説明

錠剤コーティング装置及び錠剤コーティング方法

【課題】錠剤のコーティング処理を連続的にしかも非接触にて実施可能なコーティング装置及び方法を提供する。
【解決手段】錠剤コーティング装置1は、錠剤16を一方向に連続的に搬送するベルトコンベア11を備える。ベルトコンベア11の略中央部には、ピエゾ素子を用いたジェットノズル41を有するノズルヘッド10が設けられている。ノズルヘッド10は、インクジェットプリンタのプリンタヘッドと同様の構成を有しており、そこからコーティング基材の微小な液滴が噴射される。ベルトコンベア11上の錠剤に対し、ノズルヘッド10からコーティング基材の微小な液滴を噴射し、錠剤16の表面にコーティング基材の皮膜を形成する。錠剤16は、ベルトコンベア11にて搬送されつつ、非接触状態にて連続的にコーティング処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品・食品・健康食品等に用いられる錠剤のコーティング装置及び方法に関し、特に、ピエゾ素子を用いたジェットノズルにより錠剤表面に被覆層を形成するコーティング処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品や食品等においては、薬物や食品等が持つ苦みや匂いをマスキングすると共に、大気中の水分や酸素から内部の薬品等を保護し、分解や劣化を効果的に防止するため、医薬品等の表面に糖衣液等の皮膜を形成するコーティング処理が広く実施されている。このようなコーティング処理は、従来より、回転ドラムを用いたドラム型(パン型)のコーティング装置により行われるのが一般的である。例えば、特許文献1には、多角形断面(ここでは、八角形)のコーティングパンと呼ばれる回転ドラムを備えた装置が記載されている。回転ドラムは水平軸線を中心に回転し、その内部にはスプレー装置が設置されている。回転ドラム内に投入された粉粒体はドラムの回転に伴って転動し、その表面にはスプレー装置からコーティング液が噴霧される。その際、回転ドラム内には、給排気ダクトから適宜、熱風や冷風が供給・排気され、これにより、コーティング基材が被処理物表面にて蒸発乾固し、コーティング層が形成される。
【特許文献1】特開平6-63376号公報
【特許文献2】特開昭61-57267号公報
【特許文献3】特表2005-531330号公報
【特許文献4】特表2000-512303号公報
【特許文献5】特開2006-89741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、このような従来のコーティング処理方式は、回転ドラム内に被処理物を所定量投入し、コーティング処理が終了するまで次回の被処理物を投入しない、いわゆるバッチ式の処理のため、時間当たりの処理量に限界があるという問題があった。これに対し、例えば、特許文献2のように、弾性を有する多孔質体にコーティング液を含浸させ、それに被処理物を順次圧接させながら通過させることにより、コーティング処理を連続的に実施できるようにした装置も提案されている。しかしながら、かかる方式は、多孔質体が被処理物の圧接される接触式のコーティング処理のため、コーティング表面の美観維持や摩損防止が難しいという問題がある。また、圧接条件や処理速度、多孔質体の材質やコーティング液の含浸状態等、多岐に亘る条件設定も必要となるため、現実的には実用化されていないのが実情である。
【0004】
本発明の目的は、錠剤のコーティング処理を連続的にしかも非接触にて実施可能なコーティング装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の錠剤コーティング装置は、錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成する錠剤コーティング装置であって、錠剤を一方向に連続的に搬送可能な錠剤搬送手段と、前記錠剤搬送手段に近接して配置され、ピエゾ素子の動作により、前記錠剤に対し前記コーティング基材の微小な液滴を噴射するノズル装置とを有することを特徴とする。
【0006】
本発明にあっては、錠剤搬送手段を設け、この錠剤搬送手段によって錠剤を搬送しつつピエゾ素子を用いたノズル装置により錠剤のコーティング処理を行うようにしたので、非接触状態にて連続的にコーティング処理を実施できる。このため、錠剤の美感向上や摩損防止を図りつつ、連続コーティング処理が可能となる。また、本発明の錠剤コーティング装置は、非接触処理のため、従来、コーティング処理が不可能であった、摩損度の大きい錠剤や、硬度の小さい柔らかな錠剤、崩壊し易い錠剤などにもコーティング処理を施すことができる。
【0007】
前記錠剤コーティング装置において、前記ノズル装置により、400〜700dpiの噴射密度にて前記コーティング基材の液滴を噴射するようにしても良い。このように、ノズル装置の液滴を、写真印刷や印字に用いられるインクジェットプリンタの液滴よりもやや大きめにすることにより、錠剤全面に均一な膜厚の皮膜層を形成でき、コーティング品質の向上が図られる。また、前記コーティング基材は、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、酢酸ビニル樹脂などや、カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコールなどのワックス類よりなる群から選択される物質を含むものであっても良い。
【0008】
一方、本発明の錠剤コーティング方法は、ピエゾ素子を用いたノズル装置により、錠剤に対しコーティング基材の微小な液滴を噴射し、前記錠剤表面に前記コーティング基材の皮膜を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、ピエゾ素子を用いたノズル装置により錠剤のコーティング処理を行うようにしたので、非接触状態にて錠剤表面に皮膜を形成でき、錠剤の美感向上や摩損防止を図りつつ、錠剤表面にフィルムコーティング層を形成することが可能となる。また、本発明の錠剤コーティング装置は、非接触処理のため、従来、コーティング処理が不可能であった、摩損度の大きい錠剤や、硬度の小さい柔らかな錠剤、崩壊し易い錠剤などにもコーティング処理が可能となる。
【0010】
前記錠剤コーティング方法において、前記ノズル装置により、400〜700dpiの噴射密度にて前記コーティング基材の液滴を前記錠剤に噴射するようにしても良い。このように、ノズル装置の液滴を、写真印刷や印字に用いられるインクジェットプリンタの液滴よりもやや大きめにすることにより、錠剤全面に均一な膜厚の皮膜層を形成でき、コーティング品質の向上が図られる。また、前記コーティング基材は、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム及び酢酸ビニル樹脂などや、カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコールなどのワックス類よりなる群から選択される物質を含むものであっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の錠剤コーティング装置によれば、錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成する錠剤コーティング装置にて、錠剤を一方向に連続的に搬送可能な錠剤搬送手段を設けると共に、この錠剤搬送手段に近接して、ピエゾ素子の動作により、錠剤に対しコーティング基材の微小な液滴を噴射するノズル装置を配置したので、非接触状態にて錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成することができ、錠剤の美感向上や摩損防止を図りつつ、錠剤表面にフィルムコーティング層を形成することが可能となる。また、本発明の錠剤コーティング装置は、非接触処理のため、従来、コーティング処理が不可能であった、摩損度の大きい錠剤や、硬度の小さい柔らかな錠剤、崩壊し易い錠剤などにもコーティング処理を施すことができ、コーティング処理対象の拡大を図ることが可能となる。
【0012】
本発明の錠剤コーティング方法によれば、ピエゾ素子を用いたノズル装置により、錠剤に対しコーティング基材の微小な液滴を噴射し、錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成するようにしたので、非接触状態にて錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成することができ、錠剤の美感向上や摩損防止を図りつつ、錠剤表面にフィルムコーティング層を形成することが可能となる。また、本発明の錠剤コーティング装置は、非接触処理のため、従来、コーティング処理が不可能であった、摩損度の大きい錠剤や、硬度の小さい柔らかな錠剤、崩壊し易い錠剤などにもコーティング処理を施すことができ、コーティング処理対象の拡大を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例である錠剤コーティング装置のシステム構成を示す説明図である。図1に示すように、錠剤コーティング装置1(以下、コーティング装置1と略記する)は、大別すると、コーティング処理部2と、コーティング液供給部3及び制御部4とから構成されている。本発明によるコーティング装置1では、コーティング処理部2に、ピエゾ素子(圧電素子)を用いたノズルヘッド10が設置されている。ノズルヘッド10に対しては、制御部4による制御の下、コーティング液供給部3からコーティング基材が供給される。コーティング処理部2では、ノズルヘッド10により錠剤にコーティング基材が噴射され、錠剤表面に非接触にてコーティング層が形成されるようになっている。
【0014】
コーティング処理部2には、ベルトコンベア11を用いた錠剤搬送手段が設置されている。ベルトコンベア11は、図示しないモータによって駆動される駆動プーリ12と、回転自在に配置された従動プーリ13と、駆動プーリ12と従動プーリ13との間に掛け渡された搬送ベルト14とから構成されている。搬送ベルト14の上流側には、錠剤供給部15が設けられており、そこで被処理物たる錠剤16が搬送ベルト14上に載せられる。一方、搬送ベルト14の下流側には、錠剤排出部17が設けられており、そこでコーティング処理された錠剤16が搬送ベルト14から降ろされる。
【0015】
コーティング処理部2には、さらに、ノズルヘッド10が設置されている。ノズルヘッド10は、錠剤供給部15と錠剤排出部17の中間位置に配置されており、ここで錠剤16にコーティング処理が施される。ノズルヘッド10は、ホットホース21を介してコーティング液供給部3と、また、制御線22を介して制御部4と接続されている。図1に示すように、コーティング液供給部3には、コーティング基材23が貯留された加温タンク24が設けられている。加温タンク24には、ヒータ25が取り付けられており、制御部4によって加温タンク24内の温度がコントロールされている。コーティング液供給部3にはまた、ポンプ26が配置されており、制御部4による制御の下、加温タンク24からコーティング基材23がノズルヘッド10に供給される。
【0016】
制御部4には、制御線22やヒータ25、ポンプ26が接続されるインターフェース部31と、インターフェース部31とバスライン32を介して接続されたCPU(中央演算処理装置)33及び入出力部34が設けられている。入出力部34には、処理条件等を入力する入力部(テンキー,入力ボタン,スイッチ等)34aと、処理状況等を表示するモニタ34bが設けられている。制御部4にはさらに、ROM35、RAM36が設けられており、ROM35にはコーティング処理を実施する制御プログラムが格納されている。また、RAM36には、入力部にて入力された処理条件や、現在の処理状況等が保存される。
【0017】
ここで、コーティング装置1のノズルヘッド10には、前述のように、ピエゾ素子を用いたジェットノズル(ノズル装置)41が使用されている。図2は、ジェットノズル41の構成を示す説明図であり、コーティング装置1では、図2に示すようなジェットノズル41が多数(30〜100個程度)配置され、ノズルヘッド10を形成している。ノズルヘッド10には、インクジェットプリンタのプリンタヘッドと同様のものが使用されるが、インクジェットプリンタと異なり、ノズルヘッド10自体は移動せずに装置本体(図示せず)に固定されている。
【0018】
図2に示すように、ジェットノズル41には、隔壁42a,42bに囲まれた圧力室43が設けられている。隔壁42a外面にはピエゾ素子44が配置され、隔壁42bにはノズル孔45が貫通形成されている。ピエゾ素子44は電気−機械変換素子であり、制御部4と制御線22を介して接続され、制御部4から入力される電気信号により機械的に変形する。ノズル孔45は50μm程度の微小孔であり、1個のジェットノズル41当たり1〜10個程度設けられ、1個のノズルヘッド10には400〜600個程度のノズル孔45が配設されている。ピエゾ素子44に対しては10kHz程度の高周波電圧が供給され、これにより、ピエゾ素子44から圧力室43に振動が付加され、ノズル孔45から液滴が吐出される。液滴の大きさや吐出頻度は、印加電圧の周波数と電圧値により適宜制御することが可能である。
【0019】
インクジェットプリンタでは、ピエゾ素子44の変形方向として、図2において長手方向に振動する「縦振動型」と、厚さ方向に振動する「撓み型」の2種類が存在する。一般に、写真印刷や印字の場合には、写真等の高解像度化・高密度化が求められるため、変形量が大きく取れる「縦振動型」が採用されることが多い(特に、高級機種)。これに対し、錠剤のコーティングでは、写真等に比して噴射液滴の微小化・高密度化の要求は少なく、錠剤全面に均一な膜厚を有するコーティング層を形成するという観点では、むしろ、噴射密度(インクジェットプリンタで言う解像度と同義)は高過ぎない方が有利となる。この場合、噴射密度の高いジェットノズル41を用いると、却って膜厚にムラが生じるおそれがあり、コーティング目的から見ると、高噴射密度(高解像度)のノズルは不利に作用する。
【0020】
一方、特許文献3〜5では薬品や食品等にインクジェット印刷を行う構成が示されているが、そこでは、請求項2などに高解像度である点が謳われている。これは、識別用文字等の印刷処理は、コーティング処理と異なり、印刷部位が特定され、文字判別のため高解像度が要求されるためである。この点、錠剤全面に均一な膜厚のフィルム層(皮膜)を形成するコーティング処理は、位置決め工程等は不要であり、高解像度も要求されないなど、その処理形態を根本的に異にしている。このため、コーティング装置1では、解像度よりも量産性を優先して「撓み型」をピエゾ素子44の変形方向として採用しており、安価な部品にてコーティング装置1を構成できる。また、より低噴射密度(例えば、100〜300dpi程度)のジェットノズルを採用することも可能である。
【0021】
このようなジェットノズル41は、次のようにしてコーティング用の液滴をノズル孔45から噴出させる。図3は、その場合のジェットノズル41の動作を示す説明図である。ピエゾ素子44に制御部4から電圧が印加されると、ピエゾ素子44は、図3(a)のように円弧状に撓む。隔壁42aは、ピエゾ素子44と共に動作可能なように弾性的に形成されており、ピエゾ素子44の変形に伴って、隔壁42aも同様に円弧状に変形する。これにより、圧力室43内のコーティング基材23は、図3(a)のように室内側に引き込まれる。
【0022】
コーティング基材23を室内に引き込んだ後、ピエゾ素子44への電圧印加を停止する。電圧印加が停止されると、ピエゾ素子44は急激に元の形状に戻り、それに伴い、隔壁42aも同様に作動する。すなわち、図3(a)のように、上に凸の形で撓んでいた隔壁42aが図3(b)のように急速に平板状に戻る。このため、一旦、圧力室43内に引き込まれたコーティング基材23は、隔壁42aの動作により下方へ押され、これにより、ノズル孔45からコーティング基材23が押し出される。ノズル孔45から押し出されたコーティング基材23は、液滴46となってジェットノズル41から吐出され、搬送ベルト14上の錠剤16に吹き付けられる。
【0023】
次に、本発明によるコーティング装置1を用いたコーティング処理について説明する。ここではまず、錠剤供給部15に被処理物となる錠剤16を供給する。錠剤16は、錠剤供給部15にて搬送ベルト14上に載せられ、そのままノズルヘッド10の下方に移動する。ノズルヘッド10からは、錠剤16の上面にコーティング基材23が吹き掛けられる。ノズルヘッド10から噴射された液滴47は、錠剤16の表面上に1mm以下のドットとなって付着する。ノズルヘッド10からは同時に500個程度の液滴が錠剤16上に吹き掛けられ、これにより、錠剤表面にコーティング基材23の皮膜が形成される。
【0024】
この場合、コーティング基材23としては、加熱により、高温で噴射が可能となるように溶融し、流動性が容易に確保されることが求められる。その一方、冷却して室温となったときには、ある程度の固さが得られることにより、コーティングされた面同士が接触したときに付着することがないことが求められる。このため、コーティング基材23には、55°C以上に融点あるいは凝固点(両者は純物質では一致するが、不純な物質では必ずしも一致しない)を持つワックス(例えば、カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸、ステアリルアルコール等)などを使用するのが好ましく、ここでは、無溶媒で使用でき速乾性のある低沸点ワックスを使用するのが好ましい。
【0025】
このようなワックスコーティングでは、ワックス塗布により、錠剤16が崩壊しにくくなるため、崩壊し易い錠剤でも薄いコーティング層で足り、このような極めて薄いコーティング層形成に当該コーティング装置1は好適である。また、錠剤16を着色する場合には、コーティング基材23に、着色料や、着色料添加のための油脂や、ワックス分散キャリヤ(グリセリン,ポロピレングリコール等)、ワックス基材(カルナバワックス等)などを含ませても良い。
【0026】
さらに、コーティング基材23として、55°C以上に融点、凝固点あるいは軟化点を持つ物質(ポリエチレングリコール類,ポリオキシエチレン,ポリオキシプロピレングリコール類,ロジン,水素添加ロジングリセリンエステル,エステルガム,酢酸ビニル樹脂等)などを使用することも可能である。この場合、水素添加ロジングリセリンエステルなどの樹脂系コーティング基材の場合には、水に不溶性ではあるものの、耐衝撃性がやや劣るため、コーティング層はある程度厚くする必要がある。このため、樹脂系の場合には、搬送ベルト14の速度を遅くしたり、液滴の大きさを大きくしたりするなどの措置が必要となる。
【0027】
本発明の装置・方法により得られたコーティング錠剤は、例えば50°C以上といった高い温度にて保存すると、錠剤が互いに付着するいわゆるブロッキングの問題を生じるおそれがある。このようなブロッキング現象は、水素添加ロジングリセリンエステルなど軟化点が100°Cに近いものを用いた場合でも生じるおそれがあり、これを回避するためには、例えば、固形あるいは粉末状のポリッシング(つや出し)用ワックスをコーティングした錠剤と共にポリッシング用のパンに投入し、回転させながらこれらを流動させる処理を行うことが好ましい。この場合、ポリッシング用ワックスとしては、カルナバロウ、パラフィン、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが例示され、特に、ステアリン酸マグネシウムによるブロッキング防止効果は顕著である。
【0028】
ノズルヘッド10によるコーティング処理は、搬送ベルト14を作動させつつ実施され、錠剤16は、ノズルヘッド10下にてコーティング基材23が吹き付けられた後、錠剤排出部17に送られる。この場合、図1からも分かるように、ノズルヘッド10によっては錠剤16の上面側のみがコーティングされ、下面や側面は未処理のまま残る。そこで、錠剤排出部17では、コーティング処理された錠剤16を搬送ベルト14から降ろす一方、錠剤16を上下反転させ、別途設置された搬送ベルト(図示せず)に錠剤16を載せ換える。そして、他のノズルヘッドによって錠剤裏面側のコーティング処理を実施する。
【0029】
一方、錠剤側面に関しては、コーティング処理部2に、ノズルヘッド10の他に側面コーティング用ヘッドを設けたり、別途設置した搬送ベルトの側方に側面コーティング用ヘッドを設けたりするなどして、コーティング処理を実施する。なお、側面コーティングについては、錠剤の方向を変えて数回処理を行ったり、錠剤自体を回転運動させてコーティング処理を行ったりしても良い。また、上下面のコーティングに関しても、上方からのノズルヘッドによる処理を数回繰り返しても良い。
【0030】
このように、本発明によるコーティング装置1にあっては、ベルトコンベア11にて錠剤16を搬送しつつ、ピエゾ素子44を用いたジェットノズル41により錠剤16のコーティング処理を行うようにしたので、非接触状態にて連続的に錠剤表面に皮膜を形成することが可能となる。このため、錠剤の美感向上や摩損防止を図りつつ、連続的なコーティング処理が可能となり、不良品発生の少ない、効率的なコーティング処理が可能となる。また、非接触処理のため、従来、コーティング処理が不可能であった、摩損度の大きい錠剤や、硬度の小さい柔らかな錠剤、崩壊し易い錠剤などにもコーティング処理を施すことが可能となる。
【0031】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、ノズルヘッド10にピエゾ素子を用いたジェットノズル41を使用した例を示したが、インクジェットプリンタと同様に、ジェットノズルとしてサーマル方式のものを使用しても良い。但し、サーマル方式の場合には、コーティング基材23に熱を加える必要があるため、基材の熱による変質等に配慮する必要がある。一般に、サーマル方式はインクジェットプリンタの印刷速度向上に好適とされているが、錠剤のコーティング処理では、写真印刷ほどの高速動作は求められない。このため、コーティング基材への影響を考慮すると、サーマル方式よりもピエゾ式の方がコーティング処理には好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例である錠剤コーティング装置のシステム構成を示す説明図である。
【図2】図1の錠剤コーティング装置にて使用されるジェットノズルの構成を示す説明図である。
【図3】ジェットノズルの動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 錠剤コーティング装置
2 コーティング処理部
3 コーティング液供給部
4 制御部
10 ノズルヘッド
11 ベルトコンベア(錠剤搬送手段)
12 駆動プーリ
13 従動プーリ
14 搬送ベルト
15 錠剤供給部
16 錠剤
17 錠剤排出部
21 ホットホース
22 制御線
23 コーティング基材
24 加温タンク
25 ヒータ
26 ポンプ
31 インターフェース部
32 バスライン
33 CPU
34 入出力部
34a 入力部
34b モニタ
35 ROM
36 RAM
41 ジェットノズル(ノズル装置)
42a,42b 隔壁
43 圧力室
44 ピエゾ素子
45 ノズル孔
46 液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錠剤表面にコーティング基材の皮膜を形成する錠剤コーティング装置であって、
錠剤を一方向に連続的に搬送可能な錠剤搬送手段と、
前記錠剤搬送手段に近接して配置され、ピエゾ素子の動作により、前記錠剤に対し前記コーティング基材の微小な液滴を噴射するノズル装置とを有することを特徴とする錠剤コーティング装置。
【請求項2】
請求項1記載の錠剤コーティング装置において、前記ノズル装置が噴射する前記コーティング基材の液滴は、400〜700dpiの噴射密度であることを特徴とする錠剤コーティング装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の錠剤コーティング装置において、前記コーティング基材は、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、酢酸ビニル樹脂、カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコールよりなる群から選択される物質を含むことを特徴とする錠剤コーティング装置。
【請求項4】
ピエゾ素子を用いたノズル装置により、錠剤に対しコーティング基材の微小な液滴を噴射し、前記錠剤表面に前記コーティング基材の皮膜を形成することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項5】
請求項4記載の錠剤コーティング方法において、前記ノズル装置により、400〜700dpiの噴射密度にて、前記コーティング基材の液滴を前記錠剤に噴射することを特徴とする錠剤コーティング方法。
【請求項6】
請求項4または5記載の錠剤コーティング方法において、前記コーティング基材は、ポリエチレングリコール類、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレングリコール類、ロジン、水素添加ロジングリセリンエステル、エステルガム、酢酸ビニル樹脂、カルナバロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、硬化油、パラフィン、ステアリン酸及びステアリルアルコールよりなる群から選択される物質を含むことを特徴とする錠剤コーティング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−48924(P2008−48924A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−228568(P2006−228568)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】