鍵盤楽器
【課題】 簡単な構造で、鍵盤蓋の開閉動作を繰り返しても、鍵盤蓋が当接する楽器本体における後部の破損を防ぐことができる鍵盤楽器を提供する。
【解決手段】 鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部22を鍵盤蓋10に設けた。従って、鍵盤蓋10に設けられたストッパ部22を楽器本体1の後端面における最も強度の高い両端の縁部に当接させることができる。このため、簡単な構造で、鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1における後部の破損を防ぐことができる。
【解決手段】 鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部22を鍵盤蓋10に設けた。従って、鍵盤蓋10に設けられたストッパ部22を楽器本体1の後端面における最も強度の高い両端の縁部に当接させることができる。このため、簡単な構造で、鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1における後部の破損を防ぐことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、楽器本体内に設けられた鍵盤部を覆うための鍵盤蓋の後部における両側に、一対のアーム部材を楽器本体内に向けて延出させて設け、この一対のアーム部材を楽器本体内の両側に設けられた一対の取付軸に回転可能に取り付けることにより、この一対の取付軸を中心に鍵盤蓋を上下方向に回転させて鍵盤部を開閉するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−313653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器では、鍵盤蓋が一対の支持軸を中心に回転して開いた際に、鍵盤蓋が楽器本体の後部に当接するため、鍵盤蓋の開閉動作を繰り返していると、楽器本体の後部に歪や亀裂が生じ、これが長期間に亘ると、楽器本体の後部が破損することがあるという問題がある。
【0005】
このような問題を回避するために、楽器本体1の後部の厚みを厚くしたり、また補強部材を設けたりして、楽器本体の後部に十分な強度を持たせることが考えられているが、楽器本体の後部は、楽器本体の内部を隠すためのものであり、本来、十分な強度を持たせる必要がないため、重量の増加やコストアップなどの原因になる。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、鍵盤蓋の開閉動作を繰り返しても、鍵盤蓋が当接する楽器本体における後部の破損を防ぐことができる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤部を収容した楽器本体に前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋が支点部を中心に上下方向に回転可能に取り付けられ、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立することにより、前記鍵盤部を開放する鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立した際に、前記楽器本体の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記楽器本体が、底板と、この底板の両側に起立して設けられた一対の側板と、この一対の側板間に位置して前記底板の前端部に起立して設けられた前板と、前記一対の側板間に位置して前記底板の後端部に起立して設けられた後板と、を備えており、前記ストッパ部は、前記一対の側板の長手方向における後端部の端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記一対の側板の後部に、その外側面から前記後板に向けて挿入する締結部材によって前記後板を固定するための複数の取付孔が設けられており、前記ストッパ部は、前記一対の側板における後端部の前記端面において、前記複数の取付孔に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接することを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記ストッパ部が、弾性変形可能に形成され、その突出高さが前記楽器本体の前記後端面における両端の前記縁部に当接して弾性変形した際に、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の前記後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、鍵盤蓋を楽器本体の後方に傾けた状態で起立させた際に、鍵盤蓋に設けられたストッパ部を楽器本体の後端面における最も強度の高い両端の縁部に当接させるだけの、簡単な構造で、鍵盤蓋の開閉動作によって楽器本体の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋の開閉動作を繰り返しても、楽器本体における後部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態において鍵盤蓋を開いた状態を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視において鍵盤蓋を閉じた状態を示した拡大断面図である。
【図3】図2において鍵盤蓋を開いた状態を示した拡大断面図である。
【図4】図2の楽器本体を後方(右側)から見て一部を省略した背面図である。
【図5】図4の楽器本体におけるA部を分解して示した拡大斜視図である。
【図6】図5の側板におけるねじ挿入孔のB−B矢視における断面を示し、(a)はその座ぐり部内のコーナ部に円弧状の面取り部を設けられた場合の拡大断面図、(b)はその座ぐり部内のコーナ部に傾斜状の面取り部を設けられた場合の拡大断面図である。
【図7】図1の鍵盤蓋を正面側(左側)から見た要部の拡大斜視図である。
【図8】図3の鍵盤楽器においてストッパ部の箇所を示した要部の拡大断面図である。
【図9】図8のストッパ部を示した拡大斜視図である。
【図10】この発明を適用した鍵盤楽器において鍵盤蓋の蓋開閉装置の変形例を示した一部破断した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図9を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1〜図4に示すように、楽器本体1を備えている。
【0014】
この楽器本体1は、底板2と、この底板2の前端部(図2では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図2では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の両側(図1では左右の両側)に起立して設けられた一対の側板5と、後板4上に位置して一対の側板5の上部間に設けられた上板6とを備えている。
【0015】
この場合、上板6は、図1に示すように、その前側(図1では手前側)のほぼ半分程度が切り欠かれて開放されている。この上板6には、スイッチ部7aおよびスピーカ部7bが設けられている。後板4は、図4に示すように、その下部が底板2の後端面2aに当接した状態で、一対の側板5間に配置されている。
【0016】
一対の側板5は、図1〜図4に示すように、底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2b、前板3の両側の端面(図示せず)、後板4の両側の端面4b、および上板6の両側の端面6aにそれぞれ取り付けられている。これにより、楽器本体1は、前部側(図1では手前側)が上方に開放された箱形状に形成されている。
【0017】
この楽器本体1の内部には、図1〜図3に示すように、鍵盤部8が上方に露出した状態で設けられている。この鍵盤部8は、白鍵8aおよび黒鍵8bを備え、これら白鍵8aおよび黒鍵8bが鍵盤シャーシ(図示せず)上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で多数配列された構成になっている。また、この楽器本体1には、図1〜図3に示すように、鍵盤部8を開閉自在に覆う鍵盤蓋10が蓋開閉装置11によって開閉可能に取り付けられている。
【0018】
この鍵盤蓋10は、蓋開閉装置11によって上下方向に回転することにより、図2に示すように、楽器本体1の上部に配置されて楽器本体1を閉じた際に鍵盤部8を覆い隠し、また図3に示すように、楽器本体1の後方(図2では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器本体1を開いた際に鍵盤部8を上方に露出させるように構成されている。
【0019】
この鍵盤蓋10の蓋開閉装置11は、図1〜図3に示すように、楽器本体1内の後端部に位置する一対の側板5間に架け渡された支持軸12と、鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられて支持軸12にそれぞれ回転自在に取り付けられたアーム部材13と、このアーム部材13にそれぞれ取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋10と共に回転する連動歯車14と、楽器本体1の側板5の内面にそれぞれ設けられて鍵盤蓋10の開閉動作を制動するダンパ装置15とを備えている。
【0020】
これにより、鍵盤蓋10は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心にアーム部材13および連動歯車14と共に上下方向に回転するように構成されている。この場合、連動歯車14は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心に鍵盤蓋10がアーム部材13と共に回転する際に、鍵盤蓋10の開閉動作をダンパ装置15に伝達するように構成されている。
【0021】
すなわち、この連動歯車14は、図2および図3に示すように、全体がほぼ扇形状に形成されており、その外周面には、歯部14aが設けられている。また、この連動歯車14は、その要となる部分が支持軸12に回転可能に取り付けられている。これにより、連動歯車14は、鍵盤蓋10と共に回転するアーム部材13の回転に伴って支持軸12を中心に回転するように構成されている。
【0022】
ダンパ装置15は、図2および図3に示すように、一対の側板5の内面に取り付けられた装置本体16を備えている。この装置本体16の内部には、図示しないが、鍵盤蓋10と共に回転する回転体と、この回転体の回転を制動する制動ばねとが設けられている。この場合、回転体には、連動歯車14の歯部14aに噛み合って回転する歯車部17が装置本体16の外部に露出して設けられている。
【0023】
また、制動ばねは、コイルばねであり、一端部が回転体に取り付けられ、他端部が装置本体16に取り付けられている。これにより、制動ばねは、自由状態のときにニュートラル状態となり、このニュートラル状態を境にして回転体が一方向に回転すると、収縮変形して回転体に負荷を付与し、またニュートラル状態を境にして回転体が逆方向に回転すると、膨張変形して回転体に負荷を付与するように構成されている。
【0024】
これにより、ダンパ装置15は、鍵盤蓋10が閉じた状態から完全に開くまでの中間位置で、制動ばねがニュートラル状態となり、この中間位置から鍵盤蓋10が閉じる際に制動ばねが収縮変形して鍵盤蓋10に負荷を付与し、また中間位置から鍵盤蓋10が開く際に制動ばねが膨張変形して鍵盤蓋10に負荷を付与するように構成されている。
【0025】
ところで、楽器本体1の後部における両側には、図4および図5に示すように、蓋開閉装置11の一対のアーム部材13が支持軸12を中心に回転する際に、一対のアーム部材13が回転移動するためのスリット孔18が設けられている。すなわち、このスリット孔18は、図5に示すように、一対の側板5の後部(図5では右側部)における各内面に沿って、上板6の後部から後板4の上部に亘って連続して設けられている。
【0026】
この場合、楽器本体1の後部は、図4および図5に示すように、底板2の後端面2aに取り付けられた後板4と、この後板4の両側(図4では左右方向の両側)を挟んで底板2の両側の側面2bに取り付けられた一対の側板5と、後板4の上端面4aに位置して一対の側板5の上部間に取り付けられた上板6とで構成されている。これにより、楽器本体1の後部に設けられたスリット孔18は、上板6の後部に位置する両側(図4では左右方向の両側)の端面6aと、後板4の上部に位置する両側の端面4bとに亘って、連続する溝状に切り欠いた構成になっている。
【0027】
また、楽器本体1の後部に位置する一対の側板5は、図4および図5に示すように、後板4の両側(図4では左右方向の両側)の各端面4bと、上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aとに、複数のねじ19によってねじ止めされていると共に、図示しないが、底板2の両側の各端面2bにもねじ19によってねじ止めされている。これにより、一対の側板5の後部は、底板2、後板4、上板6に強固に取り付けられている。
【0028】
この場合、後板4の両側の端面4bと上板6の両側の端面6aとには、図5に示すように、スリット孔18に対応する箇所を除いて、ねじ19がそれぞれ螺入するねじ穴25が設けられている。また、一対の側板5の後部における外側面には、図4および図5に示すように、その外側から内側に貫通する複数のねじ挿入孔20が後板4の両側の端面4bと上板6の両側の端面6aとにおける各ねじ穴25にそれぞれ対応して設けられている。
【0029】
このねじ挿入孔20は、図5および図6に示すように、ねじ19のねじ部19aが挿入する挿入孔部20aと、ねじ19の頭部19bが挿入する座ぐり部20bとで構成されている。この場合、座ぐり部20bの内部におけるコーナ部分には、面取り部21が設けられている。この面取り部21は、図6(a)に示すように、円弧状に湾曲した曲面(R面)に形成されていても良く、また図6(b)に示すように、傾斜状をなす傾斜面(C面)に形成されていても良い。
【0030】
また、側板5に設けられた複数のねじ挿入孔20のうち、後板4の両側(図4では左右方向の両側)の各端面4bに対応する側板5のねじ挿入孔20は、図4および図5に示すように、底板2の後端面2aに対応する後板4の端面4bにおける下部と、スリット孔18の後側下部に位置する後板4の上部とに、それぞれ対応する上下の2箇所に設けられている。
【0031】
これにより、後板4は、図4および図5に示すように、一対の側板5間に配置された状態で、一対の側板5と底板2の後端面2aとにねじ19によって取り付けられている。この場合、一対の側板5は、その下部が底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2bにねじ19によって取り付けられていると共に、上部が上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aにねじ19によって取り付けられている。これにより、一対の側板5は、底板2、後板4、および上板6に強固に固定されている。
【0032】
一方、鍵盤蓋10には、図1〜図4に示すように、鍵盤蓋10を開いた際に、楽器本体1の後端面の両側(図4では左右方向の両側)に位置する縁部に当接する一対のストパ部18が設けられている。すなわち、この一対のストッパ部22は、図1、図3、図7〜図9に示すように、鍵盤蓋10が後方に少し傾いた状態で起立した際に、一対のアーム部材13間の外側に位置する鍵盤蓋10の内面(図7では上面)における両側(図7では左右方向の両側)の各端部付近にそれぞれビス22aによって取り付けられている。
【0033】
これにより、一対のストッパ部22は、図3および図8に示すように、鍵盤蓋10が後方に少し傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の一対の側板5における後端部(図3では右端部)に位置する各端面5a、すなわち側板5の前後方向(図3では左右方向)である長手方向における後端部の端面5aに当接するように構成されている。この一対のストッパ部22は、シリコーンゴムなどの合成ゴム、あるいは天然ゴムなどの弾性を有する材料で形成されている。
【0034】
この場合、一対のストッパ部22は、図8および図9に示すように、鍵盤蓋10の内面(図8では左側面)にビス22aによって取り付けられる取付部23と、この取付部23の中央部に設けられて楽器本体1の後端面に当接する突起部24とを備えている。この突起部24は、その先端部24aが円弧状に形成され、この円弧状の先端部24aが楽器本体1の側板5における後部の端面5aに押し当てられると、弾性変形するように構成されている。
【0035】
このため、一対のストッパ部22は、図4および図8に示すように、楽器本体1の一対の側板5における後端部(図8では右側部)の各端面5aに押し当てられた際に、弾性変形するため、その弾性変形量を考慮して、その突出高さH1が設定されている。すなわち、このストッパ部22の突出高さH1は、ストッパ部22が側板5における後端部の端面5aに押し当てられて最も大きく弾性変形した際に、楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面(図8では右側の外面)に、鍵盤蓋10の後端部(図8では下端部)が接触するのを防ぐために、その両者の間に隙間Sを有する程度の突出高さで形成されている。
【0036】
これにより、鍵盤蓋10は、図8に示すように、楽器本体1の後方(図8では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器本体1を開いた際に、一対のストッパ部22が一対の側板5における後端部(図8では右側部)の各端面5aに強く押し当てられて弾性変形しても、楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面(図8では右側の外面)に接触しないように構成されている。
【0037】
また、一対のストッパ部22は、図3および図8に示すように、一対の側板5の後端部における端面5aの上下方向におけるほぼ中間位置に当接するように、鍵盤蓋10の所定箇所に設けられている。すなわち、一対のストッパ部22は、図4および図5に示すように、側板5の後部に設けられてねじ19が挿入する複数のねじ挿入孔20から上下方向に離れた位置、例えば側板5の後部における上部と下部とにそれぞれ設けられた2つのねじ挿入孔20間のほぼ中間位置に対応する鍵盤蓋10の箇所に設けられている。
【0038】
次に、このような鍵盤楽器を使用する場合について説明する。
この場合には、まず、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部8を開放させて露出させる。このときには、鍵盤蓋10の前端部(図2では左端部)を持ち上げて蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10を上方に回転させる。すると、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。
【0039】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねが収縮している状態から膨張するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で開く始めることができる。そして、鍵盤蓋10が中間位置に開くと、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に開く際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に膨張するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなり、鍵盤蓋10がゆっくり後方に回転して開く。
【0040】
そして、鍵盤蓋10が回転して完全に開くと、図1および図3に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図3に示すように、鍵盤蓋10に設けられた一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに当接することにより、鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に少し傾いた状態で起立する。これにより、図1および図3に示すように、鍵盤部8が開放されるので、鍵盤部8を押鍵操作して演奏することができる。
【0041】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねによって鍵盤蓋10に負荷が付与されていることにより、鍵盤蓋10に設けられた一対のストッパ部22が一対の側板5の後端部に位置する各端面5aにゆっくり当接するので、鍵盤蓋10による衝撃を軽減することができる。また、このときには、一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てられて弾性変形するため、この一対のストッパ部22の弾性変形によっても鍵盤蓋10による楽器本体1の後端面に対する衝撃を吸収することができる。
【0042】
この場合には、一対のストッパ部22が弾性変形しても、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面に接触することがないので、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面を傷付けることがない。また、一対のストッパ部22は、楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する強度の最も高い端面5aに押し当てられるので、鍵盤蓋10の開閉動作によって楽器本体1の後部に歪や亀裂が生じことがない。
【0043】
すなわち、一対の側板5は、その下部が底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2bにねじ19によって取り付けられていると共に、上部が上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aにねじ19によって取り付けられ、これにより底板2、後板4、および上板6に強固に固定されている。このため、この側板5の前後方向である長手方向における後端部の端面5aは、楽器本体1において底板2の後端面2aと同程度に強度が最も高く形成されているので、ストッパ部22が押し当てられても、歪や亀裂が生じことがない。
【0044】
また、このストッパ部22は、図3に示すように、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20から上下方向に離れた位置、例えば側板5の後部における上部と下部とに設けられた2つのねじ挿入孔20間のほぼ中間位置に対応する側板5の後端部に位置する端面5aに押し当てられるので、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20によって側板5の後部の強度が低下しても、その強度が低下した部分を避けて、一対のストッパ部22を一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てることができ、これによっても楽器本体1の後部に歪や亀裂の発生を防ぐことができる。
【0045】
なお、鍵盤蓋10を閉じる際には、図3において鍵盤蓋10の上部を手前側(図3では左側)に引き寄せる。すると、蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10が下方に回転する。このときには、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。すると、ダンパ装置15の制動ばねが膨張している状態から収縮するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で閉じ始めることができる。
【0046】
そして、鍵盤蓋10が中間位置まで閉じると、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に閉じる際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に収縮するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなり、鍵盤蓋10がゆっくり回転して閉じる。そして、鍵盤蓋10が回転して完全に閉じると、図2に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図2に示すように、鍵盤蓋10が楽器本体1の上部に配置されて鍵盤部8を覆う。
【0047】
このように、この鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の後端部における両端の縁部に当接するストッパ部22を鍵盤蓋10に設けたので、鍵盤蓋10に設けられたストッパ部22を楽器本体1の後端部における最も強度の高い両端の縁部に当接させることができる。このため、構造が簡単で、鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1における後部の破損を防ぐことができる。
【0048】
この場合、楽器本体1は、底板2と、この底板2の両側に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板5間に位置して底板2の前端部に起立して設けられた前板3と、一対の側板5間に位置して底板2の後端部に起立して設けられた後板4と、を備えており、ストッパ部22は、一対の側板5の長手方向における後端部の端面5aに当接するので、一対のストッパ部22を一対の側板5の長手方向における後端部に位置する強度の最も高い端面5aに押し当てることができ、これにより鍵盤蓋10の開閉動作によって楽器本体1の後部に歪や亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0049】
すなわち、一対の側板5における後部は、底板2および後板4に強固に固定されており、この側板5における後端部の端面5aは、側板5の前後方向である長手方向に位置しているので、側板5の厚み方向に対して強度が極めて高く、楽器本体1において底板2の後端面2aと同程度に強度が最も高い。このため、ストッパ部22が側板5の端面5aに押し当てられても、側板5の端面5aに歪や亀裂が生じることがない。
【0050】
また、一対の側板5の後部には、後板4を固定するためのねじ19が挿入する複数のねじ挿入孔20が設けられており、一対のストッパ部22は、一対の側板5における後端部の端面5aにおいて複数のねじ挿入孔20に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接するので、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20によって側板5の後部の強度が低下しても、その強度が低下した部分を避けて、一対のストッパ部22を一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てることができ、これによっても一対の側板5の各端面5aに歪や亀裂の発生を防ぐことができる。
【0051】
この場合、ねじ挿入孔20は、ねじ19のねじ部19aが挿入する挿入孔部20aと、ねじ19の頭部19bが挿入する座ぐり部20bとで構成され、この座ぐり部20bが挿入孔部20aよりも大径であるから、この大径の座ぐり部20bの箇所における側板5の強度が低下する。しかし、座ぐり部20bの内部におけるコーナ部分には、図6(a)および図6(b)に示すように、面取り部21が設けられていることにより、この面取り部21によってねじ19の締付力による応力の集中を分散させることができ、これにより座ぐり部20bの箇所における側板5の強度が更に低下するのを抑制することができる。
【0052】
また、ストッパ部22は、シリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムなどの弾性を有する材料で形成されているので、一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てられると、一対のストッパ部22が弾性変形することにより、鍵盤蓋10の開閉動作による衝撃を吸収することができると共に、楽器本体1の後面を傷付けないようにすることができる。
【0053】
この場合、一対のストパ部22は、その突出高さH1が楽器本体1の後端面における両側の縁部、つまり側板5の後端部における端面5aに当接して弾性変形した際に、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されているので、一対のストッパ部22が弾性変形しても、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部における端面5aおよび後板4の後面に接触することがないため、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面を傷付けるのを防ぐことができる。
【0054】
このため、この鍵盤楽器では、楽器本体1の後部の強度を高めるために、後板4を強度の高い材料で形成したり、または後板4の厚みを厚くしたり、あるいは後板4に補強部材を設けたりする必要がないので、楽器全体における重量の増加やコストアップを防ぐことができ、これにより軽量で低価格なものを提供することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、一対のストッパ部22をシリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムなどの弾性材料で形成した場合について述べたが、必ずしも弾性材料で形成する必要はなく、楽器本体1の後部に当接した際に、弾性変形するばね性を有する弾性変形部を備えた構成であっても良い。
【0056】
また、上述した実施形態では、一対のストッパ部22を鍵盤蓋10にそれぞれ別部材として取り付けるように構成した場合について述べたが、これに限らず、一対のストッパ部22を鍵盤蓋10にそれぞれ一体に形成した構成でも良い。この場合には、上述したように楽器本体1の後部に当接した際に、一対のストッパ部が弾性変形するばね性を有する弾性変形部を備えた構成にすれば良い。このように構成すれば、部品点数を削減することができると共に、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、楽器本体1に鍵盤蓋10を開閉可能に取り付けるための蓋開閉装置11が、楽器本体1内に設けられた支持軸12と、この支持軸12にそれぞれ回転自在に取り付けられて鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられたアーム部材13と、このアーム部材13にそれぞれ取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋10と共に回転する連動歯車14と、楽器本体1の側板5の内面にそれぞれ設けられて鍵盤蓋10の開閉動作を制動するダンパ装置15とを備えた構成である場合について述べたが、必ずしもダンパ装置15および連動歯車14を備えた構成である必要はなく、例えば、図10に示す変形例のように構成しても良い。
【0058】
すなわち、この変形例の蓋開閉装置30は、楽器本体1の一対の側板5の内面にそれぞれ設けられた一対の補強板31と、この一対の補強板31にそれぞれ設けられた一対の支持軸32と、この一対の支持軸32にそれぞれ上下方向に回転自在に取り付けられて鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられた一対のアーム部材33とを備えた構成になっている。このような蓋開閉装置30では、一対のアーム部材33が楽器本体1内の一対の補強板31にそれぞれ設けられた一対の支持軸32を中心に上下方向に回転するので、簡単な機構で、鍵盤蓋10を上下方向に回転させて楽器本体1を開閉することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 楽器本体
2 底板
3 前板
4 後板
5 一対の側板
5a 側板の端面
6 上板
8 鍵盤部
10 鍵盤蓋
11、30 蓋開閉装置
12、32 支持軸
13、33 アーム部材
18 スリット孔
19 ねじ
20 ねじ挿入孔
20a 挿入部
20b 座ぐり部
21 面取り部
22 ストッパ部
23 取付部
24 突起部
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ピアノや電子オルガンなどの鍵盤楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子ピアノなどの鍵盤楽器においては、特許文献1に記載されているように、楽器本体内に設けられた鍵盤部を覆うための鍵盤蓋の後部における両側に、一対のアーム部材を楽器本体内に向けて延出させて設け、この一対のアーム部材を楽器本体内の両側に設けられた一対の取付軸に回転可能に取り付けることにより、この一対の取付軸を中心に鍵盤蓋を上下方向に回転させて鍵盤部を開閉するように構成したものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平05−313653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような従来の鍵盤楽器では、鍵盤蓋が一対の支持軸を中心に回転して開いた際に、鍵盤蓋が楽器本体の後部に当接するため、鍵盤蓋の開閉動作を繰り返していると、楽器本体の後部に歪や亀裂が生じ、これが長期間に亘ると、楽器本体の後部が破損することがあるという問題がある。
【0005】
このような問題を回避するために、楽器本体1の後部の厚みを厚くしたり、また補強部材を設けたりして、楽器本体の後部に十分な強度を持たせることが考えられているが、楽器本体の後部は、楽器本体の内部を隠すためのものであり、本来、十分な強度を持たせる必要がないため、重量の増加やコストアップなどの原因になる。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、鍵盤蓋の開閉動作を繰り返しても、鍵盤蓋が当接する楽器本体における後部の破損を防ぐことができる鍵盤楽器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、鍵盤部を収容した楽器本体に前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋が支点部を中心に上下方向に回転可能に取り付けられ、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立することにより、前記鍵盤部を開放する鍵盤楽器において、前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立した際に、前記楽器本体の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記楽器本体が、底板と、この底板の両側に起立して設けられた一対の側板と、この一対の側板間に位置して前記底板の前端部に起立して設けられた前板と、前記一対の側板間に位置して前記底板の後端部に起立して設けられた後板と、を備えており、前記ストッパ部は、前記一対の側板の長手方向における後端部の端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記一対の側板の後部に、その外側面から前記後板に向けて挿入する締結部材によって前記後板を固定するための複数の取付孔が設けられており、前記ストッパ部は、前記一対の側板における後端部の前記端面において、前記複数の取付孔に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接することを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記ストッパ部が、弾性変形可能に形成され、その突出高さが前記楽器本体の前記後端面における両端の前記縁部に当接して弾性変形した際に、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の前記後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器である。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、鍵盤蓋を楽器本体の後方に傾けた状態で起立させた際に、鍵盤蓋に設けられたストッパ部を楽器本体の後端面における最も強度の高い両端の縁部に当接させるだけの、簡単な構造で、鍵盤蓋の開閉動作によって楽器本体の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋の開閉動作を繰り返しても、楽器本体における後部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態において鍵盤蓋を開いた状態を示した斜視図である。
【図2】図1のA−A矢視において鍵盤蓋を閉じた状態を示した拡大断面図である。
【図3】図2において鍵盤蓋を開いた状態を示した拡大断面図である。
【図4】図2の楽器本体を後方(右側)から見て一部を省略した背面図である。
【図5】図4の楽器本体におけるA部を分解して示した拡大斜視図である。
【図6】図5の側板におけるねじ挿入孔のB−B矢視における断面を示し、(a)はその座ぐり部内のコーナ部に円弧状の面取り部を設けられた場合の拡大断面図、(b)はその座ぐり部内のコーナ部に傾斜状の面取り部を設けられた場合の拡大断面図である。
【図7】図1の鍵盤蓋を正面側(左側)から見た要部の拡大斜視図である。
【図8】図3の鍵盤楽器においてストッパ部の箇所を示した要部の拡大断面図である。
【図9】図8のストッパ部を示した拡大斜視図である。
【図10】この発明を適用した鍵盤楽器において鍵盤蓋の蓋開閉装置の変形例を示した一部破断した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図9を参照して、この発明を適用した鍵盤楽器の一実施形態について説明する。
この鍵盤楽器は、図1〜図4に示すように、楽器本体1を備えている。
【0014】
この楽器本体1は、底板2と、この底板2の前端部(図2では左端部)に起立して設けられた前板3と、底板2の後端部(図2では右端部)に起立して設けられた後板4と、底板2の両側(図1では左右の両側)に起立して設けられた一対の側板5と、後板4上に位置して一対の側板5の上部間に設けられた上板6とを備えている。
【0015】
この場合、上板6は、図1に示すように、その前側(図1では手前側)のほぼ半分程度が切り欠かれて開放されている。この上板6には、スイッチ部7aおよびスピーカ部7bが設けられている。後板4は、図4に示すように、その下部が底板2の後端面2aに当接した状態で、一対の側板5間に配置されている。
【0016】
一対の側板5は、図1〜図4に示すように、底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2b、前板3の両側の端面(図示せず)、後板4の両側の端面4b、および上板6の両側の端面6aにそれぞれ取り付けられている。これにより、楽器本体1は、前部側(図1では手前側)が上方に開放された箱形状に形成されている。
【0017】
この楽器本体1の内部には、図1〜図3に示すように、鍵盤部8が上方に露出した状態で設けられている。この鍵盤部8は、白鍵8aおよび黒鍵8bを備え、これら白鍵8aおよび黒鍵8bが鍵盤シャーシ(図示せず)上に上下方向に回転可能に取り付けられた状態で多数配列された構成になっている。また、この楽器本体1には、図1〜図3に示すように、鍵盤部8を開閉自在に覆う鍵盤蓋10が蓋開閉装置11によって開閉可能に取り付けられている。
【0018】
この鍵盤蓋10は、蓋開閉装置11によって上下方向に回転することにより、図2に示すように、楽器本体1の上部に配置されて楽器本体1を閉じた際に鍵盤部8を覆い隠し、また図3に示すように、楽器本体1の後方(図2では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器本体1を開いた際に鍵盤部8を上方に露出させるように構成されている。
【0019】
この鍵盤蓋10の蓋開閉装置11は、図1〜図3に示すように、楽器本体1内の後端部に位置する一対の側板5間に架け渡された支持軸12と、鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられて支持軸12にそれぞれ回転自在に取り付けられたアーム部材13と、このアーム部材13にそれぞれ取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋10と共に回転する連動歯車14と、楽器本体1の側板5の内面にそれぞれ設けられて鍵盤蓋10の開閉動作を制動するダンパ装置15とを備えている。
【0020】
これにより、鍵盤蓋10は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心にアーム部材13および連動歯車14と共に上下方向に回転するように構成されている。この場合、連動歯車14は、図2および図3に示すように、支持軸12を中心に鍵盤蓋10がアーム部材13と共に回転する際に、鍵盤蓋10の開閉動作をダンパ装置15に伝達するように構成されている。
【0021】
すなわち、この連動歯車14は、図2および図3に示すように、全体がほぼ扇形状に形成されており、その外周面には、歯部14aが設けられている。また、この連動歯車14は、その要となる部分が支持軸12に回転可能に取り付けられている。これにより、連動歯車14は、鍵盤蓋10と共に回転するアーム部材13の回転に伴って支持軸12を中心に回転するように構成されている。
【0022】
ダンパ装置15は、図2および図3に示すように、一対の側板5の内面に取り付けられた装置本体16を備えている。この装置本体16の内部には、図示しないが、鍵盤蓋10と共に回転する回転体と、この回転体の回転を制動する制動ばねとが設けられている。この場合、回転体には、連動歯車14の歯部14aに噛み合って回転する歯車部17が装置本体16の外部に露出して設けられている。
【0023】
また、制動ばねは、コイルばねであり、一端部が回転体に取り付けられ、他端部が装置本体16に取り付けられている。これにより、制動ばねは、自由状態のときにニュートラル状態となり、このニュートラル状態を境にして回転体が一方向に回転すると、収縮変形して回転体に負荷を付与し、またニュートラル状態を境にして回転体が逆方向に回転すると、膨張変形して回転体に負荷を付与するように構成されている。
【0024】
これにより、ダンパ装置15は、鍵盤蓋10が閉じた状態から完全に開くまでの中間位置で、制動ばねがニュートラル状態となり、この中間位置から鍵盤蓋10が閉じる際に制動ばねが収縮変形して鍵盤蓋10に負荷を付与し、また中間位置から鍵盤蓋10が開く際に制動ばねが膨張変形して鍵盤蓋10に負荷を付与するように構成されている。
【0025】
ところで、楽器本体1の後部における両側には、図4および図5に示すように、蓋開閉装置11の一対のアーム部材13が支持軸12を中心に回転する際に、一対のアーム部材13が回転移動するためのスリット孔18が設けられている。すなわち、このスリット孔18は、図5に示すように、一対の側板5の後部(図5では右側部)における各内面に沿って、上板6の後部から後板4の上部に亘って連続して設けられている。
【0026】
この場合、楽器本体1の後部は、図4および図5に示すように、底板2の後端面2aに取り付けられた後板4と、この後板4の両側(図4では左右方向の両側)を挟んで底板2の両側の側面2bに取り付けられた一対の側板5と、後板4の上端面4aに位置して一対の側板5の上部間に取り付けられた上板6とで構成されている。これにより、楽器本体1の後部に設けられたスリット孔18は、上板6の後部に位置する両側(図4では左右方向の両側)の端面6aと、後板4の上部に位置する両側の端面4bとに亘って、連続する溝状に切り欠いた構成になっている。
【0027】
また、楽器本体1の後部に位置する一対の側板5は、図4および図5に示すように、後板4の両側(図4では左右方向の両側)の各端面4bと、上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aとに、複数のねじ19によってねじ止めされていると共に、図示しないが、底板2の両側の各端面2bにもねじ19によってねじ止めされている。これにより、一対の側板5の後部は、底板2、後板4、上板6に強固に取り付けられている。
【0028】
この場合、後板4の両側の端面4bと上板6の両側の端面6aとには、図5に示すように、スリット孔18に対応する箇所を除いて、ねじ19がそれぞれ螺入するねじ穴25が設けられている。また、一対の側板5の後部における外側面には、図4および図5に示すように、その外側から内側に貫通する複数のねじ挿入孔20が後板4の両側の端面4bと上板6の両側の端面6aとにおける各ねじ穴25にそれぞれ対応して設けられている。
【0029】
このねじ挿入孔20は、図5および図6に示すように、ねじ19のねじ部19aが挿入する挿入孔部20aと、ねじ19の頭部19bが挿入する座ぐり部20bとで構成されている。この場合、座ぐり部20bの内部におけるコーナ部分には、面取り部21が設けられている。この面取り部21は、図6(a)に示すように、円弧状に湾曲した曲面(R面)に形成されていても良く、また図6(b)に示すように、傾斜状をなす傾斜面(C面)に形成されていても良い。
【0030】
また、側板5に設けられた複数のねじ挿入孔20のうち、後板4の両側(図4では左右方向の両側)の各端面4bに対応する側板5のねじ挿入孔20は、図4および図5に示すように、底板2の後端面2aに対応する後板4の端面4bにおける下部と、スリット孔18の後側下部に位置する後板4の上部とに、それぞれ対応する上下の2箇所に設けられている。
【0031】
これにより、後板4は、図4および図5に示すように、一対の側板5間に配置された状態で、一対の側板5と底板2の後端面2aとにねじ19によって取り付けられている。この場合、一対の側板5は、その下部が底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2bにねじ19によって取り付けられていると共に、上部が上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aにねじ19によって取り付けられている。これにより、一対の側板5は、底板2、後板4、および上板6に強固に固定されている。
【0032】
一方、鍵盤蓋10には、図1〜図4に示すように、鍵盤蓋10を開いた際に、楽器本体1の後端面の両側(図4では左右方向の両側)に位置する縁部に当接する一対のストパ部18が設けられている。すなわち、この一対のストッパ部22は、図1、図3、図7〜図9に示すように、鍵盤蓋10が後方に少し傾いた状態で起立した際に、一対のアーム部材13間の外側に位置する鍵盤蓋10の内面(図7では上面)における両側(図7では左右方向の両側)の各端部付近にそれぞれビス22aによって取り付けられている。
【0033】
これにより、一対のストッパ部22は、図3および図8に示すように、鍵盤蓋10が後方に少し傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の一対の側板5における後端部(図3では右端部)に位置する各端面5a、すなわち側板5の前後方向(図3では左右方向)である長手方向における後端部の端面5aに当接するように構成されている。この一対のストッパ部22は、シリコーンゴムなどの合成ゴム、あるいは天然ゴムなどの弾性を有する材料で形成されている。
【0034】
この場合、一対のストッパ部22は、図8および図9に示すように、鍵盤蓋10の内面(図8では左側面)にビス22aによって取り付けられる取付部23と、この取付部23の中央部に設けられて楽器本体1の後端面に当接する突起部24とを備えている。この突起部24は、その先端部24aが円弧状に形成され、この円弧状の先端部24aが楽器本体1の側板5における後部の端面5aに押し当てられると、弾性変形するように構成されている。
【0035】
このため、一対のストッパ部22は、図4および図8に示すように、楽器本体1の一対の側板5における後端部(図8では右側部)の各端面5aに押し当てられた際に、弾性変形するため、その弾性変形量を考慮して、その突出高さH1が設定されている。すなわち、このストッパ部22の突出高さH1は、ストッパ部22が側板5における後端部の端面5aに押し当てられて最も大きく弾性変形した際に、楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面(図8では右側の外面)に、鍵盤蓋10の後端部(図8では下端部)が接触するのを防ぐために、その両者の間に隙間Sを有する程度の突出高さで形成されている。
【0036】
これにより、鍵盤蓋10は、図8に示すように、楽器本体1の後方(図8では右側)に少し傾いた状態で起立して楽器本体1を開いた際に、一対のストッパ部22が一対の側板5における後端部(図8では右側部)の各端面5aに強く押し当てられて弾性変形しても、楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面(図8では右側の外面)に接触しないように構成されている。
【0037】
また、一対のストッパ部22は、図3および図8に示すように、一対の側板5の後端部における端面5aの上下方向におけるほぼ中間位置に当接するように、鍵盤蓋10の所定箇所に設けられている。すなわち、一対のストッパ部22は、図4および図5に示すように、側板5の後部に設けられてねじ19が挿入する複数のねじ挿入孔20から上下方向に離れた位置、例えば側板5の後部における上部と下部とにそれぞれ設けられた2つのねじ挿入孔20間のほぼ中間位置に対応する鍵盤蓋10の箇所に設けられている。
【0038】
次に、このような鍵盤楽器を使用する場合について説明する。
この場合には、まず、鍵盤蓋10を上方に回転させて鍵盤部8を開放させて露出させる。このときには、鍵盤蓋10の前端部(図2では左端部)を持ち上げて蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10を上方に回転させる。すると、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。
【0039】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねが収縮している状態から膨張するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で開く始めることができる。そして、鍵盤蓋10が中間位置に開くと、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に開く際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に膨張するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなり、鍵盤蓋10がゆっくり後方に回転して開く。
【0040】
そして、鍵盤蓋10が回転して完全に開くと、図1および図3に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図3に示すように、鍵盤蓋10に設けられた一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに当接することにより、鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に少し傾いた状態で起立する。これにより、図1および図3に示すように、鍵盤部8が開放されるので、鍵盤部8を押鍵操作して演奏することができる。
【0041】
このときには、ダンパ装置15の制動ばねによって鍵盤蓋10に負荷が付与されていることにより、鍵盤蓋10に設けられた一対のストッパ部22が一対の側板5の後端部に位置する各端面5aにゆっくり当接するので、鍵盤蓋10による衝撃を軽減することができる。また、このときには、一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てられて弾性変形するため、この一対のストッパ部22の弾性変形によっても鍵盤蓋10による楽器本体1の後端面に対する衝撃を吸収することができる。
【0042】
この場合には、一対のストッパ部22が弾性変形しても、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部に位置する端面5aおよび後板4の後面に接触することがないので、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面を傷付けることがない。また、一対のストッパ部22は、楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する強度の最も高い端面5aに押し当てられるので、鍵盤蓋10の開閉動作によって楽器本体1の後部に歪や亀裂が生じことがない。
【0043】
すなわち、一対の側板5は、その下部が底板2の両側(図4では左右方向の両側)の端面2bにねじ19によって取り付けられていると共に、上部が上板6の両側(図4では左右方向の両側)の端面6aにねじ19によって取り付けられ、これにより底板2、後板4、および上板6に強固に固定されている。このため、この側板5の前後方向である長手方向における後端部の端面5aは、楽器本体1において底板2の後端面2aと同程度に強度が最も高く形成されているので、ストッパ部22が押し当てられても、歪や亀裂が生じことがない。
【0044】
また、このストッパ部22は、図3に示すように、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20から上下方向に離れた位置、例えば側板5の後部における上部と下部とに設けられた2つのねじ挿入孔20間のほぼ中間位置に対応する側板5の後端部に位置する端面5aに押し当てられるので、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20によって側板5の後部の強度が低下しても、その強度が低下した部分を避けて、一対のストッパ部22を一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てることができ、これによっても楽器本体1の後部に歪や亀裂の発生を防ぐことができる。
【0045】
なお、鍵盤蓋10を閉じる際には、図3において鍵盤蓋10の上部を手前側(図3では左側)に引き寄せる。すると、蓋開閉装置11の支持軸12を中心に鍵盤蓋10が下方に回転する。このときには、蓋開閉装置11のアーム部材13が支持軸12を中心に連動歯車14と共に回転し、この連動歯車14の回転に伴ってダンパ装置15の歯車部17が回転する。すると、ダンパ装置15の制動ばねが膨張している状態から収縮するように変形するため、鍵盤蓋10を軽い力で閉じ始めることができる。
【0046】
そして、鍵盤蓋10が中間位置まで閉じると、ダンパ装置15の制動ばねがニュートラル状態になる。この後、鍵盤蓋10を更に閉じる際には、ダンパ装置15の制動ばねが徐々に収縮するように変形し、鍵盤蓋10に負荷を付与するので、鍵盤蓋10の回転動作が徐々に重くなり、鍵盤蓋10がゆっくり回転して閉じる。そして、鍵盤蓋10が回転して完全に閉じると、図2に示すように、鍵盤蓋10の両側に設けられた一対のアーム部材13が楽器本体1内の支持軸12に支持された状態で、図2に示すように、鍵盤蓋10が楽器本体1の上部に配置されて鍵盤部8を覆う。
【0047】
このように、この鍵盤楽器によれば、鍵盤蓋10が楽器本体1の後方に傾いた状態で起立した際に、楽器本体1の後端部における両端の縁部に当接するストッパ部22を鍵盤蓋10に設けたので、鍵盤蓋10に設けられたストッパ部22を楽器本体1の後端部における最も強度の高い両端の縁部に当接させることができる。このため、構造が簡単で、鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1の後部に発生する歪や亀裂を抑えることができ、これにより長期間に亘って鍵盤蓋10の開閉動作を繰り返しても、楽器本体1における後部の破損を防ぐことができる。
【0048】
この場合、楽器本体1は、底板2と、この底板2の両側に起立して設けられた一対の側板5と、この一対の側板5間に位置して底板2の前端部に起立して設けられた前板3と、一対の側板5間に位置して底板2の後端部に起立して設けられた後板4と、を備えており、ストッパ部22は、一対の側板5の長手方向における後端部の端面5aに当接するので、一対のストッパ部22を一対の側板5の長手方向における後端部に位置する強度の最も高い端面5aに押し当てることができ、これにより鍵盤蓋10の開閉動作によって楽器本体1の後部に歪や亀裂が生じるのを防ぐことができる。
【0049】
すなわち、一対の側板5における後部は、底板2および後板4に強固に固定されており、この側板5における後端部の端面5aは、側板5の前後方向である長手方向に位置しているので、側板5の厚み方向に対して強度が極めて高く、楽器本体1において底板2の後端面2aと同程度に強度が最も高い。このため、ストッパ部22が側板5の端面5aに押し当てられても、側板5の端面5aに歪や亀裂が生じることがない。
【0050】
また、一対の側板5の後部には、後板4を固定するためのねじ19が挿入する複数のねじ挿入孔20が設けられており、一対のストッパ部22は、一対の側板5における後端部の端面5aにおいて複数のねじ挿入孔20に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接するので、側板5の後部に設けられた複数のねじ挿入孔20によって側板5の後部の強度が低下しても、その強度が低下した部分を避けて、一対のストッパ部22を一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てることができ、これによっても一対の側板5の各端面5aに歪や亀裂の発生を防ぐことができる。
【0051】
この場合、ねじ挿入孔20は、ねじ19のねじ部19aが挿入する挿入孔部20aと、ねじ19の頭部19bが挿入する座ぐり部20bとで構成され、この座ぐり部20bが挿入孔部20aよりも大径であるから、この大径の座ぐり部20bの箇所における側板5の強度が低下する。しかし、座ぐり部20bの内部におけるコーナ部分には、図6(a)および図6(b)に示すように、面取り部21が設けられていることにより、この面取り部21によってねじ19の締付力による応力の集中を分散させることができ、これにより座ぐり部20bの箇所における側板5の強度が更に低下するのを抑制することができる。
【0052】
また、ストッパ部22は、シリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムなどの弾性を有する材料で形成されているので、一対のストッパ部22が楽器本体1の一対の側板5の後端部に位置する各端面5aに押し当てられると、一対のストッパ部22が弾性変形することにより、鍵盤蓋10の開閉動作による衝撃を吸収することができると共に、楽器本体1の後面を傷付けないようにすることができる。
【0053】
この場合、一対のストパ部22は、その突出高さH1が楽器本体1の後端面における両側の縁部、つまり側板5の後端部における端面5aに当接して弾性変形した際に、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されているので、一対のストッパ部22が弾性変形しても、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面、つまり一対の側板5の後端部における端面5aおよび後板4の後面に接触することがないため、鍵盤蓋10が楽器本体1の後端面を傷付けるのを防ぐことができる。
【0054】
このため、この鍵盤楽器では、楽器本体1の後部の強度を高めるために、後板4を強度の高い材料で形成したり、または後板4の厚みを厚くしたり、あるいは後板4に補強部材を設けたりする必要がないので、楽器全体における重量の増加やコストアップを防ぐことができ、これにより軽量で低価格なものを提供することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、一対のストッパ部22をシリコーンゴムなどの合成ゴムや天然ゴムなどの弾性材料で形成した場合について述べたが、必ずしも弾性材料で形成する必要はなく、楽器本体1の後部に当接した際に、弾性変形するばね性を有する弾性変形部を備えた構成であっても良い。
【0056】
また、上述した実施形態では、一対のストッパ部22を鍵盤蓋10にそれぞれ別部材として取り付けるように構成した場合について述べたが、これに限らず、一対のストッパ部22を鍵盤蓋10にそれぞれ一体に形成した構成でも良い。この場合には、上述したように楽器本体1の後部に当接した際に、一対のストッパ部が弾性変形するばね性を有する弾性変形部を備えた構成にすれば良い。このように構成すれば、部品点数を削減することができると共に、組み立て作業性の向上を図ることができる。
【0057】
さらに、上述した実施形態では、楽器本体1に鍵盤蓋10を開閉可能に取り付けるための蓋開閉装置11が、楽器本体1内に設けられた支持軸12と、この支持軸12にそれぞれ回転自在に取り付けられて鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられたアーム部材13と、このアーム部材13にそれぞれ取り付けられて支持軸12を中心に鍵盤蓋10と共に回転する連動歯車14と、楽器本体1の側板5の内面にそれぞれ設けられて鍵盤蓋10の開閉動作を制動するダンパ装置15とを備えた構成である場合について述べたが、必ずしもダンパ装置15および連動歯車14を備えた構成である必要はなく、例えば、図10に示す変形例のように構成しても良い。
【0058】
すなわち、この変形例の蓋開閉装置30は、楽器本体1の一対の側板5の内面にそれぞれ設けられた一対の補強板31と、この一対の補強板31にそれぞれ設けられた一対の支持軸32と、この一対の支持軸32にそれぞれ上下方向に回転自在に取り付けられて鍵盤蓋10の下面における両側に取り付けられた一対のアーム部材33とを備えた構成になっている。このような蓋開閉装置30では、一対のアーム部材33が楽器本体1内の一対の補強板31にそれぞれ設けられた一対の支持軸32を中心に上下方向に回転するので、簡単な機構で、鍵盤蓋10を上下方向に回転させて楽器本体1を開閉することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 楽器本体
2 底板
3 前板
4 後板
5 一対の側板
5a 側板の端面
6 上板
8 鍵盤部
10 鍵盤蓋
11、30 蓋開閉装置
12、32 支持軸
13、33 アーム部材
18 スリット孔
19 ねじ
20 ねじ挿入孔
20a 挿入部
20b 座ぐり部
21 面取り部
22 ストッパ部
23 取付部
24 突起部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵盤部を収容した楽器本体に前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋が支点部を中心に上下方向に回転可能に取り付けられ、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立することにより、前記鍵盤部を開放する鍵盤楽器において、
前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立した際に、前記楽器本体の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記楽器本体は、底板と、この底板の両側に起立して設けられた一対の側板と、この一対の側板間に位置して前記底板の前端部に起立して設けられた前板と、前記一対の側板間に位置して前記底板の後端部に起立して設けられた後板と、を備えており、前記ストッパ部は、前記一対の側板の長手方向における後端部の端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記一対の側板の後部には、その外側面から前記後板に向けて挿入する締結部材によって前記後板を固定するための複数の取付孔が設けられており、前記ストッパ部は、前記一対の側板における後端部の前記端面において、前記複数の取付孔に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接することを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記ストッパ部は、弾性変形可能に形成され、その突出高さが前記楽器本体の前記後端面における両端の前記縁部に当接して弾性変形した際に、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の前記後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器。
【請求項1】
鍵盤部を収容した楽器本体に前記鍵盤部を覆うための鍵盤蓋が支点部を中心に上下方向に回転可能に取り付けられ、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立することにより、前記鍵盤部を開放する鍵盤楽器において、
前記鍵盤蓋に、当該鍵盤蓋が前記楽器本体の後方に傾いた状態で起立した際に、前記楽器本体の後端面における両端の縁部に当接するストッパ部を設けたことを特徴とする鍵盤楽器。
【請求項2】
前記楽器本体は、底板と、この底板の両側に起立して設けられた一対の側板と、この一対の側板間に位置して前記底板の前端部に起立して設けられた前板と、前記一対の側板間に位置して前記底板の後端部に起立して設けられた後板と、を備えており、前記ストッパ部は、前記一対の側板の長手方向における後端部の端面に当接することを特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
【請求項3】
前記一対の側板の後部には、その外側面から前記後板に向けて挿入する締結部材によって前記後板を固定するための複数の取付孔が設けられており、前記ストッパ部は、前記一対の側板における後端部の前記端面において、前記複数の取付孔に対応する箇所から上下方向に離れた箇所に当接することを特徴とする請求項2に記載の鍵盤楽器。
【請求項4】
前記ストッパ部は、弾性変形可能に形成され、その突出高さが前記楽器本体の前記後端面における両端の前記縁部に当接して弾性変形した際に、前記鍵盤蓋が前記楽器本体の前記後端面に対して非接触状態を保持する高さに形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の鍵盤楽器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−69878(P2011−69878A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218827(P2009−218827)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】
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