説明

鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法

【課題】 複数の鋼管を順次連結してなる鋼管杭の連結を容易にすることにより、鋼管杭の地盤への貫入作業を効率良く行う。
【解決手段】 複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結構造であって、上下方向に連続する2本の鋼管の連結部間を連結する連結手段10、11を備え、該連結手段10、11は、下方の鋼管2の連結部3内側と上方の鋼管12の連結部13内側とに亘って挿入される軸線方向の分割線で複数に分割された内管29と、該内管29の各分割片30の外面に一体に設けられ、前記下方の鋼管2の連結部3端面に係止される凸部33と、前記下方の鋼管2の連結部3と前記内管29とを連結するとともに、前記上方の鋼管12の連結部13と前記内管29とを連結する複数のねじ部材44とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法に関し、特に、複数の小口径鋼管を順次連結してなる鋼管杭に有効な鋼管の連結構造及び連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数の小口径鋼管(以下、鋼管という。)を順次連結しながら地盤に貫入させる場合、鋼管同士を溶接によって連結する方法、鋼管同士をボルト等の締結部材で連結する方法、一方の鋼管の端部内周に雌ねじを設け、他方の鋼管の端部外周に雄ねじを設け、雌ねじと雄ねじとを互いに螺合させて締め付けることで連結する方法(例えば、特許文献1参照。)等が採られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−142122号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶接によって連結する方法は、下方の鋼管と上方の鋼管との間を全周に亘って溶接しなければならないため、その作業に非常に手間がかかる。また、ボルト等の締結部材によって連結する方法は、鋼管の内面側からボルト等の締結部材を締め付けることができないため、ボルト等の締結部材の取付部の構造が非常に複雑になる。さらに、雌ねじと雄ねじとを螺合させる方法は、雌ねじ及び雄ねじを設ける分だけ鋼管の肉厚を厚くしなければならないため、所定の耐力を得るためには鋼管の肉厚が必要以上に厚くなり、経済的でない。
【0005】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、複数の鋼管を容易に、短時間で連結することができるとともに、必要以上に厚い肉厚の鋼管を使用する必要がなく、経済的に有利な鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結構造であって、上下方向に連続する2本の鋼管の連結部間を連結する連結手段を備え、該連結手段は、下方の鋼管の連結部内側と上方の鋼管の連結部内側とに亘って挿入される軸線方向の分割線で複数に分割された内管と、該内管の各分割片の外面に一体に設けられ、前記下方の鋼管の連結部端面に係止される凸部と、前記下方の鋼管の連結部と前記内管とを連結するとともに、前記上方の鋼管の連結部と前記内管とを連結する複数のねじ部材とを備えていることを特徴とする。
【0007】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、複数の鋼管を上下方向に順次連結して所定の長さの鋼管杭を形成する場合、上下方向に連続する2本の鋼管の連結部内側に亘って内筒を挿入し、内筒の分割片の外面の凸部を下方の鋼管の連結部端面に係止させ、下方の鋼管の連結部と内筒とを複数のねじ部材で連結するとともに、上方の鋼管の連結部と内筒とを複数のねじ部材で連結する。そして、このような作業を連続して行うことにより、複数の鋼管を上下方向に順次連結することができ、所定の長さの鋼管杭を形成することができる。
【0008】
また、本発明において、前記内管の隣接する分割片の凸部間には段部が設けられ、前記上方の鋼管の連結部端面には、軸線方向に突出する凸部が設けられ、前記下方の鋼管の連結部端面には、前記凸部を係合させる軸線方向に凹む凹部が設けられ、前記凸部を前記内管の隣接する分割片の凸部間を通して前記凹部に係合させることにより、前記内管の隣接する分割片間が押し広げられ、各分割片の外面が前記下方の鋼管の連結部の内面及び前記上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられることとしてもよい。
【0009】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、上方の鋼管の凸部を、内筒の隣接する分割片の凸部間を通して下方の鋼管の凹部に係合させることにより、隣接する分割片間が上方の鋼管の凸部によって押し広げられ、各分割片の外面が下方の鋼管の連結部の内面及び上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられることになる。従って、内筒と下方の鋼管の連結部との間、及び内筒と上方の鋼管の連結部との間にガタが生じるようなことはなく、複数のねじ部材によって内筒と下方の鋼管の連結部、及び内筒と上方の鋼管の連結部とを強固に連結することができ、下方の鋼管と上方の鋼管とを内筒を介して強固に連結することができる。
【0010】
さらに、本発明において、前記下方の鋼管の連結部及び前記上方の鋼管の連結部には、前記ねじ部材を挿通させる複数のばか孔が設けられ、各ばか孔を挿通させた前記ねじ部材を前記内管にねじ込むことにより、前記内管の各分割片の外面が前記下方の鋼管の連結部の内面及び前記上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられることとしてもよい。
【0011】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、下方の鋼管の連結部の各ばか孔、及び上方の鋼管の連結部の各ばか孔内にねじ部材を挿入し、各ねじ部材を内筒の各分割片にねじ込むことにより、各分割片が下方の鋼管の連結部及び上方の鋼管の連結部の方向に引き寄せられ、各分割片の外面が下方の鋼管の連結部の内面及び上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられ、この状態で内筒と下方の鋼管の連結部及び上方の鋼管の連結部とが一体に連結されることになる。
【0012】
さらに、本発明において、複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結構造であって、上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に嵌合される第1の連結筒と、上方の鋼管の連結部内側に嵌合される第2の連結筒と、前記第1の連結筒の端面と前記第2の連結筒の端面とを密着させた状態で、前記第1の連結筒の外面と前記第2の連結筒の外面に亘って被嵌される軸線方向に複数に分割された外筒と、該外筒の各分割片と前記第1の連結筒とを連結するとともに、前記第2の連結筒とを連結する複数のねじ部材とを備えていることとしてもよい。
【0013】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、下方の鋼管側の第1の連結筒の端面と上方の鋼管側の第2の連結筒の端面とを密着させ、この状態で、第1の連結筒の外面と第2の連結筒の外面に亘って外筒を被嵌させ、外筒の各分割片と第1の連結筒及び第2の連結筒との間を複数のねじ部材で連結することで、下方の鋼管と上方の鋼管とが、第1の連結筒、第2の連結筒、及び外筒を介して一体に連結されることになる。
【0014】
さらに、本発明において、前記外筒の各分割片には、前記ねじ部材を挿通させる複数のばか孔が設けられ、各ばか孔を挿通させた前記ねじ部材を前記第1の連結筒及び前記第2の連結筒にねじ込むことにより、前記第1の連結筒の外面及び前記第2の連結筒の外面が前記外筒の各分割片の内面に押し付けられることとしてもよい。
【0015】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、外筒の各分割片の各ばか孔内にねじ部材を挿入し、各ねじ部材を第1の連結筒及び第2の連結筒にねじ込むことにより、第1の連結筒及び第2の連結筒が外筒の各分割片の方向に引き寄せられ、第1の連結筒及び第2の連結筒の外面が外筒の各分割片の内面に押し付けられ、この状態で外筒と第1の連結筒及び第2の連結筒とが一体に連結されることになる。
【0016】
さらに、本発明において、前記ねじ部材は、タッピングねじであることとしてもよい。
【0017】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、下方の鋼管、上方の鋼管、内筒、及び外筒にドリル等によって下孔を設けることなく、下方の鋼管、上方の鋼管、内筒、及び外筒にねじ部材をねじ込むことが可能となる。
【0018】
さらに、本発明において、前記鋼管は、口径が300mm以下、肉厚が6mm以下の小口径鋼管であることとしてもよい。
【0019】
本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造によれば、複数の小口径鋼管を上下方向に順次連結する作業を容易に行うことができ、鋼管杭の貫入作業を容易に行うことができる。
【0020】
さらに、本発明は、複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結方法であって、上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に、軸線方向の分割線で複数に分割された内管を挿入し、該内管の各分割片の外面に設けられた凸部を前記下方の鋼管の連結部端面に係止させ、前記下方の鋼管の連結部端面から突出させた前記内管の部分を前記上方の鋼管の連結部内側に挿入し、前記下方の鋼管の連結部と前記内管とを複数のねじ部材で連結するとともに、前記上方の鋼管の連結部と前記内管とを複数のねじ部材で一体に連結することを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明は、複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結方法であって、上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に第1の連結筒を嵌合させ、上方の鋼管の連結部内側に第2の連結筒を嵌合させ、前記第1の連結筒の端面と前記第2の連結筒の端面とを密着させ、前記第1の連結筒の外面と前記第2の連結筒の外面に亘って、軸線方向の分割線で複数に分割された外筒を被嵌させ、前記外筒の各分割片と前記第1の連結筒及び前記第2の連結筒とを複数のねじ部材で一体に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
以上、説明したように、本発明の鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法によれば、複数の鋼管を容易に連結することができるので、複数の鋼管を順次連結してなる鋼管杭の貫入作業を効率良く行うことができる。また、端部に連結用のねじ部を設ける必要がないので、鋼管の肉厚を厚くしなくてもよい。このため、材料費を削減することができ、全体としての工費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造の第1の実施の形態を示した概略図である。
【図2】本発明による鋼管杭における鋼管の連結方法の第1の実施の形態を示した概略図である。
【図3】本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造の第2の実施の形態を示した概略図である。
【図4】本発明による鋼管杭における鋼管の連結方法の第2の実施の形態を示した概略図である。
【図5】本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造の第3の実施の形態を示した概略図である。
【図6】本発明による鋼管杭における鋼管の連結方法の第4の実施の形態を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1及び図2には、本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法の第1の実施の形態が示されている。本実施の形態の鋼管杭における鋼管の連結構造は、図1及び図2に示すように、同一の口径及び肉厚の複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)を上下方向に順次連結することによって所定の長さに形成される鋼管杭1に有効なものであって、上下方向に連続する2本の鋼管間(第1の鋼管2と第2の鋼管12との間、第2の鋼管12と第3の鋼管23との間)を連結する連結手段(第1の連結手段10、第2の連結手段11)を備えている。
【0025】
各鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)は、口径が300mm以下、肉厚が6mm以下の小口径鋼管であって、本実施の形態においては、各鋼管に口径が267.4mm、肉厚が6mmの一般構造用炭素鋼鋼管(STK400)を使用している。
【0026】
第1の鋼管2は、軸線方向の一端部(上端部)に連結部3が設けられ、他端部(下端部)に地盤への貫入部が設けられている。第2の鋼管12及び第3の鋼管23は、軸線方向の両端部(上下端部)に連結部13、18、24、26が設けられている。第1の鋼管2の上端部の連結部3と第2の鋼管12の下端部の連結部13とが第1の連結手段10を介して互いに連結され、第2の鋼管12の上端部の連結部18と第3の鋼管23の下端部の連結部24とが第2の連結手段11を介して互いに連結される。同様に、第3の鋼管23と第4の鋼管とが第3の連結手段を介して互いに連結される。
【0027】
なお、第2の連結手段11以下の他の連結手段は、第1の連結手段10と同様の構成を有し、また、第3の鋼管23以下の他の鋼管は、第2の鋼管12と同一の構成を有しているので、以下においては、第1の連結手段10、第1の鋼管2、及び第2の鋼管12についてのみ説明し、他の連結手段及び鋼管の詳細な説明は省略する。
【0028】
第1の連結手段10は、第1の鋼管2の上端部の連結部3の内面と第2の鋼管12の下端部の連結部13の内面との間に亘って挿入される内筒29と、第1の鋼管2の上端部の連結部3と内筒29との間、及び第2の鋼管12の下端部の連結部13と内筒29との間をそれぞれ一体に連結する複数のねじ部材44とを備えている
【0029】
第1の鋼管2の上端部の連結部3端面には、軸線方向に凹む一対の台形状の凹部7が中心軸を挟んで対向して設けられている。また、第2の鋼管12の下端部の連結部13端面には、軸線方向に突出する一対の台形状の凸部17が中心軸を挟んで対向して設けられ、上端部の連結部18端面には、第1の鋼管2の凹部7と同一構成の一対の凹部22が設けられている。そして、第1の鋼管2の上端部の一対の凹部7と、第2の鋼管12の下端部の一対の凸部17とが相互に係合するようになっている。
【0030】
内管29は、筒状をなすものであって、第1の鋼管2の連結部3の内面と第2の鋼管12の連結部13の内面との間に亘って挿入可能な外径寸法に形成されている。本実施の形態においては、内管29に、口径が255.4mm、肉厚が6mm、長さが500mmの一般構造用炭素鋼鋼管(STK400))を使用し、この鋼管を軸線方向に2つに分割し、両分割片30、30の分割面32、32同士を互いに突き合せることにより、筒状に形成している。
【0031】
内筒29の各分割片30の外面31の長手方向の中央部には、各分割片30の周方向に延びる凸部33が所定の高さでそれぞれ一体に設けられ、この凸部33を第1の鋼管2の上端部の連結部3端面に係止させることにより、内筒29が第1の鋼管2の内部に落下するのが防止される。
【0032】
各凸部33は、各分割片30の周長よりも短く形成されており、両分割片30、30の分割面32、32同士を互いに突き合せた際に、それぞれの凸部33、33の端面34、34間に凸部33よりも一段低い(各分割片30の外面31と面一)の段部35が形成される。この一対の段部35、35を通じて第2の鋼管12の下端部の凸部17、17が第1の鋼管2の上端部の凹部22、22に挿入可能に構成されている。
【0033】
両分割片30、30の一対の段部35、35内に第2の鋼管12の一対の凸部17、17を挿入すると、両分割片30、30の両凸部33、33間が押し広げられることで、両凸部33、33と一体の両分割片30、30間が押し広げられ、各分割片30の外面31が、第1の鋼管2の上端部の連結部3の内面及び第2の鋼管12の下端部の連結部13の内面に押し付けられる。
【0034】
この場合、第2の鋼管12の一対の凸部17、17の幅、及び内筒29の一対の段部35、35の幅を適宜に設定することにより、各分割片30の外面31の連結部3及び連結部13の内面への押し付け力を所定の値に設定することができる。
【0035】
ねじ部材44は、棒状のタップねじ部と、タップねじ部の先端部に設けられるドリル部とからなる所謂ドリルねじであって、このねじ部材44を専用の電動ドライバー(図示せず)を用いて第1の鋼管2の連結部3及び第2の鋼管12の連結部13にそれぞれ外面側から打ち込むことにより、ドリル部によって第1の鋼管2の連結部3と内筒29とを貫通する下孔4、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29とを貫通する下孔14がそれぞれ削孔され、タップねじ部によって下孔4、14に雌ねじ5、15がそれぞれ成型される。
なお、第1の鋼管2の連結部3、及び第2の鋼管12の連結部13の所定の位置に予め下孔4、14を設けておき、この下穴4、14にタップねじ部によって雌ねじ5、15を成型することとしてもよい。
【0036】
そして、ねじ部材44を、成型された雌ねじ5、15に、それぞれ頭部が第1鋼管2の連結部3の外面及び第2の鋼管12の連結部13の外面に当接するまでねじ込むことにより、第1の鋼管2の連結部3と内筒29との間、及び第2の鋼管12の連結部13と内管29との間を一体に連結し、これにより、第1の鋼管2と第2の鋼管12とを内筒29を介して連結することができる。
なお、ねじ部材44としては、例えば、ピアスタ(商品名、ピアス販売株式会社)が有効である。
【0037】
次に、本実施の形態の鋼管杭の連結方法について説明する。
まず、図2(a)に示すように、第1の鋼管2を適宜な方法(回転させながら下方に押圧して地盤に貫入させる方法、振動を加えながら地盤に打ち込むことによって貫入させる方法等)によって地盤に貫入させ、連結部3が地表から突出した状態で第1の鋼管2の貫入作業を停止する。
【0038】
次に、図2(a)、(b)に示すように、地表から突出した第1の鋼管2の連結部3に、2つの分割片30、30の分割面32、32同士を突き合せて筒状に形成した内筒29の下部を挿入し、内筒29の各分割片30の外面の凸部33を第1の鋼管2の連結部3の上端面に係止させる。これにより、内筒29が第1の鋼管2の内部に落下するのが防止される。
【0039】
次に、図2(c)、(d)に示すように、第1の鋼管2の上方から第2の鋼管12を下降させて第2の鋼管12の連結部13の内面に内筒29の上部を挿入し、第2の鋼管12連結部13端面の一対の凸部17、17を内筒29の両分割片30、30の一対の段部35、35内に挿入し、両凸部33、33間を押し広げることによって両分割片30、30間を押し広げ、一対の凸部17、17を第1の鋼管2の連結部3端面の一対の凹部7、7内に係合させる。これにより、内筒29の各分割片30の外面31が第1の鋼管2の連結部3の内面及び第2の鋼管12の連結部13の内面に押し付けられる。
【0040】
次に、専用の電動ドライバーにねじ部材44を取り付け、電動ドライバーを用いてねじ部材44を第1の鋼管2の連結部3及び第2の鋼管12の連結部13の複数箇所に外面側から打ち込み、各ねじ部材44のドリル部によって第1の鋼管2の連結部3と内筒29の各分割片30とを貫通する下孔4、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29の各分割片30とを貫通する下孔14を削孔し、タップねじ部によって各下孔4、14に雌ねじ5、15を成型し、各雌ねじ5、15を利用して各ねじ部材44を第1の鋼管2の連結部3と内筒29の各分割片30との間、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29の各分割片30との間にねじ込み、所定のトルクで締め付ける。これにより、第1の鋼管2の連結部3と第2の鋼管12の連結部13との間が内筒29を介して一体に連結される。
【0041】
この場合、内筒29の各分割片30の外面31は、第1の鋼管2の連結部3の内面、及び第2の鋼管12の連結部13の内面に押し付けられた状態となっているので、第1の鋼管2の連結部3と内筒29の各分割片30との間、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29の各分割片30との間にガタが生じるようなことはなく、複数のねじ部材44によって第1の鋼管2と第2の鋼管12とを内筒29を介して強固に連結することができる。
【0042】
次に、第1の鋼管2の連結部3と第2の鋼管12の連結部13とを内筒29を介して連結した状態で、上記と同様の方法によって第1の鋼管2及び第2の鋼管12を地盤に更に貫入させ、第2の鋼管12の連結部18が地表から突出した状態で第1の鋼管2及び第2の鋼管12の貫入作業を停止させる。
【0043】
次に、地表から突出した第2の鋼管12の連結部18に対して、第1の鋼管2の連結部3と第2の鋼管12の連結部13との連結手順と同様の手順に従って第3の鋼管23を連結する。
【0044】
このようにして、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)を上下方向に順次連結することにより、所定の長さの鋼管杭1を地盤に貫入させることができ、この鋼管杭1によって地盤上の構造物を支持することができる。
【0045】
上記のように構成した本実施の形態による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法にあっては、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)を上下方向に順次連結して所定の長さの鋼管杭1を形成する場合に、第1の鋼管2の連結部3の内面と第2の鋼管12の連結部13の内面とに亘って第1の連結手段10の内筒29を挿入し、第1の鋼管2の連結部3と内筒29との間、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29との間にねじ部材44をねじ込んで締め付け、このような作業を第2の鋼管12と第3の鋼管23との連結、第3の鋼管23と第4の鋼管との連結に対して順次行えばよいことになる。
【0046】
従って、従来のように、第1の鋼管と第2の鋼管、第2の鋼管と第3の鋼管とを溶接によって連結する必要はなく、また、複雑な構造のボルト等の締結部材によって連結する必要もなく、さらに、雄ねじと雌ねじとを設けるために鋼管の肉厚を必要以上に厚くする必要もない。このため、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)の連結作業を容易に、短時間で行うことができ、鋼管杭1の貫入作業を効率良く行うことができ、また、材料費を抑えることができるので、工費を削減することができる。
【0047】
図3及び図4には、本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法の第2の実施の形態が示されている。本実施の形態の鋼管杭における鋼管の連結構造は、図3に示すように、第1の鋼管2の連結部3、及び第2の鋼管12の連結部13に、ねじ部材44を挿通させる複数のばか孔6、16を設け、各ばか孔6、16内に挿通させたねじ部材44を内筒29の各分割片30にねじ込むことにより、各分割片30を第1の鋼管2の連結部3の内面方向、及び第2の鋼管12の連結部13の内面方向に引き寄せ、各分割片30の外面31を第1の鋼管2の連結部3の内面、及び第2の鋼管12の連結部13の内面に押し付け、この状態でねじ部材44を更にねじ込むことにより、第1の鋼管2の連結部3と内筒29との間、及び第2の鋼管12の連結部13と内筒29との間を一体に連結したものである。
【0048】
なお、第2の鋼管12の連結部18にも同様の構成のばか孔19を設け、第3の鋼管23の連結部24及び連結部26にも同様の構成のばか孔を設け、第4の鋼管、第5の鋼管にも同様の構成のばか孔を設けている。
【0049】
また、本実施の形態においては、ねじ部材44をねじ込むことによって内筒29の各分割片30の外面31を第1の鋼管2の連結部3の内面、第2の鋼管12の連結部13の内面に押し付けることができるので、内筒29の分割片30、30間を押し広げなくてもよく、そのため、凸部33を各分割片30の周長と略同一長さの円弧状に形成している。従って、第1の実施の形態のように、第1の鋼管2の連結部3端面に凹部7、第2の鋼管12の連結部13端面に凸部17、連結部18端面に凹部22を設ける必要はないし、内筒29の両分割片30の凸部33、33間に段部35を設ける必要もない。
【0050】
本実施の形態の鋼管杭における鋼管の連結方法は、図4(a)、(b)に示すように、まず、第1の鋼管2を地盤に貫入させ、地表から突出させた第1の鋼管2の連結部3に内筒29の下部を挿入し、内筒29の各分割片30の凸部33を第1の鋼管2の連結部3端面に係止させ、この状態で第1の鋼管2の連結部3の各ばか孔6内にねじ部材44を挿入し、各ねじ部材44を内筒29の各分割片30の下部にねじ込み、内筒29の各分割片30の外面31を第1の鋼管2の連結部3の内面方向に引き寄せ、内筒29の各分割片30の外面31を第1の鋼管2の連結部3の内面に押し付け、この状態で、各ねじ部材44を更にねじ込んで第1の鋼管2の連結部3と内筒29の下部とを一体に連結する。
【0051】
次に、図4(c)、(d)に示すように、第1鋼管2の上方から第2の鋼管12を下降させて第2の鋼管12の連結部13の内面側に内筒29の上部を挿入し、第2の鋼管12の連結部13の各ばか孔16内にねじ部材44を挿入し、各ねじ部材44を内筒29の上部にねじ込み、内筒29の各分割片30の外面31を第2の鋼管12の連結部13の内面方向に引き寄せ、内筒29の各分割片30の外面31を第2の鋼管12の連結部13の内面に押し付け、この状態で、各ねじ部材44を更にねじ込んで第2の鋼管12の連結部13と内筒29の上部とを一体に連結する。
【0052】
このようにして、第1の鋼管2と第2の鋼管12とを内筒29を介して連結した後に、第1の鋼管2及び第2の鋼管12を更に地盤に貫入させ、地盤から突出させた第2の鋼管12の連結部18に上記と同様の手順に従って内筒29を介して第3の鋼管23を連結する。
【0053】
このようにして、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)を内筒29を介して順次連結することにより、所定の長さの鋼管杭1を地盤に貫入させることができ、この鋼管杭1によって地盤上の構造物を支持することができる。
【0054】
上記のように構成した本実施の形態による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)の連結作業を容易に、短時間で行うことができるので、鋼管杭1の貫入作業を効率良く行うことができ、工費を削減することができる。
【0055】
図5及び図6には、本発明による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法の第3の実施の形態が示されている。
本実施の形態の鋼管杭における鋼管の連結構造は、図5に示すように、第1の鋼管2の連結部3と第2の鋼管12の連結部13とを連結する第1の連結手段10を、第1の鋼管2の連結部3の内側に嵌合される筒状の第1の連結筒36と、第2の鋼管12の連結部13の内側に嵌合される筒状の第2の連結筒38と、第1の連結筒36の端面37と第2の連結筒38の端面39とを互いに突き合わせた状態で、第1の連結筒36及び第2の連結筒38に亘ってそれらの外面を覆うように設けられる軸線方向の分割線で複数に分割された筒状の外筒40と、外筒40の各分割片41と第1の連結筒36との間、及び外筒40の各分割片41と第2の連結筒38との間をそれぞれ一体に連結する複数のねじ部材44とによって構成したものである。
なお、第2の鋼管12の連結部18と第3の鋼管の下端部の連結部とを連結する第2の連結手段11、第3の鋼管の上端部の連結部と第4の鋼管の下端部の連結部とを連結する第3の連結手段は、第1の連結手段と同様の構成を有しているので、その詳細な説明は省略する。
【0056】
この場合、外筒40は、全長が第1の連結筒36の端面37と第2の連結筒38との端面39を突き合わせた状態で、第1の鋼管2の連結部3端面と第2の鋼管12の連結部13端面との間に収まり得る寸法に設定されるとともに、内径が第1の連結筒36及び第2の連結筒38の外径より若干小径に形成されている。これにより、外筒40を第1の連結筒36と第2の連結筒38の外面間に設けられた状態で、外筒40の各分割片41の内面を第1の連結筒36及び第2の連結筒38の外面に押し付けることができる。また、外筒40の各分割片41には複数のばか孔43が設けられ、各ばか孔43内にねじ部材44が挿通可能に構成されている。
【0057】
本実施の形態の鋼管杭の連結方法は、図6(a)、(b)に示すように、まず、第1の鋼管2を地盤に貫入させ、地表から突出させた第1の鋼管2の連結部3の上方に第2の鋼管12を位置し、第2の鋼管12を下降させて第1の鋼管2の連結部3の第1の連結筒36の端面37と第2の鋼管12の連結部13の第2の連結筒38の端面39とを突き合わせる。
【0058】
次に、図6(c)に示すように、第1の連結筒36及び第2の連結筒38の外面に対向するように外筒40の両分割片41、41を配置し、両分割片41、41を第1の連結筒36と第2の連結筒38の外面間に設け、各分割片41の各ばか孔43内にねじ部材44を挿入し、各ねじ部材44を第1の連結筒36及び第2の連結筒38にねじ込んで締め付ける。
【0059】
これにより、第1の連結筒36及び第2の連結筒38の外面が外筒40の各分割片41の内面方向に引き寄せられ、第1の連結筒36及び第2の連結筒38の外面が外筒40の各分割片41の内面に押し付けられ、この状態で第1の連結筒36及び第2の連結筒38と外筒40の各分割片41とが一体に連結され、第1の鋼管2の連結部3と第2の鋼管12の連結部13との間が第1の連結筒36、第2の連結筒38、及び外筒40を介して連結される。
【0060】
このようにして、第1の鋼管2と第2の鋼管12とを第1の連結筒36、第2の連結筒38、及び外筒40を介して連結した後に、第1の鋼管2及び第2の鋼管12を更に地盤に貫入させ、地盤から突出させた第2の鋼管12の連結部18に第3の鋼管23の連結部24を上記と同様の手順に従って連結し、第3の鋼管23の連結部26に第4の鋼管の下端部をそれぞれ連結する。
【0061】
このようにして、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)を順次連結することにより、所定の長さの鋼管杭1を地盤に貫入させることができ、この鋼管杭1によって地盤上の構造物を支持することができる。
【0062】
上記のように構成した本実施の形態による鋼管杭における鋼管の連結構造及び連結方法にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様に、複数の鋼管(第1の鋼管2、第2の鋼管12、第3の鋼管23)の連結作業を容易に、短時間で行うことができ、鋼管杭1の貫入作業を効率良く行うことができ、工費を削減することができる。
【0063】
なお、前記各実施の形態においては、丸型鋼管を対象として説明したが、角型鋼管を鋼管杭に使用する場合にも本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 鋼管杭
2 第1の鋼管
3 連結部
4 下孔
5 雌ねじ
6 ばか孔
7 凹部
10 第1の連結手段
11 第2の連結手段
12 第2の鋼管
13 連結部
14 下孔
15 雌ねじ
16 ばか孔
17 凸部
18 連結部
19 ばか孔
22 凹部
23 第3の鋼管
24 連結部
26 連結部
29 内筒
30 分割片
31 外面
32 分割面
33 凸部
34 端面
35 段部
36 第1の連結筒
37 端面
38 第2の連結筒
39 端面
40 外筒
41 分割片
43 ばか孔
44 ねじ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結構造であって、
上下方向に連続する2本の鋼管の連結部間を連結する連結手段を備え、
該連結手段は、下方の鋼管の連結部内側と上方の鋼管の連結部内側とに亘って挿入される軸線方向の分割線で複数に分割された内管と、該内管の各分割片の外面に一体に設けられ、前記下方の鋼管の連結部端面に係止される凸部と、前記下方の鋼管の連結部と前記内管とを連結するとともに、前記上方の鋼管の連結部と前記内管とを連結する複数のねじ部材とを備えていることを特徴とする鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項2】
前記内管の隣接する分割片の凸部間には段部が設けられ、前記上方の鋼管の連結部端面には、軸線方向に突出する凸部が設けられ、前記下方の鋼管の連結部端面には、前記凸部を係合させる軸線方向に凹む凹部が設けられ、前記凸部を前記内管の隣接する分割片の凸部間を通して前記凹部に係合させることにより、前記内管の隣接する分割片間が押し広げられ、各分割片の外面が前記下方の鋼管の連結部の内面及び前記上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項3】
前記下方の鋼管の連結部及び前記上方の鋼管の連結部には、前記ねじ部材を挿通させる複数のばか孔が設けられ、各ばか孔を挿通させた前記ねじ部材を前記内管にねじ込むことにより、前記内管の各分割片の外面が前記下方の鋼管の連結部の内面及び前記上方の鋼管の連結部の内面に押し付けられることを特徴とする請求項1に記載の鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項4】
複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結構造であって、
上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に嵌合される第1の連結筒と、上方の鋼管の連結部内側に嵌合される第2の連結筒と、前記第1の連結筒の端面と前記第2の連結筒の端面とを密着させた状態で、前記第1の連結筒の外面と前記第2の連結筒の外面に亘って被嵌される軸線方向に複数に分割された外筒と、該外筒の各分割片と前記第1の連結筒とを連結するとともに、前記第2の連結筒とを連結する複数のねじ部材とを備えていることを特徴とする鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項5】
前記外筒の各分割片には、前記ねじ部材を挿通させる複数のばか孔が設けられ、各ばか孔を挿通させた前記ねじ部材を前記第1の連結筒及び前記第2の連結筒にねじ込むことにより、前記第1の連結筒の外面及び前記第2の連結筒の外面が前記外筒の各分割片の内面に押し付けられることを特徴とする請求項4に記載の鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項6】
前記ねじ部材は、タッピングねじであることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項7】
前記鋼管は、口径が300mm以下、肉厚が6mm以下の小口径鋼管であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載の鋼管杭における鋼管の連結構造。
【請求項8】
複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結方法であって、
上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に、軸線方向の分割線で複数に分割された内管を挿入し、該内管の各分割片の外面に設けられた凸部を前記下方の鋼管の連結部端面に係止させ、
前記下方の鋼管の連結部端面から突出させた前記内管の部分を前記上方の鋼管の連結部内側に挿入し、
前記下方の鋼管の連結部と前記内管とを複数のねじ部材で連結するとともに、前記上方の鋼管の連結部と前記内管とを複数のねじ部材で一体に連結することを特徴とする鋼管杭における鋼管の連結方法。
【請求項9】
複数の鋼管を上下方向に順次連結してなる鋼管杭における鋼管の連結方法であって、
上下方向に連続する2本の鋼管の下方の鋼管の連結部内側に第1の連結筒を嵌合させ、上方の鋼管の連結部内側に第2の連結筒を嵌合させ、前記第1の連結筒の端面と前記第2の連結筒の端面とを密着させ、
前記第1の連結筒の外面と前記第2の連結筒の外面に亘って、軸線方向の分割線で複数に分割された外筒を被嵌させ、
前記外筒の各分割片と前記第1の連結筒及び前記第2の連結筒とを複数のねじ部材で一体に連結することを特徴とする鋼管杭における鋼管の連結方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate