関して、本発明による装置は柔軟に適応させられてよい。本発明は、少なくとも、ロールの内部キャビティの外におけるエミッタ及び/又はレシーバの配置を提供する。さらに、これは、ロールのキャビティにおける大規模な複雑な加工なしにLIBS機器を容易に装備することを可能にする。この場合、光学的結合手段(コリメータ、レンズ等)又は機械的結合手段(ロータリジョイント)は、LIBS(エミッタ及び/又はレシーバ)がロールと共に回転するかどうかに応じて、これらのエレメントの間のエネルギリンク及び/又は光学的リンクを保証するために必要とされる。
【0024】
エミッタ及び/又はレシーバは、特に光学的案内手段がロールのキャビティの内部に配置されている場合に光学的案内手段と同期回転するように連結されていてよく、この場合、光学的案内手段は、理想的には電力供給、コマンド信号及び/又は制御信号のために、ロータリジョイントへの電気的リンクにも連結されている。
【0025】
ロールシェルとして知られる部分における開口は、レーザアブレーションビーム及びアブレーションによって発生されたスペクトルプラズマ放射に対して光学的に透明若しくは透過性の材料から形成された窓を含む。これは、ストリップの面及びロールの表面と接触したストリップの皮膜が、ロールのシェルに形成された照射窓を通過する時にマークされないことを保証し、ロールのシェルは前記窓を含んでおり、その外面は、窓形の開口の縁部に注意深く結合されている。
【0026】
特に、溶融亜鉛めっきプロセスの後にロール上を走行する鋼ストリップの皮膜表面の化学的分析測定のために、本発明による方法を実施する装置の複数の異なる使用が可能である。
【0027】
これに関して、(レーザパルスの高い周波数により)ほとんど連続的に繰り返される極めて正確な測定を得ることが可能であり、前記測定は、目標点が接触円弧(地面における固定された基準点に対して、例えばロールの90゜から360゜までの角度で規定されている)において移動しているので目標点がロールに対して同じままであるので可能である。経験は、特に、プロセスステップの以下のシリーズが特に装置のこのような使用に適していることを証明した:
一時的に連続したアブレーションビームが、回転中のロールとの移動するストリップの同じ接触点においてストリップの様々な深さへ照射され、前記接触点は照射目標であり、
前記目標点において照射されたレーザのそれぞれに関連した化学的分析測定が行われる。
【0028】
アブレーションレーザのうちの少なくとも1つは、
a)ストリップの皮膜の外面の0〜3μm、理想的には1〜2μm、
b)皮膜の深さの約40〜60%、
c)皮膜の深さの約90〜95%、
の深さまで照射される。
【0029】
明らかに、これらのパラメータは、ストリップ及びストリップの皮膜の寸法及び特性に応じて適応させられてよい。特に、測定が正確なスペクトル分析を可能にするので、本発明による方法は、皮膜の目標とされるエレメントの存在又は不在に関連して、これを修正するために別のレーザがより大きな又は小さな深さまで照射されるべきであるかどうかを独立して決定する。
【0030】
本発明による方法を実施するための装置の使用は、溶融亜鉛めっき法を実施する設備のセッティングを決定し、かつ溶融亜鉛めっきの下流における合金化炉のセッティングを決定するパラメータを制御するためにも提案されている。それどころか、皮膜の化学的分析は極めて信頼性があるので、この化学的分析は、所望の皮膜から得られた前記皮膜のあらゆる逸脱を示すためにも使用することができ、このような逸脱を最小限に縮小するために皮膜形成設備のセッティングを適応させる。
【0031】
従って、本発明による方法を実施するための装置の使用は、基準データに関連して溶融亜鉛めっきプロセスの実時間運転データを監視するための手段も提供する。それどころか、移動するストリップを減速又は停止させる必要なく、移動するストリップにおいて分析測定が行われるので、有利には実時間調節ループが可能である。
【0032】
最後に、本発明による方法を実施するための装置は、結果的に、得られた運転データが基準データ公差レベルに当てはまるように、選択されたパラメータに関連して高性能制御シナリオを確立するために使用されてよい。従って、本発明による方法は、特定の公差を要求する特性を有する皮膜を提供するために、より一層独立させられている。
【0033】
特に、鋼ストリップを連続的に移動させるための溶融亜鉛めっき設備を制御するための装置の使用は、従って、鉄、アルミニウム及び亜鉛等の、皮膜におけるある合金元素の濃度の、複数の深さにおける測定の使用を特徴とし、前記測定は、レーザアブレーションスペクトル分析装置によって移動するストリップにおいて行われる。この目的のために、分析装置によって捕捉されたデータは、特に、ストリップの移動速度に関連して合金化炉の加熱パワーを制御するために亜鉛めっき機器のPLCシステムによって使用される。
【0034】
さらに、分析装置によって捕捉されたデータは、ストリップの寸法、化学的組成、表面粗さ、皮膜形成浴の化学的組成及び温度、合金化炉のパワー、及びストリップ移動速度等の、記録又は測定されたその他のデータと共にプロセス最適化システムへ送られる。このプロセス最適化システムは、設備の所定の安定した、最適な運転範囲に関連して、プロセスにおける運転データの関連性を評価することができる。この運転範囲は、例えば、他のパラメータの全てに関連して可能なストリップ移動速度のエンベロープであってよい。従って、この最適化システムは、前記安定した最適な運転範囲における、潜在的なプロセス性能改良シナリオも提供する。これらのシナリオは、設備のPLCシステムにおいて使用されるものと同じタイプであってよい適応制御ストラテジに基づく。
【0035】
これらの様々なカテゴリにおける発明の例は、説明される図面を用いて提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】移動する鋼ストリップの溶融亜鉛めっきを示す概略図である。
【図2】GAコーティングにおける亜鉛、鉄及びアルミニウムの濃度の変化を示す図である。
【図3A】本発明の第1の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【図3B】本発明の第2の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態による化学分析装置を示す図である。
【0037】
図1は、移動する鋼ストリップ(1)の溶融亜鉛めっきの概略図である。亜鉛めっき炉から送られてくるストリップ(1)は、液体コーティング浴(2)に浸漬され、浴に浸漬されたロール(3)によって鉛直方向に変向される。次いで、ストリップは、液体膜のための乾燥装置(4)と、誘導加熱装置(5)と、合金化温度を維持するための装置(6)と、冷却装置(7)とを順次通過し、この冷却装置(7)において皮膜は固化する。次いで、ストリップは、変形操作及び亜鉛めっきされたコイルにおける再巻取りの前に、第1の変向ロール(8)の周囲に、次いで第2のロール(9)に部分的に巻き付けられる。
【0038】
図2は、GA皮膜における亜鉛、鉄及びアルミニウムの濃度の変化の一例を示す図である。x軸(10)は皮膜における深さの変化を表し、前記皮膜の表面は、種々異なる元素である亜鉛、鉄及びアルミニウムの濃度の変化を表すy軸(11)との交差箇所にある。曲線(12)は亜鉛含有量の変化を表し、曲線(13)は鉄含有量の変化を、曲線(14)はアルミニウム含有量の変化を表す。曲線(13)における限定された深さ変化を示す第1の期間(131)は、タイプζとして知られる、第1の鉄/亜鉛合金化相に相当し、緩やかな深さ変化を示す第2の期間(132)は、タイプδとして知られる第2の相に相当し、第3の期間(133)は、タイプΓとして知られる第3の相に相当する。従って、これらの相のそれぞれに関連して、図の第1の枠で囲まれたゾーン(151)は、第1のレーザアブレーション照射のための好適なゾーンに相当し、同様に第2及び第3の枠で囲まれたゾーン(152,153)は、第1の照射に続く照射のための好適なゾーンに相当する。この図を用いて、本発明による方法を実施するための又は関連する装置を使用するための基準パラメータを規定することが可能である。
【0039】
図3Aは、前記方法の実施を可能にしかつ鋼ストリップ(1)の表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析に適した、本発明の第1の実施の形態による化学分析装置を示しており、
鋼ストリップは、軸線(51)を中心にして回転しかつ接触することによってストリップを案内する円筒状の壁部を有するロール(8)の外面円弧(813)に沿って移動させられ、
レーザアブレーションビームは、このビームがロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿ってストリップとロールとの目標接触点(11)に光学的に入射するように、内部キャビティを通って円筒状の壁部へ送られ、前記ビームは、ビームに対して透明な壁部開口(811)を通って壁部を通過し、
接触点のレーザアブレーションからのスペクトルプラズマ放射分布が、ロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿って、開口を通って、スペクトル測定ユニットへ送られるために収集され、
光学的入射及びフィードバックのために使用された、外面に対して垂直な軸線が、ローラに対して同期した回転において移動させられる。
【0040】
従って、この目的のために示された装置は:
レーザアブレーションビーム照射装置(40)及びスペクトルプラズマ放射レシーバ(30)と、
放射装置の出力部に配置された、ロールキャビティを通ってレーザアブレーションビームを案内するように設計された、アブレーションレーザが前記ビームを目標接触点(11)に衝突させるための光学的案内手段(20)を有する、第1の光学的経路(P1)と、
受信器の入力部に配置された、前記光学的案内手段(20)を介してスペクトルプラズマ放射分布を収集するために設計された、第2の光学的経路(P2)と、を有しており、
少なくとも光学的案内手段(20)は、そこからストリップが移動しているシェル(81,812,813)の表面(813)への、ローラ(8,81,82,83)の回転に対して同期した機械的連結によって回転可能である。
【0041】
従って、ストリップ(1)は、ロール(8)の円弧上に部分的に巻き付けられており、このロール(8)は、シェル(81)と、それぞれの端部においてジョイントフランジ(83)に結合された2つの回転(支持)軸(82)とを有している。開口(811)を形成するためにシェルにおいて窓が開放している。エアガイド(44a)の形態の第1の光学的経路(P1)に隣接する案内手段(20)として働く光学的装置が、シェル(81)の内面(812)に対して垂直に配置されており、エミッタ(40)から発射されたレーザビームを、窓(811)を通じて、シェル(81)の外面(813)と接触したストリップ(1)の表面に方向付ける。この光学的装置は、ダイクロイックミラー(21)を有しており、このダイクロイックミラー(21)は、エミッタ(40)によって発射されたレーザビームを目標点(11)へ方向付け、エアガイド(31)の形態の第2の光学的経路(P2)を介して、スペクトロノミ装置、すなわちレシーバ(30)に向かってプラズマによって放射された光ビームのフィードバックを可能にする。光学的装置は、集束レンズ、及びアブレーション及び分析装置(図示せず)を取り付けるために必要な部材も有している。エミッタ(40)及びレシーバ(30)はそれぞれケーブル(42,32)によって連結されており、これらのケーブルは、エミッタ及びレシーバをロータリジョイント(50)に連結しており、このロータリジョイント自体は、ロールの外部における固定されたケーブルに接続されており、この固定されたケーブルは、装置(40,30)に、装置が作動するために必要な電源を供給し、また、装置の動作を制御する信号(コマンド、セッティング、制御、アラーム等)を分配する。
【0042】
従って、この装置は、垂直な軸線(41)と、ロールの回転軸線(51)とから45゜で傾斜させられた単純なダイクロイックミラーとしての光学的な案内手段を有している。
【0043】
従って、第1及び第2の光学的経路は、案内手段(20)に設けられた単純なエアガイドの形態の光導波路を有している。
【0044】
開口(811)は、レーザアブレーションビームとスペクトルプラズマ放射とに対して光学的に透明な材料から形成された窓を含んでいる。
【0045】
この実施の形態において、エミッタ及びレシーバは両方とも、ロールの内部のキャビティに配置されており、垂直軸線(41)の同期した回転を保証するために、ロールに堅く取り付けられている。しかしながら、特にロールのキャビティ内に配置されている場合、少なくともエミッタ及び/又はレシーバが、同期した回転において光学的案内手段に連結されていることのみが必要であり、その場合、理想的には電力供給、コマンド及び/又は制御信号等のために、ロータリジョイント(50)を有する電気的リンク(42,32)にも連結されている。
【0046】
図3Aに代わる実施の形態が図3Bに示されており、この場合、図3Aに示したようにレシーバ(30)はキャビティに配置されているが、エミッタ(40)はキャビティの外部、例えばロールの端部のうちの一方に配置されている。従って、エミッタ(40)を、ロールの回転軸線(51)に機械的に連結することができ、その結果、ロールと同期した回転で移動する。この場合、第1の光学的経路(P1)は光導体を有しており、この光導体は、案内手段(20)に接続された光ファイバ(44b)の形態を取り得るか、又は、案内手段(20)におけるダイクロイックミラー(21)が択一的に回転軸線(51)上に配置されていて、これにより、エミッタ(40)によって発射された入射ビームを捕らえて目標点(11)へ向かって変向させることができるならば、エアガイド(図示せず)の形態を取り得る。従って、本発明の第2の実施の形態によるこの化学分析装置も、この場合、ロール及び垂直軸線(41)と同期して回転するエミッタ及びレシーバを提供する。
【0047】
最後に、再び図3Aに代わる例として、図3Bに記載のエミッタの配置と同様に、エミッタ及びレシーバ(40,30)が両方ともロールのキャビティの外部に配置されていてよい。従って、端部に配置されたエミッタ及びレシーバは、ロール軸と同期して回転するように拘束されていてよい(又は、端部のために選択された光学的及び機械的構成によっては、拘束されていない)。同様の配置が、図4に示された第3の実施の形態による装置によって示されている。エミッタ及びレシーバはそれぞれ、光ファイバ(44b,34)を有する第1及び第2の光学的経路(P1,P2)を介して案内手段(20)に接続されており、この案内手段は、入射のために光ファイバ(44b)の出力部から又はフィードバックのために光ファイバ(34)の入力部に向かって、光ビームの入射及びフィードバックを保証する。エミッタのみが、図3Bに示したようにロール及び垂直軸線(41)と同期して回転するようになっている。レシーバ(30)はキャビティの外部に回転不能に配置されており、(光ファイバ34を有する)第2の光学的経路(P2)を受け取るレシーバの光学的入力部は、光ファイバの端部に接続されたロータリカップリングをオンデマンドで提供する。
【0048】
図5は、特に図4に基づく装置の第4の実施の形態を示している。第1及び第2の光学的経路(P1,P2)は、それぞれ光ファイバ(50a,50b)を有している。これらの光ファイバ(50a,50b)は案内手段(20)に通じている。案内手段(20)には、ダイクロイックミラー(21)と、ファイバの結合光学系(56)とが設けられている。案内手段(20)は、目標点に面したシェル開口と向き合って配置されている。図4とは異なり、光学的経路(P1,P2)を規定した光ファイバ(50a,50b)は、ロールと、ロール軸の端部への入力部及び出力部と同期して回転するように拘束されている。端部は、例えば、2つの開口(51a,51b)のうちの1つに配置されており、ロールの回転軸線上にファイバを保持している。開口は、エミッタ(40)又はレシーバ(30)にそれぞれ結合された一時的結合光学系(55)から光ビームを受け取るか又はこの一時的結合光学系(55)へ光ビームを放射する。エミッタ及びレシーバは、一方では地面に関して固定されており(従ってロールから解離されており、回転しない)、他方ではロール軸に関して固定されている。この一時的空中光学的結合のための保護手段(310,330)は、例えば、ロール、エミッタ、又はレシーバに堅く結合された絶縁管を使用することにより提供されてよい。この実施の形態は、ロールのキャビティ内にエミッタ及びレシーバを装着することを回避することも可能にし、前記キャビティにおける単純な電気的及び光学的に"受動的な"適応を必要とし、このことは、ロールの設計及びメンテナンスを単純化する。
【0049】
図6は、図5による第5の実施の形態を示している。エミッタとレシーバとは、ロールのキャビティの外部に配置されているが、この場合、(図6によるロール端部のうちの1つと同様に、ロールの回転軸線への機械的な固定のための結合手段(310,330)によって)ロールの回転軸線に堅く結合されている。しかしながら、この後者の堅い結合は、必須ではなく、図5(エレメント330,55は解離されている)におけるように、結合光学系の使用によって排除されてもよい。この場合、"結合"エレメント(310,330)と、エアガイド(520)との間には、解離回転エレメントが配置されている。ロール及びロールの軸へのエミッタ及びレシーバの堅い結合は、望ましくない振動の完全な相殺という利点を提供する。従って、ロールからのこれらのエレメントの解離は、振動を十分に相殺する結合手段又は解離手段を必要とする。これは技術的に可能であるが、実施を複雑にする。
【0050】
図6において、エミッタとレシーバとは、ロールの回転軸線に提供された単純な空中導管(520)等の、第1及び第2の光学的経路(P1,P2)として働く単一の光学的経路にも接続されている。目標点(11)への光学的入射及び目標点(11)からのフィードバックを生じるように設計された全反射ミラー(411)が、ロールキャビティ内に配置されており、ロールの回転軸線に対して平行(及び同一)な空中導管(520)の主方向から45゜の角度で空中導管と交差している。ダイクロイックミラー(401)は、ロールのキャビティの外部に配置されており、エミッタ又はレシーバと単一の空中導管(520)との間で、到着及び出発する光ビームを案内することを可能にしている。この配列は、エミッタと、レシーバと、ダイクロイックミラー(401)とが、単一のユニットとしてロールの同じ側に配置される(さもなければロールに堅く結合される)ことを可能にし、これにより、ロール及び測定装置自体の実施及びメンテナンスを容易にする。単一の空中導管(520)と前記単一のユニットとの間の接合点は、単一のユニットがロールと一緒に回転駆動されないようにするために、回転式であってよい。
【0051】
図7は、図6による第6の実施の形態を示しているが、全反射ミラー(図6によるエレメント411)は、少なくとも1つの光ファイバ(501)(適切な帯域幅を有する)、又は目標点における単一のレンズ(511)によって方向付けられたアブレーションレーザを用いて入射ビーム及びフィードバックビームを目標点へ送りかつ受け取ることができる全体的な光学的帯域幅を有する光ファイバの束によって置き換えられている。ロールの外部におけるダイクロイックミラー(401)と、ファイバ又はファイバ(501)の束との間に、視準光学系(512)が配置されており、ファイバを、エミッタ及びレシーバ(40,30)に光学的に結合している。図6と同様に、単一のユニットとしてのエミッタ、レシーバ及びダイクロイックミラーを有する配列は、ロールによって回転するドライブから解離させることができる接合部を可能にするために、可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼ストリップ(1)の表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法において、以下のステップ、すなわち、
前記ストリップが、該ストリップと接触することによって該ストリップを案内する円筒状の壁部を有する回転するロール(8)の外面円弧(813)に沿って移動させられ、
ロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿って、ストリップ及びロールの目標接触点(11)に光学的に入射するように、内部キャビティを介して前記円筒状の壁部にレーザアブレーションビームが提供され、該ビームは、該ビームに対して透明な壁部開口(811)を通って前記壁部を通過し、
接触点のレーザアブレーションからのスペクトルプラズマ放射分布が、スペクトル測定ユニットへ提供されるために、前記ロールの外面に対して垂直な軸線(41)に沿って、開口を通る光学的フィードバックによって収集され、
光学的な入射及びフィードバックのために使用される、前記外面に対して垂直な軸線(41)が、ローラと同期した回転で移動させられることを特徴とする、鋼ストリップ(1)の表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための方法。
【請求項2】
鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための、請求項1記載の方法を実施するための装置において、
レーザアブレーションビームのエミッタ(40)と、スペクトルプラズマ放射のレシーバ(30)とが設けられており、
前記エミッタの出力部に配置された、レーザアブレーションビームをロールキャビティを通って案内するように設計された、目標接触点への前記ビームの入射を保証するための光学的案内手段(20)を有する、第1の光学的経路(P1)が設けられており、
前記レシーバの入力部に配置された、スペクトルプラズマ放射分布を前記光学的案内手段(20)を通って収集するように設計された、第2の光学的経路(P2)が設けられており、
少なくとも光学的案内手段(20)が、機械的な結合によってロールの回転と同期して回転可能であることを特徴とする、鋼ストリップの表面に被着された金属皮膜層のスペクトル分析のための、請求項1記載の方法を実施するための装置。
【請求項3】
前記光学的案内手段(20)が、前記垂直な軸線と、ロールの回転軸線とから45゜だけ傾斜させられたミラー、理想的にはダイクロイックミラーを有している、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記第1の光学的経路は、光ファイバ(44b,50a,501)又はエアガイド(44a,520)等の光導波路を有している、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記第2の光学的経路は、光ファイバ(34,50b,501)又はエアガイド(31,520)等の光導波路を有している、請求項3又は4記載の装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の光学的経路は、ロールの回転軸線(51)に沿ったファイバゾーンと、目標接触点に対して垂直な軸線(41)に沿ったファイバゾーンとを形成する光学的案内手段(20)としての90゜屈曲部を有する少なくとも1つの光ファイバを有している、請求項2記載の装置。
【請求項7】
少なくともエミッタ及び/又はレシーバは、ロールの内部キャビティの外部に配置されている、請求項2から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
少なくともエミッタ及び/又はレシーバが、特にロールのキャビティの内部に配置されている場合、同期回転するように光学的案内手段と結合されており、その場合、理想的には電力供給、コマンド信号及び/又は制御信号のための、ロータリジョイントを有する電気的リンクにも結合されている、請求項2から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
開口(811)が、レーザアブレーションビームと、スペクトルプラズマ放射とに対して光学的に透明である材料から形成された窓を有している、請求項2から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
溶融亜鉛めっきプロセスに続いてロール上を移動する鋼ストリップの皮膜表面の化学的分析測定を行うための、請求項2から9までのいずれか1項記載の装置の使用。
【請求項11】
回転しているロールとの移動するストリップの同じ接触点においてストリップの様々な深さへ照射される一時的に連続的なアブレーションレーザビームを有しており、前記接触点は照射目標であり、
前記目標点において照射されたレーザのそれぞれに関連した化学的分析測定を有する、請求項10記載の使用。
【請求項12】
アブレーションレーザの少なくとも1つが、
−ストリップのコーティングの外面の0〜3μm、理想的には1〜2μmの深さ、
−コーティングの深さの約40〜60%の深さ、
−コーティングの深さの約90〜95%の深さ、
まで照射される、請求項11記載の使用。
【請求項13】
溶融亜鉛めっき方法を実施する設備のセッティングを決定し、かつ溶融亜鉛めっき設備の下流に配置された合金化炉のセッティングを決定するパラメータを制御するための、請求項10から12までのいずれか1項記載の装置の使用。
【請求項14】
基準データに関連して溶融亜鉛めっきプロセスの作動データを実時間で制御するための、請求項10から13までのいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
得られた作動データが基準データ公差レベルに当てはまるように選択されたパラメータに関連して高性能制御シナリオを確立するための、請求項14記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526265(P2012−526265A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−508909(P2012−508909)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056564
【国際公開番号】WO2010/127713
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(503087245)シーメンス ヴェ メタルス テクノロジーズ エスアーエス (19)
【氏名又は名称原語表記】Siemens VAI Metals Technologies SAS
【住所又は居所原語表記】51 rue Sibert, F−42400 Saint−Chamond, France
【Fターム(参考)】