説明

鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法

【課題】
継手内部における土砂の排出能力と切削能力を同時に向上できて、継手内部の土砂を短時間で排出できるようにして、土砂の排出を効率よく行える鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法を提供できるようにする。
【解決手段】
高圧水を先端ノズル10の高圧水噴射部10aに導水する二重供給管5の少なくとも高圧水供給路8を金属素材等の超高圧に耐える素材で形成し、高圧水供給管6から供給した超高圧水を噴射口11より噴射(水16)できるようにするとともに、先端ノズル10の空気噴射部10bより空気を噴射(空気17)して、
前記噴射した水16で土砂4を掘削して同土砂4を水16に含ませ、さらに前記噴射した空気17によって水16の中に生じる気泡の上昇力によって同水16とともに水16の中の土砂4を継手3の上部開口3a方向に上昇させて同継手3の上部開口3aより外部に排出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板を地中に挿入した際、同鋼管矢板の継手内部に浸入した土砂を排出するための土砂の排出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中に挿入した鋼管矢板の継手内部に詰まっている土砂は、高圧ホースの先端から高圧水を噴射しながら同高圧ホースを継手上部開口より継手内部に挿入して行って、高圧水によって切削された土砂を、継手上部開口方向に上昇して行く水の流れとともに、同水の流れを維持するために高圧ホースの先端付近から上向きに噴射した空気の上昇流に乗せて上部開口方向に上昇させて、同上部開口より外部に排出している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この土砂の排出方法には以下のような問題があり、すなわち、継手内部に詰まっている土砂の切削能力を優先しようと高圧ホース先端の噴射口口径を小にすると、切削能力は大になるが高圧水の噴射水量が小になって継手上部開口方向に上昇して行く水の流れが弱くなり(排出能力の低下)、深いところの土砂を継手上部開口まで上昇させることができなくなって、途中まで上昇した土砂が再び継手下方に沈降する。
【0004】
また、切削した土砂の排出能力を優先しようとする場合は、継手内部に大量の水を注入して継手上部開口方向に上昇して行く水の流れを強にしなければならないため高圧ホース先端の噴射口口径を大にするので、水の噴射圧が小になって土砂の切削能力が低下する。
【0005】
したがって、従来の継手内部における土砂の排出方法は、上述のように土砂を排出する際の排出能力と切削能力が反比例するので、土砂の排出能力と切削能力を同時に向上させることができなかった。
【0006】
【特許文献1】実公昭58−42496号公報(第1〜3頁、第1〜5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、継手内部における土砂の排出能力と切削能力を同時に向上できて、継手内部の土砂を短時間で排出できるようにして、土砂の排出を効率よく行える鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法を提供できるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法は、地中に挿入した鋼管矢板の継手内部に詰まっている土砂を、同継手上部の開口より外部に排出するための排出方法であって、空気を供給する空気供給路と、同空気供給路内に配する高圧水を供給する高圧水供給路を備えてなる二重供給管を、同二重供給管の下方先端に備える前記高圧水供給路に接続する噴射ノズルより高圧水を少なくとも二重供給管の前進方向に噴射させながら同二重供給管を鋼管矢板の継手上部開口より同継手内部に挿入して行き、同高圧水により継手内部に詰まっている土砂を掘削して同土砂を水に含ませて同水とともに土砂を継手上部開口方向に流し、また必要に応じて、高圧水の噴射により水で充満する継手内部に二重供給管の前記ノズル上方近傍に備える前記空気供給路に接続する空気噴射口より空気を同二重供給管の挿入方向に空気を噴射し、同水中に生じる気泡の上昇力により同水とともに水中の土砂を継手上部開口方向に上昇させて同継手上部開口より外部に排出するものとしてある。
【0009】
また前記噴射ノズルの先端に掘削用ビットを設けるとともに二重供給管を回転させながら継手内部に挿入して行き、噴射ノズルより噴射している高圧水とともに掘削用ビットで継手内部の土砂を掘削するよう構成したものとしてある。
【0010】
また前記空気噴射口に逆止弁が設けられており、同弁は通常で閉となっていて空気が噴射された際に同噴射圧力によって開になるよう構成したものとしてある。
【0011】
また前記空気と高圧水の供給量を、継手上部の開口より外部に排出される土砂の排出状況に応じてそれぞれを独立制御するものとしてある。
【0012】
さらに前記二重供給管の少なくとも高圧水供給路が、超高圧に耐える素材で形成したものとしてある。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法によれば、二重供給管の少なくとも高圧水供給路を超高圧に耐える素材で形成しているので、土砂切削用に供給する高圧水の圧力をさらに高めることができて超高圧水を供給できるため、したがって噴射口口径を大にしても土砂の切削能力が低下しないで土砂排出に重要な水の噴射水量を充分に確保できて、継手内部の土砂を短時間で大量に排出することができる。
【0014】
さらに、二重供給管の空気供給路も高圧あるいは超高圧に耐える素材で形成すれば、切削した土砂を上昇させる空気の送気量や送気圧も高めることができ、したがって水で充満する継手内に噴射した空気の気泡は勢い良く継手上部開口方向に上昇して水とともに水中の土砂を継手上部開口方向にどんどん上昇させることもできるため、前述した超高圧水の噴射と併用すれば、継手内部の土砂をさらに短い時間で排出することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、地中1に挿入した鋼管矢板2の継手3内部に侵入している土砂4を、継手3の上部開口3aから外部に排出している状態を示している。
【0017】
鋼管矢板2の継手3内に侵入している土砂4の排出方法を説明すると、鋼材からなる二重供給管5に接続している高圧水供給管6、空気供給管7で外部の装置(図示は省略)から供給している高圧水、空気を、図2に示すように、二重供給管5に備える高圧水供給路8、空気供給路9を通過させて二重供給管5の先端に設けている噴射ノズルたる先端ノズル10の高圧水噴射部10a、空気噴射部10bよりそれぞれを噴射している。
【0018】
そして、先端ノズル10の高圧水噴射部10aにおける噴射口11より噴射している高圧の水16で継手3内の土砂4を掘削し、同掘削した土砂4を水16中に含ませて継手3の上部開口3a方向への水16の流れに乗せている。
【0019】
また継手3内に充満している水16の中に、先端ノズル10の空気噴射部10bにおける噴射口14より噴射している空気17により気泡(空気17)を生じさせ、同気泡(空気17)の上昇力によって同水16とともに水中の土砂4を上部開口3a方向へ大に上昇させて同上部開口3aから外部に排出している。
【0020】
前記高圧水供給管6、空気供給管7で外部から供給している高圧水、空気の供給量は、鋼管矢板2を挿入している地盤に合わせて一定量を供給しているが、継手3の上部開口3aより外部に排出される土砂4の排出状況に応じて、高圧水、空気の供給量を独立制御する場合もある。
【0021】
そして、二重供給管5の少なくとも高圧水供給路8を、例えば金属素材等の超高圧に耐える素材で形成しているので、高圧水供給管6から供給している高圧水の圧力をさらに高めて超高圧水を供給する場合もある。
【0022】
また二重供給管5の空気供給路9も、前述の高圧水供給路8と同じように例えば金属素材等の超高圧に耐える素材で形成して、空気供給路9から供給している空気の圧力をさらに高めて高圧あるいは超高圧の空気を供給する場合もある。
【0023】
また、継手3の上部開口3aに近い浅いところの土砂4を排出する場合は、前記空気17を噴射しないで、土砂4を先端ノズル10の高圧水噴射部10aにおける噴射口11より噴射している水16の流れに乗せて上部開口3aまで上昇させ、同上部開口3aから外部に排出させる場合もある。すなわち、土砂4を水16の流水力だけで継手3の上部開口3aまで上昇させて同上部開口3aから外部に排出する。
【0024】
上述のように、空気17が先端ノズル10の空気噴射部10bから噴射されていない場合は、図3に示すように、先端ノズル10の空気噴射部10bに設けられている空気17の噴射口14を逆止弁13によって閉じ、同噴射口14から土砂4が流入しないようにしている。
【0025】
そして、先端ノズル10の空気噴射部10bより空気17を噴射させる場合は、図4に示すように、逆止弁13の弁部材が備える復元力あるいは他部材で構成している復帰手段によって閉じられている噴射口14を空気17の噴射圧で強制的に押し開け、その開いた噴射口14から空気17を噴射している。
【0026】
鋼管矢板2を挿入する地盤に硬質の層がある場合は、図5に示すように、高圧水噴射部10aに地盤を切削するための掘削用ビット18を設けている先端ノズル10を二重供給管5に装着するとともに同二重供給管5を管の軸方向に回転させながら継手3内に挿入して行き、先端ノズル10の高圧水噴射部10aにおける噴射口12から噴射している水16とともに掘削用ビット18で継手内部に侵入している硬質の土砂を掘削する場合もある。
【0027】
実施例における符号15は、逆止弁13を先端ノズル10の空気噴射部10bに固定するための固定部材、符号19は、二重供給管5を吊り下げているクレーン(図示は省略)のワイヤである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る土砂の排出方法により鋼管矢板の継手内部から土砂を排出している状態を示す施工図。
【図2】土砂の排出状態を示す継手の一部拡大断面図。
【図3】先端ノズル部分を示す斜視図。
【図4】先端ノズル部分を示す斜視図。
【図5】先端ノズル部分を示す斜視図。
【符号の説明】
【0029】
1 地中
2 鋼管矢板
3 継手
3a 上部開口
4 土砂
5 二重供給管
6 高圧水供給管
7 空気供給管
8 高圧水供給路
9 空気供給路
10 先端ノズル
10a 高圧水噴射部
10b 空気噴射部
11 噴射口
12 噴射口
13 逆止弁
14 噴射口
15 固定部材
16 水
17 空気
18 切削用ビット
19 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に挿入した鋼管矢板の継手内部に詰まっている土砂を、該継手上部の開口より外部へ排出するための排出方法であって、
高圧に耐える鋼材で形成され高圧の空気を供給する空気供給路と、この空気供給路の内周側に位置し高圧に耐える鋼材で形成され高圧水を供給する高圧水供給路と、からなる二重供給管を、この二重供給管の下方先端に装着されている噴射ノズルとともに鋼管矢板の継手内部に挿入して前進させるステップと、
上記高圧水供給路に接続されている上記噴射ノズルの高圧水噴射口より、二重供給管の前進方向へ高圧水を噴射させるとともに、上記空気供給路に接続されている上記噴射ノズルの空気噴射口より、二重供給管の前進方向へ空気を噴射させるステップと、
上記噴射ノズルから空気に同伴されながら噴射される高圧水で、上記鋼管矢板の継手内部に詰まっている土砂を掘削するステップと、
上記噴射された水と上記掘削された土砂とが混合した泥水を、上記噴射された空気によって該泥水中に生じる気泡の上昇力を利用して上記鋼管矢板の継手上部の開口方向へ上昇させるステップと、
上記二重供給管が上記鋼管矢板の継手上部開口よりも高い位置まで延在する状態で、上記鋼管矢板の継手上部の開口より上記泥水を排出させるステップと、
を含み、
上記噴射ノズルの上側かつ上記空気供給路の外周側の壁に逆止弁を備えていて、この逆止弁は、通常は閉じているが、上記空気供給路に空気が流れるとき、この空気から圧力を受けて外周側上方へ向けて該空気を噴射させるように開く逆止弁であることを特徴とする鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法。
【請求項2】
地盤に硬質の層がある場合、切削用ビット付きの先端ノズルを上記二重供給管に装着して、上記二重供給管を軸回転させながら継手内部へ挿入していき、上記先端ノズルの高圧水噴射口から噴射している高圧水とともに上記掘削用ビットで継手内部の硬質の土砂を掘削することを含む請求項1に記載の鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法。
【請求項3】
上記空気の供給量と上記高圧水の供給量は、上記鋼管矢板の継手上部の開口から外部へ排出される土砂の排出状況に応じて独立制御されることを特徴とする請求項1または2に記載の鋼管矢板の継手内部における土砂の排出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158981(P2012−158981A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121281(P2012−121281)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2008−29068(P2008−29068)の分割
【原出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(508042629)株式会社 水明グラウト (2)
【Fターム(参考)】