鋼矢板及びその製造方法
【課題】鋼矢板の全体断面の変形を抑制し、安定した打設性を発揮し、くり返し打設性にも優れた鋼矢板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブ3とこれに接続するフランジ2,4との屈曲接続部の隅角部6であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部6が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められている鋼矢板とする。鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部6a又は継手部5aの熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理である鋼矢板の製造方法とする。又は、前記熱処理が、水冷後、焼き戻しする処理である鋼矢板の製造方法とする。
【解決手段】鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブ3とこれに接続するフランジ2,4との屈曲接続部の隅角部6であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部6が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められている鋼矢板とする。鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部6a又は継手部5aの熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理である鋼矢板の製造方法とする。又は、前記熱処理が、水冷後、焼き戻しする処理である鋼矢板の製造方法とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野における土留め、基礎構造、港湾河川の護岸・岸壁、さらには止水壁に用いる構造部材用の鋼矢板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図16に示すように、接続用フランジ2の両端に一対のウェブ3が対称に屈曲連設され、前記ウェブ3の他端に継手側フランジ4が連設されると共に、その継手側フランジ4の先端に継手部5を有する形態の鋼矢板1B,1C(断面ハット形の鋼矢板)が知られている。
【0003】
また、図17に示すように、接続用フランジ2の両端に一対のウェブ3が対称に屈曲連設され、前記ウェブ3の他端に継手部5を有する断面U字状の鋼矢板1B、1Cも知られている。
【0004】
さらに、図18に示すように、接続用ウェブ3の両端に一対の継手側フランジ4が連設されると共に、その継手側フランジ4の先端に継手部5を有する断面Z字状の鋼矢板1Dも知られている。
【0005】
さらに、図19に示すように、図18に示すような断面Z字状の鋼矢板1Dを継手5相互をかみ合わせて2枚組み合わせると共に、継手嵌合部7を固定して、図16に示すような断面形態の鋼矢板1B、1Cと同様な鋼矢板1Eとすることも知られている。
【0006】
図16〜図19に示すような従来の鋼矢板では、鋼矢板の打ち込み、引き抜き、或いはくり返しの打ち込みと引き抜きによって、鋼矢板のウェブ3と接続用フランジ2との屈曲接続部、あるいは、ウェブ3と継手側フランジ4との屈曲接続部である隅角部6が、図20〜図22に示すように開くように変形することが知られている。
前記のように、ウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開くようになると、土留め壁等とした用いた場合の壁厚方向の高さ寸法が小さくなることから、断面2次モーメントが格段に小さくなり、土留め壁等として用いた壁体に水平力が作用した場合、設計上期待する曲げ剛性を得ることができなくなる。
前記のウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開く変形は、鋼矢板の曲げ剛性低下を招き、土留め壁として用いた場合の安全性にも影響する因子であることから、前記の変形に伴う曲げ剛性低下を極力なくすことが必要になる。
前記の隅角部6の変形を抑制するために、ウェブとフランジとの屈曲接続部の隅角部の板厚を厚くすることにより、変形を抑制する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来技術では、隅角部の板厚を厚くすることにより変形を抑制するものであるが、その分、使用鋼材重量が多くなるという問題がある。
【0007】
また、鋼矢板の打設時には、鋼矢板内部に土砂がつまることが原因となって継手が変形していくことが知られ、鋼矢板の継手を局所的に熱処理して強度を増加させた鋼矢板とする技術がある(例えば、特許文献2、3参照)。
例えば、特許文献3の技術では、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制するものであり、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できない。
【0008】
また、鋼矢板の継手は、地盤内への打設の際に変形することが知られ、くり返して打設した場合は、その変形が累積され、継手形状から決まる断面剛性を大きくする技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
このように、継手剛性を大きくすることによって継手の変形を抑制するようにした場合には、継手断面が大きくなり、使用する鋼材が多くなり重量が重くなる。
【0009】
なお、鋼管杭の杭頭部を部分的に高周波誘導加熱によって強度を高める技術もある(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−155896号公報、段落0008
【特許文献2】特公平2−26015号公報
【特許文献3】特公平06−94654号公報
【特許文献4】特開2009−155897、段落0006
【特許文献5】特開2009−197472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記従来の場合は、隅角部の板厚を厚くすることにより変形を抑制するものであるが、その分、使用鋼材量が多くなるという問題があった。
また、鋼矢板の継手を局所的に熱処理して強度を増加させ、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制しても、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できないという問題があった。
本発明は、使用鋼材量を多くすることなく、鋼矢板の打込み時及び引抜き時に変形しやすい隅角部の強度を高めることによって、鋼矢板の全体断面の変形を抑制し、安定した打設性を発揮し、くり返し打設性にも優れた鋼矢板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の鋼矢板では、鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の鋼矢板において、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて熱処理されることにより、一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする。
第3発明では、第1又は第2発明の鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする。
第4明では、第1〜第3発明のいずれかの鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする。
また、第7発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする。
また、第8発明の鋼矢板の製造方法では、第1〜7発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする。
また、第9発明の鋼矢板の製造方法ではでは、第1〜7発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、熱処理によって隅角部又は隅角部と継手部の強度を高めて、鋼矢板断面及び使用鋼材重量を増大させることなく、鋼矢板断面形態の変形が少ない鋼矢板とすることができ、また、施工時において、打設性に優れ、硬い地盤への打ち込み等の厳しい施工条件や、くり返し打設時にも耐えうる堅牢な鋼矢板とすることができる等の効果が得られる。
また、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高める範囲は、鋼矢板長手方向全長でもよいし、特に変形の生じやすい先端部(鋼矢板の先端「打設時に下端となる側」から鋼矢板の有効幅(W)の5倍程度以下までの部分的な範囲)であってもよいので、使用場所に応じて、適宜設計することができ、また、工場又は現場において、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を鋼矢板の長手方向の所定の範囲、熱処理して、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高めることができると共にじん性の確保も可能となる。また、本発明の鋼矢板の製造方法は、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を熱処理するだけであるので、簡単な方法で容易である等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す図である。
【図3】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の鋼矢板であり、図1の正面図である。
【図4】隅角部及び継手部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の第1変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図5】隅角部又は隅角部及び継手部を熱処理した第1実施形態の第2変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図6】隅角部又は隅角部及び継手部を熱処理した第1実施形態の第3変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図7】本発明の第2実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図8】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第2実施形態の鋼矢板であり、図7の正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図10】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第2実施形態の鋼矢板であり、図7の正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図12】(a)及び(b)は、U字状鋼矢板の具体例を示す図である。
【図13】(c)及び(d)は、U字状鋼矢板の他の具体例を示す図である。
【図14】(e)及び(f)は、U字状鋼矢板のさらに他の具体例を示す図である。
【図15】(a)及び(b)は、断面ハット形の鋼矢板の具体例を示す図である。
【図16】従来の断面ハット形の鋼矢板を示す図である。
【図17】従来の断面U字状鋼矢板を示す図である。
【図18】従来の断面Z字状鋼矢板を示す図である。
【図19】図18に示す断面Z字状鋼矢板を2枚組み合わせて断面ハット形の鋼矢板とした形態を示す図である。
【図20】従来の断面ハット形の鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【図21】従来の断面U字状鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【図22】断面Z字状鋼矢板を2枚組み合わせた従来の断面ハット形の鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
なお、本発明では、地盤に打設した鋼矢板の壁体と並行となる部分で、ウェブ相互を接続する部分を接続用フランジとして説明する。また、接続用フランジに平行で、継手部に接続する部分を継手側フランジとして説明する。
【0017】
図1〜図3には、本発明の第1実施形態の鋼矢板1が示されている。図1は断面図、図2は図1の一部を拡大して示す図である。図3は図1の正面図である。
【0018】
図示形態の第1実施形態の鋼矢板1は、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、前記接続用フランジ2に平行に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4の先端部に継手部5が設けられ、左右の継手部のうち、一方の継手部5と、他方の継手部5は、点対称の形状となるようにされている。
【0019】
そして、本発明の鋼矢板では、鋼矢板におけるウェブ3とこれに接続するフランジ2,4との屈曲接続部である隅角部6であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部6が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部6の部分が、鋼矢板の他の部分に比べて強度が高められている隅角部6aを備えた鋼矢板とされている。
強度を高めた前記隅角部6aを設ける場合には、鋼矢板1における一つ又は複数の隅角部6の内、少なくとも一つ又は複数の隅角部6を熱処理して、他の部分に比べて強度を高めるようにしてもよい。
【0020】
隅角部6を熱処理する場合に、鋼矢板1の全長の隅角部6を熱処理に渡って、強度を高めるようにしてもよく、鋼矢板長手方向(鋼矢板の長さ方向)の先端部或いは先端部と中間部の部分を、部分的に熱処理して強度を高めるようにしてもよい。
また、隅角部6を熱処理する場合に、隅角部6に接続する側の接続用フランジ2の巾方向の一部、あるいは隅角部6に接続する側のウェブ3の巾方向の一部を、隅角部6の熱処理と同時に熱処理を行うことができる。隅角部6に接続する継手側フランジ4における隅角部6側の巾方向の一部も、前記と同様に熱処理して行うことができる。
隅角部6に接続する側のウェブ3又はフランジ2,4の巾方向の一部を熱処理する場合の巾寸法については、鋼矢板全体の強度を加味して、設計により設定される。
【0021】
前記のように、矢板の長手方向で、地盤または地中の土砂等に最初に接触する鋼矢板先端部の隅角部6(6a)の強度が向上されていると、鋼矢板先端部の拡開を防止できるため、これに続く鋼矢板長手方向中間部よりの拡開を防止することができる。
【0022】
前記の隅角部6の熱処理は、工場において、熱間圧延加工時に、オンラインで行ってもよく、既製品の鋼矢板の隅角部6を加熱した後、熱処理して、隅角部6の部分を、鋼矢板の他の部分に比べて強度を高めるようにしてもよい。
【0023】
前記の鋼矢板1では、先端から上方に向かって鋼矢板の全長に亘って熱処理されている。強度を高めるための熱処理は、例えば高周波誘導加熱によって行われる。高周波焼き入れとは、加熱コイルに高周波の電流を付加して行う高周波誘導加熱で、加熱コイル(電流を付加した導線)に、加熱対象金属を近づけて電磁誘導を利用して加熱する方法であり、鋼矢板1の隅角部6の温度を変態点以上(例えば、1,000℃〜1,100℃、例えば、1050℃)まで誘導加熱し、その後、水冷により冷却することによって、鋼矢板1の隅角部6を焼き入れ処理することである。工場等において高周波誘導加熱を行い、その後、水冷し、強度を高める方法、もしくは高周波誘導加熱後、水冷し、その後600℃以下の温度で焼き戻しすることにより、強度の向上と共にじん性の確保も可能となり、強度、低温靭性などの品質・信頼性の高い鋼矢板1を製造することが可能である。
前記の鋼矢板の高周波誘導加熱は、熱間加工により鋼矢板を製造しているオンライン上で行う場合には、隅角部6を除く部分の材質が定まった後、隅角部6を加熱して、水冷することにより冷却する。
前記のような高周波誘導加熱は、工場においては、容易に行うことができるが、現場においも、隅角部6をガスバーナー等により加熱し、水冷により冷却して焼き入れしたり、水冷後、600℃以下の温度で焼き戻しすることにより、強度の向上と共にじん性の確保も可能な新規な鋼矢板とすることができる。
【0024】
次に、本発明のように隅角部の強度を高めた場合の利点について、図12(a)(b)〜図15(a)(b)に示す既存の鋼矢板(単位:mm)を例にして説明する。
【0025】
鋼矢板の型式は、例えば、図12(a)(b)〜図15(a)(b)及び下記表1、2に示すものがある。鋼矢板の断面が大きくなれば、より硬い地盤への打ち込みが可能となり、また、より深く地盤内に打ち込むことも可能となる。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
例えば、地盤が硬いあるいは、地中深く打ち込まなければならない等の理由により、図15(a)に示す断面ハット形の鋼矢板1Bでは、打ち込み困難なことが予想される場合には、従来では、図15(a)に示す形態の鋼矢板1Bから、より剛性の高い図15(b)に示す形態の断面ハット形の鋼矢板1Cに1ランク上げて、対処していた。
これに伴って、断面ハット形の鋼矢板の重量は、[126kg/m2÷96.0kg/m2=1.31]となり、1.31倍に増加する。
本発明を適用して、図15(a)に示す断面ハット形の鋼矢板1Bの隅角部6の焼き入れで、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの少なくとも接続用フランジ2部分の板厚増大分の強度上昇が確保できれば、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの形態に1ランク上げずに、図15(a)に示す形態の断面ハット形の鋼矢板1Bで対処できることとなり、経済的な鋼矢板となる。
隅角部6の焼き入れにより強度を向上させる場合に、例えば、[図15(b)に示す形態の接続用フランジの板厚]÷[図15(a)に示す形態の接続用フランジの板厚]=13.2mm÷10.8mm=1.22 となるため、この場合は、図15(a)に示す形態の鋼矢板1Bの隅角部6を焼き入れ(又は焼き入れ焼き戻し)によって、1.22倍以上に強度を高めれば、打ち込み時における隅角部の塑性変形がほとんどなくなり、鋼材重量を増加させることなく、打ち込み性の向上を図ることが可能となる(表4参照)。
【0029】
このような考えを、図12〜図14に示すような他の断面U字状の鋼矢板1B、1Cについても検討すると下表の表3に示すようになり、少なくとも1.13倍〜1.35倍の必要強度増加倍率となる。また、もっとも接続用フランジ2の板厚が小さい図12(a)に示す形態の鋼矢板1Bを、最も接続用フランジ2の板厚の大きい図14(f)に示す断面U字状の鋼矢板1Cまで強度増加させようとすると、27.6mm÷8.0mm=3.45倍となる。また、図12(b)に示す形態の鋼矢板1Cを、図14(e)に示す形態の鋼矢板1Bまで強度増加させようとすると、24.3mm÷10.3mm=2.36倍となる。
以上より、本発明を適用して鋼矢板における隅角部6の強度を高める場合に、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜3.45倍である場合が望まれるが、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜1.35倍又は1.13倍〜2.36倍が、現実的で実用性が高い。
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
前記のように、熱処理を行う場合、鋼矢板の隅角部6の強度(Ys)が、熱処理が行われない鋼矢板の強度(熱処理が行われる前の鋼矢板の強度と同じ)の1.13倍以上3.45倍以下となるようにする。
【0032】
本発明の前記のような鋼矢板にあっては、鋼矢板の隅角部6が予め補強されているため、鋼矢板断面及び使用鋼材重量を増大させることなく、鋼矢板断面形態の変形が少ない鋼矢板とすることができ、また、鋼矢板を地盤に貫入させる施工時において、打設性に優れ、硬い地盤への打ち込み等の厳しい施工条件や、くり返し打設時にも耐えうる堅牢な鋼矢板とすることができる等の効果が得られる。
【0033】
また、熱処理後においても鋼矢板の外形は基本的に変化しない。このため、鋼矢板の施工(打設)は、従来の鋼矢板と同様に行うことができる。また、鋼矢板の隅角部6だけ熱処理して強度を向上させた隅角部6aで足り、経済的な手段によって拡開するのを防止可能な鋼矢板1とすることができる。
【0034】
図4には、隅角部及び継手部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の第1変形形態の鋼矢板が示されている。図4は鋼矢板の正面図に相当する図である。
【0035】
この形態では、継手部5も隅角部6と同様に、熱処理して強度を高めた継手部5aとしてもよいことを示した代表形態であり、図示のように、両側部の継手部5を鋼矢板の全長に亘って、熱処理して強度を高めた継手部5aとしてもよく、巾方向のいずれか一側部の継手部5を熱処理して、継手部5の強度を高めるようにしてもよい。
継手部5の強度を高めた継手部5aとすると、継手の変形あるいは離脱を防止することができる。
継手強度を、強度が高められた隅角部と同様に、少なくとも1.13倍、又は1.13倍以上〜2.36倍、或いは1.13倍以上〜3.45倍以下となるようにしてもよい。
このように、隅角部及び継手部を熱処理して両方の強度を高めた鋼矢板とすると、一層鋼矢板の拡開変形あるいは継手の変形・離脱を防止することができる。
【0036】
市販されている鋼矢板の保証降伏強度は295N/mm2〜390N/mm2が一般的である。前記の熱処理された隅角部6あるいは継手部5は、例えば、保証降伏強度295N/mm2の鋼矢板の場合、隅角部6あるいは継手部5を、熱処理条件により、熱処理後の保証降伏強度で、400N/mm2〜700N/mm2の高強度の隅角部6aあるいは継手部5aとされた鋼矢板、例えば、400N/mm2、500N/mm2、600N/mm2、700N/mm2等の高強度の隅角部6aあるいは継手部5aを備えた鋼矢板としてもよい。
【0037】
図5には、隅角部及び継手部を鋼矢板の先端部を熱処理した第1実施形態の第2変形形態の鋼矢板が示されている。図5は鋼矢板の正面図に相当する図である。
鋼矢板の隅角部及び継手部を熱処理する場合には、少なくとも、図5に示すように、鋼矢板の先端部の隅角部及び継手部を熱処理するのが望ましい。
尤も、鋼矢板を貫入させる地層中間層に硬質地層がある場合には、図6に示すように、
鋼矢板の先端部及び中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理して、強度を高めた隅角部6a又は隅角部6a及び継手部5aとした形態の鋼矢板としてもよい。
鋼矢板長手方向中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理する長さ範囲としては、硬質地層の厚さ寸法程度の範囲を熱処理すればよい。
鋼矢板長手方向の先端部の隅角部6及び継手部5を熱処理して強度を高める場合には、先端から鋼矢板の有効巾の5倍程度の範囲内において、例えば、鋼矢板の有効巾の整数倍、熱処理してもよい。
【0038】
前記実施形態では、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、前記接続用フランジ2に平行に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4の先端部に継手部5が設けられた鋼矢板(断面ハット形鋼矢板)1B,1Cを示したが、本発明では、これ以外にも、図7〜図11に示すような多様な形態の鋼矢板にも適用可能である。
以下の形態では、相違する部分を主に説明し、同様な部分については、同様な符号を付して、説明を簡単にする。
【0039】
図7及び図8には、本発明の第2実施形態の鋼矢板1の代表形態が示されている。この形態では、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、継手部5が設けられ、接続用フランジ2とウェブ3の屈曲接続部である隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6aを備えた鋼矢板(断面U字状鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0040】
図9及び図10には、本発明の第3実施形態の鋼矢板1の代表形態が示されている。この形態では、ウェブ3の巾方向両側に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4に一体に、継手部5が設けられ、接続用ウェブ3と継手側フランジ4の屈曲接続部である隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6aを備えた鋼矢板(断面Z字状鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0041】
図11には、本発明の第4実施形態の鋼矢板1の形態が示されている。この形態では、図9及び図10に示した強度が高められた隅角部6a(6)を備えた鋼矢板(断面Z字状鋼矢板)1を2枚継手部で嵌合すると共に、かしめ固定して、図1に示す断面形態と同様な断面形態の鋼矢板(複合鋼矢板)1とした形態である。
この形態でも、接続用のウェブ3と継手側のフランジ4の屈曲接続部である各隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6a(6)を備えた鋼矢板(断面ハット形の鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0042】
前記実施形態においては、鋼矢板の代表的な形態いついて説明したが、本発明を実施する場合、ウェブとフランジとが屈曲(屈折)して接続する隅各部を有する鋼矢板に適用してもよく、また、熱間加工により製造される鋼矢板あるいは冷間加工により製造される鋼矢板に適用するようにしてもよい。
【0043】
本発明を実施する場合、鋼矢板の一側部に継手を有する形態の鋼矢板、又は両側部に継手を有する鋼矢板或いは両側部に継手を備えていない形態の鋼矢板に適用するようにしてもよい。ウェブとこれに接続するフランジとが対称等に傾斜するように配置される形態の鋼矢板(いずれも断面で、Y字状、A字状、V字状、W字状あるいはH字形状の鋼矢板等)に適用するようにしてもよい。
従って、本発明の鋼矢板では、直線状鋼矢板の巾方向中間部の板状部の中間を折り曲げて、隅角部を形成し、その隅角部を挟んで板状部の一側部をウェブ、他側部をフランジとする断面V字状の鋼矢板とする場合も含まれる。このような断面V字状の鋼矢板あるいは断面W字状の鋼矢板等の特殊な断面形態の鋼矢板は、壁体における隅部等の接続部の鋼矢板として用いられ、このような鋼矢板に適用することも可能である。
【0044】
また、図示を省略するが、本発明を実施する場合、鋼矢板の上端部側の隅角部を前記と同様に熱処理して、鋼矢板の上端部側の隅角部の強度を高めるようにしてもよい。このような形態の鋼矢板では、鋼矢板の上部に構造物(護岸等の鋼矢板の上部を被覆するコンクリートコーピング等のコンクリート製の上部構造)を設ける形態では、剛性の高い複合構造物とすることができる。
【0045】
なお、鋼矢板長手方向の上端部あるいは先端部の隅角部及び/又は継手の強度を向上させた鋼矢板を製造する場合に、鋼矢板の長手方向の中央部付近の隅角部及び/又は継手を鋼矢板長手方向の所定の範囲に亘って、熱処理して強度を高めた後、熱処理した部分の鋼矢板長手方向の中央で、巾方向に切断することにより、上端部あるいは先端部の隅角部及び/又は継手の強度を向上させた2枚の本発明の鋼矢板を製造するようにしてもよい。
【0046】
なお、本発明を実施する場合、接続用フランジ2と継手側フランジ4との間のウェブ3がその巾方向中間部で屈折する屈折部を有する形態となる場合(図12b参照)がある。この場合必要に応じ、その屈折部分に、熱処理を行って、前記実施形態と同様に強度を高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 鋼矢板
1B 鋼矢板
1C 鋼矢板
1D 鋼矢板
1E 鋼矢板
2 接続用フランジ
3 ウェブ
4 継手側フランジ
5 継手部
5a 強度を高められた継手部
6 隅角部
6a 強度が高められた隅角部
7 継手嵌合部
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野における土留め、基礎構造、港湾河川の護岸・岸壁、さらには止水壁に用いる構造部材用の鋼矢板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図16に示すように、接続用フランジ2の両端に一対のウェブ3が対称に屈曲連設され、前記ウェブ3の他端に継手側フランジ4が連設されると共に、その継手側フランジ4の先端に継手部5を有する形態の鋼矢板1B,1C(断面ハット形の鋼矢板)が知られている。
【0003】
また、図17に示すように、接続用フランジ2の両端に一対のウェブ3が対称に屈曲連設され、前記ウェブ3の他端に継手部5を有する断面U字状の鋼矢板1B、1Cも知られている。
【0004】
さらに、図18に示すように、接続用ウェブ3の両端に一対の継手側フランジ4が連設されると共に、その継手側フランジ4の先端に継手部5を有する断面Z字状の鋼矢板1Dも知られている。
【0005】
さらに、図19に示すように、図18に示すような断面Z字状の鋼矢板1Dを継手5相互をかみ合わせて2枚組み合わせると共に、継手嵌合部7を固定して、図16に示すような断面形態の鋼矢板1B、1Cと同様な鋼矢板1Eとすることも知られている。
【0006】
図16〜図19に示すような従来の鋼矢板では、鋼矢板の打ち込み、引き抜き、或いはくり返しの打ち込みと引き抜きによって、鋼矢板のウェブ3と接続用フランジ2との屈曲接続部、あるいは、ウェブ3と継手側フランジ4との屈曲接続部である隅角部6が、図20〜図22に示すように開くように変形することが知られている。
前記のように、ウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開くようになると、土留め壁等とした用いた場合の壁厚方向の高さ寸法が小さくなることから、断面2次モーメントが格段に小さくなり、土留め壁等として用いた壁体に水平力が作用した場合、設計上期待する曲げ剛性を得ることができなくなる。
前記のウェブ3とフランジ2,4との交差角度が大きくなるように開く変形は、鋼矢板の曲げ剛性低下を招き、土留め壁として用いた場合の安全性にも影響する因子であることから、前記の変形に伴う曲げ剛性低下を極力なくすことが必要になる。
前記の隅角部6の変形を抑制するために、ウェブとフランジとの屈曲接続部の隅角部の板厚を厚くすることにより、変形を抑制する技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
この従来技術では、隅角部の板厚を厚くすることにより変形を抑制するものであるが、その分、使用鋼材重量が多くなるという問題がある。
【0007】
また、鋼矢板の打設時には、鋼矢板内部に土砂がつまることが原因となって継手が変形していくことが知られ、鋼矢板の継手を局所的に熱処理して強度を増加させた鋼矢板とする技術がある(例えば、特許文献2、3参照)。
例えば、特許文献3の技術では、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制するものであり、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できない。
【0008】
また、鋼矢板の継手は、地盤内への打設の際に変形することが知られ、くり返して打設した場合は、その変形が累積され、継手形状から決まる断面剛性を大きくする技術も知られている(例えば、特許文献4参照)。
このように、継手剛性を大きくすることによって継手の変形を抑制するようにした場合には、継手断面が大きくなり、使用する鋼材が多くなり重量が重くなる。
【0009】
なお、鋼管杭の杭頭部を部分的に高周波誘導加熱によって強度を高める技術もある(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−155896号公報、段落0008
【特許文献2】特公平2−26015号公報
【特許文献3】特公平06−94654号公報
【特許文献4】特開2009−155897、段落0006
【特許文献5】特開2009−197472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記従来の場合は、隅角部の板厚を厚くすることにより変形を抑制するものであるが、その分、使用鋼材量が多くなるという問題があった。
また、鋼矢板の継手を局所的に熱処理して強度を増加させ、継手の変形を抑えて継手の離脱を抑制しても、交差する板状相互の接続部である隅角部を有する鋼矢板では、前記隅角部の変形が生じる恐れを排除することができず、鋼矢板の全体断面の変形は抑制できないという問題があった。
本発明は、使用鋼材量を多くすることなく、鋼矢板の打込み時及び引抜き時に変形しやすい隅角部の強度を高めることによって、鋼矢板の全体断面の変形を抑制し、安定した打設性を発揮し、くり返し打設性にも優れた鋼矢板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明の鋼矢板では、鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする。
第2発明では、第1発明の鋼矢板において、鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて熱処理されることにより、一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする。
第3発明では、第1又は第2発明の鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする。
第4明では、第1〜第3発明のいずれかの鋼矢板において、熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする。
第6発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする。
また、第7発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの鋼矢板において、鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする。
また、第8発明の鋼矢板の製造方法では、第1〜7発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする。
また、第9発明の鋼矢板の製造方法ではでは、第1〜7発明のいずれかの鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、熱処理によって隅角部又は隅角部と継手部の強度を高めて、鋼矢板断面及び使用鋼材重量を増大させることなく、鋼矢板断面形態の変形が少ない鋼矢板とすることができ、また、施工時において、打設性に優れ、硬い地盤への打ち込み等の厳しい施工条件や、くり返し打設時にも耐えうる堅牢な鋼矢板とすることができる等の効果が得られる。
また、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高める範囲は、鋼矢板長手方向全長でもよいし、特に変形の生じやすい先端部(鋼矢板の先端「打設時に下端となる側」から鋼矢板の有効幅(W)の5倍程度以下までの部分的な範囲)であってもよいので、使用場所に応じて、適宜設計することができ、また、工場又は現場において、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を鋼矢板の長手方向の所定の範囲、熱処理して、隅角部又は隅角部と継手部の強度を高めることができると共にじん性の確保も可能となる。また、本発明の鋼矢板の製造方法は、各種鋼矢板の隅角部又は隅角部と継手部を熱処理するだけであるので、簡単な方法で容易である等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図2】図1の一部を拡大して示す図である。
【図3】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の鋼矢板であり、図1の正面図である。
【図4】隅角部及び継手部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の第1変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図5】隅角部又は隅角部及び継手部を熱処理した第1実施形態の第2変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図6】隅角部又は隅角部及び継手部を熱処理した第1実施形態の第3変形形態の鋼矢板であり、図1の正面図に相当する図である。
【図7】本発明の第2実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図8】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第2実施形態の鋼矢板であり、図7の正面図である。
【図9】本発明の第3実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図10】隅角部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第2実施形態の鋼矢板であり、図7の正面図である。
【図11】本発明の第4実施形態の鋼矢板を示す断面図である。
【図12】(a)及び(b)は、U字状鋼矢板の具体例を示す図である。
【図13】(c)及び(d)は、U字状鋼矢板の他の具体例を示す図である。
【図14】(e)及び(f)は、U字状鋼矢板のさらに他の具体例を示す図である。
【図15】(a)及び(b)は、断面ハット形の鋼矢板の具体例を示す図である。
【図16】従来の断面ハット形の鋼矢板を示す図である。
【図17】従来の断面U字状鋼矢板を示す図である。
【図18】従来の断面Z字状鋼矢板を示す図である。
【図19】図18に示す断面Z字状鋼矢板を2枚組み合わせて断面ハット形の鋼矢板とした形態を示す図である。
【図20】従来の断面ハット形の鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【図21】従来の断面U字状鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【図22】断面Z字状鋼矢板を2枚組み合わせた従来の断面ハット形の鋼矢板が打込み時に変形した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
なお、本発明では、地盤に打設した鋼矢板の壁体と並行となる部分で、ウェブ相互を接続する部分を接続用フランジとして説明する。また、接続用フランジに平行で、継手部に接続する部分を継手側フランジとして説明する。
【0017】
図1〜図3には、本発明の第1実施形態の鋼矢板1が示されている。図1は断面図、図2は図1の一部を拡大して示す図である。図3は図1の正面図である。
【0018】
図示形態の第1実施形態の鋼矢板1は、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、前記接続用フランジ2に平行に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4の先端部に継手部5が設けられ、左右の継手部のうち、一方の継手部5と、他方の継手部5は、点対称の形状となるようにされている。
【0019】
そして、本発明の鋼矢板では、鋼矢板におけるウェブ3とこれに接続するフランジ2,4との屈曲接続部である隅角部6であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部6が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部6の部分が、鋼矢板の他の部分に比べて強度が高められている隅角部6aを備えた鋼矢板とされている。
強度を高めた前記隅角部6aを設ける場合には、鋼矢板1における一つ又は複数の隅角部6の内、少なくとも一つ又は複数の隅角部6を熱処理して、他の部分に比べて強度を高めるようにしてもよい。
【0020】
隅角部6を熱処理する場合に、鋼矢板1の全長の隅角部6を熱処理に渡って、強度を高めるようにしてもよく、鋼矢板長手方向(鋼矢板の長さ方向)の先端部或いは先端部と中間部の部分を、部分的に熱処理して強度を高めるようにしてもよい。
また、隅角部6を熱処理する場合に、隅角部6に接続する側の接続用フランジ2の巾方向の一部、あるいは隅角部6に接続する側のウェブ3の巾方向の一部を、隅角部6の熱処理と同時に熱処理を行うことができる。隅角部6に接続する継手側フランジ4における隅角部6側の巾方向の一部も、前記と同様に熱処理して行うことができる。
隅角部6に接続する側のウェブ3又はフランジ2,4の巾方向の一部を熱処理する場合の巾寸法については、鋼矢板全体の強度を加味して、設計により設定される。
【0021】
前記のように、矢板の長手方向で、地盤または地中の土砂等に最初に接触する鋼矢板先端部の隅角部6(6a)の強度が向上されていると、鋼矢板先端部の拡開を防止できるため、これに続く鋼矢板長手方向中間部よりの拡開を防止することができる。
【0022】
前記の隅角部6の熱処理は、工場において、熱間圧延加工時に、オンラインで行ってもよく、既製品の鋼矢板の隅角部6を加熱した後、熱処理して、隅角部6の部分を、鋼矢板の他の部分に比べて強度を高めるようにしてもよい。
【0023】
前記の鋼矢板1では、先端から上方に向かって鋼矢板の全長に亘って熱処理されている。強度を高めるための熱処理は、例えば高周波誘導加熱によって行われる。高周波焼き入れとは、加熱コイルに高周波の電流を付加して行う高周波誘導加熱で、加熱コイル(電流を付加した導線)に、加熱対象金属を近づけて電磁誘導を利用して加熱する方法であり、鋼矢板1の隅角部6の温度を変態点以上(例えば、1,000℃〜1,100℃、例えば、1050℃)まで誘導加熱し、その後、水冷により冷却することによって、鋼矢板1の隅角部6を焼き入れ処理することである。工場等において高周波誘導加熱を行い、その後、水冷し、強度を高める方法、もしくは高周波誘導加熱後、水冷し、その後600℃以下の温度で焼き戻しすることにより、強度の向上と共にじん性の確保も可能となり、強度、低温靭性などの品質・信頼性の高い鋼矢板1を製造することが可能である。
前記の鋼矢板の高周波誘導加熱は、熱間加工により鋼矢板を製造しているオンライン上で行う場合には、隅角部6を除く部分の材質が定まった後、隅角部6を加熱して、水冷することにより冷却する。
前記のような高周波誘導加熱は、工場においては、容易に行うことができるが、現場においも、隅角部6をガスバーナー等により加熱し、水冷により冷却して焼き入れしたり、水冷後、600℃以下の温度で焼き戻しすることにより、強度の向上と共にじん性の確保も可能な新規な鋼矢板とすることができる。
【0024】
次に、本発明のように隅角部の強度を高めた場合の利点について、図12(a)(b)〜図15(a)(b)に示す既存の鋼矢板(単位:mm)を例にして説明する。
【0025】
鋼矢板の型式は、例えば、図12(a)(b)〜図15(a)(b)及び下記表1、2に示すものがある。鋼矢板の断面が大きくなれば、より硬い地盤への打ち込みが可能となり、また、より深く地盤内に打ち込むことも可能となる。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
例えば、地盤が硬いあるいは、地中深く打ち込まなければならない等の理由により、図15(a)に示す断面ハット形の鋼矢板1Bでは、打ち込み困難なことが予想される場合には、従来では、図15(a)に示す形態の鋼矢板1Bから、より剛性の高い図15(b)に示す形態の断面ハット形の鋼矢板1Cに1ランク上げて、対処していた。
これに伴って、断面ハット形の鋼矢板の重量は、[126kg/m2÷96.0kg/m2=1.31]となり、1.31倍に増加する。
本発明を適用して、図15(a)に示す断面ハット形の鋼矢板1Bの隅角部6の焼き入れで、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの少なくとも接続用フランジ2部分の板厚増大分の強度上昇が確保できれば、図15(b)に示す断面ハット形の鋼矢板1Cの形態に1ランク上げずに、図15(a)に示す形態の断面ハット形の鋼矢板1Bで対処できることとなり、経済的な鋼矢板となる。
隅角部6の焼き入れにより強度を向上させる場合に、例えば、[図15(b)に示す形態の接続用フランジの板厚]÷[図15(a)に示す形態の接続用フランジの板厚]=13.2mm÷10.8mm=1.22 となるため、この場合は、図15(a)に示す形態の鋼矢板1Bの隅角部6を焼き入れ(又は焼き入れ焼き戻し)によって、1.22倍以上に強度を高めれば、打ち込み時における隅角部の塑性変形がほとんどなくなり、鋼材重量を増加させることなく、打ち込み性の向上を図ることが可能となる(表4参照)。
【0029】
このような考えを、図12〜図14に示すような他の断面U字状の鋼矢板1B、1Cについても検討すると下表の表3に示すようになり、少なくとも1.13倍〜1.35倍の必要強度増加倍率となる。また、もっとも接続用フランジ2の板厚が小さい図12(a)に示す形態の鋼矢板1Bを、最も接続用フランジ2の板厚の大きい図14(f)に示す断面U字状の鋼矢板1Cまで強度増加させようとすると、27.6mm÷8.0mm=3.45倍となる。また、図12(b)に示す形態の鋼矢板1Cを、図14(e)に示す形態の鋼矢板1Bまで強度増加させようとすると、24.3mm÷10.3mm=2.36倍となる。
以上より、本発明を適用して鋼矢板における隅角部6の強度を高める場合に、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜3.45倍である場合が望まれるが、強度増加倍率の範囲が1.13倍〜1.35倍又は1.13倍〜2.36倍が、現実的で実用性が高い。
【表3】
【0030】
【表4】
【0031】
前記のように、熱処理を行う場合、鋼矢板の隅角部6の強度(Ys)が、熱処理が行われない鋼矢板の強度(熱処理が行われる前の鋼矢板の強度と同じ)の1.13倍以上3.45倍以下となるようにする。
【0032】
本発明の前記のような鋼矢板にあっては、鋼矢板の隅角部6が予め補強されているため、鋼矢板断面及び使用鋼材重量を増大させることなく、鋼矢板断面形態の変形が少ない鋼矢板とすることができ、また、鋼矢板を地盤に貫入させる施工時において、打設性に優れ、硬い地盤への打ち込み等の厳しい施工条件や、くり返し打設時にも耐えうる堅牢な鋼矢板とすることができる等の効果が得られる。
【0033】
また、熱処理後においても鋼矢板の外形は基本的に変化しない。このため、鋼矢板の施工(打設)は、従来の鋼矢板と同様に行うことができる。また、鋼矢板の隅角部6だけ熱処理して強度を向上させた隅角部6aで足り、経済的な手段によって拡開するのを防止可能な鋼矢板1とすることができる。
【0034】
図4には、隅角部及び継手部を鋼矢板全長に亘って熱処理した第1実施形態の第1変形形態の鋼矢板が示されている。図4は鋼矢板の正面図に相当する図である。
【0035】
この形態では、継手部5も隅角部6と同様に、熱処理して強度を高めた継手部5aとしてもよいことを示した代表形態であり、図示のように、両側部の継手部5を鋼矢板の全長に亘って、熱処理して強度を高めた継手部5aとしてもよく、巾方向のいずれか一側部の継手部5を熱処理して、継手部5の強度を高めるようにしてもよい。
継手部5の強度を高めた継手部5aとすると、継手の変形あるいは離脱を防止することができる。
継手強度を、強度が高められた隅角部と同様に、少なくとも1.13倍、又は1.13倍以上〜2.36倍、或いは1.13倍以上〜3.45倍以下となるようにしてもよい。
このように、隅角部及び継手部を熱処理して両方の強度を高めた鋼矢板とすると、一層鋼矢板の拡開変形あるいは継手の変形・離脱を防止することができる。
【0036】
市販されている鋼矢板の保証降伏強度は295N/mm2〜390N/mm2が一般的である。前記の熱処理された隅角部6あるいは継手部5は、例えば、保証降伏強度295N/mm2の鋼矢板の場合、隅角部6あるいは継手部5を、熱処理条件により、熱処理後の保証降伏強度で、400N/mm2〜700N/mm2の高強度の隅角部6aあるいは継手部5aとされた鋼矢板、例えば、400N/mm2、500N/mm2、600N/mm2、700N/mm2等の高強度の隅角部6aあるいは継手部5aを備えた鋼矢板としてもよい。
【0037】
図5には、隅角部及び継手部を鋼矢板の先端部を熱処理した第1実施形態の第2変形形態の鋼矢板が示されている。図5は鋼矢板の正面図に相当する図である。
鋼矢板の隅角部及び継手部を熱処理する場合には、少なくとも、図5に示すように、鋼矢板の先端部の隅角部及び継手部を熱処理するのが望ましい。
尤も、鋼矢板を貫入させる地層中間層に硬質地層がある場合には、図6に示すように、
鋼矢板の先端部及び中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理して、強度を高めた隅角部6a又は隅角部6a及び継手部5aとした形態の鋼矢板としてもよい。
鋼矢板長手方向中間部の隅角部6又は隅角部6及び継手部5を熱処理する長さ範囲としては、硬質地層の厚さ寸法程度の範囲を熱処理すればよい。
鋼矢板長手方向の先端部の隅角部6及び継手部5を熱処理して強度を高める場合には、先端から鋼矢板の有効巾の5倍程度の範囲内において、例えば、鋼矢板の有効巾の整数倍、熱処理してもよい。
【0038】
前記実施形態では、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、前記接続用フランジ2に平行に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4の先端部に継手部5が設けられた鋼矢板(断面ハット形鋼矢板)1B,1Cを示したが、本発明では、これ以外にも、図7〜図11に示すような多様な形態の鋼矢板にも適用可能である。
以下の形態では、相違する部分を主に説明し、同様な部分については、同様な符号を付して、説明を簡単にする。
【0039】
図7及び図8には、本発明の第2実施形態の鋼矢板1の代表形態が示されている。この形態では、接続用フランジ2の両側にその巾方向外側に向かって傾斜するようにウェブ3が一体に屈曲連接され、そのウェブ3に一体に、継手部5が設けられ、接続用フランジ2とウェブ3の屈曲接続部である隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6aを備えた鋼矢板(断面U字状鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0040】
図9及び図10には、本発明の第3実施形態の鋼矢板1の代表形態が示されている。この形態では、ウェブ3の巾方向両側に継手側フランジ4が一体に屈曲連接され、その継手側フランジ4に一体に、継手部5が設けられ、接続用ウェブ3と継手側フランジ4の屈曲接続部である隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6aを備えた鋼矢板(断面Z字状鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0041】
図11には、本発明の第4実施形態の鋼矢板1の形態が示されている。この形態では、図9及び図10に示した強度が高められた隅角部6a(6)を備えた鋼矢板(断面Z字状鋼矢板)1を2枚継手部で嵌合すると共に、かしめ固定して、図1に示す断面形態と同様な断面形態の鋼矢板(複合鋼矢板)1とした形態である。
この形態でも、接続用のウェブ3と継手側のフランジ4の屈曲接続部である各隅角部6が、前記実施形態と同様に、熱処理されて、鋼矢板の他の部分に比べて、強度が高められた隅角部6a(6)を備えた鋼矢板(断面ハット形の鋼矢板)1とされている。
この形態の変形形態として、図示を省略するが、施工場所に応じて、前記実施形態の変形形態と同様に、隅角部6a及び継手部5aの熱処理範囲(鋼矢板長手方向の範囲)を変化させた形態としてもよい。
【0042】
前記実施形態においては、鋼矢板の代表的な形態いついて説明したが、本発明を実施する場合、ウェブとフランジとが屈曲(屈折)して接続する隅各部を有する鋼矢板に適用してもよく、また、熱間加工により製造される鋼矢板あるいは冷間加工により製造される鋼矢板に適用するようにしてもよい。
【0043】
本発明を実施する場合、鋼矢板の一側部に継手を有する形態の鋼矢板、又は両側部に継手を有する鋼矢板或いは両側部に継手を備えていない形態の鋼矢板に適用するようにしてもよい。ウェブとこれに接続するフランジとが対称等に傾斜するように配置される形態の鋼矢板(いずれも断面で、Y字状、A字状、V字状、W字状あるいはH字形状の鋼矢板等)に適用するようにしてもよい。
従って、本発明の鋼矢板では、直線状鋼矢板の巾方向中間部の板状部の中間を折り曲げて、隅角部を形成し、その隅角部を挟んで板状部の一側部をウェブ、他側部をフランジとする断面V字状の鋼矢板とする場合も含まれる。このような断面V字状の鋼矢板あるいは断面W字状の鋼矢板等の特殊な断面形態の鋼矢板は、壁体における隅部等の接続部の鋼矢板として用いられ、このような鋼矢板に適用することも可能である。
【0044】
また、図示を省略するが、本発明を実施する場合、鋼矢板の上端部側の隅角部を前記と同様に熱処理して、鋼矢板の上端部側の隅角部の強度を高めるようにしてもよい。このような形態の鋼矢板では、鋼矢板の上部に構造物(護岸等の鋼矢板の上部を被覆するコンクリートコーピング等のコンクリート製の上部構造)を設ける形態では、剛性の高い複合構造物とすることができる。
【0045】
なお、鋼矢板長手方向の上端部あるいは先端部の隅角部及び/又は継手の強度を向上させた鋼矢板を製造する場合に、鋼矢板の長手方向の中央部付近の隅角部及び/又は継手を鋼矢板長手方向の所定の範囲に亘って、熱処理して強度を高めた後、熱処理した部分の鋼矢板長手方向の中央で、巾方向に切断することにより、上端部あるいは先端部の隅角部及び/又は継手の強度を向上させた2枚の本発明の鋼矢板を製造するようにしてもよい。
【0046】
なお、本発明を実施する場合、接続用フランジ2と継手側フランジ4との間のウェブ3がその巾方向中間部で屈折する屈折部を有する形態となる場合(図12b参照)がある。この場合必要に応じ、その屈折部分に、熱処理を行って、前記実施形態と同様に強度を高めるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 鋼矢板
1B 鋼矢板
1C 鋼矢板
1D 鋼矢板
1E 鋼矢板
2 接続用フランジ
3 ウェブ
4 継手側フランジ
5 継手部
5a 強度を高められた継手部
6 隅角部
6a 強度が高められた隅角部
7 継手嵌合部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする鋼矢板。
【請求項2】
鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて熱処理されることにより、一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする請求項1記載の鋼矢板。
【請求項3】
熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼矢板。
【請求項4】
熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項5】
鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項6】
鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項7】
鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
【請求項1】
鋼矢板において、鋼矢板におけるウェブとこれに接続するフランジとの屈曲接続部の隅角部であって、少なくとも1ヶ所以上の前記隅角部が熱処理されることにより、熱処理された前記隅角部の強度が高められていることを特徴とする鋼矢板。
【請求項2】
鋼矢板巾方向の一側部又は両側部の継手部も含めて熱処理されることにより、一側部又は両側部の継手部の強度が高められていることを特徴とする請求項1記載の鋼矢板。
【請求項3】
熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向全長に亘って熱処理されて強度が高められていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼矢板。
【請求項4】
熱処理された隅角部は、鋼矢板長手方向の先端部及び又は中間部であり、継手の長手方向に対して部分的に前記隅角部の強度の強度が高められていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項5】
鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する形態の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項6】
鋼矢板の形態が、接続用フランジの両端に一対のウェブが屈曲連設され、前記ウェブの他端に継手部を有する断面U字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項7】
鋼矢板の形態が、接続用ウェブの両端に一対の継手側フランジが連設されると共に、その継手側フランジの先端に継手部を有する断面Z字状の鋼矢板であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鋼矢板。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷する処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鋼矢板を製造するにあたり、熱処理された隅角部又は継手部の熱処理が、高周波誘導加熱後に水冷し、その後、焼き戻しする処理であることを特徴とする鋼矢板の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−214314(P2011−214314A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83549(P2010−83549)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】
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