説明

鍵盤楽器のスタンド

【課題】 部品を単純に付加するだけで、側板と裏板の間の隙間を目立たなくすることができ、それにより、外観を向上させることができる鍵盤楽器のスタンドを提供する。
【解決手段】 上下方向に延びる左右の側板6,6と、左右の端面が左右の側板6,6の内側面にそれぞれ近接した状態で、左右の側板6,6間に取り付けられた裏板8と、側板6,6の内側面に、裏板8のすぐ後ろ側に位置して、上下方向に延びるように取り付けられ、側板6の内側面と裏板8の端面との間の隙間Cを覆う隙間覆い材13と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器本体を支持する鍵盤楽器のスタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の鍵盤楽器のスタンドとして、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。図5に示すように、このスタンド51は、左右の妻土台52,52にそれぞれ立設された左右の側板53,53(いずれも一方のみ図示)と、両側板53,53の後端部間に取り付けられた裏板54と、両側板53,53の下端部間に取り付けられたペダル土台55などで構成されている。裏板54は、その左右の端面が側板53,53の内側面に当接するように、前方から通したねじによって、側板53,53に取り付けられている。また、裏板54の下端部は、ペダル土台55の背面にねじ止めされている。
【0003】
以上のように、このスタンド51では、裏板54は、その端面が側板53の内側面に本来的には当接するように取り付けられる。しかし、裏板54の左右方向の寸法誤差や、裏板54を側板53に取り付ける際の取付誤差などによって、側板53の内側面と裏板54の端面との間に隙間が生じる場合がある。この場合、例えば、鍵盤楽器が黒塗り塗装されており、かつその後ろ側が、白色などの明るい壁であったり、明るい空間であったりしたときには、演奏者側から隙間が目立ってしまい、外観を損ねる。この不具合は、スタンド51をユーザが組み立てるようになっている場合には、スタンド51を組み立てる際に取付誤差が生じやすいため、より顕著になる。
【0004】
このような隙間が生じないようにするために、例えば、図6に示すように、裏板54を左右方向に延ばし、裏板54の左右の端部を側板53、53(一方のみ図示)の背面に取り付けることが考えられる。しかし、その場合には、裏板54の端部が側方から見えてしまうので、やはり外観を損ねる。また、図7に示すように、側板53の内側面に溝56を形成し、溝56に裏板54を嵌め込むことも考えられる。しかし、その場合には、側板53に溝56を形成する加工が必要になる。特に側板53が塗装される場合には、塗装時に塗料が溝56に入り込まないように、溝56にテープをあらかじめ貼り付けるマスキング工程が必要になるなど、工数が増加するので、溝56の加工と相まって、製造コストの大幅な増大の原因になる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、部品を単純に付加するだけで、側板と裏板の間の隙間を目立たなくすることができ、それにより、外観を向上させることができる鍵盤楽器のスタンドを提供することを目的とする。
【0006】
【特許文献1】特開2000−148146号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る鍵盤楽器のスタンドは、上下方向に延びる左右の側板と、左右の端面が左右の側板の内側面にそれぞれ近接した状態で、左右の側板間に取り付けられた裏板と、側板の内側面に、裏板のすぐ後ろ側に位置して、上下方向に延びるように取り付けられ、側板の内側面と裏板の端面との間の隙間を覆う隙間覆い材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この鍵盤楽器のスタンドによれば、側板の内側面の裏板のすぐ後ろ側の位置に、隙間覆い材が、上下方向に延びるように取り付けられており、この隙間覆い材によって、側板の内側面と裏板の端面との間の隙間が覆われる。このため、裏板の寸法誤差や取付誤差によって、上記のような隙間が生じた場合でも、隙間覆い材によって、隙間を目立たなくすることができ、それにより、鍵盤楽器の外観を向上させることができる。また、従来のスタンドに、単純な形状の隙間覆い材を付加するだけでよいので、単純かつ安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。図1は、本発明のスタンドを備えた電子ピアノを示している。同図に示すように、電子ピアノ1(鍵盤楽器)は、スタンド2と、スタンド2に載置された、鍵盤3や制御装置(図示せず)を有するピアノ本体4で構成されている。スタンド2およびピアノ本体4の表面には、例えば黒色の塗装が施されている。図2に示すように、スタンド2は、左右の妻土台5,5と、妻土台5,5の上面にそれぞれ取り付けられ、上下方向に延びる左右の側板6,6と、両側板6,6の下端部間に取り付けられたペダル土台7と、両側板6,6の後端部間に取り付けられた裏板8などで構成されている。各妻土台5の上部には、前後方向の中央部から後端部にわたって、上方および内方に開放する切欠9(図4参照)が形成されている。側板6は、妻土台5に載置された状態で、これに取り付けられており、その内側面が切欠9の内側面と面一になっている。
【0010】
ペダル土台7は、左右方向に延びる水平な上板7aと、上板7aの前端および後端からそれぞれ下方に延びる前板7bおよび後板7cにより、断面コ字状に形成されている。前板7bの下端部の中央には、3つの切欠7dが左右方向に並ぶように形成されており、各切欠7dにはペダル11が取り付けられている。このペダル土台7は、その左右の端部が妻土台5の切欠9の底面に載置されるとともに、前板7bが切欠9の前面に当接した状態で、取付具(図示せず)を介して、側板6,6に取り付けられている。
【0011】
裏板8は、矩形の板材で構成され、その左右の下端部が、ペダル土台7の後板7cと妻土台5の切欠9の背面との間に上方から差し込まれた状態で、後板7cに後方からねじ止めされている。また、裏板8は、側板6の上端よりも若干下側まで延びており、左右の取付金具12,12(一方のみ図示)を介して、側板6,6に取り付けられている。各取付金具12は、金属板を折り曲げ加工したものであり、L字状の断面を有し、一方の辺が側板6の内側面にねじ止めされており、他方の辺の前面に、裏板8の左右の端部がねじ止めされている。この状態では、本来的に、裏板8の端面が、側板6の内側面に突き当たるように設計されているが、裏板8の寸法誤差や取付誤差によって、両者の間に図3に示すような隙間Cが形成されることがある。このような隙間Cを目立たなくするために、側板6の内側面には、隙間覆い材13が取り付けられている。
【0012】
隙間覆い材13は、例えば黒色に着色されたMDFで構成されており、MDFを所定の幅(左右方向の長さ)T(例えば3mm)に細長く切断したものである。図3および図4に示すように、隙間覆い材13は、側板6の内側面の裏板8のすぐ後ろ側の位置に、取付金具12の下端からペダル土台7の後方にわたって、上下方向に延びるように配置され、両面テープ(図示せず)を介して取り付けられている。また、隙間覆い材13と裏板8の間には、前後方向に2〜3mm程度の隙間が形成されている。
【0013】
以上のように、この電子ピアノ1のスタンド2によれば、側板6の内側面の裏板8のすぐ後ろ側の位置に、所定の幅Tを有する隙間覆い材13が、上下方向に延びるように取り付けられており、この隙間覆い材13によって、側板6の内側面と裏板8の端面との間の隙間Cが後方から覆われる。このため、裏板8の寸法誤差や、スタンド2を組み立てる際の取付誤差などによって、上記のような隙間Cが生じた場合でも、隙間覆い材13によって、隙間Cを覆うことができるので、隙間Cを目立たなくすることができる。したがって、電子ピアノ1の後ろ側が、白色などの明るい壁であったり、明るい空間であったりした場合でも、隙間Cが目立たず、それにより、電子ピアノ1の外観を向上させることができる。
【0014】
また、隙間覆い材13が、電子ピアノ1と同じ黒色に着色されているので、隙間Cがより目立たなくなることにより、上述した効果をよりよく得られるとともに、隙間覆い材13自身が目立たなくなり、その結果、電子ピアノ1の外観をさらに向上させることができる。また、MDFで構成された板状の単純な隙間覆い材13を付加するだけでよいので、単純かつ安価に構成することができる。
【0015】
また、上述した電子ピアノ1は、購入したユーザが組み立てるようになっており、その組立は、例えば以下のようにして行われる。電子ピアノ1は、出荷時には、ピアノ本体4、妻土台5,5、側板6,6、ペダルユニットが取り付けられたペダル土台7、および裏板8に、互いに分離されている。各側板6には、取付金具12および隙間覆い材13が、前述したようにしてあらかじめ取り付けられている。この出荷状態からユーザが組み立てる場合には、まず、各側板6を妻土台5に載せ、妻土台5の下方からねじ止めする。次に、両側板6,6の下端部間に、取付具(図示せず)を介して、ペダル土台7を取り付ける。
【0016】
次いで、裏板8を隙間覆い材13の前面に沿ってスライドさせ、その下端部を、ペダル土台7の後板7cと妻土台5の切欠9の背面との間に差し込む。このように、裏板8を差し込む際に、上下方向に延びる左右の隙間覆い材13,13によって、裏板8をガイドするので、裏板8を、隙間覆い材13,13に沿わせるだけで、容易に差し込むことができる。また、裏板8と隙間覆い材13の間に、前述したような隙間が形成されているので、この隙間の余裕により、裏板8の差し込みを、隙間覆い材13が邪魔にならずに、スムーズに行うことができる。
【0017】
次に、裏板8を、ペダル土台7の後板7cにねじ止めするとともに、各取付金具12にねじ止めする。最後に、側板6,6に、ピアノ本体4を載せ、取付具(図示せず)を介して固定することにより、電子ピアノ1の組立が完了する。
【0018】
なお、実施形態では、隙間覆い材13がMDFで構成されているが、これに限らず、他の木質材や合成樹脂で構成してもよい。また、隙間覆い材13の幅Tは、隙間Cを目立たないように覆えるものであれば、任意である。また、実施形態は、本発明を電子ピアノに適用した例であるが、これに限らず、シンセサイザや電子オルガンなど、他の鍵盤楽器に適用してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のスタンドを備えた電子ピアノを示す斜視図である。
【図2】スタンドの斜視図である。
【図3】スタンドの部分破断平面図である。
【図4】スタンドの側面図である。
【図5】従来の電子ピアノのスタンドの部分斜視図である。
【図6】他のスタンドを示す部分平面図である。
【図7】さらに他のスタンドを示す部分平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 電子ピアノ(鍵盤楽器)
2 スタンド
6 側板
8 裏板
13 隙間覆い材
C 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる左右の側板と、
左右の端面が前記左右の側板の内側面にそれぞれ近接した状態で、当該左右の側板間に取り付けられた裏板と、
前記側板の内側面に、前記裏板のすぐ後ろ側に位置して、上下方向に延びるように取り付けられ、前記側板の内側面と前記裏板の端面との間の隙間を覆う隙間覆い材と、
を備えていることを特徴とする鍵盤楽器のスタンド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−139082(P2006−139082A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328851(P2004−328851)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】