説明

鋼管を使用した土留め構造体、その構築方法及びシールドマシンの発進到達工法

【課題】外周面に形成される突出部を排除して鋼管の圧入抵抗を小さくして回転圧入にも対応できるようにし、簡易な構造で高い止水性が確保でき、鏡切りや地盤改良の不要な鋼管を使用した土留め構造体を提供する。
【解決手段】本発明の鋼管を利用した土留め構造体1は鋼管3を地盤G中に打設することによって形成され、周胴部5の一部にシールドマシン2通過用の開口部6が形成された鋼管3と、上記開口部6を閉塞するように宛がわれるスライド可能なゲート用鋼板7と、鋼管3内への水や土砂の流入を防止する止水スペース8とを備えており、上記土留め構造体1の外周面には突出部が設けられておらず、上記止水スペース8がゲート拡開時のゲート用鋼板7の収容スペースになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば立坑の施工に使用され、複数枚の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって構築される土留め構造体、その構築方法及び前記土留め構造体を使用したシールドマシンの発進到達工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の建築物や構造物が林立する都市部では、地盤中を掘削し、地下鉄等の軌道を設けたり、下水や雨水等を一ヶ所に集めて流すための大規模な水路等を構築することが頻繁に行われている。この場合、シールドマシンと呼ばれる掘削機械が多く使用されており、地盤中を垂直に掘り起こして構築した立坑と呼ばれる坑道を利用してシールドマシンの搬入、搬出と、地中を水平に掘削し、掘進するための発進、到達とが行われている。
【0003】
上記立坑にはシールドマシンを搬入させ、発進させるための発進用立坑と、シールドマシンを到達させ、搬出するための到達用立坑とがあり、上記発進用立坑から発進されたシールドマシンは上記到達用立坑に向かって地中を水平に掘削して所定長さの地下トンネルを貫通し得るようになっている。従来の立坑は、シールドマシン通過用の開口部が形成されていない複数本の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって土留め用の構造体を形成し、立坑を構築していた。次に、上記立坑を形成している鋼管内にシールドマシンを搬入して設置し、シールドマシンが通過する背面地盤の薬液注入による地盤改良と、鋼管内への水や土砂の流入を防止する止水処理及び防護工の設置等を行った後、ガスバーナ等を使用して鋼管の周胴部の一部を開口する鏡切りが行われていた。
【0004】
しかし、上述のような地盤改良を行うことは施工コストの増大及び工期の長大化につながり難点がある。また、上記鏡切り作業は、シールドマシンの切羽が開放された状態での作業となるため危険であり、安全性の面でも問題視されていた。そこで近年では、下記の特許文献1、2に示すように、土留め壁を構成する鋼管の周胴部の一部に予め開口部を形成しておき、この開口部を覆うスライド可能なゲート用鋼板を上記鋼管に配置した構成の土留め用の構造体が提案されている。そして、このような土留め用の構造体によれば、鋼管に対する上記鏡切り作業は不要となり安全性が向上し、鋼管の内外の圧力バランスを保っておくことによって上記薬液による地盤改良作業も不要になり、施工コストの削減と工期の短縮化とが図られるようになっている。因みに、特許文献1では上下方向にスライド可能なゲート用鋼板を備えた構成が開示されており、特許文献2では左右方向にスライド可能なゲート用鋼板を備えた構成が開示されている。
【0005】
また、このようなゲート用鋼板は鋼管の内部に配設されるものと、鋼管の外部に配設されるものとがあり、前者の場合にはゲート用鋼板に直接、大きな土水圧がかかってしまうため、当該土水圧に耐えられるような強固で複雑なゲート用鋼板の支持構造が必要になり、止水性の確保が難しくなる。一方、後者の場合にはゲート用鋼板と該ゲート用鋼板を鋼管に接続するための継手等が鋼管の外部に突出してしまうため鋼管を圧入する際に該突出部が抵抗になってしまい、鋼管の沈降を困難にする。特に、鋼管を全周回転させながら圧入する回転圧入機を使用しての圧入では、上記突出部が大きな回転圧入抵抗を生じさせるため、事実上その使用は不可能であり、現状では鋼管を一定角度の範囲で揺動させながら圧入する揺動圧入機を使用しての圧入により行っていた。しかし、揺動圧入機で圧入できる鋼管の圧入深さには限界があり、より深く圧入できる上記回転圧入機を使用しての圧入を可能にする土留め構造体の開発が望まれていた。また、回転圧入機を使用しての圧入が可能になればレキ地盤等の施工にも対応できるようになる。
【特許文献1】特開平10−102979号公報
【特許文献2】特開2006−132239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題点の存在を踏まえてなされたものであって、外周面に鋼管の沈降を妨げるような突出部を排除することで圧入抵抗を小さくして揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようにすると共に、比較的簡易な構造で高い止水性が確保できる、鏡切りや地盤改良の不要な鋼管を使用した土留め構造体、該土留め構造体の構築方法及び該構築方法によって構築された上記土留め構造体を使用したシールドマシンの発進到達工法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の第1の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体は、鋼管を地盤中に打設することによって形成される土留め用の構造体であって、周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された鋼管と、前記開口部を閉塞するように宛がわれるスライド可能なゲート用鋼板と、前記鋼管内への外部からの水や土砂の流入を防止する止水スペースとを備え、前記ゲート用鋼板を拡開する際に該ゲート用鋼板を収容する収容スペースとして前記止水スペースを利用したことを特徴とするものである。
【0008】
本態様によれば、土留め用の構造体の外周面に突出部が設けない構造にすることができ、以て鋼管を地盤中に圧入する際の圧入抵抗が小さくなる。従って、揺動圧入のみならず回転圧入によっても鋼管を圧入できるようになり、深い圧入深さやレキ地盤等への圧入にも対応できるようになる。また、止水スペースを設けることで鋼管内への外部からの水や土砂の流入を効果的に防止することができ、この止水スペースをゲート用鋼板の収容スペースとしても利用できるようにすることで、スペースの有効利用と土留め用の構造体の構造の単純化とが図られる。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体において、前記土留め用の構造体には前記ゲート用鋼板を前記鋼管に対して接続するための継手が備えられており、前記ゲート用鋼板は前記鋼管の外周面と一致するように鋼管と同一の円周上に設けられていて、前記鋼管の内部には前記鋼管の内周面と密接状態で前記継手と内側鋼板とが配置されて外周面に突出部を有しない二重鋼管部が形成されていることを特徴とするものである。
【0010】
本態様によれば、ゲート用鋼板を鋼管と同一の円周上に配置し、突出部となる継手を鋼管内部に配置しているから、土留め用の構造体の外周面は凹凸を有しない滑らかな形状になり、鋼管の地盤中への圧入が一層円滑になる。また、鋼管内部において突出している継手の外方空間には鋼管の内周面と密接状態で内側鋼板が配置されているから、土留め用の構造体の内周面も突出部を有しない滑らかな形状になり、上記継手に対する引掛かり等が防止されて作業性が向上すると同時に、鋼管と上記内側鋼板とによって構成される二重鋼管部によって土留め構造体の土水圧に対する強度も向上する。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記第1の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体において、前記土留め用の構造体には前記ゲート用鋼板を前記鋼管に対して接続するための継手が備えられており、前記ゲート用鋼板と継手は前記鋼管の外周面の外方に突出状態で設けられていて、前記ゲート用鋼板と継手とが設けられていない前記鋼管における他の外周面の外方には前記ゲート用鋼板と継手との外周面と一致するように密接状態で外側鋼板とが配置されて外周面に突出部を有しない二重鋼管部が形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
本態様によれば、ゲート用鋼板と継手が鋼管の外周面の外方に突出状態で設けられているが、鋼管の他の外周面には密接状態で外側鋼板が配置されている。従って、土留め用の構造体の外周面は凹凸を有しない滑らかな形状になっており、鋼管の地盤中への圧入が一層円滑になる。また、鋼管と上記外側鋼板とによって構成される二重鋼管部によって土留め構造体の土水圧に対する強度も向上する。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記第2の態様または第3の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体において、前記止水スペースは前記鋼管と、前記ゲート用鋼板と、前記内側鋼板ないし外側鋼板と、残りの開口面に宛がわれる薄鉄板とによって区画された空間に形成されており、前記ゲート用鋼板が閉塞状態にある当初の状態では前記止水スペース内に充填材が充填され、前記ゲート用鋼板を拡開状態に移行した時に前記薄鉄板に対して形成されている排出口から前記充填材が外部に排出されるように構成されていることを特徴とするものである。
【0014】
本態様によれば、止水スペースを鋼管と、ゲート用鋼板と、内側鋼板ないし外側鋼板との間に形成される既存の空間を利用して薄鉄板を設けるだけの極めて簡単な構造によって形成でき、該止水スペース内に充填材を充填することによって鋼管打設時の止水性が確保される。一方、薄鉄板に形成した排出口によってゲート用鋼板の拡開時には止水スペース内の充填材は外部に排出されるため、該止水スペースはゲート用鋼板の収容スペースとして機能するようになる。また、鋼管、内側鋼板ないし外側鋼板および薄鉄板の止水スペース側の面がそれぞれガイド面になるため、ゲート用鋼板のスライド動作が円滑になる。また、薄鉄板を設け、止水スペース内に充填材を充填することによってゲート用鋼板を止水スペース内に進入させる際の異物の混入が防止される。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記第1の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体において、前記ゲート用鋼板は前記鋼管の内周面に対して密接状態で設けられている上下方向にスライド可能な引揚げ式のゲート用鋼板であって、該ゲート用鋼板の左右両端縁には前記開口部を閉塞させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された可動側楔ガイドが設けられており、前記鋼管の内部には前記ゲート用鋼板の移動範囲を覆うように前記止水スペースが内部に形成された止水ボックスが設けられ、前記ゲート用鋼板の左右両端縁と対向する前記止水ボックスの左右両側傍部には前記開口部を拡開させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された固定側楔ガイドが設けられていて、前記ゲート用鋼板は前記止水ボックス内において摺接する前記可動側楔ガイドと固定側楔ガイドとによって案内されていて前記開口部を閉塞するように構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、ゲート用鋼板は鋼管の内部に設けられているから、土留め用の構造体の外周面には鋼管の沈降を妨げるような突出部は存在しない。従って、前記各態様と同様、鋼管を地盤中に圧入する際の圧入抵抗が小さくなり、揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようになる。また、固定側楔ガイドと可動側楔ガイドを設けたことによって楔作用が発揮されるため、比較的簡単な構成で強固なゲート用鋼板の支持構造を構築でき、高い止水性が確保される。また、上記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドのテーパ面の傾斜方向をゲート用鋼板が開口部を閉塞する方向に移動するように案内する構成としたことによって、ゲート用鋼板の外表面に作用する土水圧がゲート用鋼板を閉塞する方向の力となって作用するようになる。
【0017】
また、止水スペースを形成している上記止水ボックスの内壁面がガイド面になるため、ゲート用鋼板のスライド動作が円滑になる。また、密閉された止水ボックスを設けることによってゲート用鋼板を止水スペース内に進入させる際の異物の混入が防止される。また、油圧ジャッキ等のゲート開閉駆動装置を予め止水ボックスに組み付けておくことが可能であり、このようにすれば止水ボックスの設置とゲート開閉駆動装置の設置を同時に行うことが可能になる。この他、止水ボックスを分割式の構造にすることも可能であり、このようにすれば工事完了後再利用できる部分を取り外して繰り返して使用することが可能になる。
【0018】
本発明の第6の態様は、前記第1の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体において、前記ゲート用鋼板は前記鋼管の内周面に対して密接状態で設けられている左右方向にスライド可能な横スライド式のゲート用鋼板であって、該ゲート用鋼板の裏面には前記開口部を閉塞させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された可動側楔ガイドが設けられており、前記鋼管の内部には前記ゲート用鋼板の移動範囲を覆うように前記止水スペースが内部に形成された止水ボックスが設けられ、前記ゲート用鋼板の裏面と対向する前記止水ボックスの内表面には前記開口部を拡開させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された固定側楔ガイドが設けられていて、前記ゲート用鋼板は前記止水ボックス内において摺接する前記可動側楔ガイドと固定側楔ガイドとによって案内されていて前記開口部を閉塞するように構成されていることを特徴とするものである。
【0019】
本態様によれば、前記第5の態様と同様にゲート用鋼板は鋼管の内部に設けられているから、土留め用の構造体の外周面には鋼管の沈降を妨げるような突出部は存在しない。従って、前記各態様と同様、鋼管を地盤中に圧入する際の圧入抵抗が小さくなり、揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようになる。また、固定側楔ガイドと可動側楔ガイドを設けたことによって楔作用が発揮されるため、比較的簡単な構成で強固なゲート用鋼板の支持構造を構築でき、高い止水性が確保される。また、上記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドのテーパ面の傾斜方向をゲート用鋼板が開口部を閉塞する方向に移動するように案内する構成としたことによってゲート用鋼板の外表面に作用する土水圧がゲート用鋼板を閉塞する方向の力となって作用するようになる。
【0020】
また、止水スペースを形成している上記止水ボックスの内壁面がガイド面になるため、ゲート用鋼板のスライド動作が円滑になる。また、密閉された止水ボックスを設けることによってゲート用鋼板を止水スペース内に進入させる際の異物の混入が防止される。また、油圧ジャッキ等のゲート開閉駆動装置を予め止水ボックスに組み付けておくことが可能であり、このようにすれば止水ボックスの設置とゲート開閉駆動装置の設置を同時に行うことが可能になる。この他、止水ボックスを分割式の構造にすることも可能であり、このようにすれば工事完了後再利用できる部分を取り外して繰り返して使用することが可能になる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る土留め構造体の構築方法は、複数本の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって土留め用の構造体を形成する土留め構造体の構築方法であって、周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された前記第4の態様に係る鋼管を使用して、該開口部をゲート用鋼板によって閉塞させ、前記止水スペース内に充填材を充填させた状態で当該鋼管を圧入機を使用して地盤中に打設して行く一次鋼管打設工程と、周胴部に開口部を有しない他の鋼管を使用して、当該他の鋼管を圧入機を使用して所定の本数、地盤中に連続的に打設して行く連続鋼管打設工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0022】
本態様によれば、土留め用の構造体の外表面に凹凸を有しない前記第4の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体を使用することによって鋼管圧入時の圧入抵抗が小さくなって揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようになり、より深い立坑を構築することが可能になる。また、止水スペース内には充填材が充填されているので鋼管打設時の高い止水性も保たれている。また、薄鉄板を設けることで止水スペース内への土砂や異物の混入が防止されるため、ゲート用鋼板を止水スペース内に進入させる際の異物の混入が防止される。
【0023】
本発明の第8の態様に係る土留め構造体の構築方法は、複数本の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって土留め用の構造体を形成する土留め構造体の構築方法であって、周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された前記第5の態様または第6の態様に係る鋼管を使用して、該開口部をゲート用鋼板によって閉塞させ、前記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとが当接し密着された状態で当該鋼管を圧入機を使用して地盤中に打設して行く一次鋼管打設工程と、周胴部に開口部を有しない他の鋼管を使用して、当該他の鋼管を圧入機を使用して所定の本数、地盤中に連続的に打設して行く連続鋼管打設工程と、前記開口部が形成された鋼管の内部に前記止水ボックスを設置する止水ボックス設置工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
本態様によれば、土留め用の構造体の外周面に突出部が現れない前記第5の態様または第6の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体を使用することによって鋼管圧入時の圧入抵抗が小さくなって揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようになり、より深い立坑を構築することが可能になる。また、固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとによる楔作用によって大きな土水圧にも耐えられる頑強で止水性の高い立坑を構築することができる。また、密閉された止水ボックスを設けることでゲート用鋼板を止水スペース内に進入させる際の異物の混入が防止される。
【0025】
本発明の第9の態様に係る土留め構造体の構築方法は、前記第7の態様または第8の態様に係る土留め構造体の構築方法において、前記圧入機は前記鋼管を全周回転させながら地盤中に打設することができる回転圧入機であり、前記一次鋼管打設工程と連続鋼管打設工程では前記鋼管を全周回転させながら地盤中に打設して行くようにしたことを特徴とするものである。
【0026】
本態様によれば、鋼管の圧入が円滑に行われるようになるから、土留め構造体の施工コストを削減でき、工期を短縮することが可能になる。また、より深い立坑の構築も可能となる。
【0027】
本発明の第10の態様に係るシールドマシンの発進到達工法は、前記第7の態様または第9の態様に係る土留め構造体の構築方法によって前記第4の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体が構築された後に前記土留め構造体を発進用立坑または到達用立坑として使用し、前記開口部を拡開状態にしてシールドマシンを発進到達させるシールドマシンの発進到達工法であって、前記開口部の周囲の前記二重鋼管部内に坑口コンクリートとパッキンとによるエントランスを設置するエントランス設置工程と、前記エントランス内のチャンバー圧力を前記二重鋼管部外の土水圧とバランスさせて圧力バランスを取る圧力バランス調整工程と、前記ゲート用鋼板を拡開方向にスライドさせることによって前記止水スペース内に前記ゲート用鋼板を進入させて、止水スペース内の充填材を薄鉄板に形成されている排出口から外部に排出させながら前記開口部を拡開状態にするゲート用鋼板拡開工程と、前記拡開された開口部からシールドマシンを直接、発進ないし到達させるシールドマシン発進到達工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0028】
本態様によれば、従来行われていた鏡切り作業と地盤改良作業が不要になるから、施工コストの削減と工期の短縮とが図られ、作業の安全性も向上する。また、シールドマシン発進到達工程に先立って行われるゲート用鋼板拡開工程では、ゲート用鋼板の拡開動作と同時に止水スペース内の充填材が外部に排出されるため、該止水スペースをゲート用鋼板の収容スペースとして利用できるようになる。また、鋼管、内側鋼板ないし外側鋼板及び薄鉄板の止水スペース側の面がそれぞれガイド面になるため、ゲート用鋼板の止水スペース内への進入が円滑に行われる。
【0029】
本発明の第11の態様に係るシールドマシンの発進到達工法は、前記第8の態様または第9の態様に係る土留め構造体の構築方法によって前記第5の態様または第6の態様に係る鋼管を使用した土留め構造体が構築された後に前記土留め構造体を発進用立坑または到達用立坑として使用し、前記開口部を拡開状態にしてシールドマシンを発進到達させるシールドマシンの発進到達工法であって、前記開口部の周囲の前記鋼管内に坑口コンクリートとパッキンとによるエントランスを設置するエントランス設置工程と、前記エントランス内のチャンバー圧力を前記鋼管外の土水圧とバランスさせて圧力バランスを取る圧力バランス調整工程と、前記ゲート用鋼板を拡開方向にスライドさせることによって前記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとの当接状態を解除して前記開口部を拡開状態にするゲート用鋼板拡開工程と、前記拡開された開口部からシールドマシンを直接、発進ないし到達させるシールドマシン発進到達工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0030】
本態様によれば、従来行われていた鏡切り作業と地盤改良作業が不要になるから、施工コストの削減と工期の短縮とが図られ、作業の安全性も向上する。また、ゲート用鋼板拡開工程を実行する前の段階ではエントランスによる止水性に加えて固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとによる楔作用によって高い止水性が確保されており、ゲート用鋼板拡開工程実行中、あるいは実行後の段階ではエントランスと圧力バランスとによって所望の止水性が保たれている。また、止水スペースを形成している上記止水ボックスの内壁面がガイド面になるため、ゲート用鋼板の止水スペース内への進入が円滑に行われる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、土留め用の構造体の外表面に鋼管の沈降を妨げるような突出部が設けられていないから鋼管を地盤中に打設する際の圧入抵抗が小さくなる。従って、揺動圧入のみならず回転圧入にも対応できるようになり、鋼管をより深く圧入できるようになり、レキ地盤等への鋼管の圧入が可能となる。また、止水スペースをゲート用鋼板の収容スペースとして利用しているからスペースの有効利用が図れ、土留め用の構造体をコンパクトで簡易な構造とすることができる。また、止水スペースの採用と、固定側楔ガイド及び可動側楔ガイドの採用とによって比較的簡易な構造によって高い止水性が確保できるようになり、止水スペース内への異物の混入が防止される。また、従来行っていた鏡切り作業と地盤改良作業が不要になるから施工コストの削減を図ることができ、工期を短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本願発明に係る鋼管を使用した土留め構造体、該土留め構造体の構築方法及び該構築方法によって構築した土留め構造体を使用したシールドマシンの発進到達工法を実施するための最良の形態として下記の実施例1〜実施例4を例にとって説明する。
【0033】
[実施例1]
(1)土留め構造体の構造(図1〜図6参照)
図1は土留め構造体を回転圧入機を使用して圧入沈設している施工状態を示す側断面図、図2は実施例1に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の側断面図である。図3は同上、正面図、図4は同上、図3中のA−A断面図である。また図5は同上、ゲート拡開時の側断面図、図6は同上、正面図である。
【0034】
本実施例の土留め構造体1は、地下に構築されるトンネルの施工に先立って構築され、シールドマシン2の発進用立坑または到達用立坑の側壁として使用される。この土留め構造体1は、複数本の鋼管3を上下に連結しながら地盤G中に打設して行くことによって形成される。具体的には図1に示すように、専用の圧入機を使用してこれらの鋼管3を一定の角度の範囲で揺動させながら圧入する揺動圧入工法やこれらの鋼管3を全周回転させながら圧入する回転圧入工法を使用して地盤G中に打設して行き、鋼管3内部の土砂を掘削し、地上に取り出すことによって円形断面の発進用立坑または到達用立坑を構築する(以下このような工法を「立坑構築工法」という)。尚、図1では回転圧入機4を使用して回転圧入工法によって鋼管3を打設している施工の様子を図示している。
【0035】
本実施例の土留め構造体1は、周胴部5の一部にシールドマシン2通過用の開口部(ゲートともいう)6が形成された鋼管3と、上記開口部6を閉塞するように宛がわれるスライド可能なゲート用鋼板7と、上記鋼管3内への外部からの水や土砂の流入を防止する止水スペース8とを備えることによって基本的に構成されている。そして、上記土留め構造体1の外周面には鋼管3の沈降を妨げるような突出部は設けられておらず、上記止水スペース8をゲート用鋼板7の収容スペースとして利用したことを本実施例の土留め構造体1の特徴的な構成としている。この他、本実施例の土留め構造体1には、上記ゲート用鋼板7をスライドさせるためのゲート開閉駆動装置の一例として油圧ジャッキ9等が設けられている。
【0036】
実施例1に係る土留め構造体1Aは、上記構成に加えて上記ゲート用鋼板7を鋼管3に対して接続するための継手10と、鋼管3の内周面に配置される内側鋼板11とが設けられている。鋼管3は、直径が1500〜5000mm程度の上面及び下面が開放された円筒状の部材で、鋼管3の周胴部5の一部には上述したように開口部6が形成されている。開口部6の形状は、一例として縦長の矩形状であり、シールドマシン2が通過できる幅寸法に形成されている。また、最下位の鋼管3の下端には、鋼管3の全周回転による地盤G中への圧入を容易にするための刃口12が設けられている。この刃口12は、鋼管3の外周面から半径方向にフリクションカット量Dだけ突出するようになっている。
【0037】
ゲート用鋼板7は、上記鋼管3とほぼ同じ曲率で湾曲した矩形曲板状の部材である。そして、ゲート用鋼板7の材料としてはJIS規格のSM490またはS35C等の高強度の材料が一例として適用できる。また、本実施例ではゲート用鋼板7は鋼管3の外周面と一致するように鋼管3と同一の円周上に設けられている。そして、このようにして構成されるゲート用鋼板7は、鋼管3の圧入時には図24に示す固定ボルト13等を使用することによって上記開口部6を覆った状態で仮固定されている。
【0038】
また、上記開口部6の周囲の鋼管3の内周面には、密接状態で上述した継手10が配置されている。該継手10は、ゲート用鋼板7を上下方向にスライド可能に鋼管3に対して取り付けるための接続部材である。また、該継手10の外方の鋼管3の内周面には密接状態で上記内側鋼板11が配置されている。そして、該内側鋼板11は、鋼管3の内周面に沿う曲率の湾曲した矩形曲板によって形成されており、この内側鋼板11と鋼管3とによって外周面に凹凸を有しない二重鋼管部14が形成されている。また、内側鋼板11にはシールドマシン2が通過できる円形の開口部16が形成されている。
【0039】
止水スペース8は、本実施例では上記鋼管3と、ゲート用鋼板7と、内側鋼板11とによって区画されたスペースを使用しており、該スペースの開放された外側面には薄鉄板15が貼設されている。尚、該薄鉄板15は、鋼管3の外周面に沿う曲率で湾曲された矩形曲板によって構成されており、該薄鉄板15の上部には一例として2個の排出口17が形成されている。因みに、上記止水スペース8には、鋼管3の打設時において後述するように充填材Mが充填され、ゲート拡開時に上記充填材Mが上記排出口17から外部に排出されるようになっている。
【0040】
また、このような鋼管3が所定の深さまで沈降されると、上記二重鋼管部14の内周面(本実施例では内側鋼板11の内周面)と、上記ゲート用鋼板7の裏面との間に上述した油圧ジャッキ9が取り付けられ、上述した仮固定用の固定ボルト13は取り外される。そして、連結するすべての鋼管3が地盤G中に打設されることによって本実施例に係る土留め構造体1Aが構築される。また、このようにして構築された土留め構造体1Aは外周面に凹凸を有しないコンパクトな形状であるので、圧入抵抗が小さく、回転圧入機4を使用した立坑構築工法に適した構造になっている。
【0041】
(2)土留め構造体の構築方法(図7参照)
図7は本発明の土留め構造体の構築方法の構築手順を(a)、(b)の2段階に分けて示す側断面図である。本発明の土留め構造体の構築方法は(a)一次鋼管打設工程と、(b)連続鋼管打設工程とを備えることによって構成されている。以下、これらの工程を具体的に説明する。
【0042】
(a)一次鋼管打設工程(図7(a)参照)
一次鋼管打設工程は、上記ゲート用鋼板7によって上記開口部6を覆った状態で固定ボルト13によって仮止め固定された鋼管3(以下、開口部6が形成された当該鋼管3と、開口部6を有しない後続の鋼管3とを区別して使用する場合には前者の鋼管を3A、後者の鋼管を3Bとして両者を識別する。)を上述の回転圧入機4等を使用して地盤G中に打設して行く工程である。尚、止水スペース8内には、予め充填材Mが充填されており、鋼管3の打設時に排出口17等から止水スペース8内に水や土砂が流入しないようになっている。
【0043】
(b)連続鋼管打設工程(図7(b)参照)
連続鋼管打設工程は、周胴部5に開口部6を有しない他の鋼管3Bを使用して、当該他の鋼管3Bを回転圧入機4等の圧入機を使用して所定の本数、地盤G中に連続的に打設して行く工程である。
【0044】
即ち、図7(a)に示すように、開口部6が形成された鋼管3Aが打設された後、当該鋼管3Aの上に開口部6を有しない後続の鋼管3Bを連結して、回転圧入機4等の圧入機を使用して連結した2本の鋼管3A、3Bをいっしょに圧入する。また、2本目の鋼管3Bが打設された後、当該2本目の鋼管3Bの上に3本目の鋼管3Bを連結して、同様に3本の鋼管3A、3B、3Bをいっしょに圧入する。以下、同様に所定の本数の鋼管3を打設することによって、図7(b)に示すような所定の深さの土留め構造体1が地盤G中に構築される。
【0045】
そして、上記鋼管3の打設と同時に打設された鋼管3内の土砂を掘削して地上に取り出し、鋼管3内のすべての土砂が取り出されたところで、上記仮固定していた固定ボルト13を取り外して上記二重鋼管部14の内周面とゲート用鋼板7の裏面を利用して、これらの間に油圧ジャッキ9を取り付ければ、本実施例に係る土留め構造体1の構築が完了し、発進用立坑ないし到達用立坑として利用できるようになる。尚、図示の実施例の場合には最下位の鋼管3を開口部6が形成された鋼管3Aとしたが、立坑の中間の高さからシールドマシン2を発進到達させる場合や1本の立坑から上下2本の地下トンネルを構築する場合には、中間位置の鋼管3を開口部6が形成された鋼管3Aとしたり、開口部6が形成された鋼管3Aを1本の立坑に対して複数本使用することも勿論可能である。
【0046】
(3)シールドマシンの発進到達工法(図8参照)
図8は本実施例のシールドマシンの発進到達工法の発進手順を(a)〜(d)の4段階に分けて示す側断面図である。本実施例のシールドマシンの発進到達工法は、(a)エントランス設置工程と、(b)圧力バランス調整工程と、(c)ゲート用鋼板拡開工程と、(d)シールドマシン発進到達工程とを備えることによって構成されている。以下、これらの工程を具体的に説明する。
【0047】
(a)エントランス設置工程(図8(a)参照)
エントランス設置工程は、前記開口部6の周囲の前記二重鋼管部14内に坑口コンクリート18とパッキン19とを設置し、エントランス20を完成させる工程である。即ち、シールドマシン2の発進到達部位の周囲に図示しない型枠を設置し、坑口コンクリート18を打設し、養生、固化させた後、上記型枠を取り外す。そして、所定の形状に成形された坑口コンクリート18の端部にパッキン19を設置することによって、エントランス20を完成させる。次に、当該立坑が発進用立坑である場合には、シールドマシン2を地上から発進用立坑内に降ろして発進用立坑の上下方向の所定の発進位置にシールドマシン2を位置させる。
【0048】
(b)圧力バランス調整工程(図8(b)参照)
圧力バランス調整工程は、上記エントランス20内のチャンバー圧力を前記二重鋼管部14の外部の土水圧とバランスさせて圧力バランスを取る工程である。即ち、シールドマシン2を発進させる場合には、図8(b)に示すように、シールドマシン2の切羽21が形成されているカッターフェイス22をエントランス20内に臨ませた掘進方向の所定の位置にシールドマシン2をセットする。次に、上記坑口コンクリート18、パッキン19及びカッターフェイス22とによって区画されたエントランス20のチャンバー23内に外部から充填材Mを充填して、チャンバー23内のチャンバー圧力を高めて切羽21の背面の外部の土水圧とのバランスを取り、当該圧力バランス状態を確保する。
【0049】
(c)ゲート用鋼板拡開工程(図8(c)参照)
ゲート用鋼板拡開工程は、前記ゲート用鋼板7を拡開方向Oにスライドさせることによって前記止水スペース8内にゲート用鋼板7を進入させて前記開口部6を拡開状態にする工程である。即ち、上記チャンバー23内のチャンバー圧力と外部の土水圧との圧力バランスを確保した状態のまま、油圧ジャッキ9を作動させてゲート用鋼板7を拡開方向O(本実施例では上方)にスライドさせる。ゲート用鋼板7は、継手10に案内されて止水スペース8内に進入するようになり、止水スペース8内の充填材Mを薄鉄板15に形成されている排出口17から外部に排出させながら移動する。そして、ゲート用鋼板7が止水スペース8内に完全に収容されると開口部6は拡開状態になりシールドマシン2の発進到達を可能にする。
【0050】
(d)シールドマシン発進到達工程(図8(d)参照)
シールドマシン発進到達工程は、上記拡開された開口部6からシールドマシン2を直接、発進ないし到達させる工程である。即ち、シールドマシン2を発進させる場合には、シールドマシン2を作動状態にし、シールドマシン2を所定の速度で推進させながらカッターフェイス22を回転させて、シールドマシン2を当該発進用立坑の開口部6から地盤G中に発進させる。尚、シールドマシン2の発進到達時でも、上記チャンバー23内のチャンバー圧力と外部の土水圧との圧力バランスはそのまま保たれている。従って、従来のように地盤改良を行ったり防護工を設置しなくてもシールドマシン2を直接、発進到達できるようになっている。
【0051】
[実施例2]
(1)土留め構造体の構造(図9〜図13参照)
図9は実施例2に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の側断面図、図10は同上、正面図である。図11は同上、図10中のB−B断面図、図12は同上、ゲート拡開時の側断面図である。また図13は同上、正面図である。
【0052】
実施例2に係る土留め構造体1Bは、前記実施例1に係る土留め構造体1Aと同様、開口部6が形成された鋼管3と、開口部6を覆うゲート用鋼板7と、鋼管3内への水や土砂の流入を防止する止水スペース8と、上記ゲート用鋼板7を鋼管3に対して接続するための継手10とを備えており、上記内側鋼板11に代えて上記鋼管3の外周面に配置される外側鋼板24を備えている。鋼管3の構造は、実施例1の鋼管3と概略において同じであるが、開口部6の形状がシールドマシン2が通過できる大きさの円形状になっている点が相違している。
【0053】
また、ゲート用鋼板7と継手10の構造も実施例1のゲート用鋼板7と継手10の構造と概略において同じであるが、実施例2では上記ゲート用鋼板7と継手10が鋼管3の外周面の外方に突出状態で設けられている点が相違している。そして、実施例2では、上記ゲート用鋼板7と継手10とが設けられていない鋼管3の他に、外周面外方に上記ゲート用鋼板7と継手10との外周面と一致するように密接状態で上述した外側鋼板24が配置されている。
【0054】
外側鋼板24は、鋼管3の外周面に沿う曲率の湾曲した矩形曲板によって形成されており、この外側鋼板24と鋼管3とによって外周面に凹凸を有しない二重鋼管部14が形成されている。外側鋼板24の厚さは約25mmであり、鋼管3の下部に設けられる前記刃口12のフリクションカット量Dよりも小さくなるように設定されている。また、外側鋼板24は、中空の部材で内部には充填材Mが充填されており、上記鋼管3の開口部6が形成されている面と対応する位置に一例として縦長の矩形状の開口部25が形成されている。尚、上記開口部25の幅寸法は、シールドマシン2が通過できる幅寸法に設定されている。
【0055】
また、本実施例でもゲート用鋼板7は鋼管3の圧入時には、図24に示す固定ボルト13等を使用することによって上記開口部6を覆った状態で仮固定されている。止水スペース8は、本実施例では上記鋼管3と、ゲート用鋼板7と、外側鋼板24とによって区画されたスペースを使用しており、該スペースの開放された外側面には実施例1と同様の薄鉄板15が貼設されている。
【0056】
また、このような鋼管3が所定の深さまで沈降されると、上記二重鋼管部14の内周面(本実施例では鋼管3の内周面)と、上記ゲート用鋼板7の裏面との間に油圧ジャッキ9が取り付けられ、上述した仮固定用の固定ボルト13は取り外される。そして、連結するすべての鋼管3が地盤G中に打設されることによって、本実施例に係る土留め構造体1Bが構築される。また、このようにして構築された土留め構造体1Bは、実施例1と同様、外周面に凹凸を有しないコンパクトな形状であるので、圧入抵抗が小さく回転圧入機4を使用した立坑構築工法に適した構造になっている。
【0057】
尚、本実施例に係る土留め構造体1Bを対象にした(2)土留め構造体の構築方法と、(3)シールドマシンの発進到達工法については、前記実施例1に係る土留め構造体1Aを対象にした(2)土留め構造体の構築方法と、(3)シールドマシンの発進到達工法と同様であるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0058】
[実施例3]
(1)土留め構造体の構造(図14〜図19参照)
図14は実施例3に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の背断面図、図15は同上、側断面図である。図16は同上、図15中のC−C断面図、図17は同上、ゲート拡開時の背断面図である。また図18は同上、側断面図、図19は同上、ゲート用鋼板と油圧ジャッキとの接続状態を拡大して示す側断面図である。
【0059】
実施例3に係る土留め構造体1Cは、前記実施例1と実施例2に係る土留め構造体1A、1Bと同様、開口部6が形成された鋼管3と、開口部6を覆うゲート用鋼板7と、鋼管3内への水や土砂の流入を防止する止水スペース8とを備えている。また、上記開口部6の形状は、実施例2と同様、シールドマシン2が通過できる大きさの円形状になっており、鋼管3については前記実施例2に係る鋼管3と概略において同様の構造になっている。
【0060】
本実施例に係るゲート用鋼板7は、鋼管3の内周面に対して密接状態で設けられている上下方向にスライド可能な引揚げ式のゲート用鋼板である。該ゲート用鋼板7は、上記鋼管3の内周面に沿う曲率で湾曲された正面視ないし背面視逆台形状の部材であり、その左右両端縁には上記開口部6を閉塞させる方向Qに窄まるようにテーパ面が形成された可動側楔ガイド26が設けられている。尚、この可動側楔ガイド26は、ゲート用鋼板7の左右両端縁の全長に亘って形成されているゲート用鋼板7と一体の単一部材によって構成されている。
【0061】
また、鋼管3の内部には、上記ゲート用鋼板7の上下方向の移動範囲を覆うように上記止水スペース8が内部に形成された止水ボックス27が設けられている。この止水ボックス27は、奥行き寸法の小さな扁平な角箱状の部材で、その背面板28にはシールドマシン2が通過できる大きさの円形の開口部29が設けられている。また、上記ゲート用鋼板7の左右両端縁と対向する上記止水ボックス27の左右両側傍部には、上記開口部を拡開させる方向Oに窄まるようにテーパ面が形成された固定側楔ガイド30が設けられている。そして、この固定側楔ガイド30は、上記可動側楔ガイド26と同様、上下方向に長い単一部材によって構成されており、上記可動側楔ガイド26と共に上記ゲート用鋼板7を閉塞方向Qに移動させる案内部材になっている。
【0062】
また、上記止水ボックス27は、上部止水ボックス27Aと下部止水ボックス27Bとに2分割できるように構成されており、連結ボルト43によって両者は連結され、内部に連通した1つの空間が形成されるようになっている。また、上部止水ボックス27Aの上面板34には、図19に示すように、油圧ジャッキ9が上向きに取り付けられており、油圧ジャッキ9の摺動子35の先端にはサポータ支持ベース44が設けられている。サポータ支持ベース44には、上記ゲート用鋼板7の上面から上方に向けて延びているスライドロッド45の上端部を挟持状態で保持するサポータ46が取付けボルト47によって取り付けられている。尚、上記サポータ支持ベース44を省略して上記摺動子35に対して直接サポータ46を取り付けるようにすることが可能であり、このようにすればサポータ支持ベース44を省略した分、スライドロッド45のストロークを長くとることができる。
【0063】
また、上記スライドロッド45は、中間において上部止水ボックス27Aの上面板34を貫通して止水ボックス27の外部に突出するように設けられているが、上面板34には図示のように止水パッキン36が設けられているため、止水ボックス27の高い止水性は保たれており、止水ボックス27内への異物の混入も防止されている。また、上記スライドロッド45によって吊り下げられている上記ゲート用鋼板7の前面48と摺接する開口部6周辺の鋼管3の裏面49にも止水パッキン37が設けられており、ゲート用鋼板7と鋼管3との間にできる隙間からの水や土砂の流入と異物の混入とを防止している。
【0064】
また、上記止水ボックス27は、鋼管3の打設が完了し、鋼管3内の土砂の掘削と排出が完了した後に配置される。従って、本実施例でも、鋼管3の打設時には図24に示す固定ボルト13等を使用することによって、ゲート用鋼板7は鋼管3の開口部6を覆った状態で仮固定されている。そして、上記鋼管3の打設、鋼管3内の土砂の掘削及び排出が完了した後に、上記仮固定用の固定ボルト13が取り外され、上部止水ボックス27A、下部止水ボックス27B、油圧ジャッキ9、サポータ46及びスライドロッド45等がそれぞれ別々に立坑内に搬入され、図19に示す状態に組み立てられる。
【0065】
そして、連結するすべての鋼管3が地盤G中に打設されることによって本実施例に係る土留め構造体1Cが構築される。また、このようにして構築された土留め構造体1Cは、外周面に突出部を有しないコンパクトな形状であるので、圧入抵抗が小さく回転圧入機4を使用した立坑構築工法に適した構造になっている。また、本実施例ではゲート用鋼板7が鋼管3の内周面側に設けられているため、外部の土水圧が直接、ゲート用鋼板7にかかる。従って、止水性の確保が懸念されるが、上記止水ボックス27と、上記可動側楔ガイド26及び固定側楔ガイド30とによる楔作用と、2種類の止水パッキン36、37とによって高い止水性が確保されている。
【0066】
尚、本実施例に係る土留め構造体1Cを対象にした(2)土留め構造体の構築方法については基本的に前記実施例1、実施例2に係る(2)土留め構造体の構築方法と同様であるが、(a)一次鋼管打設工程と、(b)連続鋼管打設工程とに加えて、(c)止水ボックス設置工程が設けられている。尚、(c)止水ボックス設置工程は開口部が形成された鋼管3Aの内部に上記止水ボックス27、油圧ジャッキ9及びスライドロッド45等の部材を設置し、組み立てる工程である。
【0067】
また、本実施例に係る土留め構造体1Cを対象にした(3)シールドマシン発進到達工法についても、基本的に前記実施例1、実施例2に係る(3)シールドマシン発進到達工法と同様であるが、(c)ゲート用鋼板拡開工程においてゲート用鋼板7を拡開方向Oにスライドさせる際、前記実施例1、実施例2では止水スペース8内の充填材Mを外部に排出させながら止水スペース8内に進入し収容されるように構成されていたのに対して、本実施例では可動側楔ガイド26と固定側楔ガイド30との楔作用を解除させながらゲート用鋼板7が止水スペース8が設けられている止水ボックス27の上部に進入し、収容されるように構成されている点が相違している。尚、前述した実施例1、実施例2の(2)土留め構造体の構築方法と、(3)シールドマシンの発進到達工法と同様の構成についてはここでの詳細な説明は省略する。
【0068】
[実施例4]
(1)土留め構造体の構造(図20〜図25参照)
図20は実施例4に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の背断面図、図21は同上、図20中のD−D断面図である。図22は同上、ゲート拡開時の背断面図、図23は同上、図22中のE−E断面図である。また図24は同上、鋼管打設時の平断面図、図25は実施例4に係る土留め構造体を使用した場合のシールドマシンの発進到達工法の発進手順を(a)〜(c)の3段階に分けて示す平断面図である。
【0069】
実施例4に係る土留め構造体1Dは、前記実施例1乃至実施例3に係る土留め構造体1A、1B、1Cと同様、開口部6が形成された鋼管3と、開口部6を覆うゲート用鋼板7と、鋼管3内への水や土砂の流入を防止する止水スペース8とを備えている。また、実施例4に係る土留め構造体1Dは、前記実施例3に係る土留め構造体1Cと同様、止水スペース8が内部に形成された止水ボックス31を備えている。尚、鋼管3については、前記実施例2、実施例3の鋼管3と同様であり、シールドマシン2が通過できる大きさの円形状の開口部6が形成されている。
【0070】
本実施例に係るゲート用鋼板7は、上記鋼管3の内周面に対して密接状態で設けられている左右方向にスライド可能な横スライド式のゲート用鋼板である。該ゲート用鋼板7は、上記鋼管3の内周面に沿う曲率で湾曲された正面視正方形状の部材であり、該ゲート用鋼板7の裏面には上記開口部6を閉塞させる方向Qに窄まるようにテーパ面が形成された上下3個ずつ計6個のコッター受け32によって構成されている可動側楔ガイド33が設けられている。尚、上下に3個ずつ設けられている上記コッター受け32は、上下方向の位置をずらして配置されており、上下のコッター受け32が開口部6を閉塞させる方向Qに行くに従って徐々に接近するように配置されている。
【0071】
また、鋼管3の内部には、上記ゲート用鋼板7の左右方向の移動範囲を覆うように上記止水スペース8が内部に形成された上述した止水ボックス31が設けられている。この止水ボックス31は、奥行き寸法の小さな扁平な角箱状の部材で、鋼管3の内周面に沿う曲率で湾曲された左右方向に長い形状を有している。また、該止水ボックス31の背面板38には、シールドマシン2が通過できる大きさの円形の開口部39が設けられており、該止水ボックス31の上面板と下面板の内周面が上記ゲート用鋼板7の左右方向のスライド動作を案内するガイド面40になっている。
【0072】
また、上記ゲート用鋼板7の裏面とゲート閉塞時において対向する上記止水ボックス27の内表面には、上記開口部6を拡開させる方向Oに窄まるようにテーパ面が形成された上下3個ずつ計6個のコッター41によって構成されている固定側楔ガイド42が設けられている。尚、上記6個のコッター41は、上述した6個のコッター受け32と対向する位置にそれぞれ配置されている。そして、このようにして構成される固定側楔ガイド42は、上記可動側楔ガイド33と共に上記ゲート用鋼板7を閉塞方向Qに移動させる案内部材になっている。
【0073】
尚、上記止水ボックス31は、鋼管3の打設が完了し、鋼管3内の土砂の掘削、排出の完了後に設置される。そして、本実施例でもゲート用鋼板7は、鋼管3の圧入時には図24に示すように、固定ボルト13等を使用することによって鋼管3の開口部6を覆った状態で仮固定されている。また、鋼管3の打設が完了し、鋼管3内の土砂の掘削、排出の完了後に、前記実施例1乃至実施例3と同様、図示しない油圧ジャッキ9が上記止水ボックス31の背面板38等を貫いて上記鋼管3の内周面とゲート用鋼板7の裏面との間に取り付けられ、上述した仮固定用の固定ボルト13も取り外される。また、図示は省略するが、油圧ジャッキ9の摺動子35と摺接する止水ボックス31の背面板38には、前記実施例3と同様、止水パッキン36が設けられており、上記ゲート用鋼板7と摺接する開口部6の周囲の鋼管3の裏面に設けられている止水パッキン37と共に止水性の向上に寄与し、異物の混入を防止している。
【0074】
そして、連結するすべての鋼管3が地盤G中に打設されることによって本実施例に係る土留め構造体1Dが構築される。また、このようにして構築された土留め構造体1Dは外周面に突出部を有しないコンパクトな形状であるので、圧入抵抗が小さく回転圧入機4を使用した立坑構築工法に適した構造になっている。また、本実施例では前記実施例3と同様、ゲート用鋼板7が鋼管3の内周面側に設けられているため、外部の土水圧が直接、ゲート用鋼板7にかかる。従って、止水性の確保が懸念されるが、上記止水ボックス31と、上記可動側楔ガイド33及び固定側楔ガイド42とによる楔作用と、上記2種類の止水パッキン36、37とによって高い止水性が確保されている。
【0075】
尚、本実施例に係る土留め構造体1Dを対象にした(2)土留め構造体の構築方法については、概略において前記実施例3に係る(2)土留め構造体の構築方法と同様であり、(a)一次鋼管打設工程と、(b)連続鋼管打設工程と、(c)止水ボックス設置工程の3つの工程によって構築されている。従って、ここでの詳細な説明は省略する。
【0076】
また、本実施例に係る土留め構造体1Dを対象にした(3)シールドマシンの発進到達工法についても、概略において前記実施例3に係る(3)シールドマシンの発進到達工法と同様である。従って、ここでは実施例3と構成を異にする(c)ゲート用鋼板拡開工程に絞って説明し、(a)エントランス設置工程、(b)圧力バランス調整工程及び(d)シールドマシン発進到達工程についての詳細な説明は省略する。
【0077】
(c)ゲート用鋼板拡開工程(図8(c)、図25(a)〜図25(c)参照)
ゲート用鋼板拡開工程は、上記ゲート用鋼板7を拡開方向Oにスライドさせることによって前記固定側楔ガイド42と可動側楔ガイド33との当接状態を解除して上記開口部6を拡開状態にする工程である。即ち、エントランス20におけるチャンバー23内のチャンバー圧力と外部の土水圧との圧力バランスを確保した状態のまま、図示しない油圧ジャッキ9を作動させてゲート用鋼板7を拡開方向O(図25中、左方)にスライドさせる。ゲート用鋼板7は、止水ボックス31の上下のガイド面40に案内されて開口部6の図25中、左方に形成されている止水スペース8内に進入するようになり、可動側楔ガイド33と固定側楔ガイド42の当接状態は解除される。そして、ゲート用鋼板7が止水スペース8内に完全に収容された図25(b)の状態になると開口部6は拡開状態になり、図25(c)に示すシールドマシン2の発進や図示しないシールドマシン2の到達が可能になる。
【0078】
[他の実施例]
本願発明に係る鋼管3を使用した土留め構造体1、該土留め構造体1の構築方法及び該土留め構造体1を使用したシールドマシン2の発進到達工法は、以上述べたような構成を基本とするものであるが、本願発明の要旨を逸脱しない範囲内の部分的な構成の変更や省略等を行うことも勿論可能である。例えば、鋼管3を圧入沈設する圧入機は必ずしも回転圧入機4でなくてもよく、揺動圧入機であってもよい。また、上記実施例1〜実施例4についての説明では、シールドマシン2の発進到達工法の説明においてシールドマシン2を発進用立坑から発進させる場合を中心にして説明したが、シールドマシン2を到達用立坑に到達させる場合についっても同様に適用することが可能である。
【0079】
但し、シールドマシン2を到達用立坑に到達させる場合には、掘進中のシールドマシン2が存する地盤G中の土水圧と、これから到達する到達用立坑内のエントランス20におけるチャンバー23内のチャンバー圧力との圧力バランスの取り方が異なるが、凍結等の公知の方法(特開2004−270252号公報)を採用することによって対応することができる。また、前記実施例1、実施例2に係る土留め構造体1A、1Bの場合には、ゲート用鋼板7と摺接する開口部6の周囲の鋼管3に対して止水パッキン37を図示していないが、前記実施例3、実施例4に係る土留め構造体1C、1Dと同様、止水パッキン37を設けることが可能である。
【0080】
また、前記実施例1、実施例2に係る土留め構造体1A、1Bに前記実施例3に係る土留め構造体1Cにおいて採用した可動側楔ガイド26及び固定側楔ガイド30や前記実施例4に係る土留め構造体1Dにおいて採用した可動側楔ガイド33及び固定側楔ガイド42を設けることも可能であるし、前記実施例1乃至実施例3に係る土留め構造体1A、1B、1Cの各ゲート用鋼板7を横スライド式にしたり、前記実施例4に係る土留め構造体1Dの各ゲート用鋼板7を引揚げ式に変更することも可能である。この他、前記仮固定用の固定ボルト13に代えて、他の締結手段、挟持手段、係合手段を採用することも可能であるし、ガス溶接や電気溶接によって仮り止めし、その後、ガスバーナ等を使用して上記溶接部位を溶断することによって上記仮固定状態を解除するようにすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本願発明は、鋼管を使用した立坑の建設現場や当該立坑を発進用立坑または到達用立坑として使用するシールド工事の施工現場等において利用でき、特に回転圧入機を使用してより深く鋼管を圧入したい場合、簡易な構造で止水性を向上させたい場合、地盤改良等の手間がかかる作業を行うことなく、直接シールドマシンを発進到達させたい場合に利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】土留め構造体を回転圧入機を使用して圧入沈設している施工状態を示す側断面図である。
【図2】実施例1に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の側断面図である。
【図3】実施例1に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の正面図である。
【図4】実施例1に係る土留め構造体を示す図3中のA−A断面図である。
【図5】実施例1に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の側断面図である。
【図6】実施例1に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の正面図である。
【図7】本発明の土留め構造体の構築方向の構築手順を示す側断面図である。
【図8】本発明のシールドマシンの発進到達工法の発進手順を示す側断面図である。
【図9】実施例2に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の側断面図である。
【図10】実施例2に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の正面図である。
【図11】実施例2に係る土留め構造体を示す図10中のB−B断面図である。
【図12】実施例2に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の側断面図である。
【図13】実施例2に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の正面図である。
【図14】実施例3に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の背断面図である。
【図15】実施例3に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の側断面図である。
【図16】実施例3に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の図15中のC−C断面図である。
【図17】実施例3に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の背断面図である。
【図18】実施例3に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の側断面図である。
【図19】実施例3に係る土留め構造体のゲート用鋼板と油圧ジャッキとの接続状態を拡大して示す側断面図である。
【図20】実施例4に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の背断面図である。
【図21】実施例4に係る土留め構造体を示すゲート閉塞時の図20中のD−D断面図である。
【図22】実施例4に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の背断面図である。
【図23】実施例4に係る土留め構造体を示すゲート拡開時の図22中のE−E断面図である。
【図24】ゲート用鋼板を開口部を覆うようにして鋼管に対して仮固定した状態を示す平断面図である。
【図25】実施例4に係る土留め構造体を使用した場合のシールドマシンの発進到達工法の発進手順を示す平断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 土留め構造体、2 シールドマシン、3 鋼管、4 回転圧入機、5 周胴部、6 開口部(ゲート)、7 ゲート用鋼板、8 止水スペース、9 油圧ジャッキ、10 継手、11 内側鋼板、12 刃口、13 固定ボルト、14 二重鋼管部、15 薄鉄板、16 開口部、17 排出口、18 坑口コンクリート、19 パッキン、20 エントランス、21 切羽、22 カッターフェイス、23 チャンバー、24 外側鋼板、25 開口部、26 可動側楔ガイド、27 止水ボックス、27A 上部止水ボックス、27B 下部止水ボックス、28 背面板、29 開口部、30 固定側楔ガイド、31 止水ボックス、32 コッター受け、33 可動側楔ガイド、34 上面板、35 摺動子、36 止水パッキン、37 止水パッキン、38 背面板、39 開口部、40 ガイド面、41 コッター、42 固定側楔ガイド、43 連結ボルト、44 サポータ支持ベース、45 スライドロッド、46 サポータ、47 取付けボルト、48 前面、49 裏面、G 地盤、D フリクションカット量、M 充填材、O 拡開(させる)方向、Q 閉塞(させる)方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管を地盤中に打設することによって形成される土留め用の構造体であって、
周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された鋼管と、
前記開口部を閉塞するように宛がわれるスライド可能なゲート用鋼板と、
前記鋼管内への外部からの水や土砂の流入を防止する止水スペースとを備え、
前記ゲート用鋼板を拡開する際に該ゲート用鋼板を収容する収容スペースとして前記止水スペースを利用したことを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の鋼管を使用した土留め構造体において、
前記土留め用の構造体には前記ゲート用鋼板を前記鋼管に対して接続するための継手が備えられており、
前記ゲート用鋼板は、前記鋼管の外周面と一致するように鋼管と同一の円周上に設けられていて、前記鋼管の内部には前記鋼管の内周面と密接状態で前記継手と内側鋼板とが配置されて外周面に突出部を有しない二重鋼管部が形成されていることを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項3】
請求項1に記載の鋼管をした土留め構造体において、
前記土留め用の構造体には前記ゲート用鋼板を前記鋼管に対して接続するための継手が備えられており、
前記ゲート用鋼板と継手は、前記鋼管の外周面の外方に突出状態で設けられていて、前記ゲート用鋼板と継手とが設けられていない前記鋼管における他の外周面の外方には、前記ゲート用鋼板と継手との外周面と一致するように密接状態で外側鋼板が配置されて外周面に突出部を有しない二重鋼管部が形成されていることを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の鋼管を使用した土留め構造体において、
前記止水スペースは、前記鋼管と、前記ゲート用鋼板と、前記内側鋼板ないし外側鋼板と、残りの開口面に宛がわれる薄鉄板とによって区画された空間に形成されており、前記ゲート用鋼板が閉塞状態にある当初の状態では前記止水スペース内に充填材が充填され、前記ゲート用鋼板を拡開状態に移行した時に前記薄鉄板に対して形成されている排出口から前記充填材が外部に排出されるように構成されていることを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項5】
請求項1に記載の鋼管をした土留め構造体において、
前記ゲート用鋼板は、前記鋼管の内周面に対して密接状態で設けられている上下方向にスライド可能な引揚げ式のゲート用鋼板であって、該ゲート用鋼板の左右両端縁には前記開口部を閉塞させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された可動側楔ガイドが設けられており、
前記鋼管の内部には前記ゲート用鋼板の移動範囲を覆うように前記止水スペースが内部に形成された止水ボックスが設けられ、
前記ゲート用鋼板の左右両端縁と対向する前記止水ボックスの左右両側傍部には、前記開口部を拡開させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された固定側楔ガイドが設けられていて、前記ゲート用鋼板は前記止水ボックス内において摺接する前記可動側楔ガイドと固定側楔ガイドとによって案内されていて前記開口部を閉塞するように構成されていることを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の鋼管をした土留め構造体において、
前記ゲート用鋼板は、前記鋼管の内周面に対して密接状態で設けられている左右方向にスライド可能な横スライド式のゲート用鋼板であって、該ゲート用鋼板の裏面には前記開口部を閉塞させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された可動側楔ガイドが設けられており、
前記鋼管の内部には前記ゲート用鋼板の移動範囲を覆うように前記止水スペースが内部に形成された止水ボックスが設けられ、
前記ゲート用鋼板の裏面と対向する前記止水ボックスの内表面には前記開口部を拡開させる方向に窄まるようにテーパ面が形成された固定側楔ガイドが設けられていて、前記ゲート用鋼板は前記止水ボックス内において摺接する前記可動側楔ガイドと固定側楔ガイドとによって案内されていて前記開口部を閉塞するように構成されていることを特徴とする鋼管を使用した土留め構造体。
【請求項7】
複数本の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって土留め用の構造体を形成する土留め構造体の構築方法であって、
周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された請求項4に記載の鋼管を使用して、該開口部をゲート用鋼板によって閉塞させ、前記止水スペース内に充填材を充填させた状態で当該鋼管を圧入機を使用して地盤中に打設して行く一次鋼管打設工程と、
周胴部に開口部を有しない他の鋼管を使用して、当該他の鋼管を圧入機を使用して所定の本数、地盤中に連続的に打設して行く連続鋼管打設工程とを備えていることを特徴とする土留め構造体の構築方法。
【請求項8】
複数本の鋼管を連結しながら地盤中に打設して行くことによって土留め用の構造体を形成する土留め構造体の構築方法であって、
周胴部の一部にシールドマシン通過用の開口部が形成された請求項5または6に記載の鋼管を使用して、該開口部をゲート用鋼板によって閉塞させ、前記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとが当接し密着された状態で当該鋼管を圧入機を使用して地盤中に打設して行く一次鋼管打設工程と、
周胴部に開口部を有しない他の鋼管を使用して、当該他の鋼管を圧入機を使用して所定の本数、地盤中に連続的に打設して行く連続鋼管打設工程と、
前記開口部が形成された鋼管の内部に前記止水ボックスを設置する止水ボックス設置工程とを備えていることを特徴とする土留め構造体の構築方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の土留め構造体の構築方法において、
前記圧入機は前記鋼管を全周回転させながら地盤中に打設することができる回転圧入機であり、前記一次鋼管打設工程と連続鋼管打設工程では前記鋼管を全周回転させながら地盤中に打設して行くようにしたことを特徴とする土留め構造体の構築方法。
【請求項10】
請求項7または9に記載の土留め構造体の構築方法によって請求項4に記載の鋼管を使用した土留め構造体が構築された後に前記土留め構造体を発進用立坑または到達用立坑として使用し、前記開口部を拡開状態にしてシールドマシンを発進到達させるシールドマシンの発進到達工法であって、
前記開口部の周囲の前記二重鋼管部内に坑口コンクリートとパッキンとによるエントランスを設置するエントランス設置工程と、
前記エントランス内のチャンバー圧力を前記二重鋼管部外の土水圧とバランスさせて圧力バランスを取る圧力バランス調整工程と、
前記ゲート用鋼板を拡開方向にスライドさせることによって前記止水スペース内に前記ゲート用鋼板を進入させて、止水スペース内の充填材を薄鉄板に形成されている排出口から外部に排出させながら前記開口部を拡開状態にするゲート用鋼板拡開工程と、
前記拡開された開口部からシールドマシンを直接、発進ないし到達させるシールドマシン発進到達工程とを備えていることを特徴とするシールドマシンの発進到達工法。
【請求項11】
請求項8または9に記載の土留め構造体の構築方法によって請求項5または6に記載の鋼管を使用した土留め構造体が構築された後に前記土留め構造体を発進用立坑または到達用立坑として使用し、前記開口部を拡開状態にしてシールドマシンを発進到達させるシールドマシンの発進到達工法であって、
前記開口部の周囲の前記鋼管内に坑口コンクリートとパッキンとによるエントランスを設置するエントランス設置工程と、
前記エントランス内のチャンバー圧力を前記鋼管外の土水圧とバランスさせて圧力バランスを取る圧力バランス調整工程と、
前記ゲート用鋼板を拡開方向にスライドさせることによって前記固定側楔ガイドと可動側楔ガイドとの当接状態を解除して前記開口部を拡開状態にするゲート用鋼板拡開工程と、
前記拡開された開口部からシールドマシンを直接、発進ないし到達させるシールドマシン発進到達工程とを備えていることを特徴とするシールドマシンの発進到達工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2009−155823(P2009−155823A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332520(P2007−332520)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000148346)株式会社錢高組 (67)
【出願人】(000141956)株式会社コプロス (18)
【Fターム(参考)】