説明

鋼板異物除去方法

【課題】鋼板を冷間圧延するに際して、鋼板に付着した異物を効率的に除去することができる鋼板異物除去方法を提供する。
【解決手段】冷間タンデム圧延機15の入側(入側ブライドルロール14の上流側)に、非駆動式の直線ブラシを備えた直線ブラシ装置20を設置して、その直線ブラシ装置20によって、鋼板1に付着した異物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板を冷間圧延するに際して、鋼板に付着した異物を除去するための鋼板異物除去方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼板(主に薄物缶用鋼板)を冷間圧延するに際して、鋼板に異物が付着した状態で冷間圧延を行うと、鋼板に異物が噛込んで穴あき欠陥(ピンホール)が発生する場合がある。そこで、冷間圧延される前に、鋼板に付着した異物を除去する必要がある。
【0003】
鋼板から異物を除去する方法としては、一般的に、冷間圧延機の入側で鋼板にエアーなどの流体を吹き付けることで、鋼板から異物を除去する方法が実施されている。
【0004】
また、機械的に異物を除去する方法としては、冷間圧延機の入側に樹脂製の毛材を用いた回転ブラシを設置し、回転ブラシで異物を除去する方法をとっている例もある。
【0005】
例えば、特許文献1には、調質圧延機の入側でエア吸引室内で回転する樹脂製のブラシロールを使用して鋼板から異物を除去し、除去した異物を吸引設備で吸引することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−254294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に行われている、鋼板にエアーを吹き付けることによって異物を除去する方法では、充分に異物を除去することができない場合がある。
【0008】
一方、特許文献1に認められるようなブラシロール(回転ブラシ)を設置する異物除去方法では、設備が大規模となるため、製造コストが大きくなり、また、設置スペースが必要であることから、既設の設備においては、設置場所が限定されることとなる。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼板を冷間圧延するに際して、鋼板に付着した異物を効率的に除去することができる鋼板異物除去方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0011】
[1]鋼板を冷間圧延するに際して、冷間圧延機の入側に非駆動式の直線ブラシを設置して、その非駆動式の直線ブラシによって、鋼板に付着した異物を除去することを特徴とする鋼板異物除去方法。
【0012】
[2]前記直線ブラシが、上面側直線ブラシと下面側直線ブラシであって、直線ブラシ装置に設置されており、その直線ブラシ装置は、前記上面側直線ブラシおよびその上面側直線ブラシを取り付ける上面側支持部材と、前記下面側直線ブラシおよびその下面側直線ブラシを取り付ける下面側支持部材と、該上面側支持部材および該下面側支持部材を固定する全体支持部材とを有し、上面側支持部材および下面側支持部材が、全体支持部材に対する位置を調整できる位置調整手段を有していることを特徴とする前記[1]に記載の鋼板異物除去方法。
【0013】
[3]鋼板を冷間圧延するに際して、冷間圧延機の入側に設置して、鋼板に付着した異物を除去する鋼板異物除去装置であって、非駆動式の上面側直線ブラシおよびその上面側直線ブラシを取り付ける上面側支持部材と、非駆動式の下面側直線ブラシおよびその下面側直線ブラシを取り付ける下面側支持部材と、該上面側支持部材および該下面側支持部材を固定する全体支持部材とを有し、上面側支持部材および下面側支持部材が、全体支持部材に対する位置を調整できる位置調整手段を有していることを特徴とする鋼板異物除去装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、鋼板を冷間圧延するに際して、鋼板に付着した異物を効率的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における冷間圧延ラインを示す図である。
【図2】本発明の実施形態1を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2を示す図である。
【図5】本発明の実施例1における異物除去効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態における冷間圧延ラインを示す図である。図1に示すように、この実施形態における冷間圧延ライン10は、鋼板1を冷間圧延するために、上流側から順に、ペイオフリール11と、溶接機12と、入側ルーパー13と、入側ブライドルロール14と、6スタンドの冷間タンデム圧延機15と、出側ブライドルロール16と、テンションリール17とを備えている。
【0018】
そして、この実施形態においては、冷間タンデム圧延機15の入側(入側ブライドルロール14の上流側)に、非駆動式の直線ブラシを備えた直線ブラシ装置20を設置して、その直線ブラシ装置20によって、鋼板1に付着した異物を除去するようにしている。
【0019】
なお、直線ブラシ装置の設置場所は冷間圧延機の入側であれば特に限定されるものではなく、例えば前記入側ブライドルロールの出側に設置してもよい。冷間圧延前の異物除去という観点から、冷間圧延機に近い場所に設置することが好ましい。
【0020】
この直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)20の具体的な実施形態を以下に実施形態1、2として示す。
【0021】
(実施形態1)
図2は、本発明の実施形態1における直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)20Aを示すものである。
【0022】
図2に示すように、この実施形態1における直線ブラシ装置20Aは、鋼板1の上面側に付着した異物を除去するための上面側直線ブラシ21と、鋼板1の下面側に付着した異物を除去するための下面側直線ブラシ22とを備えている。
【0023】
そして、上記一対の上面側直線ブラシ21と下面側直線ブラシ22は非駆動式の直線ブラシであり、上面側直線ブラシ21は上面側直線ブラシ支持部材23に固定され、下面側直線ブラシ22は下面側直線ブラシ支持部材24に固定されており、さらに、上面側直線ブラシ支持部材23と下面側直線ブラシ支持部材24は全体支持部材25に固定されている。
【0024】
なお、上面側直線ブラシ支持部材23と下面側直線ブラシ支持部材24は、それぞれブラシ固定位置を高さ方向に変更できるブラシ位置調整手段を有している。ブラシ位置調整手段としては、例えば上面側直線ブラシ支持部材23と下面側直線ブラシ支持部材24を全体支持部材25にボルトの締め付けにて固定する場合、そのボルトを固定する位置を調整できるようにしておけばよい。図2では、上面側直線ブラシ支持部材23、下面側直線ブラシ支持部材24をボルト(図示せず)の締め付けにて固定する際に、上下方向に長い長穴形状のボルト穴31を用いることによって、上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22の高さ位置を変更できるようにしている状態を示している。
【0025】
そして、上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22は使用により磨耗して、ブラシ毛材の長さが短くなるが、ブラシ位置調整手段により、上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22の鋼板1への接触状態を容易に調整することができる。また、板厚や材質に応じて上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22の鋼板1への接触状態を調整することもできる。
【0026】
ここで、上面側直線ブラシ21と下面側直線ブラシ22のブラシ毛材については、材質は耐久性・耐食性の観点からステンレス(例えばSUS304)としている。また、線径は、太すぎると鋼板1に疵が発生する場合があるため、φ0.15mm以下としている。
【0027】
このようにして、本発明の実施形態1においては、冷間圧延機15の入側に、非駆動式の直線ブラシ(上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22)を備えた直線ブラシ装置20Aを設置することによって、鋼板1に付着した異物の除去効果が向上し、異物噛込みによる穴あき欠陥(ピンホール)を減少することが可能になるとともに、前記特許文献1のような回転ブラシを設置する場合に比べて、ブラシの駆動機構等が不要であり、製造コストの低減を図ることができるとともに、その設置場所に対する制限も小さい。
【0028】
(実施形態2)
図3、図4は、本発明の実施形態2における直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)20Bを示すものである。図3は側面図、図4は要部の正面図である。
【0029】
図3、図4に示すように、この実施形態2における直線ブラシ装置20Bの基本的な構成は、上記の実施形態1における直線ブラシ装置20Aと同様であり、鋼板1の上面側に付着した異物を除去するための非駆動式の上面側直線ブラシ21と、鋼板1の下面側に付着した異物を除去するための非駆動式の下面側直線ブラシ22とを備えている。
【0030】
そして、上面側直線ブラシ21は上面側直線ブラシ支持部材23に固定され、下面側直線ブラシ22は下面側直線ブラシ支持部材24に固定されており、さらに、上面側直線ブラシ支持部材23と下面側直線ブラシ支持部材24は全体支持部材25に固定されている。
【0031】
その上で、この実施形態2における直線ブラシ装置20Bにおいては、全体支持部材25がハウジング26内に組み込まれているとともに、ブラシ高さ調整手段としてジャッキ機構を有し、上面側直線ブラシ21の高さ位置を調整するためのジャッキハンドルである上面側直線ブラシ高さ調整ハンドル27が上面側直線ブラシ支持部材23に取り付けられており、下面側直線ブラシ22の高さ位置を調整するためのジャッキハンドルである下面側直線ブラシ高さ調整ハンドル28が下面側直線ブラシ支持部材24に取り付けられている。
【0032】
これによって、鋼板1の板厚や材質に応じて、上面側直線ブラシ高さ調整ハンドル27と下面側直線ブラシ高さ調整ハンドル28のハンドル操作により、上面側直線ブラシ21と下面側直線ブラシ22の高さ位置を適切な位置に調整することができる。
【0033】
なお、ブラシ高さ調整手段としては、上記に限定されるものではなく、例えば上面側直線ブラシ支持部材23および下面側直線ブラシ支持部材24を全体支持部材25にボルトの締め付けにて固定する場合、該ボルトを固定する位置を全体支持部材25において調整できるようにしてもよい。
【0034】
また、全体支持部材25の下部には車輪29が取り付けられていて、台車構造となっており、必要に応じて、上面側直線ブラシ21や下面側直線ブラシ22等を一体にして全体支持部材25をハウジング26内からオフライン(冷間圧延機15等の駆動側)に抜き出すことができるようになっている。
【0035】
これによって、上面側直線ブラシ21や下面側直線ブラシ22の修理・交換等をオフラインで実施することができる。
【0036】
さらに、ハウジング26自体を台車構造としてもよい。ハウジング26自体を台車構造とすることで、直線ブラシ装置20Bの設置位置を自由に変更することもできる。
【0037】
また、直線ブラシ装置20Bの下流側にはエアー吹き付け装置を設置してもよい。直線ブラシ装置20Bによって除去された後も鋼板1上に乗っている異物があった場合は、これを鋼板1上から吹き飛ばすようにすることができる。
【0038】
このようにして、本発明の実施形態2においては、冷間圧延機15の入側に、非駆動式の直線ブラシ(上面側直線ブラシ21、下面側直線ブラシ22)を備えた直線ブラシ装置20Bを設置することによって、鋼板1に付着した異物の除去効果が向上し、異物噛込みによる穴あき欠陥(ピンホール)を減少することが可能になるとともに、前記特許文献1のような回転ブラシを設置する場合に比べて、ブラシの駆動機構等が不要であり、設備投資費用の低減を図ることができる。
【実施例1】
【0039】
本発明の実施例1として、図1に示した冷間圧延ライン10において、鋼板(ブリキ原板および亜鉛メッキ原板)の冷間圧延を行った。
【0040】
その際に、冷間圧延機15の入側に上記の実施形態1の直線ブラシ装置20Aを設置して鋼板1から異物を除去した場合を本発明例とした。なお、直線ブラシ21、22のブラシ毛材としては、SUS304製のφ0.1mmとした。一方、比較のために、直線ブラシ装置20は設置せずに、従来のように、冷間圧延機15の入側で鋼板1にエアーを吹き付けて鋼板1から異物を除去した場合を従来例とした。
【0041】
その結果を図5に示す。なお、図5では、1コイル当りのピンホールの発生個数をピンホール発生頻度として、ピンホールの発生頻度を求め、従来例におけるピンホールの発生頻度を100として、本発明例のピンホールの発生頻度を示している。図5に示すように、従来例と比較して、本発明例ではピンホール発生頻度が76となり、ピンホール発生頻度が24%低減した。
【符号の説明】
【0042】
1 鋼板
10 冷間圧延ライン
11 ペイオフリール
12 溶接機
13 入側ルーパー
14 入側ブライドルロール
15 冷間タンデム圧延機
16 出側ブライドルロール
17 テンションリール
20 直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)
20A 直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)
20B 直線ブラシ装置(鋼板異物除去装置)
21 上面側直線ブラシ
22 下面側直線ブラシ
23 上面側直線ブラシ支持部材
24 下面側直線ブラシ支持部材
25 全体支持部材
26 ハウジング
27 上面側直線ブラシ高さ調整ハンドル
28 下面側直線ブラシ高さ調整ハンドル
29 車輪
31 ボルト穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板を冷間圧延するに際して、冷間圧延機の入側に非駆動式の直線ブラシを設置して、その非駆動式の直線ブラシによって、鋼板に付着した異物を除去することを特徴とする鋼板異物除去方法。
【請求項2】
前記直線ブラシが、上面側直線ブラシと下面側直線ブラシであって、直線ブラシ装置に設置されており、その直線ブラシ装置は、前記上面側直線ブラシおよびその上面側直線ブラシを取り付ける上面側支持部材と、前記下面側直線ブラシおよびその下面側直線ブラシを取り付ける下面側支持部材と、該上面側支持部材および該下面側支持部材を固定する全体支持部材とを有し、上面側支持部材および下面側支持部材が、全体支持部材に対する位置を調整できる位置調整手段を有していることを特徴とする請求項1に記載の鋼板異物除去方法。
【請求項3】
鋼板を冷間圧延するに際して、冷間圧延機の入側に設置して、鋼板に付着した異物を除去する鋼板異物除去装置であって、非駆動式の上面側直線ブラシおよびその上面側直線ブラシを取り付ける上面側支持部材と、非駆動式の下面側直線ブラシおよびその下面側直線ブラシを取り付ける下面側支持部材と、該上面側支持部材および該下面側支持部材を固定する全体支持部材とを有し、上面側支持部材および下面側支持部材が、全体支持部材に対する位置を調整できる位置調整手段を有していることを特徴とする鋼板異物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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