説明

錠剤検査装置及びPTP包装機

【課題】PTPシートの製造過程における錠剤の外観検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供する。
【解決手段】錠剤検査装置21は、容器フィルムのポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明装置22と、光の照射された錠剤からの反射光を撮像可能なカメラ23と、カメラ23から出力される画像信号を処理する画像処理装置24とを備えている。画像処理装置24は、画像信号から得た画像データに基づき、錠剤に相当する錠剤領域を特定し、当該錠剤領域の各画素の濃度勾配方向を算出し、当該濃度勾配方向が予め設定された予定勾配方向か否かを判定することにより、錠剤の外観検査を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PTPシートの製造に際し用いられる錠剤検査装置、及び、該錠剤検査装置を備えたPTP包装機を含む技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、PTPシートは、錠剤が充填されるポケット部が形成された樹脂製の包装用フィルムと、その包装用フィルムにポケット部の開口側を密封するように前記包装用フィルムに取着されるアルミニウム製のカバーフィルムとから構成されている。
【0003】
PTPシートの製造に際しては、ポケット部に錠剤が充填された後、例えば汚れ・毛髪等の異物の付着や、糖衣層の剥離など、錠剤の外観異常が検査される。
【0004】
当該外観検査においては、例えば照明装置によって錠剤に光を照射し、その反射光を撮像装置により撮像する。この撮像装置から出力される画像信号は、画像処理装置によって、一定の閾値をもって二値化される。ここで、錠剤からの反射光は比較的明るく映り、異物からの反射光は比較的暗く映るため、これらの輝度の相違を考慮して、閾値を設定することで、比較的暗い部分である異物の存在を画像処理装置によって判断することができる。
【0005】
ところが、錠剤の周縁部は、例えば撮像装置たるCCDカメラの受光面との角度が大きい等の理由により、錠剤の中心部ほど安定して画像信号を取得できない領域であるため、従来では、錠剤の中央部と周縁部とに検査領域を区画して、各区画領域ごとに異なった閾値の下で検査を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−33390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、断面楕円形状の糖衣錠のように周縁部が曲面形状となった錠剤や、面取り部を有する平錠のように周縁部が傾斜した錠剤などに関しては、画像信号から得られる輝度値が錠剤の周縁部において急激に変化するため、当該周縁部において適切に異物や剥離を検出できないおそれがある。
【0008】
ここで、その一例を図9を参照して説明する。図9(b),(c)は検査対象である錠剤71の平面図及び正面図をそれぞれ示したものであり、図9(a)は、図9(b)のA−A線上における輝度値を示す図である。
【0009】
従来の検査においては、例えば錠剤71の中心から半径Frの錠剤領域全体に検査領域が設定されるとともに、当該検査領域が半径Qrの円C2によって中心部領域B1と周縁部領域B2とに区画される。
【0010】
そして、中心部領域B1に関しては、輝度値δ1に閾値を設定する。これにより、異物72が存在している部分の輝度値だけが閾値δ1よりも低い値となるため、異物72を検出することができる。
【0011】
一方、輝度値が急激に変化する周縁部領域B2に関しては、仮に閾値を輝度値δ2に設定すれば、周縁部領域B2に存在する異物73を検出することができる。しかし、かかる場合、異物73のない適正な錠剤71に相当する部分の輝度値までもが閾値δ2より低い値となり、外観異常ありと判定されてしまうおそれがある。逆に、錠剤領域全体が含まれるよう閾値を輝度値δ3に設定した場合には、異物73が存在する部分の輝度値までもが閾値δ3より高い値となり、異物73を検出できず、外観異常なしと判定されてしまうおそれがある。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、PTPシートの製造過程における錠剤の外観検査に際し、検査精度の飛躍的な向上を図ることのできる錠剤検査装置及びPTP包装機を提供することを主たる目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0014】
手段1.PTPシートの製造過程において、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記ポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明手段と、
前記光の照射された錠剤からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記画像信号から得た画像データに基づき、錠剤に相当する錠剤領域を特定する錠剤特定処理と、
前記錠剤領域のうちの少なくとも所定領域における各画素の濃度勾配方向を算出する勾配方向算出処理と、
前記各画素の濃度勾配方向が予め設定された予定勾配方向か否かを判定する勾配方向判定処理とを行うことにより、
濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【0015】
ここで、濃度勾配とは,各画素間の輝度値の変化の度合い、すなわち輝度の勾配を意味する。
【0016】
断面楕円形状の糖衣錠などの場合、輝度値は錠剤の中心から周縁に向けて低くなっていく。つまり、濃度勾配方向は、錠剤の中心から周縁に向かうものとなる。
【0017】
これに対し、錠剤表面に仮に異物や剥離欠陥などの異常部が存在する場合には、その部分の輝度値はその周囲の適正な錠剤表面の輝度値よりも低くなったり、高くなったりする。従って、注目画素の濃度勾配方向が予定勾配方向(例えば錠剤の中心から周縁へ向かう方向など)と異なっている場合には、その部分に異物等の異常部が存在していると判る。
【0018】
これを利用することにより、断面楕円形状の糖衣錠の周縁部などのように、輝度値が急激に変化する部位においても、適切に異物や剥離欠陥などを検出することができる。
【0019】
結果として、錠剤の外観検査に係る検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0020】
手段2.前記画像処理装置は、前記濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を行うに際し、
前記濃度勾配方向が前記予定勾配方向と異なる画素の連結成分である異常部領域を特定する異常部特定処理と、
前記異常部領域の面積又は周囲長が許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする手段1に記載の錠剤検査装置。
【0021】
上記手段2によれば、濃度勾配方向が予定勾配方向と異なる画素の連結成分として小さな面積等を持つノイズ等を除去し、検査精度をさらに高めることができる。
【0022】
手段3.前記画像処理装置は、前記異常部領域を特定するにあたり、各画素の輝度値を参酌することを特徴とする手段2に記載の錠剤検査装置。
【0023】
例えば、濃度勾配方向が予定勾配方向と異なる画素のうち、当該画素の輝度値が所定の閾値よりも低い又は高い画素の連結成分を異常部領域として特定する。
【0024】
上記手段3によれば、各画素の濃度勾配のみならず、輝度値を加味した判定を行うことができるため、ノイズ等による影響を除去し、検査精度をさらに高めることができる。
【0025】
手段4.前記画像処理装置は、前記濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を、前記錠剤領域のうち濃度勾配を有する領域においてのみ行うことを特徴とする手段1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【0026】
例えば平錠の中心部などのように、濃度勾配のない領域においてまで、濃度勾配に基づく外観検査を実施していては、検査効率の低下を招くおそれがある。この点、本手段3によれば、検査効率の向上を図ることができる。
【0027】
手段5.手段1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。
【0028】
上記手段5のように、錠剤検査装置をPTP包装機に備えることで、PTPシートの製造過程において不良品を効率的に除外できる等のメリットが生じる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態におけるPTP包装機等の概略構成を示す模式図である。
【図2】(a)はPTPシートを示す斜視図であり、(b)はPTPシートを示す部分拡大断面図である。
【図3】錠剤検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】「検査ルーチン」を示すフローチャートである。
【図5】3×3画素の画像データを示す模式図である。
【図6】錠剤の平面図である。
【図7】輝度値及び濃度勾配方向のデータ配列を説明するための図である。
【図8】3×3画素の画像データを示す模式図である。
【図9】従来例を説明するための図であり、(b),(c)は錠剤の平面図及び正面図を示した図であり、(a)は、(b)のA−A線上における輝度値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、錠剤検査装置をPTP包装機に装備することによって、PTP包装機においてPTPシートの不良が検査される。
【0031】
図2(a),(b)に示すように、PTPシート1は、複数のポケット部2を備えた包装用フィルムとしての容器フィルム3と、ポケット部2を塞ぐようにして容器フィルム3に取着されたカバーフィルムとしての密封用フィルム4とを有している。
【0032】
容器フィルム3は、例えば、PP(ポリプロピレン)やPVC(ポリ塩化ビニル)等の比較的硬質で所定の剛性を有する熱可塑性樹脂材料によって構成され、光透過性を有している(ここでは、透明を呈している)。密封用フィルム4は、アルミニウムによって構成されている。
【0033】
また、各ポケット部2には、断面楕円形状の錠剤(糖衣錠)5が1つずつ収容されている。本実施形態の錠剤5は白色に近い色をしているが、色はこれに限定されるものではない。
【0034】
図1に示すように、PTP包装機7は、錠剤5を容器フィルム3に自動的に包装するものである。具体的には、PP、PVCなどの帯状の樹脂フィルムをフィルム送りロール9とテンションロール10,11とで、加熱装置12及び成形装置13に送り込み、錠剤5充填用のポケット部2を樹脂フィルムに成形する。そして、樹脂フィルムにポケット部2の成形された容器フィルム3が、充填装置14の下まで送られてくると、充填装置14が各ポケット部2に錠剤5を自動的に充填する。
【0035】
一方、帯状に形成された密封用フィルム4は、テンションロール16,17を介してフィルム受けロール18の方へと案内されている。フィルム受けロール18には、加熱ロール19が圧接可能となっており、該加熱ロール19の外周面には、僅かに凸状に形成された格子状の線(図示略)が設けられている。そして、両ロール18,19間に、容器フィルム3及び密封用フィルム4が送り込まれるようになっている。両フィルム3,4が、両ロール18,19間を加熱圧接状態で通過することで、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される。これによって、錠剤5が各ポケット部2に充填された長尺状のPTPフィルム20が製造される。
【0036】
さて、前記充填装置14の下流側、かつ、前記フィルム受けロール18及び加熱ロール19の上流側には、容器フィルム3の移送経路に沿って、錠剤5の不良を検査するための錠剤検査装置21が配設されている。当該錠剤検査装置21は、錠剤5に付着した汚れ・毛髪等の異物の検出を主目的とする外観検査を行うものである。
【0037】
上記検査を経て、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後、PTPフィルム20は、図示しない打抜装置によってPTPシート1単位に裁断される。なお、錠剤検査装置21によって不良品判定された場合、その不良品判定となったPTPシートは、図示しない不良シート排出機構によって別途排出される。
【0038】
さて、PTP包装機7の概略は以上のとおりであるが、以下においては図3等に基づき、錠剤検査装置21についてより具体的に説明する。
【0039】
錠剤検査装置21は、照明手段としての照明装置22、撮像手段としてのカメラ23、画像処理装置24、モニタ25、及びキーボード26等を備えている。
【0040】
照明装置22及びカメラ23は、容器フィルム3のポケット部2開口部側(図1上側)に配置されている。本実施形態では、カメラ23として、CCDカメラが採用されている。そして、照明装置22から照射される光が錠剤5等を照らし、錠剤5等から反射した光が、カメラ23によって二次元撮像される。赤外光によれば、錠剤5の色に関係なく、異物よりも錠剤5自体の輝度が高い画像が得られる。
【0041】
画像処理装置24は、図3に示すように、カメラ23に対応する画像メモリ41、マスキング手段42、二値化手段43、判定用メモリ44、検査結果及び統計データメモリ45、カメラタイミング制御手段46、並びに、CPU及び入出力インターフェース47などから構成され、後述するような画像データの処理や、不良判定(検査)等を実施可能となっている。
【0042】
カメラ23で撮像された二次元画像データは、デジタル信号に変換された後、対応する画像メモリ41に記憶される。また、画像データは、検査時において、マスキング手段42により所定箇所にマスキング処理が行われた後、再度画像メモリ41に記憶され、同様に、二値化手段43により二値化された後、再度画像メモリ41に記憶される。
【0043】
CPU及び入出力インターフェース47は、各種処理プログラムを判定用メモリ44の記憶内容などを使用しつつ実行するとともに、PTP包装機7に制御信号を送出し又はPTP包装機7から動作信号などの各種信号を送受信するためのものである。これによって、例えば、PTP包装機7の不良シート排出機構などを制御することができるようになっている。また、CPU及び入出力インターフェース47は、モニタ25に表示データを送出する機能をも有する。かかる機能により、二値あるいは濃淡の画像データや不良検査結果などを、モニタ25に表示させることができるようになっている。さらに、CPU及び入出力インターフェース47は、キーボード26からのデータを入力する機能をも有する。
【0044】
検査結果及び統計データメモリ45は、画像データに関する座標等のデータ、検査結果データ、及び、該検査結果データを確率統計的に処理した統計データなどを記憶するものである。これらの検査結果データや統計データは、CPU及び入出力インターフェース47の制御に基づき、適宜モニタ25に表示させることができる。また、これらの検査結果データや統計データに基づいてCPU及び入出力インターフェース47がPTP包装機7に制御信号を送出することもできる。
【0045】
カメラタイミング制御手段46は、カメラ23が撮像する画像データを、画像メモリ41に取り込むタイミングを制御するものである。かかるタイミングはPTP包装機7に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて制御され、容器フィルム3を所定量送るごとにカメラ23によるシート単位(例えば打ち抜かれるPTPシート単位)で撮像(撮影)が行われる。
【0046】
次に、上記不良検査(錠剤5の外観検査)の手順について図4のフローチャート等に従って説明する。
【0047】
同図に示すように、「検査ルーチン」において、まずステップS101では、検査対象たる濃淡画像を取得する。具体的には、カメラ23により撮像された濃淡画像データを、シェーディング補正等を行った後、画像メモリ41に記憶する。
【0048】
ステップS102では、二値化処理を実行する。具体的には、画像メモリ41に記憶された濃淡画像データに対し、二値化手段43にて所定の閾値に基づき二値化処理が行われ、二値化画像データを得る。
【0049】
ステップS103では、第1塊処理を実行する。当該塊処理としては、ステップS102において得られた二値化画像データの0(暗)及び1(明)について各連結成分を特定する処理と、それぞれの連結成分についてラベル付けを行うラベル付け処理とがある。これにより、第1塊処理では、二値化画像データから求めた1(明)の連結成分の中から、錠剤5に相当する連結成分が錠剤領域として特定される。従って、ステップS103の処理が本実施形態における錠剤特定処理に相当する。
【0050】
ステップS104においては、ステップS101において取得した濃淡画像データ、及び、ステップS103で得られた錠剤領域を基に、当該錠剤領域内の全画素の輝度値を取得する。
【0051】
続くステップS105では、ステップS104において取得した各画素の輝度値を基に、各画素の濃度勾配方向を算出する。ステップS105の処理が本実施形態における勾配方向算出処理に相当する。
【0052】
例えば図5に示すように、3×3画素の画像データを抽出して考えた場合、注目画素0の輝度値と、その周囲に隣接する8つの画素1〜8の輝度値とのそれぞれの差を算出し、その差が最大となる画素の方向(第1方向〜第8方向)を濃度勾配方向とする(図7の括弧書き参照)。但し、図7の例では、輝度値の差が最大となる画素が複数ある場合、その中間となる方向により近似した方向を第1方向〜第8方向で示している。
【0053】
ステップS106では、ステップS105で算出した各画素の濃度勾配方向が、当該画素における適正な方向であるか否かを判定し、方向の一致しない画素を抽出する。ステップS106の処理が本実施形態における勾配方向判定処理に相当する。
【0054】
例えば、図6に示す錠剤5の周縁部のうち異物Bの付着した所定エリアEのデータに関して図7を参照して説明する。エリアEにおいては、錠剤5の中心から周縁に向かう方向である第6方向(図5参照)が適正な濃度勾配方向となる。従って、図7に示した例では、散点模様を付した画素に関しては、濃度勾配方向が適正でないこととなり、本処理において抽出されることとなる。
【0055】
ステップS107では、第2塊処理を実行する。具体的には、ステップS106において濃度勾配方向が適正でない画素として抽出された画素の連結成分である異常部領域の面積Sxを算出する。ステップS107の処理が本実施形態における異常部特定処理に相当する。
【0056】
ステップS108では、ステップS107において算出した各異常部領域の面積Sxが、予め定められた判定基準値So以下か否かを判定する。ステップS108の処理が本実施形態における良否判定処理に相当する。
【0057】
そして、すべての異常部領域の面積Sxが判定基準値So以下の場合には、ステップS109において良品判定を行い、本処理を終了する。一方、異常部領域の面積Sxが判定基準値Soよりも大きいものが1つでもある場合には、ステップS110において不良判定を行い、本処理を一旦終了する。これらの検査結果は、モニタ25やPTP包装機7(不良シート排出機構を含む)に出力される。
【0058】
なお、上記ステップS101からステップS110の処理は、PTPフィルム20上の各錠剤5について実行され、後にPTPシート1となって裁断されたときに同一シート上に一つでも不良判定された錠剤5が含まれているときは、そのシートは不良と判断され排出される。
【0059】
以上詳述したように、本実施形態によれば、錠剤領域内の各画素の濃度勾配方向が、当該画素における適正な方向であるか否かを判定することにより、異物Bの検出を行っている。これにより、本実施形態の錠剤5のような断面楕円形状の糖衣錠の周縁部などのように、輝度値が急激に変化する部位においても、適切に異物Bを検出することができる。結果として、錠剤5の外観検査に係る検査精度の飛躍的な向上を図ることができる。
【0060】
以上説明した実施形態において、例えば、次のように構成の一部を適宜変更して実施することも可能である。勿論、以下において例示しない他の変更例も当然可能である。
【0061】
(a)上記実施形態では、検査対象となる錠剤5の態様例として、断面楕円形状の糖衣錠を例示しているが、錠剤の種類はこれに限られるものではない。例えば、周縁部に面取り部を有する円盤形状の平錠、中心部と周縁部とで厚みが異なる素錠(いわゆるレンズ錠)、平面視非円形のカプセル錠等であってもよい。
【0062】
(b)上記実施形態では、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着される前段階において、ポケット部2開口部側から錠剤5の検査を行う構成となっているが、これに限らず、容器フィルム3に密封用フィルム4が取着された後段階等において、ポケット部2突出部側から錠剤5の検査を行う構成としてもよい。
【0063】
(c)上記実施形態では、検査対象たる錠剤5が断面楕円形状の糖衣錠であるため、濃度勾配に係る検査を錠剤領域全体において実施する構成となっているが、これに限らず、かかる検査の検査対象エリアを錠剤の周縁部など錠剤領域の一部にのみ限定してもよい。例えば、平錠のように中心部の輝度変化が少ない錠剤に関しては、周縁部のみ検査を行う構成としてもよい。
【0064】
また、錠剤の周縁部のみならず、輝度変化の大きい他の領域の検査に用いてもよい。例えば、中央に割線を有している錠剤の検査等にも用いることができる。従来、割線部分に関しては、マスク処理を施す等して検査対象エリアから除外していたため、適切な検査が行われていなかったが、本発明によれば、割線部分についても適切な検査を行うことができ、検査精度の向上を図ることができる。
【0065】
(d)上記実施形態では、輝度値が錠剤5の表面よりも低くなる異物Bを検出対象としていたが、これに代えて又は加えて、輝度値が錠剤5の表面よりも高くなる糖衣層の剥離欠陥等を検出する構成としてもよい。一般的な色付き糖衣錠の場合、光を照射するとその反射光が、糖衣錠表面からのものよりも、糖衣層が剥離した剥離部からのものの方が明るく映し出される。
【0066】
(e)上記実施形態では、注目画素0の輝度値と、その周囲に隣接する8つの画素1〜8の輝度値とのそれぞれの差を算出し、その差が最大となる画素の方向を濃度勾配方向として算出している。濃度勾配方向の算出方法はこれに限らず、他の方法であってもよい。
【0067】
例えば、図8に示すように、3×3画素の画像データを仮定した場合、注目画素A5における濃度勾配方向θは下記式〔1〕〜〔3〕に基づいて算出できる。式中のA1〜A9の値は、画素A1〜A9の輝度値を示す。
【0068】
θ=arctan(fy/fx) …〔1〕
fx=(A3+2×A6+A9)−(A1+2×A4+A7) …〔2〕
fy=(A7+2×A8+A9)−(A1+2×A2+A3) …〔3〕
この他にも、Robinsonのエッジ検出オペレータ、Prewittのテンプレート型エッジ検出オペレータ、Kirschのエッジ検出オペレータなど、画像処理の分野において濃度勾配方向(エッジ方向)を求める各種算出手法を用いることができる。
【0069】
(f)上記実施形態では、濃度勾配方向が適正でない画素として抽出された画素の連結成分を異常部領域として特定する構成となっている。これに限らず、例えば、濃度勾配方向が適正でない画素のうち、当該画素の輝度値が所定の閾値よりも低い画素の連結成分を異常部領域として特定するなど、異常部領域を特定するにあたり、各画素の輝度値を参酌する構成としてもよい。
【0070】
(g)上記実施形態では、異常部領域の面積Sxが予め定められた判定基準値So以下か否かを判定することにより、良否判定を行っているが、これに限らず、例えば異常部領域の周囲長が許容範囲内か否かを基に判定を行う構成としてもよい。
【0071】
(h)上記実施形態では、二値化処理を行い、当該二値化画像データを基に錠剤領域を特定する構成となっているが、これに限らず、例えば二値化処理を行わず、濃淡画像データを基に所定の閾値以上の輝度領域を検出し、該輝度領域から錠剤領域を特定する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…PTPシート、2…ポケット部、3…容器フィルム、4…密封用フィルム、5…錠剤、7…PTP包装機、21…錠剤検査装置、22…照明装置、23…カメラ、24…画像処理装置、B…異物、E…エリア、Sx…異常部領域の面積、So…判定基準値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTPシートの製造過程において、搬送される帯状の包装用フィルムに形成されたポケット部に収容された錠剤を検査する錠剤検査装置であって、
前記ポケット部に収容された錠剤に対し光を照射可能な照明手段と、
前記光の照射された錠剤からの反射光を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段から出力される画像信号を処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、
前記画像信号から得た画像データに基づき、錠剤に相当する錠剤領域を特定する錠剤特定処理と、
前記錠剤領域のうちの少なくとも所定領域における各画素の濃度勾配方向を算出する勾配方向算出処理と、
前記各画素の濃度勾配方向が予め設定された予定勾配方向か否かを判定する勾配方向判定処理とを行うことにより、
濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を行うことを特徴とする錠剤検査装置。
【請求項2】
前記画像処理装置は、前記濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を行うに際し、
前記濃度勾配方向が前記予定勾配方向と異なる画素の連結成分である異常部領域を特定する異常部特定処理と、
前記異常部領域の面積又は周囲長が許容範囲内か否かを判定する良否判定処理とを行うことを特徴とする請求項1に記載の錠剤検査装置。
【請求項3】
前記画像処理装置は、前記異常部領域を特定するにあたり、各画素の輝度値を参酌することを特徴とする請求項2に記載の錠剤検査装置。
【請求項4】
前記画像処理装置は、前記濃度勾配に基づく錠剤の外観検査を、前記錠剤領域のうち濃度勾配を有する領域においてのみ行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の錠剤検査装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の錠剤検査装置を備えたことを特徴とするPTP包装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−117745(P2011−117745A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273016(P2009−273016)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000106760)シーケーディ株式会社 (627)
【Fターム(参考)】