説明

錫系めっき鋼板のスポット溶接方法

【課題】めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する、いわゆる低融点金属侵入割れを防止することができる錫系めっき鋼板のスポット溶接方法を提供する。
【解決手段】錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布することを特徴とする錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。好ましくは、気化潜熱を有する液体の塗布量を、めっき鋼板の溶接電極接触部1点当たり0.05ml以上の油もしくは水、もしくは、油と水の混合液とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錫系めっき鋼板のスポット溶接方法に関し、特に、錫-亜鉛めっき鋼板のスポット溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料タンクは、車体のデザインに合わせて最後に設計されることが通常で、その形状は近年益々複雑になる傾向にある。また燃料タンクは自動車の重要保安部品であるため、その使用材料には、優れた深絞り特性は勿論のこと、成型後の衝撃による割れが無いことも要求される。これに加えて、フィルター目詰まりに繋がるような腐食生成物の生成が無く、孔あき腐食の懸念の無い材料で、しかも容易に安定して接合できる材料であることも重要である。
【0003】
これら様々な特性を有する材料として、従来よりターンシートと称されるPb−Sn合金めっき鋼板(特公昭57−61833号公報:下記特許文献1)が主に使用されてきた。この材料はガソリンに対して安定な化学的性質を持ち、かつめっきが潤滑性に優れるためプレス成形性に優れ、またスポット溶接やシーム溶接性、半田性にも優れている。これ以外にも亜鉛めっき鋼板に厚クロメート処理を施した鋼板も使用されており、Pb−Sn合金程ではないが、やはり優れた加工性、耐食性、接合性を有している。しかし近年環境への負荷という意味からPbを使用しない材料が希求されている。
【0004】
このPbを使用しない自動車燃料タンク材料の候補材の一つとして、錫系めっき鋼板がある。Snは表面に安定な酸化皮膜が形成されるため、ガソリンを始めとして、アルコールやガソリン等が劣化したときに生じる有機酸に対しても耐食性が良好である。また、Pbと同様、軟質な金属であり、加工時に潤滑作用を有することも知られている。その一方、Snは一般の環境ではFeよりも貴な電位にあり、ピンホールや加工疵等から地鉄が溶出しやすいという欠点を有しており、この課題の解決方法として、特開平8−269733号公報(下記特許文献2)には、適正量のZnを添加する方法が提案されている。
【0005】
しかし自動車燃料タンクは、多くの付属品やパイプを接合する必要や、燃料の漏れの無いよう、周囲を溶接する必要があり、材料側には良好で、連続生産を妨げない安定した接合性が要求される。ところが、錫系めっき鋼板は、スポット溶接やシーム溶接等の抵抗溶接は可能であるものの、めっき層のSnが溶接電極であるCuと合金化しやすいという性質を有するために、電極先端がSn−Cu系金属間化合物に転化していき、この金属間化合物は脆性であるため次第に欠損していって十分な発熱が得られなくなり、電極の寿命の指標となる連続打点性が劣るという課題があった。この課題は特にスポット溶接時に顕著となるもので、スポット溶接時の電極寿命が極端に短くなっていた。
【0006】
その対策として、特許第3002445号公報(下記特許文献3)には、抵抗溶接性、半田、ロウ付け性に及ぼす材料側の諸因子について詳細に検討し、表面の接触抵抗値を適正に制御することで、良好な抵抗溶接性、半田、ロウ付け性を得られることを見出し、鋼板を2枚重ね、一対の電極で挟み、12.6kgf/mm2 の面圧をかけたときの電極間の接触抵抗値が0.1〜8mΩであることを特徴とする、抵抗溶接性に優れた自動車燃料タンク用溶融錫系めっき鋼板が提案されている。
【0007】
しかし、この方法により抵抗溶接性を向上させることができるが、抵抗溶接を行う際の発熱により、めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する、いわゆる低融点金属侵入割れが発生するという問題点があり、従来は溶接電流を少なくすることにより対処するほかなく電極寿命低下による生産性の低下を招いていた。
また、溶接中にめっき層の錫系合金を溶融させないために特開平1−306078(下記特許文献4)に示すような油の気化熱を利用して電極の温度上昇を防ぐことは効果的である。しかし、特許文献4は亜鉛めっき鋼板に関するもので、溶接用として一般的に使用されている合金化溶融亜鉛めっき鋼板の場合、表面のめっき層の融点は700℃程度と高い。これに対して本願が対象とする錫系めっき鋼板の場合、めっき層の融点は230℃付近であり、はるかに大きな冷却効果が必要とされるので特許文献4の方法を使用しても十分な効果を得ることができなかった。
【特許文献1】特公昭57−61833号公報
【特許文献2】特開平8−269733号公報
【特許文献3】特許第3002445号公報
【特許文献4】特開平1−306078公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記のようなめっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する、いわゆる低融点金属侵入割れを防止して電極寿命向上させることができる錫系めっき鋼板のスポット溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、抵抗溶接性に及ぼす材料側の諸因子ではなく、錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布してスポット溶接時の発熱を吸収することにより低融点金属侵入割れを防止して電極寿命向上させることができる錫系めっき鋼板のスポット溶接方法を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布することを特徴とする錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
(2)前記気化潜熱を有する液体の塗布量を、めっき鋼板の溶接電極接触部1点当たり0.05ml以上とすることを特徴とする(1)に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
(3)前記気化潜熱を有する液体を、油もしくは水、もしくは、油と水の混合液とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
(4)前記気化潜熱を有する液体が、水の質量%が20%以下の油と水の混合液とすることを特徴とする(1)または(2)に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
<作用>
(1)の発明によれば、錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布することにより、スポット溶接時の発熱を吸収することができるので、めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する低融点金属侵入割れを防止することができる。
(2)の発明によれば、気化潜熱を有する液体の塗布量を、めっき鋼板の溶接電極接触部1点当たり0.05ml以上とすることにより、スポット溶接時の発熱を十分に吸収することができ、低融点金属侵入割れの防止効果をさらに向上させることができる。
(3)の発明によれば、気化潜熱を有する液体を、油もしくは水、もしくは、油と水の混合液とすることにより、容易に入手できる液体で低融点金属侵入割れの防止効果を実現することができる。
(4)の発明によれば、気化潜熱を有する液体が、水の質量%が20%以下の油と水の混合液とすることにより、低融点金属侵入割れの防止効果を高めつつ、水分による腐食を防止することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、抵抗溶接性に及ぼす材料側の諸因子ではなく、錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布してスポット溶接時の発熱を吸収することにより低融点金属侵入割れを防止して電極寿命向上させることができる錫系めっき鋼板のスポット溶接方法を提供することができ、具体的には下記のような産業上有用な著しい効果を奏する。
1)めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する低融点金属侵入割れを防止することができる。
2)スポット溶接時の発熱を十分に吸収することができ、低融点金属侵入割れの防止効果をさらに向上させることができる。
3)容易に入手できる液体で低融点金属侵入割れの防止効果を実現することができる。
4)低融点金属侵入割れの防止効果を高めつつ、水分による腐食を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法を実施するための最良の形態について以下に詳述する。
【0012】
図1は、本発明における錫系めっき鋼板のスポット溶接方法実施形態を例示する図である。
【0013】
図1において、1は電極、2はSn-Znめっき鋼板、3は油と水の混合液を示す。
【0014】
通常の溶接缶用材料にも錫系めっきが利用され、溶接電極もCuであるが、缶用材料の場合には、スポット溶接ではなくシーム溶接であるうえ、板厚が薄く、また鍛接状態の接合であるため、溶接に必要な熱量は非常に小さい。かつSnの付着量も非常に小さいため、このような問題は生じない。自動車燃料タンクというような、高い防錆力と強度を求められる用途において、板厚、めっき付着量を高くする必要があり、かつスポット溶接を多用するような用途であるため、電極材料と反応しやすい錫系めっきにおいては、電極とSnとの反応という問題が生じる。
【0015】
本発明者等は、スポット溶接する際の低融点金属侵入割れの発生メカニズムについて検討した。
【0016】
図1に示すように、2枚のSn-Znめっき鋼板2を重ね合わせて上下から電極1を接触させて電気抵抗によりスポット溶接する際の鋼板表面の温度は600〜800℃になる。
【0017】
一方、Snの融点は234℃なのでSnは溶融状態となり地鉄の粒界に侵入し、溶接後に冷却されて固まる際の地鉄の体積収縮により割れが発生するものと考えられる。
【0018】
そこで、本発明者らは、錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布してスポット溶接時の発熱を吸収することにより低融点金属侵入割れを防止することができることを見出した。
【0019】
錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布することにより、スポット溶接時の発熱を吸収することができるので、めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する低融点金属侵入割れを防止することができる。
【0020】
本発明においては、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体の種類は問わないが、入手が容易で安価な、油もしくは水、もしくは、油と水の混合液とすることにより、容易に入手できる液体で低融点金属侵入割れの防止効果を実現することができる。
【0021】
また、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を油と水の混合液とする場合に、水の質量%が20%以下の油と水の混合液とすることにより、低融点金属侵入割れの防止効果を高めつつ、水分による腐食を防止することができる。
【0022】
本発明においては、錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布する方法は問わないが、ブラシやハケ等で塗る方法や、電極1の横から噴射する等の方法で塗布することが好ましい。

本発明において、鋼板の表面に接触抵抗に寄与する何らかの皮膜を付与することが好ましい。これらは酸化皮膜、水酸化皮膜、陽極酸化皮膜、化成皮膜、有機樹脂皮膜等であるが、本発明においては特にその種類及び製造法を限定するものではない。但し、工業的によく利用されているのはクロメート(VI、III)に代表される化成皮膜、あるいはジルコニウム系やチタニウム系の無機系皮膜、シランカップリング等の有機無機複合皮膜、有機樹脂皮膜である。この皮膜量を合計で片面25g/m2 以下とする。そして、皮膜量と表面粗度との組合せ効果により抵抗溶接性、半田、ロウ付け性が確保される。処理の仕方として、片面処理、両面均一処理、両面不均一処理がありうるが、本発明においては、特に規定せずどのような処理も可能である。
【0023】
錫系めっきの表面皮膜として、クロメート処理(VI、III)があり、耐食性、溶接性等のバランスのとれた処理である。この処理を適用する場合には、その付着量を金属Cr換算で2〜200mg/m2とする。2mg/m2 以下では、処理量が不十分で、錫系めっきの表面粗度が十分低くても、狙いとする接触抵抗値を得ることが困難であり望ましくない。また200mg/m2超の処理は、外観が黄色くなりやすいこと、接触抵抗値が過大になりやすいことから、望ましくない。クロメート皮膜の種類として、塗布型、電解型、反応型等あり、クロメートの組成も無機成分のみのタイプや樹脂を多量に含有するタイプ等あるが、これらについては特に限定するものではない。
【0024】
めっきの付着量としては、片面当たり10〜70g/m2 であることが望ましい。一般に、めっき付着量が増大するほど、電極との反応物質が多いことを意味し、溶接性は劣化する傾向にある。その一方で、耐食性はめっき付着量が多いほど有利に働くため、両特性を満足する付着量は限られる。更に、本発明は、溶融法によるめっきを前提としているが、溶融めっき法において、極端に薄目付けとすることは困難である。従って望ましい付着量として、十分な耐食性が得られず、また安定して外観の優れためっきを行うことも困難になるため、付着量の下限は10g/m2が、また溶接性が劣化するため上限は70g/m2 が望ましい。
【0025】
最後にめっきの組成について説明する。本発明は、錫系めっきとするが、前記した理由によりめっき層中にZnを添加することが好ましい。Snは前述したように、耐食性に優れる金属であるが、母材の鋼板に対する犠牲防食能がないため、ピンホール等の欠陥、カジリ等の加工疵から母材の腐食が進展する懸念がある。Snめっき中にZnを添加することで、Snに起因する高い耐食性に加え、犠牲防食能を付与することが可能で、総合的に極めて高い耐食性を発揮することが可能となる。
【0026】
この機能を付与するには、めっき中のZn添加量が1%以上必要であり、また多量のZnが存在するとZnの偏析が起こりやすく、Znの優先腐食とこれによる腐食生成物形成という問題が生じる。この理由から、Zn濃度の上限は40%が望ましい。他の成分については、特に限定するものではない。不純物元素として、微量のFe,Ni等がありうる。また必要に応じ、Mg,Al,ミッシュメタル,Sb等を添加しても構わない。
【0027】
使用するめっき原板の組成は特に限定するものではない。しかし高度な加工性を要求される部位だけに、加工性に優れたIF鋼の適用が望ましく、さらには溶接後の溶接気密性、二次加工性等を確保するためにBを数ppm添加した鋼板が望ましい。また鋼板の製造法としては通常の方法によるものとする。鋼成分は例えば転炉−真空脱ガス処理により調節されて溶製され、鋼片は連続鋳造法等で製造され、熱間圧延される。熱間圧延、またそれに続く冷間圧延の条件は鋼板の深絞り性に影響を与える。特に優れた深絞り性を付与するには、熱延時の加熱温度を1150℃程度と低めに、また熱延の仕上げ温度は800℃程度と低めに、巻き取り温度は600℃以上と高めに、冷延の圧下率は80%程度と高めにすると良い。
【0028】
めっきの前処理、めっき条件等は特に限定するものではない。錫系めっきの前処理として、NiやFe−Ni等のプレめっきを施すことも可能である。また、溶融めっき方法として大きくフラックス法と、ゼンジマー法があるが、どちらの製造法でも製造可能である。さらに、めっき後の後処理として、クロメート等の化成処理、有機樹脂被覆以外に、溶融めっき後の外観均一化処理であるゼロスパングル処理、めっきの改質処理である焼鈍処理、表面状態、材質の調整のための調質圧延等があり得るが、本発明においては特にこれらを限定せず、適用することも可能である。
【実施例】
【0029】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
表1に示す成分の鋼を通常の転炉−真空脱ガス処理により溶製し、鋼片とした後、通常の条件で熱間圧延、冷間圧延、連続焼鈍工程を行い、焼鈍鋼板(板厚0.8mm)を得た。この鋼板の一部にワット浴でNiめっきを1g/m2施した後、フラックス法でSn−Znめっきを行った。フラックスはZnCl2 水溶液をロール塗布して使用し、Znの組成は0〜60%まで変更した。浴温は280℃とし、めっき後エアワイピングによりめっき付着量を調整した。こうして製造しためっき鋼板を種々の粗度を有するロールで調質圧延して表面粗度を調節した。この鋼板に数種類の後処理を施した。後処理の種類と組成を表2に示す。上記組合せの材料にてスポット溶接性(電極寿命&低融点金属侵入割れ)を評価した結果を表3に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

<水と油の混合比>
水の気化潜熱(539cal/g)に比較して油のそれは50〜300cal/gと低いため、水の活用が有効であるが、めっき表面に水が残存すると放置している間に錆が発生してしまう。よって、水は、めっきの腐食に悪影響を及ぼさない程度の添加が求められる。実際環境でのさび発生状況調査結果より水混合比は、20%以下が望ましい。界面活性剤添加により水と油の混合させても構わない。
<溶接性評価内容>
溶接条件
溶接電流:10KA加圧力 :240kg溶接時間:12サイクル(60HZ
電 極 :ドームラジアス型電極16mmφ−8R,先端径6mm-40R
ウェルドローブ:8kAより溶接電流を200Aずつ上げていった際のナゲット断面径が4√t=3.6mmを下限(Io)とし、チリ発生電流値を上限(Ie)とした。
ナゲット径は、溶接部中心断面を鏡面研磨して5%ナイタールエッチングして溶融相当部を計測した。
<評価項目>
電極寿命: チリ発生電流値(Ie)の95%電流値にて溶接し、25点毎にナゲット径を調査して、ナゲット径が4√t=3.6mmを下回った打点を電極寿命とした。電極寿命200点以上をOKとした。
低融点金属侵入割れ:ナゲット断面にて鋼板表面を顕微鏡で観察した。
0.2mm以上ワレ長さが存在した場合をNGとした。
【0033】
【表3】

めっき鋼板:Sn-8wt%Znめっき(40g/m2) 後処理皮膜:γ(300mg/m2
腐食試験 :水とメタノール(気化潜熱264cal/g)の混合液を10g/m2になるようにめっき鋼板上に塗布した。気温25℃、相対湿度60%の恒温高湿槽中に暴露して240Hr後の白錆発生状況を観察した。
【0034】
【表4】

表4に示すように、水の混合比が20%以下の油と水の混合液を用いた場合には白錆の発生は認められなかったことから本発明の効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、錫系めっき鋼板のスポット溶接時に、めっき層中のSnが溶けて地鉄の粒界に入り込んで割れが発生する、いわゆる低融点金属侵入割れを簡便な方法で防止することができ、従来のように溶接電流を少なくする必要がないので生産性を著しく向上させることができるため特に燃料タンクにおけるスポット溶接に多用されることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明における錫系めっき鋼板のスポット溶接方法実施形態を例示する図である。
【符号の説明】
【0037】
1 電極
2 Sn-Znめっき鋼板
3 油と水の混合液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
錫系めっき鋼板をスポット溶接する前の溶接電極接触部に、100cal/g以上の気化潜熱を有する液体を塗布することを特徴とする錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
【請求項2】
前記気化潜熱を有する液体の塗布量を、めっき鋼板の溶接電極接触部1点当たり0.05ml以上とすることを特徴とする請求項1に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
【請求項3】
前記気化潜熱を有する液体を、油もしくは水、もしくは、油と水の混合液とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。
【請求項4】
前記気化潜熱を有する液体が、水の質量%が20%以下の油と水の混合液とすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の錫系めっき鋼板のスポット溶接方法。






【図1】
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【公開番号】特開2008−254053(P2008−254053A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101207(P2007−101207)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】