説明

鋼矢板排水路の腐食部分補修工事に伴う工法

【課題】如何に費用を抑えて鋼矢板型排水路の腐食箇所の補修にあたり、完全に補修が可能になるか。
【解決手段】重機や大掛かりな装置を使用する事無く、仮設の足場も固定するタイプを改善してゴンドラ式の移動型にすることにより使用機材のコストを抑えることが可能になる。その次に鋼矢板の裏面を掘り起こすことが要らない一方向面からのソケットナット圧入作業により、鋼板の当板を装着する準備の作業性が大幅に向上するために人工手間にかかる費用を抑える事が可能となる。
鋼板の当板が鋼矢板に完全密着することにより構造物として一体化が出来るため護岸能力が復活する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は農業利水施設である開水路の中で鋼矢板を使用している排水路施設の老朽化に伴い腐食している箇所の補修工事に関するものである。
【背景技術】
【0002】
農業利水施設において排水路の施工性と費用の面からみて鋼矢板が多く用いられて施工されてきた。しかしこの鋼矢板も長年の風雨におけるダメージが大きく鋼矢板の酸化進行が進み、水面との磨耗から腐食が進んで穴が開いている箇所が目立ってきた。この穴の開いた状態のままの鋼矢板では護岸の耐久性が著しく低下してきているため、早急な対策が必要となっている。
【0003】
そうした状況下で様々な施策が検討されている。例えば紫外線に反応して固まる特殊な樹脂で補強をする方法。例えばFRPを使用して護岸の内側に新規の排水路を敷設する方法。例えば特殊塗料を鋼矢板に塗りつける方法。といった方法が検討されてきた。
【0004】
対費用効果との関係から極単純な方法での補修が望まれている。その要望も叶えられる方法として、鋼板を鋼矢板の形状に合わせて折り曲げた当板を作り、腐食している鋼矢板の上から被せてボルトで固定する工法を考えた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本来ならば穴の開いた鋼矢板の上から鋼板を直接溶接する方法が望ましいのであるが、現状の鋼矢板排水路では実際かなり錆びているため直接鉄板を溶接することは作業性と費用の面から厳しいと考える。下地を出すまで錆び取りを行い足場の悪い状況では通電時の水対策の問題から一層溶接は難しい。そこで本発明は鋼板の当板を直接鋼矢板にボルトで固定する手段が有効であると考える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある程度現場で寸法を詳細に測り、オーダーメードの鋼板での当板を作り現場に搬入する。移動式のドンドラ仕様の足場を作り鋼矢板の穴を現場にて鋼矢板に任意の位置で開けるのであるが、あらかじめ当板の鋼板にボルト固定用の穴を開けるために鋼矢板の方にも基準となるピッチで穴を開けることが必要である。鋼矢板の裏側を作業することが出来ないため、ボルトを止める為のナットはソケット式として水路側の開放している面から穴あけと同時にナットを圧入する。この作業手順で作業時間が大幅に短縮することが可能になる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の工法では仮設の足場を組み立てることなくゴンドラ式の移動用足場を使用するため、移動しながらの作業が簡単に行えるために費用も抑えることが可能になる。
工事には大掛かりな重機を使用する事無く、少数の作業員で工事に当たれるので大幅に費用が削減可能になる。
【実施例】
【0008】
最初に鋼矢板排水路腐食している部分の矢板形状を寸法取りして工場にて鋼板当板の製作に取りかかる。終了後表面処理を行い作業現場に搬入する。
【0009】
本発明の工法では現場における作業用のゴンドラ式作業足場に作業員を配置して、腐食している鋼矢板の表面を高圧洗浄機にて清掃し泥や水垢等を除去する。その後ケレン等で表面を覆っている錆やゴミを除去する。
【0010】
次にその鋼矢板の表面に開放面からボルト止めのナットが入る穴をドリル等で任意の位置に開けてソケットナットを圧入する。その後あらかじめ用意してある鋼板の当板を所定の位置に据え付ける。その際に持ちづらい鋼板の当板を取り付けしやすい様に強力なマグネットのステージを用意して鋼板の当板下面を支える目的で位置を設定して取り付ける。鋼板の当板は鋼矢板に吸着されたマグネットステージに一旦置いて最終的にボルト穴の勘合を見ながら位置合わせの上ボルトをソケットナットに挿入しながら鋼矢板と鋼板の当板をボルトでしっかりと固定する。
【0011】
最後に鋼矢板の表面に構造物の耐久性を上げるため塗装を施して終了となり撤収して完了する。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明の工法は全国の自治体で問題視されている農業利水における排水路が耐久年数を大幅に超えているので早急な補修工事が必要となっている。
その中でも鋼矢板排水路の金属部分の腐食が激しく、護岸の能力が大幅に低下しているのが現状である。そこで全面的に新品の鋼矢板を敷設するのであれば莫大な費用が発生するため、部分的な補修で対応年数が延びて、尚且つ費用も抑えることが出来れば緊急的に予算措置を講じて危険な現場から早急に補修が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業利水における鋼矢板型排水路の腐食部分の補修において同種の鋼板の当板を鋼矢板の形状に合わせて製作し、鋼矢板を抜く事無くそのまま使用するために特殊なボルト、ナットで固定する事が出来る完全な一方向から補修作業が可能な工法

【公開番号】特開2012−180728(P2012−180728A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58530(P2011−58530)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(509022484)
【Fターム(参考)】