説明

鍛造装置

【課題】ディスクをリムドライブするために設けてあった歯車機構が鍛造時の衝撃により破損するという問題を解消し、かつ、鍛造を一人のオペレータで効率的に実施することができる鍛造装置を提供する。
【解決手段】ベース2の上に回転可能に支持され、周辺に一定の間隔をもって植えられた複数の放射方向に延びるピン3をそなえた回転ディスク1、水平方向に置かれた回転軸41の端から放射状に延びるピン42をそなえたプロペラ4とその回転駆動手段5からなり、回転ディスクのピン3とプロペラのピン42とを契合させてあって、プロペラの回転につれてプロペラのピンが回転ディスクのピンを押しやり、回転ディスク1を所定の角度ずつ間欠的に回転させるように構成してなるディスクターナー装置に対して、金敷の押し下げ・引き上げとディスクの間欠的回転とからなる鍛造操作を一体的に制御する制御装置を加えてなる鍛造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクターナー装置をそなえた鍛造装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば径の大きなリング状の鍛造製品を油圧プレスで鍛造して製造する作業は、ワークを回転させて一部分ずつ鍛造し、一周させることにより鍛造を行なう。このようにすることによって、金敷のサイズがリング径に及ばない場合や、プレスの能力が不足する場合にも、鍛造が可能である。このような鍛造作業において、ワークの回転は、ディスクターナーと呼ばれる回転可能な台にワークをのせて、台を回転させることにより行なっている。通常、ディスクターナーは、固定されたベースと、その上で回転可能に支持された回転ディスクとからなる。回転ディスクの回転を容易にするため、ベースの表面に1周または2周以上のリング状の溝を設け、そこへ多数のボールベアリングを配置し、その上に回転ディスクを載せている。油圧プレスの力がボールベアリングを損なうことを避ける目的で、ボールベアリングの下方をスプリングで支えることが提案されている(特許文献1)。
【0003】
従来のディスクターナーにおける回転ディスクの駆動は、リムドライブ方式である。すなわち、回転ディスクの周上に歯車を刻んでおき、それとかみ合う小歯車を、モーターの回転を減速した駆動力により、回転させるという方式である。このような回転駆動は、そのための設備が必要であり、したがってディスクターナー装置がある程度大がかりなものになるし、そのメンテナンスも必要になる。鍛造時の衝撃により周上の歯車が欠けることもあり、そうなると修理の範囲は歯車1個に止まらないから、メンテナンスは結構面倒であり、時間と費用のかかる仕事である。
【0004】
このような問題を解消することを意図して、発明者らは、鍛造において通常使用するマニプレータを利用したディスクターナーの回転を着想し、その手法を確立して、すでに提案した(特許文献2)。マニプレータは、ワークを把持して、前進および後退に加えて、90度回転させたり、180度回転したり(つまり上下を返したり)、さまざまな動きをすることができるものであって、ディスクターナーを用いた鍛造には、事実上不可欠な存在である。
【特許文献1】特開平8−270666
【特許文献2】特願2003−173879
【0005】
これにより、前述の歯車を用いたリムドライブ方式の問題は解消したが、マニプレータによるディスクの回転は、回転をさせるマニプレータの操作をするオペレータを、金敷の上下を行なうオペレータの他に必要とし、しかも両者の呼吸が合わないと鍛造操作が全体として円滑に行なえなくなるという、新たな問題を招いた。ワークの取り扱いにマニプレータとそのオペレータとを要するといっても、ディスクターナー上で鍛造を行なっている間は、マニプレータがどうしても必要なわけではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ディスクターナー装置を用いた鍛造装置において、ディスクの回転にマニプレータを使用する必要をなくし、金敷の上下とディスクの回転とを同一のオペレータが行なうことができるようにし、オペレータの数を増すことなく、かつ、複数のオペレータが呼吸のあった操作をしなければならないという必要をなくして、常に効率よく鍛造を実施できるようにした鍛造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の鍛造装置は、ディスク上にのせたワークをディスクの回転により回転させつつ、上方から金敷を押し下げて鍛造操作を行なうディスクターナー装置をそなえた鍛造装置において、図1および図2に示すように、ベース(2)、ベースの上に回転可能に支持され、周辺に一定の間隔をもって植えられた複数の放射方向に延びるピン(3)をそなえた回転ディスク(1)、水平方向に置かれた回転軸(41)の端から放射状に延びるピン(42)をそなえたプロペラ(4)とその回転駆動手段からなり、回転ディスクのピン(3)とプロペラのピン(42)とを契合させてあって、プロペラ(4)の回転につれてプロペラのピンが回転ディスクのピンを押しやり、回転ディスク(1)を所定の角度ずつ間欠的に回転させるように構成してなるディスクターナー装置に、金敷(図示してない)の押し下げおよび引き上げと、回転ディスクの間欠的回転とからなる鍛造操作とを、一体的に制御する制御装置(これも図示してない)を加えてなる鍛造装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の鍛造装置は、上記のような構成であって、回転ディスクのピン(3)とプロペラのピン(42)とは、歯車のような密な契合状態にはなく、それぞれの軸を直角に配置したピンどうしの接触による、バックラッシュの大きな契合関係にあるから、鍛造時に回転ディスクに対して衝撃が加わっても、それがピンを通じてプロペラに影響を与えることはない。したがって装置は高い耐久性を享受することができ、メンテナンスの負担が原理的に軽減される。加えて、ひとつの制御装置においてプロペラを操作し、回転ディスクを回転させる鍛造操作を一体的に制御することができるから、一人のオペレータで全操作を処理することができる。そのため、鍛造操作が効率的に行えるようになるばかりでなく、二人のオペレータの呼吸が合わなければならないという問題が、根本的に解消する。
【発明を実施するための最良の実施形態】
【0009】
上記の構成から容易に理解されるように、本発明の鍛造装置は、プロペラ(4)のピン(42)で回転ディスク(1)のピン(3)を押しやって回転ディスクを間欠的に回転させることによって、その上にのせたワーク(図示してない)を所定の角度ずつ回転させ、鍛造を行なうというやり方で使用する。図1および2に示した例では、回転ディスク(1)の周辺に放射方向に植えられたピン(3)が、等間隔に位置する16本のピンであり、プロペラ(4)が、図3にみるように、回転軸(41)から放射状に等角度で3方向に伸びるピン(42)を有する構造である。いうまでもないが、ディスクのピンの数は任意であり、プロペラのピンの数もまた、4方向そのほか任意に選ぶことができる。プロペラの駆動手段としては、図示したような、モーター(5)とサイクロ減速機(6)との組み合わせが、簡易に構成することができて適切である。このモーターのオン・オフを、制御装置において金敷の押し下げ・引き上げ操作の制御と同調させて行なうように構成することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に従う鍛造装置の主要部の構成を説明するための、ディスクターナーとプロペラおよびその駆動手段の部分とを示す平面図。
【図2】図1に示した部分の側面図。
【図3】プロペラの正面図。
【符号の説明】
【0011】
1 回転ディスク
2 ベース
3 (回転ディスクの)ピン
4 プロペラ
41 回転軸 42 (プロペラの)ピン
5 モーター
6 サイクロ減速機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク上にのせたワークをディスクの回転により回転させつつ、上方から金敷を押し下げて鍛造操作を行なうディスクターナー装置をそなえた鍛造装置において、ベース、ベースの上に回転可能に支持され、周辺に一定の間隔をもって植えられた複数の放射方向に延びるピンをそなえた回転ディスク、水平方向に置かれた回転軸の端から放射状に延びるピンをそなえたプロペラとその回転駆動手段からなり、回転ディスクのピンとプロペラのピンとを契合させてあって、プロペラの回転につれてプロペラのピンが回転ディスクのピンを押しやり、回転ディスクを所定の角度ずつ間欠的に回転させるように構成してなるディスクターナー装置に、金敷の押し下げおよび引き上げと、回転ディスクの間欠的回転とからなる鍛造操作とを一体的に制御する制御装置を加えてなる鍛造装置。
【請求項2】
プロペラが、回転軸から放射状に等角度で3方向または4方向に伸びるピンを有する構造であり、プロペラの回転軸を駆動する手段が、モーターとサイクロ減速機との組み合わせからなり、モーターのオン・オフを、前記制御装置において金敷の押し下げ・引き上げ操作の制御と同調させて行なうものである請求項1の鍛造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−159238(P2006−159238A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−353367(P2004−353367)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サイクロ
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】