説明

鋼管引き抜き用スピア及び鋼管の引き抜き方法

【課題】地中に設置されている鋼管を鋼管内壁を使用して簡単に引き抜きをおこなえるようにする。
【解決手段】スライダ3を最下部に位置させた状態でボーリングロッド2の先端にスピア1を取り付けて鋼管21内に挿入する。ボーリングロッド2を回転してスピア1本体を回転させ、ネジの作用によってスライダ3を本体に対して上昇させる。ジョー4のフリクションスプリングが鋼管21の内壁に押し当てられており、摩擦抵抗によってジョー4及びスライダ3の共回りを阻止する。 スライダ3の上昇によってジョー4が外側に押し出され、鋼管21の内壁に押し付けられ、ジョー4の歯40が鋼管21の内壁に食い込む。ボーリングロッド2を徐々に引き揚げてジョー4を鋼管21の内壁に完全に食い込ませ、スピア1と鋼管21を一体化させ、ボーリングロッド2に振動を付加しながら引き揚げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に設置されている鋼管等を地上に引き抜いて回収するためのスピア及び引き抜き方法に関する。
【背景技術】
【0002】
坑内に遺留されたボーリングロッド等の掘管やケーシングを回収したり、地中に設置されたケーシングを回収しなければならない場合がある。これらの鋼管の外周は各種の地層と密着しているため、引き抜き回収対象鋼管を包み込むオーバサイズの鋼管を圧入または掘削して仮設置して引き抜き回収する方法が提案されているが、費用と工期の増大を来たしていた。
【0003】
【特許文献1】特開平09−228369
【特許文献2】特開平10−018743
【特許文献3】特開2004−132035
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
設置されている鋼管等を地中から引き抜く場合、引き抜き対象の鋼管等を包み込む鋼管を地中に圧入または掘削して仮設置し、地層との縁を切って引き抜く方法が採られていた。引き抜き対象鋼管等の径より大きな径の鋼管を仮設置しなければならず、大掛かりな装置を必要とし、費用と工期がかかるという問題があった。
本発明は、圧入または掘削による仮設置鋼管を必要とすることなく、引き抜き対象の鋼管の内壁を使用して簡単に引き抜きをおこなえるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上端部にカップリングを有する本体、本体下部にはネジ作用で上下動する下拡がりのテーパを有するスライダが設けてあり、スライダの外側にはスライダのテーパによって外部に拡張するジョーが設けてある。ジョーは外面側に歯が設けてあると共に回転防止用のフリクションスプリングが設けてあり、本体の先端部にはノーズが設けてある。ノーズにはジョーを上に押し上げるコイルスプリングが設けてある鋼管引き抜き用スピアである。
また、引き抜こうとする地中に設置されている鋼管内にテーパ作用によって外部に拡張するジョーを有するスピアを挿入して鋼管の内壁に固定し、振動を加えながら引き揚げることによって鋼管を引き抜く方法である。
【発明の効果】
【0006】
鋼管内に本発明のスピアを挿入し、鋼管内壁にスピアのテーパを利用して強固に固定し、適宜の振動を加えながら引き揚げることによって簡単に、また、効率よく地中に設置されている鋼管を引き抜くことができる。
ボーリング用のケーシングのみでなく、鋼管杭等の引き抜きにも応用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
スピアの実施例
図1は、本発明の引き抜き用のスピアであり、ボーリングロッドの先端に取り付けて引き抜き対象の鋼管内に挿入し、このスピアを鋼管内壁に押し付け、鋼管を地中から引き抜き回収するものである。
スピア1の本体10の上端部にはボーリングロッド2と接続するカップリング11が設けてあり、上部側面にはスピア1を鋼管内に挿入する際のフレを防止するためのガイド12が設けてある。本体10の下部は小径としてあり、上部より細くしてあると共に、テーパ31を有するスライダ3を上下動させるためのネジ30が外周面に設けてある。
【0008】
スライダ3は、四角断面で本体10のネジ30にかみ合う内ネジが設けてあり、角部が下拡がりのテーパ31としてある。鋼管径が大きな場合は、多角形断面を有している。スライダ3の各辺に対応した複数個のジョー4が上下動可能に設けてあり、スライダ3の下拡がりテーパに対応したテーパが形成してある。ジョー4の外面には鋼管内壁に食いつかせるための歯40が複数形成してある。また、中央には凹部41が形成してあり、板バネからなるフリクションスプリング42が固定してある。このフリクションスプリング42は、本体10の外周面より僅かに突出させてあり、引き抜き対象のケーシング内壁面に押し当てられ、その摩擦抵抗によってジョー4及びスライダ3が回転するのを防止するものである。
【0009】
本体10の下部先端にはノーズ13が固定してあり、先細りとした先端ガイド14がノーズ13を包囲しており、鋼管21への挿入を容易にしている。
ノーズ13にはコイルスプリング32が設けてあり、コイルスプリング32の上端に設けた押し上げ体33がコイルスプリング32の反発力でジョー4を上方向に押し上げている。
【0010】
次に、スピア1の動作を説明する。
図3に示すように、ボーリングロッド2の先端にスピア1を取り付け、鋼管21内に挿入する。
図2(1)に示すように、スライダ3を最下部に位置させた状態でボーリングロッド2の先端に連結して鋼管21内に挿入する。ジョー4の板バネは鋼管21の内壁に軽く接触しながら所定の深度に到達する。
図2(2)に示すように、ボーリングロッド2を回転してスピア本体10を回転させ、ネジ30の作用によってスライダ3を本体10に対して上昇させる。
フリクションスプリング42が鋼管21の内壁に押し当てられており、その摩擦抵抗によってジョー4及びスライダ3がロッドの回転に伴って共回りするのが防止される。
【0011】
スライダ3が上昇することによってテーパ作用によりジョー4は外側に押し出されて鋼管21の内壁に押し付けられ、ジョー4の歯40が鋼管21の内壁に食い込む。
図2(3)に示すように、ボーリングロッド2を徐々に引き揚げてジョー4を鋼管21の内壁に完全に食い込ませ、スピア1と鋼管21を一体化させる。ボーリングロッド2を引き揚げることによって鋼管21を引き抜くことができるようになる。
引き揚げと同時にボーリングロッドに地質に応じて15〜150Hzの振動を加えることによって鋼管外周と周辺地層との摩擦を軽減し、引き抜き易くする。
【0012】
スピアの位置の変更をする場合は、ボーリングロッド2を押し下げて図2(2)の状態に戻し、ボーリングロッド2を逆回転させてスライダ3を降下させてジョー4の鋼管21の内壁への食い込みを解放して図2(1)の状態とする。ジョー4はコイルスプリング32によって押し上げられており、スライダ3のみが降下するのでジョー4は縮径する。ボーリングロッド2を上下させることによって適宜の位置にスピア1を移動させて再セットすることができる。
【0013】
鋼管引き抜き作業の実施例
鋼管21の引き抜きにおいては、図3に示すように回転と振動を付加することができるドリル装置5を使用した。
150Aの鋼管21が砂層、巨礫を含む砂礫層互層に70mの深さに設置されていたものに対して本発明のスピア1を鋼管内に挿入降下させ、鋼管の内壁にスピア1を深度20mの位置にチャッキングした。砂層、巨礫を含む砂礫層互層に設置されていた150Aの鋼管に対して100〜150Hzの振動を付加しながら引き揚げたところ、無振動では引き抜き不能であった鋼管は問題なく引き抜くことができた。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のスピアの正面断面図及びA−A線横断面図。
【図2】本発明のスピアの作用説明図。
【図3】本発明の引き抜き方法の説明図。
【符号の説明】
【0015】
1 スピア
10 本体
11 カップリング
12 ガイド
13 ノーズ
14 先端ガイド
2 ボーリングロッド
21 鋼管
3 スライダ
31 テーパ
32 コイルスプリング
4 ジョー
40 歯
41 凹部
42 フリクションスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部にカップリングを有する本体、本体下部にはネジ作用で上下動する下拡がりのテーパを有するスライダが設けてあり、スライダの外側にはスライダのテーパによって外部に拡張するジョーが設けてあり、ジョーは外面側に歯が設けてあると共に回転防止用のフリクションスプリングが設けてあり、本体の先端部にはノーズが設けてあり、ノーズにはジョーを上に押し上げるコイルスプリングが設けてある鋼管引き抜き用スピア。
【請求項2】
ジョーを鋼管内壁の円周ほぼ全面均等に広い面積で当たる形状とし、引き抜く鋼管の変形を極力小さくした鋼管引き抜き用スピア。
【請求項3】
請求項1において、先端側にはノーズを包囲する先細りの先端ガイドが設けてあり、上端には本体外周にガイドが設けてある鋼管内でリリース可能な鋼管引き抜き用スピア。
【請求項4】
地中に設置されている鋼管にテーパを利用して外部に拡張するジョーを有するスピアを挿入して鋼管の内壁に固定し、振動を加えながら引き揚げる鋼管の引き抜き方法。
【請求項5】
請求項1または2、3の鋼管引き抜き用スピアをボーリングロッドの先端に連結して地中に設置されている鋼管に挿入し、ボーリングロッドを回転してジョーを外側に押し出して鋼管内壁に食い込ませ、ボーリングロッドに振動を付加しながら引き揚げる鋼管の引き抜き方法。
【請求項6】
請求項4または5において、振動数が15〜150Hzである鋼管の引き抜き方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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