説明

錠装置及び建具

【課題】組み立て作業の煩雑化を招来することなく作動機構を良好に動作させること。
【解決手段】左縦框23aに形成した装着口26から内部に挿入可能となる大きさを有し、予め設定した装着位置に配置された場合に左縦框23aの内表面23a3と作動機構130との間に介在して互いの間の隙間を埋めるライナー部140aと、ライナー部140aの基端部から外方に向けて突出し、ライナー部140aを左縦框23aの装着口26から内部に挿入した場合に左縦框23aの見込み面に係合することにより、ライナー部140aを装着位置に配置させる係合部140bとを有したライナー部材140を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置及びこの錠装置を適用した建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
開口枠に対してガラス窓等の障子を開閉可能に支持させた建具には、障子の戸先側に位置する縦框にハンドルを備え、このハンドルの操作により、開口枠と障子との間に係合手段を切替動作させるようにした錠装置を備えるものがある。係合手段は、例えば縦框の見込み面にスライド可能に配設されたロッキングバーと、このロッキングバーに設けられたロックピンとを備えて構成されており、縦框に対して上下にスライドすることにより、ロックピンが開口枠に対して係合状態と非係合状態とに切り替わるものである。
【0003】
この種の錠装置では、障子の戸先側に位置する縦框の内部に作動機構が設けられている。作動機構は、縦框に形成した装着口から内部に挿入された状態で縦框の内表面にネジ止めされるユニットケースを備えるとともに、縦枠の見込み面にスライダーを備えており、スライダーを介して係合手段のロッキングバーに連係されている。
【0004】
上記のように構成された錠装置では、ハンドルを一方側に操作すると、作動機構のスライダーを介してロッキングバーが縦框に対して例えば上方にスライドし、ロックピンが開口枠に係合した係合状態となるため、開口枠に対して障子を閉じた状態に維持することができる。一方、ハンドルを他方側に操作すると、作動機構のスライダーを介してロッキングバーが縦框に対して例えば下方にスライドし、ロックピンと開口枠との係合状態が解除された非係合状態となるため、障子を開方向に移動させれば、開口枠に対して障子を開けることができるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−55854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この種の錠装置では、縦框の見込み面に一対のスライドガイドが設けられている。このスライドガイドは、係合手段のロッキングバー及びロックピンをスライド可能、かつ開口枠に対して係合状態となった場合にロッキングバーを介してロックピンの見込み方向の位置を維持するものである。スライドガイドは、例えば縦框の見込み面から互いに平行となるように外方に突出した後、互いに対向する方向に屈曲しており、ロッキングバーの上下方向に沿った移動を案内する一方、ロッキングバー及びロックピンの見込み方向に沿った移動を阻止している。
【0007】
ここで、見込み面の両側縁部にスライドガイドを形成した縦框にあっては、スライドガイドを避けた位置に作動機構を挿入するための装着口を設けなければならない。このため、装着口から挿入した作動機構と縦框の内表面との間には、スライドガイドの分だけ隙間が生じることになる。互いの間に隙間が生じたままで作動機構を縦框の内表面にネジ止めした場合には、作動機構に変形が招来される恐れがあり、作動機構に正確な動作を期待することが困難となる。従って、作動機構を正確に動作させるには、縦框の内表面との間に生じた隙間をスペーサによって埋める必要がある。しかしながら、縦框の内部においては、内表面と作動機構との間にスペーサを位置決めしておくことが困難であり、建具の組み立て作業を著しく煩雑化する恐れがある。
【0008】
上述の隙間を埋めるには、縦框の内表面にリブを設けておくことも考えられる。しかしながら、押し出し成形によって成形されるのが一般的である框にあっては、必要部分にのみリブを設けることができず、その全長に渡ってリブが設けられることになり、コストが著しく増大することになるため現実的ではない。加えて、框を四周框組みする場合には、このリブが邪魔となって、上框や下框を縦框に挿入するインロー方式を適用することができないという問題も招来する。
【0009】
尚、上述した問題は、作動機構が縦框に設けられている場合に限らず、上框や下框に設けられている場合にも同様に起こり得るものである。
【0010】
本発明は、上記実情に鑑みて、組み立て作業の煩雑化を招来することなく作動機構を良好に動作させることのできる錠装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明に係る錠装置は、框の見込み面にスライド可能に配設し、前記框に対してスライドすることにより、開口枠に対して係合状態と非係合状態とに切り替わる係合手段と、前記框に形成した装着口から内部に挿入された状態で前記框の内表面にネジ止めされ、前記框の外部に設けた操作部の操作によりスライダーを介して前記係合手段をスライドさせる作動機構とを備えた錠装置において、前記框に形成した装着口から内部に挿入可能となる大きさを有し、予め設定した装着位置に配置されると前記框の内表面と前記作動機構との間に介在して互いの間の隙間を埋めるライナー部と、前記ライナー部の基端部から外方に向けて突出し、前記ライナー部を前記框の装着口から内部に挿入すると前記框の見込み面に係合することにより、前記ライナー部を前記装着位置に配置させる係合部とを有したライナー部材を備えることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、框の装着口からライナー部材を挿入すれば、ライナー部を框の内表面と作動機構との間に介在させて両者の間の隙間を埋めることができる。
【0013】
また、本発明は、上述した錠装置において、前記係合手段は、前記框の見込み面にスライド可能に支持させたロッキングバーと、前記ロッキングバーに設けられ、前記ロッキングバーのスライドに伴って移動することにより、前記開口枠に設けたロック受部との相対位置が変更されるロックピンとを備えて構成したものであり、係合状態においては障子を閉めた状態で前記ロックピンを前記ロック受部に対向する位置に配置させ、前記ロックピンを前記ロック受部に当接させることにより、障子の開ける方向への移動を規制する一方、非係合状態においては障子を閉めた状態で前記ロックピンを前記ロック受部から退避した位置に配置させることを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、ロックピンを開口枠のロック受部に当接させることにより、障子が開く方向に移動することを規制することができる。
【0015】
また、本発明に係る建具は、開口枠と框との間に、上述したいずれかの錠装置を適用したことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、上述した錠装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、框の装着口からライナー部材を挿入すれば、ライナー部を框の内表面と作動機構との間に介在させて両者の間の隙間を埋めることができる。従って、組み立て作業の煩雑化を招来することなく作動機構を框の内表面に保持させることができるため、作動機構を良好に動作させ、錠装置の正確な動作を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の実施の形態である建具を室内側から示した図である。
【図2】図2は、図1に示した建具の断面平面図である。
【図3−1】図3−1は、図1に示した建具の要部を戸先面側から示した分解斜視図である。
【図3−2】図3−2は、縦框の戸先面を示した要部拡大図である。
【図4−1】図4−1は、図1に示した建具の要部であって組み立て途中の状態を戸先面側から示した分解斜視図である。
【図4−2】図4−2は、図4−1の状態の縦框の戸先面を示した要部拡大図である。
【図5】図5は、図1に示した建具の要部を戸先面側から示した斜視図である。
【図6】図6は、図1に示した建具の錠装置に適用する作動機構をユニットケース側から示した斜視図である。
【図7】図7は、図6に示した作動機構の分解斜視図である。
【図8】図8は、図6に示した作動機構を取り付けた状態の縦框を示す断面側面図である。
【図9】図9は、図6に示した作動機構を取り付けた縦框の一部を破断して示す斜視図である。
【図10−1】図10−1は、図1に示した建具において縦框の装着口にライナー部材を挿入する状態を示す横断面図である。
【図10−2】図10−2は、図1に示した建具において縦框にライナー部材を取り付けた状態を示す横断面図である。
【図10−3】図10−3は、図1に示した建具の縦框を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る錠装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は、本発明の実施の形態である錠装置を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、アルミニウムの押し出し材である上枠11、下枠12及び一対の縦枠13a,13bを四周枠組みすることによって構成した開口枠10と、アルミニウムの押し出し材である上框21、下框22及び一対の縦框23a,23bを四周框組みし、かつこれら上框21、下框22及び一対の縦框23a,23bの間にガラス板等の面材24を配設することによって構成した障子20とを備えて構成したものである。障子20は、開口枠10の内部に配置された場合に開口枠10の開口を閉塞することのできる大きさに構成してある。本実施の形態の障子20は、一方の縦框23bと一方の縦枠13bとの間に介在させたヒンジ1によって開口枠10に支持させてあり、上下方向に沿ったヒンジ軸の軸心回りに回転することによって開口枠10の開口を開閉することが可能である。
【0021】
この障子20には、図2及び図3−1に示すように、戸先側に位置する縦框23aにおいて開口枠10の縦枠13aに対向する見込み面(以下、単に「戸先面23a1」という)に一対のスライドガイド25、装着口26、一対の取付ネジ孔27が設けてあるとともに、戸先側に位置する縦框(以下、「左縦框23a」という)において室内側に位置する見付け面(以下、単に「室内側見付け面23a2」という)に駆動軸挿通孔28、一対のハンドル取付孔29が設けてある。
【0022】
一対のスライドガイド25は、図2〜図5に示すように、左縦框23aの戸先面23a1において室内側に位置する縁部に長手方向に沿って設けたもので、互いに平行となるように突出したガイド基部25aと、各ガイド基部25aの突出端縁から互いに対向する方向に屈曲した屈曲部25bとを有している。これらのスライドガイド25は、左縦框23aと一体であり、左縦框23aを押し出し成形する際に同時に成形したものである。装着口26は、左縦框23aの高さ方向略中央となる部位に設けた貫通孔であり、戸先面23a1において一対のスライドガイド25の間に形成してある。図3−2及び図4−2に示すように、この装着口26は、上下方向に沿った寸法が水平方向に沿った寸法よりも大きな長孔であり、水平方向に沿った幅がスライドガイド25における屈曲部25bの相互間隔よりもわずかに小さく形成してある。装着口26を設ける位置は、一対の屈曲部25b相互間の長手方向中心線に対して一方側(図示の例では室内側)にオフセットしてある。一対の取付ネジ孔27は、装着口26の上下となる部位に設けた雌ネジ孔であり、一対の屈曲部25b相互間の長手方向中心線上に貫設してある。
【0023】
室内側見付け面23a2に設けた駆動軸挿通孔28は、操作ハンドル(操作部)30の駆動軸31を挿通させるための貫通孔であり、装着口26の中心に対応する高さ位置に形成してある。一対のハンドル取付孔29は、操作ハンドル30のブラケット32に取り付けられるハンドル取付ネジ33を挿通させるための貫通孔であり、駆動軸挿通孔28の上下において装着口26の形成範囲に対応する高さ位置に設けてある。
【0024】
また、この障子20には、図2〜図5に示すように、戸先側に位置する左縦框23aに錠装置100が設けてある。錠装置100は、開口枠10の縦枠13aに設けたロック受部110に対して係合状態と非係合状態とに切り替わり、係合状態となった場合に開口枠10に対して障子20を閉じた状態に維持するためのもので、一対のロッキングバー120及び作動機構130を備えて構成してある。
【0025】
ロッキングバー120は、スライドガイド25におけるガイド基部25aの相互間に挿入される幅を有し、かつその両側縁部がスライドガイド25の屈曲部25bと戸先面23a1との間隙に挿入される板厚を有した金属製のプレート状部材である。それぞれのロッキングバー120には、一方の端部に金属製のロックピン121が設けてあるとともに、他方の端部に連係孔122が設けてある。これらのロッキングバー120は、図4−1に示すように、連係孔122が形成された端部を互いに近接させ、かつロックピン121が外方に向けて突出した状態で左縦框23aの戸先面23a1とスライドガイド25との間に挿入し、上下方向に沿ってのみスライド可能となるように支持させてある。
【0026】
作動機構130は、左縦框23aに対するロッキングバー120の位置をコントロールするもので、図6〜図9に示すように、ユニットケース131を備えている。ユニットケース131は、一対の本体ネジ孔132aが設けられた金属板から成るケース本体132と、ケース本体132との間にピニオン133を収容し、本体ネジ孔132aに対応する部位にネジ逃げ孔134aが設けられた金属板から成るカバー部134とを有して薄型の矩形箱状に構成したもので、左縦框23aの外部から装着口26を介して左縦框23aの内部に挿入することのできる大きさに形成してある。ケース本体132に形成した一対の本体ネジ孔132aは、ハンドル取付ネジ33が螺合される雌ネジ孔であり、ユニットケース131を装着口26から左縦框23aの内部に挿入した場合に、一対のハンドル取付孔29に対応する位置に形成してある。ピニオン133は、外周の一部にピニオン歯133aを有したギア部材であり、その中心部に操作ハンドル30の駆動軸31が嵌合される矩形状の嵌合孔133bを有している。このピニオン133は、嵌合孔133bをケース本体132及びカバー部134の軸逃げ孔132b,134bに合致させた状態で、これらケース本体132とカバー部134との間に回転可能に配設してある。
【0027】
また、作動機構130は、フロントカバー135及びスライダー136を備えている。フロントカバー135は、カバープレート部135aと一対のスカート部135bとを一体に形成した横断面がコの字状を成す金属製の長尺部材である。カバープレート部135aは、スライドガイド25における屈曲部25bの相互間隔よりもわずかに小さい幅を有する一方、ユニットケース131の幅よりも十分に大きな長さを有した矩形の平板状を成すもので、一対の突部カシメ用孔135c及び一対の取付ネジ逃げ孔135dを有している。一対の突部カシメ用孔135cは、カバープレート部135aに形成した貫通孔であり、互いの間にユニットケース131の幅に対応した間隔を確保して形成してある。一対の取付ネジ逃げ孔135dは、互いの間に左縦框23aの戸先面23a1に形成した取付ネジ孔27に対応する間隔を確保して形成した貫設孔である。図には明示していないが、これら一対の突部カシメ用孔135c及び一対の取付ネジ逃げ孔135dは、カバープレート部135aの長手方向に沿った中心線に並設してある。
【0028】
このカバープレート部135aは、長手方向の中央部にユニットケース131を位置させた状態で、ケース本体132及びカバー部134のそれぞれに設けたカシメ用突部132c,134cを突部カシメ用孔135cにカシメることによりユニットケース131に連結してある。カシメ用突部132c,134cは、ケース本体132及びカバー部134の両端部から突設したもので、互いに並設した状態でフロントカバー135のカバープレート部135aにカシメてある。尚、突部カシメ用孔135cにカシメ用突部132c,134cをカシメたユニットケース131は、フロントカバー135のカバープレート部135aに対してオフセットされている。
【0029】
一対のスカート部135bは、カバープレート部135aの両側縁部から互いに平行となるように延在した部分である。個々のスカート部135bにおいて長手方向の中央に位置する部分は、左縦框23aのスライドガイド25よりも大きな高さを有し、一方、それぞれの両端に位置する部分は、自身の板厚とほぼ同じ程度のごく小さい高さを有するように構成してある。
【0030】
スライダー136は、フロントカバー135において一対のスカート部135bの相互間隔よりも小さい幅を有し、かつフロントカバー135よりも長さの短い金属製のプレート状部材であり、ユニットケース131とフロントカバー135との間に配設してある。このスライダー136は、ケース本体132及びカバー部134のカシメ用突部132c,134cに対応する部位に長手方向に沿ったスライド用長孔136aを有しており、スライド用長孔136aにカシメ用突部132c,134cを挿通させることにより、フロントカバー135及びユニットケース131に対してフロントカバー135の長手方向に沿ってスライドすることが可能である。
【0031】
スライダー136には、一対の連係ピン137及びラック138が設けてある。連係ピン137は、ロッキングバー120の連係孔122に嵌合することのできる大きさに形成した金属製の円柱状部材であり、スライダー136の両端部において互いに同一となる一方の表面からユニットケース131側に向けて突出している。ラック138は、先端辺部に複数のラック歯138aが直線上に形成され、かつ基端辺部に一対のカシメ用爪片138bを備えた矩形の平板状部材である。このラック138は、先端辺部に形成したラック歯138aをピニオン133に歯合させた状態でケース本体132とカバー部134との間にスライド可能に収容させ、かつカシメ用爪片138bをスライダー136のカシメ用孔136bにカシメることにより、スライダー136の長手方向中央部に取り付けてある。
【0032】
上記のように構成した作動機構130では、ユニットケース131の外部からピニオン133を回転させると、ケース本体132とカバー部134との間においてラック138がスライドし、このラック138のスライドに伴ってスライダー136がユニットケース131とフロントカバー135との間で自身の長手方向に沿ってスライドすることになる。スライダー136のスライド方向は、ピニオン133の回転方向に対応して上下となる。この間、スライダー136は、フロントカバー135のカバープレート部135a及び一対のスカート部135bによって三方が覆われた状態にあり、一対のスカート部135bの相互間を覗かない限り、外部から視認できる構成にはない。
【0033】
この作動機構130を左縦框23aに取り付けるには、ユニットケース131を装着口26から左縦框23aの内部に挿入し、連係ピン137をロッキングバー120の連係孔122に嵌合させた状態で、フロントカバー135に形成した一対の取付ネジ逃げ孔135dを介してカバー取付ネジ139を左縦框23aの取付ネジ孔27に締結し、さらに左縦框23aの室内側見付け面23a2に操作ハンドル30を取り付ければ良い。
【0034】
この場合、この建具によれば、フロントカバー135に対してユニットケース131がオフセットされているため、装着口26に対して作動機構130の向きが上下逆であると、フロントカバー135を一対の屈曲部25bの間に挿入することができない。これにより、左縦框23aに対してユニットケース131を上下逆に取り付ける恐れがなくなり、左縦框23aの内表面23a3に対してユニットケース131が常に予め設定した位置に配置されることになる。
【0035】
また、スライダー136を左縦框23aの外部に配設する構成であるため、スライダー136の連係ピン137をロッキングバー120の連係孔122に嵌合させる作業も左縦框23aの外部で行うことができ、錠装置100の組立作業をきわめて容易に実施することができる。
【0036】
ところで、左縦框23aの戸先面23a1には、一対のスライドガイド25が設けてある。このため、装着口26は、スライドガイド25を避けた位置でなければ設けることができない。つまり、上述の左縦框23aにあっては、図10−1の横断面に示すように、装着口26の室内側に位置する開口位置を、左縦框23aの内表面23a3に合致させることができず、左縦框23aの内表面23a3よりも室外側に設けざるを得ない。こうした左縦框23aに対して単に装着口26にユニットケース131を挿入させた場合には、ユニットケース131と左縦框23aの内表面23a3との間に隙間が生じることとなる。
【0037】
そこで、この建具では、図10−1〜図10−3に示すように、予め左縦框23aの装着口26にライナー部材140を装着させておき、ユニットケース131と左縦框23aの内表面23a3との間を埋めるようにしている。ライナー部材140は、図3−1に示すように、略矩形状を成すライナー部140aと、ライナー部140aの基端両端部から互いに離隔する方向に突設した一対の係合部140bとを一体に形成した金属製部材である。ライナー部140aは、左縦框23aに形成した装着口26の上下方向に沿った長さよりもわずかに短い幅を有し、かつ面外方向に適宜屈曲して形成したもので、図10−2に示すように、一方の面140a1を左縦框23aの内表面23a3に当接させた場合、他方の面140a2が装着口26の室内側に位置する開口縁延長上に配置されるように構成してある。このライナー部140aには、左縦框23aの室内側見付け面23a2に形成した駆動軸挿通孔28に対応する部位に切欠140cが形成してあるとともに、一対のハンドル取付孔29に対応する部位にそれぞれハンドルネジ挿通孔140dが形成してある。一対の係合部140bは、図4−1及び図10−1〜図10−3に示すように、ライナー部140aを装着口26に挿入した場合にそれぞれ左縦框23aの戸先面23a1に当接し、ライナー部140aを左縦框23aの内部に位置決め配置させるものである。具体的には、ライナー部140aを装着口26から挿入し、一対の係合部140bを戸先面23a1に当接させると、ライナー部140aの一方の表面140a1が左縦框23aの内表面23a3に当接し、かつ切欠140c及び一対のハンドルネジ挿通孔140dがそれぞれ駆動軸挿通孔28及び一対のハンドル取付孔29に対向した装着位置に配置されることになる。
【0038】
従って、装着口26に予めライナー部材140を装着した状態で装着口26からユニットケース131を左縦框23aの内部に挿入させれば、ライナー部材140によってユニットケース131と左縦框23aの内表面23a3との間の隙間が埋められることになる。これにより、この状態から左縦框23aの室内側見付け面23a2に操作ハンドル30を装着してハンドル取付ネジ33を本体ネジ孔132aに螺合すれば、ユニットケース131に変形を招来することなく左縦框23aに操作ハンドル30を取り付けるとともに、左縦框23aの内部にユニットケース131を取り付けることができる。
【0039】
上記のようにして作動機構130を取り付けた錠装置100では、操作ハンドル30を回転操作すると、駆動軸31に嵌合したピニオン133が回転し、ピニオン133に歯合したラック138が上下方向に沿って移動することになり、フロントカバー135と左縦框23aの戸先面23a1との間に画成された移動空間においてスライダー136が同方向にスライドすることになる。スライダー136がスライドすると、ロッキングバー120が連動してスライドし、ロックピン121が左縦框23aに対して上下に移動することになり、開口枠10の縦枠13aに設けたロック受部110(図2参照)に対して係合状態と非係合状態とに切り替わることになる。開口枠10に対して障子20を閉じた状態で係合状態になると、ロックピン121がロック受部110に当接することにより、開口枠10に対して障子20を開ける方向の移動が規制される。一方、非係合状態となった場合には、ロックピン121がロック受部110から退避した位置に配置されることになり、開口枠10に対して障子20を室外側に開けることができるようになる。
【0040】
上述したように、この建具の錠装置100に適用した作動機構130は、フロントカバー135を備えたものである。しかも、作動機構130を左縦框23aに取り付けた状態にあっては、フロントカバー135と左縦框23aの戸先面23a1との間にスライダー136が配設されることになる。従って、開口枠10に対して障子20が開けた状態であっても、スライダー136が外部に露出することがない。これにより、建具の外観品質を損なう恐れがなく、またスライダー136のスライド部分やラック138とピニオン133との歯合部分等、操作動力伝達部にゴミ等の異物が進入する恐れがなくなる。
【0041】
ここで、上述したフロントカバー135は、カバープレート部135aと一対のスカート部135bとを一体に形成した横断面がコの字状を成すものである。従って、左縦框23aに対してフロントカバー135を取り付ける場合、カバー取付ネジ139の締結力が過剰となると、フロントカバー135に変形を招来する恐れがある。
【0042】
このため、この建具では、図6〜図8及び図10−3に示すように、ユニットケース131に支持部150を設け、これを左縦框23aの戸先面23a1とフロントカバー135のカバープレート部135aとの間に介在させるようにしている。支持部150は、ユニットケース131を構成するケース本体132とカバー部134との双方に構成したもので、それぞれのカシメ用突部132c,134cに隣接する位置に形成した平板状部分である。この支持部150は、スライダー136のスライド用長孔136aに挿通可能となる幅に構成してあり、スライド用長孔136aを介して左縦框23aの戸先面23a1とフロントカバー135のカバープレート部135aとの間に介在している。支持部150の突出端は、フロントカバー135に形成した取付ネジ逃げ孔135dの開口周縁に位置し、カバー取付ネジ139の頭部との間においてフロントカバー135のカバープレート部135aを挟持した状態にある。
【0043】
上記のように、左縦框23aの戸先面23a1とフロントカバー135のカバープレート部135aとの間に支持部150を介在させるように構成した錠装置100にあっては、カバー取付ネジ139の締結力が過剰となった場合にも、フロントカバー135のカバープレート部135aが変形する恐れがない。しかも、支持部150は、スライダー136のスライド用長孔136aにおいてカバー取付ネジ139に並設された状態となり、スライダー136のスライドを何ら妨げることもない。これらの結果、スライダー136の良好なスライドが確保され、錠装置100の操作性も良好となる。
【0044】
尚、上述した実施の形態では、開口枠10に対して障子20が上下方向に沿ったヒンジ軸の軸心回りに回転することによって開閉するものを例示しているが、水平方向に沿ったヒンジ軸の軸心回りに回転することによって開閉するものであっても良いし、開口枠10に対してスライドすることによって開閉するものでも構わない。この場合、作動機構130を設ける位置も、左縦框23aに限らない。また、係合手段として一対のロッキングバー120を備えたものを例示しているが、ロッキングバー120を唯一備えて係合手段を構成しても良い。
【符号の説明】
【0045】
10 開口枠
11 上枠
12 下枠
13a,13b 縦枠
20 障子
21 上框
22 下框
23a,23b 縦框
25 スライドガイド
26 装着口
30 操作ハンドル
100 錠装置
110 ロック受部
120 ロッキングバー
121 ロックピン
130 作動機構
131 ユニットケース
132 ケース本体
132c,134c カシメ用突部
134 カバー部
135 フロントカバー
136 スライダー
138 ラック
140 ライナー部材
140a ライナー部
140b 係合部
150 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
框の見込み面にスライド可能に配設し、前記框に対してスライドすることにより、開口枠に対して係合状態と非係合状態とに切り替わる係合手段と、
前記框に形成した装着口から内部に挿入された状態で前記框の内表面にネジ止めされ、前記框の外部に設けた操作部の操作によりスライダーを介して前記係合手段をスライドさせる作動機構と
を備えた錠装置において、
前記框に形成した装着口から内部に挿入可能となる大きさを有し、予め設定した装着位置に配置されると前記框の内表面と前記作動機構との間に介在して互いの間の隙間を埋めるライナー部と、
前記ライナー部の基端部から外方に向けて突出し、前記ライナー部を前記框の装着口から内部に挿入すると前記框の見込み面に係合することにより、前記ライナー部を前記装着位置に配置させる係合部と
を有したライナー部材を備えることを特徴とする錠装置。
【請求項2】
前記係合手段は、前記框の見込み面にスライド可能に支持させたロッキングバーと、前記ロッキングバーに設けられ、前記ロッキングバーのスライドに伴って移動することにより、前記開口枠に設けたロック受部との相対位置が変更されるロックピンとを備えて構成したものであり、係合状態においては障子を閉めた状態で前記ロックピンを前記ロック受部に対向する位置に配置させ、前記ロックピンを前記ロック受部に当接させることにより、障子の開ける方向への移動を規制する一方、非係合状態においては障子を閉めた状態で前記ロックピンを前記ロック受部から退避した位置に配置させることを特徴とする請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記開口枠と前記框との間に請求項1または請求項2に記載の錠装置を適用したことを特徴とする建具。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【公開番号】特開2011−252269(P2011−252269A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124597(P2010−124597)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)