説明

鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースおよび鋼製サイロの外壁パネルの接合方法

【課題】一枚の鋼板に切り起こし加工(切り曲げ加工ともいう。)を施すだけで簡易に製作することができる、経済性、及び環境保全性に優れた構成サイロの外壁パネル接合用ガイドピース、および鋼製サイロの外壁パネルの接合方法を提供する。
【解決手段】鋼製サイロを構成する外壁パネル10の端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するための外壁パネル接合用ガイドピース1において、前記ガイドピース1は、一枚の鋼板1aを加工して楔挿入用の開口部1cを有する切り起こし部1bをほぼ直角方向に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼製サイロを構成する外壁パネルの端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するために用いられる外壁パネル接合用ガイドピース、および鋼製サイロの外壁パネルの接合方法の技術分野に属する。
前記ガイドピースは、同ガイドピースに形成した楔挿入用の開口部内に挿入する楔とで、周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合する外壁パネルの面の段違いをなくす案内部材としての役割を果たすものである。
【背景技術】
【0002】
前記ガイドピースは、従来、図12に示したように、両端部異径の長孔bの小径側の端縁部に沿ってほぼ鉛直な棒状部材(ピン)cを一体的に固着した鋼板aが用いられている(例えば、特許文献1の第2図、第4図、特許文献2の第2図、及び特許文献3の第3図の符号12を参照)。
このガイドピースは、隣接する外壁パネル同士の間に150mm〜400mm程度のピッチで多数用いられ、図13に実施例を示したように、長孔b内に挿入する楔dとで、鉛直方向(又は周方向)に突き合わせ溶接接合する外壁パネル10、10の面の段違いをなくす目的で用いられる。
【0003】
具体的に、従来のガイドピースは、図13に示したように、鋼板aに固着した棒状部材cを鉛直方向(又は周方向)に隣接する外壁パネル10、10に跨るように当てがい、当該隣接する外壁パネル10、10の突き合わせ縁間から鋼板aを突き出させ、鋼板aの長孔b内に楔dを打ち込み、隣接する外壁パネル10、10の面の段違いをなくし、その後に行う突き合わせ溶接接合作業に供される。
【0004】
前記突き合わせ溶接接合作業は、前記外壁パネル10、10の突き合わせ縁間の目地に沿って、前記ガイドピース(鋼板a)を除く部位を断続的に溶接し、しかる後、ガイドピース取付部位に生じた隙間を溶接し、もって鉛直方向(又は周方向)に隣接する外壁パネル10、10を隙間なく溶接接合する手順で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭53−16612号公報
【特許文献2】特公昭59−33478号公報
【特許文献3】特開昭58−153868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記突き合わせ溶接接合作業において、前記ガイドピース取付部位に生じた隙間を溶接する場合、ガイドピース(鋼板a)の両外側部が溶接されて隣接する外壁パネル10、10に固着されているため、楔dを取り外して撤去することはできても、ガイドピース自体を引き抜いて撤去することはできなかった。よって、図14に示したように、両外側部が溶接されたガイドピースを、隣接する外壁パネル10、10の外面側および内面側で溶断し、溶断することにより現れた(形成された)隙間e部を溶接し、もって鉛直方向(又は周方向)に隣接する外壁パネルを突き合わせ溶接接合していた。
【0007】
したがって、溶断されて撤去されたガイドピース片X、Y(図13参照)は、廃材になるほかなかった。鋼製サイロを構築する際に用いるガイドピースは数百個程度用いる場合も少なくなく、数百個ものガイドピースを使い捨てにせざるを得ない現状は、環境問題が重要視される今日においては改善されるべき点である。
特に従来のガイドピースは、図12に示したように、1枚の鋼板aに両端部異径の長孔bを穿設した上で、棒状部材cを裏当に適正な角度を保持しながら長孔bの小径側の端縁部に沿って溶接により一体的に固着して成形している。よって、熟練技術を必要とするなど非常に手間がかかり材料費等を含めた製造コストが嵩む。このような部材単価が嵩むガイドピースをすべて使い捨てにせざるを得ない現状をも考慮すると、不経済に過ぎ、環境保全の面および経済面での負担がすこぶる大きいという問題があった。
【0008】
ところで、特許文献1に係る第2頁第4欄の19〜21行目には、「・・・本付溶接する。そしてテーパーピン23を抜き取り、スペーサー17を外方よりたたいて取り除きその隙間を溶接する。」との記載が認められる。
しかし、両外側部が本付溶接されたスペーサー17(ガイドピース)を取り除く作業は至難である。特に、鉛直方向に隣接する(積み重ねる)外壁パネルの突き合わせ溶接接合においては、当該外壁パネルの自重作用もありガイドピースを取り除くことは不可能に近い。仮に取り除くことができたとしても作業に難渋することは明らかな上に、ガイドピースの取付数に応じて数百回程度行うことを考えると、作業効率があまりにも悪く、作業工程、工期の進捗に大きな障害となるし、労務費の負担も大きいという別の問題が生じることは明らかである。
よって、実際の現場作業においては、図14に示したように、ガイドピースを溶断する手法を採用しているのが実情であり、上記段落[0007]と同様の問題があった。
【0009】
また、特許文献2に係る第1頁第2欄の30〜31行目には、「スペーサ50はこの溶接の際に溶接しながら取り外していく。」との記載が認められる。
しかし、目地部を溶接接合しながらスペーサ50(ガイドピース)を取り外す作業は、熟練技術を必要とする。特に、鉛直方向に隣接する(積み重ねる)外壁パネルの突き合わせ溶接接合においては当該外壁パネルの自重作用もあり、作業に難渋することは明らかな上に、なにより厳密な水平度が要求される鋼製サイロの構築には不適切であった。
よって、実際の現場作業においてはやはり、図14に示したように、ガイドピースを溶断する手法を採用しているのが実情であり、上記段落[0007]と同様の問題があった。
【0010】
本発明の目的は、一枚の鋼板に切り起こし加工(切り曲げ加工ともいう。)を施すだけで簡易に製作することができる、経済性、及び環境保全性に優れた構成サイロの外壁パネル接合用ガイドピース、および鋼製サイロの外壁パネルの接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記背景技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースは、鋼製サイロを構成する外壁パネルの端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するための外壁パネル接合用ガイドピースにおいて、前記ガイドピースは、一枚の鋼板を加工して楔挿入用の開口部を有する切り起こし部をほぼ直角方向に設けてなることを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースにおいて、前記鋼板は、その幅方向両端部に、前記切り起こし部とは反対方向に屈曲された一対のフランジ部を備え、当該屈曲線に沿って門形の切り起こし部が切り起こされていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載した発明に係る鋼製サイロの外壁パネルの接合方法は、鋼製サイロを構成する外壁パネルの端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するための外壁パネル接合用ガイドピースを用いた鋼製サイロの外壁パネルの接合方法において、
周方向又は鉛直方向に隣接する外壁パネルの内面側または外面側に跨がるように前記ガイドピースの平面部を当てがい、該ガイドピースから突出した楔挿入用の開口部を有する切り起こし部を前記隣接する外壁パネルの間から外面側または内面側に突き出させた後、
前記突き出た切り起こし部の楔挿入用の開口部内に楔を挿入し、当該隣接する外壁パネルで挟持させて、隣接する外壁パネルの面の段違いをなくすこと、
次いで、隣接する外壁パネルの突き合わせ縁間における前記ガイドピースを除く部位を溶接した後、
前記楔を取り外し、前記突き出た切り起こし部を当該隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断すること、
前記溶断することにより形成された隙間を溶接し、もって周方向又は鉛直方向に隣接する外壁パネルを溶接接合することを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項3に記載した鋼製サイロの外壁パネルの接合方法において、下位の外壁パネルと、該下位の外壁パネルよりパネル厚が薄い上位の外壁パネルとを鉛直方向に突き合わせ溶接する場合、前記下位および上位の外壁パネルの内面側又は外面側を面一に揃え、該面一に揃えた側に前記ガイドピースの平面部を当てがうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピース(図1、図7参照)および請求項3、4に係る鋼製サイロの外壁パネルの接合方法(図2〜図6、図8〜図11参照)によれば、ガイドピースを、一枚の鋼板に切り起こし加工を施すだけで簡易に製作でき、量産することができる。
よって、従来技術に係るガイドピース(図12参照)、及び前記ガイドピースを用いた外壁パネルの接合方法(図13、図14参照)と比して、部材点数も少なく、熟練技術も無用となり、材料費等を含めた製造コストを大幅に削減できる。
鋼製サイロを構築するにあたり、通常、数百個程度のガイドピースを用いることを考慮すると、この効果は顕著にあらわれる。よって、経済性、及び環境保全性に非常に優れた前記ガイドピース、および鋼製サイロの外壁パネルの接合方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例1に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースを表した斜視図と6面図である。
【図2】Aは、図1に係るガイドピースを用いて周方向に隣接する外壁パネルを接合する状態を示した斜視図であり、Bは、前記ガイドピースの取付要領を例示した斜視図である。
【図3】図2に係るガイドピースを周方向に隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断した状態を拡大して示した斜視図である。
【図4】Aは、図1に係るガイドピースを用いて鉛直方向に隣接する外壁パネルを接合する状態を示した斜視図であり、Bは、前記ガイドピースの取付要領を例示した斜視図である。
【図5】図4に係るガイドピースを鉛直方向に隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断した状態を拡大して示した斜視図である。
【図6】A、Bはそれぞれ、請求項4に記載した発明に係る鋼製サイロの外壁パネルの接合方法の実施例を示した立面図である。
【図7】実施例2に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースを表した斜視図と6面図である。
【図8】Aは、図7に係るガイドピースを用いて周方向に隣接する外壁パネルを接合する状態を示した斜視図であり、Bは、前記ガイドピースの取付要領を例示した斜視図である。
【図9】図8に係るガイドピースを周方向に隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断した状態を拡大して示した斜視図である。
【図10】Aは、図7に係るガイドピースを用いて鉛直方向に隣接する外壁パネルを接合する状態を示した斜視図であり、Bは、前記ガイドピースの取付要領を例示した斜視図である。
【図11】図10に係るガイドピースを鉛直方向に隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断した状態を拡大して示した斜視図である。
【図12】従来技術に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピースを表した斜視図である。
【図13】図12に係る前記ガイドピースを用いて鉛直方向に隣接する外壁パネルを接合する状態を示した斜視図である。
【図14】図13に係る前記ガイドピースを鉛直方向に隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断した状態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピース(以下、単にガイドピースという。)、および鋼製サイロの外壁パネルの接合方法の実施例を、以下、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係るガイドピース1を示している。このガイドピース1は、一枚の金属製の鋼板1aを切り起こし加工し、楔挿入用の開口部1cを有するアーチ状の切り起こし部1bをほぼ直角方向に設けてなり、図2A又は図4Aに示したように、鋼製サイロ9を構成する外壁パネル10、10の端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合する際に用いられる。ちなみに図1中の符号1dは、前記切り起こし加工により鋼板1aに生じた切抜部を示している。
本実施例で用いるガイドピース1の寸法は、図1について、符号R=25.3mm、S=16mm、T=2.3mm、U=φ2.3mm、V=35.0mm、W=33mm、X=45mm、Y=57mmで例示しているが勿論これに限定されず、作業員の手指で取扱い易い大きさ及び重量であればよい。ただし、前記楔3を打ち込む作業に十分に耐えうる剛性は要求される。
【0019】
上記構成のガイドピース1を用い、周方向に隣接する外壁パネル10、10を接合する方法について説明する。
先ず図2Aに示したように、前記ガイドピース1の本体部(平面部)1aを、周方向に隣接する外壁パネル10、10の内面側(又は外面側)に跨るように横向きに当てがい、前記外壁パネル10、10の突き合わせ縁間から外面側(内面側)へ楔挿入用の開口部1cを突き出させた前記切り起こし部1bの基端部を当該外壁パネル10、10で挟持させる構成で、複数のガイドピース1を150mm〜400mm程度のピッチで位置決めして目地を揃える。
次に、前記楔挿入用の開口部1c内に楔3をほぼ水平に打ち込み、隣接する外壁パネル10、10の面の段違いをなくす。
前記ガイドピース1の位置決めは、その切り起こし部1bの基端部を前記外壁パネル10、10で挟持させるまで、或いは楔3を打ち込むまで作業員が手指で押さえたり、図2Bに示したように、いずれか一方の外壁パネル10の周方向端部に点付け溶接する等の手法が、作業員の員数等に応じて適宜採用される。
【0020】
続いて、前記外壁パネル10、10の周方向端部の対応する位置に予め仮付けされたアングル材(寄せピース)4、4のボルト孔の位置合わせを行い、当該一致したボルト孔にボルト5を通しナット6をねじ込み締結する。かくして、隣接する外壁パネル10、10の目地は厳密に揃えられ、当該外壁パネル10、10のずり動きも確実に防止される。
しかる後、周方向に隣接する外壁パネル10、10の突き合わせ縁間における前記ガイドピース1を除く部位に、当該外壁パネル10、10の外面側及び内面側から両面溶接を行う。
【0021】
続いて、前記楔3を前記ガイドピース1の開口部1cから取り外し、図3に示したように、前記ガイドピース1の切り起こし部1bを、周方向に隣接する外壁パネル10、10の外面側および内面側で溶断する。切り起こし部1bにおける前記外壁パネル10、10の外面側の溶断作業は、当該外壁パネル10、10の外側面に沿って溶断し、内面側の溶断作業は、ガイドピース1の本体部1aの裏面側から切り起こし1bの基端部を溶断して行う。
【0022】
しかる後、溶断することにより形成された隙間部2を溶接し、もって周方向に隣接する外壁パネル10、10を溶接接合する。
【0023】
以上の手順を周方向に隣接する外壁パネル10、10について繰り返し行うことにより、鋼製サイロの一段部分を担う円筒形リングを構築する。前記円筒形リングは、鋼製サイロの所要高さに応じて複数構築される。
【0024】
次に、鉛直方向に隣接する外壁パネル(円筒形リング)を接合する方法について説明する。
鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10同士を接合する場合、先ず、周方向に隣接する外壁パネル10、10を繰り返し溶接接合して構築した前記円筒形リングの上に、別異に構築した円筒形リングをクレーン等の重機で吊り支持して一段積み重ねる。
前記別異の円筒形リングを積み重ねる際に、図4Aに示したように、前記ガイドピース1の本体部1aを、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の内面側(又は外面側)に跨るように当てがい、前記外壁パネル10、10の突き合わせ縁間から外面側(又は内面側)へ楔挿入用の開口部1cを突き出させた前記切り起こし部1bの基端部を当該外壁パネル10、10で挟持させる構成で、複数のガイドピース1を150mm〜400mm程度のピッチで位置決めして目地を揃える。
次に、前記楔挿入用の開口部1cに楔3をほぼ鉛直に打ち込み、隣接する外壁パネル10、10、ひいては円筒形リングの面の段違いをなくす。
前記ガイドピース1の位置決めは、円筒形リングを構成する外壁パネル10の上端に単に掛け留めたり、その切り起こし部1bを前記外壁パネル10、10で挟持させるまで、或いは楔3を打ち込むまで作業員が手指で押さえたり、図4Bに示したように、下位の外壁パネル10の上端に点付け溶接する等の手法が、作業員の員数等に応じて適宜採用される。
【0025】
なお、図示例に係る鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10は、同厚(同形・同大)で実施している。よって、前記ガイドピース1は、その本体部1aを外壁パネル10、10の外面側に当てがって実施することも勿論できる。
ちなみに図4Aの符号7は、必要に応じて円筒形リングの上端部に仮付けされる案内板を示している。当該案内板7は、鉛直方向の外壁パネル10、10の接合作業が終了次第、適宜溶断して撤去される。
【0026】
しかる後、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の突き合わせ縁間における前記ガイドピース1を除く部位に、当該外壁パネル10、10の外面側及び内面側から両面溶接を行う。
【0027】
続いて、前記楔3を前記ガイドピース1の開口部1cから取り外し、図5に示したように、前記ガイドピース1の切り起こし部1bを、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の外面側および内面側で溶断する。切り起こし部1bにおける前記外壁パネル10、10の外面側の溶断作業は、当該外壁パネル10、10の外側面に沿って溶断し、内面側の溶断作業は、ガイドピース1の本体部1aの裏面側から切り起こし1bの基端部を溶断して行う。
【0028】
しかる後、溶断することにより形成された隙間部2を溶接し、もって鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10、ひいては上下に積み重ねた円筒形リングを溶接接合する。
【0029】
以上の手順を鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10(円筒形リング)について、作業足場を仮設する等して繰り返し行うことにより、所要高さの鋼製サイロを構築する。
【0030】
したがって、実施例1に係るガイドピース1(図1参照)、及び前記ガイドピースを用いた外壁パネルの接合方法(図2〜図5参照)によれば、ガイドピース1を、一枚の鋼板1aに切り起こし加工を施すだけで簡易に製作でき、量産することができる。
よって、従来技術に係るガイドピース(図12参照)、及び前記ガイドピースを用いた外壁パネルの接合方法(図13、図14参照)と比して、部材点数も少なく、熟練技術も無用となり、材料費等を含めた製造コストを削減できる。
鋼製サイロを構築するにあたり、通常、数百個程度のガイドピース1を用いることを考慮すると、この効果は顕著にあらわれる。よって、経済性、及び環境保全性に非常に優れた前記ガイドピース1、及び同ガイドピース1を用いた外壁パネルの接合方法を実現することができる。
【0031】
ちなみに鋼製サイロには、上位に積み重ねる外壁パネル(円筒形リング)のパネル厚を下位の外壁パネル(円筒形リング)のパネル厚より薄くして、構造力学上合理的な構造で構築するものがある。このような構造の鋼製サイロは、鉛直方向に隣接する外壁パネル(円筒形リング)10、10について、その外面側を面一に揃えて構築する場合(図6A参照)と、内面側を面一に揃えて構築する場合(図6B参照)とがある。
よって、外壁パネル10、10の外面側を面一に揃えて構築する場合は、図6Aに示したように、前記ガイドピース1の本体部1aを外壁パネル10、10の外面側に当てがって実施し、外壁パネル10、10の内面側を面一に揃えて構築する場合は、図6Bに示したように、前記ガイドピース1の本体部1aを外壁パネル10、10の内面側に当てがって実施する。以下に説明する実施例2についても同様の技術的思想とする。
【実施例2】
【0032】
図7は、実施例2に係るガイドピース11を示している。このガイドピース11は、一枚の金属製の鋼板11aを切り起こし加工し、楔挿入用の開口部11cを有する切り起こし部11bをほぼ直角方向に設けてなる点は、上記実施例1に係るガイドピース1と同様である。本実施例2に係るガイドピース11は、さらに、前記鋼板11aの幅方向両端部に、前記切り起こし部11bとは反対方向に屈曲された補強用の一対のフランジ部11d、11dを備えている点が相違する。また、前記切り起こし部11bの形状は、前記屈曲線に沿って門形に切り起こされている点も相違する。ちなみに、図7中の符号11eは、切り起こし加工により切り残された舌片部を示している。
【0033】
上記構成のガイドピース11は、図8A又は図10Aに示したように、鋼製サイロ9を構成する外壁パネル10、10の端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合する際に用いられる。
本実施例で用いるガイドピース11の寸法は、図7について、符号R=35mm、S=16mm、T=12mm、U=φ2.3mm、V=42mm、W=47mm、X=31mm、Y=63mmで例示しているが勿論これに限定されず、作業員の手指で取扱い易い大きさ及び重量であればよい。ただし、前記楔3を打ち込む作業に十分に耐えうる剛性は要求される。
【0034】
上記構成のガイドピース11を用い、周方向に隣接する外壁パネル10、10を接合する方法は、上記実施例1と同様である。
すなわち、先ず図8Aに示したように、前記ガイドピース11の本体部11a(本体部11aに延設する舌片部11e、フランジ部11dを含む。以下同じ。)を、周方向に隣接する外壁パネル10、10の内面側(又は外面側)に跨るように横向きに当てがい、前記外壁パネル10、10の突き合わせ縁間から外面側(又は内面側)へ楔挿入用の開口部11cを突き出させた前記切り起こし部11bの基端部を当該外壁パネル10、10で挟持させる構成で、複数のガイドピース11を150mm〜400mm程度のピッチで位置決めして目地を揃える。
次に、前記ガイドピース11の開口部11c内に楔3をほぼ水平に打ち込み、隣接する外壁パネル10、10の面の段違いをなくす。
前記ガイドピース11の位置決めは、その切り起こし部11bの基端部を、前記外壁パネル10、10で挟持させるまで、或いは楔3を打ち込むまで作業員が手指で押さえたり、図8Bに示したように、いずれか一方の外壁パネル10の周方向端部に点付け溶接する等の手法が、作業員の員数等に応じて適宜採用される。
【0035】
続いて、前記外壁パネル10、10の周方向端部の対応する位置に予め仮付けされたアングル材(寄せピース)4、4のボルト孔の位置合わせを行い、当該一致したボルト孔にボルト5を通しナット6をねじ込み締結する。かくして、隣接する外壁パネル10、10の目地は厳密に揃えられ、当該外壁パネル10、10のずり動きも確実に防止される。
しかる後、周方向に隣接する外壁パネル10、10の突き合わせ縁間における前記ガイドピース11を除く部位に、当該外壁パネル10、10の外面側及び内面側から両面溶接を行う。
【0036】
続いて、前記楔3をガイドピース11の開口部11cから取り外し、図9に示したように、前記ガイドピース11の切り起こし部11bを、周方向に隣接する外壁パネル10、10の外面側および内面側で溶断する。切り起こし部11bにおける前記外壁パネル10、10の外面側の溶断作業は、当該外壁パネル10、10の外側面に沿って溶断し、内面側の溶断作業は、ガイドピース11の本体部11aの裏面側から切り起こし11bの基端部を溶断して行う。
【0037】
しかる後、溶断することにより形成された隙間部12を溶接し、もって周方向に隣接する外壁パネル10、10を溶接接合する。
【0038】
以上の手順を周方向に隣接する外壁パネル10、10について繰り返し行うことにより、鋼製サイロの一段部分を担う円筒形リングを構築する。前記円筒形リングは、鋼製サイロの所要高さに応じて複数構築される。
【0039】
鉛直方向に隣接する外壁パネル(円筒形リング)を接合する方法も、上記実施例1と同様である。
すなわち、周方向に隣接する外壁パネル10、10を繰り返し溶接接合して構築した前記円筒形リングの上に、別異に構築した円筒形リングを積み重ねる際に、図10Aに示したように、前記ガイドピース11の本体部11aを、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の内面側(又は外面側)に跨るように当てがい、前記外壁パネル10、10の突き合わせ縁間から外面側(又は内面側)へ楔挿入用の開口部11cを突き出させた前記切り起こし部11bの基端部を当該外壁パネル10、10で挟持させる構成で、複数のガイドピース11を150mm〜400mm程度のピッチで位置決めして目地を揃える。
次に、前記楔挿入用の開口部11cに楔3をほぼ鉛直に打ち込み、隣接する外壁パネル10、10、ひいては円筒形リングの面の段違いをなくす。
前記ガイドピース11の位置決めは、円筒形リングを構成する外壁パネル10の上端に単に掛け留めたり、その切り起こし部11bを前記外壁パネル10、10で挟持させるまで、或いは楔3を打ち込むまで作業員が手指で押さえたり、図10Bに示したように、下位の外壁パネル10の上端に点付け溶接する等の手法が、作業員の員数等に応じて適宜採用される。
【0040】
なお、図示例に係る鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10は、同厚(同形・同大)で実施している。よって、前記ガイドピース11は、その本体部11aを外壁パネル10、10の外面側に当てがって実施することも勿論できる。
ちなみに図10Aの符号7は、必要に応じて外壁パネル10の上端部に仮付けされる案内板を示している。当該案内板7は、鉛直方向の外壁パネル10、10の接合作業が終了次第、適宜溶断して撤去される。
【0041】
しかる後、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の突き合わせ縁間における前記ガイドピース11を除く部位に、当該外壁パネル10、10の外面側及び内面側から両面溶接を行う。
【0042】
続いて、前記楔3を前記ガイドピース11の開口部11cから取り外し、図11に示したように、前記ガイドピース11の切り起こし部11bを、鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10の表側面および裏側面で溶断する。切り起こし部11bにおける前記外壁パネル10、10の外面側の溶断作業は、当該外壁パネル10、10の外側面に沿って溶断し、内面側の溶断作業は、ガイドピース11の本体部11aの裏面側から切り起こし11bの基端部を溶断して行う。
【0043】
しかる後、溶断することにより形成された隙間部12を溶接し、もって鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10、ひいては上下に積み重ねた円筒形リングを溶接接合する。
【0044】
以上の手順を鉛直方向に隣接する外壁パネル10、10(円筒形リング)について、作業足場を仮設する等して繰り返し行うことにより、所要高さの鋼製サイロを構築する。
【0045】
したがって、実施例2に係るガイドピース11(図7参照)、及び前記ガイドピース11を用いた外壁パネルの接合方法(図8〜図11参照)によれば、上記実施例1と同様の作用効果を奏する。
すなわち、ガイドピース11を、一枚の鋼板11aに切り起こし加工を施すだけで簡易に製作でき、量産することができるので、従来技術に係るガイドピース(図12参照)、及び前記ガイドピースを用いた外壁パネルの接合方法(図13、図14参照)と比して、部材点数も少なく、熟練技術も無用となり、材料費等を含めた製造コストを削減できる。
鋼製サイロを構築するにあたり、通常、数百個程度のガイドピース11を用いることを考慮すると、この効果は顕著にあらわれる。よって、経済性、及び環境保全性に非常に優れた前記ガイドピース11、及び同ガイドピース11を用いた外壁パネルの接合方法を実現することができる。
【0046】
以上に実施例1、2を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施例の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
例えば、本発明に係る鋼製サイロの外壁パネルの接合方法は、図1と図7に示したガイドピースを用いて実施しているがこれに限定されない。要するに、平面部を有する鋼板に、楔挿入用の開口部を有するように切り起こし加工を施せば、種々のバリエーションのガイドピースを製作することができ、上記実施例1、2で説明したような同様の手順で、鋼製サイロの外壁パネルの接合方法を実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ガイドピース
1a 本体部(鋼板)
1b 切り起こし部
1c 楔挿入用の開口部
1d 切抜部
2 隙間部
3 楔
4 アングル材
5 ボルト
6 ナット
7 案内材
9 鋼製サイロ
10 外壁パネル
11 ガイドピース
11a 本体部(平面部)
11b 切り起こし部
11c (楔挿入用の)開口部
11d フランジ部
11e 舌片部
12 隙間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製サイロを構成する外壁パネルの端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するための外壁パネル接合用ガイドピースにおいて、
前記ガイドピースは、一枚の鋼板を加工して楔挿入用の開口部を有する切り起こし部をほぼ直角方向に設けてなることを特徴とする、鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピース。
【請求項2】
前記鋼板は、その幅方向両端部に、前記切り起こし部とは反対方向に屈曲された一対のフランジ部を備え、当該屈曲線に沿って門形の切り起こし部が切り起こされていることを特徴とする、請求項1に記載した鋼製サイロの外壁パネル接合用ガイドピース。
【請求項3】
鋼製サイロを構成する外壁パネルの端縁同士を周方向又は鉛直方向に突き合わせ溶接接合するための外壁パネル接合用ガイドピースを用いた鋼製サイロの外壁パネルの接合方法において、
周方向又は鉛直方向に隣接する外壁パネルの内面側または外面側に跨がるように前記ガイドピースの平面部を当てがい、該ガイドピースから突出した楔挿入用の開口部を有する切り起こし部を前記隣接する外壁パネルの間から外面側または内面側に突き出させた後、
前記突き出た切り起こし部の楔挿入用の開口部内に楔を挿入し、当該隣接する外壁パネルで挟持させて、隣接する外壁パネルの面の段違いをなくすこと、
次いで、隣接する外壁パネルの突き合わせ縁間における前記ガイドピースを除く部位を溶接した後、
前記楔を取り外し、前記突き出た切り起こし部を当該隣接する外壁パネルの外面側および内面側で溶断すること、
前記溶断することにより形成された隙間を溶接し、もって周方向又は鉛直方向に隣接する外壁パネルを溶接接合することを特徴とする、鋼製サイロの外壁パネルの接合方法。
【請求項4】
下位の外壁パネルと、該下位の外壁パネルよりパネル厚が薄い上位の外壁パネルとを鉛直方向に突き合わせ溶接する場合、前記下位および上位の外壁パネルの内面側又は外面側を面一に揃え、該面一に揃えた側に前記ガイドピースの平面部を当てがうことを特徴とする、請求項3に記載した鋼製サイロの外壁パネルの接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−1918(P2012−1918A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135865(P2010−135865)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(595027099)株式会社ニッケンビルド (22)
【Fターム(参考)】