鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法、鋼材とコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力の算出方法、スタッドに作用するせん断力の算出方法、逆打支柱の支持構造
【課題】コンクリート杭と逆打支柱との間において伝達される単位長さあたりのせん断力の分布を正確に評価できるようにする。
【解決手段】逆打支柱20と、逆打支柱20と一体となるように構築されたコンクリート杭30との接合端面において、接合端面に沿ってせん断力が作用した際の接合端面における、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される応力の分布を、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により近似して算出する。
【解決手段】逆打支柱20と、逆打支柱20と一体となるように構築されたコンクリート杭30との接合端面において、接合端面に沿ってせん断力が作用した際の接合端面における、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される応力の分布を、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により近似して算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法、最大せん断耐力の算出方法及びこの方法を用いた鋼材に取り付けられたスタッドに作用するせん断力を算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、逆打工法を適用する場合には、鉄骨からなる逆打支柱に作用する軸力を支持するために、場所打ちコンクリート杭を逆打支柱の下端が埋設されるように一体に構築している。かかる構成において、逆打支柱に作用する軸力は、逆打支柱の外周面からせん断力として、また、逆打支柱の先端部から支圧力としてコンクリート杭に伝達される。さらに、逆打支柱の外周面においてせん断力が効率よく伝達されるように、逆打支柱のコンクリート杭に埋設された部分の外周面にスタッドを取り付けておき、スタッドが埋め込まれるようにコンクリート杭を構築することが行われている。
【0003】
この場合、逆打支柱の外周面から十分にせん断力が伝達されるように、スタッドの数、サイズ、及び取り付け位置などを計画する必要がある。しかしながら、スタッドを介して逆打支柱からコンクリート杭に伝達されるせん断力を正確に評価する方法はない。
【0004】
そこで、従来は、このようにスタッドの計画を行う場合には、深さによらず、スタッドを介して伝達されるせん断力が一定であると仮定し、さらに、有効な埋め込み深さよりも深い位置に取り付けられたスタッドはせん断力の伝達に有効に寄与しないとして設計を行っている。なお、このような有効な埋め込み深さについては、例えば、非特許文献1のp.109左上欄には、鉄骨柱の柱径をD[mm]とした場合に、有効な埋め込み深さを4D[mm]とすることが記載されている。
【非特許文献1】宇佐美 徹、外4名、“鉄骨柱から場所打ちコンクリート杭頭部への軸力伝達に関する実験的研究”、日本建築学会構造系論文集、日本建築学会、2001年9月、第547号、p.105-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、逆打支柱及びコンクリート杭との間では、逆打支柱及びコンクリート杭の相対変位の大きさに応じてせん断応力が伝達されると考えられる。逆打支柱及びコンクリート杭に軸方向に一定のひずみが生じている場合には、逆打支柱及びコンクリート杭との付着部における相対変位が各部において一定となるため、上記のように、スタッドを介して伝達されるせん断力は一定であると考えられるが、実際には、作用する軸力が深さにより異なるため、逆打支柱及びコンクリート杭に生じるひずみは深さにより異なる。このため、従来の方法では、上記のようにせん断力が一定であると仮定しており、正確に逆打支柱及びコンクリート杭との間で伝達される応力を評価することができておらず、安全側の設計を行う必要があり、過剰設計の原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、逆打支柱及びコンクリート杭などのようなコンクリート部材と鋼材との間において伝達されるせん断力の分布を正確に評価できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼材とコンクリート部材の接合端面における応力分布の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]を、
前記鋼材の軸剛性ASESと、前記コンクリート部材の軸剛性ACECと、前記鋼材と前記コンクリート部材との接合面におけるせん断剛性K[N/mm2]と、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長L[mm]と、に基づき、係数a、b、cが決定される式(1)に基づき算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数1】
【0008】
上記の方法において、前記係数a、b、cを式(2)〜(4)により算出してもよい。
【数2】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【0009】
また、前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(5)により算出してもよい。
【数3】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
また、前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であってもよい。
【0010】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力が作用した際の最大せん断耐力を算出する方法であって、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、鋼材とコンクリート部材との接合面における前記最大せん断耐力を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力を算出する方法であって、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に作用する、以下の式(6)〜(9)により算出される前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度τmaxと等しくなるような軸力Ntotal[N]を算出し、当該算出した軸力Ntotal[N]を最大せん断耐力とすることを特徴とする。
【数4】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【0012】
上記の方法において、前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(10)で算出してもよい。
【数5】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【0013】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力Ntotal[N]を以下の式(11)〜(12)により算出することを特徴とする。
【数6】
Q3:スタッドの最大せん断耐力[N]、L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【0014】
上記の方法において、前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であってもよい。
また、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長Lを、前記鋼材の径をDとした場合に、L≦Lmax(4D<Lmax≦10D)として、前記軸力Ntotal[N]を算出してもよい。
【0015】
また、本発明のスタッドに作用するせん断力を算出する方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力が作用した際に、前記スタッドに作用するせん断力を算出する方法であって、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、前記鋼材に設けられた前記スタッドに作用するせん断力を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のスタッドに作用するせん断力を算出する方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記コンクリート杭の上面高さからの深さx[mm]における前記スタッドに作用するせん断力qstud(x)[N]を式(13)〜(17)により算出することを特徴とする。
【数7】
L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【0017】
また、本発明の逆打支柱の支持構造は、逆打支柱の下端がコンクリート杭に埋設されてなる逆打支柱の支持構造であって、上記の方法により算出される最大せん断耐力が、前記逆打支柱に作用する軸力よりも大きくなるように設計されたことを特徴とする。ここで、前記逆打支柱の前記コンクリート杭への埋設長さがLmax(4D<Lmax≦10D)以下であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鋼材とコンクリート部材の間で作用する単位長さあたりのせん断力を、両端部における値が中間部よりも大きな値となるような関数により近似するため、実際の状況と適合し、精度良く伝達されるせん断力を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施形態のスタッドの取り付け計画方法の一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
本実施形態では、逆打支柱とコンクリート杭との接合部において逆打支柱に作用する鉛直力を確実にコンクリート杭に伝達できるように、スタッドの取り付け計画を行う場合を例として説明する。
【0020】
図1は、逆打支柱20とコンクリート杭30との接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図、(B)は内部の構成を示すべく鉄筋かご32を省略した鉛直断面図、(C)は水平断面図である。同図に示すように、逆打支柱20は、クロスH型鋼からなり、上方に構築された地上躯体の荷重が作用する。逆打支柱20の下端部の外周にはスタッド21が取り付けられており、このスタッド21が埋め込まれるように場所打ちコンクリート杭30が構築されている。場所打ちコンクリート杭30は円柱状に地盤に形成された掘削孔内に打設されたコンクリート31と、このコンクリート31に埋設された円筒状に組まれた鉄筋かご32とからなる。
【0021】
逆打支柱20に地上躯体の荷重が軸力として作用すると、この軸力は逆打支柱20とコンクリート杭30を構成するコンクリート31との付着力、逆打支柱20の先端部における支圧力、及びスタッド21のせん断抵抗力によりコンクリート杭30に伝達される。
【0022】
従来技術の欄に記載したように、従来は、スタッド21により伝達されるせん断力が、深さによらず一定であるとし、さらに、有効な埋め込み深さよりも深い位置に取り付けられたスタッド21はせん断力の伝達に有効に寄与しないとして設計を行っていた。
【0023】
これに対して、本願発明者らは、図2に示すような機構50によりスタッド21を介して伝達されるせん断力を模式化することとした。同図中央の要素52は逆打支柱20を示し、この要素52の両側に位置する要素51はコンクリート杭30を示し、これらの要素52、51の間を結ぶ要素53が荷重を伝達することにより、スタッド21が伝達するせん断力を模式化している。
【0024】
このような機構50において、逆打支柱20に作用する軸力pSはスタッド21を介してコンクリート杭30に伝達されるため、図3の軸力分布のグラフに示すように、コンクリート杭30と逆打支柱20の接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。なお、図3の軸力分布のグラフでは、軸力pSと深さの間に比例関係がある場合(すなわち、グラフ上、直線となる場合)を示している。また、逆打支柱20の各部の鉛直ひずみεSは、軸力pSに比例すると考えられる。このため、逆打支柱20の各深さにおける鉛直ひずみεSは図3のひずみ分布のグラフに示すように接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。さらに、逆打支柱20の鉛直変位δSは、鉛直ひずみεSの積分値であるため、図3の変位を示すグラフのように、接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。
【0025】
また、これと同様に、コンクリート杭30に作用する軸力は、図4の軸力分布のグラフに示すように、その最下部において最大となり、最上部において0となる。なお、上記の逆打支柱20の場合と同様に、図4の軸力分布のグラフでは、軸力pCと深さの間に比例関係がある場合(すなわち、グラフ上、直線となる場合)を示している。また、コンクリート杭30の各深さにおける鉛直ひずみεCは、図4のひずみ分布のグラフに示すように、その最下部において最大となり、最上部において0となる。コンクリート杭30の鉛直変位δCは、鉛直ひずみεCの積分値であるため、図4の変位を示すグラフのように、接合部における最下部において最大となり、最上部において0となる。
【0026】
ここで、スタッド21により伝達される単位長さあたりのせん断力は、コンクリート杭30と逆打支柱20のスタッド21により連結されている部分の相対変位に応じて決定され、相対変位が大きいほど伝達されるせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達されるせん断力は小さくなる。
【0027】
そこで、上記の逆打支柱20とコンクリート杭30のスタッド21により連結されている各要素の変位の差をとることにより相対変位を求めると、図5のグラフに示すように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の下端及び上端において、相対変位が最大となり、中間部において最小値をとることとなる。上記のようにスタッド21により伝達されるせん断力は、逆打支柱20とコンクリート杭30のスタッド21により連結されている部分の相対変位が大きいほど伝達されるせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達されるせん断力は小さくなるため、伝達されるせん断力も相対変位と同様に、接合部の下端及び杭の上端において最大となり、中間部において最小値をとることとなる。
【0028】
このように、逆打支柱20とコンクリート杭30のひずみを考慮して単位長さあたりのせん断力を算出すると、従来のように、所定の有効深さよりも深い位置において、せん断力が伝達されていないわけではなく、実際には所定の有効深さよりも深い位置を含む接合部の上端から下端までせん断力が伝達されていることがわかる。
【0029】
また、コンクリート杭30と逆打支柱20との付着により伝達される単位長さあたりのせん断力を考える場合、この付着により伝達される単位長さあたりのせん断力はコンクリート杭30と逆打支柱20との相対変位が大きいほど伝達される単位長さあたりのせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達される単位長さあたりのせん断力は小さくなると考えられる。このため、上記のスタッド伝達される単位長さあたりのせん断力と同様に、コンクリート杭30と逆打支柱20との接合部の下端及び上端において最大となり、中間部において最小値をとることとなる。
【0030】
そこで、発明者らは、接合部の上端(コンクリート杭30の上端)からの深さxと、この深さxにおいてスタッド及び付着により逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力との関係を2次曲線により近似してモデル化することとした。
【0031】
深さxにおいて逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力をτ(x)[N/mm]とすると式(18)が成立する。
【数8】
ここで、Ntotalは、逆打支柱20に作用する総軸力[N]を示す。
【0032】
また、逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)は、スタッド21により伝達されるせん断力と、逆打支柱20からコンクリート杭30の付着力により伝達されるせん断力の和であるため、式(19)が成立する。
【数9】
なお、式中、qstud(x)は、深さxに設置されたスタッド21が負担するせん断力[N]、sは軸方向のスタッド21の間隔、τbond(x)は深さx[mm]における付着力により伝達される単位長さあたりのせん断力[N/mm]を示す。
【0033】
また、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の上端の高さ位置では、逆打支柱20に総軸力Ntotalが作用し、コンクリート杭30には軸力が作用しておらず、接合部の下端の高さ位置では、逆打支柱20に軸力が作用しておらず、コンクリート杭に総軸力Ntotalが作用しているので、式(20)〜(23)が成立する。
【数10】
なお、式中、Lは接合部の長さ[mm]を示す。
【0034】
一方、逆打支柱20及びコンクリート杭30の軸方向変位δS、δCは夫々式(24)、(25)のようになる。
【数11】
なお、式中、εS(x)、εC(x)は夫々深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30の軸方向ひずみ量[mm]、pS(x)、pC(x)は夫々深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30に作用する軸力[N]、AS(x)、AC(x)は、逆打支柱20及びコンクリート杭30の断面積[mm2]、ES(x)、EC(x)は、逆打支柱20及びコンクリート杭30のヤング係数[N/mm]を示す。
【0035】
また、スタッド21により伝達されるせん断力及び付着力により伝達される単位長さあたりのせん断力が相対変位に比例するとしてモデル化すると、式(26)、(27)が導かれる。
【数12】
なお、式中、Kstudは接合面における単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbondはせん断力に対する付着剛性[N/mm2]を示す。
【0036】
式(26)を微分すると式(28)が得られる。
【数13】
【0037】
ここで、上記のようにτ(x)を以下の式(29)により近似する。
【数14】
【0038】
この式に対して、(18)、式(20)〜(23)、及び式(28)により係数a、b、cを算出すると式(30)〜(32)のようになる。
【数15】
以上のようにして、各深さxにおけるスタッド21及び付着によりコンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を算出することができる。
【0039】
また、これに基づき、深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30に作用する軸力pS(x)、pC(x)を式(33)、(34)により算出することもできる。
【数16】
【0040】
これにより、逆打支柱20に作用する軸力Ntotalが与えられた場合には、スタッド21に作用するせん断力qstud(x)は式(35)により算出できる。
【数17】
【0041】
また、スタッド21のせん断耐力が与えられた場合には、上記の式(29)により算出されるτ(x)の最大値が、スタッド21のせん断耐力などに基づき算出される逆打支柱20及びコンクリート杭30の間のせん断強度τmaxと等しくなるような場合のNtotalを算出することで、かかる構成の逆打支柱20及びコンクリート杭30により支持可能な逆打支柱20に作用する軸力の最大値を算出することができる。
【0042】
この場合、上記のように、杭頭部において逆打支柱20とコンクリート杭30の間で伝達される単位長さあたりのせん断力が最大となるため、この部分においてスタッド21を介して伝達されるせん断力がスタッド21の最大せん断耐力Q3[N]と等しくなった際の逆打支柱20に作用する軸力がその最大値であるといえる。したがって、以下の式(36)が導かれる。
【数18】
【0043】
また、式(29)にx=0を代入することより以下の式(37)が導かれる。
【数19】
【0044】
したがって、逆打支柱20が負担することができる最大軸力N´total[N]は、以下の式(38)で算出できる。
【数20】
【0045】
以下、逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力について、数値解析(FEM)により算出した場合と、上記の方法により算出した場合とを比較することにより、上記の算出方法の妥当性を検討したので説明する。
【0046】
本検討では、図1に示したような逆打支柱20の下端がコンクリート杭30に埋設された接合部を単位長さあたりのせん断力を算出する対象とする。各部材の寸法及び特性は以下のとおりである。
<逆打支柱20>
断面 300×300×40×40[mm](すなわち、D=300)
圧縮強度 427[N/mm2]
ヤング係数 EC=1.89×105[N/mm2]
<コンクリート杭30>
径 1000[mm]
コンクリート:σB=31.6[N/mm2]
ヤング係数EC=3.05×104[N/mm2]
主筋:20−D25
σy=405[N/mm2]
ヤング係数ES=1.89×105[N/mm2]
帯筋:D13 150[mm]間隔
σwy=331[N/mm2]
ヤング係数ES=2.09×105[N/mm2]
<スタッド21>
φ22 150[mm]間隔
σy=347[N/mm2]
ヤング係数ES=2.09×105[N/mm2]
【0047】
なお、スタッド21の剛性はリンク要素により、スタッド21の剛性としては図6のグラフに破線で示すような四折れ点で示される特性を有するものとしてモデル化した。また、付着力はフィルム要素により、図7に示すような付着剛性を有するものとしてモデル化した。なお、図中には本実施形態の方法で用いているスタッド21の剛性及び付着剛性を夫々示す。
【0048】
解析条件としては図8に示すように、接合部の長さ(押込み長さ)を5D、7D、10Dとした各条件について、付着を考慮した場合と付着を考慮しない場合について検討を行った。なお、埋込み長さを5D、7D、10Dとした各場合における逆打支柱に作用させる軸力は、3500kN、4500kN、5500kNとしている。
【0049】
図9〜図11は付着を無視した(Kbond=0とした)場合(条件1〜3)の結果を示すグラフであり、図12〜図14は付着を考慮した場合(条件4〜6)の結果を示すグラフである。なお、図9及び図12は、コンクリート杭30のひずみ分布を示し、図10及び図13は、逆打支柱のひずみ分布を示し、図11及び図14は、スタッドの負担するせん断力を示す。
【0050】
図9及び図12に示すコンクリート杭30のひずみ分布は、接合部の最上部において最大となり、最下部において0となっており、発明者らが仮定した図4に示すコンクリート杭30の鉛直ひずみが妥当であることがわかる。
【0051】
これと同様に、図10及び図13に示す逆打支柱20のひずみ分布は、最上部において最大となり、最下部において0となっており、発明者らが仮定した図3に示す逆打支柱20の鉛直ひずみが妥当であることがわかる。
【0052】
そして、図11及び図14に示すように、数値解析により算出したせん断力は、本実施形態の方法により算出したせん断力と略一致しており、このことから、本実施形態の方法が妥当であるとともに、従来の方法における有効深さ(4D)よりも深い部分(本件等では(4D)を超えて(10D)以下の部分)においても単位長さあたりのせん断力が伝達されていることがわかる。すなわち、上記の各式におけるLは、L<Lmax(4D<Lmax≦10D)とすることができる。
【0053】
以下、従来の方法と比較しながら、上記の単位長さあたりのせん断力の算出方法を用いた逆打支柱とコンクリート杭の接合部の設計方法を説明する。なお、以下の実施例では、逆打支柱とコンクリート杭の付着剛性は考慮していない。
【0054】
まず、従来の手法により図15に示すような逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力を算出する場合について説明する。
従来の手法によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(39)により算出される。なお、従来の手法では有効な埋め込み深さLを鉄骨断面せいDの4倍として計算する。また、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さL=4m、逆打支柱の断面せいD=1m、スタッド21の最大せん断耐力Q3=10kN,スタッド21のピッチ200mmとする。
【数21】
【0055】
ここで、逆打支柱20に作用する軸力が250kNである場合を考える。このような場合には、逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上しなければならない。
このような場合には、従来の方法では、以下の方法により逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上していた。
【0056】
(1―1)逆打支柱20の鉄骨断面を増大させ、有効埋め込み深さを長くする。
例えば、図15に示すように、逆打支柱の断面せいDを1mから1.5mへ変更し、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さLを4mから6mへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は従来の手法によれば以下の式(40)のように向上できる。
【数22】
【0057】
(1−2)スタッド量を多くする(スタッド21の間隔を狭める、スタッド21に断面積が大きいものを用いる、スタッド12に高強度のものを用いる)。
例えば、図15に示すように、スタッド21の間隔を200mmから150mmへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(41)のように向上できる。
【数23】
【0058】
上記の(1−2)のようにスタッド量を多くする方法は、すでにスタッド21の間隔が非常に狭いように設計した場合などには適用できない。この場合には、(1−1)の方法を用いなければならず、逆打支柱の断面せいを大きくしなければならず、コスト高となってしまう。
【0059】
以下、上記の手法を用いた逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の設計方法を説明する。
これに対して本手法によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(42)により算出される。
【数24】
【0060】
このため、逆打支柱20が負担可能な最大軸力は以下の式(43)で算出することができる。
【数25】
【0061】
なお、AS=1000×30mm×2=0.06m2、AC=20002×π/4=3.14m2、ES=210000N/mm2、EC=30000N/mm2としている。
また、スタッド21は変形が1mmで最大せん断強度に達するとして、スタッドによる単位長さあたりのスタッドのせん断耐力Kstud=10kN/1mmより、K=10kN/1mm/200mm=50N/mm2となる。
【0062】
上記の場合と同様に、逆打支柱20に作用する軸力が250kNである場合を考える。このような場合には、逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上しなければならない。本実施形態では、以下の方法により逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上することができる。
【0063】
(2−1)スタッド量を多くする(スタッド21の間隔を狭める、スタッド21に断面積が大きいものを用いる、スタッド12に高強度のものを用いる)。
例えば、図15に示すように、スタッドのピッチを200mmから150mmへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(44)のように向上できる。
【数26】
【0064】
なお、本実施形態では、スタッド21の間隔を200mmから150mmを変更した場合について説明しているが、寸法(断面積)を大きいスタッドを用いたり、高強度のスタッドを用いたりすることによっても支持力を向上することができる。
【0065】
(2−2)逆打支柱の断面を変えずに、埋め込み深さを深くする。
例えば、図15に示すように、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さLを4mから6mへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(45)のように向上できる。
【数27】
【0066】
以上説明したように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部を計画する場合には、逆打支柱20のコンクリート杭30に埋設された部分の長さ(埋め込み深さ)L、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を設定するとともに、これらの条件以外の最大支持力Ntotalを算出するために必要な条件を設定する。
【0067】
次に、これら設定した条件における逆打支柱20とコンクリート杭30の間で伝達可能なせん断力の最大値を算出する。そして、算出したせん断力の最大値が逆打支柱20に作用する軸力以下の場合には、(2−1)又は(2−2)の方法により、逆打支柱20の埋め込み深さL、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を再設定する。なお、上記の実施例では、何れか一つの項目についてのみ、再設定を行った場合について説明したが、これに限らず、複数の項目を再設定してもよい。
【0068】
これらの工程を繰り返すことにより、算出したせん断力の最大値が逆打支柱20に作用する軸力を超えるような、埋め込み深さL、スタッド21の深さ方向の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を求めることにより、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の設計を行うことができる。
【0069】
なお、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を再設定する場合には、図16(A)に示すように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の中間部Aは伝達される単位長さあたりのせん断力が小さいため、この部分Aのスタッド21の間隔sを狭める、この部分Aのスタッド21に高強度のものを用いる、又はこの部分Aのスタッド21に断面が大きいものを用いることとするとよい。これにより、図16(B)に示すように、深さによらず、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力のばらつきがなくなり、スムーズな応力の伝達が可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の上端及び下端において中間部よりも大きな値となるように、二次関数によりせん断力を近似したため、実際の状況と適合し、精度良く伝達されるせん断力を算出することができる。
【0071】
また、このように実際の状況と適合する単位長さあたりのせん断力の算出方法を用いることで、従来の方法においてせん断力が作用していないとしていた有効深さよりも下方において、伝達されるせん断力を評価することができる。
【0072】
従来の方法を用いて設計を行う場合には、伝達されるせん断力が逆打支柱20に作用する軸力に比べて小さく、かつ、逆打支柱20に取り付けるスタッド21の間隔を狭められないような場合には、有効埋め込み深さを大きくするため、逆打支柱20の柱径を大きくしていた。これに対して、本実施形態によれば、逆打支柱の径を大きくしなくても、従来の有効深さよりも深い部分におけるせん断力の伝達を評価することができるため、より効率のよい設計が可能となる。
【0073】
なお、本実施形態では、スタッド21による単位長さあたりのせん断力の伝達と、コンクリート杭30と逆打支柱20の付着によるせん断力の伝達とを合わせて評価する場合について説明したが、これに限らず、スタッド21によるせん断力の伝達のみを評価することもできる。この場合には、式(27)における付着剛性Kbondを0とすればよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を近似する曲線として二次関数を用いたが、これに限らず、多次関数曲線やその他の曲線でも近似することができ、要するに、コンクリート杭30と逆打支柱20との接合部において、中間部に比べて上端及び下端高さにおける単位長さあたりのせん断力が大きくなるような曲線であればよい。
また、本実施形態では、逆打ち支柱としてクロスH鋼を用いた場合を説明したが、これに限らず、図17(A)に示すような鋼管40を用いた場合や、図17(B)に示すようにH型鋼41を用いた場合であっても、本発明を適用できる。なお、鋼管40を用いる場合には、内部にコンクリートを充填してもよいし、中空にしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を算出する場合について説明したがこれに限らず、コンクリート部材と鋼材との接合端面においてせん断力が作用する場合であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】逆打支柱とコンクリート杭との接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図、(B)は内部の構成を示すべく鉄筋かごを省略した鉛直断面図、(C)は水平断面図である。
【図2】逆打支柱とコンクリート杭との間でスタッドを介してせん断力が伝達される機構を示す図である。
【図3】逆打支柱に軸力が作用した際の、逆打支柱に作用する軸力、ひずみ、及び変位を示す図である。
【図4】逆打支柱に軸力が作用した際の、コンクリート杭に作用する軸力、ひずみ、及び変位を示す図である。
【図5】逆打支柱に軸力が作用した際の、コンクリート杭と逆打支柱の相対変位、及び単位長さあたりのせん断力を示す図である。
【図6】数値解析において設定したスタッドの剛性を示すグラフである。
【図7】数値解析において設定した付着剛性を示すグラフである。
【図8】数値解析の条件を示す表である。
【図9】条件1〜3におけるコンクリート杭のひずみ分布を示すグラフである。
【図10】条件1〜3における逆打支柱のひずみ分布を示すグラフである。
【図11】条件1〜3におけるスタッドの負担するせん断力を示すグラフである。
【図12】条件4〜6におけるコンクリート杭のひずみ分布を示すグラフである。
【図13】条件4〜6における逆打支柱のひずみ分布を示すグラフである。
【図14】条件4〜6におけるスタッドの負担するせん断力を示すグラフである。
【図15】逆打支柱の支持力を向上する方法を示す図である。
【図16】(A)はスタッドの配置を再設定する場合にスタッドの径を大きくする又は取り付け間隔を狭めるとよい部分を示す図であり、(B)は中間部のスタッドの径を大きくする又は取り付け間隔を狭めた場合の単位長さあたりのせん断力の分布を示すグラフである。
【図17】(A)は逆打支柱として用いられ鋼管を示す水平断面図であり、(B)はH型鋼を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0077】
20 逆打支柱
21 スタッド
30 コンクリート杭
31 コンクリート
50 機構
51 コンクリート杭を示す要素
52 逆打支柱を示す要素
53 スタッドを示す要素
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法、最大せん断耐力の算出方法及びこの方法を用いた鋼材に取り付けられたスタッドに作用するせん断力を算出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、逆打工法を適用する場合には、鉄骨からなる逆打支柱に作用する軸力を支持するために、場所打ちコンクリート杭を逆打支柱の下端が埋設されるように一体に構築している。かかる構成において、逆打支柱に作用する軸力は、逆打支柱の外周面からせん断力として、また、逆打支柱の先端部から支圧力としてコンクリート杭に伝達される。さらに、逆打支柱の外周面においてせん断力が効率よく伝達されるように、逆打支柱のコンクリート杭に埋設された部分の外周面にスタッドを取り付けておき、スタッドが埋め込まれるようにコンクリート杭を構築することが行われている。
【0003】
この場合、逆打支柱の外周面から十分にせん断力が伝達されるように、スタッドの数、サイズ、及び取り付け位置などを計画する必要がある。しかしながら、スタッドを介して逆打支柱からコンクリート杭に伝達されるせん断力を正確に評価する方法はない。
【0004】
そこで、従来は、このようにスタッドの計画を行う場合には、深さによらず、スタッドを介して伝達されるせん断力が一定であると仮定し、さらに、有効な埋め込み深さよりも深い位置に取り付けられたスタッドはせん断力の伝達に有効に寄与しないとして設計を行っている。なお、このような有効な埋め込み深さについては、例えば、非特許文献1のp.109左上欄には、鉄骨柱の柱径をD[mm]とした場合に、有効な埋め込み深さを4D[mm]とすることが記載されている。
【非特許文献1】宇佐美 徹、外4名、“鉄骨柱から場所打ちコンクリート杭頭部への軸力伝達に関する実験的研究”、日本建築学会構造系論文集、日本建築学会、2001年9月、第547号、p.105-112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、逆打支柱及びコンクリート杭との間では、逆打支柱及びコンクリート杭の相対変位の大きさに応じてせん断応力が伝達されると考えられる。逆打支柱及びコンクリート杭に軸方向に一定のひずみが生じている場合には、逆打支柱及びコンクリート杭との付着部における相対変位が各部において一定となるため、上記のように、スタッドを介して伝達されるせん断力は一定であると考えられるが、実際には、作用する軸力が深さにより異なるため、逆打支柱及びコンクリート杭に生じるひずみは深さにより異なる。このため、従来の方法では、上記のようにせん断力が一定であると仮定しており、正確に逆打支柱及びコンクリート杭との間で伝達される応力を評価することができておらず、安全側の設計を行う必要があり、過剰設計の原因となっていた。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、逆打支柱及びコンクリート杭などのようなコンクリート部材と鋼材との間において伝達されるせん断力の分布を正確に評価できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鋼材とコンクリート部材の接合端面における応力分布の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]を、
前記鋼材の軸剛性ASESと、前記コンクリート部材の軸剛性ACECと、前記鋼材と前記コンクリート部材との接合面におけるせん断剛性K[N/mm2]と、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長L[mm]と、に基づき、係数a、b、cが決定される式(1)に基づき算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数1】
【0008】
上記の方法において、前記係数a、b、cを式(2)〜(4)により算出してもよい。
【数2】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【0009】
また、前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(5)により算出してもよい。
【数3】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
また、前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であってもよい。
【0010】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力が作用した際の最大せん断耐力を算出する方法であって、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、鋼材とコンクリート部材との接合面における前記最大せん断耐力を算出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力の算出方法は、鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力を算出する方法であって、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に作用する、以下の式(6)〜(9)により算出される前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度τmaxと等しくなるような軸力Ntotal[N]を算出し、当該算出した軸力Ntotal[N]を最大せん断耐力とすることを特徴とする。
【数4】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【0012】
上記の方法において、前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(10)で算出してもよい。
【数5】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【0013】
また、本発明の鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力Ntotal[N]を以下の式(11)〜(12)により算出することを特徴とする。
【数6】
Q3:スタッドの最大せん断耐力[N]、L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【0014】
上記の方法において、前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であってもよい。
また、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長Lを、前記鋼材の径をDとした場合に、L≦Lmax(4D<Lmax≦10D)として、前記軸力Ntotal[N]を算出してもよい。
【0015】
また、本発明のスタッドに作用するせん断力を算出する方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力が作用した際に、前記スタッドに作用するせん断力を算出する方法であって、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、前記鋼材に設けられた前記スタッドに作用するせん断力を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のスタッドに作用するせん断力を算出する方法は、表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記コンクリート杭の上面高さからの深さx[mm]における前記スタッドに作用するせん断力qstud(x)[N]を式(13)〜(17)により算出することを特徴とする。
【数7】
L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【0017】
また、本発明の逆打支柱の支持構造は、逆打支柱の下端がコンクリート杭に埋設されてなる逆打支柱の支持構造であって、上記の方法により算出される最大せん断耐力が、前記逆打支柱に作用する軸力よりも大きくなるように設計されたことを特徴とする。ここで、前記逆打支柱の前記コンクリート杭への埋設長さがLmax(4D<Lmax≦10D)以下であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鋼材とコンクリート部材の間で作用する単位長さあたりのせん断力を、両端部における値が中間部よりも大きな値となるような関数により近似するため、実際の状況と適合し、精度良く伝達されるせん断力を算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本実施形態のスタッドの取り付け計画方法の一実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
本実施形態では、逆打支柱とコンクリート杭との接合部において逆打支柱に作用する鉛直力を確実にコンクリート杭に伝達できるように、スタッドの取り付け計画を行う場合を例として説明する。
【0020】
図1は、逆打支柱20とコンクリート杭30との接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図、(B)は内部の構成を示すべく鉄筋かご32を省略した鉛直断面図、(C)は水平断面図である。同図に示すように、逆打支柱20は、クロスH型鋼からなり、上方に構築された地上躯体の荷重が作用する。逆打支柱20の下端部の外周にはスタッド21が取り付けられており、このスタッド21が埋め込まれるように場所打ちコンクリート杭30が構築されている。場所打ちコンクリート杭30は円柱状に地盤に形成された掘削孔内に打設されたコンクリート31と、このコンクリート31に埋設された円筒状に組まれた鉄筋かご32とからなる。
【0021】
逆打支柱20に地上躯体の荷重が軸力として作用すると、この軸力は逆打支柱20とコンクリート杭30を構成するコンクリート31との付着力、逆打支柱20の先端部における支圧力、及びスタッド21のせん断抵抗力によりコンクリート杭30に伝達される。
【0022】
従来技術の欄に記載したように、従来は、スタッド21により伝達されるせん断力が、深さによらず一定であるとし、さらに、有効な埋め込み深さよりも深い位置に取り付けられたスタッド21はせん断力の伝達に有効に寄与しないとして設計を行っていた。
【0023】
これに対して、本願発明者らは、図2に示すような機構50によりスタッド21を介して伝達されるせん断力を模式化することとした。同図中央の要素52は逆打支柱20を示し、この要素52の両側に位置する要素51はコンクリート杭30を示し、これらの要素52、51の間を結ぶ要素53が荷重を伝達することにより、スタッド21が伝達するせん断力を模式化している。
【0024】
このような機構50において、逆打支柱20に作用する軸力pSはスタッド21を介してコンクリート杭30に伝達されるため、図3の軸力分布のグラフに示すように、コンクリート杭30と逆打支柱20の接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。なお、図3の軸力分布のグラフでは、軸力pSと深さの間に比例関係がある場合(すなわち、グラフ上、直線となる場合)を示している。また、逆打支柱20の各部の鉛直ひずみεSは、軸力pSに比例すると考えられる。このため、逆打支柱20の各深さにおける鉛直ひずみεSは図3のひずみ分布のグラフに示すように接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。さらに、逆打支柱20の鉛直変位δSは、鉛直ひずみεSの積分値であるため、図3の変位を示すグラフのように、接合部における最上部において最大となり、最下部において0となる。
【0025】
また、これと同様に、コンクリート杭30に作用する軸力は、図4の軸力分布のグラフに示すように、その最下部において最大となり、最上部において0となる。なお、上記の逆打支柱20の場合と同様に、図4の軸力分布のグラフでは、軸力pCと深さの間に比例関係がある場合(すなわち、グラフ上、直線となる場合)を示している。また、コンクリート杭30の各深さにおける鉛直ひずみεCは、図4のひずみ分布のグラフに示すように、その最下部において最大となり、最上部において0となる。コンクリート杭30の鉛直変位δCは、鉛直ひずみεCの積分値であるため、図4の変位を示すグラフのように、接合部における最下部において最大となり、最上部において0となる。
【0026】
ここで、スタッド21により伝達される単位長さあたりのせん断力は、コンクリート杭30と逆打支柱20のスタッド21により連結されている部分の相対変位に応じて決定され、相対変位が大きいほど伝達されるせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達されるせん断力は小さくなる。
【0027】
そこで、上記の逆打支柱20とコンクリート杭30のスタッド21により連結されている各要素の変位の差をとることにより相対変位を求めると、図5のグラフに示すように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の下端及び上端において、相対変位が最大となり、中間部において最小値をとることとなる。上記のようにスタッド21により伝達されるせん断力は、逆打支柱20とコンクリート杭30のスタッド21により連結されている部分の相対変位が大きいほど伝達されるせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達されるせん断力は小さくなるため、伝達されるせん断力も相対変位と同様に、接合部の下端及び杭の上端において最大となり、中間部において最小値をとることとなる。
【0028】
このように、逆打支柱20とコンクリート杭30のひずみを考慮して単位長さあたりのせん断力を算出すると、従来のように、所定の有効深さよりも深い位置において、せん断力が伝達されていないわけではなく、実際には所定の有効深さよりも深い位置を含む接合部の上端から下端までせん断力が伝達されていることがわかる。
【0029】
また、コンクリート杭30と逆打支柱20との付着により伝達される単位長さあたりのせん断力を考える場合、この付着により伝達される単位長さあたりのせん断力はコンクリート杭30と逆打支柱20との相対変位が大きいほど伝達される単位長さあたりのせん断力が大きく、相対変位が小さいほど伝達される単位長さあたりのせん断力は小さくなると考えられる。このため、上記のスタッド伝達される単位長さあたりのせん断力と同様に、コンクリート杭30と逆打支柱20との接合部の下端及び上端において最大となり、中間部において最小値をとることとなる。
【0030】
そこで、発明者らは、接合部の上端(コンクリート杭30の上端)からの深さxと、この深さxにおいてスタッド及び付着により逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力との関係を2次曲線により近似してモデル化することとした。
【0031】
深さxにおいて逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力をτ(x)[N/mm]とすると式(18)が成立する。
【数8】
ここで、Ntotalは、逆打支柱20に作用する総軸力[N]を示す。
【0032】
また、逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)は、スタッド21により伝達されるせん断力と、逆打支柱20からコンクリート杭30の付着力により伝達されるせん断力の和であるため、式(19)が成立する。
【数9】
なお、式中、qstud(x)は、深さxに設置されたスタッド21が負担するせん断力[N]、sは軸方向のスタッド21の間隔、τbond(x)は深さx[mm]における付着力により伝達される単位長さあたりのせん断力[N/mm]を示す。
【0033】
また、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の上端の高さ位置では、逆打支柱20に総軸力Ntotalが作用し、コンクリート杭30には軸力が作用しておらず、接合部の下端の高さ位置では、逆打支柱20に軸力が作用しておらず、コンクリート杭に総軸力Ntotalが作用しているので、式(20)〜(23)が成立する。
【数10】
なお、式中、Lは接合部の長さ[mm]を示す。
【0034】
一方、逆打支柱20及びコンクリート杭30の軸方向変位δS、δCは夫々式(24)、(25)のようになる。
【数11】
なお、式中、εS(x)、εC(x)は夫々深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30の軸方向ひずみ量[mm]、pS(x)、pC(x)は夫々深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30に作用する軸力[N]、AS(x)、AC(x)は、逆打支柱20及びコンクリート杭30の断面積[mm2]、ES(x)、EC(x)は、逆打支柱20及びコンクリート杭30のヤング係数[N/mm]を示す。
【0035】
また、スタッド21により伝達されるせん断力及び付着力により伝達される単位長さあたりのせん断力が相対変位に比例するとしてモデル化すると、式(26)、(27)が導かれる。
【数12】
なお、式中、Kstudは接合面における単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbondはせん断力に対する付着剛性[N/mm2]を示す。
【0036】
式(26)を微分すると式(28)が得られる。
【数13】
【0037】
ここで、上記のようにτ(x)を以下の式(29)により近似する。
【数14】
【0038】
この式に対して、(18)、式(20)〜(23)、及び式(28)により係数a、b、cを算出すると式(30)〜(32)のようになる。
【数15】
以上のようにして、各深さxにおけるスタッド21及び付着によりコンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を算出することができる。
【0039】
また、これに基づき、深さxにおける逆打支柱20及びコンクリート杭30に作用する軸力pS(x)、pC(x)を式(33)、(34)により算出することもできる。
【数16】
【0040】
これにより、逆打支柱20に作用する軸力Ntotalが与えられた場合には、スタッド21に作用するせん断力qstud(x)は式(35)により算出できる。
【数17】
【0041】
また、スタッド21のせん断耐力が与えられた場合には、上記の式(29)により算出されるτ(x)の最大値が、スタッド21のせん断耐力などに基づき算出される逆打支柱20及びコンクリート杭30の間のせん断強度τmaxと等しくなるような場合のNtotalを算出することで、かかる構成の逆打支柱20及びコンクリート杭30により支持可能な逆打支柱20に作用する軸力の最大値を算出することができる。
【0042】
この場合、上記のように、杭頭部において逆打支柱20とコンクリート杭30の間で伝達される単位長さあたりのせん断力が最大となるため、この部分においてスタッド21を介して伝達されるせん断力がスタッド21の最大せん断耐力Q3[N]と等しくなった際の逆打支柱20に作用する軸力がその最大値であるといえる。したがって、以下の式(36)が導かれる。
【数18】
【0043】
また、式(29)にx=0を代入することより以下の式(37)が導かれる。
【数19】
【0044】
したがって、逆打支柱20が負担することができる最大軸力N´total[N]は、以下の式(38)で算出できる。
【数20】
【0045】
以下、逆打支柱20からコンクリート杭30に伝達される単位長さあたりのせん断力について、数値解析(FEM)により算出した場合と、上記の方法により算出した場合とを比較することにより、上記の算出方法の妥当性を検討したので説明する。
【0046】
本検討では、図1に示したような逆打支柱20の下端がコンクリート杭30に埋設された接合部を単位長さあたりのせん断力を算出する対象とする。各部材の寸法及び特性は以下のとおりである。
<逆打支柱20>
断面 300×300×40×40[mm](すなわち、D=300)
圧縮強度 427[N/mm2]
ヤング係数 EC=1.89×105[N/mm2]
<コンクリート杭30>
径 1000[mm]
コンクリート:σB=31.6[N/mm2]
ヤング係数EC=3.05×104[N/mm2]
主筋:20−D25
σy=405[N/mm2]
ヤング係数ES=1.89×105[N/mm2]
帯筋:D13 150[mm]間隔
σwy=331[N/mm2]
ヤング係数ES=2.09×105[N/mm2]
<スタッド21>
φ22 150[mm]間隔
σy=347[N/mm2]
ヤング係数ES=2.09×105[N/mm2]
【0047】
なお、スタッド21の剛性はリンク要素により、スタッド21の剛性としては図6のグラフに破線で示すような四折れ点で示される特性を有するものとしてモデル化した。また、付着力はフィルム要素により、図7に示すような付着剛性を有するものとしてモデル化した。なお、図中には本実施形態の方法で用いているスタッド21の剛性及び付着剛性を夫々示す。
【0048】
解析条件としては図8に示すように、接合部の長さ(押込み長さ)を5D、7D、10Dとした各条件について、付着を考慮した場合と付着を考慮しない場合について検討を行った。なお、埋込み長さを5D、7D、10Dとした各場合における逆打支柱に作用させる軸力は、3500kN、4500kN、5500kNとしている。
【0049】
図9〜図11は付着を無視した(Kbond=0とした)場合(条件1〜3)の結果を示すグラフであり、図12〜図14は付着を考慮した場合(条件4〜6)の結果を示すグラフである。なお、図9及び図12は、コンクリート杭30のひずみ分布を示し、図10及び図13は、逆打支柱のひずみ分布を示し、図11及び図14は、スタッドの負担するせん断力を示す。
【0050】
図9及び図12に示すコンクリート杭30のひずみ分布は、接合部の最上部において最大となり、最下部において0となっており、発明者らが仮定した図4に示すコンクリート杭30の鉛直ひずみが妥当であることがわかる。
【0051】
これと同様に、図10及び図13に示す逆打支柱20のひずみ分布は、最上部において最大となり、最下部において0となっており、発明者らが仮定した図3に示す逆打支柱20の鉛直ひずみが妥当であることがわかる。
【0052】
そして、図11及び図14に示すように、数値解析により算出したせん断力は、本実施形態の方法により算出したせん断力と略一致しており、このことから、本実施形態の方法が妥当であるとともに、従来の方法における有効深さ(4D)よりも深い部分(本件等では(4D)を超えて(10D)以下の部分)においても単位長さあたりのせん断力が伝達されていることがわかる。すなわち、上記の各式におけるLは、L<Lmax(4D<Lmax≦10D)とすることができる。
【0053】
以下、従来の方法と比較しながら、上記の単位長さあたりのせん断力の算出方法を用いた逆打支柱とコンクリート杭の接合部の設計方法を説明する。なお、以下の実施例では、逆打支柱とコンクリート杭の付着剛性は考慮していない。
【0054】
まず、従来の手法により図15に示すような逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力を算出する場合について説明する。
従来の手法によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(39)により算出される。なお、従来の手法では有効な埋め込み深さLを鉄骨断面せいDの4倍として計算する。また、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さL=4m、逆打支柱の断面せいD=1m、スタッド21の最大せん断耐力Q3=10kN,スタッド21のピッチ200mmとする。
【数21】
【0055】
ここで、逆打支柱20に作用する軸力が250kNである場合を考える。このような場合には、逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上しなければならない。
このような場合には、従来の方法では、以下の方法により逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上していた。
【0056】
(1―1)逆打支柱20の鉄骨断面を増大させ、有効埋め込み深さを長くする。
例えば、図15に示すように、逆打支柱の断面せいDを1mから1.5mへ変更し、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さLを4mから6mへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は従来の手法によれば以下の式(40)のように向上できる。
【数22】
【0057】
(1−2)スタッド量を多くする(スタッド21の間隔を狭める、スタッド21に断面積が大きいものを用いる、スタッド12に高強度のものを用いる)。
例えば、図15に示すように、スタッド21の間隔を200mmから150mmへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(41)のように向上できる。
【数23】
【0058】
上記の(1−2)のようにスタッド量を多くする方法は、すでにスタッド21の間隔が非常に狭いように設計した場合などには適用できない。この場合には、(1−1)の方法を用いなければならず、逆打支柱の断面せいを大きくしなければならず、コスト高となってしまう。
【0059】
以下、上記の手法を用いた逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の設計方法を説明する。
これに対して本手法によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(42)により算出される。
【数24】
【0060】
このため、逆打支柱20が負担可能な最大軸力は以下の式(43)で算出することができる。
【数25】
【0061】
なお、AS=1000×30mm×2=0.06m2、AC=20002×π/4=3.14m2、ES=210000N/mm2、EC=30000N/mm2としている。
また、スタッド21は変形が1mmで最大せん断強度に達するとして、スタッドによる単位長さあたりのスタッドのせん断耐力Kstud=10kN/1mmより、K=10kN/1mm/200mm=50N/mm2となる。
【0062】
上記の場合と同様に、逆打支柱20に作用する軸力が250kNである場合を考える。このような場合には、逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上しなければならない。本実施形態では、以下の方法により逆打支柱20の負担可能な最大軸力を向上することができる。
【0063】
(2−1)スタッド量を多くする(スタッド21の間隔を狭める、スタッド21に断面積が大きいものを用いる、スタッド12に高強度のものを用いる)。
例えば、図15に示すように、スタッドのピッチを200mmから150mmへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(44)のように向上できる。
【数26】
【0064】
なお、本実施形態では、スタッド21の間隔を200mmから150mmを変更した場合について説明しているが、寸法(断面積)を大きいスタッドを用いたり、高強度のスタッドを用いたりすることによっても支持力を向上することができる。
【0065】
(2−2)逆打支柱の断面を変えずに、埋め込み深さを深くする。
例えば、図15に示すように、逆打支柱20のコンクリート杭30への埋め込み深さLを4mから6mへ変更する。これにより、逆打支柱20とコンクリート杭30との間で伝達可能なせん断力の最大値は以下の式(45)のように向上できる。
【数27】
【0066】
以上説明したように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部を計画する場合には、逆打支柱20のコンクリート杭30に埋設された部分の長さ(埋め込み深さ)L、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を設定するとともに、これらの条件以外の最大支持力Ntotalを算出するために必要な条件を設定する。
【0067】
次に、これら設定した条件における逆打支柱20とコンクリート杭30の間で伝達可能なせん断力の最大値を算出する。そして、算出したせん断力の最大値が逆打支柱20に作用する軸力以下の場合には、(2−1)又は(2−2)の方法により、逆打支柱20の埋め込み深さL、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を再設定する。なお、上記の実施例では、何れか一つの項目についてのみ、再設定を行った場合について説明したが、これに限らず、複数の項目を再設定してもよい。
【0068】
これらの工程を繰り返すことにより、算出したせん断力の最大値が逆打支柱20に作用する軸力を超えるような、埋め込み深さL、スタッド21の深さ方向の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を求めることにより、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の設計を行うことができる。
【0069】
なお、スタッド21の間隔s、スタッド21の強度及びスタッド21の断面を再設定する場合には、図16(A)に示すように、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の中間部Aは伝達される単位長さあたりのせん断力が小さいため、この部分Aのスタッド21の間隔sを狭める、この部分Aのスタッド21に高強度のものを用いる、又はこの部分Aのスタッド21に断面が大きいものを用いることとするとよい。これにより、図16(B)に示すように、深さによらず、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力のばらつきがなくなり、スムーズな応力の伝達が可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、逆打支柱20とコンクリート杭30の接合部の上端及び下端において中間部よりも大きな値となるように、二次関数によりせん断力を近似したため、実際の状況と適合し、精度良く伝達されるせん断力を算出することができる。
【0071】
また、このように実際の状況と適合する単位長さあたりのせん断力の算出方法を用いることで、従来の方法においてせん断力が作用していないとしていた有効深さよりも下方において、伝達されるせん断力を評価することができる。
【0072】
従来の方法を用いて設計を行う場合には、伝達されるせん断力が逆打支柱20に作用する軸力に比べて小さく、かつ、逆打支柱20に取り付けるスタッド21の間隔を狭められないような場合には、有効埋め込み深さを大きくするため、逆打支柱20の柱径を大きくしていた。これに対して、本実施形態によれば、逆打支柱の径を大きくしなくても、従来の有効深さよりも深い部分におけるせん断力の伝達を評価することができるため、より効率のよい設計が可能となる。
【0073】
なお、本実施形態では、スタッド21による単位長さあたりのせん断力の伝達と、コンクリート杭30と逆打支柱20の付着によるせん断力の伝達とを合わせて評価する場合について説明したが、これに限らず、スタッド21によるせん断力の伝達のみを評価することもできる。この場合には、式(27)における付着剛性Kbondを0とすればよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を近似する曲線として二次関数を用いたが、これに限らず、多次関数曲線やその他の曲線でも近似することができ、要するに、コンクリート杭30と逆打支柱20との接合部において、中間部に比べて上端及び下端高さにおける単位長さあたりのせん断力が大きくなるような曲線であればよい。
また、本実施形態では、逆打ち支柱としてクロスH鋼を用いた場合を説明したが、これに限らず、図17(A)に示すような鋼管40を用いた場合や、図17(B)に示すようにH型鋼41を用いた場合であっても、本発明を適用できる。なお、鋼管40を用いる場合には、内部にコンクリートを充填してもよいし、中空にしてもよい。
【0075】
また、本実施形態では、コンクリート杭30と逆打支柱20との間で伝達される単位長さあたりのせん断力を算出する場合について説明したがこれに限らず、コンクリート部材と鋼材との接合端面においてせん断力が作用する場合であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】逆打支柱とコンクリート杭との接合部を示す図であり、(A)は鉛直断面図、(B)は内部の構成を示すべく鉄筋かごを省略した鉛直断面図、(C)は水平断面図である。
【図2】逆打支柱とコンクリート杭との間でスタッドを介してせん断力が伝達される機構を示す図である。
【図3】逆打支柱に軸力が作用した際の、逆打支柱に作用する軸力、ひずみ、及び変位を示す図である。
【図4】逆打支柱に軸力が作用した際の、コンクリート杭に作用する軸力、ひずみ、及び変位を示す図である。
【図5】逆打支柱に軸力が作用した際の、コンクリート杭と逆打支柱の相対変位、及び単位長さあたりのせん断力を示す図である。
【図6】数値解析において設定したスタッドの剛性を示すグラフである。
【図7】数値解析において設定した付着剛性を示すグラフである。
【図8】数値解析の条件を示す表である。
【図9】条件1〜3におけるコンクリート杭のひずみ分布を示すグラフである。
【図10】条件1〜3における逆打支柱のひずみ分布を示すグラフである。
【図11】条件1〜3におけるスタッドの負担するせん断力を示すグラフである。
【図12】条件4〜6におけるコンクリート杭のひずみ分布を示すグラフである。
【図13】条件4〜6における逆打支柱のひずみ分布を示すグラフである。
【図14】条件4〜6におけるスタッドの負担するせん断力を示すグラフである。
【図15】逆打支柱の支持力を向上する方法を示す図である。
【図16】(A)はスタッドの配置を再設定する場合にスタッドの径を大きくする又は取り付け間隔を狭めるとよい部分を示す図であり、(B)は中間部のスタッドの径を大きくする又は取り付け間隔を狭めた場合の単位長さあたりのせん断力の分布を示すグラフである。
【図17】(A)は逆打支柱として用いられ鋼管を示す水平断面図であり、(B)はH型鋼を示す水平断面図である。
【符号の説明】
【0077】
20 逆打支柱
21 スタッド
30 コンクリート杭
31 コンクリート
50 機構
51 コンクリート杭を示す要素
52 逆打支柱を示す要素
53 スタッドを示す要素
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]を、
前記鋼材の軸剛性ASESと、前記コンクリート部材の軸剛性ACECと、前記鋼材と前記コンクリート部材との接合面におけるせん断剛性K[N/mm2]と、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長L[mm]と、に基づき、係数a、b、cが決定される式(1)に基づき算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数1】
【請求項2】
請求項1記載のせん断力分布の算出方法であって、前記係数a、b、cを式(2)〜(4)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数2】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【請求項3】
請求項1又は2記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、
前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、
前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(5)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数3】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であることを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【請求項5】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力が作用した際の最大せん断耐力を算出する方法であって、
所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、
前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、鋼材とコンクリート部材との接合面における前記最大せん断耐力を算出することを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【請求項6】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力を算出する方法であって、
前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に作用する、以下の式(6)〜(9)により算出される前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度τmaxと等しくなるような軸力Ntotal[N]を算出し、当該算出した軸力Ntotal[N]を最大せん断耐力とすることを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【数4】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【請求項7】
請求項6記載の最大せん断耐力の算出方法であって、
前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、
前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、
前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(10)で算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【数5】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【請求項8】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力Ntotal[N]を以下の式(11)〜(12)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【数6】
Q3:スタッドの最大せん断耐力[N]、L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【請求項9】
請求項6から8何れか1項に記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であることを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【請求項10】
請求項6から9何れか1項に記載の最大せん断耐力の算出方法であって、
前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長Lを、前記鋼材の径をDとした場合に、L≦Lmax(4D<Lmax≦10D)として、前記軸力Ntotal[N]を算出することを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【請求項11】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力が作用した際に、前記スタッドに作用するせん断力を算出する方法であって、
前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記単位長さあたりのせん断力により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度と等しくなるように近似し、
前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、前記鋼材に設けられた前記スタッドに作用するせん断力を算出することを特徴とするスタッドに作用するせん断力を算出する方法。
【請求項12】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記コンクリート杭の上面高さからの深さx[mm]における前記スタッドに作用するせん断力qstud(x)[N]を式(13)〜(17)により算出することを特徴とするスタッドに作用するせん断力の算出方法。
【数7】
L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【請求項13】
逆打支柱の下端がコンクリート杭に埋設されてなる逆打支柱の支持構造であって、
請求項9記載の方法により算出される最大せん断耐力が、前記逆打支柱に作用する軸力よりも大きくなるように設計されたことを特徴とする逆打支柱の支持構造。
【請求項14】
請求項13記載の逆打支柱の支持構造であって、
前記逆打支柱の前記コンクリート杭への埋設長さがLmax(4D<Lmax≦10D)以下であることを特徴とする逆打支柱の支持構造。
【請求項1】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]を、
前記鋼材の軸剛性ASESと、前記コンクリート部材の軸剛性ACECと、前記鋼材と前記コンクリート部材との接合面におけるせん断剛性K[N/mm2]と、前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長L[mm]と、に基づき、係数a、b、cが決定される式(1)に基づき算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数1】
【請求項2】
請求項1記載のせん断力分布の算出方法であって、前記係数a、b、cを式(2)〜(4)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数2】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【請求項3】
請求項1又は2記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、
前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、
前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(5)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【数3】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか1項に記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であることを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面におけるせん断力分布の算出方法。
【請求項5】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面において、前記接合面に沿ってせん断力が作用した際の最大せん断耐力を算出する方法であって、
所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記接合面における前記単位長さあたりのせん断力の最大値が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性と等しくなるように、前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を近似し、
前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、鋼材とコンクリート部材との接合面における前記最大せん断耐力を算出することを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【請求項6】
鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力を算出する方法であって、
前記接合面に沿ってせん断力Ntotal[N]が作用した際に作用する、以下の式(6)〜(9)により算出される前記せん断力の作用方向の前記接合面の端部からの距離x[mm]における前記鋼材と前記コンクリート部材との間で伝達される単位長さあたりのせん断力τ(x)[N/mm]により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度τmaxと等しくなるような軸力Ntotal[N]を算出し、当該算出した軸力Ntotal[N]を最大せん断耐力とすることを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【数4】
L:前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長[mm]、AS:前記せん断力と鉛直方向の前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記せん断力と鉛直方向の前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、K:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性[N/mm2]
【請求項7】
請求項6記載の最大せん断耐力の算出方法であって、
前記鋼材の前記接合面にはスタッドが設けられており、
前記スタッドが埋め込まれるように前記コンクリート部材は構築されており、
前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断剛性Kを以下の式(10)で算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【数5】
Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの前記せん断力の作用方向の間隔[mm]
【請求項8】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材との接合面における最大せん断耐力Ntotal[N]を以下の式(11)〜(12)により算出することを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【数6】
Q3:スタッドの最大せん断耐力[N]、L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数[N/mm]、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【請求項9】
請求項6から8何れか1項に記載のせん断力分布の算出方法であって、
前記鋼材は逆打支柱であり、前記コンクリート部材は前記逆打支柱の下端が埋設されたコンクリート杭であることを特徴とする鋼材とコンクリート部材の接合面における最大せん断耐力の算出方法。
【請求項10】
請求項6から9何れか1項に記載の最大せん断耐力の算出方法であって、
前記せん断力が作用する方向の前記接合面の全長Lを、前記鋼材の径をDとした場合に、L≦Lmax(4D<Lmax≦10D)として、前記軸力Ntotal[N]を算出することを特徴とする最大せん断耐力の算出方法。
【請求項11】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力が作用した際に、前記スタッドに作用するせん断力を算出する方法であって、
前記せん断力が作用する方向の前記単位長さあたりのせん断力の分布を、所定の区間の両端部における値が中間部における値よりも大きくなるような関数により、前記単位長さあたりのせん断力により求められる前記接合面における最大せん断応力が、前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断強度と等しくなるように近似し、
前記近似した単位長さあたりのせん断力の分布に基づき、前記鋼材に設けられた前記スタッドに作用するせん断力を算出することを特徴とするスタッドに作用するせん断力を算出する方法。
【請求項12】
表面にスタッドが設けられた鋼材と、前記鋼材と一体となるように構築されたコンクリート部材の接合面にせん断力Ntotal[N]が作用した際に、前記コンクリート杭の上面高さからの深さx[mm]における前記スタッドに作用するせん断力qstud(x)[N]を式(13)〜(17)により算出することを特徴とするスタッドに作用するせん断力の算出方法。
【数7】
L:前記鋼材が前記コンクリート部材に埋設された部分の長さ[mm]、AS:前記鋼材の断面積[mm2]、ES:前記鋼材のヤング係数[N/mm]、AC:前記コンクリート部材の断面積[mm2]、EC:前記コンクリート部材のヤング係数、Kstud:前記接合面の単位長さあたりのスタッドのせん断耐力[N/mm]、Kbond:前記鋼材と前記コンクリート部材のせん断力に対する付着剛性[N/mm2]、s:スタッドの深さ方向の間隔[mm]
【請求項13】
逆打支柱の下端がコンクリート杭に埋設されてなる逆打支柱の支持構造であって、
請求項9記載の方法により算出される最大せん断耐力が、前記逆打支柱に作用する軸力よりも大きくなるように設計されたことを特徴とする逆打支柱の支持構造。
【請求項14】
請求項13記載の逆打支柱の支持構造であって、
前記逆打支柱の前記コンクリート杭への埋設長さがLmax(4D<Lmax≦10D)以下であることを特徴とする逆打支柱の支持構造。
【図8】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−25583(P2010−25583A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−184102(P2008−184102)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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