説明

錠剤分割装置

【課題】簡素な進退刃でも錠剤裁断片の量目の変動が小さい錠剤分割装置を実現する。
【解決手段】分割対象の錠剤10を保持機構30にて裁断位置に保持し、裁断位置に向けて進退する対向刃41,42の対向間隙を縮小させて錠剤10を裁断する際、裁断機構40の対向刃41,42が錠剤10を挟むまでは保持機構30による錠剤保持を継続させ、対向刃41,42が錠剤10を挟んでからは保持機構30による錠剤保持を解除させて錠剤10を対向刃41,42だけで挟持させ、保持機構30による錠剤保持が解除されてから対向刃41,42を錠剤10に切り込ませることにより、進退刃41,42の切り込み先に発生する割れ11の曲がりや増大を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、錠剤を裁断して幾つかの錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置に関し、詳しくは、対向させた一対の刃先を進退させて錠剤を裁断する錠剤分割装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤を2片に分割する錠剤分割装置として、一錠ずつ受けた錠剤にカッターを押し下げて錠剤を裁断する従前の錠剤分割機の他、一錠単位で保持・収容されていた錠剤を一錠未満の単位で後続の包装装置等に自動供給できるよう、錠剤通過経路を断つ態様で切り込むことにより錠剤通過経路の中の錠剤を通過方向の先後に分割して錠剤裁断片を個々に排出する錠剤供給装置や(例えば特許文献1参照)、受けた錠剤をカッターの刃で上下に裁断して下側の錠剤裁断片は先に排出するが上側の錠剤裁断片はカッター上に一旦留め置き次のカッター動作にて遅れて排出する錠剤供給装置が実用化されている(例えば特許文献2参照)。これらは、裁断機構に具備されている一枚のカッター刃を、保持機構にて裁断位置に保持されている分割対象の錠剤に、切り込ませるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−226088号公報
【特許文献2】特開平11−226089号公報
【特許文献3】特願2009−236992号
【特許文献4】特願2009−252589号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、裁断機構の刃を二枚にしたものも開発されている。この錠剤分割装置は、真っ直ぐな刃を具備した裁断機構にて錠剤を裁断して複数の錠剤裁断片に分割する錠剤分割装置において、前記刃が対向状態で二枚設けられ、前記裁断機構が、前記対向二枚刃を平行に保ちながらその対向間隙を拡縮させて錠剤裁断を行うものであって対向間隙拡縮に際して前記対向二枚刃を平行方向へ相対的にずらすようになっている(特許文献3参照)。
さらに、裁断機構の刃を回転刃にしたものも開発されている(特許文献4参照)。
【0005】
このような錠剤分割装置では、分割対象の錠剤を保持機構にて裁断位置に保持することで錠剤の位置を規制しながら、裁断機構の刃を錠剤に切り込ませることで、錠剤の裁断を的確に遂行するようになっている。そして、保持機構の調整が適切に行われていれば、何時でも、錠剤が適切な裁断位置に保持されて、裁断機構の刃先が錠剤の所期部位に当たるときの刃先当接部位の変動は目視確認不能なほど小さくなるようになっている。
ところが、錠剤裁断片の量目の変動が刃先当接部位の変動より大きくなることがあり、例えば、錠剤を二個の半錠に等分割する場合に、一錠から分かれた半錠同士で大きさの異なることが目視でも確認されるようなこともある。
【0006】
もっとも、そのような不均衡な分割の発生頻度はさほど高くなく、また、それが発生したとしても直ちに許容範囲を超えて錠剤裁断片が使えなくなる訳ではない。
しかしながら、裁断片の量目の変動が例え調剤の規定上は許容範囲内であったとしても目視で分かる程になると、服用者などが不安を抱くことがあるので、裁断片の量目の大きな変動は好ましくない。また、規定上の許容範囲を超える不所望な分割の発生頻度が例え装置の仕様上の許容範囲に収まっている場合でも、目視確認可能な不均衡分割の発生頻度が高いと、規定上の許容範囲を超える不所望な分割の発生頻度も高くなる、という傾向がみられるので、不所望な分割のため使用されないで捨てられる薬剤を減らすという無駄低減の観点からも、裁断片の量目の変動が大きいのは好ましくない。
【0007】
なお、裁断機構の刃を回転刃にしたものは、刃先が錠剤の切込み部位を擦って削り取るようにしながら錠剤に切り込むので、刃先進退タイプのものと比べて、分割時の量目の不均衡は小さくしやすいという利点を持つ一方、微細な粉塵の量が多い。微細粉塵は、有効利用されないばかりか、集塵機等で除去しなければならないので、好ましくない。また、回転式は、裁断機構が複雑で原価低減が難しいので、導入先が限定されがちである。
そこで、簡素な進退式の刃を用いながらも錠剤裁断片の量目の変動が小さい錠剤分割装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の錠剤分割装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、分割対象の錠剤を裁断位置に保持する保持機構と、前記裁断位置に向けて進退する対向刃を具備しており前記対向刃の対向間隙を拡縮させて前記錠剤を裁断する裁断機構と、前記裁断機構の動作手順または前記裁断機構および前記保持機構の動作手順を規定する裁断動作規定手段とを備えた錠剤分割装置であって、前記裁断動作規定手段は、錠剤裁断時に前記対向間隙を縮小させる際、前記対向刃が前記錠剤を挟むまでは前記保持機構による錠剤保持を継続させ、前記対向刃が前記錠剤を挟んでからは前記保持機構による錠剤保持を解除させて前記錠剤を前記対向刃だけで挟持させ、前記保持機構による錠剤保持が解除されてから前記対向刃を前記錠剤に切り込ませるようになっている。
【0009】
また、本発明の錠剤分割装置は(解決手段2)、上記解決手段1の錠剤分割装置であって、前記裁断動作規定手段は、前記保持機構による錠剤保持を解除させる際、その解除完了までは前記対向間隙の縮小動作を一時停止させるようになっている。
【0010】
なお、前記裁断動作規定手段は、前記対向刃にて挟まれた前記錠剤から前記保持機構を離れさせる動作を前記保持機構に行わせることで、前記保持機構による錠剤保持を解除させるようになっていても良い。あるいは、前記錠剤を挟んだ前記対向刃を移動させて前記錠剤を前記保持機構から離す動作を前記裁断機構に行わせることで、前記保持機構による錠剤保持を解除させるようになっていても良い。また、前記対向刃にて挟まれた前記錠剤から前記保持機構を離れさせる動作を前記保持機構に行わせるとともに、前記錠剤を挟んだ前記対向刃を移動させて前記錠剤を前記保持機構から離す動作を前記裁断機構に行わせることで、前記保持機構による錠剤保持を解除させるようになっていても良い。
【0011】
また、前記裁断動作規定手段は、前記保持機構と前記裁断機構から別体で具現化されていても良いが、別体に限られる訳でなく、前記保持機構に組み込まれた形で具現化されていても良く、前記裁断機構に組み込まれた形で具現化されていても良く、前記保持機構と前記裁断機構の双方に組み込まれた形で具現化されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
このような本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段1)、分割対象の錠剤が、保持機構にて裁断位置に保持されてから、対向間隙を縮小させる対向刃によって裁断されるが、その際、対向刃が錠剤を挟んだら、対向刃が錠剤に切り込む前に保持機構による錠剤保持が解除されて、錠剤が対向刃だけで挟持された状態で対向刃が錠剤に切り込む。
このように、錠剤裁断時に対向刃が錠剤に切り込むときには、錠剤が保持機構から離れているようにしたことにより、対向刃の切り込みで錠剤に変形や変位が生じたとしても、それによって保持機構から錠剤に反力が作用するということは起こらない。
【0013】
進退刃が錠剤に切り込むときに錠剤が保持機構に接触していると、進退刃が一枚の場合も(図1(a),(b)参照)、進退刃が対向二枚の場合も(図1(c),(d)参照)、錠剤10の変形や変位に起因して保持機構30から錠剤10に反力Fが作用するが、この反力Fが進退刃41,42を基準にして錠剤10の非対称位置に作用すると、錠剤10の内部において進退刃41,42の切り込み先に発生する割れ11が曲がったり大きくなったりしやすいと思われるところ、反力Fの発生位置や大きさは、錠剤10の表面の微細な欠けや,錠剤10の表層または内部の割れ,錠剤10と保持機構30との接触部位に付着した破片などの有無および存在箇所によって種々変動するものである。
【0014】
これに対し、錠剤10が保持機構から離れて対向刃41,42だけで挟持された状態で対向刃41,42が錠剤10に切り込むようにした本発明にあっては(図1(e),(f)参照)、裁断状態の変動要因であるとともに変動量の増幅要因でもあると考えられる反力Fが生じないため、割れ11が安定して、錠剤裁断片の量目の変動が小さくて済む。
したがって、この発明によれば、簡素な進退式の刃を用いても錠剤裁断片の量目の変動が小さい錠剤分割装置を実現することができる。
【0015】
また、本発明の錠剤分割装置にあっては(解決手段2)、錠剤を対向刃で挟んだら錠剤を対向刃だけで挟持するために保持機構による錠剤保持が解除されるが、その解除動作中は解除開始から解除完了まで含む時間に亘って対向刃の対向間隙の縮小動作が一時停止するため、保持機構による錠剤保持が完全に解除されるの待って対向刃が錠剤に切り込むこととなる。
これにより、保持機構による錠剤保持の解除動作に係るタイミングの制約が緩和・解消されるので、機構設計の容易化や,調整工数の短縮,部材費の低減などが推進される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来装置と対比させて本発明の錠剤分割装置の作用効果を説明するための模式図であり、(a)が一枚刃の従来装置の要部の正面図、(b)がその切り込み部分の拡大断面図、(c)が対向刃の従来装置の要部の正面図、(d)がその切り込み部分の拡大断面図、(d)が対向刃を持った本発明の錠剤分割装置の要部の正面図、(d)がその切り込み部分の拡大断面図である。
【図2】本発明の実施例1について、縦刃タイプの錠剤分割装置の構造を示し、(a)が全体側面図、(b)が側面パネルを外した本体部の斜視図である。
【図3】(a)が本体部の内部機構の斜視図、(b)が保持機構と裁断機構の展開斜視図である。
【図4】(a)〜(c)、何れも、左半分が保持機構の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部の縦断面と対向刃との側面図である。
【図5】(a)〜(c)、何れも、左半分が保持機構の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部の縦断面と対向刃との側面図である。
【図6】(a)〜(c)、何れも、左半分が保持機構の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部の縦断面と対向刃との側面図である。
【図7】本発明の実施例2について、横刃タイプの錠剤分割装置の構造を示し、(a)が全体斜視図、(b)が展開斜視図、(c)〜(i)が何れも保持機構の要部の縦断面と対向刃との側面図である。
【図8】本発明の実施例3について、縦刃タイプの錠剤分割装置の異なる構造を示し、左半分が保持機構の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部の縦断面と対向刃との側面図である。
【図9】本発明の実施例4について、分割数の異なる錠剤分割装置の構造を示し、(a)が三分割用の刃先の形、(b)が四分割用の刃先の形である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
このような本発明の錠剤分割装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜4により説明する。
図2〜6に示した実施例1は、上述した解決手段1〜2(出願当初の請求項1〜4)を具現化したものであり、図7に示した実施例2や、図8に示した実施例3、図9に示した実施例4は、その変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0018】
本発明の錠剤分割装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図2は、(a)が錠剤通過経路を経路に沿って裂く態様で切り込む縦刃タイプの錠剤分割装置20の全体側面図、(b)が側面パネルを外した本体部24の斜視図である。また、図3は、(a)が本体部24の内部機構の斜視図、(b)が保持機構30と裁断機構40の展開斜視図である。さらに、図4は、(a)〜(c)、何れも、左半分が保持機構30の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部30の縦断面と対向刃41,42との側面図である。
【0019】
この錠剤分割装置20は(図2(a)参照)、保持機構30と裁断機構40に加えて錠剤フィーダベース部27と中継部26と受器25を装備した本体部24と、図示しない処理錠数設定器や処理開始釦などを外装するとともにコントローラ23や図示しない電源部などを内蔵した操作部22と、錠剤フィーダベース部27に装着されて錠剤10を一錠ずつ排出する着脱自在な錠剤カセット21とを具えたものである。本体部24と操作部22は一体化しても良いが、この例では、製造や保守の容易化等のため、操作部22が本体部24に後方から連結されている。また、受器25や中継部26の支持部は、本体部24から分離可能なユニットにしても良いが、この例では一体的になっている。
【0020】
本体部24は(図2,図3参照)、最上部に錠剤フィーダベース部27が固定的に配置され、その下方で前面寄りのところに保持機構30が配置され、その下方には中継部26が固定配置され、更にその下方には受器25が出し入れできるようになっている。裁断機構40は保持機構30を内外に貫くかのようにして本体部24に実装されている。
錠剤フィーダベース部27は(図3(a)参照)、錠剤10の逐次供給を自動で行うためのものであり、コントローラ23の制御に従って駆動モータ27aが動作して、ベース板27bに装着された錠剤カセット21から錠剤10を排出させ、それを導入口27c及びガイド27d経由で保持機構30の錠剤通過経路32へ送り込むようになっている。
【0021】
保持機構30は分割対象の錠剤10を裁断位置33に保持し、裁断機構40はその錠剤10を裁断して二個の錠剤裁断片12に分割するものである(図3参照)。
中継部26は(図3(a)参照)、保持機構30の錠剤通過経路32から落下した錠剤裁断片12が飛散したり破損したりするの防止しながら、その錠剤裁断片12を受器25へ送り込むために、収集用ガイド26aや緩衝用バッファ26bを具備している。
受器25は(図2参照)、錠剤10を分割して出来た錠剤裁断片12を受け入れて貯めておく角箱状や角皿状の容器であり、引出式になっている。
【0022】
保持機構30は(図3,図4参照)、この例では、分割対象の錠剤10を裁断位置33に保持するとともに、裁断機構40と協動して保持機構30による錠剤保持を解除することも行うために、錠剤フィーダベース部27と中継部26との間に配置された板状の通路形成部材31と、それぞれ上端部を支点にして下端部を揺動しうる可動部材からなる一対の受止部材34とを具えている。通路形成部材31は、上端を後にし下端を前にして傾斜しており、例えば水平から角度45゜〜60゜程度で傾斜しており、その斜め上向きの前面には、上方のガイド27dから下方のガイド26aへ連なる錠剤通過経路32が彫り込み形成されている。錠剤10が通路形成部材31から離れることなく錠剤通過経路32の中を適度な速度で滑り落ちるよう、通路形成部材31の傾斜が設定されている。
【0023】
錠剤通過経路32は、裁断位置33の所が広くなっており、そこの中央に縦のスリット35が貫通形成され、その両側に受止部材34が配設されている。受止部材34は、錠剤通過経路32の中で、通路形成部材31の裏面の図示しない駆動部材がコントローラ23の制御に従って作動すると、下端部が揺動し、それで下端部同士を離接させることができ、下端部同士を近づけるとV字状になって裁断位置33の直ぐ下方で錠剤通過経路32を閉じる一方(図4(a),(b)参照)、下端部同士を離すとハやリの字状になって裁断位置33下方の錠剤通過経路32を開けるものとなっている(図4(c)参照)。
【0024】
裁断機構40は(図3,図4参照)、裁断位置33に向けて進退する手前の外刃41と奥の内刃42とからなる対向刃41,42を具備しており、その対向刃41,42の対向間隙を拡縮させて裁断位置33の錠剤10を裁断するものである。この例では、対向刃41,42が、縦向きになっているが、鉛直ではなく、通路形成部材31と同じ角度で傾斜しており、外刃41が斜め上方で内刃42が斜め下方になっている。外刃41は、通路形成部材31を貫通していて往復動する外刃進退部材43によって支持されており、コントローラ23の制御に従って外刃駆動部材44が作動すると、裁断位置33に向けて進退するようになっている。内刃42は、通路形成部材31の後方で往復動する内刃進退部材45によって支持されており、コントローラ23の制御に従って内刃駆動部材46が作動すると、スリット35を通過しながら裁断位置33に向けて進退するようになっている。
【0025】
コントローラ23は、例えばプログラマブルなマイクロプロセッサシステムやシーケンサからなる電子制御装置であり、保持機構30と裁断機構40とは別体の裁断動作規定手段として具現化されたものであり、保持機構30及び裁断機構40の動作手順を規定している。特に、錠剤裁断時に対向刃41,42の対向間隙を縮小させる際には、対向刃41,42が裁断位置33の錠剤10を挟むまでは保持機構30による錠剤保持を継続させ、対向刃41,42が錠剤10を挟んでからは対向刃41,42の対向間隙の縮小動作を一時停止させ、それから保持機構30による錠剤保持を解除させて錠剤10を対向刃41,42だけで挟持させ、保持機構30による錠剤保持が完全に解除されてから対向刃41,42の対向間隙の縮小動作を再開させて対向刃41,42を錠剤10に切り込ませるようになっている。なお、他の制御内容については以下の動作制御で例示する。
【0026】
この実施例1の錠剤分割装置20について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図5(a)〜(c)及び図6(a)〜(c)は、何れも、左半分が保持機構30の要部の正面図であり、右半分が保持機構の要部30の縦断面と対向刃41,42との側面図であり、錠剤裁断動作を時系列で示している。
【0027】
初期状態では(図5(a)参照)、裁断位置33の直ぐ下方の受止部材34が閉じているが、保持機構30や裁断機構40には錠剤10が無くて、裁断位置33は空いている。また、外刃41が裁断位置33から外側・前上方へ退くとともに内刃42が裁断位置33から内奥側・後下方へ退いて、対向刃41,42の対向間隙が拡大状態になっている。
この状態で、操作部22を操作して錠剤分割装置20に裁断処理を開始させると、錠剤フィーダベース部27の駆動モータ27aが作動し、それで駆動された錠剤カセット21から一個の錠剤10が落下排出される。
【0028】
そして、その錠剤10は、錠剤フィーダベース部27の導入口27cやガイド27dを介して保持機構30の錠剤通過経路32に落下投入され、錠剤通過経路32に案内されて裁断位置33に到達すると、そこで受止部材34に当接して停止し、二個の受止部材34の中央に位置決めされて保持される(図5(b)参照)。この時点では、錠剤10は保持機構30のうち通路形成部材31の錠剤通過経路32の内底面と二個の受止部材34の接触部位とで保持されており、対向刃41,42には触れることなく、対向刃41,42の対向間隙に入り込んでいる。
【0029】
次に(図5(c)参照)、内刃42が外刃41に向かって少しだけ進み、それに押されて錠剤10が錠剤通過経路32の内底面から浮き上がって離れたら、内刃42が止まる。
そして(図6(a)参照)、外刃41が内刃42に向かって進み、対向刃41,42の対向間隙が縮小して錠剤10が対向刃41,42に挟まれたら、外刃41が止まる。
それから(図6(b)参照)、受止部材34が揺動して開き錠剤10から離れるが、錠剤10が対向刃41,42によって挟持されているので不所望に落下することはない。
【0030】
その状態から、さらに(図6(c)参照)、対向刃41,42が共に進んで対向間隙がほぼゼロになるところまで縮小し、これによって錠剤10が縦に裁断されて左右の錠剤裁断片12に分かれる。そのとき、錠剤10は、対向刃41,42だけで挟持された状態から切り込まれるため、切り込みによって多少変形したり変位したりしても保持機構30から不所望な反力Fが作用することがないので、錠剤10は安定して期待通りに割れる。そして、錠剤10が分割されて出来た二個の錠剤裁断片12が錠剤通過経路32や中継部26を通過して受器25に落下する間に、受止部材34が揺動して閉じるとともに対向刃41,42が共に退いて初期状態に戻る(図5(a)参照)。
【実施例2】
【0031】
本発明の錠剤分割装置の実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図7は、(a)が錠剤通過経路を断つ態様で切り込む横刃タイプの錠剤分割装置70の全体斜視図、(b)がその展開斜視図、(c)が保持機構30の要部の縦断面と対向刃41,42との側面図である。
【0032】
この錠剤分割装置70が上述した実施例1の錠剤分割装置20と相違するのは(図7(a)〜(c)参照)、保持機構30や裁断機構40の傾斜が無くなって、保持機構30が鉛直になる一方、外刃41も内刃42も水平になるとともにその進退部材43,45や駆動部材44,46を含む裁断機構40全体が水平になり、さらに受器25が省かれて、標準的な錠剤フィーダベース部27に代えて又はそれらと並べて錠剤分包機の錠剤収納庫に配設しうるようになっている点である。また、保持機構30ひいては錠剤分割装置70の高さを低くするために、受止部材34は鉛直な錠剤通過経路32に対し水平往復動にて横から先端部を進退させるとともに上下移動もしうる単一部材になっている。
【0033】
この実施例2の錠剤分割装置70について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。同7(c)〜(i)は、何れも、保持機構30の要部の縦断面と対向刃41,42との側面図であり、錠剤裁断動作を時系列で示している。
【0034】
この場合、初期状態では(図7(c)参照)、裁断位置33の直ぐ下方で受止部材34が錠剤通過経路32に進入しているが、保持機構30や裁断機構40には錠剤10が無くて、裁断位置33は空いている。また、外刃41が裁断位置33から外側・前方へ退くとともに内刃42が裁断位置33から内奥側・後方へ退いて、対向刃41,42の対向間隙が拡大状態になっている。この状態で、錠剤分割装置70に裁断処理を開始させると、錠剤カセット21から一個の錠剤10が落下排出される。
【0035】
そして、その錠剤10は、保持機構30の錠剤通過経路32に落下投入され、錠剤通過経路32に案内されて裁断位置33に到達すると、そこで受止部材34に当接して停止し、受止部材34の上に乗った状態で位置決めされて保持される(図7(d)参照)。
この時点では、錠剤10が、保持機構30のうち通路形成部材31の錠剤通過経路32の内壁面と受止部材34の上面とで保持されており、対向刃41,42には触れることなく、対向刃41,42の対向間隙に入り込んでいる。
【0036】
次に(図7(e)参照)、対向刃41,42が共に裁断位置33に向かって進み、それに伴って対向刃41,42の対向間隙が縮小し、さらには対向刃41,42の刃先が錠剤通過経路32に進入して錠剤10に突き当たると、そこで対向刃41,42の進行がとまり、錠剤10が対向刃41,42に挟まれる。それから(図7(f)参照)、受止部材34が下降して錠剤10から離れるが、錠剤10が対向刃41,42によって挟持されているので不所望に落下することはない。また、この状態では、錠剤10が、対向刃41,42によって錠剤通過経路32の中央に寄せ置かれて、錠剤通過経路32の内壁面からも通過用遊びの分だけ離れるので、錠剤10は、対向刃41,42だけで挟持される。
【0037】
その状態から、さらに(図7(g)参照)、対向刃41,42が共に進んで対向間隙がほぼゼロになるところまで縮小し、これによって錠剤10が横に裁断されて上下の錠剤裁断片12に分かれる。そのとき、錠剤10は、対向刃41,42だけで挟持された状態から切り込まれるため、切り込みによって多少変形したり変位したりしても保持機構30から不所望な反力Fが作用することがないので、錠剤10は安定して期待通りに割れる。そして、錠剤10が分割されて出来た二個の錠剤裁断片12のうち上側の半錠は対向刃41,42の上にとどまり、下側の半錠は受止部材34の上にとどまる。
【0038】
そこで、錠剤裁断片12を一つずつ逐次落下させる場合は、先ず(図7(h)参照)、受止部材34が退いて錠剤通過経路32から出ると、下側の半錠だけが落下し、次いで(図7(i)参照)、対向刃41,42が共に退いて錠剤通過経路32から出ると、上側の半錠が落下する。錠剤裁断片12を二つ纏めて落下させる場合は、それらの動作が一緒に行われる。そして、錠剤裁断片12が総て落下し終えると、受止部材34が錠剤通過経路32に進入するとともに上昇して初期状態に戻る(図7(c)参照)。
こうして、この場合も、対向刃41,42だけで錠剤10を挟持した状態で、対向刃41,42が錠剤10に切り込むので、錠剤10は安定して期待通りに割れる。
【実施例3】
【0039】
本発明の錠剤分割装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図8は、左半分が保持機構30の要部の正面図であり、右半分が保持機構30の要部の縦断面と対向刃41,42との側面図であり、縦刃タイプの錠剤分割装置に係る他の構造例を示している。
【0040】
この錠剤分割装置が上述した実施例1の錠剤分割装置20と相違するのは、受止部材34が可動部材でなく固定部材になった点と、錠剤保持解除が対向刃41,42の平行移動で実現されるようになって受止部材34の作動には依存しなくなった点である。
具体的には、裁断位置33に錠剤10を止めておける段差が錠剤通過経路32の内底に形成され、その段差が固定化されている。詳述すると、錠剤通過経路32のうち裁断位置33やその上流部分は受止部材34より深く形成されているが、錠剤通過経路32のうち裁断位置33より下流の部分は、受止部材34上に形成されて、受止部材34の上面を経路底面としており、受止部材34の厚み分だけ底上げされて浅くなっている。
【0041】
この場合、受止部材34によって裁断位置33に止められている錠剤10を対向刃41,42で挟持した後、対向刃41,42を外刃41側へ大きく移動させ、具体的には対向刃41,42を受止部材34の厚みより長い距離に及んで移動させる。そうすると、錠剤10は受止部材34から外れて対向刃41,42だけで挟持されることとなる。それから、対向刃41,42の対向間隙が縮まって対向刃41,42が錠剤10に切り込むと、錠剤10が複数の錠剤裁断片12に分割され、これらの錠剤裁断片12が受止部材34の上面を滑って又は受止部材34の上方を通過して落下する。
こうして、この場合は、保持機構30による錠剤保持の解除が、錠剤10を挟んだ対向刃41,42を移動させて錠剤10を保持機構30から離す動作によって実行される。
【実施例4】
【0042】
本発明の錠剤分割装置の実施例4について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図9は、(a)が三分割用の刃先の形であり、(b)が四分割用の刃先の形であり、分割数が二分割より多い錠剤分割装置の構造例を示している。
【0043】
本発明の錠剤分割装置は、上述した各実施例のように錠剤10を二つの錠剤裁断片12(半錠)に二分割するものに限定される訳でなく、例えば分割数に対応した個数の刃先を放射状に配置した進退刃(図9参照)を裁断機構40に装着することにより、一度の裁断動作で錠剤10を多数の錠剤裁断片12に分割することができる。なお、対向刃41,42と受止部材34とのうち何れか一方または双方を上下移動させて位置調整するといったことで、比較的容易に、径の異なる大小の錠剤10を適切に分割することもできる。
【0044】
[その他]
なお、図示は割愛したが、保持機構30による錠剤保持解除を保持機構30の動作だけで行う他の変形例も述べると、例えば、受止部材34が開いて錠剤10から離れるとともに、通路形成部材31のうち裁断位置33を含む部分も可動式にして錠剤10から離れるようにすれば、対向刃41,42にて挟持された錠剤10から保持機構30を離れさせる動作を保持機構30に行わせることだけで、保持機構30による錠剤保持を解除させることができる。
【0045】
また、錠剤分割装置20では、錠剤裁断時に、先ず内刃42を進め、次いで外刃41を進め、さらに受止部材34を離し、それから対向刃41,42を切り込むようになっていたが、裁断動作手順はこれに限定される訳でない。例えば、先ず外刃41を進め、次いで内刃42を進め、さらに受止部材34を離し、それから対向刃41,42を切り込むようにしても良い。あるいは、先ず外刃41を進め、次いで受止部材34を離し、さらに内刃42を進め、それから対向刃41,42を切り込むようにしても良い。受止部材34が開いて錠剤10から離れる速度が十分に高速ならば、対向刃41,42で錠剤10を挟持してから切り込みに移行するときの外刃41の一時停止は省くことができる。
【0046】
操作部22は必須でなく、例えば、錠剤10が裁断位置33に到達したらそれに応じて一連の裁断動作が開始されるようにしても良い。動作状態表示の有無も任意である。コントローラ23も必須でなく、裁断動作規定手段をコントローラ23でなく保持機構や裁断機構に組み込んで具現化しても良く、例えば、保持機構や裁断機構がカムやリンク等の機械仕掛けで順序動作するようにしても良い。
また、錠剤裁断片12の排出に不都合がなければ、受器25や中継部26も必須でなく、錠剤10の自動逐次供給が不要であれば、錠剤フィーダベース部27や錠剤カセット21も必須でない。
【0047】
さらに、対向刃41,42の駆動部材44,46や、受止部材34の駆動部材についても、それらを電動式や流体駆動式などで明示的に設けることは必須でなく、保持機構や裁断機構の伝動部などに組み込んでも良く、例えば、手動ハンドルの押し込み操作や回転操作によって進退部材43,45や受止部材34が駆動されるようにしても良い。
また、錠剤分割装置20の保持機構30では、錠剤通過経路32の上面が解放された状態のものを図示したが、錠剤通過経路32に錠剤飛散防止カバーを付けても良い。
【0048】
また、保持機構30や裁断機構40には、各種の錠剤10について適切な裁断結果が得られるよう、錠剤10の形状や材質などの相違に応じて受止部材34や対向刃41,42などの動作状態を可変させる調整機構が付設されていても良い。
さらに、そのような調整がコントローラ23のパラメータ設定や操作部22の選択操作などで容易に遂行されるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の錠剤分割装置は、上述した実施例1のようにスタンドアローンで使用されたり、実施例2のように錠剤フィーダのベース部を機能拡張しつつ代替する態様で錠剤分包機等の自動調剤機に組み込まれる他、単体の錠剤フィーダから下方へ延びた錠剤落下経路や,複数の錠剤フィーダの錠剤落下経路が下方で合流した後の錠剤収集経路にも、組み込むことができる。
【符号の説明】
【0050】
10…錠剤、11…割れ、12…錠剤裁断片、
20…錠剤分割装置、
21…錠剤カセット、22…操作部、
23…コントローラ、24…本体部、25…受器、
26…中継部、26a…ガイド、26b…バッファ、
27…錠剤フィーダベース部、27a…駆動モータ、
27b…ベース板、27c…導入口、27d…ガイド、
30…保持機構、
31…通路形成部材、32…錠剤通過経路、
33…裁断位置、34…受止部材、35…スリット、
40…裁断機構、
41…外刃(対向刃)、42…内刃(対向刃)、
43…外刃進退部材、44…外刃駆動部材、
45…内刃進退部材、46…内刃駆動部材、
70…錠剤分割装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割対象の錠剤を裁断位置に保持する保持機構と、前記裁断位置に向けて進退する対向刃を具備しており前記対向刃の対向間隙を拡縮させて前記錠剤を裁断する裁断機構と、前記裁断機構の動作手順または前記裁断機構および前記保持機構の動作手順を規定する裁断動作規定手段とを備えた錠剤分割装置であって、前記裁断動作規定手段は、錠剤裁断時に前記対向間隙を縮小させる際、前記対向刃が前記錠剤を挟むまでは前記保持機構による錠剤保持を継続させ、前記対向刃が前記錠剤を挟んでからは前記保持機構による錠剤保持を解除させて前記錠剤を前記対向刃だけで挟持させ、前記保持機構による錠剤保持が解除されてから前記対向刃を前記錠剤に切り込ませるようになっていることを特徴とする錠剤分割装置。
【請求項2】
前記裁断動作規定手段は、前記保持機構による錠剤保持を解除させる際、その解除完了までは前記対向間隙の縮小動作を一時停止させるようになっていることを特徴とする請求項1記載の錠剤分割装置。
【請求項3】
前記裁断動作規定手段は、前記保持機構による錠剤保持を解除させる際、前記対向刃にて挟まれた前記錠剤から前記保持機構を離れさせる動作と、前記錠剤を挟んだ前記対向刃を移動させて前記錠剤を前記保持機構から離す動作とのうち、何れか一方または双方の動作を行わせるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された錠剤分割装置。
【請求項4】
前記裁断動作規定手段が、前記保持機構と前記裁断機構のうち何れか一方または双方に組み込まれていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載された錠剤分割装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−29800(P2012−29800A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170968(P2010−170968)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】